【表紙】 令和6年4月25日発行・毎月1回25日発行・通巻第559号 ISSN 0386-0159 障害者と雇用 2024/5 No.559 職場ルポ リサイクルを支える現場、安心して働ける環境に 株式会社こんの(福島県) グラビア 安心安全な食材を店舗へ 株式会社クリハラ(群馬県) 編集委員が行く DE&I専門職から見た障害者雇用のあり方 EY Japan株式会社(東京都) この人を訪ねて ワクワクする場で「就労体験」を NPO法人ピープルデザイン研究所 代表理事 田中真宏さん 「夢見るイラストレーター」静岡県・松井(まつい)未緒(みお)さん 独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED) Japan Organization for Employment of the Elderly, Persons withD isabilities and Job Seekers 5月号 【前頁】 心のアート もう一人の自分 有里(ゆり) (一般社団法人アートスペースからふる) 素材:和紙、墨、その他/サイズ:縦110cm×横70cm×奥行65cm  2019(令和元)年制作。「鳥取県バリアフリー美術館」収蔵作品。  自分の体で型をとり等身大の張り子を制作。その上に、自身の言葉を書き綴った和紙を張りつけて制作している。 (文:一般社団法人アートスペースからふる 妹尾(せのお)恵依子(えいこ)) 有里(ゆり)  2005(平成17)年からアート活動を始める。彼女の制作は、まず自分のなかにある言葉が「降りてくる」まで粘り強く待つ。それを漢字、かな、アルファベットなどを駆使して書き上げる。その言葉はとてもポジティブで、人を勇気づける。 【もくじ】 障害者と雇用 目次 2024年5月号 NO.559 「働く広場」は、障害者雇用の啓発・広報を目的として、ルポルタージュやグラビアなど写真を多く用いて、障害者雇用の現場とその魅力をわかりやすくお伝えします。 心のアート 前頁 もう一人の自分 作者:有里(一般社団法人アートスペースからふる) この人を訪ねて 2 ワクワクする場で「就労体験」を NPO法人ピープルデザイン研究所 代表理事 田中真宏さん 職場ルポ 4 リサイクルを支える現場、安心して働ける環境に 株式会社こんの(福島県) 文:豊浦美紀/写真:官野 貴 クローズアップ 10 障害のある人とスポーツ(第4回) 〜肢体不自由とスポーツ、視覚障害とスポーツ〜 JEEDインフォメーション 12 国立職業リハビリテーションセンター 国立吉備高原職業リハビリテーションセンター 訓練生募集のお知らせ/令和6年度「地方アビリンピック」開催地一覧/作品募集 令和6年度 絵画コンテスト 働くすがた 〜今そして未来〜・写真コンテスト 職場で輝く障害者 〜今その瞬間〜 グラビア 15 安心安全な食材を店舗へ 株式会社クリハラ(群馬県) 写真/文:官野 貴 エッセイ 19 印象深い海外の視覚障害者 第4回 アルド・グラッシーニ(イタリア) 日本点字図書館 会長 田中徹二 編集委員が行く 20 DE&I専門職から見た障害者雇用のあり方 EY Japan株式会社(東京都) 編集委員 八重田淳 省庁だより 26 令和6年度 予算の概要 (障害者雇用施策関係部分の抜粋版) 厚生労働省 職業安定局 研究開発レポート 28 第31回 職業リハビリテーション研究・実践発表会 Part2 パネルディスカッション T「情報通信技術の活用の進展を踏まえた障害者雇用のあり方について」 U「アセスメントを活用した就労支援の今後のあり方について」 ニュースファイル 30 編集委員のひとこと 31 掲示板・次号予告 32 令和6年4月1日改正分 障害者雇用納付金関係助成金等のおもな変更点について 表紙絵の説明 「イラストレーターになりたいと思っていたので、題材に選びました。絵を描くことが好きなので、それを仕事にして、楽しく働けたらいいなと思いながら描きました。グラデーションと構図を工夫しました。背景の本棚がうまく描けたと思います」 (令和5年度 障害者雇用支援月間絵画コンテスト 小学校の部 高齢・障害・求職者雇用支援機構理事長奨励賞) ◎本誌掲載記事はホームページでもご覧いただけます。 (https://www.jeed.go.jp/disability/data/works/index.html) 【P2-3】 この人を訪ねて ワクワクする場で「就労体験」を NPO法人ピープルデザイン研究所 代表理事 田中真宏さん たなか まさひろ 1978(昭和53)年、東京都生まれ。文化服装学院卒業後、スノーボードインストラクター、アパレルの販売・企画・デザイナーを経て、2009(平成21)年にNPO創設者の須藤シンジ氏が代表を務めるネクスタイド・エヴォリューションに入社。2012年、NPO法人ピープルデザイン研究所設立とともに運営メンバーに。ディレクターとして「超福祉展」などのイベントや、「障害者の就労体験プロジェクト」などの企画・ディレクションから運営までをになう。2021(令和3)年4月より代表理事に就任。 「ピープルデザイン」とは ――まず、NPO法人ピープルデザイン研究所について教えてください。 田中 「NPO法人ピープルデザイン研究所」は、2012(平成24)年に須藤シンジが立ち上げ2021(令和3)年から私が代表を務めています。そもそも須藤は自身の息子さんが障害をもって生まれてきたことをきっかけに、2002年にファッションやデザインを通じて障害者と健常者が混ざり合う社会を創るソーシャルプロジェクト「ネクスタイド・エヴォリューション」を立ち上げ、活動をしていました。このときから私もプロジェクトに参加し活動を続けるなかで、私たちは「心のバリアフリーをクリエイティブに実現する思想や方法」として「ピープルデザイン」を提唱し始めました。そしてネクスタイド・エヴォリューションでの活動をベースに、この考え方を活用して、渋谷発でダイバーシティの街づくり活動を行うNPO法人を立ち上げました。 ――研究所のおもな活動として「就労体験プロジェクト」がありますね。 田中 私たちは「障害者」、「高齢者」、「LGBTQ」、「外国人」、「子育て中の父母」の五つのマイノリティの方たちの社会課題を、「モノづくり」、「コトづくり」、「ヒトづくり」、「シゴトづくり」の4領域で解決しています。現在力を入れて取り組んでいるのが、「障害者」と「シゴトづくり」と「ヒトづくり」をかけ合わせた「就労体験プロジェクト」です。  このプロジェクトがスタートしたのは2012年。創設者の須藤が、当時特別支援学校に通っていた息子さんの将来の仕事の選択肢が少なく「好きなことにかかわる仕事を経験させたい」と考えたことがきっかけです。私たちも学生時代、アルバイトをするときは「やってみたい仕事」を探し、ワクワクしながら働いた経験があると思います。  そこで私たちは、障害のある方たちもワクワクしながら非日常の晴れ舞台で働き「ありがとう」といってもらえる体験ができる場として、スポーツや音楽などのエンターテインメントのイベントに着目しました。仕事内容としては、会場の設営や清掃、チケットもぎり、会場案内などをになっています。運営スタッフとして他者や社会とあたりまえに混ざり合い、一緒に働くことで自然に接する機会を持つことができます。この体験は、福祉事業所などに声をかけて参加者を募り、4時間程度の働く体験で「交通費」として2千円を支給します。  はじめた当初は受入れ候補先を探しても、どこも安全性などの面を不安に思い躊躇(ちゅうちょ)していました。そんななか、男子プロサッカーJリーグの「横浜FC」が受け入れてくださったのです。2012年の記念すべき1回目には、横浜市内から10人の障害のある方が参加しました。これをきっかけに他地域や、他のサッカークラブやスポーツ、音楽イベントへと拡大していきました。 ――就労体験者には、実際にどんな効果がありましたか。 田中 就労体験者には朝礼で、「体調を最優先し、安全を考慮すること」、「4時間のなかでできる目標を一つ決めてチャレンジすること」、「楽しく働くこと」の三つを伝えています。この三つをしっかり伝えることで、体験の質や仕事に対するモチベーションが大きく違ってきます。  参加者のなかには「大きな音が苦手」、「人ごみが苦手」といった方もいますが、会場でパンフレットを配ったり、客席を回ってゴミを回収したりしていくなかで、その苦手なことを克服して、「よい経験になった」、「自信がついた」と最後は笑顔で帰っていきます。これは、おそらくスポーツなどエンターテインメントの会場自体が、非日常を楽しむポジティブなエネルギーで溢れていることが一因ではないかと考えています。  こうして4時間の就労体験を乗り越えた経験が小さな自信となり、自己承認や他者承認につながり、社会へ一歩ふみ出すきっかけになっています。2014年から実施している神奈川県川崎市では、2022年度までに388企画を行い延べ3107人が参加し、そのうち273人の一般就労が実現しています。 全国各地で自由な取組みを ――就労体験プロジェクトは、全国に拡大しているそうですね。 田中 2021年から本格的に全国展開をスタートし、2023年9月までに17地域で、延べ1011人が参加しています。地方の開催では、印象深いエピソードもたくさんあります。  例えば、北海道の就労体験に参加された統合失調症のある60代男性は、学校を卒業後、ずっと病院と就労継続支援B型事業所の往復で、外で働いた経験が一度もなかったそうです。その方は会場で観客にパンフレットを手渡しながら、何度も何度も私に「仕事、楽しいね」といっていました。地域によっては施設外就労の機会がほとんどないところもあると知り、「もっと若いうちにこの体験をしていたら、彼の人生も違うものになっていたかも」と感じました。  また、徳島県では、会話もむずかしい重度障害のある車いすの方が、お母さんと一緒に参加してくれました。その方にはゴミを分別する仕事を任せたのですが、お客さまがゴミを捨てに来るとそばにいるお母さんがその方に声をかけ、その方は手もとのタブレット端末のボタンを押すんです。すると録音されたお母さんの声で「ゴミの分別をよろしくお願いします」と案内が流れます。分別をしてくれたお客さまが、車いすの脇にあるボタンを押すと「分別したよ」と声が流れ、車いすの方がまたボタンを押すと「ありがとう」と声が流れ、お礼を伝えます。会話がむずかしくても、体が動かせなくても、こうしてスタッフの一員として仕事をすることができたのです。終礼の際、その方に2千円の入った封筒を手渡したとき、とてもうれしそうな表情を見せてくれたことがいまでも忘れられません。 ――今後の展開について教えてください。 田中 最近は、就労体験を通じた障害のある方々の地域交流にも取り組んでいます。昨年10月、島根県益田市で開催されたマラソン大会に、川崎市在住の自閉症の方とそのお母さんを招待して、就労体験を実施しました。以前、益田市内の障害のある方々を川崎市のサッカーの試合とロック・フェスティバルの就労体験に招待し「都会で働く貴重な経験ができた」との感想をもらいました。今回は逆に、都会の喧騒に疲れてしまった方を地方に連れて行き、ゆったりとした雰囲気のなかで就労体験を行ったのですが、とても喜んでいただくことができました。  この就労体験プロジェクトは、国や行政の財源に頼らず、企業協賛を獲得して持続可能なモデルをつくっています。そのノウハウを無償で提供して広めていくうちに、さまざまな団体による自主運営も増えてきました。全国の各地域で、地域に根ざした取組みとして、細く長く自走していくのが理想と考えています。  そういえば先日、受入れ先のとあるスポーツクラブから「就労体験を担当しているアルバイト学生の働き方が変わった」とも聞きました。体験者がていねいに仕事をし、一生懸命に働く姿を見て、自分たちの働き方や仕事に取り組む姿勢を見直す機会になっているようです。障害者雇用を検討している企業のみなさんも、ぜひ一度見学に来てください。環境や条件を少し整えることで働ける人たちがたくさんいることを、まずは知ってもらうことが、理解を深める一歩になると思います。 【P4-9】 職場ルポ リサイクルを支える現場、安心して働ける環境に ―株式会社こんの(福島県)― 再生資源物を取り扱う会社では、安全を確保しながら障害のある社員らが安心して働き続けられる職場づくりに取り組んでいる。 (文)豊浦美紀 (写真)官野 貴 取材先データ 株式会社こんの 〒960-8032 福島県福島市陣場町(じんばちょう)2-20 TEL 024-524-2345 FAX 024-524-2040 Keyword:身体障害、知的障害、精神障害、特別支援学校、施設外就労 POINT 1 社長をはじめとする幹部社員らが障害者雇用の理解を深める研修や職場見学に参加 2 歩行者用白線の整備や声のかけ合いなどで安全な環境を目ざす 3 社内SNS「CanDo委員会」で互いを思いやる社風を醸成 再生資源物の卸売  紙類やペットボトルなどの再生資源の回収から卸売までを手がける「株式会社こんの」(以下、「こんの」)は、1957(昭和32)年に設立され、本社を構える福島県をはじめ宮城県や埼玉県、東京都などに八つの営業所を持つ。  