【表紙】 令和6年3月25日発行・毎月1回25日発行・通巻第558号 ISSN 0386-0159 障害者と雇用 2024/4 No.558 職場ルポ じっくり確実な研修で、主要業務をになう人材に 株式会社マスヤ(三重県) グラビア 介護の現場を支える 医療法人あすか会 サービス付き高齢者向け住宅Cocode百楽園(奈良県) 編集委員が行く 発達障がい者のスキルアップ・戦力化への取組み 〜「ITプロジェクト」発足〜 株式会社マイナビパートナーズ(東京都) 私のひとこと 障がいがあるアスリートの脳が見せる人間の未知なる可能性 東京大学・大学院総合文化研究科・教養学部 教授 中澤公孝さん 「可憐なお庭へ」石川県・沖津(おきつ)恵梨香(えりか)さん 独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED) Japan Organization for Employment of the Elderly, Persons withD isabilities and Job Seekers 4月号 【前頁】 心のアート 日本の政治家 坂口真一郎 (一般社団法人アートスペースからふる) 画材:アクリル絵の具/サイズ:F30号キャンバス(727mm×910mm)  2022(令和4)年制作。「第66回鳥取県美術展覧会」(2022年)入選作品。  彼のオリジナルキャラクターである“スーツの人”は、ふだんは色鉛筆で描いているが、これはキャンバスにアクリル絵の具で描き、どっしりとした作品に仕上げている。また、いつもより多くの色を使い、顔やスーツに表情を持たせている。 (文:一般社団法人アートスペースからふる 妹尾(せのお)恵依子(えいこ)) 坂口真一郎(さかぐち・しんいちろう)  1982(昭和57)年、鳥取県生まれ。自閉症スペクトラムがある。  おもにアクリル絵の具を使って、一度見ると忘れられないような印象の強い作品を数多く手がけている。初めて見る写真や絵画などを、一瞬にして自分の世界観で表現することができる。また缶のラベルなどを詳細に記憶しており、紙に焼きつけるかのように描く姿に驚嘆する。彼独特の色使いも魅力的だ。 【もくじ】 障害者と雇用 目次 2024年4月号 NO.558 「働く広場」は、障害者雇用の啓発・広報を目的として、ルポルタージュやグラビアなど写真を多く用いて、障害者雇用の現場とその魅力をわかりやすくお伝えします。 心のアート 前頁 日本の政治家 作者:坂口 真一郎(一般社団法人アートスペースからふる) 私のひとこと 2 障がいがあるアスリートの脳が見せる人間の未知なる可能性 東京大学・大学院総合文化研究科・教養学部 教授 中澤公孝さん 職場ルポ 4 じっくり確実な研修で、主要業務をになう人材に 株式会社マスヤ(三重県) 文:豊浦美紀/写真:官野貴 クローズアップ 10 障害のある人とスポーツ(第3回) 〜パラアスリートを支える装具〜 JEEDインフォメーション 12 令和6年度「障害者雇用納付金」申告および「障害者雇用調整金」等申請のお知らせ/障害者雇用納付金電子申告申請システムのご案内 グラビア 15 介護の現場を支える 医療法人あすか会 サービス付き高齢者向け住宅Cocode百楽園(奈良県) 写真/文:官野貴 エッセイ 19 印象深い海外の視覚障害者 第3回 ウォン・ユン・ルン(マレーシア) 日本点字図書館 会長 田中徹二 編集委員が行く 20 発達障がい者のスキルアップ・戦力化への取組み 〜「ITプロジェクト」発足〜 株式会社マイナビパートナーズ(東京都) 編集委員 平岡典子 省庁だより 26 令和5年 障害者雇用状況の集計結果A 厚生労働省 職業安定局 障害者雇用対策課 研究開発レポート 28 第31回 職業リハビリテーション研究・実践発表会 Part1 特別講演「アフターコロナの障がい者雇用 〜障がい者雇用の質向上に向けて〜」 トヨタループス株式会社 代表取締役社長 有村秀一氏 ニュースファイル 30 編集委員のひとこと 31 掲示板・次号予告 32 JEEDメールマガジン登録受付中! 表紙絵の説明 「園芸のお仕事をしている自分を想像して描きました。奥行きの描き方や、影や日ざしの色を使うのがむずかしかったです。『入選したい!』という思いが強くありました。全国のみなさんに自分の絵を見てもらいたいと思いました。受賞できてとてもうれしいです」 (令和5年度 障害者雇用支援月間絵画コンテスト 高校・一般の部 高齢・障害・求職者雇用支援機構理事長奨励賞) ◎本誌掲載記事はホームページでもご覧いただけます。 (https://www.jeed.go.jp/disability/data/works/index.html) 【P2-3】 私のひとこと 障がいがあるアスリートの脳が見せる人間の未知なる可能性 東京大学・大学院総合文化研究科・教養学部教授 中澤公孝 はじめに  私は研究者としてのキャリアを国立障害者リハビリテーションセンターの研究所で開始し、以後18年間、障がいがある人の機能回復を目ざす研究に従事しました。2009(平成21)年より現在の職場に異動し、それからは少し視野を広げ、リハビリだけではなく、スポーツの運動技術なども研究対象として、運動障害から機能回復につながる神経の働きや高度な運動技術を実現する脳の働きなどを調べるようになりました。その過程で偶然出会ったのが、今回のテーマである障がいがあるアスリートの脳です。  国立障害者リハビリテーションセンター時代の私の研究は、例えば交通事故などで脊髄を損傷し、半身不随のため車いす生活になった人たちの失われた機能(脊髄損傷の場合は多くが歩行機能)を取り戻すことを最大の目的としていました。つまり失われたものを取り戻すことを目ざした研究をしていたといえます。これに対して、障がいがあるアスリートの脳の研究は、障がいによって失われたものから、残っているものに目を転じる機会を与えてくれることとなりました。  そもそもアスリートの目標はパフォーマンスを最大化すること、つまり記録を伸ばすこと、勝負に勝つことにあります。これに対してリハビリテーションでは機能の回復が最終的な目標となり、アスリートの目標とは最初から異なっています。  しかし、どちらも身体のトレーニングによって目標に迫ろうとしている点は共通します。私たちが障がいがあるアスリートを対象とした研究で発見したのは、彼ら彼女らの脳が日々のトレーニングの結果、大きく変化しているということでした。この変化のことを「脳の再編成」と呼んでいますが、この再編成の仕方は競技や障がいの特性によってさまざまに異なっていました。  しかもいずれも驚くほど大きな再編成であり、オリンピックアスリートに代表される障がいがないアスリートには見られないレベルの再編成でした。そのなかの例を二つ、紹介しましょう。 義足の走り幅跳び選手  若いころにスポーツ中の事故で右足の一部を切断し、それから義足の走り幅跳び選手になったドイツのマルクス・レームの例をご紹介します。  彼はオリンピックに出ても優勝候補になるぐらいの記録を打ち立てていて、パラリンピックでは三大会連続で金メダルを獲っている世界チャンピオンです。  彼の脳をMRIを使って調べたところ驚くことがわかりました。それは、彼が義足側の膝を動かすとき、普通はその反対側の脳、彼の場合、右側が義足なので左の脳が単独で義足側の膝を動かすのですが、計測結果は左右両方の脳で動かしていることを示していたのです。しかも義足に直結している膝を動かすときにのみ両側の脳が使われていて、義足ではない方の足を動かすときは片方の脳が単独で動かしており、障がいがない人と同様でした。つまり彼は義足を両方の脳で動かしているということがわかったのです。  このような脳の使い方は、彼の高度な義足操作技術と関係していることが予想されます。彼は走り幅跳びのときに高速で助走し、最後に踏切板に絶妙の角度でアプローチし跳ね上がる技術を持っています。これはきわめてむずかしい技術であって、世界屈指の技術といって間違いないでしょう。彼がこの競技で飛び抜けて強いことを裏打ちするものです。これはたゆまぬ努力の賜物であって、日々のトレーニングなくして手に入れることができない技術に違いありません。この技術を獲得する過程で、彼の脳は義足を、義足と反対側の脳が単独で操作するという一般的な方法ではなく、両方の脳で動かすという特殊な方法を採用したものと思われます。彼の高度な義足操作技術の背後にはきわめて特殊な脳の働きがあったのです。 脊髄損傷者の腕の機能  パラリンピック競技のなかにパワーリフティングという競技があります。これは脚に障がいがある人のベンチプレスで、どれだけ重いバーベルを持ち上げることができるかを競う競技です。じつはその記録が障がいがないアスリートより障がいがあるアスリートの方が優れていることが知られていて、その秘密を探るべく研究を始めました。すると研究開始前にはまったく予想しなかったことがわかってきました。それはパワーリフターの多くが脊髄損傷者なのですが、脊髄損傷のなかでも重い障がいが残る完全損傷の方の腕の操作能力が際立って高いことがわかったのです。  前述したように私は長く、脊髄損傷の方の歩行能力回復のための研究を行ってきましたが、腕の方にはほとんど注目していませんでした。それがパワーリフターの研究をきっかけに、腕を操作する能力について調べることになり、思わぬ発見につながったのです。まさに失われた機能の研究ではなく、残っている機能の研究によって、脊髄完全損傷者の腕の操作能力が障がいがない人に比べてずっと高く、それに関連する脳の再編も大きく生じていることがわかったのでした。  障がいというと何かネガティブなイメージであって、何かを失っているとのイメージを描きがちですが、この発見は障がいはネガティブな側面だけではなく、それをきっかけに残っている機能が障がいがない人以上になることすらあるというポジティブな側面もあることに気づかせてくれました。パラリンピックの創始者とも称されるルードウィヒ・グッドマン博士がかつていったという失ったものを数えるな。残されたものを最大限に活かせ≠ニの言葉を、あらためて思い出させます。  また、いわゆる手作業の仕事において、車いす使用者が障がいがない人より作業効率が高いと作業現場ではいわれているとの話も聞いたことがあり、今回の発見はこの話の信憑性を高める事実のようにも思いました。 おわりに  今回は、たった二例の紹介でしたが、私たちの一連のパラリンピックブレイン研究(※)は、脳には、人間には、まだまだ未知の能力があって、その一部は障がいがあるアスリートを研究することを通じて詳(つまび)らかになることを示しています。  そして、一つ取り上げることができなかった重要な要素があります。それは、やる気≠ナす。アスリートには多かれ少なかれ間違いなくこれがあります。アスリートはだれしもやる気があってトレーニングに勤しんでいるのです。しかし、障がいを負って日々つまらないリハビリをしなければならなくなった人々にこれを持て、というのは酷です。  パラリンピックブレイン研究によって明らかになったもう一つの点は、障がいを負うとトレーニングによる脳の再編はしやすくなるが、そこにやる気が加わると、その再編はさらに加速するらしいという点です。リハビリにやる気が加わると効果が高まることは現場の人ならみな知っています。やる気の効果をいかに引き出すか、これからの研究によってこの難題が打ち破られることを期待しています。 ★本誌では通常「障害」と表記しますが、中澤公孝様のご意向により「障がい」としています ※パラリンピックブレイン研究:私たちは障がいがあるアスリートの脳を「パラリンピックブレイン」と呼び、これを対象とする研究を「パラリンピックブレイン研究」と呼んでいます 参考文献:『パラリンピックブレイン(中澤公孝著)』(2021年、東京大学出版会) 中澤 公孝 (なかざわ きみたか)  東京大学・大学院総合文化研究科・教養学部 教授。  専門は、運動生理学・神経科学・リハビリテーション科学であり、人間の運動制御の本質に迫るための研究をリハビリテーションやスポーツスキルを対象として行っている。  おもな著書に『パラリンピックブレイン』(2021年、東京大学出版会)などがある。 【P4-9】 職場ルポ じっくり確実な研修で、主要業務をになう人材に ―株式会社マスヤ(三重県)― 米菓の製造販売を手がける工場では、障害のある従業員が、じっくり時間をかけた研修などを経て、主要業務や関連作業を任される人材に育っている。 (文)豊浦美紀 (写真)官野 貴 取材先データ 株式会社マスヤ 〒519-0594 三重県伊勢市小俣町(おばたちょう)相合(そうごう)1306 TEL 0596-22-0303 FAX 0596-22-7008 (写真提供:株式会社マスヤ) Keyword:知的障害、精神障害、製造業、研修、障害者職業生活相談員、職場実習、施設外就労 POINT 1 基礎となる主要業務を、じっくり時間をかけた研修で習得 2 上司や支援担当者を含め、相談しやすい環境と情報共有 3 機械の故障を機に、施設外就労で現場と利用者にWin-Win効果 米菓の製造販売  発売から55年のロングセラー商品「おにぎりせんべい」などで知られる米菓製造販売会社「株式会社マスヤ」(以下、「マスヤ」)は、1965(昭和40)年に設立され、三重県にある伊勢神宮から車で30分ほどの場所に本社と工場を構えている。  マスヤが会社全体で障害者雇用に取り組むことになったのは2013(平成25)年。当時の社長で、現在はマスヤ会長と親会社「IX(アイエックス)ホールディングス株式会社」(三重県)の代表取締役社長を務める浜田(はまだ)吉司(よしじ)さんのひとことから始まったという。同社の総務本部のリーダーと社長秘書を務める奥野(おくの)育子(いくこ)さんは、自身も当時から経営管理チームとして障害者雇用に取り組むことになった1人だ。そのきっかけについて奥野さんは、「あるとき社長が、親しい経営者が熱心に進めている障害者雇用の現場を見学に行ったのを機に、『わが社でも障害者雇用に取り組もう』との方針を示しました。