平成24年度障害者職域拡大等調査報告書No.2 中小企業における初めての障害者雇用に係る課題と対応に関する調査 ※当テキストファイルにおいては、本文中にある図及び表を除いておりますのでご了知おきください。 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 はじめに 現在、大企業と比較すると中小企業では障害者雇用が進んでいない状況がうかがえる中、平成24年度障害者雇用状況報告の集計結果によれば、300人未満規模の中小企業の雇用率未達成企業のうち、約4分の3(73.4%)は障害者を雇用していないという現状にあります。このため1人目の障害者雇用に当たって何らかの課題を抱えている中小企業が大変多いのではないかと考えられます。 このような状況への対応として、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構では、中小企業において初めて障害者を雇用するに当たり、どのような課題が生じるのかの把握に努め、また、具体的な事例について中小企業からヒアリングを行い、これらをもとに学識経験者や企業関係者、行政職員が議論を重ね、中小企業において初めて障害者を雇用する際のポイントとなる事項と必要な支援を取りまとめました。 こうした課題の把握に当たって実施したアンケート調査及びヒアリング調査にご協力いただきました中小企業の皆様には改めて深く感謝申し上げる次第です。 本報告書が、これから初めて障害者を雇用しようとする中小企業の皆様のお役に立つものとなれば幸いです。 平成25年3月 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 中小企業における初めての障害者雇用に係る課題と対応に関する調査委員会委員 (委員) (座長)国際医療福祉大学大学院副大学院長 岩谷力 株式会社ダイキンサンライズ摂津代表取締役社長 應武善郎 有限会社奥進システム代表取締役 奥脇学 和光産業株式会社代表取締役 加藤勇 日本大学文理学部社会学科准教授 川村宣輝 株式会社大協製作所代表取締役社長 栗原敏郎 社会福祉法人南高愛隣会理事長 田島良昭 株式会社東出家具店代表取締役社長 東出昇 横河電機株式会社CSR部CSR課 箕輪優子 厚生労働省職業安定局障害者雇用対策課長 山田雅彦 九州看護福祉大学看護福祉学部社会福祉学科長 吉光清 (オブザーバー) 厚生労働省職業安定局障害者雇用対策課 田窪丈明主任障害者雇用専門官 (五十音順・敬称略) 概要 1目的 現在の中小企業を取り巻く障害者雇用の状況を踏まえ、中小企業における初めての障害者雇用の実態とそれに伴う課題を把握するとともに、具体的な事例について中小企業からヒアリングを行うことによって、中小企業が初めて障害者を雇用する際のポイントとなる事項と必要な支援を明らかにし、その結果を広く事業主等に普及することにより、中小企業における障害者雇用の推進を図る。 2方法 (1)全国の中小企業のうち、無作為に抽出した700社を対象にアンケート調査を実施した。回収状況は318社(回収率45.4%)であり、このうち近年初めて障害者を雇用した企業は110社であった。 (2)アンケート調査結果や最初に雇用した障害者の障害種別等を勘案して13社を選択し、ヒアリング調査を行った。 (3)調査委員会において、両調査結果の分析を行うとともに、考察及びこれから初めての障害者雇用を目指す中小企業に対する提言を取りまとめた。 3結果及び分析 (1)アンケート調査 @初めて障害者を雇用した企業の属性 回答のあった初めて障害者を雇用した企業の業種は「医療、福祉」が33社(30.0%)、「製造業」が27社(24.5%)、「サービス業(他に分類されないもの)」が13社(11.8%)、「卸売業、小売業」11社(10.0%)であり、この4業種で全体の76.4%を占めた。 常用雇用労働者数は「56人以上100人以下」が41社(37.3%)、「101人以上200人以下」が40社(36.4%)、「201人以上300人以下」が12社(10.9%)であった。 最初に雇用した障害者の障害種別が「身体障害者」であったとする企業は64社(58.2%)、「知的障害者」であったとする企業は39社(35.5%)、「精神障害者」であったとする企業は18社(16.4%)であった。 最初に雇用した障害者が従事する職業では、「事務従事者」が24社(21.8%)、「運搬・清掃・包装従事者」が19社(17.3%)、「生産工程従事者」が18社(16.4%)、「サービス職業従事者」が17社(15.5%)などであった。 A初めての障害者雇用における課題 以前に障害者を雇用しなかった理由としては、「障害の状況に応じた職務の設定や作業内容、作業手順の改善が難しかった」を5割強、「採用・選考に関するノウハウが乏しかった」、「支援者・指導者の配置等、人的支援の体制の整備が困難だった」、「障害の状況に応じた労働条件の設定が困難だった」を3割程度の企業が選択した。また最大の理由の回答については複数回答と同様、「障害の状況に応じた職務の設定や作業内容、作業手順の改善が難しかった」が最も多く、4割弱の企業が選択した。 初めて障害者を雇用することとしたきっかけは、ハローワークや特別支援学校など外部機関からの依頼やあっせん等をきっかけとする項目を選択した企業が5割弱であり、障害者雇用への責任を認識したことがきっかけとする項目を選択した企業が3割強であった。 初めて障害者を雇用するに当たって困ったこととしては、「従事作業の設定、作業内容や作業手順の改善」を5割強、「障害の状況を踏まえた労働条件の設定」、「支援者や指導者の配置」を3割程度、「採用基準や選考方法」、「人材の確保」、「現場の社員の理解を得ること」を2割程度、「施設・設備の整備」、「何から手をつければいいか分からなかった」を1割程度の企業が選択した。また、困ったことへの対応策としては「採用基準や選考方法」及び「何から手をつければいいか分からなかった」の項目では「外部機関の支援の利用」が最も多く、それ以外の項目ではいずれも「自社による工夫・改善を実施」が最も多かった。 B初めての障害者雇用に当たっての支援機関等の利用 いずれかの支援機関を利用した企業は80社(72.7%)であった。「ハローワーク」を利用した企業が6割強と最も多く、次いで「特別支援学校」と「障害者就業・生活支援センター」が2割程度であった。なお、いずれかの支援機関を利用した企業の1社当たりの平均利用機関数は2.20機関であった。 支援制度の活用状況としては、「特定求職者雇用開発助成金」の活用が4割強と最も多く、次いで「障害者試行雇用(トライアル雇用)奨励金」が3割強程度あった。 C今後の障害者雇用の考え方 障害者を雇用した後の考え方の変化として、「一口に障害と言っても個人差が大きいことがわかった」を選択した企業は6割強で最も多く、次いで「職務内容や施設・整備、人的支援等の環境を整備すれば、障害があっても能力を発揮して働けることがわかった」が4割、「大規模なハード面の改善が無くても、工夫すれば受入れが可能であることがわかった」が3割強程度であった。 今後の障害者雇用への方針としては、「現在の状態が維持できればよい」を選択した企業が3割強と最も多く、次いで「雇用する障害者をさらに増やしたい」、「障害者の従事する職域をさらに拡大したい」も3割程度あった。 障害者の職場定着や新たな雇用に当たって必要な支援としては、「採用経路、求職者についての情報の提供」を選択した企業が3割強で最も多く、次いで「職場定着、さらにその後の職業生活の持続の段階における外部の支援機関等からの支援」、「障害者雇用に関する法律・制度等についての詳細な情報の提供」、「雇用形態や労働条件の設定、受入体制の整備等に関する助言」が3割弱であった。 (2)ヒアリング調査 @障害者を以前に雇用しなかった理由について、アンケート調査では「障害の状況に応じた職務の設定や作業内容、作業手順の改善が難しかった」を選択する企業が多かったが、ヒアリングにおいても対人業務や専門技術を要するため障害者には難しい、馴染まないと考えている企業があった。このほか、障害者を指導したり雇用管理するための人員配置が難しいとする企業や、そもそも障害者雇用の義務があることを知らなかったとする企業もあった。 A初めて雇用することとなったきっかけについて、ヒアリング対象企業にあってはハローワークからの紹介や、特別支援学校、就労支援機関からの推薦により受け入れた企業などの事例があった。また、法定雇用率の達成に向けてハローワークや民間の職業紹介事業者に求人を出したり、自社ホームページに求人を掲載する企業がみられた。 B障害者雇用に当たっての課題と対応については、作業内容の設定は自社で取り組む企業が多く、事前に各部署の関係者を集めた会議を開催して検討したり、作業マニュアルを整備する企業もみられた。また、初めての障害者雇用が知的障害者や精神障害者である場合には、外部機関の支援を受けている企業が一定程度あった。 指導者の配置に関しては、特別な管理体制を構築している企業は少なく従来からの管理体制で業務の指導を行っている企業が多かった。また、障害者が登録している支援機関に定期的なフォローアップをしてもらっている企業もあった。 このほか、現場の社員の理解を得るため、事前に社内研修等を行ったり、現場従業員の不安の解消のために話し合いの場を設定している企業もあった。 C障害者を雇用した後の考え方の変化については、知的障害者や精神障害者を職場実習で受け入れることによって、障害者雇用は身体障害者が対象であるとの固定観念が変わったという企業や、障害特性を理解することにより障害者を見る目が変わったという企業があった。さらには、作業手順を確実にこなす知的障害者の特性が活かされて品質向上につながったという企業もあった。 D障害者雇用を躊躇している中小企業へのアドバイスとしては、障害者雇用を難しいと思い込まず、障害者面接会へ参加したり、職場実習の受入れなどによって障害者に直接接してみるなど、具体的な行動を取ることが重要であるという企業が一定程度あった。 また、先進企業への見学でイメージを作ることが重要とのコメントもあった。 このほか「企業として社会的責任の観点を持つことが大切」、「職務を限定せずに様々な仕事を試すことで障害者に適した仕事が見つかる」などのコメントがあった。 4考察と提言 (1)初めての障害者雇用での課題と対応について 作業内容の設定、作業内容や作業手順の改善については、自社による取組で乗り切れる場合もあるものの、障害者を受け入れる前に必要に応じて支援機関からその職務内容や雇用管理の仕方等に関する支援を受けることが有効な場合もあると考えられる。 支援者や指導者の配置に関しては、配属部署の管理体制を大幅に変更する必要はないが、総務・人事部門が障害者の管理に対して関わったり、支援機関を有効に活用することで障害者の雇用管理の負担が配属部署に偏らないように工夫して進めていくことが重要と考えられる。 このほか、雇用の検討の初期段階からどのように進めたらよいのか分からない場合、障害者を雇用している企業に出向き、先進事例に学ぶという対応も有効な手段と思われる。なお、支援機関が事前に先進企業の職場見学について専門的な見地からアドバイスをするなどによって、一層の効果が期待されるのではないかと考えられる。 (2)初めての障害者雇用に当たって利用した支援機関及び支援制度について 障害者の雇用経験のない中小企業にあっては支援制度そのものを知らない企業が少なからずみられることもあり、支援機関側の課題として各支援機関や各種支援制度を、企業が体系的に活用しやすくしていくための在り方について検討していくことが望まれる。そのためには支援機関同士による日頃の連携が重要であろう。 (3)障害者を雇用した後、障害者を雇用するということに対する考え方の変化について アンケートによれば、初めて障害者を雇用した企業のうち、半数を超える企業に「障害者雇用を当初思っていたよりもスムーズに進めることができた」とする考え方の変化がみられたことから、まずは障害者を未だ雇用していない企業に対して、障害者雇用への不安や負担感を軽減し、障害特性や能力についての適切な理解を促進していくための取組が求められるものと考えられる。併せて、障害者雇用がもたらすメリットや社会におけるコンプライアンス重視の意識の進展を十分認識、理解をした上で、障害者雇用を進めていく必要がある旨を周知し、理解を求めていくことが重要と考える。 (4)障害者の職場定着や新たな雇用に当たって必要な支援について 人材確保は、企業側が最も重要視するところと思われる。支援機関と接点がない企業に対しては、まずハローワークを訪れるとともに、地元の各支援機関への求職者に関する情報収集も積極的に行っていくように提案することが重要と考えられる。 アンケート及びヒアリング結果から導き出される考察及び中小企業における初めての障害者雇用に係る課題と対応に関する調査委員会の委員による意見としては以上であるが、同委員会の各委員によって、調査結果からは直接導き出されないものの、ジョブコーチ支援に関し、とりわけ精神障害者や知的障害者の雇用に当たっては、有効な支援としてその必要性を企業に周知していくことが適切であるという意見がまとめられた。 以上を踏まえ提言を行った。 (提言1)障害者の能力の適切な理解と評価 初めての障害者雇用に躊躇している中小企業にあっては、雇用に向けた第一歩として、障害者の特性や能力に関して適切に理解するために、職場実習を受け入れたり支援機関に対して雇用を躊躇する理由を具体的に相談してみることが勧められる。 (提言2)先進企業に学ぶ 実際に障害者雇用に向けた取組を進めようとするものの、何から手を付けていくべきか悩む企業にあっては、企業見学等を行いつつ先進企業の取組に学んでみること。また、見学先の選定に当たり迷うことがあれば、支援機関に相談してみることが勧められる。 (提言3)障害者が従事する職務に関する事前の検討 初めて障害者を雇用する方針を固めようとする企業にあっては、職場実習など試行的な受入れに先だって、支援機関にも相談しつつ、障害者の職務等についてあらかじめ社内で検討してみることが勧められる。 (提言4)障害者雇用がもたらすメリット、意義の理解 障害者雇用の検討に当たっては、コストがいくらかかるかということだけでなく、障害者雇用が社員に与える意識の変化などのメリットとともに、平成25年4月から施行される「国等による障害者就労施設等からの物品等の調達の推進等に関する法律」に基づく制度等を踏まえた企業の経営面からみたメリットや、積極的な障害者雇用がもたらす企業の社会的評価の向上、社会貢献といったメリットや意義があることについても理解した上で検討することが勧められる。 (提言5)求職者に関する情報の積極的な収集 求職者に関する情報は、企業自らもハローワークをはじめとした各支援機関に相談するなど、その収集に積極的に当たってみることが勧められる。 なお、初めての障害者雇用の検討であることから各支援機関について何もわからないという場合にあっては、最初に最寄りのハローワークを訪ねてみることや、(独)高齢・障害・求職者雇用支援機構の発行する「はじめからわかる障害者雇用 事業主のためのQ&A集」(ホームページでも閲覧可能)などを参考にすることなどから始めてみることが勧められる。 (提言6)障害者雇用に当たっての配置部署と総務・人事等の部署との連携 障害者を採用する際には、複数の部署から構成される組織をもった企業の場合、障害者の配属部署だけではなく総務・人事部門など複数の部署が直接的・間接的に関わること。また必要に応じて支援機関に相談してみることが勧められる。 (提言7)ジョブコーチの積極的な活用 ジョブコーチによる支援について、とりわけ精神障害者や知的障害者を雇用する場合にあっては積極的に受けてみることが勧められる。 目次 第1章調査の目的と方法 1目的:15ページ 2方法:15ページ 第2章アンケート調査結果概要 1初めて障害者を雇用した企業の属性:19ページ (1)業種 (2)常用雇用労働者数 (3)最初に雇用した障害者の障害種別 (4)最初に雇用した障害者が従事する職業 2初めての障害者雇用における課題:22ページ (1)以前に障害者を雇用しなかった理由 (2)初めて障害者を雇用することとしたきっかけ (3)初めて障害者を雇用するに当たって困ったことと困った項目それぞれについての対応 ア困ったこと(総括) イ困ったことへの対応策(総括) (ア)従事作業の設定、作業内容や作業手順の改善に対する対応策 (イ)障害の状況を踏まえた労働条件の設定に対する対応策 (ウ)支援者や指導員の配置に対する対応策 (エ)採用基準や選考方法(面接の仕方など)に対する対応策 (オ)現場の社員の理解を得ることに対する対応策 (カ)障害者向けの施設や設備の整備に対する対応策 (キ)何から手をつければいいか分からなかったに対する対応策 3初めての障害者雇用に当たっての支援機関等の利用:31ページ (1)初めて障害者を雇用するに当たっての支援機関の利用状況 ア支援機関の利用状況の概観 イ支援機関別の利用状況 ウ複数の支援機関の利用状況 エ困った事項別の支援機関の利用状況 (2)初めての障害者雇用に当たっての支援制度の活用状況 4今後の障害者雇用の考え方:37ページ (1)障害者を雇用した後、障害者を雇用するということに対する考え方の変化 (2)今後の障害者雇用についての方針 (3)障害者の職場定着や新たな雇用に当たって必要な支援 第3章ヒアリング調査結果の概要 1ヒアリング結果要旨一覧:45ページ 2事業所ヒアリング調査結果:49ページ (1)A社 (2)B社 (3)C社 (4)D社 (5)E社 (6)F社 (7)G社 (8)H社 (9)I社 (10)J社 (11)K社 (12)L社 (13)M社 第4章考察と提言 1初めての障害者雇用での課題と対応結果にかかる考察:91ページ 2初めての障害者雇用に当たって利用した支援機関及び支援制度結果にかかる考察:92ページ 3障害者を雇用した後、障害者を雇用するということに対する考え方の変化にかかる考察:93ページ 4障害者の職場定着や新たな雇用に当たって(助成金等経済的な支援のほかに)必要な支援にかかる考察:94ページ 5提言:95ページ 参考資料:99ページ アンケート調査票 アンケート自由記述等 参考文献一覧 第1章 調査の目的及び方法 1目的 現在の中小企業を取り巻く障害者雇用の状況を見ると、障害者の雇用の促進等に関する法律(平成20年改正)により障害者雇用納付金制度の対象事業主が段階的に拡大されていること、さらに平成25年4月1日より法定障害者雇用率が2.0%に引き上げられ、50人以上規模の企業において障害者1人以上の雇用義務が生じることから、今後、障害者雇用を推進しようとする中小企業の増加が見込まれる。 また、平成24年障害者雇用状況の集計結果を見ると、民間企業全体の平均実雇用率が1.69%であり、1,000人以上企業規模では1.90%、500〜1,000人未満企業規模では1.70%であるのに対し、56〜100人未満企業規模では1.39%、100〜300人未満企業規模では1.44%と、大企業と比較すると中小企業では障害者雇用が進んでいないことが示されている。 併せて、300人未満規模の中小企業の雇用率未達成企業のうち、約4分の3(73.4%)は障害者を雇用しておらず、1人目の障害者雇用に課題を抱えている中小企業が多いことがうかがえる。 こうした状況を踏まえ、今般、中小企業における初めての障害者雇用の実態とそれに伴う課題を把握するとともに、具体的な事例について中小企業からヒアリングを行うことによって、中小企業が初めて障害者を雇用する際のポイントとなる事項と必要な支援を明らかにし、その結果を広く事業主等に普及することにより、中小企業における障害者雇用の推進に資することを目的としている。 2方法 (1)アンケート調査 @対象:中小企業700社(平成22年6月1日には障害者の雇用がなかったが、その後、平成23年6月1日までに障害者を雇用した企業)(※)平成22年及び平成23年に障害者の雇用の促進等に関する法律に基づき、厚生労働省に障害者の雇用状況を報告した300人以下規模の企業であって、平成22年6月1日の同報告において、身体障害者、知的障害者又は精神障害者の雇用者数をゼロと報告した企業のうち、平成23年6月1日の同報告において、身体障害者知的障害者又は精神障害者を新規に雇用したと報告した企業2,393社をベースに無作為抽出をした700社。 A実施時期:平成24年10〜11月 B実施方法:郵送によるアンケート Cアンケートの内容 ア平成21年10月1日以前に障害者を雇用しなかった理由 イ平成21年10月1日より後に初めて障害者を雇用することとしたきっかけ ウ初めて障害者を雇用するに当たって困ったこと及びその対応 エ初めて障害者を雇用するに当たっての支援機関の活用状況 オ初めて障害者を雇用するに当たっての支援制度の活用状況 カ障害者を雇用した後、障害者を雇用するということに対する考え方の変化 キ今後の障害者雇用についての方針 ク障害者の職場定着や新たな雇用に当たって(助成金等経済的な支援のほかに)必要な支援 ア〜キについては、@の対象企業のうち、平成21年10月1日以前に障害者を雇用したことがなく、平成22年6月2日から平成23年6月1日の間に初めて障害者を雇用したと回答があった企業(「初めて障害者を雇用した企業」と呼ぶ。第2章、第3章及び第4章でも同じ)のみに回答を求めた。 D回収状況:318社(回収率45.4%) なお、初めて障害者を雇用した企業数は110社。 (2)ヒアリング調査 @対象:アンケートに回答があった初めて障害者を雇用した企業のうち、@身体障害者を雇用:3社(雇用後退職となり、その後精神障害者を雇用した事例1社を含む)、A知的障害者を雇用:3社、B精神障害者を雇用:6社、C複数の障害種別にまたがる複数の障害者を雇用:1社である。 A実施時期:平成24年11月〜平成25年1月 Bヒアリングの内容(※) ア以前に障害者を雇用しなかった理由 イ初めて障害者を雇用することとしたきっかけ、当時の障害者雇用に関する認識 ウ初めて障害者を雇用するに当たっての課題と対応 エ初めて障害者を雇用するに当たって利用した支援機関の経緯、内容、効果、順序等 オ障害者雇用にかかる社内での変化の有無と内容 カ障害者を初めて雇用した後に、さらに障害者を雇用した実績があるか、または今後採用する予定はあるか キ障害者雇用を推進するに当たって求める支援の内容 ク障害者雇用を躊躇している中小企業に対するアドバイス (※)全体を通じて、アンケート調査の回答の背景等をさらに深くたずねるというスタンスで実施 第2章 アンケート調査結果概要 第1章で述べたとおり、アンケートは、「平成22年6月1日には障害者の雇用がなかったが、その後、平成23年6月1日までに障害者を雇用した中小企業」700社に対して調査を実施し、回答があった318社のうち、「平成21年10月1日以前に障害者を雇用したことがなく、平成22年6月2日から平成23年6月1日の間に初めて障害者を雇用したと回答があった企業」(「初めて障害者を雇用した企業」のこと。第1章2.方法(1)アンケート調査、を参照)110社を主な分析の対象としている。 