編集委員が行く DE&I専門職から見た障害者雇用のあり方 EY Japan株式会社(東京都) 筑波大学大学院 教授 八重田 淳 (写真提供:EY Japan株式会社) 取材先データ EY Japan株式会社 〒100-0006 東京都千代田区有楽町1-1-2 東京ミッドタウン日比谷 日比谷三井タワー URL https://www.ey.com/ja_jp/diversityinclusiveness/diversity-inclusivenessjapan 八重田(やえだ)淳(じゅん) 編集委員から  三つの英単語の頭文字で構成されるDE&Iは、理念的には大体イメージできるが、リハビリテーションと同様に、多義的な概念である。Diversity, Equality, Inclusionそれぞれの単語の概念自体が大きく、三つの概念をまとめて表現されているわけだが、その分、焦点がぼやけてしまう。そこで、障害者雇用の推進において、特例子会社を持たない企業では実際にどのようなDE&Iの取組みがなされているのかという実践例をご紹介したい。 写真:官野 貴 Keyword:発達障害、DE&I(Diversity, Equity & Inclusion)、リモートワーク、インターンシップ POINT 1 ダイバーシティ(多様性) 2 エクイティ(公平性) 3 インクルーシブネス(包摂性) 1.はじめに  企業に対して会計監査や税務、コンサルティングサービスを提供する世界4大ファーム(※1)の一つであるEY(イーワイ)(2018〈平成30〉年にErnst & Young(アーンスト・アンド・ヤング)から名称変更)の日本支部EY(イーワイ)Japan(ジャパン)グループ(以下、「EY Japan」)には、障害のある従業員が2023(令和5)年度で190人以上いる。今後の法定雇用率の引上げにともない、近い将来には300人以上の障害者の雇用を見込んでいる。EY Japanでは、公認会計士や税理士の資格を有する発達障害や精神障害のある従業員も含め、同社のDE&I(ダイバーシティ、エクイティ&インクルーシブネス)の理念のもとに、包摂的な職場環境の整備を推進している。  今回、お話をうかがった梅田(うめだ)惠(めぐみ)氏は、EY JapanのDE&Iディレクターである。ダイバーシティ&インクルージョン領域の草分け的な存在のお一人であり、前職として日本アイ・ビー・エム株式会社(以下、「日本IBM」)のD&I推進担当部長として活躍されていた。現在は、筑波大学ヒューマンエンパワーメント推進局(BHE(※2))の教授を兼務されており、ダイバーシティ関連の授業も複数担当されている。東京都千代田区にあるEY Japanで働く従業員全員が障害の有無にかかわらず基本的にリモートワークということもあり、今回の「編集委員が行く」では、現地取材ではなくオンライン取材とさせていただき、障害のある学生の高等教育や障害者雇用についてDE&Iの視点からお話をうかがった。 2.DE&I専門職とは? 八重田 現在EY JapanのDE&Iディレクターとして活躍されている梅田さんですが、どのような経緯で障害者雇用の領域に進まれたのですか? 梅田 2007年に日本IBMでダイバーシティ推進の責任者になったことが始まりです。日本人で5人目の日本IBMフェローになった全盲の研究員、浅川(あさかわ)智恵子(ちえこ)さん(現日本科学未来館館長)との出会いが大きかったと思います。視覚障害者の情報アクセス技術開発に貢献してきた方です。  基本的には、法定雇用率未達成からの脱却、情報技術系に進む障害のある学生を増やすための方略、障害者の新たな雇用モデルの創出を目ざす、一般社団法人企業アクセシビリティ・コンソーシアム(以下、「ACE」)の立ち上げなどに、ダイバーシティ推進責任者としてかかわったことがきっかけです。 八重田 梅田さんが日本IBMに勤務されていたころはD&I(ダイバーシティ&インクルージョン)部長、現在はEYJapanのDE&Iのディレクターという肩書きでご活躍されていますが、ディレクターとしての役割を教えてください。 梅田 企業における多様性、公平性、包摂性を目ざすということは、障害のある方を含め、多様な人材が公平な労働環境で職業的・心理的・物理的に何ら除外されることがない働き方を構築するということになります。