以前から障害のある従業員は数人いましたが、組織的に雇用していたわけではなく、私たちは『うまくいくだろうか』と不安な気持ちもありました」と話す。  さっそく奥野さんたちは、その経営者の紹介で県内外の企業4社以上を見学した。ある製造現場で、知的障害のある従業員が自発的に動きながら主力となっている様子を見て、気持ちが変わったそうだ。  「周囲が世話をして働いてもらうのではなく、しっかり戦力になることを実感しました。働く意欲のある人がいるのなら、私たちができるフォローをして一緒に働きたいと思うようになりました」  いまでは従業員195人のうち障害のある従業員は8人(身体障害3人、知的障害4人、精神障害1人)、障害者雇用率は4.1%だという(2023〈令和5〉年6月1日現在)。2022年には障害者雇用優良事業所として当機構理事長表彰を受けている。マスヤのこれまでの取組みとともに、工場で働くみなさんを紹介していきたい。 主要業務を1年かけて習得  奥野さんたちは特別支援学校の見学に行くなどして採用活動を始めたが、ハローワークの担当者からは「とにかく一度、就職面接会に来てみてほしい」とすすめられたという。  「いろいろな障害種別の方たちと面接をしましたが後日、『当日参加できなかった人がいるので面接できませんか』といわれ、『せっかくだから』と本社に来てもらったのが、佐々木(ささき)裕太(ゆうた)さん(32歳)でした。明るく元気で、なにより仕事に意欲的だった彼が採用第1号です」  佐々木さんは県立定時制高校の夜間部に通いながら卸売市場で働き始め、その後は温泉施設の清掃業務などに従事していたが、数年して「しっかり就職したいと思うようになった」ことから、当機構(JEED)の三重職業能力開発促進センター伊勢訓練センター(ポリテクセンター伊勢)で訓練を受けた。その一方、看護師の母親からすすめられて県の障害者相談支援センターに行き、軽度の知的障害との判定を受け療育手帳を取得したそうだ。  2015年2月に入社後、佐々木さんはまず基本的な研修を受けた。工場勤務に必要な一定時間内での着替え、衛生管理や入室までの手順、現場で守るルールなどを約1カ月かけて教わった。  次に取り組んだのが、主要業務とされる「せんべいの選別作業」の習得だ。これは、上下に回り続ける筒の表面に空気の吸引力でくっついたせんべいを一つずつ目で確認しながら、生焼けや欠け・割れのある不良品を瞬時に見きわめ、手もとに用意してある良品と差し替えていくというもの。奥野さんは「工場見学者に選別作業を体験してもらうと、『こんなにむずかしい作業をやっているのか』と感心されます」としながら、最初にこの選別作業から教えた理由について語ってくれた。  「せんべいの選別は、包装部門の現場において基礎となる大事な主要業務です。現場の責任者たちとも相談し、『みんなと一緒に働いていくのであれば、この作業は必須』と考え、多少時間がかかっても、研修でじっくりと確実に習得してもらうことになりました」  奥野さんたちは、工場現場からさまざまな状態のせんべいをもらってきて、研修室で佐々木さんに一つひとつ見せながら選別の練習をしてもらった。選別に慣れてくると、今度は現場で短時間だけやってみて、また研修室に戻りフィードバックするという日々が続いた。  現場では、製造チームのリーダー補佐を務める山本(やまもと)竜也(たつや)さんが、「忙しくなるとつい、言葉がきつくなる人もいるので、本人に声がけするときは気をつけてもらうよう、うながしました」という。さらに一番のベテラン女性従業員に、佐々木さんとペアを組んで指導してもらったそうだ。  「教え方がていねいなうえに、最年長として現場全体を把握してくれていたので、周囲とのコミュニケーションも含め、何かあっても、必ずその女性従業員を通して対応してもらうことができました」  計1年近くの研修期間を経て、独り立ちした佐々木さん。8年経ったいまでは、選別作業の合間にさまざまな関連作業もこなせるようになった。せんべいを入れるボックスケースの機械による洗浄をはじめ、ケースを各ラインの現場に運んだり、配送トラックの積み出し場所に並べたり、各現場から出るごみの整理、段ボールの組立て機械の監視なども任されている。  これまで指導にあたってきた製造チームの松山(まつやま)一巳(かずみ)さんは、「基本的なものから少しずつ業務を増やしていきました。本人に『今度はこの作業もやってみようか』と提案し、『やってみたいです』と意欲を見せてくれたら、多少時間がかかっても根気強く指導します。さまざまな作業が入りまじる現場ですが、今後は、広く浅い仕事をさらに広く深く取り組めるようになってもらい、リーダー的な存在を目ざしてほしいです」と期待をかける。  佐々木さんも「前職でがんばっていた清掃業務での知識も活かして、作業の段取りがうまくいったときは達成感があります。今後は、現場の作業の流れの先を見通して、もっとスムーズにできるようになりたいです」と笑顔を見せる。ちなみに佐々木さんは、会社の同僚たちと一緒に、地域の清掃を行うボランティア活動にも毎回参加するほど「清掃が好きです」と教えてくれた。 「当日欠勤」減らす策  マスヤでは2014年に奥野さんが障害者職業生活相談員の資格認定講習を受け、その後も2人が受けている。佐々木さんのこれまでの成長のかげには、奥野さんたち支援担当者とのコミュニケーションを軸に、本人の課題克服に向けた努力もあったようだ。  課題の一つが、職場に慣れたころから増えていったという当日欠勤だった。山本さんから相談を受けた奥野さんは、佐々木さんと面談し、「どうしたら減らせるだろうか」と案を出し合っているうちに、「ぼくは約束は守るタイプです」との言葉を聞いた。「それなら」と奥野さんは、「毎朝、業務開始前に食堂で私と会う約束にしよう」と提案。さらに「体調が崩れてから休むよりも、あらかじめ月2回の有給休暇を取って、無理せず働けるようにしよう」ともうながした。  それから佐々木さんは毎朝、食堂に来るようになった。奥野さんは「今日の朝は何を食べた?」などと軽い会話をして職場に送り出した。佐々木さんは「奥野さんに元気な姿を見せられるように」と、自ら生活改善も始めたという。  「毎朝おにぎりを食べ、果物も買うようになりました。自宅では体を冷やさないよう熱い湯を飲み、ゆっくりお風呂に入るなど体調に気をつかうようになりました」という佐々木さんは、いまは月2回の休暇を取らなくても体調が安定するようになったそうだ。 話を聞いてもらう環境  じつは佐々木さんが当日欠勤をする背景には、職場での人間関係の悩みなどもあったようだ。「現場ではいろいろな人たちが一緒に働いていますから、ちょっとした行き違いや不平不満が出てくるのは自然なことだと思います」と話す山本さんは、職場内のトラブル防止策の一つとして「日ごろから、なるべく一人ひとりから話を聞くことを心がけています」という。  課題を抱えている人に話を聞くときは、山本さんや松山さん、班長など現場の指導者が2人体制で対応するのがルールだ。3人が互いに同じ距離を保った三角形スタイルで椅子に座って話すようにしている。2人によると「正直に話してくれたことには真摯(しんし)に向き合いつつ、私たちからは、『相手の気持ちになってみたら、どうだろうか』と問いかけることも少なくありません」という。また「少し厳しいことをいった後は、すぐ奥野さんに真意を伝え、別途フォローしてもらうことも忘れません」と山本さん。  佐々木さん自身も、いまでは少しでも相談ごとがあれば職場で松山さんに声をかけ、ロッカールームや食堂の片隅で話を聞いてもらっているという。総務本部に出向いて、奥野さんやほかの人に声をかけることもあるそうだ。マスヤの総務本部チームのリーダー補佐を務め、障害者職業生活相談員でもある古儀(こぎ)康一郎(こういちろう)さんが話す。  「食堂などで会ったときに、佐々木さんから挨拶ついでに質問されることもあります。職場内で困ったことがあるとき、すぐに相談できる人や窓口のような場がいくつもあることで、本人も安心して働けるのではないかと思います」  インタビューのなかで佐々木さんが「自分のことを信じ、理解してくれる人たちに囲まれてよかったです」と語ってくれたことも印象的だった。 同僚からの言葉  マスヤでは特別支援学校からの依頼に応える形で、職場実習生の受入れも不定期に行っている。その1人、渡部(わたなべ)歩(あゆむ)さん(24歳)は、特別支援学校2、3年次に職場実習に参加し、2018年に入社した。自宅から職場まで徒歩15分と通いやすい条件もあり、3年次は就職を見すえて3週間の職場実習を行ったという。「本人の『ここで働きたい』という意欲が伝わってきたことが採用の決め手でした」と奥野さん。  渡部さんは「いま担当しているのは、製造ラインの機械にせんべいを投入する作業です。たいへんですが、楽しいです。毎日やりがいがあります」と笑顔を見せる。地域のバスケットボールクラブにも所属し、月に1〜2回は電車に乗って津市まで行き、練習に参加しているそうだ。  松山さんは渡部さんについて「入社後に挑戦してもらった、せんべいの選別作業はまだ少しむずかしいようなので、ほかの作業を重点的にやってもらっています。一方で彼は、ほかの人が気づきにくいことを率先してやってくれます。手洗い場のハンドペーパーが切れると、いつの間にか彼が補充してくれています」と評価する。  奥野さんも「先日も作業中の若手社員がわざわざ私のところに来て、『渡部さん、すごくがんばっていますよ。ほめてやってください』と伝えてくれました。よく見てくれていることに驚きましたし、こんなふうに、よいところを認めてくれる職場だということを感じられるのはうれしいですね」という。  また山本さんも「包装部門の全メンバーが、実際に一人ひとりを理解し、協力し合うことで、障害のある従業員も自分の力を発揮できていると思います。一緒に働くメンバーも、伝え方や対応などを考えてくれています」と話してくれた。 支援機関と連携しながら  奥野さんたちは、障害のある人を支援する関係機関との連携にも力を入れてきた。例えば知的障害のある50代の男性従業員については、本人が住むグループホーム側と意見交換会を行い、本人の日常的な性格の傾向も把握し、また、体調などに異変があるときは事前に連絡をもらうことで、トラブル防止につなげている。  山本さんは、グループホームの支援者から「お話好きで、少しオーバーに話す傾向がある」と、男性の性格について聞いていたのが役立ったという。ある日、男性が通勤バスのなかで同僚に「熱が出た。新型コロナウイルス感染症かもしれない」と話したため、その後、職場が混乱しそうになったときも、「グループホームからは、体調に異変があるという連絡はなかったので、あわてずに対応することができました」とふり返る。  男性はいろいろな仕事をこなせるベテランの1人だが、同僚たちとの人間関係に課題がある。本人から悩みを聞くことが多かった奥野さんは「思うことがあれば、いったんノートに書いて整理してみてはどうか」とうながし、気持ちの整理に役立ててもらっている。  2018年には、初めて精神障害(発達障害)のある30代の男性従業員を採用した。奥野さんによると「よく働いてくれていましたが、一方で周囲の同僚との接し方や距離の取り方に悩むことが多く、『嫌われているのではないか』といったことを気にしていました」という。ハローワークや障害者就業・生活支援センターなどから支援者や職場適応援助者(ジョブコーチ)を派遣してもらい、その後も定期的に情報交換をしながら奥野さんたちは支援に尽くしてきたが、昨年秋に退職となった。奥野さんがふり返る。  「本人の体調や状態が悪いときの退職申請は『いまその判断をするべきときじゃない』と止めていました。でも今回は体調が回復するなかで、新しい道を見つけたようでした。次のステージに向けて送り出せたのかなと思っています」 施設外就労で終売回避も  マスヤでは2022年5月から、地元の就労継続支援B型事業を行う「南勢(なんせい)就労支援センター」(以下、「支援センター」)と連携した施設外就労の受入れも始めている。週2〜5日、10時から16時まで指導員1人と利用者7人がマスヤの工場に来て、せんべいの入った袋を箱に詰めて糊づけし、賞味期限の印字をするまでの作業を行っている。奥野さんが説明する。  「きっかけは包装機械の老朽化でした。修理もできず、『思い切って終売にしようか』と現場で相談していたのを知った私は、支援センターで箱折り作業もできることを思い出しました」  奥野さんの紹介を受けて、マスヤの開発部担当者が支援センターの指導員らと検討を重ね、箱のデザインもリニューアルした。  「新しい箱は、組立て時にワンタッチで開けるようにしたり、糊づけ部分を1カ所にしたりしたほか、賞味期限のハンコを押す作業で手元が少しずれても大丈夫なように、かなり大きなスペースをとっていました。開発部担当者からこのデザイン案を見せてもらったときは、『こんなに彼らのことを考えてくれていたのか』と感動しました」と奥野さんはいう。  いまでは現場の従業員から「彼らがいなければ成り立ちません」と感謝されているのはもちろん、支援センターの利用者のなかには「街中の店頭に並ぶ商品にかかわっているのがうれしい」と、マスヤの施設外就労に通い続けている人もいるそうだ。「今後も施設外就労は続けていきたいですし、さらに職場の理解を広げながら、マスヤで働きたいという人がいれば受け入れていきたいと考えています」と奥野さん。 みんなが幸せになる会社に  マスヤには現在、中途障害で身体障害のある従業員も3人在籍している。このうち1人は免疫系の持病で休職していたが、2020年、在宅勤務の導入によって職場復帰を果たした。管理職として、技術開発の部門で製造ライン仕様の検討やIT化の推進などにたずさわっているそうだ。奥野さんは「ちょうどコロナ禍もあり、職場全体にもリモートワークを広げることができました」と話す。また内部障害がある1人は、設備管理の担当として単独作業をすることが多いため、奥野さんによると「守衛さんたちに協力してもらい、定時終業しているか確認してもらっています」という。  