第2章では、アンケート全回答企業(※)及び初めて障害者を雇用した企業の属性について概観の上、初めて障害者を雇用した企業における、雇用当時に生じた課題、支援機関等の利用及び今後の障害者雇用の考え方に関するアンケート結果を総括する。 ※アンケート全対象企業に回答を求めた項目は、業種、常用雇用労働者数及び障害者の職場定着や新たな雇用に当たっての必要な支援の3項目である。 1初めての障害者を雇用した企業の属性 (1)業種 「医療、福祉」33社(30%)、「製造業」27社(24.5%)、「サービス業(ほかに分類されないもの)」13社(11.8%)、「卸売業、小売業」11社(10%)であった。この4業種の合計は84社であり全体の76.4%となった(表1参照)。 なお、アンケート全回答企業318社の業種は、「医療・福祉」84社(26.4%)、「製造業」77社(24.2%)、「卸売業、小売業」37社(11.6%、「サービス業(ほかに分類されないもの)」37社(11.6%)であった。この4業種の合計は235社であり全体の73.9%であった(表2参照)。 (2)常用雇用労働者数 常用雇用労働者数の区分は「56人以上100人以下」41社(37.3%)、「101人以上200人以下」40社(36.4%)、「201人以上300人以下」12社(10.9%)、「55人以下」8社(7.3%)、「301人以上」8社(7.3%)であった(表3参照)。 なお、アンケート全回答企業318社による常用雇用労働者数の区分は、「101人以上200人以下」120社(37.7%)、「56人以上100人以下」103社(32.4%)、「201人以上300人以下」48社(15.1%)、「55人以下」28社(8.8%)、「301人以上」14社(4.4%)であった(表4参照)。 (3)最初に雇用した障害者の障害種別 初めて雇用した障害者の障害の種類が「身体障害者」であったとする企業は64社(58.2%)、「知的障害者」であったとする企業は39社(35.5%)、「精神障害者」であったとする企業は18社(16.4%)であった(表5参照)。 (4)最初に雇用した障害者が従事する職業 「事務従事者」24社(21.8%)、「運搬・清掃・包装従事者(倉庫作業、荷造り、清掃、包装)」19社(17.3%)、「生産工程従事者(生産設備制御・監視、機械組み立て、製品製造・加工、機械検査等)」18社(16.4%)、「サービス職業従事者(介護サービス、理容師、クリーニング職、調理人、管理人等)」17社(15.5%)であった(表6参照)。 2初めての障害者雇用における課題 (1)以前に障害者を雇用しなかった理由(複数回答の上「最大の理由」を一つ選択) 複数回答の結果をみると、「障害の状況に応じた職務の設定や作業内容、作業手順の改善が難しかった」が最も多く、110社のうち61社(55.5%)であった。 次いで、「採用・選考に関するノウハウが乏しかった」36社(32.7%)、「支援者・指導者の配置等、人的支援の体制の整備が困難だった」35社(31.8%)、「障害の状況に応じた労働条件の設定が困難だった」33社(30.0%)であった。 また、障害者を雇用しなかった理由の中からさらに「最大の理由」の回答を求めたところ、複数回答と同様、「障害の状況に応じた職務の設定や作業内容、作業手順の改善が難しかった」が最も多く、110社中42社(38.2%)であった。 一方、複数回答で多かった「支援者・指導者の配置等、人的支援の体制の整備が困難だった」を「最大の理由」とした回答は3社(2.7%)であった(図1参照)。 (2)初めて障害者を雇用することとしたきっかけ 「ハローワークに出していた求人に対し、障害者の紹介があった」が最も多く、110社のうち26社(23.6%)であった。 次いで、「企業の社会的責任等を考え、会社として方針を決定した」19社(17.3%)、「障害者の雇用義務があることを知った」16社(14.5%)、「特別支援学校や職業訓練を実施している機関から依頼・推薦があった」15社(13.6%)、「就労支援機関から依頼・推薦があった」11社(10.0%)であった。 なお、「その他」が18社(16.4%)あったが、その他の理由としては、「ハローワークから指導を受けたから」、「グループ会社からの転籍があったから」、「従業員が障害者認定を受けたから」等があった。 これらの結果のうち、「ハローワークに出していた求人に対し、障害者の紹介があった」、「特別支援学校や職業訓練を実施している機関から依頼・推薦があった」及び「就労支援機関から依頼・推薦があった」を合計し、外部機関からの依頼やあっせん等を受けたことが初めての障害者雇用のきっかけであるとする企業について見ると、52社(47.2%)であった。 また、「企業の社会的責任等を考え、会社として方針を決定した」と「障害者の雇用義務があることを知った」を合計し、障害者雇用への責任を認識したことが初めての障害者雇用のきっかけであるとする企業について見ると35社(31.8%)であった。(図2参照)。 次に、初めて雇用した障害者の障害の種類別(※)に見ると、身体障害者では「ハローワークに出していた求人に対し、障害者の紹介があった」が54社のうち16社と最も多かったが、知的障害者では「特別支援学校や職業訓練を実施している機関から依頼・推薦があった」(32社のうち12社)、精神障害者では「企業の社会的責任等を考え、会社としての方針を決定した」(12社のうち4社)が最も多かった(表7参照)。 (※)障害の種類別の集計に当たっては、初めて雇用した障害者を「身体障害者」、「知的障害者」又は「精神障害者」のいずれか単一の障害の種類を雇用した企業を集計した。したがって初めて雇用した障害者が複数人あり、かつ、その障害の種類が複数となる12社については反映していない(以下同じ)。 (3)初めて障害者を雇用するに当たって困ったことと困った項目それぞれについての対応 ア困ったこと(総括) 「従事作業の設定、作業内容や作業手順の改善」が最も多く、110社のうち58社(52.7%)であった。 次いで、「障害の状況を踏まえた労働条件の設定」34社(30.9%)、「支援者や指導者の配置」31社(28.2%)、「採用基準や選考方法(面接の仕方など)」24社(21.8%)、「人材の確保(採用するルートなど)」20社(18.2%)、「現場の社員の理解を得ること」19社(17.3%)、「障害者向けの施設や設備の整備」15社(13.6%)、「そもそも何から手をつければいいのか分からなかった」13社(11.8%)であった。 なお、「企業トップの理解を得ること」3社(2.7%)が最も少なかった(図3参照)。 雇用した障害者の障害の種類別にみると、全障害者に共通して「従事作業の設定、作業内容や作業手順の改善」が最も多く、身体障害者は54社のうち21社、知的障害者は32社のうち20社、精神障害者は12社のうち10社であった。 また、「支援者や指導者の配置」については、身体障害者では54社のうち7社、知的障害者では32社のうち13社、精神障害者では12社のうち5社であった(表8参照)。 イ困ったことへの対応策(総括) 「困ったこと」((3)ア参照)のうち、「採用基準や選考方法(面接の仕方など)」及び「何から手をつければいいか分からなかった」以外の項目では、いずれも「自社による工夫・改善を実施」が最も多かった。 以下、「困ったこと」の内容別に対応を見ていくこととする。 (ア)従事作業の設定、作業内容や作業手順の改善に対する対応策 「自社による工夫・改善を実施」が最も多く、58社のうち41社であった。次いで「ハローワーク、地域障害者職業センター等外部機関の支援の利用(以下「外部機関の支援の利用」という)14社、「職場実習等試行的な受入れ」12社であった(表9参照)。 これを障害の種類別に見ると、「自社による工夫・改善を実施」は、身体障害者では21社のうち17社、知的障害者では20社のうち13社、精神障害者では10社のうち5社であった。 「外部機関の支援の利用」は、身体障害者では21社のうち1社、知的障害者では20社のうち6社、精神障害者では10社のうち5社であった。 「職場実習等試行的な受入れ」は、身体障害者では21社のうち3社、知的障害者では20社のうち7社、精神障害者では10社のうち1社であった(表10参照)。 (イ)障害の状況を踏まえた労働条件の設定に対する対応策 「自社による工夫・改善を実施」が最も多く、34社のうち21社であった。「外部機関の支援の利用」も34社のうち13社であった(表11参照)。 これを障害の種類別に見ると、「自社による工夫・改善を実施」については、身体障害者では12社のうち11社であり、知的障害者では13社のうち5社、精神障害では4社のうち3社であった。「外部機関の支援の利用」については、身体障害者では12社のうち2社、知的障害者では13社のうち6社、精神障害者では4社のうち2社であった(表12参照)。 (ウ)支援者や指導員の配置に対する対応策 「自社による工夫・改善を実施」が最も多く、31社のうち20社であった。次いで、「外部機関の支援の利用」9社であった(表13参照)。 これを障害の種類別に見ると、全ての障害種類で「自社による工夫・改善を実施」が最も多かった。また、知的障害者においては、「外部機関の支援の利用」が13社のうち5社であった(表14参照)。 (エ)採用基準や選考方法(面接の仕方など)に対する対応策 「外部機関の支援の利用」が最も多く、24社のうち13社であった。次いで、「自社による工夫・改善を実施」が10社であった。(表15参照)。 回答数そのものが少ないものの、これを障害の種類別に見ると、特定の障害種類に偏ることなく概ね全ての障害種類で「自社による工夫・改善を実施」、「外部機関の支援の利用」が一定数あった(表16参照)。 (オ)現場の社員の理解を得ることに対する対応策 「自社による工夫・改善を実施」が最も多く、19社のうち12社であった。次いで、「職場実習等試行的な受入れ」が6社であった(表17参照)。 回答数そのものが少ないものの、これを障害の種類別に見ると、特定の障害種類に偏ることなく概ね全ての障害種類別で、「自社による工夫・改善を実施」があった。また、「職場実習等試行的な受入れ」も身体障害者及び知的障害者で一定数あった(表18参照)。 (カ)障害者向けの施設や設備の整備に対する対応策 「自社による工夫・改善を実施」が最も多く、15社のうち8社であった。次いで、「外部機関の支援の利用」も5社であった(表19参照)。 また、障害の種類別については表20のとおりであった。 (キ)何から手をつければいいか分からなかったに対する対応策 「外部機関の支援の利用」が最も多く、13社のうち9社だった。次いで、「障害者雇用の先進企業への相談等」が4社であった(表21参照)。 また、障害の種類別については表22のとおりであった。 3初めての障害者雇用に当たっての支援機関等の利用 (1)初めて障害者を雇用するに当たっての支援機関の利用状況 ア支援機関の利用状況の概観 「いずれかの支援機関を利用して障害者雇用をしたとする中小企業」は、110社のうち80社(72.7%)であった。 イ支援機関別の利用状況 初めて障害者を雇用した企業110社のうち、ハローワークについては、「利用した」71社(64.5%)、「知っていたが利用しなかった」35社(31.8%)であり、106社(96.4%)がハローワークを知っていた。 その他の支援機関については、知っていた(「利用した」及び「知っていたが利用しなかった」の回答の計)が約5割から7割程度であったが、「知らなかった」も約2割から4割程度あった。 ハローワーク以外で「利用した」が多い支援機関としては、「特別支援学校」23社(20.9%)、「障害者就業・生活支援センター」21社(19.1%)などがあった。一方、「地域障害者職業センター」、「就労移行支援事業者や就労継続支援事業者など、障害者の就労面を支援する機関」(以下「就労系支援機関」という。)及び「地域活動支援センターや生活支援センターなど、障害者の生活面を支援する機関」(以下「生活系支援機関」という。)について「利用した」は、いずれも12社(10.9%)であった。 「知っていたが利用しなかった」支援機関としては、「職業訓練機関」が58社(52.7%)と最も多かった。次いで、「地域障害者職業センター」54社(49.1%)、「特別支援学校」及び「障害者就業・生活支援センター」がいずれも53社(48.2%)であった(図4参照)。 いずれの支援機関も利用しなかった企業30社を除き、いずれかの支援機関を利用した企業(80社)を母数として各支援機関の利用割合をみると、「ハローワーク」が71社(88.8%)となった。 次いで、「特別支援学校」23社(28.8%)、「障害者就業・生活支援センター」21社(26.3%)、「地域障害者職業センター」、「就労系支援機関」及び「生活系支援機関」がいずれも12社(15.0%)、「障害者雇用企業」9社(11.3%)、「職業訓練機関」8社(10.0%)、「民間コンサルタント」6社(7.5%)であった(図5参照)。 初めて雇用した障害の種類別に見ると、身体障害者では「ハローワーク」を「利用した」が際立って多く、31社のうち30社であった。 知的障害者では「ハローワーク」を「利用した」が27社のうち23社と最も多かったが、「特別支援学校」や「障害者就業・生活支援センター」についても、それぞれ15社、13社と、約半数が利用したと回答した。 精神障害者でも、「ハローワーク」を「利用した」が最も多く、12社のうち10社であった。他には「生活系支援機関」が4社、「就労系支援機関」が3社であった(表23参照) ウ複数の支援機関の利用状況 初めての障害者雇用に当たり「利用した」支援機関の平均利用機関数は、1社当たり2.20機関であった。これを障害の種類別に見ると、身体障害者では1.65機関、知的障害者では2.82機関、精神障害者では2.24機関であった。 エ各支援機関における困った事項別の利用状況 「初めての障害者雇用に当たって困った事項」(上記2の(3)のアに記載)に対応するために、企業が支援機関を利用した際、どの項目に係る利用がなされたかについての状況は次のとおりであった。 ハローワークにおいては、「人材の確保(採用するルートなど)」が71社のうち16社と最も多かった。次いで「従事作業の設定・作業内容や作業手順の改善」13社、「採用基準や選考方法(面接の仕方など)」11社であった。他の機関と比較すると様々な事項において幅広に利用されていた。 地域障害者職業センターにおいては、「人材の確保(採用するルートなど)」が12社のうち6社、「従事作業の設定・作業内容や作業手順の改善」5社、「採用基準や選考方法(面接の仕方など)」4社であった。 障害者就業・生活支援センターにおいては、「人材の確保(採用ルートなど)」及び「障害の状況を踏まえた労働条件の設定」がいずれも21社のうち7社、「従事作業の設定・作業内容や作業手順の改善」6社であった。 就労系支援機関においては、「人材の確保(採用するルートなど)」及び「採用基準や選考方法(面接の仕方など)」が12社のうち3社、「そもそも何から手をつければいいか分からなかった」2社であった。 生活系支援機関においては、「採用基準や選考方法(面接の仕方など)」が12社のうち5社、「支援者や指導者の配置」4社であった。 特別支援学校においては、「人材の確保(採用ルートなど)」及び「障害の状況を踏まえた労働条件の設定」が、いずれも23社のうち5社であり、「支援者や指導者の配置」及び「採用基準や選考方法(面接の仕方など)」がいずれも3社であった。 職業訓練機関においては、「採用基準や選考方法(面接の仕方など)」が8社のうち4社、「人材の確保(採用するルートなど)」と「支援者や指導者の配置」が、いずれも3社であった(表24参照)。 (2)初めての障害者雇用に当たっての支援制度の活用状況 最も多くの企業が「利用した」支援制度は、「特定求職者雇用開発助成金」であり110社のうち49社(44.5%)であった。 次いで、「障害者試行雇用(トライアル雇用)奨励金」36社(32.7%)、「障害者初回雇用奨励金(ファースト・ステップ奨励金)」22社(20.0%)、「ジョブコーチによる支援」16社(14.5%)、「障害者雇用納付金制度に基づく助成金」14社(12.7%)であった。 「特定求職者雇用開発助成金」は、「知っていたが利用しなかった」よりも「利用した」が多かったが、その他の制度については、「利用した」よりも「知っていたが利用しなかった」が多かった。また、「障害者初回雇用奨励金(ファースト・ステップ奨励金)」と「障害者雇用納付金制度による助成金」については、「知らなかった」との回答が30%近くみられた(図6参照)。 雇用した障害の種類別に見ると、身体障害者については、「特定求職者雇用開発助成金」を「利用した」が最も多く、54社のうち21社であった。次いで「障害者初回雇用奨励金(ファースト・ステップ奨励金)」11社、「障害者試行雇用(トライアル雇用)奨励金」10社であった。一方、「障害者雇用納付金制度による助成金」は3社、「ジョブコーチによる支援」は2社であった。また、身体障害者の雇用に当たっては、他の障害の種類に比較して、いずれの支援制度も利用の割合が低くなっていた。 知的障害者については、「障害者試行雇用(トライアル雇用)奨励金」を「利用した」が最も多く32社のうち19社であった。次いで「特定求職者雇用開発助成金」18社、「ジョブコーチによる支援」9社、「障害者初回雇用奨励金(ファースト・ステップ奨励金)」7社、「障害者雇用納付金制度による助成金」6社であった。 精神障害者については、「特定求職者雇用開発助成金」を「利用した」が一番多く、12社のうち6社であった。 次いで「障害者試行雇用(トライアル雇用)奨励金」、「障害者初回雇用奨励金(ファースト・ステップ奨励金)」、「障害者雇用納付金制度に基づく助成金」(いずれも3社)であったが、「ジョブコーチによる支援」を「利用した」との回答はなかった(表25参照)。 4今後の障害者雇用の考え方 (1)障害者を雇用した後、障害者を雇用するということに対する考え方の変化 「一口に障害と言っても個人差が大きいことがわかった」が最も多く、110社のうち69社(62.7%)であった。 次いで、「職務内容や施設・整備、人的支援等の環境を整備すれば、障害があっても能力を発揮して働けることがわかった」44社(40.0%)、「大規模なハード面の改善が無くても、工夫すれば受入れが可能であることがわかった」35社(31.8%)であった。 一方、「想定していた以上に配慮が必要であると感じた」26社(23.6%)、「特に変わらなかった」19社(17.3%)であった(図7参照)。 (2)今後の障害者雇用についての方針 「現在の状況が維持できればよい」が最も多く、110社のうち36社(32.7%)であった。次いで「雇用する障害者をさらに増やしたい」33社(30.0%)、「障害者の従事する職域をさらに拡大したい」32社(29.1%)、障害者雇用に伴う諸課題への対応を見極めるため、試行的な雇用を行う中で、今後の方針について検討している段階である」29社(26.4%)であった。 (3)障害者の職場定着や新たな雇用に当たって必要な支援 初めて障害者を雇用した企業(110社)による回答では、「採用経路、求職者についての情報の提供」が最も多く、36社(32.7%)であった。次いで、「職場定着、さらにその後の職業生活の持続の段階における外部の支援機関等からの支援」32社(29.1%)、「障害者雇用に関する法律・制度等についての詳細な情報の提供」31社(28.2%)、「雇用形態や労働条件の設定、受入体制の整備等に関する助言」29社(26.4%)、「職場実習やトライアル雇用」26社(23.6%)であった。 一方、「作業内容、作業手順の見直し等、職務内容に関する助言」は19社(17.3%)、「上記の支援を体系的に活用するためのコーディネート」(※)は17社(15.5%)であり、「作業環境の改善等についての助言」は10社(9.1%)と最も少なかった(図9参照)。 なお、このアンケート項目は、アンケート全対象企業に回答を求めているが、回答があった318社に関する結果をみると、「採用経路、求職者についての情報提供」が最も多く、124社(39.0%)であった。次いで、「雇用形態や労働条件の設定、受入体制の整備等に関する助言」112社(35.2%)、「職場定着、さらにその後の職業生活の持続の段階における外部の支援機関等からの支援」102社(32.1%)、「障害者雇用に関する法律・制度等についての詳細な情報の提供」97社(30.5%)「職場実習やトライアル雇用」96社(30.2%)であった。順位に若干の違いがあるものの、初めて障害者を雇用した企業に対するアンケート結果と概ね同じ傾向であった。 ※上記の支援とは、「障害者雇用に関する法律・制度等についての詳細な情報の提供」、「作業環境の改善等についての助言」、「作業内容、作業手順の見直し等、職務内容に関する助言」、「雇用形態や労働条件の設定、受入体制の整備等に関する助言」、「採用経路、求職者についての情報の提供」、「職場実習やトライアル雇用」、「職場定着、さらにその後の職業生活の持続の段階における外部の支援機関等からの支援」を指す。 第3章ヒアリング調査結果の概要 第3章では、初めて障害者を雇用した中小企業(平成21年10月1日以前に障害者を雇用したことがなく、平成22年6月2日から平成23年6月1日の間に初めて障害者を雇用したと回答があった企業。第1章2.方法(1)アンケート調査を参照のこと)に対して行った個別ヒアリング結果を掲載した。それとともに、「職場実習が雇用につながった」、「作業内容の設定等は自社で検討した」など、この報告書を読まれた方がご自身の関心事項に基づいて個別ヒアリング結果を参照することができるように、ヒアリング結果の要点を「ヒアリング結果要旨一覧」として作成した。この中で、とりわけ初めての雇用を目指す企業に対し、何らかの示唆があることを期待した項目として「採用前における障害者雇用に関する認識」、「初めて雇用することとなったきっかけ」及び「障害者雇用を躊躇している中小企業へのアドバイス」については、項目欄に網掛けをして目が届きやすいようにした。 なお、各事例の本文に記載される支援機関名については、企業側で正確に把握していないケースもあったため、確認できた範囲で具体名を記載しているのでご留意いただきたい。 ※当テキストファイルでは、図表で示していた「ヒアリング結果要旨一覧」を文字に置き換えているため、実際の一覧表とは異なる部分があります。 1.ヒアリング結果要旨一覧 A:営業上関係があった就労支援機関から職場実習を勧められ、「精神障害者」を雇用した企業の事例 会社概要・労働者数:住宅関連機器の販売、施工・145人 初めて雇用した障害者(職務内容):精神障害(統合失調症)女性30代(事務補助) 採用前における障害者雇用に関する認識 ・「障害者=身体障害者」というイメージと、ハード面の改善が難しいことから受入れは無理との思い込みがあった。 ・他の障害種別については雇用管理体制、人材確保のルートなどのイメージがわかなかった。 