同社が障害者雇用に取り組むことを決めたのは、2000(平成12)年から3代目として代表取締役社長を務めている紺野(こんの)道昭(みちあき)さんだった。「経営がうまくいっていなかったとき、ある本に出会って、社員を大切にすることこそ優先すべきであり、そのなかに障害者雇用もあると知りました」とふり返る。  いまでは全社員156人のうち障害のある社員は13人(身体障害1人、知的障害8人、精神障害4人)で、障害者雇用率は9.52%(2024〈令和6〉年1月現在)だという。2021年に福島県内で2番目となる「もにす認定制度」による認定を受け、2023年には当機構(JEED)の障害者雇用優良事業所等表彰における「理事長努力賞」を受賞している。  毎日のように古新聞や段ボール、大量のペットボトルなどが運び込まれる現場で働く人たちを紹介しながら、これまでの取組みや効果について伝えていきたい。 本をきっかけに  紺野さんは大学卒業後、会社員を経て父の経営する「こんの」を手伝うため帰郷したそうだが、「会社は倒産しかかっていました。よい会社にしようと業績を上げることに一生懸命でしたが、なかなかうまくいきませんでした」。そんなとき、書店で偶然目にした本が、元法政大学大学院教授の坂本(さかもと)光司(こうじ)さんの著書『日本でいちばん大切にしたい会社』だったそうだ。  「いまでは有名な日本理化学工業株式会社などの紹介とともに、"社員を大切にする会社は業績も上がる"と書かれていました。当時、業績が上がれば会社もよくなるはずと思い込んでいた私とは真逆の考え方でした」  「こんな話、すべて本当なわけがない」と疑いつつ、2008年に日本理化学工業株式会社の職場見学に行って、納得したという紺野さん。あらためて坂本さんたちがいう「よい会社」の条件の一つに障害者雇用があると知った。「正直それまで気にかけたこともなかったのですが、大事なことなのだと学びました」  ただ、それでも「重機などが動き回る現場で障害者雇用を進めるのはむずかしいかもしれない」としばらく躊躇(ちゅうちょ)していた。そんなとき、宮城県の仙南(せんなん)営業所に特別支援学校から職場実習の受入れ依頼があった。  「実習ぐらいならと1人を受け入れてみたのですが、驚くほど適材適所でした。普通なら慣れてくると手を抜きそうな作業も、その実習生はまじめにずっと取り組んでくれて本当に感心しました」  2011年の春と秋の2回にわたり参加したその実習生は、本人の希望もあり2012年に採用されたそうだ。 各営業所の所長らも研修に参加  仙南営業所の成功事例を機に、ほかの営業所でも受入れを進めることを決めた。現場の理解を広めるために、紺野さんは、まず各営業所の所長や幹部社員らを対象にハローワーク主催のセミナーや、坂本さんたちが立ち上げた「人を大切にする経営学会」の研修などに参加してもらった。その参加者の1人が現在福島営業所長を務める林(はやし)偉大(たけひろ)さんだ。  「だれもが好きでハンディキャップがあるわけじゃない。障害があろうがなかろうがフラットな存在なのだということを、坂本先生の明快な話で、あらためて理解することができました」  2016年、林さんが当時勤めていた札幌営業所でも、初めて知的障害のある人を1人採用したそうだ。  「ふだんは普通に会話もしていたのですが、ふとしたときに、理解に不得手な部分があるとわかりました。その都度、説明のしかたや作業のやり方を工夫していきました」  札幌営業所が残念ながら2020年に閉鎖された際は、取引先の同業者を紹介し、無事に就職できたという。  林さんはその後、福島営業所に来てから障害のある社員を3人採用しているが、「一人ひとり必要な配慮も事情も違いますから、障害者雇用に慣れるということはありません」と話す。 うつ病を経て54歳で入社  さっそく福島営業所の現場も見学した。ここには毎日のように古新聞や古雑誌、段ボールといった紙類やペットボトルなどが各地から運び込まれてくるそうだ。林さんと、本社管理課の課長で障害者職業生活相談員の小林(こばやし)剛(つよし)さんが案内をしてくれた。  日ごろ工場内で作業しているのは5〜6人と少人数のため意思疎通は図りやすいものの、作業は基本各自で行うため、ふとしたことで接触事故などにつながるリスクがあるという。  そこで障害のある人を採用するにあたり「トラックなどが出入りし、重機が動いている場所には、新たに歩行者用の白線をひきました。搬入トラックにつく誘導係の社員が、周囲とこまめに声をかけ合うなどのコミュニケーションも大事ですね」と林さん。  出入り口から奥まった一角では、「紙管剥(む)き作業」が行われていた。新聞印刷工場で使い切れなかった原紙ロールを、機械に取りつけて回転させながら手作業ではいでいく。はぎ取った紙はまとめて圧縮し、リサイクル先の製紙会社に納入するのだそうだ。  1本20kg以上にもなる紙管を機械にセットしていたのは、八巻(やまき)久男(ひさお)さん(61歳)。「1日50本ぐらい処理するので、けっこう重労働です」と笑いながら説明してくれた。  もともと八巻さんは高校卒業後に自動車部品メーカーに勤めていたが、「家庭内の事情もあり、23歳でうつ病を発症し入院しました」という。「無事に復職したものの、処方されていた薬を勝手にやめてしまって27歳のときに再入院し、初めて障害者手帳を取得しました」  34歳で再び入院したときには会社を辞め、しばらく家に引きこもり、51歳で4度目の入院となったそうだ。「この時期が一番つらかったですね」とふり返る。  その後、農業にかかわるも冬には仕事がなくなるため、病院での清掃業務に就いたが、「屋内で1人で作業する働き方が合わず、つい休みがちになってしまった」ことから2年ほどで退職したという。そして、2017年、54歳のときにハローワークの紹介で「こんの」に就職した。  「いまも基本は1人で作業しますが、周囲に話せる仲間がいるのは以前の職場との大きな違いです。機械を触るのも好きなので、それもよかったですね。地球環境を守るリサイクルにたずさわっているのだと思うと、やりがいもあります」  8年目になる八巻さんは、いまも月1回通院しながら、フルタイムで働く。「体力が続くかぎり、働き続けることが目標です」と話してくれた。 「ここにいてもいいと思える」  別の一角では、地元のスーパーなどから回収されてくる大量の使用ずみペットボトルを圧縮する作業が行われていた。大きな袋に入ったペットボトルを、鉄製の箱型機械のなかに投入してからボタン操作で圧縮していく。林さんによると「7袋ほどを少しずつ投入して80〜90kgのブロックが完成します」とのことだ。ペットボトルのリサイクル率は上がっているそうだが、「少しでも新しいプラスチックごみを出さないために、私はマイボトルを持ち歩いています」と林さん。  完成したブロックを機械のなかから転がすように出して、頑丈なテープ状のひもで縛(しば)り、専用のラップで全体を包む。最後はブロックを手で押して保管場所に移動させるまでが一連の作業になる。これを1人で行っていたのが塚野(つかの)由美子(ゆみこ)さん(51歳)。生まれつきの変形性股関節症で、人工股関節を入れている。  2022年、塚野さんは12年ぶりの再就職先として「こんの」に入社した。これまで、食品から衣類、自動車部品などさまざまな製造業の現場で働いてきたが、年齢とともに症状が悪化し、30歳をすぎた頃に人工股関節の手術を受けたそうだ。  その後、結婚を機に仕事を辞め、3人の子育てに専念していた塚野さんだったが、末っ子の手が少し離れたのを機に「家にこもるのが好きな性分ではないので、思い切って就活を始めました」という。  ハローワークから「こんの」を紹介され、翌日には職場見学にも行った。日ごろから家庭で資源ごみを分別してきたが「リサイクルのことをわかっているようでわかっていなかったですね。社会に必要な分野として興味がわきました」とふり返る。  入社時から、おもにペットボトルの圧縮作業を担当している。最初のころ、ブロックを手で押しても動かせず困っていたら、気づいた同僚がやってきて「2人で押せば動くよ」と手伝ってくれたのがうれしかったという。  「昔から、親や周囲の人に『足が悪いのだから』といって何をするのも制限されていたのが嫌でした」という塚野さんは「いまの職場では、だれにも『足が悪いから』といわれないかわりに、困ったことが起きるとすぐに助けてくれます。『自分はここにいてもいいんだな』と思えるのです」  いまでは1人でブロックを押している塚野さんは「体力づくりの一環ですね」と笑う。林さんは「この作業はノルマがあるわけではないので、自分のペースで無理せずやってもらっています」と説明してくれた。  「私にとって仕事は大事なものなんです。仕事のない日はつまらないんですよね。気持ちにハリが出ますし、ご飯もおいしいです」と充実感をにじませる塚野さん。いまは小中学生の子どもの世話もあるため9時〜16時の勤務だが、子どもがもう少し成長したらフルタイム(8時〜17時)で働くことが目標だそうだ。  ちなみにこのペットボトルの圧縮作業は、定期的に近くの就労継続支援B型事業所にも委託している。ほかの営業所も含め計40カ所以上へ施設外就労を依頼しており、紺野さんは「ほかにも雑誌の付録といった異物の分別など、どうしても手作業に頼らざるをえないような細かい作業は、とても助かっています」という。 すばやい選別作業  福島営業所で、もっとも大量に扱われているのが紙類だ。家庭から出る古新聞を束ねたものが、あちこちに山のように積み上げられている。これらを重機のショベルですくって大型機械に投入すると、ビニールの紐や袋などを取り除いた状態でコンベアに流れてくる。  そのコンベアのわきに立って、機械が取り切れなかった異物を選別していたのは、2020年入社の蜂須賀(はちすか)健(たける)さん(29歳)だ。  蜂須賀さんは中学校在学時に療育手帳を取得し、通信制高校を卒業後はJEEDが運営する福島障害者職業センターで職業準備支援を受けたという。そして5年間ほど運送業でピッキング作業に従事していたが、人手不足による残業続きで休みも取れなくなったことから退職を決めたそうだ。  その後、福島市にある県北障害者就業・生活支援センターに通った際、ほかの利用者や家族と一緒に「こんの」の職場見学に参加し、「いいな」と思ったという。対応した林さんは「当時お母さんから、息子さんの片耳が聞こえづらいことについて相談されました。たくさん質問してもらったのでこちらもやりやすかったですね」と話す。小林さんによると、「ほかの営業所も含めて、特別支援学校の新卒生が入社するときには保護者面談などを行い社会人になるためのフォローもしています」とのことだ。  3カ月間のトライアル雇用で選別作業を担当した蜂須賀さんは、「簡単そうだと思っていたのですが、コンベアの動きが速いなかで、いろいろな異物を見つけて取り除かなければならず、瞬発力が必要でした」とふり返る一方、「私はけっこう体が動いてしまうADHD(注意欠如・多動症)の特性があるので、ずっと立ちながら手を動かす作業が向いているとも感じました」という。  入社前には「自己紹介カード」も提出した。そのなかで配慮してほしいこともあげている。@「あれ、これ、それ」という指示はわかりにくいので、具体的に説明してほしい。A左側の耳が聞こえづらいので、声かけのときは右側から。B学習障害もあるため、計算や漢字の書き取りがむずかしい、などだ。  いまではすっかり仕事にも職場にも慣れたという蜂須賀さんは、周囲に「ハッチ」という愛称で呼ばれ、かわいがられる存在だ。今後は重機の運転資格も取得したいと抱負を語る蜂須賀さんを、林さんは「応援するよ」と激励する。一方で「彼について忘れてはいけないのが、安全面の配慮ですね」と力を込める。  「障害の有無にかかわらずヒューマンエラーはありますが、ハンディキャップを背負っていることで大きな事故につながるようなことには、絶対に遭わせたくありません。彼のハンディキャップのことは、慣れてしまうとつい忘れそうになるので、つねに意識することを肝に銘じています。少しでも危ないことがあったら、すぐにみんなで再確認しています」  最後に蜂須賀さんに、ここで働いていてよかったことを聞くと、こう教えてくれた。  「ここでは毎月渡される給与明細書に、社長さんからのメッセージ文書がついてきます。ある日のメッセージに、『ある本に出会ったことがきっかけで障害者雇用を始めました』と書かれていて、『そうだったのか』と思いました。背景や経緯は意外と知らないですよね。あらためて理解のある職場だとわかり、安心できました」  給与明細書につける社長メッセージは2008年に始まったそうだ。毎回いろいろなテーマについて社長の言葉でつづられており、林さんによると「社員の家族にも読まれていて好評です」という。 社内SNSで「感動」を伝え合う  紺野さんの陣頭指揮で始まった障害者雇用だが、採用から定着までの取組みは基本的に各営業所に任されている。組織だった支援体制がないなかでも比較的うまくいっている理由について小林さんは、「ほかの営業所で障害者雇用がうまくいっているのを社内SNSで知って、『だったら自分たちも』と積極的になって自然と取組みが進んでいったようです」と答えてくれた。  その社内SNSというのが、2013年に設けられた「CanDo(感動)委員会」だ。