じっくり時間をかけた研修や、こまやかなコミュニケーションを軸にした支援体制、一人ひとりに合わせた職場環境づくりといった取組みの積み重ねは、マスヤの掲げるミッション「みんなが幸せになれる会社をつくりましょう」にも、着実につながっているようだ。 写真のキャプション 株式会社マスヤは米菓の製造を手がける(写真提供:株式会社マスヤ) IXホールディングス株式会社総務本部リーダーの奥野育子さん 包装部門で働く佐々木裕太さん 入社当時に行われた入室研修の様子。定められた手順を正しく実施する(写真提供:株式会社マスヤ) 選別研修の様子。さまざまな状態の実物を使い、見分け方を学んだ(写真提供:株式会社マスヤ) せんべいの選別作業などを担当している佐々木さん 佐々木さんの指導にあたる製造チームリーダー補佐の山本竜也さん 佐々木さんの指導にあたる製造チームの松山一巳さん 佐々木さんも参加する清掃のボランティア活動の様子(写真提供:株式会社マスヤ) 総務本部チームリーダー補佐の古儀康一郎さん 気軽に相談してもらうために、食堂の片隅で話すことも多いという 包装部門で働く渡部歩さん 渡部さんは、ボックスケースの洗浄作業も担当している 南勢就労支援センターによる施設外就労の様子。指導員とともに作業にあたる(写真提供:株式会社マスヤ) 賞味期限のスペースが大きく、ハンコが押しやすくなっている 【P10-11】 クローズアップ 障害のある人とスポーツ 第3回 〜パラアスリートを支える装具〜  「東京2020パラリンピック競技大会」を契機に、注目を浴びているパラスポーツ。第3回は、パラアスリートの活躍を支える義肢、車いすなど各種装具の開発・製造に取り組む団体や企業を取材。公益財団法人鉄道弘済会義肢装具サポートセンターと、株式会社オーエックスエンジニアリングにお話をうかがいました。 取材協力 公益財団法人鉄道弘済会 義肢装具サポートセンター 〒116-0003 東京都荒川区南千住4-3-3 TEL 03-5615-3313 https://www.kousaikai.or.jp  1969(昭和44)年5月に「東京身体障害者福祉センター」として発足。義肢装具の製作から装着訓練に至るまで、一貫した諸サービスを提供する総合的なリハビリテーション施設。義肢製作前の診療も同施設内で対応し、医療・製作チームが連携して利用者のサポートを行っている。 義肢装具研究室長 義肢装具士 臼井(うすい)二美男(ふみお)さん 1 つくるだけで終わらせない義肢製作 公益財団法人鉄道弘済会 義肢装具サポートセンター パラアスリートを支えるスポーツ用義足  「義肢」とは、病気やけがで手足を失った人が使用する義手や義足のことです。足に装着する義足は、生活用とスポーツ用で仕様やつくり方が異なります。  生活用義足が日常の歩行をスムーズに行えるように設計されているのに対し、スポーツ用義足は、着地面との反発を利用して前進する構造になっており、走ることを目的としてつくられています。着地面にカーボンファイバー製の「板バネ」と呼ばれる部品を使用し、ふみ込む力の強さによってその厚みを変え、強度を調節しています。競技種目や練習によって変化する筋肉量を推測しながら義足を製作、調整を重ねていきます。 世界に通用する丈夫な素材、テストをくり返し実用化へ  最近のパラスポーツの大会ではさまざまな装具の進化を目にしますが、日本でスポーツ用義足第1号が製作されたのは2000(平成12)年のこと。海外ではすでにカーボン素材を使用したスポーツ用義足が使用されていましたが、当時の日本にはその素材がなかなか入ってきていませんでした。入手できたとしても高額であったため、利用者の負担で何度も試作することはできません。  「公益財団法人鉄道弘済会義肢装具サポートセンター」(以下、「義肢装具サポートセンター」)では、施設の研究費でこうした素材を購入、試作・フィールドテストをくり返しながら、スポーツ用義足の開発・製作を進めてきたそうです。 利用者の声を技術開発へ活かす取組み  パラアスリートには、もともとスポーツをしていた人、運動神経のよい人もたくさんいますが、手足を失って落ちこんだ気持ちを乗り越えて元気になってほしいという周囲の励ましからパラスポーツを始め、パラアスリートとして第二の人生を歩む方も多いそうです。  義肢装具サポートセンターでは、施設の利用者からスポーツ用義足のレンタル希望者を募ったり、同センター義肢装具研究室長の臼井(うすい)二美男(ふみお)さんが代表を務める義足ユーザーコミュニティ「スタートラインTokyo」が月に1回開催する、だれでも参加できる義足ランニングの練習会へ参加を呼びかけたりしています。  こうして、より多くの人に義足に親しんでもらい、実際に義足を使う利用者の目線から開発・改善のヒントを得るという活動も行っています。 走ることの楽しさが義足の進化・未来をつくる  義肢装具サポートセンターでは、約30人の義肢装具士によって、年間約7千件もの義肢装具が製作されています。臼井さんのもとには、全国から「義足をつくってほしい」という方たちからの電話がたくさんかかってきます。  「この30年で、日本国内における義足製作は大きく発展しました。素材も木製やアルミ合金が主流だったころに比べ、現在ではチタン合金やカーボンファイバーといった軽くて丈夫な素材が用いられるようになりました。インターフェース(断端(だんたん)と義足の接合面)の素材も、バンドでぶら下げていたものから、シリコンライナーが使用されるようになり、体と義足の接合がスムーズになったばかりでなく、肌にもやさしく、使用者の皮膚トラブルも少なくなりました。  また、さらによい義足にするためには、使用者のリハビリテーションも大切です。その人の体の動きになじませるまでが、“義肢をつくる”ということなのです」と臼井さんは話してくれました。 取材協力 株式会社 オーエックスエンジニアリング 〒265-0043 千葉県千葉市若葉区中田町2186-1 TEL 043-228-0777(代表) FAX 043-228-3334 https://www.oxgroup.co.jp  オートバイの販売業から業種転換した車いすメーカー。それまでレース用部品の製造・販売、レース活動などを行っていた実績から、モーターサイクル・レーシング・テクノロジーを車いすの開発・製造に応用し、多くのパラアスリートの活躍に貢献している。 2 「こだわり」を大切にする車いす製作 株式会社 オーエックスエンジニアリング スポーツ用軽量車いす既製品では完成しない設計  パラアスリートを支える装具として、スポーツ用軽量車いすの進化も注目されています。車いすメーカーの株式会社オーエックスエンジニアリングが製作する車いすは、競技種目によってその形状は異なり、車輪の角度や座面の高さ、操作性に至るまで、使用者の体に合わせて細かく計算されてつくられているそうです。選手によっては体を固定するためのベルト位置や締めつけの強度にまで細かくこだわって、調整を重ねる場合もあるといいます。  また、同社広報室の櫻田(さくらだ)太郎(たろう)さんは「一人の選手のご要望がほかの選手の車いす製作に活きることもあり、製作現場における選手とのやり取りは開発に欠かせない重要なコミュニケーションの場となっています」と、話してくれました。 写真のキャプション 板バネを使用したスポーツ用義足 大西(おおにし)瞳(ひとみ)選手(左)の義足を調整する臼井二美男さん(右)(写真提供:臼井二美男) 本社(写真提供:株式会社オーエックスエンジニアリング) スポーツ用軽量車いすの「CARBON(カーボン) GPX(ジーピーエックス)」(写真提供:株式会社オーエックスエンジニアリング) 【P12-14】 JEED インフォメーション 〜高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)からのお知らせ〜 事業主のみなさまへ 令和6年度 「障害者雇用納付金」申告および「障害者雇用調整金」等申請のお知らせ 〜常用雇用労働者の総数が100人を超えるすべての事業主は障害者雇用納付金の申告義務があります〜  令和6年4月1日から5月15日の間に令和6年度申告申請をお願いします。前年度(令和5年4月1日から令和6年3月31日まで)の雇用障害者数をもとに、 ○障害者雇用納付金の申告を行ってください。 ○障害者の法定雇用率を下回る場合は、障害者雇用納付金を納付する必要があります。 ○障害者の法定雇用率を上回る場合は、障害者雇用調整金の支給申請ができます。 【申告申請期間】 種別 障害者雇用納付金 障害者雇用調整金 在宅就業障害者 特例調整金 特例給付金 申告申請対象期間 令和5年4月1日〜令和6年3月31日 申告申請期間・納付期限 令和6年4月1日〜令和6年5月15日 (注1、注2、注3) (注1)年度の中途で事業を廃止した場合(吸収合併等含む)は、廃止した日から45日以内に申告申請(障害者雇用納付金の場合は、あわせて申告額の納付)が必要です。なお、令和6年度中の事業廃止等による申告申請については、制度改正により書式が変更となる予定であるため、期限内に申告申請できるよう、余裕をもって各都道府県申告申請窓口にご相談ください。 (注2)障害者雇用調整金、在宅就業障害者特例調整金および特例給付金は、申請期限を過ぎた申請に対しては支給できませんので、十分にお気をつけください。 (注3)常用雇用労働者の総数が100人以下の事業主が、特例給付金の申請を行う場合の申請期限は令和6年7月31日となります。 *詳しくは、最寄りの都道府県支部高齢・障害者業務課(東京・大阪は高齢・障害者窓口サービス課)にお問い合わせください。 JEED 都道府県支部 検索 障害者雇用納付金制度の改正について (令和5年4月1日施行関係) 1.障害者雇用調整金支給額の見直し  1人当たり月額29,000円になります。(令和5年3月31日までの期間については27,000円) 2.精神障害者である短時間労働者に関する特例措置(要件が緩和され延長)  週所定労働時間が20時間以上30時間未満の精神障害者について、当分の間、雇用率上、雇入れからの期間等に関係なく、1人をもって1カウントとします。 *制度改正の概要についてはJEEDホームページをご覧ください。https://www.jeed.go.jp/disability/seido.html JEEDホームページにて、記入説明書および解説動画をぜひご覧ください。 https://www.jeed.go.jp/disability/levy_grant_system_about_procedure.html 申告申請の事務説明会にぜひご参加ください。 *全国各地で2〜3月に開催しています。 *参加費は無料です。 JEED 納付金 説明会 検索 Q すべての事業主が障害者雇用納付金の申告・納付を行わなければならないのですか? A  障害者雇用納付金の申告義務がある事業主は、常時雇用している労働者の総数が100人を超える月が、申告申請対象期間(令和6年度申告申請では令和5年4月1日〜令和6年3月31日)のうち5カ月以上ある事業主です(注1)。  該当する事業主は、令和6年4月1日から5月15日までの申告申請期間内に、電子申告申請システムか、本社の所在する都道府県にある当機構申告申請窓口(注2)への送付または持参により、前年度(申告申請対象期間)の実績に基づく申告申請書をご提出ください。  障害者雇用納付金の納付が必要となるのは、基準となる障害者雇用率を下回っている事業主となります。  また、この場合の障害者雇用納付金の額は、その「基準となる障害者雇用率に不足する人数」に「月額5万円」を乗じた額となります。  なお、障害者雇用納付金の申告義務がある事業主は、基準となる障害者雇用率を達成している事業主(調整金対象事業主)であっても、申告申請書を提出する必要があります。 Q 障害者雇用納付金の納付期限はいつですか? A  障害者雇用納付金の納付期限は、納付金申告書の提出期限と同様に5月15日となります。  なお、納付すべき障害者雇用納付金の額が100万円以上となる場合は、3期に分けて延納することができ、令和6年度の各期の納付期限はそれぞれ次の通りです。  延納第1期分の納付期限:5月15日  延納第2期分の納付期限:7月31日  延納第3期分の納付期限:12月2日  また、障害者雇用納付金の納付には、インターネットバンキング「ペイジー」をご利用いただけます。詳細については、本誌裏表紙をご確認ください。 Q 障害者雇用調整金・報奨金・特例給付金申請時には、どのような添付書類が必要ですか? A  常時雇用している労働者の総数が300人以下で、障害者雇用調整金、報奨金や特例給付金を申請する事業主は、添付書類を提出する必要があります。  具体的には、雇用障害者の障害の種類・程度を明らかにする書類として障害者手帳などの写し、労働時間の状況を明らかにする書類として源泉徴収票(マイナンバーの印字のないもの)などの写しの添付が必要となります。  なお、平成26年度以降の申請時に障害の種類・程度を明らかにする書類を提出した雇用障害者について、障害の種類・程度の変更がなく、申請対象期間内に障害者手帳などの有効期限を経過していない場合は、改めての提出は不要です。 Q 申告申請関係の書類作成や手続きはパソコンでできますか? A  障害者雇用納付金の申告、障害者雇用調整金、報奨金、在宅就業障害者特例調整金、在宅就業障害者特例報奨金および特例給付金の申請にかかる申告申請書等は、電子申告申請システムで作成・送信が可能です。また、申告申請書とあわせて、添付書類も電子申告申請システムでの送信が可能です。  そのほか、「住所、名称等変更届」「吸収合併、相続、廃止等届」の作成・送信、電子申告申請用ID・パスワードの新規発行等も、電子申告申請システム上で行うことができます。 令和6年度申告申請の主な留意点 1.