初めて雇用すこととなったきっかけ ・A社が実施するイベントに参加していた就労支援機関から、職場実習の依頼を受けたこと。 障害者雇用に当たっての課題と対応 ・作業内容の設定等を社内で考えて練り上げた。 ・就業時間等の労働条件の設定は就労支援機関からのアドバイスを踏まえた。 利用した支援機関 ・就労支援機関 ・ハローワーク 障害者雇用にかかる社内での変化の有無と内容 ・ハード面の整備がなくとも障害者個々の能力を活かし、また周囲が職務内容を調整することで十分仕事ができるとわかった。 障害者雇用を躊躇している中小企業へのアドバイス ・会社自身が障害者雇用に「やる気」を持つことが大前提である。 ・社会的責任の観点を持つこと B:「知的障害者」を雇用するに当たって、社内で検討を進めるとともに、就労支援機関から推薦を受け、職場実習を行い、雇用に至った事例 会社概要・労働者数:障害者福祉施設・65人 初めて雇用した障害者(職務内容):知的障害男性30代(給食補助作業・事務補助作業) 採用前における障害者雇用に関する認識 ・従業員が56人未満であったため障害者雇用の義務があることの認識がなかった。 初めて雇用することとなったきかっかけ ・従業員が56名以上になったため。 ・自社の事業内容から知的障害者の雇用も行う方針としたこと。 障害者雇用に当たっての課題と対応 ・作業内容の設定等は自社で検討した。各部署の関係者を集めた会議の場において障害者の職務内容を検討し具体化した。 利用した支援機関 ・就労支援機関(当該機関の利用者から人選し、雇用した) 障害者雇用にかかる社内での変化の有無と内容 ・挨拶がしっかりできる人であり、社員間の「あいさつ」の励行が職場に浸透し、社内が明るくなった。 障害者雇用を躊躇している中小企業へのアドバイス ・自社の事業内容(市からの事業を受託する法人)から障害者雇用は当たり前と認識しており、同業者もそう認識するべき。 C:ハローワークの紹介で「知的障害者」を雇用した後、障害者雇用に当たっての不安材料が払しょくされ、障害者雇用が飛躍的に拡大した事例 会社概要・労働者数:切削工具、治具、金型部分等の設計、製作・184人 初めて雇用した障害者(職務内容):知的障害男性20代(金属の防錆作業) 採用前における障害者雇用に関する認識 ・欠員が生じたときにその都度求人を出して雇用している状況だった。また、従業員はそれぞれ専門技術を有して業務にあたるため、補助的業務もなく障害者を雇用できなかった。 初めて雇用することとなったきっかけ ・法定雇用率達成に向けて、ハローワークに求人を提出し、紹介を受けたこと。 障害者雇用に当たっての課題と対応 ・作業内容、労働条件等の設定、作業環境整備等、すべて自社で検討した。現場室温の調整等を実施した。また、障害を勘案して作業指示書解説メモを添付した。 利用した支援機関 ・初めての障害者雇用の際には支援機関の利用はない。 ・2人目の採用以降は支援機関との連携が広がった。 障害者雇用にかかる社内での変化の有無と内容 ・初めて雇用した障害者の業務手順を確実にこなす特性が活かされ品質向上につながり、障害者雇用に大きく弾みがついた。 障害者雇用を躊躇している中小企業へのアドバイス ・職場実習の受入れが必須である。実習の上、雇用すべき。とりあえずやってもらうこと。「やりたい」と言ったらやらせてみること。 D:自社の利用者(「精神障害者」)を雇用し、当該障害者が施設利用時のケアマネージャーとの連携で雇用が継続されている事例 会社概要・労働者数:高齢者福祉施設・90人 初めて雇用した障害者(職務内容):精神障害(若年性認知症)女性50代(介護補助業務) 採用前における障害者雇用に関する認識 ・ハローワークに指摘されるまで雇用義務がかかっていることに気付かなかった。 ・対人対応が主な職務であり障害者には無理と考えていた。 初めて雇用することとなったきっかけ ・障害者本人及びケアマネージャーからの雇用依頼による。 障害者雇用に当たっての課題と対応 ・認知症の特性として症状が進行することから、仕事の切り出しは継続している。 ・担当ケアマネージャーと、何かあれば随時ケース会議を開催した。 利用した支援機関 ・ハローワーク 障害者雇用にかかる社内での変化の有無と内容 ・元利用者の雇用であるものの、新たな障害者雇用を進めようとする意欲や原動力に結びついた。 障害者雇用を躊躇している企業へのアドバイス ・障害者雇用は無理だといった思い込みは持たないこと。 ・職務を限定せずに様々な仕事を試すことで障害者に適した仕事が見つかるのではないか。 E:「身体障害者」を雇用したが退職し、その後民間の職業紹介事業者及び就労支援機関の支援を受けながら「精神障害者」の雇用を実現した事例 会社概要・労働者数:サーバやネットワークの設計、構築、運用、保守:264人 初めて雇用した障害者(職務内容):@肢体不自由男性30代(営業事務等)→退職 A精神障害(そううつ病)男性30代(システム構築アシスタント) 採用前における障害者雇用に関する認識 ・障害者雇用は懸案事項であったが、仕事上必要なアドバイスや雇用管理面の配慮を十分に行いつつ障害者を受け入れることができるか不安があった。 初めて雇用することとなったきっかけ ・法定雇用率達成に向けて、民間の職業紹介事業者を活用し、紹介を受けたこと。 障害者雇用に当たっての課題と対応 ・職場適応のため就労支援機関の職員と民間職業紹介事業者からフォローを受ける。 利用した支援機関 ・民間コンサルタント ・就労支援機関 障害者雇用にかかる社内での変化の有無と内容 ・@の障害者については上司等との面接等を通じて相談に乗りながら対応していたが、結果として退職することとなり、思ったより配慮が必要だと感じた。 障害者雇用を躊躇している企業へのアドバイス ・民間の職業紹介事業者の利用に当たっては、企業が求める人材の具体像を明確にした求人とするように心がけることが肝要である。 ・障害者雇用は障害者のイベントに参加することなどで情報を集め、進めていくと良い。 F:「精神障害者」を雇用し、これを契機に支援機関に相談しながら募集要件や採用選考を改善して、「プログラマー」など計4名の雇用を実現させた事例 会社概要・労働者数:システム開発、運用管理・303人 初めて雇用した障害者(職務内容):精神障害(てんかん)男性20代(総務での事務処理業務) 採用前における障害者雇用に関する認識 ・対人業務が主であること、ハード面の整備が困難なこと、指導のノウハウがないことなどから困難さを感じていた。 初めて雇用することとなったきっかけ ・法定雇用率達成に向けて、ハローワークに求人を提出し、紹介を受けたこと。 障害者雇用に当たっての課題と対応 ・自社と障害者本人双方が手探りで進めた。 ・さらなる採用のため求人要件を変更し、採用試験基準を緩和(面接重視)した。 ・職場への適応は自社の責任であり障害者も健常者も区別はない。 利用した支援機関 ・ハローワーク ・障害者職業能力開発校(求人要件のアドバイスを得る) 障害者雇用にかかる社内での変化の有無と内容 ・その後3名の身体障害者を採用 ・社員にコンプライアンスの意識が一層強くなった。 ・企業トップが障害者に対して高い評価をするようになり、障害者雇用に前向きになった。 障害者雇用を躊躇している中小企業へのアドバイス ・中小企業の場合、トップの考えが大きいが、実際に働いてもらうとトップも「よく働いてくれる」との評価となった。 ・まずは雇用してみること。実際に雇用した障害者との関わりから特性や適性・能力などを知ってもらうこと。 G:障害者雇用が長年懸案事項だったが、「精神障害者」への面接等を通じて徐々に不安が解消されて雇用が実現した事例 会社概要・労働者数:傘下協同組合の指導等・91人 初めて雇用した障害者(職務内容):精神障害(うつ病)男性40代(ネットワーク管理業務) 採用前における障害者雇用に関する認識 ・外部からの電話応対は必須、外出が多いなどから障害者には馴染まない。 ・バリアフリーが困難である。 ・人件費の捻出ができず、欠員補充の際に障害者雇用を考えることが基本となっていた。 初めて雇用することとなったきっかけ ・ポストに欠員が生じたためハローワークに障害者の採用を相談し、紹介を受けたこと。 障害者雇用に当たっての課題と対応 ・特別な配慮・改善を必要としない障害者の採用に結びついたため、特に問題はなかった。 利用した支援機関 ・ハローワーク 障害者雇用にかかる社内の変化の有無と内容 ・精神障害者の雇用に対して当初は社内でも不安視する声が聞かれたが、実際に本人と面接し配慮事項などの確認を進める中では、さほど不安になることはなくなってきた。 障害者雇用を躊躇している中小企業へのアドバイス ・障害者を先入観で捉えるのではなく、まず受け入れてみること。 ・実習や試行雇用などマッチングを実際に検討するための機会は重要である。 ・支援機関に相談したり助言を得ることも重要である。 H:職場実習の受入れについて特別支援学校から依頼があったこと、社会的責務から自覚を持つようになり、「知的障害者」の雇用を実現させた事例 会社概要・労働者数:高齢者福祉施設・107人 初めて雇用した障害者(職務内容):知的障害女性10代(入寮者の洗濯物の回収、洗い、収納、掃除) 採用前における障害者雇用に関する認識 ・障害者との接点がなく、さらには納付金申請対象から外れていたこと等から関心を持ってなかった。 初めて雇用することとなったきっかけ ・特別支援学校からの依頼により職場実習を受け入れたこと。 障害者雇用に当たっての課題と対応 ・基本的には支援機関に相談するよりも自社の取組として対処した。障害者に関する知識はなかったが、簡単な作業から始めて徐々に職務を広げていった。 利用した支援機関 ・特別支援学校 ・ハローワーク 障害者雇用にかかる社内での変化の有無と内容 ・障害者がまじめであり、手を抜かないなど、当初考えが及ばなかったような長所を持っていることに気付かされ、障害者を見る目が大きく変わった。また、障害者本人の能力は想像以上に高かった。 障害者雇用を躊躇している中小企業へのアドバイス ・頭であれこれ考えるのではなく、障害者と触れあうことが大切である。 ・職場実習の機会を設け、障害者と向き合い、コミュニケーションを取っていくこと。 I:役員会で障害者雇用方針を議論、自社ホームページで募集を掲げて雇用に結びついた事例 会社概要・労働者数:スポーツ用品の製造、販売・276人 初めて雇用した障害者(職務内容):肢体不自由(下肢障害4級)男性50代(製品の品質管理業務) 採用前における障害者雇用に関する認識 ・数年前に事業規模の拡大により200人超の企業に急成長、経営を軌道に乗せることが急務であったため障害者雇用を考えている余裕がなかった。 初めて雇用することとなったきっかけ ・法定雇用率達成のため自社のホームページに掲示していた求人に応募があったこと。 障害者雇用に当たっての課題と対応 ・自社で検討した。 ・雇用方針は役員会で議論し決定した。 ・人材募集は自社ホームページによる応募、一般のキャリア職種の求人であるが、採用した者の障害状況や能力に配慮した部署や業務に配置した。 利用したした支援機関 ・ハローワーク ・民間コンサルタント(採用は自社のホームページに掲載した求人への応募によるものであり、支援機関からの紹介に基づく採用はない) 障害者雇用にかかる社内での変化の有無と内容 ・障害者は障害のことを隠さずにオープンにしており、障害者は身近な存在という認識が社内に芽生えている。また、パラリンピックなど、スポーツというテーマを通して、障害者の理解が進んでいる。 障害者雇用を躊躇している中小企業へのアドバイス ・会社のトップや現場が障害者雇用と真剣に向き合い、議論を重ねて実現させていくことが重要である。 J:雇用前の段階から職務創出に取り組み、面接会に参加。支援機関のサポートを得ながらも自社による取組を中心に雇用に結びつけた事例 会社概要・労働者数:工作機械・産業機械の設計、製作・93人 初めて雇用した障害者(職務内容):精神障害(高次脳機能障害2級)女性20代(庶務業務担当事務) 採用前における障害者雇用に関する認識 ・障害者雇用に義務があること自体知らなかった。 初めて雇用することとなったきっかけ ・法定雇用率達成に向けて、ハローワークが主催する面接会に参加したこと。 障害者雇用に当たっての課題と対応 ・障害者雇用への方針が決まった段階で、受入れ予定部署で職務創出の検討を開始した。 ・採用前に担当業務のマニュアルを作成した。 ・支援機関が障害者の気持ちの面をサポートを実施した。 利用した支援機関 ・ハローワーク ・地域障害者職業センター 障害者雇用にかかる社内での変化の有無と内容 ・面接会の参加者を含めて、障害は多種多様であることを認識した。 ・社内の雰囲気として障害者への受入れに対してのハードルが低くなった。 障害者雇用を躊躇している中小企業へのアドバイス ・具体的な取組に移行しないと不安ばかりが先行してしまうので、まずは面接会への参加など第一歩を踏み出すことが重要である。 ・職務の創出(定型業務等)は必ずできるはず。 ・コンプライアンスは企業にとって重要である。 K:自社による職務創出の検討を行いながら、民間コンサルティング会社を通じて「精神障害者」を採用した事例 会社概要・労働者数:光ファイバーケーブル等の屋外敷設工事・171名 初めて雇用した障害者(職務内容):精神障害(うつ病)男性40代(事務補助業務)9ヶ月後に自主退職 採用前における障害者雇用に関する認識 ・障害者の基本イメージは身体障害者であったため、特に現場での職務設定の困難さに加え、安全確保のための人員をつける必要があると感じており、そのための人員増は現実的に難しいと感じていた。 初めて雇用することとなったきっかけ ・法定雇用率達成に向けて、民間コンサルティング会社を活用し、紹介を受けたこと。 障害者雇用に当たっての課題と対応 ・業務をメインとそれ以外に整理して、職務を創出した。 ・民間コンサルティング会社による社内研修や、支援機関による対象者の特性等のアドバイスを踏まえて社内の理解と周知を図る。 利用した支援機関 ・民間コンサルティング会社 ・就労支援機関(就労移行支援事業所) 障害者雇用にかかる社内での変化の有無と内容 ・事業所の工夫によって仕事の切り分けをすれば障害者が活躍できる場や仕事を創出できることが理解できた。 ・精神障害者の特性は個別に異なるため、就労場面以外のサポートも含めて支援機関の活用が必要と感じる。 障害者雇用を躊躇している中小企業へのアドバイス ・製造部門を持たない業種では、身体的な不安がなく一定の思考判断が行えるという点で精神障害者が仕事に適していると考えている。 ・職務の創出は必要となるが、その職務が見つかれば受入れのハードルは相当低くなると思われる。 L:一般求人に応募があった「聴覚障害者」を採用し、現場の不安を自社の取組により改善。さらに障害者を雇用した事例 会社概要・労働者数:高齢者福祉施設・187人 初めて雇用した障害者(職務内容):聴覚障害(6級)女性40代(介護業務) 採用前における障害者雇用に関する認識 ・既存の介護業務に従事できない限り、雇用はできないと考えていた。 雇用することとなったきっかけ ・欠員が生じたためハローワークに一般求人を出していたところ、対象障害者の紹介を受けたこと。 障害者雇用に当たっての課題と対応 ・自社による取組として、現場の不安に対し、上司が現場職員へ時間をかけて障害特性の周知を図った。 ・引き継ぎ事項をパソコンで記録に残すことで障害者が職場に慣れてきた。 利用した支援機関 ・なし(ハローワークからの一般求人への紹介のみ) 障害者雇用にかかる社内での変化の有無と内容 ・障害者個々の特性は異なるため、採用した障害者と同種同程度の障害であったとしても同じことが期待できるとは限らないと考えている。 障害者雇用を躊躇している中小企業へのアドバイス ・「障害者だから採用は難しい」という固定概念を抱かず、一個人として面接してみれば、意外に受け入れられると感じるのではないか。 M:親会社からの転籍後、ジョブコーチ支援をはじめ支援機関との連携を図りながら、自社での取組も充実を図り、更なる障害者雇用へと繋げた事例 会社概要・労働者数:不動産賃貸および管理・損害保険など代理業・245人 初めて雇用した障害者(職務内容)知的障害男性20代(親会社の工場内清掃作業) 採用前における障害者雇用に関する認識 ・親会社の判断に委ねられていた。 ・親会社の工場内を各自単独で清掃するため、一定程度の行動の自己管理ができることが条件になっていたことから困難さを感じていた。 初めて雇用することとなったきっかけ ・法定雇用率達成のための取組が必要な中、親会社から出向として受け入れいていた障害者が自社への転籍となったこと。 障害者雇用に当たっての課題と対応 ・危険回避能力や作業遂行面で不安があったが、作業範囲と指導体制の再構築、ジョブコーチ支援等により対応した。 ・先行企業の見学やセミナー参加によりノウハウを蓄積してきた。 ・更なる採用のため、特別支援学校からの受入れ体制を構築してきた。 利用した支援機関 ・生活支援機関 ・就労支援機関 ・ハローワーク ・特別支援学校 障害雇用にかかる社内での変化の有無と内容 ・障害者雇用に関する知識や経験を深めたいと考えており、また現場の社員にも勉強会を通じて知識を付与したり、対応スキルを身につけてほしいと考えている。 ・障害者の雇用管理を担う指導員を採用したいと考えており、職場定着に係る対応を図りたい。 ・親会社としても、今後も障害者雇用を推進していく予定である。 障害者雇用を躊躇している中小企業へのアドバイス ・先行企業を見学し、障害者雇用のイメージを作ることが重要である。 ・障害者雇用にはある程度の労力や知識・種々の経験が必要であり、心構えとして「苦労する」ことは念頭に置いておくべき。 2.事業所ヒアリング調査結果 (1)A社 事例の概要:地域社会に貢献する企業でありたいとする経営理念のもと、営業上関係があった就労支援機関から勧められ、「精神障害者」を雇用した企業の事例 企業の業種:卸売業、小売業 企業の規模(常用労働者数):145人 事業の概要:ガス・電気機器、空調機器、住宅設備機器等住まいに関わるすべての機器の販売・施工等 対象障害者の障害種類等:精神障害(統合失調症3級)、女性、30代 対象障害者の雇入れ時期等:平成22年8月に職場体験を実施し、平成23年2月に採用 対象障害者の就業形態:パート 対象障害者の就業日数・時間等:採用当初は週3日、短時間でスタートし、段階的に時間を延ばしてきた。現在は週4日、各日8時間の勤務ができている。 対象障害者の職務等 事務補助業務。当初はチラシ折りや袋詰め作業だったが、現在は安定した定型業務として社員が器具の点検時等に聴き取ってきた「お客様の声」をパソコンに入力する業務を担当。 対象障害者に対する雇用管理の状況 「ガス器具の点検を行うグループ」に所属。グループの上長が就労支援機関との連携を取りつつ雇用管理を実施。 初めて障害者を雇用する以前に障害者を雇用しなかった理由 〇障害者雇用に「身体障害者の雇用」というイメージがあり、職場が狭く階段は急であるなどからハード面の改善が難しく、さらには駅からも距離がある(徒歩10分くらい)ことから障害者雇用は無理と思い込んでいた。 〇知的障害者などについては、雇用管理体制をどのようにすべきかのイメージが湧かず、またどういう経路で人材を確保したらよいのかわからなかった。 〇顧客相手の仕事が主なことから障害者雇用に抵抗があった。 ○その一方で障害者雇用の必要性はやがてトップも認識するようになり、今回の障害者雇用となった。 障害者を初めて雇用することとなったきっかけ、当時の障害者雇用に関する認識 〇当社では、ガス器具を活用した「料理教室」を開催して日常的に顧客とのコミュニケーションに努めている。さらに、年に2回(春、秋)はガス器具の展示をかねて、地域の住民を対象に「お祭り」(イベント)を開催している。このイベントには地元の障害者施設等にもブースを貸して、バザー等ができるようなサービスもしているが、このイベントに障害者就労支援機関が参加した際、当該機関に登録のある「精神障害者」の職場実習について依頼されたことが発端。 〇当該就労支援機関の登録者2名に対して4日間、営業車の洗車等の作業をしてもらい、そのうちの1名を採用することとなった(暑い夏の洗車であったため、相当の負担がかかったようで、1名は思うように出社できずに遅刻が続き、このため採用を見合わせた)。 障害者雇用に当たっての課題と対応 〇「従事作業の設定」については、自社で練り上げた。具体的には、はじめはチラシ折りや袋詰め作業などを担当していたが、本人にパソコンのノウハウがあることから、これまでは社員ひとりひとりが行っていた「お客様の声」の入力業務を対象障害者の業務として抽出した。現在、ほぼ専従でこれに当たることができている。対人業務には従事させていない。なお、就労支援機関からは職務内容に関する他社事例等の情報を得たが、結果として自社で作業内容を考えた。 〇「就業時間等の労働条件の設定」に当たっては、職場実習で把握したことや就労支援機関からのアドバイスを踏まえつつ、これまで本人の意向や精神面・体調面の状態に沿って臨機応変に調整してきた。月給制で固定するよりもパートとして業務時間や作業量を柔軟に設定することが良いと判断している。 〇現在、本人が業務上でのさらなるステップアップを希望している。 利用した支援機関の経緯、内容、効果、順序等 〇ハローワークの雇用指導官から案内をもらい、講習会やセミナーに参加していた。障害者雇用にかかる支援措置はこうしたセミナーなどで知った。また、平成24年にはハローワークが主催する面接会にもブースを設けて参加した。各障害者をフォローしている就労支援機関等が障害者と一緒に席につき40名くらい面接した。7〜8人ほど各支援機関等に打診したものの大半はすでに他の会社に内定していた。 〇地域障害者職業センターや障害者就業・生活支援センターは利用していない。 〇就労支援機関は、初めての障害者雇用から利用している。初めての雇用となった障害者については、本人が引っ越しをしたため、別地域の就労支援機関に登録が移行している。 〇なお、障害者に対する理解を深めるため、障害者施設が実施するイベントに新入社員を参加させるなどの研修を実施している。 障害者雇用にかかる社内での変化の有無と内容 〇職場におけるハード面の整備がなくとも、障害者個々の有する能力を活かし、また周囲が職務内容等を調整することで、十分仕事ができるとわかった。 〇一方で職務能力だけではない部分(体調や考え方など)について個人差があることがわかった(前述の夏場の2名の職場実習による)。 〇対象障害者が「○○センターから来た××です」と社員に向かい自己紹介をしているため、社員は病名を知らないものの障害者であるという認識は持っている。社員と本人との関係は良好で懇親会などにも参加してもらっている。 障害者を初めて雇用した後に、さらに障害者を雇用した実績があるか、または今後採用する予定があるか。 〇平成24年11月に就労支援機関から知的障害者(男、10代)の職場実習依頼があり受け入れた。 2週間の実習を経て、倉庫作業員として12月1日より採用(パート)した。 〇法定雇用率の引上げにより、将来的にはあと1名確保の必要あり。職場でのハード面の整備に制約がかかるため、下肢障害を有する者は難しいが、それ以外であれば障害種別は問わない。 