日ごろから、公私にかかわらず、ほかの社員らに伝えたい「よい話」、「感動したエピソード」などを自由に投稿しあう。なかでもすばらしいと思われた話は、社長自ら「感動大賞」として表彰しているそうだ。2021年にはそれまでに投稿された2100件以上のなかから選りすぐりの約100件にコメントなども加えて再編集した小冊子をつくり、社員らに配ったそうだ。  この社内SNSの効果について小林さんはこう話す。  「いろいろな人のエピソードや思いが紹介されていて、同僚の新たな一面も知ることができます。なにより心が温かくなりますね。こういった社内活動が、職場の内外で自然とほかの人を思いやって大切にしようと思える社風の醸成に影響していると思います」  ほかにも社内では、社員同士で感謝を伝えたいときに短いメッセージを書いて手渡す「ココロジーカード」と呼ばれるメッセージカードもあり、今回取材を受けてくれた3人とも小林さんから受け取ったそうだ。 「わが社の魅力は人」  「こんの」では近年、子ども食堂の支援にも力を入れている。「こんの」が福島市内で展開するフランチャイズ和食店の店長からの発案がきっかけとなり、現在も定期的に子ども食堂へお弁当を差し入れているほか、子ども食堂に来る子どもたちが、店舗で一日店員をするイベントも行っているそうだ。  最近ではウクライナから避難してきた人たちにトイレットペーパーを無償提供したり、震災に見舞われた能登地方の子ども食堂に、義援金だけでなくリクエストに応える形で紙製のコップやトレイを送り届けたりしている。  紺野さんは「社員たちからの提案も含め、よいと思ったことはすぐに行動に移します。いつの間にかいろいろなことに取り組んでいますね」と笑って話す。地道に取り組んできた社内活動による、温かい社風が感じ取れる。ちなみに「こんの」は2015年、「第5回『日本でいちばん大切にしたい会社』大賞 審査委員会特別賞」を受賞している。  紺野さんは「いまは『わが社の最大の魅力は人です』と胸を張っていえますし、いいたいですね」としながら、「まだまだ足りない部分もありますが、これからも社員全員が幸せに働き続けられる職場を目ざしていくつもりです」と話してくれた。 写真のキャプション 再生資源の回収や卸売などを手がける「株式会社こんの」 代表取締役社長の紺野道昭さん 株式会社こんの福島営業所 福島営業所長の林偉大さん 本社管理課課長で障害者職業生活相談員の小林剛さん 福島営業所で働く八巻久男さん 福島営業所の場内には歩行者用の白線がひかれている 八巻さんは紙管剥き作業を担当している 福島営業所で働く塚野由美子さん 圧縮されたペットボトルを取り出す塚野さん チームで作業にあたる就労継続支援B型事業所の利用者(写真提供:株式会社こんの) 福島営業所で働く蜂須賀健さん 蜂須賀さんは、ビニール紐などの異物除去を行っていた 社長メッセージは、社員の家族にも好評だ 「CanDo委員会」によせられた約100件のエピソードをまとめた小冊子「CAN DO」 社員同士で感謝を伝える「ココロジーカード」 【P10-11】 クローズアップ 障害のある人とスポーツ 第4回 〜肢体不自由とスポーツ、視覚障害とスポーツ〜  「東京2020パラリンピック競技大会」を契機に注目されているパラスポーツは、障害の種類や程度に応じて用具やルール等も工夫したり、また、障害の有無にかかわらず参加できるものもあります。第4回は肢体不自由のある人と、視覚障害のある人が楽しまれているスポーツについてご紹介します。 肢体不自由とスポーツ  上肢や下肢の切断、脳疾患による麻痺など、肢体不自由のある人が行うパラスポーツは、陸上競技や水泳、スキー、卓球、アーチェリー、各種球技など約30種類あります。いずれも、障害の程度、動かせる部位や可動範囲などに合わせてルールを変更したり、クラス分けをしたり、専用の支援具を使ったりして競技します。現在、多くのスポーツ競技が、肢体不自由の方も競技できるように工夫されつつあります。スポーツ用車いすで競技する「車いすバスケットボール」や「車いすテニス」などもパラアスリートの活躍で注目されるようになり、やってみたいと思う人が増えているようです。  重度の肢体不自由のある人が楽しめる競技としては「ボッチャ」があります。ボッチャは、ジャックボール(目標球)に向けて球を投げたり転がしたり、ほかの球に当てたりして、いかに近づけるかを競います。障害の程度でクラス分けされ、自分で投げられない場合はランプという勾配具を使います。ランプオペレーターに意思を伝えることができれば競技に参加できます。年齢、性別、障害の有無にかかわらず、だれもが競い合えるスポーツとして開発されました。 仲間との出会いがパラスポーツのきっかけ  勤務中の事故で両大腿切断となった金子(かねこ)幹央(みきお)さんは、義足を使用するようになりましたが、切断面が柔らかい状態の期間は義足もなかなかフィットせず、痛くてたいへんだったそうです。「両足を切断した後の2~3カ月は呆然としていました。その後、義肢装具サポートセンター(※)や、東京都障害者総合スポーツセンターなどに通い、リハビリを続けていました。あるとき、一緒にバスケットボールをしていた方からパラアイスホッケーのことを聞き、『東京アイスバーンズ』というチームの練習会に参加してみることにしました。はじめは“スレッジ”という競技用のソリに乗ることもむずかしかったのですが、いまは、紹介してくれた彼とともに、パラアイスホッケーの選手として活動しています」と金子さん。現在、パラアイスホッケー全日本代表強化チームのメンバーにもなり、練習に励んでいます。 パラスポーツは生活を楽しむきっかけ  病気やケガによる中途障害で落ち込んでいた人が、周囲のすすめで練習会などに参加し、それがきっかけで前向きな気持ちを取り戻して生活できるようになる例は多いそうです。肢体不自由の場合、スポーツをして体のさまざまな部分を動かすことで、血行がよくなったり筋力やバランス感覚が鍛えられたりするなど、障害のない部分の運動機能が向上するという効果が着目されていました。  しかし現在では、スポーツをすることは生活全般へのモチベーションアップやコミュニケーションをとることによる仲間づくり、社会参加といった意義があるともされています。また、運動不足の解消による健康増進、ストレス発散といったメリットもあり、これは肢体不自由にかぎらず、ほかの障害にも同じような効果があります。 視覚障害とスポーツ  視覚障害のある人が行うスポーツは、ブラインドマラソンやブラインドサッカーなどがあります。ブラインドマラソンは、ガイドランナーが視覚障害のある人と伴走します。ブラインドサッカーでは、ガイドが声で選手に進む方向を伝えます。そのほか、2人乗りのタンデム自転車競技や、ガイドがサポートしながら滑るブラインドスキーという競技もあり、いずれも視覚障害のある人は、それをサポートするパートナーと組んで競技に参加します。また、競技大会などでは障害の程度によってクラス分けがされています。 特定非営利活動法人日本ブラインドサッカー協会 障害を越えたチームワークづくりを目ざす  ブラインドサッカーは、全盲の選手4人と、視覚障害のない(あるいは弱視の)ゴールキーパーで一つのチームとなり、音の出るボールを使って行う5人制のサッカーです。敵陣のゴール裏に味方のガイドがいて、正確なシュートを打つために、距離や角度、タイミングなどを声で指示します。パラリンピックでは、「ブラインドフットボール」という種目名でアテネ2004パラリンピック競技大会から正式種目(男子のみ)となっています。  日本国内の競技人口は約660人(2023〈令和5〉年5月時点)で、ブラインドサッカーのチームは全国で約30チームを数えます。ブラインドサッカーもほかのスポーツと同様、心身を鍛える効果が期待できるとともに、視覚障害のない選手が競技に加わるため、障害の有無を越えたチームとしての達成感も醍醐味といえます。 初めてスポーツで褒められた  日本ブラインドサッカー協会の職員兼選手の内田(うちだ)佳(けい)さんは、視覚障害があり、高校生のとき友人に誘われて初めてブラインドサッカーを体験しました。怖さよりも「上手にできなかった」という悔しさが大きかったそうです。その悔しい思いをバネにして練習に打ち込み、上達してくると、まわりからプレーを褒められるようになったそうです。「それまでスポーツをして褒められたことがなかったので、とてもうれしかったことを覚えています」と内田さん。  ブラインドサッカーは視覚障害のない人がアイマスクをつけて参加することもできるので、同協会では、体験型ダイバーシティプログラムとして子ども向け体験会や、企業向けのチームビルディング研修なども行っています。同協会広報コミュニケーション室室長の源(みなもと)友紀美(ゆきみ)さんは「“ブラインドサッカーを通じて視覚障がい者と健常者があたり前に混ざり合う社会を実現する”というビジョンのもと、目が見える見えないに関係なく、お互い支え合って生きる社会をつくることを目ざし、広く啓発していきます」と語ってくれました。 ※本誌4月号のクローズアップで紹介しています。 https://www.jeed.go.jp/disability/data/works/book/hiroba_202404/index.html#page=12 取材協力 特定非営利活動法人 日本ブラインドサッカー協会(JBFA) https://www.b-soccer.jp/  2002(平成14)年に「日本視覚障がい者サッカー協会」として発足、2010年に「日本ブラインドサッカー協会」と改称。「スポ育」やワークショップのほか、障害の有無にかかわらず、幅広くブラインドサッカーを体験してもらう活動を行っている。企業向け研修なども手がけており、ブラインドサッカーを通して相互理解を深めるプログラムを実践している。そのほか強化合宿の開催や国際大会への選手派遣など、パラアスリートの発掘・育成においてもさまざまな活動を行っている。 写真のキャプション 東京アイスバーンズ所属の金子幹央さん(写真提供:金子幹央さん) 日本ブラインドサッカー協会職員兼選手の内田佳さん(写真提供:特定非営利活動法人日本ブラインドサッカー協会) 【P12-14】 JEED インフォメーション 〜高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)からのお知らせ〜 国立職業リハビリテーションセンター 国立吉備高原職業リハビリテーションセンター 訓練生募集のお知らせ 〜障害のある方々の就職に必要な職業訓練や職業指導を実施しています〜 入所日など  国立職業リハビリテーションセンター、国立吉備高原職業リハビリテーションセンターでは、年間約10回の入所日を設けています。応募締切日や手続きなどの詳細については、お気軽にお問い合わせください。 ○遠方の方については……  国立吉備高原職業リハビリテーションセンターでは、併設の宿舎が利用できます。国立職業リハビリテーションセンターでは、身体障害、高次脳機能障害のある方、難病の方は、隣接する国立障害者リハビリテーションセンターの宿舎を利用することができます。 お問合せ 国立職業リハビリテーションセンター 埼玉県所沢市並木4-2 職業評価課 TEL:04-2995-1201 https://www.nvrcd.jeed.go.jp 国立吉備高原職業リハビリテーションセンター 岡山県加賀郡吉備中央町吉川7520 職業評価課 TEL:0866-56-9001 https://www.kibireha.jeed.go.jp 募集訓練コース 国立職業リハビリテーションセンター 訓練系 訓練コース メカトロ系 機械CADコース 電子技術・CADコース FAシステムコース 組立・検査コース 建築系 建築CADコース 情報系 DTPコース Webコース ソフトウェア開発コース システム活用コース 視覚障害者情報アクセスコース ビジネス系 会計ビジネスコース OAビジネスコース オフィスワークコース 物流系 物流・資材管理コース 職域開発系 オフィスアシスタントコース 販売・物流ワークコース サービスワークコース 国立吉備高原職業リハビリテーションセンター 訓練系 訓練コース メカトロ系 機械CADコース 電気・電子技術・CADコース 組立・検査コース 製造ワークコース ビジネス情報系 システム設計・管理コース 【視覚障害者対象】ITビジネスコース 会計ビジネスコース OAビジネスコース オフィスワークコース アシスタント系 販売・物流ワークコース サービスワークコース ○訓練の期間は……  1年間が基本です。「システム設計・管理コース」、「ITビジネスコース」(ともに国立吉備高原職業リハビリテーションセンター)のみ2年間です。 事業主のみなさまへ  両センターでは、障害のある方の採用をお考えの事業主と連携し、個々の事業主の方のニーズや訓練生の障害特性などに応じた、特注型のメニューによる職業訓練を行っておりますのでご活用ください。ご利用いただく事業主の方には次のような支援も行っております。 ■障害特性に応じた特別な機器・設備の配備や作業遂行に関する支援方法のアドバイスなど、円滑な受入れに関する支援 ■雇入れ後の職場定着に向けた技術面でのフォローアップとキャリアプランづくりのための支援 詳細については…https://www.jeed.go.jp/disability/person/person07.html ◆令和6年度「地方アビリンピック」開催地一覧◆ 各都道府県における障害者の技能競技大会「地方アビリンピック」が下記の日程で開催される予定です。 アビリンピックマスコットキャラクター アビリス 都道府県 開催日 会場 北海道 10月5日(土) 北海道職業能力開発促進センター 青森 10月下旬〜11月上旬 青森職業能力開発促進センター ほか1カ所(予定) 岩手 7月27日(土) 岩手県立産業技術短期大学校 宮城 7月6日(土) 宮城職業能力開発促進センター 秋田 7月12日(金) 秋田市にぎわい交流館AU 山形 7月4日(木) 山形国際交流プラザ(山形ビッグウイング) 福島 7月6日(土) 福島職業能力開発促進センター 茨城 7月20日(土) 7月21日(日) 茨城県職業人材育成センター 栃木 7月6日(土) 栃木職業能力開発促進センター ほか2カ所(予定) 群馬 7月6日(土) 群馬職業能力開発促進センター 埼玉 7月6日(土) 国立職業リハビリテーションセンター 千葉 11月頃 千葉職業能力開発促進センター(予定) 東京 2月中旬 東京障害者職業能力開発校 ほか1カ所 神奈川 10月5日(土) 10月19日(土) 関東職業能力開発促進センター ほか1カ所 新潟 9月7日(土) 新潟市総合福祉会館ほか1カ所(予定) 富山 7月20日(土) 富山市職業訓練センター ほか1カ所 石川 10月20日(日) 石川職業能力開発促進センター 福井 6月22日(土) 7月6日(土) 福井県産業技術専門学院 ほか1カ所 山梨 10月5日(土)または6日(日) 山梨職業能力開発促進センター 長野 7月20日(土) 7月21日(日) 長野職業能力開発促進センター 岐阜 7月13日(土) ソフトピアジャパンセンター 静岡 6月30日(日) 7月6日(土) 7月13日(土) 静岡市東部勤労者福祉センター 清水テルサ ほか2カ所 愛知 6月29日(土) 中部職業能力開発促進センター ほか3カ所(予定) 三重 6月29日(土) 三重職業能力開発促進センター 滋賀 11月30日(土) 近畿職業能力開発大学校附属 滋賀職業能力開発短期大学校 京都 2月上旬 京都府立京都高等技術専門校 ほか1カ所 大阪 6月22日(土) 7月6日(土) 関西職業能力開発促進センター ほか2カ所 兵庫 6月15日(土) 6月22日(土) 兵庫職業能力開発促進センター 奈良 7月20日(土) 奈良職業能力開発促進センター 和歌山 6月29日(土) 和歌山職業能力開発促進センター 鳥取 6月28日(金) 鳥取県立福祉人材研修センター 島根 7月13日(土) 島根職業能力開発促進センター 岡山 7月6日(土) 7月20日(土) 岡山職業能力開発促進センター 広島 7月上旬広島職業能力開発促進センター ほか※体験会として実施予定 山口 10月19日(土) 山口職業能力開発促進センター 徳島 9月14日(土) 徳島職業能力開発促進センター ほか1カ所 香川 2月頃 未定 愛媛 7月6日(土) 愛媛職業能力開発促進センター 高知 6月29日(土) 7月6日(土) 高知職業能力開発促進センター ほか1カ所 福岡 7月6日(土) 7月13日(土) 福岡職業能力開発促進センター ほか1カ所 佐賀 1月頃 佐賀職業能力開発促進センター 長崎 7月6日(土) 長崎職業能力開発促進センター 熊本 6月22日(土) 6月23日(日) 熊本職業能力開発促進センター 大分 10月12日(土) 大分職業能力開発促進センター 宮崎 7月6日(土) 宮崎職業能力開発促進センター ほか1カ所 鹿児島 7月6日(土) 7月8日(月) 鹿児島職業能力開発促進センター ほか1カ所 沖縄 7月6日(土) 7月20日(土) 沖縄職業能力開発促進センター ほか1カ所(予定) ※2024年4月1日現在 詳細は、ホームページをご覧ください。 地方アビリンピック 検索 アクセスはこちら! ・開催地によっては、開催日や種目ごとに会場が異なります。 ・日程や会場については、変更となる場合があります。 作品募集 応募者全員に記念品をプレゼント! 令和6年度 絵画コンテスト 働くすがた〜今そして未来〜 写真コンテスト 職場で輝く障害者〜今その瞬間〜  毎年9月1日〜30日は、「障害者雇用支援月間」です。国民のみなさまに障害者雇用への理解と関心を深めていただけるよう、障害のある方々を対象に「働くこと」をテーマとする絵画を募集する「絵画コンテスト 働くすがた〜今そして未来〜」と、「障害のある方の仕事にスポットをあて、障害のある方が働いている姿を撮影したもの」をテーマとする写真を募集する「写真コンテスト 職場で輝く障害者〜今その瞬間〜」を実施しています。優秀作品をもとにポスター等を作成し、全国のハローワーク等に掲示します。 絵画コンテスト ★募集作品  働くこと、または仕事に関係のある内容のもの ★応募資格  障害のある方(プロ以外であること) ★応募部門  小学生の部/中学生の部/高校生・一般の部 写真コンテスト ★募集作品  障害のある方の仕事にスポットをあて、障害のある方が働いている姿を撮影したもの ★応募資格  障害の有無は問いません(プロ以外であること) ※部門の別はありません 賞・展示  絵画コンテスト(部門ごと)、写真コンテストで選考を行い、厚生労働大臣賞1点、当機構理事長賞1点、理事長奨励賞数点をそれぞれ選出します。入賞作品は、全国5カ所で開催を予定している展示会において展示します。 6月17日(月) 応募締切(消印有効) 詳しくはホームページの募集要項をご覧ください。 https://www.jeed.go.jp/disability/activity/contest/index.html ★過去のポスターや入賞作品などもご覧いただけます。 JEED 絵画写真 検索 お問合せ先 独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構 障害者雇用開発推進部 雇用開発課 TEL 043-297-9515 Email tkkike@jeed.go.jp シンボルキャラクター“ピクチャノサウルス” (かおはカメラ、つのは絵筆をイメージしています) 【P15-18】 グラビア 安心安全な食材を店舗へ 株式会社クリハラ(群馬県) 取材先データ 株式会社クリハラ 〒370-0134 群馬県伊勢崎市境島村(さかいしまむら)3022番地 TEL 0270-74-9231 FAX 0270-74-9331 写真・文:官野 貴  群馬県伊勢崎(いせさき)市に本社のある株式会社クリハラは、スーパーマーケットなどで調理販売される惣菜向けのカット野菜や調理キットづくりを手がけており、製品は関東地方を中心に出荷されている。同社では、「障害の有無にかかわらず働ける職場であることが大切」という考えのもと、個性や特性を活かした業務配置を心がけ、勤務時間の調整などに柔軟に対応している。現在、10人(身体障害5人、知的障害2人、精神障害3人)の障害のある社員が、製造現場をはじめ、テレワークによる就労などさまざまな部署において、その能力を発揮している。  知的障害のある坂本(さかもと)詩緒里(しおり)さん(20歳)は、特別支援学校在学中の職場実習を経て同社に入社し、製造部門で働いている。実習時、社員が優しく指導してくれたことが入社の決め手となったそうだ。坂本さんの担当は、野菜からヘタや種などの不可食部を取り除く「トリミング」の作業だ。  朝礼を終え、この日最初の作業は、パプリカのトリミング。惣菜の彩りに欠かせない野菜であり、処理する量も多い。坂本さんがトリミングした野菜は、メニューに合わせて多様なサイズに切り分けられ、洗浄、計量や小分け、キット組みなどの工程を経て、店舗へと出荷される。その後、店舗で調理され、おいしい惣菜となり店頭に並ぶ。  坂本さんは、「コミュニケーションに苦手意識がありましたが、社内で積極的に挨拶をするように心がけたところ、苦手意識を克服することができました。私がカットした野菜が使われた惣菜がスーパーに並んでいることを誇らしく思います」と話してくれた。 写真のキャプション 工場への入室前に白衣などについた毛髪やホコリを吸引機で取り除く コンテナに入れたパプリカをトリミング室へ運ぶ。工場内の衛生環境を保つため、原材料の管理や移動には厳しいルールが定められている 冷蔵室で段ボールからコンテナにパプリカを移す パプリカから種やワタなどの不可食部をキレイに取り除く トリミングは製造ラインの上流であり、作業には質とともにスピードも求められる リズミカルな包丁さばきで、指定されたサイズに切り分けていく 春菊の袋詰め作業。ほかの社員がトリミングした春菊の本数を確認しながら袋詰めを行う。傷んだ春菊がないかにも気を配る 工場内では、責任者(右)の指示を受け作業を行う。作業ペースについてのアドバイスも受ける 先輩社員から手ほどきを受け、包丁研ぎのコツをつかんだ 仕事道具である包丁のメンテナンスは自分自身で行う カット野菜や調味料などがキット組みされ、各地の店舗へ出荷される 【P19】 エッセイ 印象深い海外の視覚障害者 第4回 アルド・グラッシーニ(イタリア) 日本点字図書館 会長 田中徹二 田中徹二(たなか てつじ)1934(昭和9)年生まれ。1991(平成3)年、社会福祉法人日本点字図書館館長に就任。1993年、国連アジア太平洋経済社会委員会(ESCAP)の「アジア太平洋障害者の十年」のスタートを機に、アジア盲人図書館協力事業を立ち上げた。マレーシアを起点に、アジア太平洋諸国で点字印刷がないところを対象に、点字印刷技術を指導。2004年からは視覚障害者個人向けに、パソコン技術指導も行っている。2001年4月から2022(令和4)年3月まで日本点字図書館理事長、現在は会長。  アルドはエスペランティストだ。エスペラント語は1887(明治20)年、ポーランドの眼科医、ルドヴィコ・ザメンホフが発表した人工言語である。エスペラント≠ニは、エスペラント語で希望する人≠ニいう意味だ。ラテン語を中心に各国語の特徴を巧みに取り入れ、文法を極端に簡略化したので国際的に普及した。わが国でも、1906年に日本エスペラント協会が設立され、大正時代に愛好者が増えた。視覚障害者の先覚者といわれる、関西学院大学教授だった岩橋(いわはし)武夫(たけお)氏、京都市名誉市民の鳥居(とりい)篤治郎(とくじろう)氏もエスペラント語に取り組んでいた。日本盲人エスペラント協会(以下、「JABE」)は、1923(大正12)年この二人により結成された。  私も興味を持ち、学習の機会を得て、JABEの会員になった。2003(平成15)年、スウェーデンのヨーテボリで世界エスペラント大会が開かれたとき、何人かの仲間と出席した。そのときにアルドと出会った。エスペラント語でたどたどしく質問したところ、ていねいに答えてくれ、会話が成立したことを覚えている。エスペラント語に少し自信がついた私は、以後、世界エスペラント大会や国際盲人エスペラント大会(以下、「LIBE」)に出席するようになった。アルドはイタリア・エスペラント協会の会長でもあったので、国際会議でも大活躍していた。  2006年、世界エスペラント大会とLIBEがイタリアのフィレンツェで同時に開かれたときに、アルド夫妻は世界中のエスペランティストの先頭に立っていた。夫妻はともに全盲だ。  LIBEが会員のために遠足を企画した日、アルド夫妻は視覚障害のみんなを触覚美術館オメロに案内した。1993年にアルド自身が創った美術館である。大きなバスで、アドリア海沿岸のアンコーナに行った。バスのなかでは、妻のダニエラのたくみな話術により、みんなを飽きさせることはなかった。  アルドはボローニャ大学を出たあと、アンコーナの高校で37年間、歴史、哲学を教えた。その間、市議会議員にも3回なったので、市の協力を得て、オメロ美術館を創ったのだ。ミケランジェロなど有名な彫刻を手で触れるようにした縮小コピーをつくり展示した。そのほか現代の彫刻家の実物の彫刻や建造物の模型もたくさんつくり、所蔵している。いま、わが国で盛んにもてはやされているユニバーサル・ミュージアムのきっかけになった美術館といってよい。1999年にはイタリア政府が認め、国立美術館になった。私はオメロ美術館を3度訪れた。コピーといえども、精緻な作品の数々を楽しんだが、毎回、所蔵作品の全部を見ることは到底できなかった。国立美術館になった後は、美術品も増え、学芸員も増えたことはいうまでもない。  一昨年、「手でふれてみる世界」という映画が映画監督でキュレーターの岡野(おかの)晃子(こうこ)さんによってつくられた。岡野さんは長年にわたり美術館運営にたずさわるなか、オメロ美術館の活動に心を動かされてカメラを回したという。この映画では、美術鑑賞におよぼす触覚の偉大な影響をさまざまな事例を通して説いている。この映画は一般に広く公開されていないので、見る機会は少ないかもしれない。しかし、触ることが視覚を上回る感動を呼ぶ可能性があることを多くの人に知ってほしいと思う。  イタリアは精神病院が一つもないことで有名だ。盲学校も1970年代に消えた。障害者にとって、イタリアはインクルーシブな社会なのである。そういうイタリアでも視覚障害者の職業はパッとしない。