ディレクターは、経営陣と従業員の間をつなぐような仕事です。人間の多様性を尊重し、従業員の心理的安全性が確保される包摂的な職場の実現を目ざし、自社の施策の方向性や優先度を決め、実行します。また、自社にとどめることなく、さまざまな形で社外へ発信し、NPO法人などとも連携しながら、社会的包摂という大きな枠組みに展開させることを使命としています。  具体的には、ジェンダー・ギャップの解消、障害者やLGBTQ+に対する差別と偏見の解消、個人の生きがいと働きがいを高めて自分らしく働ける職場環境づくりを目ざしています。なかでも、ダイバースアビリティ・センター(DAC)では、発達障害、精神障害のある方を対象として、マーケットリサーチ、データ・アナリスト、Webデザイン、ビジネス翻訳などの実務スキルを身につけて、3年以内にひとりだちしていくインターンシップ型の雇用でキャリア形成を支援しています。 八重田 日本IBM時代の経験が活かされていると思いますが、それについてはいかがですか? 梅田 日本IBM時代には、障害のある学生を対象とした7カ月間の長期インターンシップ「アクセスブルー」を2014年にスタートさせましたが、7カ月間という長期の学生インターンシップは日本では障害の有無にかかわらず例がなく、当時は大学の関係者から参加者がいるのかという懐疑的な声が寄せられました。しかし、障害のない学生は、学生のうちからアルバイトやインターンシップを通じて経験を広げ、問題解決能力を高めているのに、障害のある学生は同じ機会が得られない。それが障害のある学生の就職やキャリア格差につながっていると感じていました。能力の差ではなく、経験の差なのではないかと。インターンシップ期間を長くしたのは、単なる職場体験で終わらせず、最新のIT技術を学んでそれをアドバンテージにしてほしかったのと、失敗から学ぶ経験をより多くしてもらいたかったからです。インターンシップ中には、在宅勤務やチームに分かれた社会課題のソリューション提案の作成、2週間のOJTなど、さまざまなことにチャレンジしてもらい、実体験を通じて学んでいただきます。障害のある学生になるべく早い段階から、ITを活用して自分のQOLを高めることや、親からの経済的、精神的自立を考える機会を創り出し、潜在能力をさらに高めるのです。  障害があると毎日の通勤が困難であることも多く、障害のある学生からは在宅勤務を体験してみたいというニーズが開始当時から多くありました。在宅勤務にも個人の向き不向きがあります。それも含めていろいろと体験してもらえれば、従業員になってからも楽になります。  日本IBMでは2000年から「eワーク」というリモート勤務や短時間勤務などを全社展開していて、多くの従業員が自分のライフステージやキャリアステージに応じて自分に合った制度を選択できる仕組みを整えてきました。それをインターン生たちにも体験してもらい、自分の個性、障害の特性、仕事のスタイルとマッチングを考えてもらいます。  また、仕事にはマルチタスクが求められますので、7カ月の期間のなかで、学業や就職活動、インターンシップとの両立や工夫も経験してもらいます。  このプログラムは2014年に試行として12人の障害者に参加してもらったのち、2015年からは毎年20人以上の学生が全国から参加し、私が日本IBMを退職した後も継続しています。コロナ禍では完全リモートで参加人数も増加させたと聞いてうれしく思っています。  こうした人材開発の企画、実施、モニタリングを定期的、継続的に管理していたことが、いまのEY Japanのディレクターの仕事に活かされていると思います。 八重田 日本でDE&I専門職の養成は、どの程度進んでいるのですか? 梅田 正直なところ、日本の企業は人材育成に関してはジェネラリスト育成型で、海外と比べるとスペシャリスト育成のノウハウやジョブ型雇用の市場がまだ成熟していないように思います。特に日本企業ではD&I担当のポジションは女性の管理職登用のためのポストであることが多く、2〜3年で担当者が交代してしまい、スキルやノウハウが組織に定着しづらいように思います。D&Iは経営戦略に連動した人材育成の戦略づくりでもあるので、長期的かつ、景気や売り上げに左右されない取組みが必要です。  