「障害者の雇用の促進等に関する法律」の改正について  障害者雇用納付金制度について定めている「障害者の雇用の促進等に関する法律」が改正され、令和6年度申告申請(申告申請対象期間:令和5年4月1日〜令和6年3月31日)においては、精神障害者である短時間労働者にかかる特例措置(0.5→1カウント)が延長され、すべての精神障害者である短時間労働者が対象となったことおよび調整金支給単価の見直し(月2万7000円→2万9000円)が行われています。  また、令和6年4月1日からは、調整金、報奨金の支給単価が雇用する障害者の人数に応じて変更になるなど大幅な改正が施行されます。令和6年度中途に事業廃止・合併等で申告申請する場合は、速やかに本社の所在する都道府県にある当機構申告申請窓口(注2)へご連絡ください。 2.「電子申告申請システム」について  システムに必要事項を入力いただくと、申告申請額が自動計算され申告申請書が作成されます。過年度に電子申告申請システムで作成した申告申請データ(XMLファイル)をお持ちの場合、システムに取り込んで申告申請書を作成することが可能です。作成した申告申請書は、電子申告申請システムを利用して送信することができます。  また、事業所情報および雇用障害者情報について、事業主が作成したCSVファイルを取り込むことも可能です。 3.法人番号の記入または所得税確定申告書の写し等の提出  法人である事業主にあっては、申告申請書に法人番号をご記入いただきます。法人番号については、国税庁法人番号公表サイト(https://www.houjin-bangou.nta.go.jp)にて確認できます。  また、今回初めて申告申請を行う個人事業主(法人番号を持たない個人事業主以外の事業主を含む)にあっては、個人事業主の実在性確認のため、所得税確定申告書(白色申告書または青色申告書)の写しまたは開業届の写しのご提出をお願いします(これまでに提出済みである事業主の場合は、住所や屋号に変更がない限り再提出不要です)。 4.納付金等の複数申告申請  納付金等の申告申請は、原則として法人単位で行うことが必要です。一つの法人が複数の申告申請を行っている場合は修正手続きをお願いします。 (注1)年度の中途に事業を開始・廃止した場合(吸収合併等含む)の取扱いは異なりますので、記入説明書をご参照ください。 (注2)当機構各都道府県支部高齢・障害者業務課(東京・大阪は高齢・障害者窓口サービス課)が申告申請窓口となります。 事業主の皆様へ 障害者雇用納付金 電子申告申請システムのご案内 URL:https://www.nofu.jeed.go.jp/Nofu_Densi 電子申告申請システム トップページ こちらからアクセスできます JEEDホームページトップのバナーからもアクセスできます 障害者雇用納付金 電子申告申請システムの特徴 1 電子申告申請システム(WEB)上のフォームに情報を入力して、申告申請書の作成ができます 2 過去の申告申請書のバックアップデータ(XMLファイル)やCSVファイルを取り込むことができます 3 電子申告申請用ID・パスワードの発行・変更手続がWEBでできます 4 添付書類(源泉徴収票や障害者手帳の写し等)の送信ができます 【P15-18】 グラビア 介護の現場を支える 医療法人あすか会 サービス付き高齢者向け住宅Cocode百楽園(奈良県) 取材先データ 医療法人あすか会 サービス付き高齢者向け住宅 Cocode(ここで)百楽園(ひゃくらくえん) 〒631-0024 奈良県奈良市百楽園5-4-19 TEL 0742-44-7777 FAX 0742-44-6680 写真・文:官野 貴  「医療法人あすか会」は、奈良県の奈良市、生駒(いこま)市で介護老人保健施設などを運営し、地域で医療・介護・リハビリテーションを一体的に提供している。介護補助などとして、障害のあるスタッフ7人が活躍しており、人手不足に悩む介護の現場において、彼らが貴重な働き手となっている。「サービス付き高齢者向け住宅Cocode(ここで)百楽園(ひゃくらくえん)」で働く嶋(たかしま)一至(いたる)さんもその1人だ。  嶋さんの勤務は、午前9時から午後3時までの6時間。午前中の業務は、朝食で使用した食器の後片づけと洗浄から始まり、机の消毒、昼食の準備や配膳と進む。昼休憩を挟み、午後の業務も昼食の後片づけからスタート。日替わりでシーツ交換や個室の掃除、外構のゴミ拾いや草むしりなども行う。その後、夕食に向けて料理の湯煎や食器の準備を進める。最後に、廊下の手すりやエレベーター内の消毒を行い、一日の業務が終わる。  同法人では、それぞれのスタッフに対してサポートを行う職員を決めており、勤務開始時にその日の業務全体について指示を行い、途中経過についても進捗確認を行っている。嶋さんは、サポート担当者が作成した「仕事の時間わり」に基づいて作業を進め、作業の区切りで作業完了を示す丸印を時間わりに記入し、作業を忘れることを防いでいる。  介護の現場はさまざまな業務があり、障害のあるスタッフの特性や適性に合わせた業務が切り出せるという。一人ひとりに合った業務を担当してもらうことが、スタッフのやりがいにつながり、長く働きたいと思える職場となっているそうだ。また、障害のあるスタッフが補助業務を担当することで、職員が介護業務に集中できる環境がつくり出されている。このように同法人では、障害のあるスタッフが介護の現場において欠かすことのできない人材となっている。 写真のキャプション まずは朝食の後片づけ。各フロアから食器などを回収する 食器は、泡立てた洗剤液に浸けて汚れを落ちやすくしたのち、予洗いする 予洗いした食器を手際よくラックに並べ、食器洗浄機に投入する 昼食の準備。別施設で調理された料理を湯煎にかける。温度管理が重要だ 湯煎にかけた料理を食器に盛りつける 本日のメニューは、コロッケとゆで卵、ブロッコリー 利用者に合わせて、飲み物を用意する 介護職員と連携して配膳を進める 利用者の希望に沿って、食堂や個室へと配膳する 嶋さんは、介護をともなわないシーツ交換も担当している シーツ交換とあわせて、個室の清掃も行う。すみずみまでキレイに 手すりの消毒も大切な業務の一つ 作業の区切りごとに、「仕事の時間わり」をチェックする 「仕事の時間わり」。嶋さんは、さまざまな介護補助業務を担当している 【P19】 エッセイ 印象深い海外の視覚障害者 第3回 ウォン・ユン・ルン(マレーシア) 日本点字図書館 会長 田中徹二 田中徹二(たなか てつじ)1934(昭和9)年生まれ。1991(平成3)年、社会福祉法人日本点字図書館館長に就任。1993年、国連アジア太平洋経済社会委員会(ESCAP)の「アジア太平洋障害者の十年」のスタートを機に、アジア盲人図書館協力事業を立ち上げた。マレーシアを起点に、アジア太平洋諸国で点字印刷がないところを対象に、点字印刷技術を指導。2004年からは視覚障害者個人向けに、パソコン技術指導も行っている。2001年4月から2022(令和4)年3月まで日本点字図書館理事長、現在は会長。  ウォンは、私がアジアで最も親しい人物だ。1994(平成6)年、社会福祉法人日本点字図書館(以下、「日点」)がアジア盲人図書館協力事業を立ちあげて、実態調査としてマレーシアに行ったときに知り合った。彼は当時、クアラルンプールにあるマレーシア盲人協会(以下、「MAB」)の職員だった。国立マラヤ大学を卒業したばかりのエリートと紹介された。「ここで偉くなって、視覚障害者協会の会長になるんだ」と豪語する若者だった。  その彼に、日点はアジア国際協力事業である点字印刷技術指導講習会やICT(情報通信技術)講習会で全面的に協力してもらうことになる。1998年、マレーシアで初めての点字印刷所ができ、その所長に就任したクリスティーナ・アン・ローとウォンが結婚したころからである。2001年まではアジア太平洋地域の諸国で、点字印刷をしていない盲学校や盲人施設から職員をマレーシアに招いて、講習会を開くことにした。当時は郵政省の国際ボランティア貯金から助成を受けた。  2002年からは助成金が打ち切られたので、第三国研修として各国の施設へウォン夫妻に出かけてもらっている。そして2004年からは別の助成金で、視覚障害者個人を対象にICT講習会をペナンで開催している。選考から始まり、招へい手続き、指導まですべて、ウォンに世話になっているといっても過言ではない。  ウォンは生まれながらの全盲だ。兄弟姉妹は6人いるが、そのなかに視覚障害者が含まれる。クリスティーナは晴眼だが子どもはいない。しかしICT講習会の研修生から、ママ、ママと慕われて、じつに面倒見がよい女性である。  ウォンは5歳になると、ペナンにイギリス人がつくった初めての盲学校、聖ニコラス・ホーム(以下、「SNH」)に入学した。そこで普通の学習だけでなく、さまざまな訓練を受け、自立心が育まれたという。中等教育の後半は、クアラルンプールの一般校で晴眼の生徒と一緒に学んだ。そして大学に進学して、卒業後、幹部候補生としてMABに就職したのである。  ところが、2006年、MABを退職し、ペナンのSNHに転職してしまった。妻のクリスティーナの母親が病気になり、彼女が世話をしなければならなくなったからだという。1994年に会ったときの彼の希望は、一体どうなったのかと思ったことを覚えている。  それが2011年になると、クアラルンプールにあるマレーシア盲人協議会(以下、「NCBM」)に呼ばれた。NCBMは、盲人関係の施設や盲学校が加入する全国組織だ。全国に出張し、NCBMの本来の役割である連絡調整に尽くした。日点の協力事業も本格的に手伝えるし、彼の本来の目標に添った職場に戻ったように感じられた。2022(令和4)年には、NCBMの実質的なトップである常務理事に任命されて、視覚障害者の世界でウォンの意向が通用するようになったのである。そして国内では障害者関係の各種政策委員会の委員として活躍している。また、国際関係では、世界盲人連合のマレーシア代表を務めている。  彼の報告によると、マレーシアでの視覚障害者の職業は、マッサージ師、教師、大学講師、公務員、NGO団体職員、起業家などだという。就業率の統計はないので、どれくらいの視覚障害者がこれらの仕事をしているか、正確にはわからない。わが国でもそうだが、個々の職業についての統計はなく、知人の就いている職業をあげたのであろう。それでもマッサージ師は養成もされているので類推が容易であることは間違いない。約5000人が職業人として働いている。職業訓練はMABとSNHで行っており、職種はマッサージ、足のリフレクソロジー、ICT、事務職、オーディオ製作だという。  経済成長の目覚ましいマレーシアは、先進国のレベルに追いつこうとしている。それを如実に示すのが、障害者への対策だ。障害者対策まで政府の手が伸びるのは、どこの国でも、経済にゆとりがなければ成り立たない。マレーシアは、そのレベルにすでに達したといってよい。これからのウォンの活躍がますます期待されるところである。 【P20-25】 編集委員が行く 発達障がい者のスキルアップ・戦力化への取組み 〜「ITプロジェクト」発足〜 株式会社マイナビパートナーズ(東京都) サントリービバレッジソリューション株式会社 人事本部 副部長 平岡典子 取材先データ 株式会社マイナビパートナーズ 〒100-0003 東京都千代田区一ツ橋1-1-1パレスサイドビル9F mpt-info@mynavi.jp 編集委員から  「誰もが活躍するための道を拓き、未来への道標となる。」。今回取材した株式会社マイナビパートナーズのミッションだ。  発達障がい者の新たな道を切り拓くべく、自社にて「IT人材育成」にチャレンジした。だれもが自分らしく生きられることがあたり前の世界を目ざし、これまでの常識の枠にとらわれない、新しいビジネスや仕組みを提案し続ける「先駆者」として活動している、マイナビパートナーズの取組みをみなさんに知っていただきたい。 Keyword:発達障害、特例子会社、スキルアップ、動画制作、RPA、GAS、Python、プログラミング業務効率化 写真:官野貴 POINT 1 ITプロジェクトを発足し、従業員育成を組織で支援 2 目的は「学び・スキル習得」ではなく「業務への活用・貢献」 3 さらに見すえる未来は「機械学習・AI活用」〜先駆者として〜 マイナビパートナーズ従業員の8割が20〜30代、発達障がい者が86%  東京都千代田区にある株式会社マイナビ(以下、「マイナビ」)の特例子会社である株式会社マイナビパートナーズ(以下、「マイナビパートナーズ」)を訪ねた。2016(平成28)年設立、現在の従業員数は221人(2023〈令和5〉年10月時点)、うち障害者手帳取得者は170人。社員の8割は20代、30代であり、平均年齢30.3歳である。また、ADHD(注意欠如・多動症)やASD(自閉スペクトラム症)などの発達障がいのある精神障害者保健福祉手帳取得者が、障害者手帳取得者のうち83%におよぶ。事業所は、東京都、愛知県、大阪府に展開している。マイナビグループの事務系業務代行業、および障がい者に特化した人材紹介業を手がけている会社だ。  はじめに、マイナビパートナーズ代表取締役社長執行役員の藤本(ふじもと)雄(たけし)さんからお話をうかがった。  藤本さんとのご縁は、障がい者雇用に関する企業担当者の集まりでお会いしたのが最初だった。障がい者の活躍推進に熱い思いを持ち、知識や経験も非常に豊富である。社長という立場でありながらもとても親しみやすく、社員みんなから愛されている、それが藤本さんだ。  今回は、発達障がいのある社員のさらなるスキルアップ(戦力化)を目ざし、独自に取り組んでいる「ITプロジェクト」についてお話をうかがった。 ITプロジェクト発足の背景 〜先駆者を目ざして〜  マイナビパートナーズで進行しているITプロジェクトは、以下の三つだ。 @ 動画制作 A RPA B GAS(ガス)・Python(パイソン)  ITプロジェクト発足の背景について藤本さんは次のように語った。  「数年前から徐々にパソコン業務の受注が増えていました。一方で、AIやロボット化による業務の自動化は今後も加速することが予測できたため、自社での受託業務が自動化により縮小してしまうのではないか、という危機感がありました。