2007年、世界エスペラント大会が横浜で開催されたとき、アルド夫妻が訪日し、日本点字図書館でアルドに講演してもらった。そのときの話では、彼のような一般学校の教師が三百数十人、国家公務員が数人だった。18歳から65歳の約2万人の就業人口のうち、多いのは電話交換手、マッサージ師だった。同じヨーロッパながら、この連載の第2回で紹介したペドロ・スリータ(※)がいるスペインとは大きく違っている。視覚障害者の職業訓練の成果がなかなかあがらない、ほかのほとんどの国と同じである。 ※第2回「ペドロ・スリータ(スペイン)」はJEEDホームページからご覧いただけます。 https://www.jeed.go.jp/disability/data/works/book/hiroba_202403/index.html#page=21 【P20-25】 編集委員が行く DE&I専門職から見た障害者雇用のあり方 EY Japan株式会社(東京都) 筑波大学大学院 教授 八重田 淳 (写真提供:EY Japan株式会社) 取材先データ EY Japan株式会社 〒100-0006 東京都千代田区有楽町1-1-2 東京ミッドタウン日比谷 日比谷三井タワー URL https://www.ey.com/ja_jp/diversityinclusiveness/diversity-inclusivenessjapan 八重田(やえだ)淳(じゅん) 編集委員から  三つの英単語の頭文字で構成されるDE&Iは、理念的には大体イメージできるが、リハビリテーションと同様に、多義的な概念である。Diversity, Equality, Inclusionそれぞれの単語の概念自体が大きく、三つの概念をまとめて表現されているわけだが、その分、焦点がぼやけてしまう。そこで、障害者雇用の推進において、特例子会社を持たない企業では実際にどのようなDE&Iの取組みがなされているのかという実践例をご紹介したい。 写真:官野 貴 Keyword:発達障害、DE&I(Diversity, Equity & Inclusion)、リモートワーク、インターンシップ POINT 1 ダイバーシティ(多様性) 2 エクイティ(公平性) 3 インクルーシブネス(包摂性) 1.はじめに  企業に対して会計監査や税務、コンサルティングサービスを提供する世界4大ファーム(※1)の一つであるEY(イーワイ)(2018〈平成30〉年にErnst & Young(アーンスト・アンド・ヤング)から名称変更)の日本支部EY(イーワイ)Japan(ジャパン)グループ(以下、「EY Japan」)には、障害のある従業員が2023(令和5)年度で190人以上いる。今後の法定雇用率の引上げにともない、近い将来には300人以上の障害者の雇用を見込んでいる。EY Japanでは、公認会計士や税理士の資格を有する発達障害や精神障害のある従業員も含め、同社のDE&I(ダイバーシティ、エクイティ&インクルーシブネス)の理念のもとに、包摂的な職場環境の整備を推進している。  今回、お話をうかがった梅田(うめだ)惠(めぐみ)氏は、EY JapanのDE&Iディレクターである。ダイバーシティ&インクルージョン領域の草分け的な存在のお一人であり、前職として日本アイ・ビー・エム株式会社(以下、「日本IBM」)のD&I推進担当部長として活躍されていた。現在は、筑波大学ヒューマンエンパワーメント推進局(BHE(※2))の教授を兼務されており、ダイバーシティ関連の授業も複数担当されている。東京都千代田区にあるEY Japanで働く従業員全員が障害の有無にかかわらず基本的にリモートワークということもあり、今回の「編集委員が行く」では、現地取材ではなくオンライン取材とさせていただき、障害のある学生の高等教育や障害者雇用についてDE&Iの視点からお話をうかがった。 2.DE&I専門職とは? 八重田 現在EY JapanのDE&Iディレクターとして活躍されている梅田さんですが、どのような経緯で障害者雇用の領域に進まれたのですか? 梅田 2007年に日本IBMでダイバーシティ推進の責任者になったことが始まりです。日本人で5人目の日本IBMフェローになった全盲の研究員、浅川(あさかわ)智恵子(ちえこ)さん(現日本科学未来館館長)との出会いが大きかったと思います。視覚障害者の情報アクセス技術開発に貢献してきた方です。  基本的には、法定雇用率未達成からの脱却、情報技術系に進む障害のある学生を増やすための方略、障害者の新たな雇用モデルの創出を目ざす、一般社団法人企業アクセシビリティ・コンソーシアム(以下、「ACE」)の立ち上げなどに、ダイバーシティ推進責任者としてかかわったことがきっかけです。 八重田 梅田さんが日本IBMに勤務されていたころはD&I(ダイバーシティ&インクルージョン)部長、現在はEYJapanのDE&Iのディレクターという肩書きでご活躍されていますが、ディレクターとしての役割を教えてください。 梅田 企業における多様性、公平性、包摂性を目ざすということは、障害のある方を含め、多様な人材が公平な労働環境で職業的・心理的・物理的に何ら除外されることがない働き方を構築するということになります。ディレクターは、経営陣と従業員の間をつなぐような仕事です。人間の多様性を尊重し、従業員の心理的安全性が確保される包摂的な職場の実現を目ざし、自社の施策の方向性や優先度を決め、実行します。また、自社にとどめることなく、さまざまな形で社外へ発信し、NPO法人などとも連携しながら、社会的包摂という大きな枠組みに展開させることを使命としています。  具体的には、ジェンダー・ギャップの解消、障害者やLGBTQ+に対する差別と偏見の解消、個人の生きがいと働きがいを高めて自分らしく働ける職場環境づくりを目ざしています。なかでも、ダイバースアビリティ・センター(DAC)では、発達障害、精神障害のある方を対象として、マーケットリサーチ、データ・アナリスト、Webデザイン、ビジネス翻訳などの実務スキルを身につけて、3年以内にひとりだちしていくインターンシップ型の雇用でキャリア形成を支援しています。 八重田 日本IBM時代の経験が活かされていると思いますが、それについてはいかがですか? 梅田 日本IBM時代には、障害のある学生を対象とした7カ月間の長期インターンシップ「アクセスブルー」を2014年にスタートさせましたが、7カ月間という長期の学生インターンシップは日本では障害の有無にかかわらず例がなく、当時は大学の関係者から参加者がいるのかという懐疑的な声が寄せられました。しかし、障害のない学生は、学生のうちからアルバイトやインターンシップを通じて経験を広げ、問題解決能力を高めているのに、障害のある学生は同じ機会が得られない。それが障害のある学生の就職やキャリア格差につながっていると感じていました。能力の差ではなく、経験の差なのではないかと。インターンシップ期間を長くしたのは、単なる職場体験で終わらせず、最新のIT技術を学んでそれをアドバンテージにしてほしかったのと、失敗から学ぶ経験をより多くしてもらいたかったからです。インターンシップ中には、在宅勤務やチームに分かれた社会課題のソリューション提案の作成、2週間のOJTなど、さまざまなことにチャレンジしてもらい、実体験を通じて学んでいただきます。障害のある学生になるべく早い段階から、ITを活用して自分のQOLを高めることや、親からの経済的、精神的自立を考える機会を創り出し、潜在能力をさらに高めるのです。  障害があると毎日の通勤が困難であることも多く、障害のある学生からは在宅勤務を体験してみたいというニーズが開始当時から多くありました。在宅勤務にも個人の向き不向きがあります。それも含めていろいろと体験してもらえれば、従業員になってからも楽になります。  日本IBMでは2000年から「eワーク」というリモート勤務や短時間勤務などを全社展開していて、多くの従業員が自分のライフステージやキャリアステージに応じて自分に合った制度を選択できる仕組みを整えてきました。それをインターン生たちにも体験してもらい、自分の個性、障害の特性、仕事のスタイルとマッチングを考えてもらいます。  また、仕事にはマルチタスクが求められますので、7カ月の期間のなかで、学業や就職活動、インターンシップとの両立や工夫も経験してもらいます。  このプログラムは2014年に試行として12人の障害者に参加してもらったのち、2015年からは毎年20人以上の学生が全国から参加し、私が日本IBMを退職した後も継続しています。コロナ禍では完全リモートで参加人数も増加させたと聞いてうれしく思っています。  こうした人材開発の企画、実施、モニタリングを定期的、継続的に管理していたことが、いまのEY Japanのディレクターの仕事に活かされていると思います。 八重田 日本でDE&I専門職の養成は、どの程度進んでいるのですか? 梅田 正直なところ、日本の企業は人材育成に関してはジェネラリスト育成型で、海外と比べるとスペシャリスト育成のノウハウやジョブ型雇用の市場がまだ成熟していないように思います。特に日本企業ではD&I担当のポジションは女性の管理職登用のためのポストであることが多く、2〜3年で担当者が交代してしまい、スキルやノウハウが組織に定着しづらいように思います。D&Iは経営戦略に連動した人材育成の戦略づくりでもあるので、長期的かつ、景気や売り上げに左右されない取組みが必要です。  日本IBMではグローバルに縦のラインで専門分野の上司がいて、地域特性に合わせて施策を展開する際に、その上司と連携します。日本IBMの人事部に私の業績評価や昇給を決める人事上の上司がいて、その上司は経営幹部育成プログラムの責任者であり、幹部候補者の多様性推進において私と業務連携をする立場でした。私のD&Iの上司はその時々でヨーロッパやアジア、北米などさまざまな国にいて、日本の文化や社会特性、歴史などを上司に説明しながら、グローバルの方針や海外の先進事例をいかに取り込むか、日本のよい事例をいかに海外に売りこむかということをしながら、学びながら試す、試しながら学ぶということの積み重ねで新しいことに挑戦してきました。これらの多様な国籍の海外の上司と、日本IBMの人事上の上司や同僚と相談しながら、日本におけるDE&I施策の優先順位を決めて、先の障害のある学生の長期インターンシッププログラム(2014年)や、日本IBM初の企業内保育園の設立(2011年)、「LGBTQ+と職場」を活動テーマにした任意団体work with Prideの立ち上げ(2012年)や先にご紹介した障害者の新たな雇用とキャリアを考えるACEの立ち上げ(2013年)、従業員の同性パートナーに対する配偶者と同等の福利厚生制度の適用(2016年)など、社内の施策だけにとどまらず、社会にインパクトのあるさまざまな先進的で持続可能な取組みができたと思います。  日本人同士では出ないアイディアやヒント、サポートをもらうことも多く、また日本人の品質へのこだわりや、時間はかかっても確実に実行する国民性なども理解、尊重し、つねに新しいことに挑戦することを励まし続けられ、自分自身が「多様性から学び、多様な個性を包摂し、互いに切磋琢磨しながら成長し、新たな価値を創造していく」という、D&Iの神髄を体験し、それをプログラムや施策のデザインに活かすことができたと思います。日本人が曖昧にしてきた人権の問題についても、ホロコーストや人種隔離政策、西と東の分裂から民主主義や人権を獲得してきた歴史をベースにしたD&Iの考え方を海外の同僚との交流のなかから学んだことも、自分の考えや行動に大きな影響を与えました。  日本IBMでの12年半のD&I担当者の経験は厳しいことや辛いことも多かった(苦笑)ですが、人事のプロフェッショナルとしての考え方や姿勢、ユニバーサルな人事制度のデザインの仕方を学んだ時期であり、自分のキャリア形成の中心となる12年半でもあります。 3.オンラインで働く発達障害のある社員の働きぶり 八重田 EY Japanで働く従業員のみなさんのなかには、リモートで働く発達障害のある方が多いのでしょうか?その背景を含め、従業員のみなさんの具体的な働きぶりをお聞かせください。 梅田 長年、障害のある方の採用をするうえで、勤務地や通勤の問題が壁になることが多くありました。かかりつけのお医者さんや病院から離れられないという事情がありますし、企業が集中している日本の首都圏の朝晩の通勤ラッシュはすさまじく、耐えがたいものがありました。EY Japanでは、2018年から働き方改革によって在宅や遠隔地からのリモート勤務ができる体制になっていたのですが、お客さまの要請や監査業務の性質上、リモート勤務の活用は育児や介護の事情がある人に限定されている傾向がありました。それがコロナ禍によって、監査業務のデジタル化が一気に進み、早い段階から全従業員が完全在宅勤務に切り替え、さらに会社も業務理由でない地方への転居も支援するプログラムをつくったり、就職による転居が不要となるリモート雇用を開始するようになり、これを障害のある方の活躍支援に活かすことを考えました。  先で説明したDACでは2024年1月現在、約30人の方々が働いていますが、5人ほどがリモート雇用で、兵庫県、京都府、愛知県、埼玉県などに在住です。