日本IBMではグローバルに縦のラインで専門分野の上司がいて、地域特性に合わせて施策を展開する際に、その上司と連携します。日本IBMの人事部に私の業績評価や昇給を決める人事上の上司がいて、その上司は経営幹部育成プログラムの責任者であり、幹部候補者の多様性推進において私と業務連携をする立場でした。私のD&Iの上司はその時々でヨーロッパやアジア、北米などさまざまな国にいて、日本の文化や社会特性、歴史などを上司に説明しながら、グローバルの方針や海外の先進事例をいかに取り込むか、日本のよい事例をいかに海外に売りこむかということをしながら、学びながら試す、試しながら学ぶということの積み重ねで新しいことに挑戦してきました。これらの多様な国籍の海外の上司と、日本IBMの人事上の上司や同僚と相談しながら、日本におけるDE&I施策の優先順位を決めて、先の障害のある学生の長期インターンシッププログラム(2014年)や、日本IBM初の企業内保育園の設立(2011年)、「LGBTQ+と職場」を活動テーマにした任意団体work with Prideの立ち上げ(2012年)や先にご紹介した障害者の新たな雇用とキャリアを考えるACEの立ち上げ(2013年)、従業員の同性パートナーに対する配偶者と同等の福利厚生制度の適用(2016年)など、社内の施策だけにとどまらず、社会にインパクトのあるさまざまな先進的で持続可能な取組みができたと思います。  日本人同士では出ないアイディアやヒント、サポートをもらうことも多く、また日本人の品質へのこだわりや、時間はかかっても確実に実行する国民性なども理解、尊重し、つねに新しいことに挑戦することを励まし続けられ、自分自身が「多様性から学び、多様な個性を包摂し、互いに切磋琢磨しながら成長し、新たな価値を創造していく」という、D&Iの神髄を体験し、それをプログラムや施策のデザインに活かすことができたと思います。日本人が曖昧にしてきた人権の問題についても、ホロコーストや人種隔離政策、西と東の分裂から民主主義や人権を獲得してきた歴史をベースにしたD&Iの考え方を海外の同僚との交流のなかから学んだことも、自分の考えや行動に大きな影響を与えました。  日本IBMでの12年半のD&I担当者の経験は厳しいことや辛いことも多かった(苦笑)ですが、人事のプロフェッショナルとしての考え方や姿勢、ユニバーサルな人事制度のデザインの仕方を学んだ時期であり、自分のキャリア形成の中心となる12年半でもあります。 3.オンラインで働く発達障害のある社員の働きぶり 八重田 EY Japanで働く従業員のみなさんのなかには、リモートで働く発達障害のある方が多いのでしょうか?その背景を含め、従業員のみなさんの具体的な働きぶりをお聞かせください。 梅田 長年、障害のある方の採用をするうえで、勤務地や通勤の問題が壁になることが多くありました。かかりつけのお医者さんや病院から離れられないという事情がありますし、企業が集中している日本の首都圏の朝晩の通勤ラッシュはすさまじく、耐えがたいものがありました。EY Japanでは、2018年から働き方改革によって在宅や遠隔地からのリモート勤務ができる体制になっていたのですが、お客さまの要請や監査業務の性質上、リモート勤務の活用は育児や介護の事情がある人に限定されている傾向がありました。それがコロナ禍によって、監査業務のデジタル化が一気に進み、早い段階から全従業員が完全在宅勤務に切り替え、さらに会社も業務理由でない地方への転居も支援するプログラムをつくったり、就職による転居が不要となるリモート雇用を開始するようになり、これを障害のある方の活躍支援に活かすことを考えました。  先で説明したDACでは2024年1月現在、約30人の方々が働いていますが、5人ほどがリモート雇用で、兵庫県、京都府、愛知県、埼玉県などに在住です。基本的には全員が在宅勤務ですが、オフィスに来るほうが生産性が高い場合や、仕事のリズムがつくりやすい人もいるので、上司と相談しながら、働く環境を自分で選べるようになっています。オフィスはチームの所属するフロアや場所はある程度決まっていますが、フリーアドレスで、一人で仕事に集中するためのスペースやWEB会議用の個別ブース、複数人数で会議するスペースなど、業務内容や好みに応じて座るところが選べるようになっています。