それならば自社でITスキルを高め、自動化の業務ごと、になえるようになってしまおうと、プロジェクトを立ち上げたのです」と当時をふり返った。  障がい者雇用の現場においては、AIの台頭を脅威ととらえ、障がい者の仕事が縮小してしまうのではないかと懸念を抱いた企業担当者は決して少なくなかった。しかし藤本さんは違った。障がい者が活躍する新たな道を切り拓いた。 動画制作スキルアッププログラム 〜マイナビグループの制作会社を目ざして〜  一つめの「動画制作」について、東京クリエイティブ1課課長の関(せき)理沙(りさ)さんにお話をうかがった。  東京・大阪ではクリエイティブ専任チームを設置し、すでに28人のメンバーがグラフィックデザイン、動画やイラスト制作、ライティングなど、マイナビが運営するさまざまなメディアの制作を担当していた。  今後、会社のさらなる成長を目ざし、2022年に掲げたチームミッションは次の二つ、「マイナビグループ内での受注拡大」と「マイナビグループ外の企業からの仕事獲得」だ。  そして、「マイナビグループ企業の制作会社を目ざそう!」と活動をスタートした。  すでに、グループ外の企業から動画制作案件の年間受注を決めていたが、イラストやデザインスキルを活かしたアニメーション動画制作なら、他社と差別化できるかもしれないという思いもあった。  またグループ内の企業においても動画のニーズが高まっている背景があり、今後の受注を増やしていけそうだと考えた。  しかし、28人のチームメンバーのうち、アニメーション動画を制作できるのは2人だけに限られていた。そこで、組織をあげて「動画スキルアッププログラム」を実施することになった。 障がい当事者が講師の育成プログラムを設計  その際に企画・運営・講師は、同チームの障がいのある社員が担当した。大学で映像制作を学んだ社員が、動画制作をメインで担当していた。障がいはASDで、こだわりの強さやマルチタスクが苦手という特性がある。だが、得意なことについての習熟度は高く、スピードとクオリティのバランスを適切に判断しながら対応できるといった社員である。  育成プログラムは、9カ月間で講習12回、実技6回の計18回(1回60分)で、研修後の課題として、実際の案件である株式会社マイナビ出版の販促用動画(20〜30秒)3本を1本あたり16時間以内で制作すること。この3本の制作において、技術が実務レベルまで達していると判断されれば合格となる。  このプログラムは難易度も高いために、ある程度デザインの基本スキルが身についていることを条件に応募者を募ると、3人の応募があり、3人とも選考テストを通過してプログラムに参加した。結果として2023年4月には3人全員が合格し、実務デビューできる状態となった。  現在は4人体制で動画案件に対応することで、目標であったマイナビグループ内の企業からの受注増とマイナビグループ外の企業からの受注増、両方を達成した。私は取材中に実際に制作した動画をいくつか見せてもらったが、いずれもクオリティーが高く、驚かされた。  本プログラムの成果は、明らかだった。  動画制作案件における2023年受注件数は前年比で50%アップした。プログラム参加メンバーの活躍は目覚ましく、グループ外企業の案件担当ができるまでに成長した。  講師を担当した社員の自己成長や、モチベーションの向上につながる取組みになった。 未経験社員9人がRPAスペシャリストへ成長3年で50件のロボットを作成  次に、「RPA」(※1)プログラムについて触れたい。  本プログラムの推進担当者であるパートナー雇用開発部部長の藤澤(ふじさわ)隆也(たかや)さんにお話をうかがった。  2019年秋より、マイナビのシステム部門と連携し、障がいのあるスタッフのRPAプログラマー育成に着手したそうだ。  特徴的なのは、もともと知識や経験がなくても、意欲のある社員がチャレンジできるようにしたこと。そして、四つのステップをつくり、評価をしながら最終的には独り立ちを目ざす段階的なプログラムになっていることだ。  各ステップについて触れていきたい。 @eラーニングでRPAの基礎力を習得  約2カ月間で30〜40時間のRPA基礎を学ぶeラーニングを受講し、修了することを次のステップに進む要件とした。 A自社オリジナル課題に取り組む  すでにRPAによって自動化されたオリジナル案件を題材に、自動化ロボットを作成する。意図的に情報が欠落している状況をつくり、特性により抜け漏れや思い込みなどに課題を持つメンバーの気づきにつなげる工夫も心がけた。完成後は合否採点だけでなく、評価点と改善点を資料にまとめて対面でのフィードバックを実施することで、本人の次なる目標へのモチベーションにつなげた。 Bマイナビパートナーズ内の定型業務をRPAで自動化  次に、すでに受託している業務のうちRPAに適した案件を自動化するステップ。完成までは、社内担当課にてマンツーマンでサポート。専用チャットグループを作成し、いつでも不明点を質問できる体制を整え、週1回の進捗確認ミーティングを実施するなど、サポート体制も整えた。 C他部署からの依頼案件を担当  最終段階として、他部署からの依頼案件を一から担当することで、独り立ちを目ざしてもらう。自動化プログラム完成までは、システム部門をはじめ、経験豊富なスタッフがかかわる体制をとった。個々の習熟度に応じて徐々にサポートを縮小していくことで、本人が自力をつけながら自信を持って独り立ちできるようにした。  このプログラムの成果として、9人のRPA技術者を輩出した。うち8人は未経験者であった。障がい種別の内訳は発達障がい8人、精神障がい1人だ。ほぼ全員、実務経験はなかったが、入社後にプログラミングへの興味・関心を持ち、一から自己学習を行い、独り立ちできるまでに成長を遂げた。  そして、約3年間でロボット作成50件の実績を積んでいる。  本プログラムの卒業生たちが、一から学ぶなかで独自に業務工程を整理し、詳細なマニュアルや専門知識のための資料を作成した。その一部はマイナビに還元され重宝されているほどだという。  今後について藤澤さんはこう語った。  「一人ひとりのスキルを向上させて、自動化対応件数を増やしていきたいです。今後は新規開発だけでなく、既存の修正対応も含め、開発担当者間での業務の受け渡しを円滑にするような仕組みづくりにも着手予定です。また、RPA業務に限らず、ほかの開発業務の一端もになっていくことを模索しています」とのこと。まだまだ新たなチャレンジは続きそうだ。 GAS・Pythonプログラム 9カ月で30件、2500時間を削減  次に「GAS・Pythonプログラム(※2)」について、担当者であるパートナー雇用開発部の松尾(まつお)明(あきら)さん、佐藤(さとう)桃子(ももこ)さんにお話をうかがった。  これは三つのプログラムのなかで最も新しく、2023年1月にスタートした。希望者を募り、上司の許可があればだれでもプログラムに参加できる仕組みとし、基本的にはすべて自主学習スタイルである。  各ステップについて触れていきたい。 @指定の動画を視聴して基本を習得  プログラミングは独学でもある程度は学ぶことができるため、知識のある精鋭メンバーが選定したYouTube動画を活用した学びに統一した。 A課題への取組み  限られた時間で早く実践に進めるよう、課題は業務で使う知識を短期間で習得できる構成にした。また、知識の蓄積と育成の効率化を目ざし、プログラム参加者の質問と回答をデータベースに蓄積し、ほかの学習メンバーも参照できるような仕組みにした。  参加者の学習進捗や取組み状況を現場の上長へ月1回報告し、連携も大切にしている。 B実際の業務を自動化させて独り立ち  @Aのステップを修了すると実務での自動化、独り立ちがスタートする。  本プログラムの成果(2023年1〜9月実績)は以下の通りである。 ・育成人数:延べ13人 ・自動化ツール作成件数:30件 ・自動化による業務削減時間:2500時間  スキルと育成に素養のある社員を「トレーナー」に任命し、教える側に回ることでモチベーションアップや個々の成長につなげている。  また、業務拡大の好循環も生まれている。精鋭メンバーが担当していた自動化業務を新規メンバーに渡すことで精鋭メンバーのリソースに余裕ができ、新たな業務ニーズの発掘へとつながっているそうだ。  松尾さんは、「会社の戦力となるIT人材の育成は急務だと考えました。ずっと同じ業務をし続けるのではなく、新しい課題に挑戦することが成長につながります。発達障がいとITとの相性はよいのではないかと、大きな可能性を感じています」という。  実際にプログラムを進めるなかで、想定外のうれしい変化も見られたという。例えば、メンバー同士が互いにコミュニケーションをとり、教え合うようになった。また、コミュニケーションを苦手としていたメンバーがみんなの役に立ちたいと行動し、みんなから頼られるような存在になるなど、それぞれが成長して、自己肯定感を高めていく姿があったという。  「今後は、本プログラムを通してプログラミングのベース知識を持つ人材を増やし、実業務を自動化することでさらなる業務時間削減を目ざしたいと思っています。トレーナー昇格の社員を増やし、業務拡大のサイクルを加速させていきたいです」と松尾さんは語ってくれた。 IT初心者の新たな挑戦  このプログラムに参加した社員の方からも、お話をうかがうことができた。  2020年入社の齊藤(さいとう)百花(ももか)さんはいう。  「入社当時の自分のパソコンレベルは低く、ショートカットキーの理解もままならないほどでしたが、プログラムを知り、参加してみようと思いました。私は忘れっぽく、抜け漏れが多いことや、集中力が続かないことが自分の課題だと感じていましたので、自分の業務効率化を学びたいと考えたからでした。最初は、本当に何も知らないところからのスタートでしたが、実践で自動化が成功したときは本当にうれしかったです」と、笑顔で語ってくれた。  続けて、「入社してから担当の業務をいただき、従事していましたが、データを目視で確認しチェックするという業務では慎重になり時間がかかってしまっていました。でもプログラムに参加し、これまで目検で行っていたチェックを自動化することで週1回90分かかっていた業務が30分で完了するようになり、年間では約50時間の削減につながりました。また毎日行っていた業務では一日あたり40分、年間では9600分(160時間)の削減につながりました。しかも、目検チェックより正確です。今後はさらにPower(パワー) Automate(オートメイト)など、ほかのITスキルも勉強しようという意欲につながっています」と、穏やかな笑顔で話してくれた。  現在の齊藤さんについて、松尾さんは「齊藤さんには現在リーダーの役割をになってもらっていて、自身のスキルアップだけでなくチームへの貢献の意識も高まっています」と話してくれた。 発達障がい者の活躍の道を切り拓きたいという思い  あらためてマイナビパートナーズの魅力について触れたい。  「なぜ貴社は発達障がい者が多いのか」とたずねた。藤本さんの思いはこうだ。  「発達障がいのある方は、自分も他者も障がいに気づきにくいことが多いです。ですから、成人になってから発達障がいがあることがわかり、大きなショックを受ける人も多いようです。特性を理由とした日常生活のなかでのつまづきや失敗は、障がいがわかる以前からくり返し起きていて、自己肯定感が低い人も多いのです。こうした背景でつらい思いを抱えている発達障がいのある人たちも、ショックを乗り越え、障がいを受け入れ、自己対処法を身につけ、適切な配慮も受けながら働けば社会で活躍できることを、一緒に働くなかで知りました」と話す。藤本さんは、「そんな人をもっと増やしたい」という、強く熱い思いが根底にある。  また、藤本さんは次のような考え方を大切にしているという。  「障がいに対して、必要な合理的配慮は必ず行います。一方で、成果を求めることに遠慮はしません。社員が自分のできることや得意なことに全力で挑戦し、スキルアップやステップアップできる環境を整える。これは、思いっきり働く≠アとで一人ひとりの自己肯定感を高め、働くことを通じて社会貢献の実現を目ざしているのです」 マイナビパートナーズのミッション・バリュー  マイナビパートナーズは、2023年にミッション・バリューを作成した。  ミッションは、誰もが活躍するための道を拓き、未来への道標となる。  バリューには、「先駆者意識」、「結果にこだわる」、「自ら考え行動する」、「アンコンシャスバイアスの自覚」、「感謝と敬意」の五つを掲げた。  この先駆者≠ニいう言葉には、障がいのある社員からも「自らそうなりたい」という共感の声が多かったという。  さまざまな苦労をした経験を抱えながらも、これから自分たちは先駆者≠ニして「堂々と未来に向かって歩んでいくんだ」という決意を表した言葉となっているように感じた。  このミッション・バリューを全社員に周知するための動画やポスターは、先に触れた一つめの動画制作プログラムを卒業した社員が担当したという。  動画を視聴させていただいたが、非常にメッセージが伝わりやすく、クオリティーの高いものだと感じた。 さいごに  マイナビパートナーズを取材し、先駆者としてチャレンジングな意思決定をし、障がいのある方の能力開発に愚直に取り組んでいることがよくわかった。  一見厳しいようにも見えるが、その根っこには一人ひとりに活躍してほしいと願う愛があるのだ。  発達障がいのある方が、自信を持って活躍することがあたり前の社会を、堂々と歩める道を、藤本さんは切り拓いてくれている。先駆者として歩んでくれている。その切り拓かれた道を堂々と歩いていこう。  可能性を信じて。 ★本誌では通常「障害」と表記しますが、平岡委員の意向により「障がい」としています ※1 RPA:「Robotic Process Automation」の略語で、作業担当者がパソコン上で行う定型作業や単純操作を、ルールに基づいてソフトウェアにより自動化し作業を代行すること ※2 GAS・Pythonプログラム:GAS(Google Apps Script)とは、GoogleアプリのAPI(アプリケーションプログラミングインターフェース)のこと。