基本的には全員が在宅勤務ですが、オフィスに来るほうが生産性が高い場合や、仕事のリズムがつくりやすい人もいるので、上司と相談しながら、働く環境を自分で選べるようになっています。オフィスはチームの所属するフロアや場所はある程度決まっていますが、フリーアドレスで、一人で仕事に集中するためのスペースやWEB会議用の個別ブース、複数人数で会議するスペースなど、業務内容や好みに応じて座るところが選べるようになっています。立位で仕事したり、バランスボールのような椅子に座って体幹を鍛えながら仕事ができるスペースもあります。 4.高等教育機関との連携 八重田 現在は、筑波大学のヒューマンエンパワーメント推進局の教授を兼務されていますが、大学との共同研究のような活動もされているのですか? 梅田 神経学的多様性の考え方をふまえ、筑波大学での研究ユニットでは、多様性のアセスメント研究により、発達障害のある学生のニーズを的確にとらえ、卒業後に社会で活躍できる人材教育とその支援方法や支援ツールの開発といった研究が行われています。筑波大学とは日本IBM在籍時に障害のある学生のインターンシップや女性研究者育成のプロジェクトを通じてかかわりがあり、女性やLGBTQ+、障害者のキャリア開発支援施策を充実させるという立場で教育や研究にかかわらせていただいております。筑波大学での授業以外の研究活動として、発達障害のある学生支援プロジェクト(RADD)と、筑波大学インクルーシブ・リーダーズ・カレッジ(DE&Iに関心のある社会人を対象としたeラーニングとウェビナーによる筑波大学エクステンションプログラム)にかかわっています。蛇足ですが、大学教員のキャリアとライフの両立支援も大切ですね。 八重田 ACEの活動やEY Japanでのインターンシップについてもう少しお話をうかがえますか? 梅田 2013年に大手企業の共同事業体としてACEが設立されたのですが、法定雇用率達成を目的とするのではなく、障害のある従業員の働きがいとキャリアアップの向上を目ざそうというものです。これは企業の成長につながる重要な取組みであり、2010年から日本IBMの研修施設を利用して経営者を対象としたアクセシビリティ・フォーラムを毎年開催しておりました。2017年からは、ACEインターンシップという形で、ACE参加企業が合同でインターンシップの募集やガイダンスを提供し、障害のある学生が複数の企業でインターンシップに参加できる機会を提供し続けています。  また、人事担当者および障害のある従業員向けの研修や、「わいがやセミナー」といった障害のある従業員の異業種交流会などを行っています。当事者によるセルフ・アドボカシー(※3)をその人のスキルとして高めることはとても重要ですので、将来のロールモデルとなるような障害のある学生が全国から集まってきますし、他社の同じ障害のある仲間や先輩・後輩と交流する機会です。「わいがやセミナー」も毎回盛況です。  またACEの活動のなかでの大きな成果だと思うのはロールモデル表彰です。これはACE参加企業が毎年、自社で専門職としてビジネスやブランド力向上に貢献している障害のある従業員とその事例を推薦し、表彰していく取組みです。タレントと事例の発掘、共有に大きな役割を果たしています。例えば、ある年の大賞では、バックオフィスで働いていた通信会社の聴覚障害のある従業員が、同じ障害のある友人から手話が通じないので店頭でスマートフォンが買えないという悩みや相談を多く聞いたことから、社内人材公募の機会に店頭販売の営業職に職種転換し、聴覚障害者への売上げを飛躍的に伸ばし、それに気がついた企業側が、主要店舗に手話ができる販売員を配置するようになったというものがあります。こうした会社のビジネスモデルも変えるような事例や人物を発掘し、社会に広げていくというのもACEの掲げている使命の一つです。  EY Japanでは、2022年2月に精神・発達障害の方向けのインターンシッププログラムを試行として2週間実施しました。参加者は25人。EY Japanでは、公認会計士、税理士、コンサルタントという高度専門職が活躍する企業ですが、公認会計士や税理士の資格試験は非常に難関で数年かけて資格取得に挑戦しなければならず、日本では女性の比率も低い(2割程度)業界です。逆にいうと伸び代があると考え、日本IBMと同じような長期の学生インターンシップが実現できないかと考えました。20校くらいの大学の障害者支援室の担当者にヒアリングを行ったところ、理数系の障害のある学生のキャリアはIT企業によって広がりつつある一方、文系の障害のある学生の出口がなかなかないといった実情をうかがいました。2週間の試行では、従業員ボランティアを公募したところ、30人以上が手伝ってくれることになり、そのなかの数人から当事者であることや、当事者を家族にもつというカミングアウトがありました。このインターンシップを行ったことは、私がEY Japanで障害者雇用施策を考えるうえで大きなターニングポイントとなりました。公認会計士や税理士の資格取得を目ざす学生インターンシップを実現させるためには、経済支援も含めて、いくつかクリアしなければならない課題も明確になったので、一旦、DACでの雇用形態にしましたが、近い将来、必ず実現させたいと考えています。 5.競争的雇用と福祉的就労 八重田 障害のある方が企業などでの競争的雇用を推進されている一方で、福祉的就労についてはどのようにお考えですか? 梅田 福祉サービスを必要とする方がいらっしゃるわけですから、ご本人やご家族の希望とニーズに見合ったサービスは必要です。ただ、現状では単純作業や定型的な業務が多く、個人がさまざまなことにチャレンジしたり、働き方や働く内容を選択できる状況ではないように思うので、福祉的就労のサービスを提供される支援者の方々ともっと交流を深めたいと思います。ビジネス畑出身の就労系障害者福祉施設スタッフが多い事業所も数多くあると思いますが、社会貢献や障害理解についてDE&Iの視点が今後さらに共有されていけば、ビジネスと福祉との間にありがちな壁のようなものが薄らいでいくかもしれません。障害のある方の人材開発を教育機関、企業、福祉が連動して早期から行うことで障害者の働く場を確実に提供することが求められています。 八重田 最後に、日本の障害者雇用の未来についてお考えをお聞かせください。 梅田 個人的には、DE&Iの組織や個人への浸透度を測る指標を開発し、企業が障害者の活躍をどの程度応援し、成果をあげているか、もっと可視化されるようになればと思います。障害者雇用のロールモデル企業に対する価値を認めて表彰するなどの仕組みも必要です。 6.おわりに  今回の取材では、たまたま筆者と同じ筑波大学でDE&Iにかかわるお仕事を兼務されている梅田氏にお話をうかがう機会を得た。同じ筑波大学といっても私の勤務地は東京キャンパスがメインなので、筑波キャンパスには授業や会議などで行く以外には、あまり「包摂的」にかかわっていないという現状がある。私は筑波キャンパスで職業リハビリテーションを、教育学、心理学、障害科学専攻の学生に教える機会はあるが、アメリカのようにビジネス科学専攻の学生や院生に職業リハビリテーションを教える機会というものはほとんどない。例えば、私の旧友の一人がコーネル大学の職業リハビリテーション領域でDE&Iにかかわっていて、ビジネススクールと連携したカリキュラムを提供しているが、受講する方はかなり真剣に勉強しないと理解できそうもないな、というハイスペックな内容という印象を受ける。オンライン受講もできるので、以前個人的に受講登録まで進めたことはあるのだが、授業料や時間的制限という理由から未受講のままである。ならば、日本で同様のカリキュラムをつくって職業リハビリテーションとビジネス科学を融合させればいいのか、などと得意の妄想をしていたところ、今回の取材と重なった。「さて、この先どうする?」というところで相変わらず悶々としているが、ビジネスの世界のことを知らずに職業リハビリテーションをうまく進めることはできない。今回の取材を通じて、「ああ、もっと勉強しよう」という勇気をいただいた気がする。  DE&Iと職業リハビリテーションが親戚のようなつき合いに留まっている現状で、じつは同じところを目ざしているのだということを知るとき、それこそ、多様性、公平性、包摂性の意味に少しだけ寄り添うことができたような、そんな心理的安定を今回のインタビューを通して得ることができたように思う。 ※1 世界4大ファーム:「PwC」、「EY」、「KPMG」、「デロイトトーマツ」の4つの巨大な会計事務所グループのこと ※2 BHE:Bureau of Human Empowermentの略 ※3 セルフ・アドボカシー:自分に必要なサポートを、自分でまわりの人に説明し理解してもらう「自己権利擁護」活動のこと 写真のキャプション EY Japan株式会社でDE&Iディレクターを務める梅田惠さん(写真提供:EY Japan株式会社) インターネットを利用したビデオ会議システムで、梅田さんにお話をうかがいました(写真提供:八重田 淳) 【P26-27】 省庁だより 令和6年度 予算の概要 (障害者雇用施策関係部分の抜粋版) 厚生労働省 職業安定局 厚生労働省職業安定局より発表された「令和6年度予算の概要」について、障害者雇用施策関係部分の抜粋版を紹介します。 障害者の就労促進 【163億円(158億円)】 ※( )内は前年度当初予算額 中小企業をはじめとした障害者の雇入れ等の支援 53億円(52億円) ●「障害者向けチーム支援」の実施等によるハローワークマッチングの強化 予算額 17億円(17億円)  福祉施設等の利用者をはじめ、就職を希望する障害者一人ひとりに対して、ハローワーク職員(主査)と福祉施設の職員、その他の就職支援者がチームを結成し、就職から職場定着まで一貫した支援を実施(平成18年度から実施)。 ●障害者雇用ゼロ企業等に対する「企業向けチーム支援」の実施等 予算額 10億円(10億円)  障害者の雇用経験や雇用ノウハウが不足している雇用ゼロ企業に対して、ハローワークが中心となって各種支援機関と連携し、企業ごとのニーズに合わせて、求人ニーズに適合した求職者の開拓等の準備段階から採用後の定着支援まで障害者雇用を一貫して支援する。 ●精神障害者等の就職及び雇用継続の促進に向けた支援(精神・発 達障害者雇用サポーター) 予算額 19億円(19億円)  きめ細やかな支援を要する精神障害及び発達障害のある求職者が増加していることから、障害特性を踏まえた専門的な就職支援や職場定着支援、及び事業主に対する精神障害者等の雇用に係る課題解決のための相談援助を実施する必要がある。  ハローワークに精神・発達障害者等の専門知識や支援経験を有する者を配置し、障害特性に応じた専門的な就職支援を実施する。 ●難病相談支援センターと連携した就労支援の強化 予算額 3.3億円(2.2億円)  ハローワークに「難病患者就職サポーター」を配置し、難病相談支援センターをはじめとした地域の関係機関と連携しながら、個々の難病患者の希望や特性、配慮事項等を踏まえたきめ細かな職業相談・職業紹介及び定着支援等総合的な支援を実施。 ●障害者雇用相談援助事業の適正な実施等 予算額 3.0億円(2.8億円)  今後、法定雇用率の段階的な引上げと除外率の引下げが予定されている中で、企業に対する支援の強化が求められている。  このため、特に障害者雇用に関するノウハウを十分に有しない中小企業等を中心に、雇入れから雇用管理、職場定着までの一体的な伴走型支援を実施し、着実な雇入れを実現するために「障害者雇用相談援助助成金」が創設される。本助成金を活用した障害者雇用相談援助事業における相談援助等の質を担保する等適切な事業運営を図る必要がある。  また、地域の就労支援機関等関係機関のネットワークの構築、連携強化、相互理解を図ることを通じて、引き続き、企業における一般就労の実現を推進する。 ●就職活動に困難な課題を抱える障害のある学生等への就職支援 予算額 1.2億円(1.2億円)  発達障害等のために専門的な支援がないと就職活動自体が困難な学生や、発達障害に限らず障害があり、障害特性に応じた就職支援を必要としている学生等への支援の実施のために、大学等と連携して支援が必要な学生等の早期把握を図るとともに、当該学生等に対する就職準備から就職・職場定着までの一貫したチーム支援を行う。 ●公務部門における障害者雇用に関する支援について 予算額 93百万円(2億円)  公務部門においては、障害者雇用に関する基本方針等に基づき、順調に障害者の採用が進んだことにより、今後は採用された障害者の職場定着支援や支援体制づくりを重点的に実施するための取組を行う。 ●障害者に対する差別禁止・合理的配慮等に係るノウハウ普及・対応支援事業 予算額 58百万円(58百万円)  平成28年4月から改正障害者雇用促進法の差別禁止及び合理的配慮の提供義務が施行され、平成30年4月から精神障害者が法定雇用率の算定基礎へ追加されたこと等から、障害者が能力を十分に活かして働き続けることができる雇用の場の創出、障害者の職場定着への一層の支援が求められている。  このため、全国7ブロックに障害者雇用に係る事業主の相談窓口を設置し合理的配慮等のノウハウを提供するとともに、障害特性に配慮した雇用管理や雇用形態の見直し等の優れた措置を実施し、その先進的な取組を普及する事業を実施する。 ●障害者の雇用を促進するためのテレワークの推進 予算額 43百万円(75百万円)  障害者の多様な働き方の推進や、通勤が困難な者、感覚過敏等により通常の職場での勤務が困難な者等の雇用機会の確保のため、障害者雇用におけるテレワークの更なる推進が必要である。  しかしながら、事業所から遠方に住む障害者のテレワーク時の雇用管理への不安から導入を躊躇する企業も多く、また、実際に新たに障害者のテレワークを導入した企業においては、テレワーク勤務におけるコミュニケーションや雇用管理等の課題が生じているところ。  企業に対して、個々の企業の状況を踏まえて、障害者のテレワーク勤務の導入に向けた相談支援や、雇用している障害者のテレワーク時の雇用管理面での課題解決に向けた相談支援を行う。  また、企業に障害者雇用の選択肢の1つとして、テレワークによる障害者の雇用を検討してもらえるよう、インターネット上で事例の周知を図る。 ●トライアル雇用助成金(障害者トライアルコース・短時間トライアルコース) 予算額 12億円(12億円)  障害者雇用の取組が遅れている事業所では、障害者雇用の経験が乏しいために、障害者に合った職域開発、雇用管理等のノウハウがなく、障害者を雇い入れることを躊躇する面があるところである。このため、これらの事業所に対して、障害者の試行雇用を通じ、障害者の雇用に対する理解を促進するとともに、障害者の業務遂行の可能性を見極め、試行雇用終了後に常用雇用への移行を進め、就業機会の確保を図ることとする。 ●特定求職者雇用開発助成金(発達障害者・難治性疾患患者雇用開発コース) 予算額 5.8億円(6.3億円)  発達障害者は、社会性やコミュニケーション能力に困難を抱えている場合が多く、就職・職場定着には困難が伴っている。  また、難病患者は、慢性疾患化して十分に働くことができる場合もあるが、実際の就労に当たっては様々な制限・困難に直面している。このため、発達障害者及び難病患者の雇用を促進するため、これらの者を新たに雇用し、雇用管理等について配慮を行う事業主に対する助成を行う。 障害者就業・生活支援センターによる地域における就業支援の促進 85億円(81億円) ●障害者就業・生活支援センターによる地域における就業支援 予算額 85億円(81億円)  障害者就業・生活支援センター(以下「センター」という。)は障害者の職業生活における自立を図るため、雇用、保健、福祉、教育等の関係機関との連携の下、障害者の身近な地域において就業面及び生活面における一体的な支援を行い、障害者の雇用の促進及び安定を図る。  更に、全国の障害保健福祉圏域ごとに設置しているセンターは、各地域における中核的な就労支援機関として位置づけられており、個々の障害者のニーズに応じた相談・支援に加えて、地域の支援機関のネットワークの拠点としての役割を担う。 ※本誌では通常西暦で表記していますが、この記事では元号で表記しています 【P28-29】 研究開発レポート 第31回 職業リハビリテーション研究・実践発表会 Part2 パネルディスカッション T「情報通信技術の活用の進展を踏まえた障害者雇用のあり方について」 U「アセスメントを活用した就労支援の今後のあり方について」  当機構(JEED)では、毎年、職業リハビリテーションに関する研究成果を周知するとともに、参加者相互の意見交換、経験交流を生み出すための機会として、「職業リハビリテーション研究・実践発表会」を開催しています。2023(令和5)年度は、「会場参加」と、会場での発表内容などをリアルタイムで視聴できる「ライブ配信」を組み合わせた「ハイブリッド方式」で実施するとともに、新型コロナウイルス感染症の流行により中止していた「ポスター発表」を4年ぶりに再開しました。また、その内容を広く発信するために、2022年度に引き続き、障害者職業総合センター(NIVR)ホームページへの動画掲載も行っています。ここでは、パネルディスカッションT・Uの様子をダイジェストでお伝えします。  パネルディスカッションT 情報通信技術の活用の進展を踏まえた障害者雇用のあり方について  AIなどの情報通信技術の進展は、産業構造の転換をうながし、働き方や雇用に大きな影響を与えることが予想されます。障害者雇用においても、良質な雇用機会をどのように確保していくかが大きな課題となっています。パネルディスカッションTでは、障害者職業総合センター主任研究員の秋場(あきば)美紀子(みきこ)氏をコーディネーターとして、総合メディカルグループ株式会社管理本部総務部業務支援グループシニアマネージャーの松尾(まつお)謙師(けんじ)氏、大東コーポレートサービス株式会社RPA推進事業部次長の西岡(にしおか)幸智(ゆきとも)氏、国立吉備高原職業リハビリテーションセンター上席職業訓練指導員の相良(さがら)佳孝(よしたか)氏をパネリストに迎え、情報通信技術の進展が障害者の職域にどのような影響を与えているかについて確認するとともに、今後の見通しについても意見交換を行いました。  はじめに、秋場氏からは、本ディスカッションの背景として、「AI等の技術進展に伴う障害者の職域変化等に関する調査研究」(2021〜2023年度)の結果などが紹介されました。それによると、「一般企業の約7割、特例子会社の約8割で、デジタル関連業務に障害者が従事」しており、「データ処理やシステム開発などの業務や、情報処理に加えて判断等を伴う業務」に従事している障害者がいる企業は、「業務の効率化」や「テレワーク化」など、デジタル化の影響をプラスにとらえている傾向があることが確認されました。一方で、「デジタル関連の職域の開発は、企業の支援負担を増やしている」ことなども報告されました。  次に、各パネリストから、それぞれの取組事例などが紹介されました。総合メディカルグループ株式会社の松尾氏からは、2012(平成24)年に、精神・発達障害者の雇用に力を入れるようになったことをきっかけに、パソコン関連業務を拡大し、「パソコンを使った事務業務」、「知的障害者による入力業務」、「SE経験者などによる業務効率化システムの構築支援」、「DTP・動画作成などのクリエイティブ領域」などに業務を拡大してきた事例が紹介されました。また、それを支える「企業在籍型ジョブコーチのサポート体制」や「職場実習を基本とした人材採用のプロセス」などについても言及されました。  大東建託株式会社の特例子会社である大東コーポレートサービス株式会社の西岡氏からは、「RPA(※)の開発事業」として、精神・発達障害者を中心に、入社後にRPAプログラム開発の教育を行い、専任部隊を構築してRPAを開発することで、年間5万4000時間を超える親会社の業務削減効果が得られている事例が紹介されました。  国立吉備高原職業リハビリテーションセンターの相良氏からは、同センターでは、「情報通信技術を活用した職業訓練」として、GoogleWorkspaceなどのオンラインツールを活用して、基礎的な内容から、在宅就労を想定した訓練を提供していることなどが紹介されました。  後半のディスカッションでは、「本人の得意なことに着目し、その仕事に意欲を持てるかを大切に職域を開発している」、「実務に使えるトレーニングが求められるが、IT領域に対応できる支援機関はまだまだ少ない」などの意見が出され、活発な議論がなされました。 パネルディスカッションU アセスメントを活用した就労支援の今後のあり方について  障害者本人の支援ニーズや就労能力の現状などを把握して適切な支援につなげていくための「アセスメント」の活用が課題となっています。今般の法改正により、当事者の希望、就労能力や適性などに合った選択を支援する新たなサービス(就労選択支援)が創設されることをふまえて、パネルディスカッションUでは、障害者職業総合センター上席研究員の武澤(たけざわ)友広(ともひろ)氏をコーディネーターとして、秋田大学教育文化学部教授の前原(まえはら)和明(かずあき)氏、社会福祉法人桑友(そうゆう)理事長の青山(あおやま)貴彦(たかひこ)氏、新宿公共職業安定所専門援助第二部門統括職業指導官の吉田(よしだ)あおき氏、障害者職業総合センター職業センター主任障害者職業カウンセラーの古野(ふるの)素子(もとこ)氏をパネリストとして迎え、就労支援のためのアセスメントの目的や視点を確認したうえで、アセスメントを介した今後の就労支援のあり方について意見交換を行いました。  はじめに武澤氏から本ディスカッションの背景にある問題意識として、アセスメントが属人化しないような「共通の枠組み」が求められていることが示唆されました。また、障害者職業総合センターが公開している「就労支援のためのアセスメントシート」の紹介や、今後の導入が決まっている新たな支援サービス「就労選択支援(アセスメントの手法を活用して、本人の希望、就労能力や適性等に合った選択を支援する)」について言及されました。  次に各パネリストから、話題提供がなされました。前原氏からは、アセスメントにおいて個々の支援者に求められる知識や技能のキーワードとして、「本人の希望/意向/ニーズの把握」、「就労能力/適性/強み/課題の把握」、「配慮の整理」、「ケース会議の運営」などがあると提示され、それらを学べる研修プログラムが作成されていることなどが紹介されました。  青山氏からは、多機関連携を軸とした就労アセスメントの仕組みづくりのための試行的な取組みとして、「就労アセスメントワーキングチーム」をつくり、チームで協業してアセスメントを実施している島根県松江市の事例が紹介されました。  吉田氏からは、障害者雇用における求職者の多くが、精神・発達障害者になっていることをふまえ、ハローワークにもアセスメントの強化が求められるようになっている一方で、現在提供されている支援はすべて窓口職員の個人の経験や知識に委ねられている実態があり、個々人のスキルアップが求められていることなどが強調されました。  古野氏からは、「自己決定を支え、自己理解を深めるアセスメント」に取り組むために、本人主導で目標設定をすることの重要性が強調されたうえで、「アセスメントツールの活用」、「グループワークの活用」、本人が気づきを書き留める「ナビゲーションブック」、「自分のことを伝えるワーク」など、障害者職業カウンセラーとして具体的に工夫をしていることが紹介されました。  後半のディスカッションでは「本人主導で目標設定をし、それに向かって情報提供をすることが大切」、「どのアセスメントツールを使ってよいのかがわかりにくいので、主旨や目的などをわかりやすく伝える仕組みが必要」などの意見が出され、活発な議論がなされました。 ※Robotic Process Automation。従来は人の手で行っていた定型業務をロボットにより自動処理してもらう仕組み (注)コーディネーターおよびパネリストの方々の所属先・役職は開催日時点のものです ★右記ホームページにて、パネルディスカッションの動画や発表資料等をご覧いただけます。https://www.nivr.jeed.go.jp/vr/31kaisai.html ◇お問合せ先 研究企画部 企画調整室(TEL:043-297-9067 E-mail:kikakubu@jeed.go.jp) 写真のキャプション 西岡幸智氏 秋場美紀子氏 相良佳孝氏 松尾謙師氏 青山貴彦氏 武澤友広氏 古野素子氏 吉田あおき氏 前原和明氏 【P30-31】 ニュースファイル 地方の動き 愛知 県議会傍聴の聴覚障害者にタブレット貸与  愛知県議会は、2024(令和6)年2月の定例議会から、質問や答弁の声をリアルタイムで文字表示できるアプリを導入したタブレット端末を、傍聴を希望する聴覚障害者に貸し出している。  これまで愛知県議会では、聴覚障害がある人などから議会の傍聴希望があった場合には、手話通訳者や要約筆記者に対応を依頼してきたが、通訳者などの手配のため5日前までに申し出てもらう必要があり、直前の傍聴希望には対応できていなかった。  そこで議会事務局では、音声を文字化する専用アプリ「UDトーク」をインストールしたタブレット端末を3台用意し、当日の傍聴希望にも対応できるようにした。受付で申し込めば先着順に使用できる。昨年12月の議会で、声の文字化を検証したところ9割ほどが正しく変換できたという。議会事務局によると、こうしたタブレット端末を傍聴希望者に貸し出すのは全国で初めてだという。 生活情報 茨城 J2水戸が障害者チーム設立  サッカーJ2リーグに所属する「水戸ホーリーホック」(水戸市)が、障害者サッカーチーム「水戸ホーリーホッククノスフェアビデ」(以下、「クノスフェアビデ」)を設立した。  もともと県央地域で活動していた障害者サッカーチーム「茨城水戸クラブ」を水戸ホーリーホックが運営することで誕生した。所属選手は現在22人。チーム名は、ドイツ語で花のつぼみを意味する「Knospe(クノスペ)」と、つなぐを意味する「Verbinden(フェアビンデン)」をかけ合わせた造語で、所属選手の意見や想いをもとに考えたという。  今後も18歳以上で障害者手帳を持つ人を対象に、随時加入受付けを行う。監督の加藤(かとう)貴之(たかゆき)さんは、特別支援学校の元教員で、茨城県の知的障害サッカーの立ち上げや普及、強化にたずさわってきた。