立位で仕事したり、バランスボールのような椅子に座って体幹を鍛えながら仕事ができるスペースもあります。 4.高等教育機関との連携 八重田 現在は、筑波大学のヒューマンエンパワーメント推進局の教授を兼務されていますが、大学との共同研究のような活動もされているのですか? 梅田 神経学的多様性の考え方をふまえ、筑波大学での研究ユニットでは、多様性のアセスメント研究により、発達障害のある学生のニーズを的確にとらえ、卒業後に社会で活躍できる人材教育とその支援方法や支援ツールの開発といった研究が行われています。筑波大学とは日本IBM在籍時に障害のある学生のインターンシップや女性研究者育成のプロジェクトを通じてかかわりがあり、女性やLGBTQ+、障害者のキャリア開発支援施策を充実させるという立場で教育や研究にかかわらせていただいております。筑波大学での授業以外の研究活動として、発達障害のある学生支援プロジェクト(RADD)と、筑波大学インクルーシブ・リーダーズ・カレッジ(DE&Iに関心のある社会人を対象としたeラーニングとウェビナーによる筑波大学エクステンションプログラム)にかかわっています。蛇足ですが、大学教員のキャリアとライフの両立支援も大切ですね。 八重田 ACEの活動やEY Japanでのインターンシップについてもう少しお話をうかがえますか? 梅田 2013年に大手企業の共同事業体としてACEが設立されたのですが、法定雇用率達成を目的とするのではなく、障害のある従業員の働きがいとキャリアアップの向上を目ざそうというものです。これは企業の成長につながる重要な取組みであり、2010年から日本IBMの研修施設を利用して経営者を対象としたアクセシビリティ・フォーラムを毎年開催しておりました。2017年からは、ACEインターンシップという形で、ACE参加企業が合同でインターンシップの募集やガイダンスを提供し、障害のある学生が複数の企業でインターンシップに参加できる機会を提供し続けています。  また、人事担当者および障害のある従業員向けの研修や、「わいがやセミナー」といった障害のある従業員の異業種交流会などを行っています。当事者によるセルフ・アドボカシー(※3)をその人のスキルとして高めることはとても重要ですので、将来のロールモデルとなるような障害のある学生が全国から集まってきますし、他社の同じ障害のある仲間や先輩・後輩と交流する機会です。「わいがやセミナー」も毎回盛況です。  またACEの活動のなかでの大きな成果だと思うのはロールモデル表彰です。これはACE参加企業が毎年、自社で専門職としてビジネスやブランド力向上に貢献している障害のある従業員とその事例を推薦し、表彰していく取組みです。タレントと事例の発掘、共有に大きな役割を果たしています。例えば、ある年の大賞では、バックオフィスで働いていた通信会社の聴覚障害のある従業員が、同じ障害のある友人から手話が通じないので店頭でスマートフォンが買えないという悩みや相談を多く聞いたことから、社内人材公募の機会に店頭販売の営業職に職種転換し、聴覚障害者への売上げを飛躍的に伸ばし、それに気がついた企業側が、主要店舗に手話ができる販売員を配置するようになったというものがあります。こうした会社のビジネスモデルも変えるような事例や人物を発掘し、社会に広げていくというのもACEの掲げている使命の一つです。  EY Japanでは、2022年2月に精神・発達障害の方向けのインターンシッププログラムを試行として2週間実施しました。参加者は25人。EY Japanでは、公認会計士、税理士、コンサルタントという高度専門職が活躍する企業ですが、公認会計士や税理士の資格試験は非常に難関で数年かけて資格取得に挑戦しなければならず、日本では女性の比率も低い(2割程度)業界です。逆にいうと伸び代があると考え、日本IBMと同じような長期の学生インターンシップが実現できないかと考えました。20校くらいの大学の障害者支援室の担当者にヒアリングを行ったところ、理数系の障害のある学生のキャリアはIT企業によって広がりつつある一方、文系の障害のある学生の出口がなかなかないといった実情をうかがいました。2週間の試行では、従業員ボランティアを公募したところ、30人以上が手伝ってくれることになり、そのなかの数人から当事者であることや、当事者を家族にもつというカミングアウトがありました。