障害者雇用を推進するに当たって求める支援の内容 〇各支援機関から様々な支援に関するアドバイスをもらえるという体制があった方がよく、このため様々な支援を体系的に活用するためのコーディネートは重要だと思う。 〇勉強会や研究会などは、知識を得る上で必要である。 〇障害者雇用を進める当初は、面接の仕方が分からなかった。個人の情報をもっと知りたい一方で、どこまで聞いてよいのかが分からなかった。ハローワークによる集団面接会への参加はいろいろな障害者と接することができ、企業担当者としてもチャンスである。 〇企業間の情報交換については、同業他社であって同じくらいの企業規模であれば役立つかもしれない(情報共有したことはない)。 〇ハローワークの面接会は年1回ではなく、より多くの開催を希望する。 〇ハローワークをはじめ就労支援機関からは、障害者雇用に関するセミナーや講習会など学ぶ機会をもっと幅広に発信して欲しい。 〇人材確保にかかる情報は少しでも他企業より先んじて得たいというのが本音。 障害者雇用を躊躇している中小企業に対するアドバイス 〇会社自身が障害者雇用に「やる気」を持つことが大前提である。 〇「社会的責任」は会社の格付けとして重いものであり、これらを前面に押し出していかねばならないのではないかと考えている。 〇障害者雇用について、守らない企業は企業名が公表され、社会的信用に傷がつきかねないということを障害者を雇用していない企業が自覚していくことが必要。 (2)B社 事例の概要:初めての障害者雇用として「知的障害者」を雇用するに当たって、社内会議を設定し、雇用にかかる検討を進めるとともに、就労支援機関から推薦を受け、職場実習を行い、雇用に至った事例 企業の業種:福祉 企業の規模(常用労働者数):65人 事業の概要:障害者福祉施設の運営 対象障害者の障害種類等:知的障害(自閉症的傾向)、男性、30代 対象障害者の雇入れ時期等:平成23年4月 対象障害者の就業形態:非常勤職員(1年更新、更新は5年間を上限としている。) 対象障害者の就業日数・時間等:月20日勤務、1日6時間、週5日勤務(9時〜16時)土曜・日曜が休日 対象障害者の職務等 総務課配属 午前食堂の厨房で、給食補助作業(洗浄・盛り付け) 午後総務課事務室で、事務補助作業(書類コピーやメールの整理等) 対象障害者に対する雇用管理の状況 総務課配属で、午前中は栄養士が対応し、午後は総務課が対応。 初めて障害者を雇用する以前に障害者を雇用しなかった理由 ○障害者雇用を開始するまでは、従業員数56人以下の事業所であった。 ○23年4月以降、市役所からの各種業務の受託増により、確実に従業員が増える見込みであったため、早期の障害者雇用に着手した。 障害者を初めて雇用することとなったきっかけ、当時の障害者雇用に関する認識 ○ハローワークから障害者雇用に関する各種資料をいただいた。特に、法改正による100人以上事業主への納付金制度適用に係る説明資料により障害者雇用義務のことを知った。 ○自社で障害者に対する就労・生活支援を業務としていることや、指定管理者制度に基づき、市に代行して施設を運営していることからも障害者雇用の必要性を自覚した(指定管理者制度による施設の運営は、現在は随意契約によっているが、再受託の要件に障害者雇用率の達成が盛り込まれた場合、障害者を雇用しないままでは次の契約更改において今までのように受託されるとは限らない)。 ○このため、身体障害者(肢体不自由)を体育館における受付窓口業務として採用した。 ○さらには、自社の事業内容から身体障害者の雇用だけでなく、知的障害者の雇用も行うとした基本方針を持って採用した。 障害者雇用に当たっての課題と対応 ○ハローワークは利用しなかった。他施設(就労支援機関)の利用者から人選し、雇用した。 ○障害者雇用を進めるために、社内で各事業所から関係者が集まる会議を設定した。 ○会議では障害者が従事するための職務のアイディアを出してもらった。 事務部門での採用、生活介護事業所の洗浄業務等が挙がったが、受け入れる側で対応できない等の抵抗があり実現には至らず今の職務での雇用となった。 会議には就労支援業務の職員の参加は求めず、各事業所の関係担当者の参集としていた(就労支援業務の職員(支援員)による横断的な職務創出はしなかったの意)。しかし、対象障害者が自閉症的傾向にあったので、自閉症の特性について理解するため、支援員から資料をもらったりした。 ○雇用に当たっては、@週30時間以上できる業務で何をしてもらうか、A自社のサービス利用者から採用するか、他施設の利用者から採用するか等を上記の会議で検討をした(他施設の利用者を採用することに決定)。 ○採用に当たっては、まず他施設から推薦を受け、職場実習を行った。この際、職場体験的な受入れから始め、本格的な実習を2週間程度実施した。自社の支援員(ジョブコーチと考えられる)の支援とともに、他施設からの支援もあった。 利用した支援機関の経緯、内容、効果、順序等 ○障害者を推薦した就労支援機関では「職業準備訓練」を実施しており、対象障害者もその訓練を経ていたため、基本的な労働習慣が確立した障害者を雇用することができた。 ○さらに、以前利用していた福祉施設でパン作りに従事していたようであり、衛生面の意識といった食堂業務での基本が既にできていたことが職場適応に有効に働いた。 ○ジョブコーチの利用については、自社の事業用に配置しているジョブコーチが実習時において支援してくれた。雇用後も時々見に来てくれている。 ○特定求職者雇用開発助成金は知っていたが、これを利用しなかった。当社のような事業目的を持った事業所では利用しないことが適当と考えたため。 障害者雇用にかかる社内での変化の有無と内容 対象障害者は挨拶がしっかりできるので、見習うように職員間でのあいさつもなされるようになり、社内が明るくなっている。また、仕事中の姿勢を注意(体を丸くしている)したことがあるが、そのため職員自らも意識して姿勢を良くしている。そのようなことが社内での変化とすれば、明らかな変化があると言える。 障害者を初めて雇用した後に、さらに障害者を雇用した実績があるか、または今後採用する予定があるか。 今のところ、追加の雇用はない。なお、障害者の雇用時に、社内から雇用できる職務のアイディアをもらっていたのに、現在の職務にしか配置できていない。部署によっては、積極的に職務を検討すると自分の部署が「雇用」を引き受けることになるのを躊躇しているようである。今後はアイディアを出したところには、理解を求めて配置したいと思っている。 障害者雇用を推進するに当たって求める支援の内容 障害者雇用を総合的に見てもらえるような、支援システムが欲しい。 障害者雇用を躊躇している中小企業に対するアドバイス 当社は「社会福祉法人」ではあるが、利用者を募集してサービスを提供するようなものでなく、市からの受託事業を行う法人であるとともに、事業内容からも障害者雇用は当たり前のことと認識しているので、同じ事業内容である法人にも、障害者雇用は当然といった意識があることが必要。 (3)C社 事例の概要:欠員の補充のため求人を提出していたハローワークから「知的障害者」を紹介され雇用したが、的確かつ確実な仕事ぶりであることから製品の品質が向上し、障害者雇用に当たっての不安材料が払しょくされ、加えて、いろいろな支援機関との連携が構築され、その後の障害者雇用が飛躍的に拡大した事例 企業の業種:製造業 企業の規模(常用労働者数):184人 事業の概要:切削工具・治具・ツーリング・測定具・金型部品・機械部品の設計製作 対象障害者の障害種類等:知的障害男性、20代 対象障害者の雇入れ時期等:平成22年7月(2〜3週間アルバイト契約で状況を見極め、その後正式採用) 対象障害者の就業形態:当初1年間は契約社員だったが、現在は正社員 対象障害者の就業日数・時間等:勤務時間8時20分〜17時、休日土曜・日曜(ウィークデーの祭日は出勤日) 対象障害者の職務等:加熱した薬液槽に金属を一定時間浸漬(しんせき)して黒染め(防錆)を行う作業 対象障害者に対する雇用管理の状況 ○統括責任者を「工場長」とし、指導担当を「副工場長」、障害者職業生活相談員を総務担当者が担う形で進めている。また、職務には危険な薬液を使用すること等もあるため、観察・見守りを6か月ぐらい続けた。 ○現在、作業は基本的に単独で進める体制となっている(担当する作業工程前後のやりとりについては他部署からの指示があったり、自ら聞きに行ったりしている)。 ○総務担当者が1日1回は様子を見て声かけをしている。 ○新人研修に参加してもらった。その際、障害特性を踏まえ受講資料の内容を平易な表現に変更するとともにふりがなを付けた資料を別途作成して提供した。 初めて障害者を雇用する以前に障害者を雇用しなかった理由 ○欠員が出て初めて新規雇用している状況。また、従業員はそれぞれ専門技術を有して業務にあたるため、補助的業務もなく障害者を雇用できなかった。 ○社長は他社の経営もしており、当社の採用に関することまでは相談を持ちかけることがなかなかできない状況にあった。 障害者を初めて雇用することとなったきっかけ、当時の障害者雇用に関する認識 ○中途障害者となった心臓機能障害者を継続して雇用していたが退職。障害者の雇用数がゼロであることをハローワークから指摘された。 ○このため、平成22年春に黒染め工程の従業員が退職した際、求人を提出したところハローワークから紹介があった。 ○面接の結果、実直で良い人だったため、アルバイトとして2〜3週間様子を見て採用を決定。 障害者雇用に当たっての課題と対応 雇用に当たり生じた課題に対しては、基本的に自社で考え、以下のとおりに対応している。現在、特段困ったことはない。 ○現場社員の理解を得るため、社員からの「接し方が分からない」との声に対し、従業員向けの研修を実施した。また、総務から対象障害者へ頻繁に声をかけることで、周囲に接し方を伝達した。 ○社員から「労災への心配」が挙げられたため、現場担当者だけでなく総務も一体となって状況を確認し、現場での理解促進に繋げた。 ○作業指示は通常「指示書」によってなされるが、対象障害者のために指示書に説明メモを添付したり、朝に指示書に記載した内容の要点を口頭で説明している。性格が几帳面であり、温度計が壊れていること等についても自分から申し出る。わからないことは「わからない」と答える点が良い。 ○労働条件の設定については、汗が出ない身体的特性のため、@作業場の周りに枠を作り冷房を入れる、A具合が悪いと感じたときや作業の合間には、温度を一定(25度ほど)に保つ部屋で体温調整をするとともに必要に応じて横になれるようなスペースを作った。また、定期通院が必要なので、それをできるようにしている。 利用した支援機関の経緯、内容、効果、順序等 ○初めての障害者雇用に当たっては支援機関は利用していない。 ○その後、肢体不自由者1名(金属の精密研磨加工)、知的障害者1名(金属のフライス加工)、精神障害者1名(金属の研磨加工)を雇用した際には、取引先の社長が立ち上げた就労継続支援B型事業所や特別支援学校を利用した。採用に当たっては職場実習を取り入れて、職務の適性のほか、障害特性とその配慮すべき点を把握することとしている(例えば、知的障害者の場合は、雇用後の業務に対する適性を判断するためにバリ取り作業を実習科目とした。また、精神障害者の場合は、職場実習の際に障害特性を考慮して就業時間を3時間から段階的に延ばし、雇用した後も社員より就業時間を短縮するなど、体調等の状態に応じて柔軟に設定している)。また、精神障害者の採用に当たっては、前述の就労継続支援B型事業所のジョブコーチ支援を受けた。 ○さらに、5人目として平成25年5月に精神障害者の入社を内定している。 ○肢体不自由者の雇用に当たってはトイレの改造を自社で行った。障害者雇用納付金制度による助成金については精神障害者の雇用に当たり、業務遂行援助者の配置助成金を活用している。 障害者雇用にかかる社内での変化の有無と内容 ○初めて雇用した障害者が几帳面で作業手順を的確かつ確実にこなす能力を持っており、作業に当たって温度管理、時間管理を徹底し、品質が以前より格段に向上(以前は黒染めなのに茶色に染まっていた。こんな色なのかと思っていたが今までが間違っていたのに気付かされた。)したことは、障害者に対する社内の見方を大きく変えた。 ○その後、障害者雇用に弾みが付き、障害者雇用に関して学ぶ機会が増え、さらには事業所としてのノウハウの蓄積に繋がった。 ○社内の変化としては、職場実習を受け入れるようになったことや、「安全衛生委員会」の中で障害者雇用に関する話題が出るようになるなど、コミュニケーションの輪が広がったことがある。 障害者を初めて雇用した後に、さらに障害者を雇用した実績があるか、または今後採用する予定があるか。 初めての障害者雇用から、続けて3名を雇用、平成25年5月にはさらに1名を採用予定としている。 障害者雇用を推進するに当たって求める支援の内容 障害者雇用では、職場実習の受入れが必須である。それらを推し進めてもらいたい。 障害者雇用を躊躇している中小企業に対するアドバイス ○障害者雇用では、職場実習の受入れが必須である。実習を行ったうえで事業所として適性や障害特性を見極めて雇用するようにするべきである。また、職場実習は障害者にとってもその会社でやっていけるかどうかを見極める機会になる。 ○障害者雇用に当たり、労災がないように注意することが肝要であるが、だからといって障害者を雇用することが心配だといったようなことは考えるべきではない。 (4)D社 事例の概要:老人介護施設が自社を利用し精神障害者保健福祉手帳を所持する「若年性認知症の者」を雇用し、当該障害者の施設利用時におけるケアマネージャーとの連携で雇用が継続されている事例 企業の業種:福祉 企業の規模(常用労働者数):90人 事業の概要:介護サービス 対象障害者の障害種類等:精神障害(若年性認知症)、女性、50代 対象障害者の雇入れ時期等:平成22年5月 対象障害者の就業形態:パート 対象障害者の就業日数・時間等:1日5時間(9時30分〜15時)、週4日勤務 対象障害者の職務等 ○主に調理補助で雇用を開始したが、認知症の進行に伴い業務が行えなくなり、現在は主に介護補助業務(利用者の入浴介護後にドライヤーをかける仕事や給茶等)に従事している。 ○現在でも、パソコンにより当社壁新聞(利用者等のために作成するもの)の記事を書いたり、デイサービスを利用する利用者が歌うための歌詞カードを作成したりする作業等、職域の拡大を図っている。 対象障害者に対する雇用管理の状況 現場の介護士が本人に指示を行っている。 初めて障害者を雇用する以前に障害者を雇用しなかった理由 利用者の送迎、入浴介護等の対人対応が主な職務であり、身体障害者や精神障害者には無理と考えていた。その後、事業所が軌道に乗り、経営・人員にも余裕が出てきたところに雇用の打診があり、雇用することとなった。なお、対象障害者は介護職の定員外の配置である。 障害者を初めて雇用することとなったきっかけ、当時の障害者雇用に関する認識 〇対象障害者は、もともと事業所の利用者であったが、対象障害者と対象障害者の担当ケアマネージャー(当社とは別法人の事業所のケアマネージャー)からの依頼により採用。 〇障害者雇用義務に関しては、平成19年頃から56人の常用雇用数になっていたが、雇用義務は大企業の問題と思っていた。平成22年5月の採用後、ハローワークから雇用率達成指導を受け、雇用義務があることを知った。 〇対象障害者は漠然としたものではあるが働きたいという希望があった。担当ケアマネージャーから「介護事業所で利用者の認知症者の雇用」という新聞記事を紹介されて、検討を開始。当該報道の事業所に経過等を聞いて、同様の雇用をすることとなる。 もともと利用者に認知症者が多く、対応方法等については理解していた。 対象障害者には、今年12月に入って「後見人制度」により後見人が付くようになった。認知症も進行してきているが、進行状況を確認しながら後見人と雇用契約を更新した。 障害者雇用に当たっての課題と対応 〇認知症の特性として症状が進行することから、今後のためにも仕事の切り出しは継続して実施している。 〇採用当初から対象障害者の採用を勧めてきた担当ケアマネージャーに定期的に状況を報告し、何かあれば随時ケース会議を開催している。 利用した支援機関の経緯、内容、効果、順序等 〇施設の利用者を雇用したことを新聞記事で紹介された介護施設に雇用の経過を聞いて参考にした。 〇所属事業所の社員は対象者に障害があることを承知しているが、全社には周知していない。現在のところ、所属事業所以外では経営者層のみが障害者を雇用していることを知っている。 〇障害者雇用義務が当社にもあると知ったので、今後も障害者雇用に取り組みたいと考えている。事務職での雇用も考え、身体障害者の雇用についてハローワークに聞いたところ、身体障害者を雇用したい企業は多く、雇用が難しいと聞いた。そのため知的障害者か精神障害者について介護補助職での雇用を検討中で、支援機関の利用も考えている。特別支援学校への見学も計画にある。 障害者雇用にかかる社内での変化の有無と内容 自社の利用者である障害者を雇用したので、顕著な変化はない。ただし、これをきっかけに事業所として新たな障害者雇用を進めようとする意欲や原動力に結びついた点は変化といえる。 障害者を初めて雇用した後に、さらに障害者を雇用した実績があるか、または今後採用する予定があるか。 知的障害者か精神障害者の介護補助職での雇用を検討中。 障害者雇用を推進するに当たって求める支援の内容 障害者雇用に関して何でも相談できるようなワンストップの相談窓口があれば活用したい。 障害者雇用を躊躇している中小企業に対するアドバイス ○障害者雇用は無理だといった思い込みを持たないように。 〇当社と同業者について言えば、創業時はなかなか雇用は難しくても、事業展開の結果余裕が出てくるもの。障害者雇用はやってみるとできないことではないと思う。また、職務を限定せずに様々な仕事を試すことで障害者に適した仕事が見つかるのではないかと思う。 (5)E社 事例の概要:初めての障害者雇用で「身体障害者」を雇用したが退職し、その後、社長の「障害者に関するイベント」への積極的参加を通して就労支援機関と関わりができ、同機関から雇用後のフォローを的確に行う民間の職業紹介事業者を紹介され、同機関の支援も受けつつ同事業者の活用により「精神障害者」の雇用を実現した事例 企業の業種:情報通信業 企業の規模(常用労働者数):264人 事業の概要:ネットワークのコンサルティング及び設計・構築 対象障害者の障害種類等:Aさん:肢体不自由:男性、30代(股関節に障害、自立歩行可能)、Bさん:精神障害:男性、30代(そううつ病) 対象障害者の雇入れ時期等:Aさん:平成23年5月(同年10月退職)Bさん:平成24年1月 対象障害者の就業形態:正社員 対象障害者の就業日数・時間等:1日7時間30分(9時00分〜17時30分)休日土曜・日曜 対象障害者の職務等 Aさん:営業事務・庶務係 Bさん:システム構築のアシスタント 対象障害者に対する雇用管理の状況 Aさんには、「残業をさせない」、「重たいものを持たせない」こと等に配慮していた。一方、Bさんにあっては、特段のことはしていない。 初めて障害者を雇用する以前に障害者を雇用しなかった理由 ○障害者雇用義務があることは認識しており、以前からの懸案であった。初めての障害者雇用の前から自社ホームページで障害者採用を掲示していたが、応募がなかった。 ○雇用が実現しなかった理由は、ベンチャー企業として、高度な技術や知識を軸に経営を展開している中、社員に求めるスキルのレベルが高いことや、社員が皆、忙しく立ち働く状況にあって、仕事上必要となるアドバイスや雇用管理面の配慮を十分行いつつ障害者を受け入れることができるか不安があったことなどによる。 障害者を初めて雇用することとなったきっかけ、当時の障害者雇用に関する認識 ○雇用のきっかけは、ハローワークからの強い指導があったことによる。 ○初めて雇用した障害者である「身体障害者(Aさん)」は退職し、平成24年6月1日の雇用状況報告時において再び雇用数ゼロとなってしまったが、24年12月に「精神障害者(Bさん)」を雇用した。 障害者雇用に当たっての課題と対応 ○事業内容上、高いパソコンスキルを持った者等を求めているが、民間の職業紹介事業者から元システムエンジニアを紹介してもらえたのが、現在雇用しているBさんであり、即戦力となっている。 ○この事業者は、社長が「障害者等の社会参加を支援する団体」のイベントで知り合った就労支援機関から紹介された。現在、当該事業者が職場で働く障害者本人の様子を見るために時折訪問してくれたり、また当該事業者を紹介してくれた就労支援機関も就労支援員による支援をしてくれる中、本人が職場適応に励んでいる。このため、特段の問題は感じていない。 利用した支援機関の経緯、内容、効果、順序等 ○初めての障害者雇用から民間の職業紹介事業者を利用している。ハローワークにも求人は提出していたし、自社のホームページでも募集していたが、システムエンジニアなど技術職の人材を求めているような場合は、そうした求人を専門的に扱う民間の事業者からの方が見つけやすいのではないかと思っている。 ○一方、就労支援機関ともつながりができ、障害者本人の職場適応のための支援とともに、雇用後のフォローがしっかりしている民間職業紹介事業者についての情報も得ることができた。また、こうした支援機関を知り得たのも、「障害者等の社会参加を支援する団体」によるイベントに参加したからだと考えている。 障害者雇用にかかる社内での変化の有無と内容 「想定していた以上に配慮が必要だった」と感じた。これは、初めて雇用したAさんに対し、役員や上司の面談等を通して、色々と相談に乗りながら対応していたものの、結果として退職となってしまったことによる。 障害者を初めて雇用した後に、さらに障害者を雇用した実績があるか、または今後採用する予定があるか。 ○退職したAさんの業務は事務系であるが、今般採用したBさんはシステムエンジニアである。今後も引き続き障害者を雇用しなければならない中、職種にはこだわらないが、事務系の欠員は埋めたいと思う。 ○今後は、民間の職業紹介事業者やハローワーク以外の採用経路から障害者を採用していくことを検討している。 障害者雇用を推進するに当たって求める支援の内容 障害者に対して就職を目標とする諸訓練を実施している機関の動向が知りたい。また、これらの情報を提供してくれる機関があって欲しい。 障害者雇用を躊躇している中小企業に対するアドバイス ○民間の職業紹介事業者の利用に当たっては、企業が求める人材の具体像を明確にした求人をするように心がけることが肝要。その結果、即戦力になる人を紹介してくれる。 ○障害者雇用のためには(待っているだけではだめで)障害者にかかるイベントに参加することにより、様々な機関とつながりを作り、情報を得るなどの活動をしていくことをお勧めする。 (6)F社 事例の概要:初めての障害者雇用で「精神障害者」の雇用を実現させ、この雇用を契機に、支援機関に相談をしながら、募集要件や採用選考を改善し、「プログラマー」として雇用するなどにより、現在、計4名の障害者の雇用を実現させた事例 企業の業種:情報通信業 企業の規模(常用労働者数):303人 事業の概要:コンピュータソフトウェアの受託開発、コンピュータの運用・管理の受託、導入のためのコンサルティング及び操作・運用のための教育等 対象障害者の障害種類等:精神障害(てんかん2級)、男性、20代 対象障害者の雇入れ時期等:平成23年4月 対象障害者の就業形態:採用以後、嘱託として3ヶ月契約を4回更新し、平成24年4月より正社員 対象障害者の就業日数・時間等:正社員としての就業時間(9時〜18時)。ただし、残業には注意している(対象障害者は健常者と同様に扱われることを望んでおり、残業も希望している)。 対象障害者の職務等 総務部に所属し、事務処理関係の業務を担当。 対象障害者に対する雇用管理の状況 ○配属部署において雇用管理を実施。 ○特別な体制は取っていないが、2〜3ヶ月に1回の通院は業務中であっても行かせるようにするとともに、休みは自由に取らせている。また、1年に2回の面談を実施している。 初めて障害者を雇用する以前に障害者を雇用しなかった理由 ○障害者が「対人業務」を担当することは難しいのではないかと考えていた。一方で、ソフト開発という事業上、「開発者イコール営業担当として、全ての社員が顧客相手の対人業務を行い、総務等の管理部門の人件費がほとんど使えない」という制約がある中、雇用の必要性はわかっていたものの、実際に雇用するための、より深い検討に踏み込めなかった。 ○当社が入居しているビルの都合上(エレベーターが狭いなど)、身体障害者を受け入れるためのハード面の整備に制約があった。さらには、障害種別がいかなるものであれ指導のノウハウがなく、どうしていいかわからなかった。 ○求人は出していたものの、採用要件が高かったためなのか、採用にこぎ着けないということなどもあった。 障害者を初めて雇用することとなったきっかけ、当時の障害者雇用に関する認識 ○ハローワークからは障害者雇用についての指導を受けていたが、そうした中、初めての障害者の採用となった「精神障害者」は、ハローワークに出していた障害者求人に対する紹介があったことによる。業務自体は、それまで勤務していた高齢者が退職し、空きができた総務関係であった。 ○その後、平成24年3月、4月に採用した「身体障害者」については、それぞれハローワーク、専門学校へ提出していた求人への応募によるものである。ハローワークへ提出した求人は「障害者求人」、専門学校に提出した求人は「障害者の応募も可とした求人」であった。 ○これまでハローワーク、大学、専門学校等に求人を提出していたもののなかなか応募がなかった。プログラマーの募集に当たっては、「嘱託採用から正社員」ではなく「当初から正社員」としたり、面接を重視した採用選考としたことなどもあって障害者を採用でき、現在の雇用につながっている。 障害者雇用に当たっての課題と対応 ○障害者の従事作業の抽出等については、どうしてよいかわからない中、手探りで進めた(てんかんがある障害者の場合、顧客先で発作が起こった際の相手先への負担等を心配し、外出の少ない総務等の管理部門での業務範囲をどこまで広げてよいか苦心したなど)。 この際、雇用の考え方として持ったことは、「一番大切なのは、当該社員が職場になじめるかなじめないか」であり、これは「自社でなんとかしていくしかないことである」とともに、「健常者であれ障害者であれ同様の課題、すなわち障害者だからといって特別に課されることではない」である。 ○その後に採用した「身体障害者」も手探りということでは同様で、例えば腎臓移植をした社員の場合、残業はできるのか、急ぎの仕事はできるだけさせない方がよいのか、などについて対応に悩んだ。いずれの社員の場合も、障害者を受け入れているセクションが対象障害者ともども手探りで進めている状況である。 利用した支援機関の経緯、内容、効果、順序等 ○「ハローワーク」については、求人を提出したり、雇用にかかる助言・指導を受けたり、助成金等の説明を受けたりなど、利用は多い。 ○「障害者職業能力開発校」には、障害者募集をしてもなかなか応募がこないため、障害者の募集の方法等についての相談に乗ってもらった。その結果、それまで嘱託として募集していたことについて「障害者は正社員か否かを一番重視し、賃金など待遇にかかる条件はその次である」というアドバイスを受け、募集方法を改善した。結果的には、プログラマーを正社員として募集し、障害者を2名採用することができた。 ○なお、「地域障害者職業センター」を知っていたが利用しなかった理由としては、「ハローワーク」のサポートで基本的に足りていたためである。 障害者雇用にかかる社内での変化の有無と内容 ○障害者にどのような仕事に従事してもらうかなどについては、受け入れている各セクションが工夫をしている。人間関係は良好であり(飲み会などにも参加している)、障害者の受け止めに関するマイナスの変化は特段ない。 ○障害者雇用により会社がコンプライアンスを示すことで社員にもコンプライアンスそのものの重要さが一層植えられつつあると感じている。 ○採用後、障害者によって仕事の受け止め方について色々と違いがあり、障害者の個人差について実感するようになった。 障害者を初めて雇用した後に、さらに障害者を雇用した実績があるか、または今後採用する予定があるか。 ○初めての障害者雇用以後に雇用した障害者は肢体不自由者1名、内部障害者2名(専門学校からの新卒採用とハローワークからの紹介による)。「プログラマー」、「事務職」として採用した。 ○法定雇用率の引上げにより、将来的にはあと1名確保する必要がある。現行の職務で雇用できればよいが、もしできなければ職域開発(シェアリングして、一人分の仕事作るなど含む)をしていくことにもなると考えている。 障害者雇用を推進するに当たって求める支援の内容 ○求職者の情報提供の方法等を考えてもらいたい。求職者の情報をまとめて閲覧できる機会があれば、企業のためだけでなく求職者にとっても雇用機会に恵まれるチャンスが増えるのではないかと思う。 ○支援機関に聞くと「何でもできます」というような答えがよく返ってくるが、これでは躊躇する。何ができて何ができないのか、通常期待されるパフォーマンスを100とした場合、当該障害者がどの程度の割合の職務パフォーマンスがあるのかなどを具体的に見通せると採用が進むのではないか。かつて支援機関の勉強会にも参加し、障害特性に関する勉強もしたが、こうしたおおざっぱな情報は実際にはあまり役に立たないのではないかと思っている。 障害者雇用を躊躇している中小企業に対するアドバイス ○まずは障害者雇用に関する「トップの考え」が大きい。当社の場合、トップがコンプライアンスの重要性を認識し、積極的な雇用を力強く進めていったことが現在につながっている。実際に障害者に働いてもらうと、トップも「思った以上によく働いてくれるではないか」という評価になっていった。 ○とにかく雇用してみることが大切ではないか。また、トップに対して個々の障害者の能力に関する具体的なイメージを持たせることができれば、雇用へのゴーサインのチャンスが広がると思うので、具体的な求職者の情報をトップに提供することは有効であると思う。 ○これから障害者を雇用しようとする中小企業にあっては、障害者雇用に関するコンプライアンスの意識を持つことはもとより、大企業が積極的に障害者を雇用し、障害者が実際に社会で大いに活躍しているという現実に目を向けるべきではないか。 (7)G社 事例の概要:障害者雇用が長年にわたる懸案事項だった中で、補充要員の求人をハローワークに提出するに当たって、障害者に適任者がいないかと相談したところ「精神障害者」の紹介があり、面接等を行う中で不安が徐々に解消されるようになり雇用が実現した事例 企業の業種:複合サービス 企業の規模(常用労働者数):91人 事業の概要:傘下協同組合の指導等 対象障害者の障害種類等:精神障害(うつ病3級)、男性、40代 対象障害者の雇入れ時期等:平成22年12月 対象障害者の就業形態:嘱託職員(6ヶ月更新) 対象障害者の就業日数・時間等:1日7.5時間(8時45分〜17時15分)のフルタイム勤務。休日は事業所の休務日と同様(土日、祝祭日) 対象障害者の職務等 イントラネット環境下でのネットワーク管理業務。主として端末操作等の仕事を担当。 対象障害者に対する雇用管理の状況 障害者を雇用したことによる体制上の変更はなく既存の管理体制。 初めて障害者を雇用する以前に障害者を雇用しなかった理由 ○協同組合の指導業務を行っており、事務的な業務が多く外部からの電話応対が必須であり、市町村に出向く機会も多いことから、業務内容的に知的障害者や身体障害者には馴染まないと考えていた。 ○職場は築年数が古くバリアフリーになっていないという問題もあった。 ○新たに事業を拡大し現行人員以上の人件費を捻出することができないという組織的な制約が大きかった。現在の人員体制であっても同一人が複数の業務を担当せざるを得ない状況の中で、職務の切り分けや創出などを行って障害者雇用を考えることが難しく、部署に欠員が生じた場合に補充要員として障害者雇用を考えることが基本となっていた。 障害者を初めて雇用することとなったきっかけ、当時の障害者雇用に関する認識 ○事業所は傘下協同組合を指導する本店的な機能を持っているため、障害者雇用についてもコンプライアンスや組織への模範を示すために取り組まなければならないと常々考えており、人事担当者の引き継ぎにおける懸案事項とされてきた。 ○これまで、人材派遣会社からの営業活動や、ハローワークからの障害者雇用の働きかけはあったが、欠員がない、障害者に向いた業務ではなかった等で、いずれも雇用の実現には至らなかった。 そのような中、2年前に派遣労働者が契約満了以前に自己退職しポストに欠員が生じた。同時期にハローワークの求人開拓担当者の事業所訪問があったため、ネットワーク管理業務経験のある障害者の採用について相談したところ、条件に合う障害者がおり、紹介を受けた。 ○欠員の発生とハローワークからの訪問のタイミング、担当する業務内容と必要な技能・スキルを持つ障害者とのマッチングがうまくいったことによって具体的な採用に結びついた。 障害者雇用に当たっての課題と対応 ○担当する業務の設定や職場環境を障害者雇用上の課題と考えていたが、今回は特別な配慮・改善を必要としない障害者の採用に結びついたため、課題としては問題にならなかった。 ○採用手続きとしては、新卒者採用の場合のような採用試験による合否決定は行わず、面接である程度の判断を行った。雇用した障害者には職歴がありシステム管理業務の経験があったことと、人柄を真面目と認めて採用としたが、実際に業務とのマッチングについて見極めが必要であったことから、ハローワークと相談し、事業所規程の試用期間3ヶ月を踏まえて正式採用とした。 また、採用に当たり対象障害者から職場への障害の告知は最低限に留めて欲しいとの意向があったため、採用前に直属の上司に限定して対象障害者の障害と一般的な配慮事項について人事担当者から説明を行った。 周囲の者は本人の障害を知らないことから、一般的な新卒者の対応と同様に上司から作業指導を行うなど特別扱いにならないように留意する必要があった。 ○対象障害者については、服薬以外に職場環境や業務内容面で配慮を必要としなかったが、一般的に精神障害者は疲れやすいということを考慮に入れて試用期間中に疲労蓄積が生じた場合は短時間勤務を認めること、平日に通院が必要であれば有給休暇を使ってよいことなどを事業所から伝えている。 なお、試用期間中における短時間勤務や通院の申し出は特段なく安定的に経過した。業務上の指導や相談は係長が担当しているが、他の従業員から見て、特別扱いに見えていることはないと思われる。 利用した支援機関の経緯、内容、効果、順序等 ○ハローワークについては、これまで雇用率達成指導のほか、セミナー等の案内が定期的に送られてくるなど、以前から結びつきはあった。 ○地域障害者職業センターについては、障害者の紹介を受けたときにハローワークから情報提供があり存在を知った。また、対象障害者が地域障害者職業センターの利用者であったことから、職場適応上に課題が生じた場合の相談窓口とするため、一度だけ電話連絡をしたが、その後の具体的な利用には至っていない。 ○人材派遣会社を利用し、登録障害者の紹介を受けたことがある。コンサルテーションのサービス等を受けたことはない。 ○今回、障害者雇用支援制度の利用は一切なかった。採用前にハローワークからトライアル雇用等の制度紹介はあったが、別件で解雇者を出してしまったために制度を利用できなかった。 仮に、トライアル雇用制度が利用できる条件があったとしても、対象障害者がクローズドの雇用を望んだことから、同制度を利用する展開になったかどうかは分からない。 障害者雇用にかかる社内での変化の有無と内容 精神障害者を雇用することに対して、当初は事業所内で不安視する声が聞かれたが、実際に対象障害者と面接し配慮事項などの確認を進める中では、さほど不安になることはなくなってきた。人事担当者が当初抱いていた精神障害者のイメージとは異なり、一般の人とさほど変わらないと捉えており、個人差があることを理解した。 障害者を初めて雇用した後に、さらに障害者を雇用した実績があるか、または今後採用する予定があるか。 ○新たに雇用した障害者はいない。 ○障害者雇用が実現できずに長年苦労してきた経過があり、また今後も欠員が生じた場合は補充要員として障害者雇用を検討する方法しか考えられないことから(雇用率を達成しているのであれば)、事業所としては現状維持でよいと考えている。 ○社会的責任という観点から障害者雇用を検討してきたが、対象障害者が障害についてクローズにすることを希望しているため、現状では事業所内において障害者を雇用したことの周知は行っておらず、クローズとなっている。社外に対してもアピールすることは考えていない。 障害者雇用を推進するに当たって求める支援の内容 ○事業所では3年ごとに人事担当者をローテーションで交代させる仕組みなので雇用率が変わったなどの制度的な情報は継続的に提供して欲しい(制度変更等のパンフ送付、障害者雇用セミナー案内などの情報)。 ○今回、雇用した障害者については特別な支援を必要としなかったが、仮に新たな雇用を考えた場合は何らかの支援を受けようと考えるかもしれない。 ○ハローワークなどの公的な機関が様々な支援機関による支援を体系的にコーディネートする機能を持っていると事業所は安心でき、利用しやすいのではないかと考えられる。 障害者雇用を躊躇している中小企業に対するアドバイス ○障害者を先入観で捉えるのではなく、まず受け入れてみることが大切だと思う。マッチングを実際に検討するための機会(実習、試用など)は必要と思う。 ○ハローワークの利用は、人材紹介や制度活用などの必要な情報が得られるため有効だと思う。事業所だけで考えるのではなく支援機関に相談したり助言を得ることも重要だと思う。 (8)H社 事例の概要:老人介護施設を経営していることから、介護補助業務での「知的障害者」の職場実習の受入れについて特別支援学校から依頼があったことと、障害者福祉サービス事業(就労継続事業)の実施を推し進めている中で、社会的責務からも自社での障害者雇用の必要性に関する自覚を持つようになり、特別支援学校の支援を受けて「知的障害者」の雇用を実現させた事例 企業の業種:福祉 企業の規模(常用労働者数):107人 事業の概要:高齢者福祉施設 対象障害者の障害種類等:知的障害(重度)、女性、10代 対象障害者の雇入れ時期等:平成24年4月 対象障害者の就業形態:採用後半年は試用期間で、その後正社員 対象障害者の就業日数・時間等:採用当初2ヶ月は1日6時間。その後フルタイム勤務(8時30分〜17時30分)に移行。基本的に土、日曜が休日だが、事業の都合上現在は土、日の出勤もある。 対象障害者の職務等 入寮者の洗濯物の回収、洗い、収納、掃除 対象障害者に対する雇用管理の状況 最初の3ヶ月は職員を付けていたが、現在は自立。作業手順を本人が理解し、自己のペースで進めている。普段の業務については高齢のパート職員が指導・アドバイスを行っている。 初めて障害者を雇用する以前に障害者を雇用しなかった理由 日頃、障害者との接点がなく、さらには納付金義務もかからなかったことなどから関心を持てなかったため。 障害者を初めて雇用することとなったきっかけ、当時の障害者雇用に関する認識 平成25年7月から障害者福祉施設(就労継続支援B型)のオープンを目指して準備を進めていた中、特別支援学校から生徒の職場実習に関する依頼があり、引き受けたことが端緒(平成23年度2、3学期においてそれぞれ10日程度の実施)。もともと障害者施設を経営することになるという立場から、障害者雇用の必要性に関して法人としての自覚があった。実習の結果、思っていた以上に優秀であると感じて雇用した。 障害者雇用に当たっての課題と対応 ○基本的には支援機関に相談するよりも自社の取組によって対処してきた。 ○障害者についての知識がなかったため、どのくらい仕事ができるのか、どのように受け入れていけばよいかなど、当初は全くわからない状況だった。簡単な作業(最初は洗濯物をたたむのみ、次に干す作業を入れるなど)から徐々に作業を広げていった。高齢のパート職員が当初から指導した。なお、特別支援学校からの依頼により、職場実習時から対象障害者に同行していた地元の支援機関職員も採用当初は様子を見に来てくれた。 ○職場実習を経験していたことから自社の職員も対象障害者のことを既によく知っており、受入れはスムーズだった。対象障害者もきわめてまじめであり、さらには他の職員の指示を仰ぐなどのコミュニケーションを取る必要がほとんどなく、自己のペースで進められる仕事であることもプラス要素となっている。現在の職場が、自宅から特別支援学校への通学途上にあったことなども対象障害者の気持ちの安定につながっているのではないかと見ている。 ○若い人は高齢者の心を癒し、なごますため、職場にいるだけでも対象障害者の存在意義は大きい。 ○障害者だからといって構えることなく、まずはできることをやってもらい、対象障害者の意欲をくみ取りつつも焦らず徐々に目標を広げていくよう努めている。なお、対象障害者は今後、利用者に本を読んで聞かせられるようになりたいとの目標を持っている。 利用した支援機関の経緯、内容、効果、順序等 ○求人を提出した際、ハローワークから特定求職者雇用開発助成金やトライアル雇用の説明を受けた。これらは活用しており、自社で申請を行っている。 ○特別支援学校の紹介で、地元の就労支援機関の支援を受けた。 障害者雇用にかかる社内での変化の有無と内容 対象障害者がきわめてまじめであり、決して手を抜いたりしないなど当初考えが及ばなかったような長所を持っていることに気付かされ、障害者を見る目が大きく変わった。また、特別な人的支援も要さずにこれまでやってきたことなども、障害者の能力についてプラスの認識につながったが、一方で対象障害者の能力が想像以上に高かったことや、障害者が比較的なじみやすい仕事を用意できたことも良い結果を導いてきた要因であると考えている。 障害者を初めて雇用した後に、さらに障害者を雇用した実績があるか、または今後採用する予定があるか。 ○障害者福祉施設の立ち上げに当たって確保できる仕事がある限り採用を前向きに考えていきたい。25年4月にも知的障害者1名を採用予定。 ○今般立ち上げる事業内容からも、一般企業以上に障害者雇用に関する社会的責任を果たさなければならない立場であることを強く自覚している。 障害者雇用を推進するに当たって求める支援の内容 ○障害者の特性などが世間に周知されていないことは問題であり、働く場があれば活躍できる障害者は数多いと思われる中、もっと社会に啓発していくべきではないかと思う。 ○採用までの過程で、必須と考える支援は職場実習。求職者情報など、いくら紹介文書をみても実際の能力はわからない。また、障害者本人も企業への警戒感がある。職場実習は、企業及び障害者双方がお互いに向き合い、認識を確認しあう大切な機会となる。実習によってコミュニケーションをしっかり取ることが必要。 ○今回の採用事例については特段高度な作業を求めなかったものの、より高度な仕事と障害者をマッチングさせていこうとする場合には、専門的なアドバイスをそれぞれの支援機関から得ることができるよう、コーディネートしてもらえればありがたい。 障害者雇用を躊躇している中小企業に対するアドバイス 頭であれこれ考えるのではなく、障害者と触れあうことが大切。そのためには職場実習の機会を設け、企業は実際に障害者と向き合い、コミュニケーションを取っていくこと、これに尽きるのではないか。 (9)I社 事例の概要:会社役員会で障害者雇用の方針をしっかり議論し、障害者を特別扱いせず社会人としての自立及びキャリアアップを図るための雇用方針を決定。また、障害者への雇用の門戸は閉ざさないというスタンスで自社ホームページにキャリア職の障害者募集情報を掲げるとともにハローワークにも求人を出し障害者の雇用に結びついた事例。 企業の業種:製造業 企業の規模(常用労働者数):276人 事業の概要:スポーツ用品の製造・販売 対象障害者の障害種類等:肢体不自由(下肢障害4級)、男性、50代 対象障害者の雇入れ時期等:平成23年9月 対象障害者の就業形態:正社員 対象障害者の就業日数・時間等:正社員としてのフルタイム勤務、休日も会社の規程どおり 対象障害者の職務等 製品の品質管理業務 対象障害者に対する雇用管理の状況 部署内のチームで組織的な雇用管理を実施。 初めて障害者を雇用する以前に障害者を雇用しなかった理由 平成21年以前は、従業員が20人〜30人規模の会社だったが、事業拡大などに伴い急成長し、平成21年から200人を超える会社になった。急な規模の拡大や必要な人材の採用等の対応で人事部署は精一杯であり、障害者雇用を推進する余裕がなかった。 障害者を初めて雇用することとなったきっかけ、当時の障害者雇用に関する認識 ○200人の規模を超えた平成21年に障害者がゼロであり、雇用するようハローワークから指導を受けた。 ○役員会で障害者雇用の方針を熱心に議論し、単に障害者を雇用するのではなく、雇用した障害者ひとりひとりを一人前の社会人として自立させていく姿を目指すことを社の方針とした。 ○会社にしっかり位置付くような仕事に就かせて自立させていくこと、スキルを身につけることができ、給料も仕事に見合う通りに処遇すること等、特別扱いしないという考え方で自社ホームページに一般と同じキャリア職種で障害者募集情報を掲げるとともにハローワークに同様の求人を提出した。 障害者雇用に当たっての課題と対応 ○採用した障害者は、ハローワークからの紹介ではなく、自社ホームページの求人募集への申込みによるものであった。 ○ホームページでは、障害者採用情報として掲示しているが、採用職種は一般の中途採用者の職種と同様にしている。自社のホームページを閲覧して応募するということは、応募者自身がスポーツに対して日常から関心が高いことを示しており、会社が採用時に重視している「意欲」、「自立心」、「スキル・経験」にマッチする人に結びつきやすいと捉えている。 ○2人目の障害者雇用となった聴覚障害者(次ページ「障害者を初めて雇用した後に、さらに障害者を雇用した実績があるか、または今後採用する予定があるか。」を参照)については、当初、教育担当とのコミュニケーションに課題があった。