Pythonとは、オープンソースのプログラミング言語。「GAS・Pythonプログラム」は、それらのスキルを社員に習得してもらうための学習プログラム 写真のキャプション 平岡(ひらおか)典子(みちこ) 株式会社マイナビパートナーズ神保町オフィス 株式会社マイナビパートナーズ代表取締役社長執行役員の藤本雄さん 東京クリエイティブ1課で課長を務める関理沙さん パートナー雇用開発部で部長を務める藤澤隆也さん 受注増を目ざし制作した、自社の販促動画の1シーン(画像提供:株式会社マイナビパートナーズ) パートナー雇用開発部の松尾明さん パートナー雇用開発部の佐藤桃子さん パートナー雇用開発部で働く齊藤百花さん 齊藤さんは、制作した自動化ツールを駆使して業務にあたっている 【P26-27】 省庁だより 令和5年 障害者雇用状況の集計結果A (令和5年6月1日) 厚生労働省 職業安定局 障害者雇用対策課 1 民間企業における雇用状況 ◎産業別の状況(第4表)  産業別にみると、雇用されている障害者の数は、「農、林、漁業」「鉱業、採石業、砂利採取業」「金融業、保険業」以外の全ての業種で前年よりも増加した。  産業別の実雇用率では、「医療、福祉」(3.09%)、「生活関連サービス業、娯楽業」(2.46%)、「電気・ガス・熱供給・水道業」(2.41%)、「運輸業、郵便業」(2.39%)、「農、林、漁業」(2.38%)、「製造業」(2.32%)が法定雇用率を上回っている。 2 国、地方公共団体における在職状況 (1)国の機関(第3表(1))  国の機関(法定雇用率2.6%)に在職している障害者の数は9940.0人、実雇用率は2.92%。国の機関は44機関すべてにおいて法定雇用率を達成している。 (2)都道府県の機関(第3表(1))  都道府県の機関(法定雇用率2.6%)に在職している障害者の数は1万627.5人、実雇用率は2.96%。知事部局は47機関すべてにおいて達成、知事部局以外は116機関中105機関が達成している。 (3)市町村の機関(第3表(1))  市町村の機関(法定雇用率2.6%)に在職している障害者の数は3万5611.5人、実雇用率は2.63%。2460機関中1910機関が達成している。 (4)都道府県等の教育委員会(第3表(2))  都道府県等の教育委員会(法定雇用率2.5%)に在職している障害者の数は1万6999.0人、実雇用率は2.34%(都道府県教育委員会は2.34%、市町村教育委員会は2.35%)。都道府県教育委員会は47機関中31機関が達成、市町村教育委員会は48機関中33機関が達成している。 3 独立行政法人等における雇用状況(第3表(3))  独立行政法人等(法定雇用率2.6%)に雇用されている障害者の数は1万2879.5人、実雇用率は2.76%。独立行政法人等(国立大学法人等を除く)は93法人中80法人が達成、国立大学法人等は86法人中77法人が達成、地方独立行政法人等は190法人中151法人が達成している。 ※本誌では場常西暦で表記していますが、この記事では元号で表記しています ※前号の「令和5年 障害者雇用状況の集計結果@」はこちらからご覧いただけます。 https://www.jeed.go.jp/disability/data/works/book/hiroba_202403/index.html#page=28 【第3表】 国、地方公共団体等における在職状況 (1)国、地方公共団体の機関(法定雇用率2.6%) [ ]内は、実人員。以下同じ。 @法定雇用障害者数の算定の基礎となる職員数 A障害者の数 B実雇用率 C法定雇用率達成機関の数/機関数 D達成割合 国の機関 340,707.5人 (340,474.5人) 9,940.0人 [8,388人] (9,703.0人) 2.92% (2.85%) 44/44 (44/44) 100.0% (100.0%) 都道府県の機関 359,503.0人 (363,592.0人) 10,627.5人 [8,319人] (10,409.0人) 2.96% (2.86%) 152/163 (153/164) 93.3% (93.3%) 市町村の機関 1,353,753.5人 (1,341,687.5人) 35,611.5人 [27,896人] (34,535.5人) 2.63% (2.57%) 1,910/2,460 (1,846/2,462) 77.6% (75.0%) (2)都道府県等の教育委員会(法定雇用率2.5%) @法定雇用障害者数の算定の基礎となる職員数 A障害者の数 B実雇用率 C法定雇用率達成機関の数/機関数 D達成割合 都道府県等教育委員会 726,615.5人 (726,284.5人) 16,999.0人 [13,317人] (16,501.0人) 2.34% (2.27%) 64/95 (58/95) 67.4% (61.1%) (3)独立行政法人等における雇用状況(法定雇用率2.6%) @法定雇用障害者数の算定の基礎となる労働者数 A障害者の数 B実雇用率 C法定雇用率達成機関の数/機関数 D達成割合 独立行政法人等 467,326.5人 (455,960.5人) 12,879.5人 [10,125人] (12,420.5人) 2.76% (2.72%) 308/369 (292/365) 83.5% (80.0%) 注1 (1)及び(2)の各表の@欄の「法定雇用障害者数の算定の基礎となる職員数」とは、職員総数から除外職員数及び除外率相当職員数(旧除外職員が職員総数に占める割合を元に設定した除外率を乗じて得た数)を除いた職員数である。 注2 (3)の表の@欄の「法定雇用障害者数の算定の基礎となる労働者数」とは、常用労働者総数から除外率相当数(身体障害者、知的障害者及び精神障害者が就業することが困難であると認められる職種が相当の割合を占める業種について定められた率を乗じて得た数)を除いた労働者数である。 注3 各表のA欄の「障害者の数」とは、身体障害者、知的障害者及び精神障害者の計であり、短時間労働者以外の重度身体障害者及び重度知的障害者については法律上、1人を2人に相当するものとしてダブルカウントを行い、重度以外の身体障害者及び知的障害者並びに精神障害者である短時間労働者については法律上、1人を0.5人に相当するものとして0.5カウントとしている。  ただし、精神障害者である短時間労働者については、1人を1カウントしている。また、令和4年においては、精神障害者である短時間労働者であって、次のいずれかに該当する者についてのみ、1人を1カウントとしていた。 @ 令和元年6月2日以降に採用された者であること A 令和元年6月2日より前に採用された者で、同日以後に精神障害者保健福祉手帳を取得した者であること 注4 法定雇用率2.5%が適用される機関とは、都道府県の教育委員会及び一定の市町村の教育委員会である。 注5 ( )内は、令和4年6月1日現在の数値である。 注6 「独立行政法人等」とは、障害者の雇用の促進等に関する法律施行令別表第2の第1号から第8号まで、「地方独立行政法人等」とは、同令別表第2の第9号及び第10 号までの法人を指す。 注7 特例承認・特例認定や各機関における法定雇用障害者数の算定の基礎となる労働者数の変化等により機関数は変動する。 【第4表】 民間企業における産業別の雇用状況 区分 @企業数 A法定雇用障害者数の算定の基礎となる労働者数(注1) B障害者の数 A.重度身体障害者及び重度知的障害者(注3) B.重度身体障害者及び重度知的障害者である短時間労働者(注3) C.重度以外の身体障害者、知的障害者及び精神障害者(注3)(注4) D.重度以外の身体障害者及び知的障害者である短時間労働者(注3)(注5) E.計A×2+B+C+D×0.5(注2) F.うち新規雇用分(注6) C実雇用率E÷A×100 D法定雇用率達成企業の数 E法定雇用率達成企業の割合 産業計 企業 108,202 (107,691) 人 27,523,661.0 (27,281,606.5) 人 127,318 (125,433) 人 17,553 (17,969) 人 350,061 (317,201) 人 39,856 (55,844) 人 642,178.0 (613,958.0) 人 63,557.5 (58,855.0) % 2.33 (2.25) 企業 54,239 (52,007) % 50.1 (48.3) 農、林、漁業 410 (411) 43,442.5 (46,600.5) 181 (197) 18 (23) 627 (647) 50 (76) 1,032.0 (1,102.0) 95.0 (95.0) 2.38 (2.36) 245 (234) 59.8 (56.9) 鉱業、採石業、砂利採取業 75 (71) 10,728.0 (10,692.0) 49 (50) 4 (2) 122 (128) 1 (69) 224.5 (264.5) 12.5 (26.5) 2.09 (2.47) 37 (36) 49.3 (50.7) 建設業 4,830 (4,762) 858,432.0 (853,184.5) 4,553 (4,422) 234 (221) 8,520 (8,076) 242 (377) 17,981.0 (17,329.5) 1,382.0 (1,325.0) 2.09 (2.03) 2,468 (2,315) 51.1 (48.6) 製造業 25,535 (25,700) 7,042,740.5 (7,047,383.5) 37,513 (37,430) 1,720 (1,701) 84,800 (80,931) 3,044 (4,118) 163,068.0 (159,551.0) 11,194.0 (10,819.5) 2.32 (2.26) 14,543 (14,219) 57.0 (55.3) 電気・ガス・熱供給・水道業 280 (290) 212,582.5 (216,131.5) 1,296 (1,318) 42 (42) 2,465 (2,400) 29 (61) 5,113.5 (5,108.5) 249.0 (265.0) 2.41 (2.36) 142 (133) 50.7 (45.9) 情報通信業 6,443 (6,307) 1,755,423.0 (1,720,494.5) 7,876 (7,705) 305 (285) 17,242 (15,750) 287 (497) 33,442.5 (31,693.5) 3,851.0 (3,702.5) 1.91 (1.84) 1,926 (1,717) 29.9 (27.2) 運輸業、郵便業 7,521 (7,556) 1,593,487.0 (1,622,161.0) 7,627 (7,683) 835 (886) 21,271 (20,340) 1,566 (2,121) 38,143.0 (37,652.5) 3,031.0 (2,978.5) 2.39 (2.32) 4,242 (4,141) 56.4 (54.8) 卸売業、小売業 16,414 (16,418) 4,332,651.5 (4,322,579.0) 16,284 (15,967) 2,959 (3,087) 55,923 (50,050) 8,277 (11,347) 95,588.5 (90,744.5) 9,474.0 (8,638.5) 2.21 (2.10) 6,654 (6,322) 40.5 (38.5) 金融業、保険業 1,436 (1,446) 1,104,449.5 (1,130,604.0) 6,159 (6,329) 263 (266) 12,532 (12,282) 323 (388) 25,274.5 (25,400.0) 1,934.5 (1,799.0) 2.29 (2.25) 573 (587) 39.9 (40.6) 不動産業、物品賃貸業 2,113 (2,068) 514,089.0 (491,743.5) 2,025 (1,930) 247 (237) 5,568 (4,971) 457 (549) 10,093.5 (9,342.5) 1,168.0 (936.5) 1.96 (1.90) 800 (731) 37.9 (35.3) 学術研究、専門・技術サービス業 3,813 (3,596) 1,330,713.0 (1,262,286.5) 5,853 (5,449) 618 (672) 16,167 (14,449) 1,522 (2,128) 29,252.0 (27,083.0) 3,064.0 (2,958.5) 2.20 (2.15) 1,341 (1,254) 35.2 (34.9) 宿泊業、飲食サービス業 3,151 (3,157) 771,805.5 (768,041.0) 2,689 (2,637) 934 (986) 9,586 (8,518) 2,640 (3,309) 17,218.0 (16,432.5) 1,941.0 (1,641.0) 2.23 (2.14) 1,539 (1,450) 48.8 (45.9) 生活関連サービス業、娯楽業 2,937 (2,979) 486,023.0 (490,435.5) 2,088 (2,159) 508 (479) 6,760 (6,120) 1,038 (1,477) 11,963.0 (11,655.5) 1,207.0 (927.5) 2.46 (2.38) 1,342 (1,293) 45.7 (43.4) 教育、学習支援業 2,381 (2,369) 524,152.5 (521,387.0) 2,129 (2,149) 251 (265) 4,778 (4,466) 368 (515) 9,471.0 (9,286.5) 1,032.5 (994.0) 1.81 (1.78) 875 (859) 36.7 (36.3) 医療、福祉 18,688 (18,525) 3,173,138.5 (3,139,350.0) 14,231 (13,858) 5,939 (6,049) 56,102 (45,802) 14,897 (22,048) 97,951.5 (90,591.0) 13,551.0 (12,473.5) 3.09 (2.89) 11,612 (11,129) 62.1 (60.1) 複合サービス事業 883 (886) 288,991.0 (289,757.5) 1,376 (1,350) 162 (183) 3,372 (3,081) 321 (410) 6,446.5 (6,169.0) 495.5 (408.0) 2.23 (2.13) 413 (372) 46.8 (42.0) サービス業 11,292 (11,150) 3,480,812.0 (3,348,775.0) 15,389 (14,800) 2,514 (2,585) 44,226 (39,190) 4,794 (6,354) 79,915.0 (74,552.0) 9,875.5 (8,866.5) 2.30 (2.23) 5,487 (5,215) 48.6 (46.8) 注 前号掲載(※)の第1表と同じ 【P28-29】 研究開発レポート 第31回 職業リハビリテーション研究・実践発表会Part1 特別講演 「アフターコロナの障がい者雇用〜障がい者雇用の質向上に向けて〜」 トヨタループス株式会社代表取締役社長 有村秀一氏  当機構(JEED)では、毎年、職業リハビリテーションに関する研究成果を周知するとともに、参加者相互の意見交換、経験交流を生み出すための機会として、「職業リハビリテーション研究・実践発表会」を開催しています。