活動時間は毎週木曜日18時〜20時ほか日曜日など。  また水戸ホーリーホックでは、農事業「GRASS ROOTS FARM(グラスルーツファーム)」で協力を得ている「日本農業実践学園」(水戸市)と、トップパートナーであるJX金属株式会社(東京都港区)が展開する「内原(うちはら)ファーム」(水戸市)の三者で交流や連携を行ってきたことから、クノスフェアビデで「内原ファーム」で働く障害者も受け入れ、スポーツを楽しめる環境の創出を行うなど、「農業×福祉×スポーツ」のスローガンのもと三者の連携を深めていくとしている。 東京 都営地下鉄全106駅にホームドア  東京都交通局は、都営地下鉄のホーム上の安全対策やバリアフリー設備の需要に応えるため整備を進めてきたホームドアについて、都営地下鉄の全106駅における整備が完了したと発表した。2000(平成12)年から順に進めてきた整備後の路線では転落件数が「ゼロ」となるなど、ホーム上の安全対策として高い効果を発揮しているという。  浅草線では、車両に貼りつけた2次元コードを駅側のカメラで読みとってドアを開閉させる新たな仕組みが導入されたことで、当初、取りつけ費用など20億円かかるとされたコストをおよそ270万円にまで抑えることができた。  国土交通省によると、2025年度までに全ホームのうち3000カ所、1日平均利用者数が10万人以上の駅のホームでは800カ所でホームドアを整備する目標を掲げ、昨年3月末時点でそれぞれ整備されているのは2484カ所、493カ所となっている。 全国 インターネットで障害者割引乗車券購入  JR東日本は、「えきねっと」においてマイナポータルとの連携を活用した「身体障害者割引乗車券・知的障害者割引乗車券」と「新幹線車いす対応座席」の取扱いを開始した。窓口に行かずにJR6社の障害者割引きっぷが購入できるようになり、障害者割引を適用した「新幹線eチケット」、新幹線の車いす対応座席(本人席、付添席、車いすスペース)も購入できる。  また、列車に乗降するときの介助を事前にWEBで申し込める「JREおでかけサポート」のサービスも開始。これまでは事前に駅窓口などで受けつけている駅もあったが、サービス導入線区においては出発2日前の午前12時まではJR東日本のホームページから申し込める。利用可能線区はJR東日本管内の新幹線全線区、京葉線(東京〜蘇我(そが))、南武線(川崎〜立川)。 https://www.jreast.co.jp/equipment/jreodekakesupport/ 本紹介 『大人の発達障害働き方のコツがわかる本』  昭和大学附属烏山(からすやま)病院の発達障害医療研究所所長を務める太田(おおた)晴久(はるひさ)さんが「大人の発達障害働き方のコツがわかる本」(講談社刊)を出版した。  2014(平成26)年から烏山病院で成人を中心とする発達障害の診療と研究を進めてきた太田さんが、発達障害外来で行われている成人の発達障害向けのプログラムを参考に、職場での仕事の進め方や対人関係などが改善するためのメソッドをまとめている。  「自分の特性を確認しよう!」、「仕事をスムーズに進めたい!」、「対人関係で悩みたくない!」、「自己管理できるようになりたい!」、「医療と社会的支援が知りたい!」などのテーマ別に実践的な内容を盛り込み、より具体的にわかりやすく解説している。A5判、160ページ、1650円(税込)。 作品大募集! あなたの力作がポスターになる! 令和6年度 「絵画コンテスト働くすがた〜今そして未来〜」 「写真コンテスト職場で輝く障害者〜今その瞬間〜」 応募締切 令和6年6月17日(月)【消印有効】 児童・生徒をはじめ社会人・一般の方もご応募いただけます。 絵画コンテストの応募は障害のある方が対象です。 写真コンテストの応募は障害の有無を問いません。 多くのみなさまからのご応募をお待ちしています。 詳しくはホームページの募集要項をご覧ください。 JEED 絵画写真 検索 <過去のポスターや入賞作品などもご覧いただけます> 主催:独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED) シンボルキャラクター“ピクチャノサウルス” ミニコラム 第34回 編集委員のひとこと ※今号の「編集委員が行く」(20〜25ページ)は八重田委員が執筆しています。  ご一読ください。 音楽が心と体におよぼす影響について 筑波大学大学院教授 八重田淳  日本を代表する世界的な音楽家の坂本(さかもと)龍一(りゅういち)さんと小澤(おざわ)征爾(せいじ)さんが去年から今年にかけて相次いで亡くなられた(坂本さんは2023〈令和5〉年3月、小澤さんは2024年2月)。私は最近プールで泳ぎながら、大好きな彼らの音楽をよく聴いている。音楽が心におよぼす影響は計り知れないが、音楽は体にも影響を与えてくれるような気がする。水の中で澄んだピアノの音や壮大なシンフォニーを聴くと、リラックスできるし、勇気づけられる。これは心への効果だ。体への効果というのは、専門ではないのでよくわからないが、音楽によってキリッと背筋が伸びて姿勢がよくなったり、血の巡りがよくなったりと、自律神経にもプラスに作用している感じがする。私の場合は泳ぎながら音楽を聴くので、スーッと水の中を進むときに比較的長いトーンが耳に入ってくると、いつもより長く静かに息を止めたりするので、心肺機能にもよいのかもしれない。  では、仕事をしながら音楽を聴くことの効用についてはどうだろう。音楽によって創造力や集中力が高まるという人は少なくないと思う。以前、精神障害のある方が利用する就労継続支援B型事業所を訪問した際、働きながら音楽を聴くという話題が持ち上がったことがある。音楽を聴けば精神的に安定するし、作業効率もアップする。そんな職場だったら楽しそうだ。音楽が心身の回復に寄与することは音楽療法の科学でも実証されている。音楽は仕事の疲れを癒し、やる気にもさせてくれる。音楽そのものが仕事であり人生であった坂本龍一さんや小澤征爾さんに、こうした音楽の持つ力について訊ねてみたかった。 【P32】 掲示板 令和6年4月1日改正分 障害者雇用納付金関係助成金等のおもな変更点について New! 障害者雇用相談援助助成金の創設 障害者雇用相談援助事業を実施する事業者が、当該事業を利用する事業主に障害者雇用相談援助事業を行った場合に、助成します。 New! 障害者職場実習等支援事業の創設 障害者を雇用したことがない事業主等が職場実習の実習生を受け入れた場合等に、謝金等を支給します。 整理拡充 ●障害者作業施設設置等助成金・障害者介助等助成金の一部・職場適応援助者助成金について、加齢に伴って生ずる心身の変化により職場への適応が困難となった 中高年齢等障害者(35歳以上)の雇用継続を図る措置への助成を拡充 ●障害者介助等助成金等において次の措置への助成を拡充 ・障害者の雇用管理のために必要な専門職(医師または職業生活相談支援専門員)の配置または委嘱 ・障害者の職業能力の開発および向上のために必要な業務を担当する方(職業能力開発向上支援専門員)の配置または委嘱 ・障害者の介助等の業務を行う方の資質の向上のための措置 New! 特定短時間労働者の追加 助成金に共通する事項として対象となる「労働者」に週の所定労働時間が10時間以上20時間未満の重度身体障害者、重度知的障害者、精神障害者が「特定短時間労働者」として加えられます。 (対象とならない助成金もあります) 〈お問合せ先〉 JEED都道府県支部高齢・障害者業務課等 支部検索 助成金詳細 読者アンケートにご協力をお願いします! 回答はこちらから 公式X(旧Twitter)はこちら! 最新号発行のお知らせやコーナー紹介などをお届けします。 @JEED_hiroba 次号予告 ●メダリストを訪ねて  2023年3月にフランスで開催された第10回国際アビリンピックの「電子機器組立」種目で、銀賞を受賞した小倉怜さんに、大会の思い出や、今後の抱負などをうかがいます。 ●職場ルポ  自動車用ゴム部品などの製造販売を行う倉敷化工株式会社の特例子会社、株式会社キョウセイ(岡山県)を訪問。障害特性に合わせた作業改善で、職場定着を目ざす現場を取材しました。 ●グラビア  機械メーカーのナブテスコ株式会社の特例子会社、ナブテスコリンク株式会社(岐阜県)を取材。障害のある社員が事務作業や農作業などで活躍する様子を紹介します。 ●編集委員が行く  三鴨岐子編集委員が、社会医療法人清和会西川病院と石見食品株式会社(島根県)を訪問。IPSによる就労支援の取組みについて取材します。  本誌2月号(令和6年1月25日発行)掲載の「第43回全国アビリンピック入賞者一覧」について、DTP競技で入賞者の変更がありました。正しい内容は、以下、「JEEDニュース第305号」をご確認ください。  読者のみなさま、ならびに関係者のみなさまにご迷惑をおかけしましたこと、深くお詫び申し上げます。 https://www.jeed.go.jp/jeed/press/ledngs0000008yej-att/ledngs0000008yfk.pdf 本誌購入方法 定期購読のほか、最新号やバックナンバーのご購入は、下記へお申し込みください。 1冊からのご購入も受けつけています。 ◆インターネットでのお申し込み 富士山マガジンサービス 検索 ◆お電話、FAXでのお申し込み 株式会社広済堂ネクストまでご連絡ください。 TEL 03-5484-8821 FAX 03-5484-8822 あなたの原稿をお待ちしています ■声−−障害者雇用にかかわるお考えやご意見、行事やできごとなどを500字以内で編集部(企画部情報公開広報課)まで。 ●発行−−独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED) 発行人−−企画部長 境 伸栄 編集人−−企画部次長 綱川香代子 〒261−8558 千葉県千葉市美浜区若葉3−1−2 電話 043−213−6526(企画部情報公開広報課) ホームページ https://www.jeed.go.jp メールアドレス hiroba@jeed.go.jp ●発売所−−株式会社広済堂ネクスト 〒105−8318 東京都港区芝浦1−2−3 シーバンスS館13階 電話 03−5484−8821 FAX 03−5484−8822 5月号 定価141円(本体129円+税)送料別 令和6年4月25日発行 無断転載を禁ずる ・本誌に掲載した論文等で意見にわたる部分は、それぞれ筆者の個人的見解であることをお断りします。また、本誌では「障害」という表記を基本としていますが、執筆者・取材先の方針などから、ほかの表記とすることがあります。 編集委員 (五十音順) 株式会社FVP 代表取締役 大塚由紀子 トヨタループス株式会社 管理部次長 金井渉 NPO法人大阪精神障害者就労支援ネットワーク 副理事・統括施設長 金塚たかし 弘前大学教職大学院 教授 菊地一文 武庫川女子大学 准教授 諏訪田克彦 サントリービバレッジソリューション株式会社 人事本部 副部長 平岡典子 神奈川県立保健福祉大学 名誉教授 松爲信雄 有限会社まるみ 取締役社長 三鴨岐子 筑波大学大学院 教授 八重田淳 国際医療福祉大学 准教授 若林功 【P33】 JEEDメールマガジン(登録無料) 新規登録者募集中!! 当機構(JEED)では、JEEDが全国で実施する高齢者や障害者の雇用支援、従業員の人材育成(職業能力開発)などの情報を、毎月月末に配信しています。 主な特徴 ◇毎号特集を組んでJEEDの業務内容を紹介 ◆JEEDの制度やサービス内容がよくわかる ◇マイエリア情報で地元情報をチェック! ◆セミナーやイベント情報が満載 雇用管理や人材育成の「いま」「これから」を考える、人事労務担当者や就労支援担当者のみなさま、必読! 障害のある従業員の新規・継続雇用… 定年延長・廃止に 再雇用… 技能開発・向上の手段… そのお悩みのヒント見つかります!! 登録方法 JEED メルマガ で 検索 または から! 企画部情報公開広報課(TEL:043-213-6215) 【裏表紙】 アビリンピックホームページ マスコットキャラクター 「アビリス」 アビリンピックとは? 障害のある方々が日ごろ職場などで培った技能を競う大会です。障害のある方々の職業能力の向上を図るとともに、企業や社会一般の人々に障害のある方々に対する理解と認識を深めてもらい、その雇用の促進を図ることを目的として開催しています。 <お知らせ> ●地方アビリンピック 各都道府県で開催される「地方アビリンピック」についての詳細(開催日程、会場等)はこちら 地方アビリンピック 検索 地方アビリンピックホームページ ●全国アビリンピック 第44回全国アビリンピックは、令和6年11月22日(金)から11月24日(日)に愛知県国際展示場(愛知県常滑市)で開催します! みなさまのご来場をお待ちしています? <アビリンピックに関するお問合せ先> (独)高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED) 障害者雇用開発推進部 雇用推進課 TEL:043-297-9516 5月号 令和6年4月25日発行 通巻559号 毎月1回25日発行 定価141円(本体129円+税)