本人は口話が少しできるが、細かい内容は主に筆談になる。どのように対応すべきかを悩みながら学卒採用者10名に本人が入り社員研修をスタートしたが、耳が聞こえにくいという状況を理解して周囲の新入社員が自発的にメモを取り本人に渡すなどして対応を図ったため解決できた。 利用した支援機関の経緯、内容、効果、順序等 ○3年程前に特別支援学校の教諭が、学校でスポーツクラブを創設したいのでノウハウを助言して欲しいという理由で当社まで相談に来たのが特別支援学校を知るきっかけだった。その後、教諭が職場実習の受入れについて来社することが何度かあり、平成24年に特別支援学校の職場実習を2回受け入れた(本社のバックヤードの作業で、各部門長が中心になって仕事を教えた)。 ○ハローワークについては、求人を提出したところ、障害状況や意欲の程度に差がある求職者が応募してくるので人材の確保の面では採用側としては厳しいと感じた。当社は大卒以上を要件とする求人が主になる。一時期、民間職業紹介事業者を利用して紹介を受けたが採用には至らなかった。 障害者雇用にかかる社内での変化の有無と内容 ○スポーツというテーマを通して、障害者の理解が進んでいるところである(パラリンピックなどの障害者スポーツを含めたスポーツの話題や関心の高まり)。 ○朝礼時、新人の自己紹介に当たり、対象障害者自身から障害のことを積極的に話してもらっており、全社的に障害者の理解に努めようとしている。 ○デフ野球(聴覚障害者の野球競技)に対する企業サポートを提供することとなった。 障害者を初めて雇用した後に、さらに障害者を雇用した実績があるか、または今後採用する予定があるか。 ○初めての障害者雇用以後に雇用した障害者は聴覚障害者1名、肢体不自由者2名。「営業アシスタント」、「事務職」、「カフェの店長」として業務を行っている。 ○物流センターでの障害者雇用を考えており、今後とも進めていく方針にある。また、障害者雇用については、(自社ホームページの求人募集を通じて)「雇用の門戸は常に開けている」というスタンスである。 障害者雇用を推進するに当たって求める支援の内容 これまでは身体障害者が中心の雇用であったが、今後、物流センターでの商品の店舗ごとの仕分けや発送準備などの業務を自社で行うことになれば、知的障害者の雇用を視野に入れた検討が可能になる。その場合、特性に応じた作業内容の改善等が必要になってくると思われるため、支援機関からの助言等のサポートを望みたい。 障害者雇用を躊躇している中小企業に対するアドバイス 当社の障害者雇用はハローワークから背中を押された後に本格化した経緯はあるものの、雇用について役員を含めて真剣に議論を重ねた結果が現在につながっている。障害者雇用は会社のトップや現場が障害者雇用の位置づけや質についてしっかりと向き合い議論を重ねて実現させてほしいと思う。 (10)J社 事例の概要:障害者雇用に関する義務を知らなかったところハローワークの指導により自覚し、トップからの指示で障害者雇用の認識を社内で共有するとともに、受入れ前から職務創出等の取組を始め、面接会に参加。対象者を支援している地域障害者職業センターのサポートを受けながらも自社による取組を中心に雇用に結びつけ、その後も職場定着が図られている事例。 企業の業種:製造業 企業の規模(常用労働者数):93人 事業の概要:工作機械、産業機械の設計・製作 対象障害者の障害種類等:精神障害(高次脳機能障害2級)、女性、20代 対象障害者の雇入れ時期等:平成23年3月 対象障害者の就業形態:正社員 対象障害者の就業日数・時間等:○フルタイム勤務(8時15分〜17時00分)、週休2日(※他の社員と同様) ○当初は時間短縮を検討したものの結果的には一般社員と同様の時間とし、その代わりに適宜休憩を入れてもよいとする配慮を実施。 対象障害者の職務等 製造事務を1年実施した後、庶務担当として日報や出勤簿等の管理を担当。 対象障害者に対する雇用管理の状況 ○障害者を雇用したことによる体制上の変更はなく、既存の管理体制。 ○配属部署の課長・主任が雇用管理を行っており、総務の役割は日常業務の中ですれ違った際に声かけをしたり、表情を読み取って好不調を確認することなど。 初めて障害者を雇用する以前に障害者を雇用しなかった理由 障害者の雇用については、義務があること自体知らなかった。従業員数が増えてきた際、ハローワークから障害者雇用義務があることを知らされた。 障害者を初めて雇用することとなったきっかけ、当時の障害者雇用に関する認識 ○障害者を雇用しなければならないと知った後、どのような設備や人的体制の整備が必要なのか、どのような障害種別があってそれぞれの障害者がどのような仕事ができるのかが分からなかった。ただし、体制があまり整っていない状況でありながらもまずは動き出してみようとのスタンスで、雇用に向けた取組を開始した。 ○流れとしては、トップダウンによる指示は必須であり管理職向けに障害者雇用にあたってのスタンスを伝達し、次に受入れ予定の現場から障害者を配置するにあたっての業務内容を抽出するため、アンケートを実施して職務を創出した。これらを踏まえて、障害者雇用を具体的に進めようということになり面接会へ参加し、採用に至った。 障害者雇用に当たっての課題と対応 ○自社の取組としては、受入れ予定の部署に対して「各社員が担当していた定型的な作業」を抽出することを指示しつつ障害者向けの作業の設定を行うとともに、それらを集約して障害者の職務を創り出した。 ○抽出された作業については、これまで視覚化されていなかったため、事前にマニュアルを作成した。 ○指導体制は一般新入社員と同様で、特に障害者雇用における体制は構築していない。ただし、作業習得にかなりの時間を要する状況であったならば外部のサポートは必要と考えていた。 ○対象者の気持ちの面のサポートや事業所側が感じた疑問等への対応として、地域障害者職業センターの障害者職業カウンセラーに支援を依頼した。現在もフォローアップ支援を継続してもらっている。 利用した支援機関の経緯、内容、効果、順序等 ○ハローワークが開催した集団面接会へ参加した。 ○集団面接会において、対象者の支援者として同席していた障害者職業カウンセラーにより地域障害者職業センターを知った。その後受入れに当たって各種相談(対象者の特性や職場での対応の仕方、ジョブコーチ支援に関する相談等)に応じてもらっている。ただし、ジョブコーチ支援については対象者の意向を汲んで実施せず、定期的なフォローアップ支援という形となっている。 障害者雇用にかかる社内での変化の有無と内容 ○若い世代の社員(対象障害者)が配属されたことで、職場が明るくなり活性化した。 ○障害者雇用に取り組もうとする以前に、近隣の特別支援学校の教諭から職場実習の打診を受けたことがある。その時には「安全面に関して不安があるため」と断ったが、現在であれば「当社で働けそうか一度会ってみたい」という思いに変わってきた。社内の障害者の受入れに対する意識が前向きになっている。 ○対象者を雇用しただけではなく面接を通じて、障害者を一括りにはできないと認識してきている(ひとりひとりの特性はまちまちである)。 ○対象者の特性にもよるが、「間違ったことに対して注意する」ことは今でも難しいと感じている。具体的には、叱っていいのかなど注意の仕方について迷いがあり、周囲が気を遣っているのは事実である。 障害者を初めて雇用した後に、さらに障害者を雇用した実績があるか、または今後採用する予定があるか。 現時点では新たな雇用の予定はない。ただし、社員数の増加によりもう1名障害者を雇用する必要が出てきた際には、即座に検討していくこととしている。 障害者雇用を推進するに当たって求める支援の内容 ○集団面接会等の参加により障害者求人を出すと、最終的に面接結果を出さねばならず、事業主としては申し訳ない思いを抱き、障害者としても大半の方が残念な思いを抱くことになってしまう。そこで、面接会という形式を取らず、「求人を出すことを検討している企業」と「就職を考えている障害者」との交流の場を設定してもらえるとありがたい。これらにより事業所はどのような障害者なら受け入れられそうかのイメージを作り上げることができ、一方の障害者もどのような企業・職務があるのかを想定しやすくなるのではないか。その中から具体的なマッチングが進むケースが出てくることも期待できると考える。 ○長期的な継続雇用に向けて、支援機関のフォローは必須と考えている。 障害者雇用を躊躇している中小企業に対するアドバイス ○障害者を雇用していない状態で抱く不安(雇用したことによるリスクなど)は、何もしないでいるとさらなる不安に繋がりやすい。集団面接会への参加など障害者雇用に向けた第一歩を踏み出すことが重要で、その後はスムーズに進められることが多い。 ○職務の創出について、多かれ少なかれ必ず障害者にできる仕事はあるはずである。当社は事前に職務を抽出させたことが障害者雇用へのきっかけの一つとなった。 ○コンプライアンスを果たすことは企業にとって重要な要素であることを認識する必要がある。 (11)K社 事例の概要:ハローワークの指導により社会的責任を自覚し、自社による職務創出の検討を行いながら、民間コンサルティング会社を通じて「精神障害者」を採用した事例。 企業の業種:建設業 企業の規模(常用労働者数):171人 事業の概要:光ファイバーケーブル等の屋外敷設工事 対象障害者の障害種類等:精神障害(うつ病)、男性、40代 対象障害者の雇入れ時期等:平成22年9月 対象障害者の就業形態:契約社員・パート社員(体調に波があったこともあり、3ヶ月毎の更新を継続していた) 対象障害者の就業日数・時間等:1日6時間(9時〜16時)の勤務、週休2日(※正社員は1日7.5時間)時間短縮は対象者と相談の上で決定。 対象障害者の職務等 総務部に所属し、社員向けの書類や資料の作成業務(コピーやパソコン入力、ファイリングなど)を担当。 対象障害者に対する雇用管理の状況 配属部署において雇用管理を実施。 初めて障害者を雇用する以前に障害者を雇用しなかった理由 ○現場は屋外で高所作業のため足場が悪く、現地までの移動や安全性に関しての不安が強い。また、現場では現場監督としての業務が中心であり、知識と調整力を必要とする(工事は下請け業者を使うため)。 ○障害者の基本イメージは身体障害者であったため、職務設定の困難性に加え雇用した際に安全確保のための人員をプラスアルファでつける必要があり、そのための人員増は現実的に難しいと感じていた。 障害者を初めて雇用することとなったきっかけ、当時の障害者雇用に関する認識 ○ハローワークからの雇用率達成指導が一番のきっかけになる。ハローワークの主催するセミナーは毎年出席し、障害者雇用の必要性は漠然と持っていたが、雇用指導官からの指導を受けて社会的責任を事業所として意識するようになった。 ○トップ(社長)の障害者雇用の理解は円滑に進み、事業所の雇用方針が出てからは概ね2〜3ヶ月の期間で採用に至った。 障害者雇用に当たっての課題と対応 ○受入れに当たり障害者が担当する仕事を社内で検討した。業務改善や効率化を図るための組織管理上の考え方から、業務内容をメインの仕事とそれ以外に分け(コア業務とノンコア業務)検討を行った。その結果、ノンコア業務が障害者の仕事に適しているとの考えに至った。 ○雇用前に職場実習は特段行っておらず、面接で採用を決定した。採用する障害者が決まってからは、民間コンサルティング会社による社内研修等を通じ、社員に対する障害者の理解や周知を行った。併せて、対象障害者が登録している就労支援機関から対象障害者への接し方や配慮などのアドバイスを受け、社内では仕事のハードルを高くしないことを強調して社員に周知した。 ○なお、対象障害者は採用当初は安定していたが、徐々に体調を崩すようになり、就労支援機関から月1回の定期連絡と、3ヶ月ごとに対象障害者との面接を行ったが、結果的に9ヶ月で自己都合の退職となった。 ○実際の雇用を通じて、ノンコア業務では障害者に用意できる仕事量が日によってばらつき、毎日指示がなくても完結できる仕事を定量用意できなかったことが課題として挙げられる。 利用した支援機関の経緯、内容、効果、順序等 ○民間コンサルティング会社については、障害者を雇用する方針が決定した当時に採用方法を含めてどこに相談してよいか分からない状況にあった中、取引先の企業から紹介を受けて具体的利用に至った。障害者の人材紹介と社内研修のサービスを受け、2人の職業紹介があり(精神障害者、知的障害者)面接を実施し、精神障害者1人を採用決定した(成功報酬型)。 ○就労支援機関としては就労移行支援事業所(対象障害者が利用していた機関)を利用した。対象障害者の面接に同行し、対象障害者に対する接し方や配慮についてアドバイスを受けたほか、雇用後に月1回の定期連絡、3ヶ月ごとに対象障害者との面接を行ってもらっていた。 ○ハローワークに対しては一般求人の申込みでは利用していたが障害者求人は申し込まなかった。理由としては、「指導」を受けた相手に「支援」を求めることへの抵抗感があったため。また、ハローワークに障害者を紹介してもらった場合に、事業所側は不採用の判断ができず必ず雇用を前提にしなければならないという先入観があった(ハローワークに対するイメージ先行の誤解)。同じく地域障害者職業センターや障害者就業・生活支援センターについてもハローワークと同様に公的機関や行政機関というくくりで全般的に取っつきにくいと捉えていた。 障害者雇用にかかる社内での変化の有無と内容 ○当初は難しいと判断された仕事内容についても、事業所の工夫によって仕事の切り分けをすれば障害者が活躍できる仕事を創出できることが理解できた。 ○一方、実際に障害者を雇用してみないと見えてこないものは多々あると感じた。 ○職場実習などで障害者を体験的に受け入れる方法は、受け入れる企業側の経営体力や人的体制が整っていれば仕事の適性やコミュニケーション状況などを採用前に確認できるため有効な方法だと思われる。 障害者を初めて雇用した後に、さらに障害者を雇用した実績があるか、または今後採用する予定があるか。 ○工事会社という業種では、総務などの管理部門ではなく業務部門で受け入れるノウハウが必要と感じる。企業に利潤をもたらす部門への配置とそれを支える企業全体としての体制構築が必要であり、自社として今後の課題と言える。 ○中小企業の場合は、経費削減のため総務などの管理部門をスリム化している状況にあり、障害者を総務や庶務などの部門に次々と雇用する考え方は経営圧迫の要因となるためあまり馴染まない。 ○精神障害者の退職後、在職中の社員が疾病により中途障害者となったことから、現在1名の障害者雇用となっている。雇用する障害者をさらに増やしたいという気持ちはあり、実際に工事現場などの業務部門に従事可能となる障害者の採用を検討したい。 障害者雇用を推進するに当たって求める支援の内容 ○ハローワークなどから企業見学会の案内は定期的に来るが、これまで参加したことはない。同じ業種でないと参考になりにくい。逆に同業他社の取組は大いに参考になる。また業種だけでなく、同等の事業所規模という点も重要である。 ○事業所に対する支援機関等の周知は利用リーフレットのみによる周知では不十分と感じる。支援機関の担当者が顔を見せて説明するといった、事業所側に対して親しみやすくするための取組が必要。 ○ワンストップで雇用前の段階から採用、雇用後の定着までをコーディネートしてもらえる機能は有効と思われる。ただし、利用に当たっては、事業主団体等から紹介を受けられる、担当者を決めることで顔と顔のつきあいができる、分かりやすい説明やコーディネート実績をしっかり見せるといった支援機関側の工夫や努力によって企業に信頼や安心をもたらす取組が必要。 障害者雇用を躊躇している中小企業に対するアドバイス ○当社のような製造部門を持たない業種では、身体的な不安がなく一定の思考判断が行えるという点で精神障害者が仕事に適していると考えている。 ○精神障害者を雇用する際には、特に就労場面以外の生活に対するフォローや相談が必要と感じており、そのために支援機関のサポートは有効である。 ○職務の創出は必要となるが、その職務が見つかれば受入れのハードルは相当低くなると思われる。 (12)L社 事例の概要:一般求人に応募があった「聴覚障害者」を採用し、障害者の受入れに対する現場の不安を自社の取組により改善し、この経験を参考としてさらに障害者を雇用した事例 企業の業種:福祉 企業の規模(常用労働者数):187人 事業の概要:高齢者福祉施設 対象障害者の障害種類等:聴覚障害(6級)、女性、40代 対象障害者の雇入れ時期等:平成22年7月 対象障害者の就業形態:正社員 対象障害者の就業日数・時間等:他の社員と同様に、1日8時間(7時〜、12時〜、22時〜)の3交代制勤務。 対象障害者の職務等 介護職(入居者の食事・入浴・排泄等の介助、見守り支援、リハビリなど) 対象障害者に対する雇用管理の状況 ○障害者を雇用したことによる体制上の変更はなく、既存の管理体制。 ○フロアごとにチームを組み、1チームの人数は10名(交代制のため日勤では3〜4名、夜勤では1名)。 直属の上司はチームリーダーで、その上長が介護長。 初めて障害者を雇用する以前に障害者を雇用しなかった理由 ○ハローワークからの指導はあったが、既存の介護業務に従事できない限り雇用はできないと考えている。 ○一般求人は出しているものの、当該求人に障害者の応募がなかった。 ○特別支援学校からの要請により、知的障害者の実習を受け入れたことがあるが、対人業務や臨機応変さを要求せざるを得ず、結局採用に至らなかった。 障害者を初めて雇用することとなったきっかけ、当時の障害者雇用に関する認識 欠員が生じたためハローワークに一般求人を出したところ、対象障害者の紹介を受けた。障害の有無にかかわらず一般の場合と同様に面接し、能力を判断して採用を決めた。 障害者雇用に当たっての課題と対応 ○障害者を受け入れることに対して現場が不安を抱いていた。実際に対象障害者が現場へ配属された後にも「指示したことを理解する」ことがスムーズにできなかった場面において、それが聴覚障害の特性によるものであるとの理解を図るのに苦労した。対処としては、介護長やリーダーが、その都度現場の社員と話し合いを持ち、時間をかけて周知を図った。また、対象障害者への直接的な対策ではないが、各フロアにおいて引き継ぎ事項を口頭だけでなくパソコンにより記録に残すという流れを構築したことも良かったのかもしれない。結果としては対象障害者が職場に慣れてきたことで、適応が図られている。 ○(障害者の選考方法に直接絡むことではないが)現場の社員の障害者を受け入れることへの抵抗感に対して、どのように打開すべきかに迷っていたが、人事としては「障害の有無は関係なく、あくまで介護職としての資質や能力を見極めて選考している」ということを伝えることで対応を図った。 利用した支援機関の経緯、内容、効果、順序等 ○ハローワークについては一般求人に対して障害者の紹介があったのみで、特別な支援は受けていない。 ○その他の支援機関等については、その存在を知らなかった。もし知っていたとしても雇い入れたからには一社員として処遇し、障害特性は個人の特徴として理解して、企業の責任において対応していくものと考えている。 障害者雇用にかかる社内での変化の有無と内容 当初は特別な配慮が必要と想定していたが、思った以上に配慮を必要としなかった。ただし、能力や性格のように特性も一人一人異なるため、採用した障害者と同種同程度の障害であったとしても同じことが期待できるとは限らないと考えている。 障害者を初めて雇用した後に、さらに障害者を雇用した実績があるか、または今後採用する予定があるか。 ○対象障害者を参考にして、平成24年4月に聴覚障害者(2級、専門学校の新卒者で介護福祉士を取得)を別施設のショートステイでの介護職として採用した。 ○これまでと同様に、障害者を雇うための取組ではなく、介護職の求人に対して、能力がある方であれば障害を問わず検討していくというスタンスで進めていく。 障害者雇用を推進するに当たって求める支援の内容 ○紹介する際に求職者の大まかな障害情報をいただきたい(個人の詳細な障害情報は事業所側が面接等で把握すればよいため必要ない)。 ○一方で、実際に現場で作業してもらわないと分からないこともある。そのため職場実習のような制度があるとマッチングが図りやすくなると感じている。 障害者雇用を躊躇している中小企業に対するアドバイス ○「障害者だから採用は難しい」という固定観念を抱かないこと。 ○障害者であっても一個人として面接してみれば、これまで抱いていた障害者に対するイメージが変わってくるはずである(履歴書や障害者手帳だけでは分からないことがたくさんある)。紙面上で把握していた障害状況も、会ってみれば意外に受け入れられると感じるかもしれない。 ○(見学や情報収集により同業種での先行事例を把握したとしても)特定の障害種別や障害程度ならば同じような業務ができると考えるべきではない。個々の企業や施設とのマッチングにより様々である。 (13)M社 事例の概要:親会社からの出向として受け入れていた「知的障害者」が自社へ転籍となり、職場適応に向けてジョブコーチ支援の活用をはじめ支援機関との連携を図りながら、自社による取組も充実を図り、更なる障害者雇用へと繋げた事例。 企業の業種:複合サービス業 企業の規模(常用労働者数):245人 事業の概要:不動産賃貸および管理・損害保険など代理業 対象障害者の障害種類等:知的障害男性、20代 対象障害者の雇入れ時期等:平成22年に親会社から転籍 対象障害者の就業形態:準社員 対象障害者の就業日数・時間等:1日8時間(7時〜16時)の勤務、週休2日 対象障害者の職務等 管理課に所属し、親会社の工場内清掃作業を担当。 対象障害者に対する雇用管理の状況 ○配属部署において雇用管理を実施。 ○なお、同部署には現在、身体障害者(聴覚障害)3名、知的障害者3名、精神障害者1名の計7名が在籍。清掃業務に従事している者がほとんど。 初めて障害者を雇用する以前に障害者を雇用しなかった理由 配属部署の主な業務である清掃作業は、各担当者が単独で担当区域全ての作業を行う必要があり、一定程度の行動の自己管理ができることが条件となっていたことから、障害者がこれを行うのは難しいと感じていた。 障害者を初めて雇用することとなったきっかけ、当時の障害者雇用に関する認識 ○既に4年前から親会社からの出向により対象障害者を受け入れていた。2年前にハローワークから雇用率達成指導を受け、転籍することとなった。 ○親会社としても、ハローワークからの雇用率達成指導に鑑み、社会的責任を果たすべく積極的に雇用を促進する方針を決めた。 ○出向受入れ時においては、障害特性等は分からないながらも、とにかく受け入れてみて、何か問題が発生したらその都度対処していけばよいとの思いであった。 障害者雇用に当たっての課題と対応 ○対象障害者の配属部署は主に親会社の工場内清掃業務であり、当該業務に携わる社員は多数いるが、基本的に単独で作業をこなすことになっている。対象障害者が単独で業務を進めるには危険回避や求められるレベルでの作業遂行に不安があった。 そのため、自社の取組としては危険な箇所を清掃担当から除いたり、一部ペアでの作業に取り組むことで対応した。