第31回となる2023(令和5)年度は、「会場参加」と、会場での発表内容などをリアルタイムで視聴できる「ライブ配信」を組み合わせた「ハイブリッド方式」で実施するとともに、新型コロナウイルス感染症の流行により中止していた「ポスター発表」を4年ぶりに再開しました。また、その内容を広く発信するために、2022年度に引き続き、障害者職業総合センター(NIVR)ホームページへの動画掲載も行っています。ここでは、トヨタループス株式会社代表取締役社長の有村(ありむら)秀一(しゅういち)氏による特別講演「アフターコロナの障がい者雇用〜障がい者雇用の質向上に向けて〜」をダイジェストでご紹介します。 新型コロナウイルス感染症の影響により既存の業務が激減  私どもトヨタループス株式会社は、2008(平成20)年に設立されたトヨタ自動車株式会社(以下、「トヨタ自動車」)の特例子会社です。トヨタ自動車の本社や工場を含む愛知県内(10拠点)と、東京都内(3拠点)の合計13拠点で、トヨタ自動車から受託したさまざまな業務を行っています。従業員545人のうち、障害のある社員は429人(知的障害168人、身体障害128人、精神障害133人)で(※)、印刷・製本業務、郵便物の配布業務、清掃、マッサージなどの現場に赴いて行う、いわゆる「現業」を中心にサービスを提供しています。  新型コロナウイルスの感染拡大により、当社は大きく二つの打撃を受けました。一つめは、親会社であるトヨタ自動車の経営悪化による受託費の減少です。幸いにもこの状況は一時的なものでしたが、二つめの打撃は、その後も長く続くことが懸念されました。それは「ホワイトカラーの働き方改革」の加速です。在宅勤務やペーパーレス化が急速に拡大することで、当社の主力であったオフィス勤務者の仕事をサポートする業務が激減してしまったのです。 安定的な受注確保のために工場での生産業務に参画  危機的な状況を乗り切るための取組みとして進めたのが、紙文書のPDF化などの「在宅勤務をサポートする業務」や「自動車の生産現場での物づくり」などの新たな業務への進出です。特に生産現場への進出は、トヨタの求める高い作業品質の確保や作業者の安全の確保などが課題となり、これまでは進出を断念していた業務でしたが、今後の安定的な成長を求めチャレンジすることを決めました。  生産工程への参画は、まずは「順建て」と呼ばれる作業から取り組むことにしました。順建てとは「工場の生産ラインで組立ての作業をしやすいように、部品工場から届いた部品の梱包を外して整列させる準備作業」をさします。この作業を受託することで、ときには、当社の社員が部品の不良を見つけて報告することなどもあり、まじめな仕事ぶりが工場で働く人たちにも認知されて当社について知っていただく機会になりました。同じように「部品のピッキング作業」や「ボルト検品作業」などにも業務を拡大していきました。 トヨタ式「カイゼン」で障害者の働きやすい環境を整備  障害のある人も操作手順を間違えないよう、作業ラインにはさまざまなトヨタ式「カイゼン」が施され、働きやすい環境を提供していただきました。例えば、「次に作業する内容をランプで知らせる装置」をラインの担当者が自作し、間違いを起こさずに、安全に作業ができるように工夫をしてくれました。このような工夫を実施することは、生産現場の安全性をより高めることにつながります。また、高齢者や女性などにとっても働きやすい環境につながり、将来の人員不足にも希望が持てる展開となりました。  生産現場での業務を確実に行ったことで信頼が高まり、補給部品センター(トヨタ自動車大口部品センター)と呼ばれる物流拠点での業務にも進出することができました。補給部品センターでは、車のバンパーやヘッドランプなどのパーツ、ボルトやワッシャーなどの小物部品など、およそ35万の部品を管理しており、部品の注文が入るとすぐに出荷できる体制を整えています。当社の社員は、出荷のために小物部品を梱包する作業などに従事しています。ここでも、「10個単位や100個単位の部品を数えることなく取り分ける治具」を利用するなどして、確実な作業を行い、大きな戦力となっています。 「障害者だから」できる業務でモチベーションの向上と持続的な発展へ  さらに、車両の「開発や実験」への協力などの新たな取組みも開始しています。例えば、車いす向けの福祉車両の操作性の評価などに当事者として参加し、よりリアルな検証を実現し、製品の性能の向上に寄与しています。この商品評価を実施するようになってから、トヨタの技術部内でも当事者による評価の重要性が認知され、さまざまな商品の評価や企画参画などの依頼をいただけるようになりました。障害特性が強みになる「障害者だからできる」業務であるため、社員のモチベーションアップにもつながっています。  また、トヨタ自動車が運営する総合病院「トヨタ記念病院」における病院業務への取組みも拡大しています。2014年末より病棟の看護補助業務を担当していますが、開始当初は「命を扱う病院での障害者雇用はむずかしい」と反対意見も多く、むずかしい状況がありました。当社から担当者が赴き、業務指導や看護師の理解活動などを地道に行うことで、いまでは安定した業務を実施し、頼られる存在になっています。コロナ禍で病棟勤務がむずかしい状況もあったので、今後は、看護業務以外のさまざまな業務を実施したいとテストトライを進めています。 障害者を受け入れる風土が育った「心のバリアフリー研修」  以前は親会社をまわって「仕事の切り出し」をお願いしていましたが、現在は親会社から「仕事が切り出される」ようになっており、多くの業務依頼をいただいております。それには、親会社の社員を対象に実施している「心のバリアフリー研修」の効果もあると思います。これは、車いすの乗車や知的障害のある社員とのふれあいなどの体験を中心にすえた研修で、企画や当日の運営も障害のある社員が中心になって実施しています。参加者の多くに、障害のある社員を「障害者」としてではなく「トヨタでともに働く仲間」として受け入れる、認識の変化が起こります。  このように、さまざまな工夫を実施することにより、コロナ禍でも、業務や職域を拡大することができました。2024年4月から障害者の法定雇用率が段階的に引き上げられることが決まっていますが、今後は数値だけではなく、働く人たちがモチベーション高く活躍できる仕事のあり方や、それを支える制度やキャリアプランを整えることが求められる時代になると思います。障害者への理解が深まり、障害者を受け入れる風土の醸成が進むことを願っています。 * * *  次号では、「第31回職業リハビリテーション研究・実践発表会」のパネルディスカッションT「情報通信技術の活用の進展を踏まえた障害者雇用のあり方について」、パネルディスカッションU「アセスメントを活用した就労支援の今後のあり方について」をダイジェストでお届けします。 ※2023年6月1日現在 ★右記ホームページにて、特別講演の動画や発表資料等をご覧いただけます。https://www.nivr.jeed.go.jp/vr/31kaisai/kouen.html ◇お問合せ先 研究企画部 企画調整室(TEL:043-297-9067 E-mail:kikakubu@jeed.go.jp) 写真のキャプション 特別講演の様子 有村秀一氏 【P30-31】 ニュースファイル 国の動き 農林水産省 「ノウフク・アワード2023」選定結果を公表  農林水産省は、農福連携の優れた取組み事例を表彰する「ノウフク・アワード2023」の受賞24団体を発表した。応募は198団体。  グランプリは、障害者の工賃向上を目ざして地域の荒廃農地を借り入れ、ノウフクJASの初めての認証事業者として農福連携の販路拡大に貢献した「株式会社ウィズファーム」(長野県)と、飲食店や観光農園の運営、地域ホテルの再生、廃校の活用など多角的に事業展開し、農業や加工業などで40人以上が一般就労に移行した「社会福祉法人青葉仁(あおはに)会」(奈良県)の2団体。  準グランプリには、「人を耕す」部門で「広島県立広島特別支援学校」(広島県)、「地域を耕す」部門で「一般社団法人THE(ザ) CHALLENG(チャレンジ) EDド)」(福岡県)、「未来を耕す」部門で「有限会社あわら農楽ファーム」(福井県)の3団体が選ばれた。  このほか優秀賞には「有限会社F・F磯崎」(宮城県)、「NPO法人ユアフィールドつくば」(茨城県)、「株式会社LSふぁーむ」(岐阜県)、「社会福祉法人まつさか福祉会多機能型事業所八重田ファーム」(三重県)、「株式会社しんやさい」(京都府)、「株式会社おおもり農園」(岡山県)、「社会福祉法人博愛会」(大分県)の7団体が選ばれた。 https://www.maff.go.jp/j/press/nousin/kouryu/240119.html 内閣府 バリアフリー・ユニバーサルデザイン推進功労者表彰  内閣府は、バリアフリー・ユニバーサルデザインの推進について顕著な功績のあった「令和5年度バリアフリー・ユニバーサルデザイン推進功労者表彰」の受賞者を発表した。  このうち内閣総理大臣表彰に選ばれたのは2団体。「社会福祉法人あさがお福祉会Tsuda(ツダ)-Machi(マチ)-Kitchen(キッチン)」(徳島県)は、障害児向け放課後等デイサービスや高齢者デイサービス、地域の人々がだれでも利用できるカフェなどを一つの空間で運営。空間のデザイン性を重視し、だれもが訪れやすい拠点を創出することにより、新たな福祉を実現した。「特定非営利活動法人メディア・アクセス・サポートセンター」(東京都)は、視聴覚に障害のある人にも映画を楽しんでもらえるよう、字幕メガネやスマートフォンの専用アプリで、セリフ、効果音、人物の動作、情景などの映画情報が提供される仕組みの普及に取り組み、映画業界におけるバリアフリーに尽力した。  また、内閣府特命担当大臣表彰優良賞に「株式会社Lean(リーン) on(オン) Me(ミー)」(大阪府)、「公益社団法人鳥取県聴覚障害者協会」(鳥取県)の2団体、内閣府特命担当大臣奨励賞には「千葉県立東金特別支援学校パラスポ推進隊」(千葉県)、「特定非営利活動法人町田ハンディキャブ友の会」(東京都)の2団体が選ばれた。 https://www8.cao.go.jp/souki/barrier-free/r0 5hyoushou/jusyosha.html 地方の動き 群馬 メロン水耕栽培の施設始動  高崎市は、障害のある人が働く場として整備を進めているメロン水耕栽培施設(高崎市)の試験栽培を始めた。作業負担が少なく管理しやすいとされる水耕栽培によって、障害のある人が働きやすく、付加価値の高い農産物を生産しながら賃金向上につなげるねらい。年3回の収穫で年間4500個の出荷を目ざす。  東京都町田市の町田商工会議所と地元企業が開発した、液肥を循環させる「町田式水耕栽培槽」をハウス3棟に導入した。ハウス内を温めるボイラーには、地域の間伐材を活用した「木質バイオマスボイラー」が使われている。施設は就労継続支援B型事業所として開設され、利用者は定員20人を予定。収穫や交配、箱詰め作業などに従事する。2024年秋ごろから運営を開始し、2025年1月の初出荷を見込む。 神奈川 県とフットサルクラブと社会福祉法人が協定  神奈川県は、共生社会の実現に向けた取組みを推進する目的で、「株式会社湘南ベルマーレフットサルクラブ」(足柄上郡大井町)と障害者支援施設などを運営する「社会福祉法人一燈会(いっとうかい)」(中郡二宮町)との三者による連携協定を締結した。  おもな協定内容のうち農福連携の推進に関しては、「スポーツ×福祉×農業」をテーマに行う『ベルファーム』のモデルの普及と推進、県の農福連携マッチング等支援事業で取り組む他地域の事例の販路拡大や6次産業化における協力、障害のある人だけでなくさまざまな課題をかかえる人が参加できる「ユニバーサル農園」のモデル事業の実施を目ざすとしている。  一燈会はこれまで地域の農地を使ってサトイモやタマネギ、ニンジンなどを栽培し販売。2022(令和4)年からは湘南ベルマーレフットサルクラブと連携し、選手と一緒に作業をしたり、選手のサインを同封した商品を販売したりしてきた。 本紹介 『温めれば、何度だってやり直せるチョコレートが変える「働く」と「稼ぐ」の未来』  さまざまな障害や事情のあるショコラティエたちが働く「久遠(くおん)チョコレート」(愛知県)の代表を務める夏目(なつめ)浩次(ひろつぐ)さんが、『温めれば、何度だってやり直せるチョコレートが変える「働く」と「稼ぐ」の未来』(講談社刊)を出版した。  