このインターンシップを行ったことは、私がEY Japanで障害者雇用施策を考えるうえで大きなターニングポイントとなりました。公認会計士や税理士の資格取得を目ざす学生インターンシップを実現させるためには、経済支援も含めて、いくつかクリアしなければならない課題も明確になったので、一旦、DACでの雇用形態にしましたが、近い将来、必ず実現させたいと考えています。 5.競争的雇用と福祉的就労 八重田 障害のある方が企業などでの競争的雇用を推進されている一方で、福祉的就労についてはどのようにお考えですか? 梅田 福祉サービスを必要とする方がいらっしゃるわけですから、ご本人やご家族の希望とニーズに見合ったサービスは必要です。ただ、現状では単純作業や定型的な業務が多く、個人がさまざまなことにチャレンジしたり、働き方や働く内容を選択できる状況ではないように思うので、福祉的就労のサービスを提供される支援者の方々ともっと交流を深めたいと思います。ビジネス畑出身の就労系障害者福祉施設スタッフが多い事業所も数多くあると思いますが、社会貢献や障害理解についてDE&Iの視点が今後さらに共有されていけば、ビジネスと福祉との間にありがちな壁のようなものが薄らいでいくかもしれません。障害のある方の人材開発を教育機関、企業、福祉が連動して早期から行うことで障害者の働く場を確実に提供することが求められています。 八重田 最後に、日本の障害者雇用の未来についてお考えをお聞かせください。 梅田 個人的には、DE&Iの組織や個人への浸透度を測る指標を開発し、企業が障害者の活躍をどの程度応援し、成果をあげているか、もっと可視化されるようになればと思います。障害者雇用のロールモデル企業に対する価値を認めて表彰するなどの仕組みも必要です。 6.おわりに  今回の取材では、たまたま筆者と同じ筑波大学でDE&Iにかかわるお仕事を兼務されている梅田氏にお話をうかがう機会を得た。同じ筑波大学といっても私の勤務地は東京キャンパスがメインなので、筑波キャンパスには授業や会議などで行く以外には、あまり「包摂的」にかかわっていないという現状がある。私は筑波キャンパスで職業リハビリテーションを、教育学、心理学、障害科学専攻の学生に教える機会はあるが、アメリカのようにビジネス科学専攻の学生や院生に職業リハビリテーションを教える機会というものはほとんどない。例えば、私の旧友の一人がコーネル大学の職業リハビリテーション領域でDE&Iにかかわっていて、ビジネススクールと連携したカリキュラムを提供しているが、受講する方はかなり真剣に勉強しないと理解できそうもないな、というハイスペックな内容という印象を受ける。オンライン受講もできるので、以前個人的に受講登録まで進めたことはあるのだが、授業料や時間的制限という理由から未受講のままである。ならば、日本で同様のカリキュラムをつくって職業リハビリテーションとビジネス科学を融合させればいいのか、などと得意の妄想をしていたところ、今回の取材と重なった。「さて、この先どうする?」というところで相変わらず悶々としているが、ビジネスの世界のことを知らずに職業リハビリテーションをうまく進めることはできない。今回の取材を通じて、「ああ、もっと勉強しよう」という勇気をいただいた気がする。  DE&Iと職業リハビリテーションが親戚のようなつき合いに留まっている現状で、じつは同じところを目ざしているのだということを知るとき、それこそ、多様性、公平性、包摂性の意味に少しだけ寄り添うことができたような、そんな心理的安定を今回のインタビューを通して得ることができたように思う。 ※1 世界4大ファーム:「PwC」、「EY」、「KPMG」、「デロイトトーマツ」の4つの巨大な会計事務所グループのこと ※2 BHE:Bureau of Human Empowermentの略 ※3 セルフ・アドボカシー:自分に必要なサポートを、自分でまわりの人に説明し理解してもらう「自己権利擁護」活動のこと 写真のキャプション EY Japan株式会社でDE&Iディレクターを務める梅田惠さん(写真提供:EY Japan株式会社) インターネットを利用したビデオ会議システムで、梅田さんにお話をうかがいました(写真提供:八重田 淳)