また、支援機関からはジョブコーチ支援のほか、定期的に対象障害者との面談を実施してもらったり、適切な職場環境設定に関する相談に乗ってもらったりした。 ○障害者雇用を担当するには、専門的な知識や経験が必要であると感じているため、ハローワーク主催のセミナーや先行企業への見学会に参加したり、障害者職業生活相談員資格認定講習を受講するほか、独自に情報収集を行っている。 ○新規に雇い入れる場合は、特別支援学校から職場実習を受け入れ、その際に障害特性等を踏まえたアドバイスを受けることが多い。 利用した支援機関の経緯、内容、効果、順序等 ○生活支援機関のサポートに関しては、対象障害者が当社へ出向中、職業生活上の問題を抱えた際に、本人が入居しているグループホームを運営する福祉施設の担当者が相談に応じてくれた。転籍後も、ジョブコーチ支援を実施する機関への取り次ぎ、職場訪問による対象障害者への支援、生活面での支援、対象障害者の特性に応じた職場環境の設定に関する検討への協力を受けている。 ○就労支援機関からは、転籍後、自治体独自のジョブコーチ支援実施機関のジョブコーチを派遣してもらったほか、前述の協力を受けた。 ○ハローワークが開催するセミナーや先行企業への見学会に参加することで、障害者雇用に関する知識を深めている。 ○新規に雇い入れる際、人材確保に関してハローワークに相談したところ、特別支援学校の生徒を職場実習から受け入れ、卒業後に採用することも一つの手段であるとのアドバイスを得た。これを参考とし、現在職場実習で受け入れた特別支援学校の卒業生の採用を行っている。当該障害者の職場定着については、地域の就労支援機関又は本人が利用している就労支援機関を活用している。 障害者雇用にかかる社内での変化の有無と内容 ○障害者雇用に関する知識や経験を深めたいと考えている。現場の社員にも勉強会などを随時開催して知識を付与していきたい。また、現場で障害者と一緒に働く中でも適切な対応スキルを身につけてほしいと考えている。 ○障害者の雇用管理を担う指導員を採用したいと考えており、職場定着に係る対応を図りたい。 障害者を初めて雇用した後に、さらに障害者を雇用した実績があるか、または今後採用する予定があるか。 ○現在、身体障害者(聴覚障害)3名、知的障害者3名、精神障害者1名の計7名が在籍している。 ○親会社としても、引き続き障害者雇用を推進していく予定である。 障害者雇用を推進するに当たって求める支援の内容 ○障害者虐待防止法の施行に伴い、社内で勉強会を実施するため外部機関による講師を探したがなかなか見つからなかった。障害者雇用とその周辺情報に長けた専門家を紹介してくれる機関があるとありがたい。 ○障害者の職務遂行上の問題に対して、在職中でも職業訓練を実施してくれる機関があるとありがたい(以前採用した障害者が作業能力が上がらずに自ら落ち込み退職してしまったケースがあったため)。 ○今後も人材の確保は課題になる。当社は特別支援学校との連携で対応しているが、安定して当社に適した障害者を確保できるようになるとありがたい。 障害者雇用を躊躇している中小企業に対するアドバイス ○当初は何から始めればよいのか、障害者が就労するとはどんなことなのかというイメージが持てないと思う。やみくもに取り組むよりも百聞は一見にしかずで、まずは先行企業を見学し、障害者雇用のイメージを作ることが重要である。 ○障害者雇用にはある程度の労力や知識・種々の経験(雇用しさえすればよいわけではなく、継続的に雇用するに当たっていろいろな問題が起こることが前提)が必要であり、心構えとして「苦労する」ことは念頭に置いておくべきと考える。 第4章考察と提言 第1章で述べたとおり、本調査は、大企業と比較すると障害者雇用が進んでいない中小企業について、初めての障害者雇用の実態とそれに伴う課題を把握するとともに、具体的な事例にかかるヒアリングを行うことにより、当該企業が初めて障害者を雇用する際のポイントとなる事項及び必要な取組等を明らかにしようとするものである。 これまで、アンケート及びヒアリング調査結果を見てきたが、ここでは、これらの結果や他の研究調査報告なども参考にしつつ、学識経験者や企業関係者、行政職員による議論も踏まえ、今後、初めての障害者雇用についての検討を行う中小企業がどのように取り組むことが望まれるかについて若干の考察と提言を加えてみたい。その際、「初めて障害者を雇用した企業」(平成21年10月1日以前に障害者を雇用したことがなく、平成22年6月2日から平成23年6月1日の間に初めて障害者を雇用したと回答があった企業。第1章2.方法(1)アンケート調査、を参照のこと)を対象とし、アンケート及びヒアリングにおける主要な調査項目である「初めての障害者雇用の課題と対応」、「初めての障害者雇用に当たって利用した支援機関及び支援制度」、「障害者を雇用した後、障害者を雇用するということに対する考え方の変化」及び「障害者の職場定着や新たな雇用に当たって(助成金等経済的な支援のほかに)必要な支援」の順に見ていきたい。 1初めての障害者雇用での課題と対応結果にかかる考察 課題として最も多く選択されたのは「従事作業の設定、作業内容や作業手順の改善」であり、その対応については、「自社による工夫・改善を実施」によるとの回答が最も多かった。また、ヒアリング調査において、職場実習時、採用当初及び現在とでは障害者の作業内容がそれぞれ異なる事例がみられたことから、初めて障害者を雇用した企業においては、実習であれ雇用であれ、まずは障害者を受け入れた上で、どのような業務内容とし、どのような雇用管理を行うかなどを具体的に検討している場合があることも想定される。 一方、初めての障害者雇用が知的障害者や精神障害者である場合には、「従事作業の設定、作業内容や作業手順の改善」のための対応として「外部機関の支援の利用」の回答がみられた。 初めて障害者を雇用しようとする企業にあっては、自社による工夫や改善で乗り切れる場合もあるものの、障害者を受け入れる前に、必要に応じて支援機関からその職務内容や雇用管理の仕方等に関する支援を受けることが有効な場合もあると考えられる。支援機関からの必要な支援を受けつつ取り組むことにより、その後の雇用の検討のための試行的な受入れなども、より効果的になることが期待できると考えられる。 「支援者や指導者の配置」に関しては、ヒアリング調査を見ると、障害者の配属部署に指導者を配置するなどの特別な管理体制を構築している企業は少なく、従来からの管理体制のままで業務への指導を行っている例が多かった。具体的には、総務・人事部門担当者が障害者に対して日々声かけを行って職場に対する緊張の緩和を図ったり、配属部署従業員との連携を密に取ったりすることにより、障害者の状況把握はもとより、配属部署の従業員の障害者受入れに当たっての不安や疑問の解消につなげている事例がみられた。 また、障害者が登録している支援機関に定期的な訪問をしてもらうことにより、障害者が初めての環境に飛び込んだ際の不安や緊張の緩和を図ったり、企業側が障害者への接し方や指導方法に関する助言を得ることができ、円滑な受入れにつながったとの声も聞かれた。 このことから、障害者の受入れにあたり、複数の部署から構成される組織を持つ企業にあっては、配属部署の管理体制を大幅に変更する必要はない場合もある一方、総務・人事部門が障害者の管理に対して関わったり、支援機関を有効に活用することで障害者の雇用管理の負担が配属部署に偏らないように工夫して進めていくことが重要と考えられる。 なお、特に身体障害者や精神障害者のように身体面・精神面において医療的なケアを継続して必要とする障害者については、障害者とのコミュニケーションを密に取っていくことが肝要である。 これまで見てきたように、初めて障害者を雇用する企業にとっては、作業内容の検討など雇用の初期段階からどのように進めたらいいのか戸惑うことも多いものと思われるが「何から手をつければいいか分からなかった」という場合も生じてくる。この場合、アンケートによれば「外部機関の支援の利用」が最も多く選択されたが、「障害者雇用の先進企業への相談等」が次いで多くなっており、「職場実習等試行的な受入れ」が選択されなかったことをはじめ、この2つ以外の対応はほとんど回答されていなかった。社員が障害者を職場に受け入れることに抵抗感があるという場合には、企業に障害者を迎え入れてみること、すなわち職場実習等の受入れなどが良いと考えられるが、雇用までのプロセスが整理できない場合や、受け入れることそのものの方向性は固めつつあるがどうしてよいのかわからない場合などにあっては、人事担当等が障害者を雇用している企業に出向き、先進事例に学ぶという方法が選択されていると考えられ、また、こうした対応は有効と思われる。 一方、支援機関が「どうしていいか分からない」などのような相談を企業から受けた場合にどのようなアドバイスをしているのかは、今回の調査では把握していないが、一般的には障害者雇用の検討開始から募集、採用及び職場定着に至るまでのプロセスについて説明することが想定される。そのプロセスの中で支援機関が職場見学等を勧める場合、障害者を未だ雇用したことがない企業にあっては勘所(障害者雇用のための重要なポイント)について見落としてしまう可能性も懸念されるため、支援機関が見学について専門的な見地からアドバイスをするなどによって、一層の効果が期待されるのではないかと考えられる。 2初めての障害者雇用に当たって利用した支援機関及び支援制度結果にかかる考察 ハローワークを除く各支援機関や一部の支援制度について「知らなかった」との回答が一定程度あった。 一方、ヒアリングを進める中で、支援を体系的に活用するためのコーディネートについての要望が比較的多くの企業でみられたが(※1)、障害者の雇用経験のない中小企業にあっては「支援制度そのものを知らない企業が少なからずみられることから、各種支援制度の周知、活用に向けたコーディネートの必要性が示唆される」との研究調査報告もあるとおり、企業にとって各支援機関やいろいろな支援制度を体系的に活用しやすくしていくことは、支援機関側の課題であるともいえる。 周知に当たっては、企業が各支援機関の特長や取り扱う支援制度の概要などに関する鳥瞰図をイメージできるように、その在り方について検討していくことが重要と思われる。 また、企業が初めて利用する支援機関の対応の在り方が同様に重要であると思われるが、前述の体系的な活用の検討ともども、こうしたことを摺り合わせていくためにも各支援機関同士における日頃の連携が重要であろう。 (※1)アンケート結果(問17)では、「支援を体系的に活用するためのコーディネート」の回答は多くはなかったが、もともとハローワークで取り扱う助成金以外の各支援制度やハローワークを除く各支援機関について「知らなかった」との回答が一定程度あった中、多くの支援制度・支援機関を「知っている」企業そのものが比較的限られたことから「体系的な活用」まで要望が至らなかったことが想定される。また、ヒアリング時に「支援を体系的に活用するためのコーディネート」を必要としつつもアンケートで選択しなかった企業に対して、その理由を聞いたところ「選択肢の意味することがはっきりとわからなかったため」という回答が目立った。このことから企業に対してアンケート作成側がたずねたかったことが十分に伝わらなかったことも回答割合を低くした要因の可能性として考えられる。 3障害者を雇用した後、障害者を雇用するということに対する考え方の変化にかかる考察 「職務内容や施設・整備、人的支援等の環境を整備すれば、障害があっても能力を発揮して働けることがわかった」、「大規模なハード面の改善が無くても、工夫すれば受入れが可能であることがわかった」のいずれかもしくは両方の回答は半数を超えており、障害者雇用を当初思っていたよりもスムーズに進めることができたとの認識であった。障害者雇用に前向きな企業がアンケートに回答したためにこのような回答が多めとなった可能性もあるものの、障害者を初めて雇用する中小企業に対するひとつの示唆になるものと思われる。 このため、まずは、障害者を未だ雇用していない企業における障害者雇用への不安や負担感を軽減し、障害特性や能力についての適切な理解を促進していくための取組が求められるものと考えられる。 ヒアリング調査をみると、知的障害者や精神障害者を職場実習で受け入れることによって、障害者雇用は身体障害者が対象であるとの固定観念が変わった事例や、障害特性を理解することによって障害者を見る目が変わった事例などが見られた。 また、ヒアリングでは、雇用した障害者本人が挨拶をしっかりできる人であったために、職員間の挨拶がなされるようになり社内が明るくなっているなど職場風土の側面からのメリットがあった事例や、職場風土にとどまらず、作業手順を確実にこなす知的障害者の特性が活かされ、障害者雇用が品質向上につながっているなどの事例も見受けられた。 一方、現在、コンプライアンス重視が社会的にも一層進む中、例えば、競争入札時において障害者の法定雇用率を達成していないことがマイナスポイントとされるなどの事例の紹介や、平成25年月から施行される「国等による障害者就労施設等からの物品等の調達の推進等に関する法律」において、「国及び独立行政法人等は、公契約について、競争参加資格を定めるに当たって法定雇用率を満たしていること又は障害者就労支援施設等(国や地方公共団体、独立行政法人等が優先的に物品、・サービスを購入する努力義務が課される施設等のこと)から相当程度の物品等を調達していることに配慮する等障害者の就業を促進するために必要な措置を講ずるよう努めること」と定められる(※2)など、障害者雇用は会社の業績そのものにも今後直接に影響してくるものとなり得る状況となっている旨の指摘が、この調査の取りまとめを行う「中小企業における初めての障害者雇用に係る課題と対応に関する調査委員会(以下「調査委員会」という。)」の委員からあった。 障害者を未だ雇用していない企業に対しては、ヒアリングにもあるような障害者雇用が社員に与えるメリットを十分認識するよう求めていくことが重要であると思われるが、このことに加え、前述のような法整備に基づくメリットや社会におけるコンプライアンス重視の意識の進展を十分認識、理解をした上で、障害者雇用を進めていく必要がある旨を周知し、理解を求めていくことも重要ではないかとの意見が、調査委員会の委員からあった。 (※2)地方公共団体及び地方独立行政法人は、括弧内記載による国及び独立行政法人等の措置に準じて必要な措置を講ずるよう努めるものとする、とされる。 また、公契約の落札者の決定にかかる総合的な評価方式の導入については、「政府は3年以内に検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずる」ものとされている。 4障害者の職場定着や新たな雇用に当たって(助成金等経済的な支援のほかに)必要な支援にかかる考察 初めて障害者を雇用した企業によるアンケートの回答を見ると「採用経路、求職者についての情報の提供」が一番多い結果となった(※3)。 ヒアリングの中でも、人材確保にかかる情報は少しでも他企業に先んじて得たいというのが本音であるとのコメントが見受けられたとおり、人材確保に関しては企業側が最も重要視するところと思われる。 一方で、これまで障害者を雇用したことのない企業においては、各支援機関に関する情報が少ないことが想定されるが、ハローワークにおける障害者雇用の面接会など、日時があらかじめ決まっているようなケースもあり、こうした情報を見落とさないようにするために注意する必要がある。まだどこの支援機関とも接点がない企業に対しては、まずハローワークを訪れるとともに、他の地元の各支援機関への求職者に関する情報収集も、積極的に行っていくように提案することが重要と考えられる。 アンケート及びヒアリング結果から導き出される考察及び調査委員会の委員による意見としては以上であるが、調査委員会の各委員によって、調査結果からは直接導き出されないものの、ジョブコーチによる支援(※4)に関して、その有効な活用及び企業への周知についての議論がなされた。 議論では、精神障害者に関しては、中・長期的にみた場合、症状に波が生じることが考えられる一方、採用当初には、フォローが必要かどうかわからない場合も多いということが焦点となった。このため、今回のアンケート調査では、精神障害者の雇用に当たってジョブコーチを活用したとの回答はなかったものの(※5)、雇用後であっても、雇用した精神障害者の状況に応じて本人の同意のもと、ジョブコーチの支援を受けることを勧めるということも必要ではないかとの意見があった。 一方、知的障害者については、ジョブコーチの支援の活用がアンケート調査でも一定程度確認された。知的障害者にあっては、障害特性上、企業側も採用当初からジョブコーチによる支援の必要性を認めて、時には支援機関から勧められつつ当該支援を受けているものと考えられるが、期待されるその効果に鑑み、一層の利用を勧めていく必要もあるのではないか、との意見があった。 以上を踏まえ、ジョブコーチに関し、とりわけ精神障害者や知的障害者の雇用に当たっては、有効な支援としてその必要性を企業に周知していくことが適切であるという意見がまとめられた。 (※3)このアンケート項目はアンケートの全対象企業に回答を求めているが、「採用経路、求職者についての情報の提供」が一番多い回答であるということについては、初めて障害者を雇用した企業と同じである。 (※4)ここでいう「ジョブコーチによる支援」とは、地域障害者職業センターに所属する配置型ジョブコーチや福祉施設等に所属する第1号職場適応援助者が実施する「職場適応援助者(ジョブコーチ)による支援事業」に留まらず、障害者の就労支援を実施している機関等において、支援者が職場に出向き、障害者及び企業に対して必要な支援を実施しているものを指している。 (※5)ヒアリングで確認された、ジョブコーチ制度を活用しなかった主な理由としては「採用以降比較的安定していた」、「疾患がてんかんでありこれまで職場で発症したことはなかった」、「本人の意向を汲んで実施しなかった」であった。 なお、初めて雇用された障害者ではないためアンケート調査ではカウントされなかったが、3人目の雇用となる精神障害者に対するジョブコーチの活用がヒアリング調査で1件確認された。 5提言 以下では、これまでの考察や調査委員会の各委員の意見を踏まえ、これから初めての障害者雇用を目指す中小企業に対して、いくつかの提言を行うこととする。 (提言1)障害者の能力の適切な理解と評価 初めての障害者雇用に躊躇している中小企業にあっては、雇用に向けた第一歩として、障害者の特性や能力に関して適切に理解するために、職場実習を受け入れたり支援機関(特別支援学校、就労系支援機関、障害者就業・生活支援センターなど)に対して雇用を躊躇する理由を具体的に相談してみることが勧められる。 職場実習により障害者雇用にかかる固定観念が変わった事例:A社 職場実習により障害者への認識が変わった事例:H社 (提言2)先進企業に学ぶ 実際に障害者雇用に向けた取組を進めようとするものの、何から手を付けていくべきか悩む企業にあっては、企業見学等を行いつつ先進企業の取組に学んでみること。また、見学先の選定に当たり迷うことがあれば、支援機関(ハローワーク、特別支援学校、地域障害者職業センター、重度障害者雇用地方相談協力員《地域障害者職業センターもしくは高齢・障害者雇用支援センターが相談取り次ぎ機関となる》など)に相談してみることが勧められる。 職場見学を実施した例:M社 (提言3)障害者が従事する職務に関する事前の検討 初めて障害者を雇用する方針を固めようとする企業にあっては、職場実習など試行的な受け入れに先だって、支援機関(地域障害者職業センター、就労系支援機関、障害者就業・生活支援センターなど)にも相談しつつ、障害者の職務等についてあらかじめ社内で検討してみることが勧められる。 あらかじめ職務を設定し、雇用した例:J社 雇用後の業務を想定しつつ職場実習を実施した例:B社、C社 (提言4)障害者雇用がもたらすメリット、意義の理解 障害者雇用の検討に当たっては、コストがいくらかかるかということだけでなく、障害者雇用が社員に与える意識の変化などのメリットとともに、平成25年4月から施行される「国等による障害者就労施設等からの物品等の調達の推進等に関する法律」に基づく制度等(※2)を踏まえた企業の経営面からみたメリットや、積極的な障害者雇用がもたらす企業の社会的評価の向上、社会貢献といったメリットや意義があることについても理解した上で検討することが勧められる。 障害者雇用によって社員間の挨拶が進むなど社員の意識に変化があった例:B社 障害者雇用が自社製品の品質向上をもたらした例:C社 (※2)前記3の(※2)を参照のこと。 (提言5)求職者に関する情報の積極的な収集 求職者に関する情報は、企業自らもハローワークをはじめとした各支援機関に相談するなど、その収集に積極的に当たってみることが勧められる。 なお、初めての障害者雇用の検討であることから各支援機関について何もわからないという場合にあっては、最初に最寄りのハローワークを訪ねてみることや、(独)高齢・障害・求職者雇用支援機構の発行する「はじめからわかる障害者雇用事業主のためのQ&A集」(ホームページでも閲覧可能)などを参考にすることなどから始めてみることが勧められる。 ヒアリング調査に基づく事例では、A社などによるハローワーク主催の障害者就職面接会の参加を始め、多くの企業が積極的に求職者の確保や求職者に関する情報の収集に努めている。 (提言6)障害者雇用に当たっての配置部署と総務・人事等の部署との連携 障害者を採用する際には、複数の部署から構成される組織をもった企業の場合、障害者の配属部署だけではなく総務・人事部門など複数の部署が直接的・間接的に関わること。また必要に応じて支援機関(地域障害者職業センター、特別支援学校、就労系支援機関、障害者就業・生活支援センターなど)に相談してみることが勧められる。 雇用管理体制を工夫した例:C社、J社 (提言7)ジョブコーチの積極的な活用 ジョブコーチによる支援(※4)について、とりわけ精神障害者や知的障害者を雇用する場合にあっては積極的に受けてみることが勧められる。 (※4)前記4の(※4)を参照のこと。 (出典) 文中の調査研究報告は、特別研究その13「中小企業における障害者雇用促進の方策に関する研究報告書」独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構障害者職業総合センター(2013)である。 (参考資料) ※当テキストデータでのアンケート等掲載に当たり、図表で示していた項目についても文字に置き換えているため、実際のものとは異なる部分があります。 平成24年10月 事業所各位 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 「中小企業における初めての障害者雇用に関するアンケート調査」へのご協力のお願い 時下益々ご清祥のこととお慶び申し上げます。 日頃から、障害者雇用にご尽力いただき、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構の活動にご理解、ご支援を戴いておりますこと、心から感謝申し上げます。 