「凸凹ある誰もが活躍し、稼げる社会」を目標に2014(平成26)年、久遠チョコレートを立ち上げた夏目さんが、次々と現れる課題を乗り越えるために奮闘してきた山あり谷ありの道のりをたどりながら、逆境においても「無理だ」ではなく「どうしたらできるか」の逆算思考で組織を成長させ、ビジネスに変えてきた数々のアイデアを紹介している。四六判200ページ、1650円(税込)。 作品大募集! あなたの力作がポスターになる! 令和6年度 「絵画コンテスト働くすがた〜今そして未来〜」 「写真コンテスト職場で輝く障害者〜今その瞬間〜」 募集期間(応募作品受付期間) 令和6年3月1日(金)〜6月17日(月)【締切・消印有効】 児童・生徒をはじめ社会人・一般の方もご応募いただけます。 絵画コンテストの応募は障害のある方が対象です。 写真コンテストの応募は障害の有無を問いません。 多くのみなさまからのご応募をお待ちしています。 詳しくはホームページの募集要項をご覧ください。 JEED 絵画写真 検索 <過去のポスターや入賞作品などもご覧いただけます> 主催:独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED) シンボルキャラクター “ピクチャノサウルス” ミニコラム 第33回 編集委員のひとこと ※今号の「編集委員が行く」(20〜25ページ)は平岡委員が執筆しています。  ご一読ください。 目ざす方向性、ありたい姿を共有し、ともに進んでいこう サントリービバレッジソリューション株式会社人事本部副部長 平岡典子  今回取材した株式会社マイナビパートナーズで、社長の藤本さんは誰もが活躍するための道を拓き、未来への道標となる。≠ニいう目ざす方向性を掲げた。そして、社員一人ひとりに「道を切り拓く先駆者になろう!」と、ありたい姿への期待を伝え、社員はその期待に応えようと努力する姿があった。  発達障がいのある方々の未来のために、だれも歩んでいない、挑戦したことのない道を進んでいく決意と覚悟を感じた。  藤本さんが自ら目ざす姿の先頭に立ち、みんなに「こっちだよ」と指揮しながらも、ときには隣に寄り添い、ときには一番後ろから社員たちを温かく大らかな気持ちで支えている。そんな姿が浮かんだ。  実際に発達障がいのある社員たちが、目の前のさまざまな課題や困難を乗り越え、自らの成長を実感しているのだ。自分の居場所を見つけ輝いている。私は取材を通して、従業員の方の満ち足りた表情に出会い、だれかの役に立つ喜びを実感し成長している姿を知った。  自分たちの会社や組織をどうしていきたいのか。一緒に働く障がいのある方たちにどうなってほしいのか。「目ざす方向性」、「ありたい姿」を明確に掲げ、共有したうえで、ともに歩むことが非常に大切であると、あらためて感じた。  そうすることで、人が育ち、組織が育つ。  いま、みなさんのいる組織の目ざす方向性はどんな姿ですか?かかわっている障がいのある方にどうなってほしいですか?  私には16歳になるダウン症の息子がいる。彼が生まれたときに思った。彼が大人になっても笑顔で過ごせる社会にする。生まれてきた意味をまっとうできる社会にする。彼に対しては周囲に愛される人になってほしいと願い、伝え続けている。  そのために、障がいのある人もない人も交りあって互いの強みを認め合いながら、一緒に社会をつくっていく必要性を感じた。だれもが堂々と活き活き生きる社会づくりは道半ば。できることから一歩ずつ歩み続けると私は心を新たにした。 ★本誌では通常「障害」と表記しますが、平岡委員の意向により「障がい」としています 【P32】 掲示板 JEEDメールマガジン 登録受付中!  独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)では、JEEDが全国で実施する高齢者や障害者の雇用支援、従業員の人材育成(職業能力開発)などの情報を、毎月月末に配信しています。 雇用管理や人材育成の「いま」・「これから」を考える人事労務担当者のみなさま、必読! 高齢 定年延長や廃止・再雇用 障害 障害のある従業員の新規・継続雇用 求職 ものづくり技能開発・向上の手段 みなさまの「どうする?」に応えるヒント、見つかります! JEED メルマガ で 検索 ※カメラで読み取ったリンク先がhttps://www.jeed.go.jp/general/merumaga/index.htmlであることを確認のうえアクセスしてください。 読者アンケートにご協力をお願いします! 回答はこちらから 公式X(旧Twitter)はこちら! @JEED_hiroba 最新号発行のお知らせやコーナー紹介などをお届けします。 次号予告 ●この人を訪ねて  NPO法人ピープルデザイン研究所代表の田中真宏さんに、障害者就労のきっかけづくりとなるサッカースタジアムにおける「就労体験プロジェクト」などについて、お話をうかがいます。 ●職場ルポ  資源卸売事業の株式会社こんの(福島県)を訪問。特別支援学校の実習の積極的な受け入れや、働きやすい職場環境を整える工夫などを取材しました。 ●グラビア  カット野菜や惣菜などの製造、卸売りを手がける食品製造業の株式会社クリハラ(群馬県)を取材。活躍する従業員と、職場定着への取組みを紹介します。 ●編集委員が行く  八重田淳編集委員が、EY Japan株式会社(東京都)を訪問。障害のある人材の雇用や就労状況の改善を目ざし、専門的なスキルとキャリアを習得する取組みについて取材します。 『働く広場』読者のみなさまへ  2024年5月号は、大型連休の関係から、お手元への到着が通常よりも数日遅れることが見込まれます。ご不便をおかけしますが、ご理解のほどよろしくお願いいたします。ご不明の点は編集部(企画部情報公開広報課、電話:043−213−6526)までおたずねください。 本誌購入方法 定期購読のほか、最新号やバックナンバーのご購入は、下記へお申し込みください。 1冊からのご購入も受けつけています。 ◆インターネットでのお申し込み 富士山マガジンサービス 検索 ◆お電話、FAXでのお申し込み 株式会社広済堂ネクストまでご連絡ください。 TEL 03-5484-8821 FAX 03-5484-8822 あなたの原稿をお待ちしています ■声−−障害者雇用にかかわるお考えやご意見、行事やできごとなどを500字以内で編集部(企画部情報公開広報課)まで。 ●発行−−独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED) 発行人−−企画部長 境 伸栄 編集人−−企画部次長 中上英二 〒261−8558 千葉県千葉市美浜区若葉3−1−2 電話 043−213−6526(企画部情報公開広報課) ホームページ https://www.jeed.go.jp メールアドレス hiroba@jeed.go.jp ●発売所−−株式会社広済堂ネクスト 〒105−8318 東京都港区芝浦1−2−3 シーバンスS館13階 電話 03−5484−8821 FAX 03−5484−8822 4月号 定価141円(本体129円+税)送料別 令和6年3月25日発行 無断転載を禁ずる ・本誌に掲載した論文等で意見にわたる部分は、それぞれ筆者の個人的見解であることをお断りします。また、本誌では「障害」という表記を基本としていますが、執筆者・取材先の方針などから、ほかの表記とすることがあります。 編集委員 (五十音順) 株式会社FVP 代表取締役 大塚由紀子 トヨタループス株式会社 管理部次長 金井渉 NPO法人大阪精神障害者就労支援ネットワーク 副理事・統括施設長 金塚たかし 弘前大学教職大学院 教授 菊地一文 岡山障害者文化芸術協会 代表理事 阪本文雄 武庫川女子大学 准教授 諏訪田克彦 サントリービバレッジソリューション株式会社 人事本部 副部長 平岡典子 神奈川県立保健福祉大学 名誉教授 松爲信雄 有限会社まるみ 取締役社長 三鴨岐子 筑波大学大学院 教授 八重田淳 常磐大学 准教授 若林功 【P33】 2024年度(令和6年度) 職業リハビリテーションに関する研修のご案内  当機構(JEED)では、医療・福祉などの関係機関で障害のある方の就業支援を担当する方を対象に、職業リハビリテーションに関する知識や技術の習得と資質の向上を図るための研修を実施しています。受講料は無料です。  各研修の詳細・お申込み先などは、JEEDホームページ(https://www.jeed.go.jp)のサイト内検索(各研修名で検索)でご確認ください。みなさまの受講を心よりお待ちしています。 研修 日程 場所 就業支援基礎研修 【対象】就業支援を担当する方 【内容】就業支援のプロセス、障害特性と職業的課題、障害者雇用施策、ケーススタディなど 各地域障害者職業センターのホームページなどで別途ご案内いたします。 ◯◯障害者職業センター 検索 ※◯◯には都道府県名を入力 各地域障害者職業センターなど 就業支援実践研修 精神障害・発達障害・高次脳機能障害コース 【対象】就業支援の実務経験2年以上の方 【内容】障害別のアセスメント、支援ツールの活用方法、ケーススタディなど 令和6年10月以降に全国14エリアで開催します。 就業支援実践研修のホームページなどで別途ご案内いたします。 全国14エリアの地域障害者職業センターなど 就業支援スキル向上研修 精神障害・発達障害・高次脳機能障害コース 【対象】就業支援の実務経験3年以上の方 【内容】障害別の支援技法、職リハに関する最新情報、ケーススタディなど 令和7年1月29日(水)〜1月31日(金) 〔オンライン形式〕 就業支援課題別セミナー 【対象】障害者の就労や雇用に関する支援を担当している方 【内容】令和6年度のテーマは「AI等の技術進展に伴う障害者の職域変化と就業支援」 令和6年11月8日(金) 〔オンライン形式〕 職場適応援助者(ジョブコーチ)に関する研修 職場適応援助者養成研修 【対象】訪問型・企業在籍型職場適応援助者(ジョブコーチ)としての援助を行う予定の方など 【内容】ジョブコーチの役割、作業指導の実際、ケースから学ぶジョブコーチ支援の実際、職場における雇用管理の実際、支援記録の作成など ※集合研修4日+地域障害者職業センターでの実技研修4日程度をすべて受講する必要があります 地域区分 集合研修(日程、開催場所など) 実技研修 東日本:北海道、東北、関東甲信越、静岡、富山 西日本:東海(静岡を除く)、北陸(富山を除く)、近畿、中国、四国、九州、沖縄 4月期 ※受付終了 東日本対象 集合形式 令和6年4月23日(火)〜4月26日(金) 千葉県千葉市 集合研修終了後に、各地域障害者職業センターが実施。 西日本対象 大阪府大阪市 6月期 東日本対象 集合形式 令和6年6月18日(火)〜6月21日(金) 千葉県千葉市 7月期 西日本対象 集合形式 令和6年7月2日(火)〜7月5日(金) 大阪府大阪市 8月期 オンライン形式と集合形式の両方の受講が必須 東日本対象 オンライン形式 令和6年8月22日(木)〜8月23日(金) 西日本対象 東日本対象 集合形式 令和6年8月29日(木)〜8月30日(金) 千葉県千葉市 西日本対象 集合形式 令和6年9月4日(水)〜9月5日(木) 大阪府大阪市 10月期 全国対象 集合形式 令和6年10月22日(火)〜10月25日(金) 千葉県千葉市 12月期 オンライン形式と集合形式の両方の受講が必須 東日本対象 オンライン形式 令和6年12月12日(木)〜12月13日(金) 西日本対象 東日本対象 集合形式 令和6年12月19日(木)〜12月20日(金) 千葉県千葉市 西日本対象 大阪府大阪市 2月期 オンライン形式と集合形式の両方の受講が必須 全国対象 オンライン形式 令和7年2月13日(木)〜2月14日(金) 集合形式 令和7年2月20日(木)〜2月21日(金) 千葉県千葉市 職場適応援助者支援スキル向上研修 【対象】ジョブコーチとして1年以上の実務経験のある訪問型・企業在籍型職場適応援助者(ジョブコーチ)の方 【内容】精神・発達障害者のアセスメントや支援方法、アンガーコントロール支援、意見交換、ケーススタディなど 第1回 全国対象 集合形式 令和6年5月28日(火)〜5月31日(金) 千葉県千葉市 第2回 全国対象 集合形式 令和6年10月1日(火)〜10月4日(金) 大阪府大阪市 第3回 全国対象 オンライン形式 令和7年1月21日(火)〜1月24日(金) 各種研修の詳細はこちら https://www.jeed.go.jp/disability/supporter/supporter04.html <お問合せ先> 職業リハビリテーション部 人材育成企画課 TEL:043-297-9095 E-mail:stgrp@jeed.go.jp 【裏表紙】 独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED) Japan Organization for Employment of the Elderly, Persons withD isabilities and Job Seekers 障害者雇用納付金の納付はカンタンベンリなペイジーで 時間を気にせず利用可能! ※金融機関によってご利用できない時間帯がございますので各金融機関にご確認ください。 手数料無料! \0 2社に1社の事業主の皆様にご利用頂いております! ペイジー(Pay-easy)とは? 障害者雇用納付金をはじめ、国庫金(国税や社会保険料等)、地方税、公共料金、携帯電話料金、ネットショッピング代金など、社会や暮らしの中での様々な支払い手続がインターネットバンキング等を通じて簡単に行うことができる、国内のほぼ全ての金融機関が共同で設立した日本マルチペイメントネットワーク運営機構が運営する電子決済サービスです。 4月号 令和6年3月25日発行 通巻558号 毎月1回25日発行 定価141円(本体129円+税)