障害者雇用については、障害者雇用納付金制度の対象事業主の拡大や平成25年4月1日より法定障害者雇用率が2.0%に引き上げられることから、今後、特に中小企業において障害者雇用を推進しようとする事業主の増加が予想されるところです。しかしながら、中小企業の中には初めての雇用に課題を抱える企業が多いと考えられます。 そこで今般、厚生労働省所管の独立行政法人として当機構では、初めて障害者雇用に取り組もうとする中小企業への支援を充実させるため、アンケート調査を実施することとしました。 本調査結果については、分析結果を整理し企業の皆様にご活用いただけるよう当機構発行の報告書に掲載いたします。 なお、ご記入いただいた内容は、すべて統計的に処理を行いますので、個別の企業が特定されることはありません。また、個別データを別の目的に利用することは一切ありません。趣旨をご理解のうえ、何卒ご協力くださいますようお願いいたします。 また、中小企業における初めての障害者雇用に関する実態や課題を把握するため、この他にヒアリング調査を実施することとしております。アンケート調査へのご回答の有無に関わらず、別途、ヒアリング調査のご協力をお願いする場合もありますが、その際にはご都合のつく限りご協力いただきますよう併せてお願いいたします。 〔ご記入に当たってのお願い〕 1特に指定のない場合、直接、本票の各問に数字をご記入いただくか、該当する選択肢番号に○を付けてください。 2雇用状況等のご記入については、原則として平成24年10月1日現在の状況をお書きください。 3ご記入いただいた調査票は、同封の返信用封筒にて平成24年11月12日(月)までに返送してくださいますようお願いします。 4電子メールでのご回答をご希望の場合は、下記アドレスあてにその旨をご連絡ください。折り返し、電子媒体にてアンケート票の様式をお送りいたしますので、回答をご記入の上、ご返信ください。 5この調査についてご不明な点、お問い合わせ等がございましたら、以下までご連絡ください。 (問い合せ先)独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 雇用開発推進部雇用開発課 大越・渡會 住所:千葉県千葉市美浜区若葉3−1−3障害者職業総合センター 電話:043-297-9513FAX:043-297-9547 E-mail:manual@jeed.or.jp T貴社の概要についてお尋ねします。 問1貴社の主な業種(業務内容)は何ですか。該当する番号を1つ選び○をつけてください。また、()内に、具体的な業種をご記入ください。 1農業、林業、漁業( )2鉱業、採石業、砂利採集業( )3建設業( )4製造業( ) 5電気・ガス・熱供給・水道業( )6情報通信業( )7運輸業、郵便行( )8卸売業、小売業( ) 9金融業、保険業( )10不動産業、物品賃貸業( )11学術研究、専門・技術サービス業( )12宿泊業、飲食サービス業( ) 13生活関連サービス業、娯楽業( )14教育、学習支援( )15医療、福祉( )16複合サービス事業( ) 17サービス業(ほかに分類されないもの)( )18その他の産業( ) 問2平成24年10月1日時点の貴社における常用雇用労働者数(※注)は何人ですか。 ( 人) ※注この調査でいう常用雇用労働者とは、「障害者雇用状況報告」(毎年6月1日現在の状況をハローワークに報告するもの)において報告する常用雇用労働者と同じものとなります。 問3貴社において、本年10月1日から過去3年以内に新たに障害者を雇用しましたか。該当する番号に○をつけてください。 1雇用した。→問4へ 2雇用していない。→問17へ 問4貴社における初めての障害者雇用(雇用していた労働者が中途で障害者となった場合を除く。)についてお尋ねします。本年10月1日から過去3年間よりも前に障害者を雇用したことがありますか。該当する番号に○をつけてください。 1ない(過去3年以内で初めて障害者を雇用した)。→問5へ 2ある。→問17へ 問5本年10月1日から過去3年以内に新たに雇用した障害者のうち、最初に雇用した障害者の障害種別についてお尋ねします。以下の表により、障害種別をご記入ください。 1身体障害者 うち視覚障害者 名(うち重度 名) うち聴覚・言語障害者 名(うち重度 名) うち肢体不自由者 名(うち重度 名) うち内部障害者 名(うち重度 名) うち不明 名 2知的障害者 名(うち重度 名) 3精神障害者 名 注「重度」とは、身体障害者については身体障害者手帳における障害程度が「1,2級」をいい、知的障害者については療育手帳における障害程度が「最重度、重度」及び地域障害者職業センターによる「重度判定」を受けたものをいいます。 問6貴社において、本年10月1日から過去3年以内に新たに雇用した障害者のうち、最初に雇用した障害者が従事する(既に離職している場合は、従事していた)職業は何ですか。該当する番号を1つ選択して○をつけてください。 1管理的職業従事者(管理職員) 2専門的・技術的職業従事者(研究者、情報処理技術者、医療技術者、社会保険労務士、教員等) 3事務従事者(一般事務、会計事務、運輸・郵便事務等) 4販売従事者(販売店員、保険代理人、営業等) 5サービス職業従事者(介護サービス、理容師、クリーニング職、調理人、管理人等) 6保安職業従事者(警備員) 7農林漁業従事者(農耕、養畜、林業、漁業) 8生産工程従事者(生産設備制御・監視、機械組立、製品製造・加工、機械検査等) 9輸送・機械運転従事者(鉄道運転、自動車運転、建設機械運転等) 10建設・採掘従事者(建設従事者、電気工事、土木作業、採掘等) 11運搬・清掃・包装等従事者(倉庫作業、荷造、清掃、包装) 12その他( ) U初めての障害者雇用における課題についてお尋ねします。 以下の設問に対しては、貴社における本年10月1日から過去3年以内に新たに雇用した障害者のうち、貴社にとって初めて雇用した障害者の雇入れについてお尋ねします。 問7貴社において、初めて障害者を雇用する以前に障害者を雇用しなかった理由は何ですか。該当する全ての番号に○をつけてください。 また、該当する項目のうち、最大の理由を1つだけ下記の記入欄へ記載してください。 1企業のトップの理解が得られなかった。 2現場の社員の理解が得られなかった。 3障害の状況に応じた職務の設定や作業内容、作業手順の改善が難しかった。 4障害者向けの施設・設備等、障害者を受け入れるためのハード面の整備が困難だった。 5支援者・指導者の配置等、人的支援の体制の整備が困難だった。 6障害の状況に応じた労働条件の設定が困難だった。 7採用・選考に関するノウハウが乏しかった。 8障害の種類や、それぞれの障害で配慮が必要な点などについて、よく知らなかった。 9関心がなかった。 10その他( ) うち、最大の理由の項目番号記入欄( ) 問8貴社において、初めて障害者を雇用することとしたきっかけは何でしたか。該当する番号を1つ選択して○をつけてください。 1障害者の雇用義務があることを知った。 2ハローワークに出していた求人に対し、障害者の紹介があった。 3就労支援機関から依頼・推薦があった。 4特別支援学校や職業訓練を実施している機関から依頼・推薦があった。 5医療機関から依頼・推薦があった。 6社員や取引先等から親戚や知人の採用の依頼があった。 7企業の社会的責任等を考え、会社として方針を決定した。 8その他( ) 問9初めて障害者を雇用するに当たって、どのようなことで困りましたか。「困った項目@〜I」のうち該当する全ての項目について回答欄に○をつけてください。 また、回答欄に○をつけた「困った項目」それぞれについて、どのような対応を取りましたか。該当する状況を1〜5(1自社による工夫・改善を実施、2ハローワーク、地域障害者職業センター等外部機関の支援の利用、3障害者雇用の先進企業への相談等、4職場実習等試行的な受入れ、5その他)の中からすべて選択して、当てはまる番号に○をつけてください。(困った項目として選択していない項目についてはご回答いただく必要はありません) @.企業トップの理解を得ること 回答欄( ) 1・2・3・4・5 A.現場の社員の理解を得ること 回答欄( ) 1・2・3・4・5 B.従事作業の設定、作業内容や作業手順の改善 回答欄( ) 1・2・3・4・5 C.障害者向けの施設や設備の整備 回答欄( ) 1・2・3・4・5 D.支援者や指導者の配置 回答欄( ) 1・2・3・4・5 E.障害の状況を踏まえた労働条件の設定 回答欄( ) 1・2・3・4・5 F.採用基準や選考方法(面接の仕方など) 回答欄( ) 1・2・3・4・5 G.人材の確保(採用するルートなど) 回答欄( ) 1・2・3・5 H.そもそも何から手をつければいいのか分からなかった 回答欄( ) 1・2・3・5 I.その他 回答欄( ) 1・2・3・4・5 ※困った項目の回答欄に○を記入してください ※困った項目で「○」を記入した項目について回答してください 問10問9の対応として「5その他」を選択したものがある場合は、その対応を具体的にご記入ください。 ( ) V初めての障害者雇用に当たっての支援機関等の活用についてお尋ねします。 問11障害者雇用の取組みを進めるに当たり相談できるところがあることをご存知でしたか。また、初めて障害者を雇用するに当たって、それらを利用されましたか。次の項目ごとに該当する状況1〜3(1知っていて利用した、2知っていて利用しなかった、3知らなかった)のうち1つを選択して〇をつけてください。 1.ハローワーク 1・2・3 2.地域障害者職業センター 1・2・3 3.障害者就業・生活支援センター 1・2・3 4.就労移行支援事業者や就労継続(A型、B型)支援事業者など、障害者の就労面を支援する機関 1・2・3 5.特別支援学校 1・2・3 6.職業訓練を実施している機関 1・2・3 7.地域活動支援センターや生活支援センターなど、障害者の生活面を支援する機関 1・2・3 8.障害者を雇用している企業 1・2・3 9.民間コンサルタント 1・2・3 ※障害者の雇入れや職場定着に関する主な支援機関の概要について、別紙を同封しておりますので、ご参照いただきながら回答ください。 問12「相談はしたが問11にあげる項目のどれに該当するか分からなかった」、または「問11の項目のほかに相談したところがあった」のであれば、具体的にご記入ください。 ( ) 問13障害者雇用の取組みを進めるに当たって活用できる以下のような支援制度があることをご存知でしたか。また、初めて障害者を雇用に当たって、それらの支援制度を活用されましたか。次の項目ごとに該当する状況1〜3(1知っていて利用した、2知っていて利用しなかった、3知らなかった)のうち1つを選択して〇をつけてください。 1.トライアル雇用(トライアル雇用奨励金) 1・2・3 2.ジョブコーチによる支援 1・2・3 3.特定求職者雇用開発助成金 1・2・3 4.障害者初回雇用奨励金(ファースト・ステップ奨励金) 1・2・3 5.障害者雇用納付金制度に基づく助成金 1・2・3 ※支援制度の概要について、別紙を同封しておりますので、ご参照いただきながら回答ください。 問14問13にあげる支援制度のほかに活用した支援制度があれば、具体的にご記入ください。 ( ) W今後の障害者雇用等についてお尋ねします。 問15障害者を雇用した後、障害者を雇用するということに対する考え方は変わりましたか。該当する全ての番号に○をつけてください。 1職務内容や施設・整備、人的支援等の環境を整備すれば、障害があっても能力を発揮して働けることがわかった。 2大規模なハード面の改善が無くても、工夫すれば受入れが可能であることがわかった。 3一口に障害と言っても個人差が大きいことがわかった。 4想定していた以上に配慮が必要であると感じた。 5特に変わらなかった。 6その他( ) 問16貴社では、今後の障害者雇用についてどのような方針をお持ちですか。該当する全ての番号に○をつけてください。 1雇用する障害者をさらに増やしたい。 2障害者の従事する職域をさらに拡大したい。 3雇用している障害者を役職に登用したい。 4職場実習や委託訓練の受入れにより、地域に貢献したい。 5現在の状態が維持できればよい。 6障害者雇用に伴う諸課題への対応を見極めるため、試行的な雇用を行う中で、今後の方針について検討している段階である。 7その他( ) 問17障害者の職場定着や新たな雇用に当たって、助成金等経済的な支援のほかに、どのような支援が必要だと思いますか。該当する全ての番号に○をつけてください。 1障害者雇用に関する法律・制度等についての詳細な情報の提供 2作業環境の改善等についての助言 3作業内容、作業手順の見直し等、職務内容に関する助言 4雇用形態や労働条件の設定、受入体制の整備等に関する助言 5採用経路、求職者についての情報の提供 6職場実習やトライアル雇用 7職場定着、さらにその後の職業生活の持続の段階における外部の支援機関等からの支援 8上記の支援を体系的に活用するためのコーディネート 9その他( ) Xご回答の担当者(差し支えなければご記入をお願いします) 会社名 ホームページ http:// 担当者:所属/役職・氏名(ふりがな) 連絡先:所在地・電話・E-mail 以上で質問は終わりです。 記入漏れがないかをもう一度お確かめください。 ご協力ありがとうございました 別紙 障害者の雇入れや職場定着に関する主な支援機関・支援措置の概要 【支援機関】 ○ハローワーク 就職を希望する障害者に対する職業相談、職業紹介、就職後の職場定着・継続雇用などの支援や、事業主に対する障害者雇用に関する支援や雇用率達成指導を実施。 ○地域障害者職業センター ハローワーク等の関係機関との密接な連携の下、障害者に対する職業評価、職業指導、職業準備訓練等の専門的な職業リハビリテーションを実施するとともに、障害者雇用に際して具体的な課題を有する事業主に対して、その解決を図るための相談・援助を実施。さらに障害者、事業主双方に対するサービスとして、精神障害者総合雇用支援やジョブコーチによる支援を実施。 ○障害者就業・生活支援センター 雇用、保健福祉、教育等の関係機関との連携の拠点として、連絡調整等を行いながら、障害者の就業及びこれに伴う日常生活、社会生活上の相談・支援を一体的に実施。 ○就労移行支援事業者、就労継続(A型、B型)支援事業者 「就労移行支援事業者」では、原則2年間を限度として、一般企業での就労に向け、障害者に対して各種作業、企業における実習、適性に合った職場探し、就労後の定着のための支援等を実施。 「就労継続支援事業者」では、一般企業での就労が困難な障害者に対して就労の機会を提供するとともに、一般企業での就労に必要な知識、技能が高まった方の移行に向けて支援する。A型は雇用契約であり、B型は雇用契約なし。 ○特別支援学校 障害のある児童・生徒が生活や学習上の困難を改善又は克服するため、適切な指導及び必要な支援を行う学校。近年は、卒業後の就職を目指し、在学中からの職業指導や企業における実習に重点を置く学校も増加。 ○職業訓練を実施している機関 障害の態様等に応じた公共職業訓練を実施している職業能力開発校のほか、企業、社会福祉法人、NPO法人、民間教育訓練機関等多様な機関において、個々の障害者に対応した委託訓練を実施。 ○地域活動支援センター、地域生活支援センター 「地域活動支援センター」は、障害者がその能力や適性に応じて、自立した日常生活や社会生活を営むことができるよう、市町村の地域において相談支援やコミュニケーション活動を実施している障害者自立支援法に基づく機関。「地域生活支援センター」の名称を使用している場合もある。 【支援措置】 ○トライアル雇用(トライアル雇用奨励金) 障害者に関する知識や雇用経験がない事業所が、障害者を短期の試行雇用(トライアル雇用)の形で受け入れることにより、障害者雇用に取り組むきっかけをつくり、常用雇用への移行を目指す事業主に対し、奨励金を支給。 ○ジョブコーチによる支援 職場への円滑な適応を図るため、職場にジョブコーチが出向いて、障害者及び事業主双方に対して、しごとの進め方やコミュニケーションなど職場で生じる様々な課題や職場の状況に応じて、課題の改善を図るための支援を実施。 ○特定求職者雇用開発助成金 障害者をハローワーク等の紹介により継続して雇用する労働者として雇い入れる事業主に対し、助成金を支給。 ○障害者初回雇用奨励金(ファースト・ステップ奨励金) 中小企業における障害者雇用を促進することを目的に、これまで障害者雇用の経験のない中小企業において、初めて障害者を雇用した場合に奨励金を支給。 ○障害者雇用納付金制度に基づく助成金 障害者雇用に伴う経済的負担の軽減を図ることを目的として、法定障害者雇用率を達成していない事業主から徴収した納付金を財源に、障害者を新たに雇入れたり、雇用を継続する事業主に対して、その費用の一部を助成。 アンケート自由記述 問6「最初に雇用した障害者が従事する職業」 ・資機材管理 ・入居者の洗濯物の回収・洗い・収納・掃除 ・ビルメンテナンス作業他 ・駐車監視員 ・介護職 ・総菜製造の補助 ・スポーツ施設の受付業務 ・自動車部品検査 ・ゴルフ場のコース管理業務 ・バンド活動、広報、事務 ・製造機器の洗浄・清掃 ・環境整備全般、草刈、ペンキ塗り、樹木手入れ、清掃等 ・障害者就労支援施設で作成された物品の販売、管理 ・コールセンターにおけるスーパーバイザー 問7「初めて障害者雇用をする以前に障害者雇用をしなかった理由」 ・障害者との関わりがなかったので考えていなかった。 ・社内に途中から障害者になった者がいたから。 ・会社が設立して間もないため。 ・福祉介護業ということで、利用者様にサービスを提供する上で、障害の状況によっては仕事の内容に限りがあった為。 ・当時は常用雇用者数が少なく、障害者雇用不足数が0であったため。 ・障害者からの応募が無かった。 ・スポーツ施設の運営という業務の性質上、受け入れられる業務が無い。 ・介護サービスを提供する業種なので、当然マッチングが難しい。 ・病院であるため職員の8割以上が免許を持った者でないと雇用できず、その他無資格者のための適切な業務がなかなかないため。 ・事業規模が小さく必要性がなかった。 ・派遣業のため、派遣先からの理解を得るのが困難。 問8「初めて障害者を雇用することとしたきっかけ」 ・ハローワークの職員に依頼を受けた。 ・前任者退職に伴い、業務に必要とするスキルを持つ即戦力を探していたところ親会社からの紹介があった。 ・グループ会社からの転籍。 ・従事させる業務に障害が支障とならなかったため。 ・担当ケアマネージャーから、就労支援の相談があった。 ・障害者本人から応募があり、採用基準を満たしていた為。 ・従業員が障害者認定を受けた為。 ・ハローワークから採用についての指導があった。 ・介護サービスの提供に長年従事していた障害者から応募があった。 ・常用雇用者の増加に伴い、障害者雇用に不足が生じた。 ・他社からの紹介。 ・障害者の雇用義務及び社会的責任を感じていたが、障害者の雇入れによる職務の選定が決まらず、雇用することができなかった。今回ようやく障害者の従事する職務内容が決まったため雇用するにいたった。 ・職務の専門性とスキル。 ・ハローワークに出していた求人に対し、応募があった。 問10「初めて障害者を雇用するに当たり困ったこと」 ・従事する業務及び施設に対して影響がないような人材の選定。 ・コミュニケーションが必要な職場であり、職員とのチームワークが大切な業務にて、受け入れる以前に全職員が研修会を実施し、理解を深めた。 ・本人の理解力の問題だと思うが、指示が限定的に受け止められる。介護現場ではユニット制が主流になり、マンツーマンの仕事が大半であり、個人の判断で対処することが多くなり、介護職員に採用することができない。(助手的な採用ができず、1人の職員の職務量をこなさざるを得ない。) ・いつまで仕事ができるか。病状の進行具合を常にチェックし、担当ケアマネージャーや直属の上司との連携を密にした。出勤曜日を忘れて朝出社できなくなったら勤められない。次の支援を検討することに決めた。見極めが大事。 ・本社はビル3階建てでエレベーターがなく、重度の肢体不自由者(車イスなど)は不可。 ・当事業所は障害者の施設である為、特に困った事は無く受け入れ可能であった。 問12「障害者雇用の取組みを進めるに当たり相談できる機関等」 ・親会社 ・若年性認知症の方を雇用している施設が九州にあることを新聞記事で知り、そちらの責任者の方に電話でお話を伺い参考にした。 問14「障害者雇用の取組を進めるに当たって活用した支援制度等」 ・精神障害者の方の社会適応訓練事業を活用し、その後就職。 問15「障害者を雇用した後の考え方の変化」 ・業務遂行において、知的障害者は手順を遵守する特性があるので、健常者より製品の品質向上がみられた。 ・社員の協力体制ができた。 ・「障害があっても能力を発揮して働ける」とは思わないが、障害者向けに働く場所を創出すれば雇用できなくもない。 ・職種を選ぶ。 ・本人のやる気があれば根気よく継続雇用することが大切だと思う。 ・労働者派遣では難しい。 ・人により、がんばってその仕事をやろうという気持ちがある人は雇うことも考えたい。 ・仕事量が増えないと障害者雇用をするまでには至らない。 ・受け入れ側(健常者の社員)の配慮が不足している為、相応の研修を実施したい。 ・現在、新規採用自体が困難。 ・不況により、中小企業は新卒の採用もままならない状況。人件費抑制の中で、障害者雇用率のアップは如何なものか。また、社員人数で一律に%を決めることも圧政と言える。障害者雇用は大切なことと判断するが、中小企業も今、現状の雇用を維持することに苦しんでいる事を理解されたい。 ・障害者雇用率を2%に引き上げることは非常に厳しく、達成をあきらめるかもしれない。 ・雇用のマッチングが図られるのであれば、増員も問題ない。 ・高齢者にサービスを提供する事業であり、また介護報酬もどんどん削減される中、障害者向けの職種を新たに整備することは非常に困難なため、これまでどおり現行職種にマッチする障害者については、積極的に採用していくスタンスで変わらない。 ・1名追加雇用予定者あり。 ・減産の為、以前のメンテナンスの業務を一般の社員がしている。増産の傾向が生じれば、是非ともまた障害者に従事していただきたい。 ・よい人材であれば、障害にかかわらず採用をしたい。 ・欲しい人材であれば障害者であるかどうかは関係ない。 問16「今後の障害者雇用方針」 ・仕事量が増えないと障害者雇用をするまでには至らない。 ・受け入れ側(健常者の社員)の配慮が不足している為、相応の研修を実施したい。 ・現在、新規採用自体が困難。 ・障害者雇用率を2%に引き上げることは非常に厳しく、達成をあきらめるかもしれない。 ・雇用のマッチングが図られるのであれば、増員も問題ない。 ・高齢者にサービスを提供する事業であり、また介護報酬もどんどん削減される中、障害者向けの職種を新たに整備することは非常に困難なため、これまでどおり現行職種にマッチする障害者については、積極的に採用していくスタンスで変わらない。 ・1名追加雇用予定者あり。 ・減産の為、以前のメンテナンスの業務を一般の社員がしている。増産の傾向が生じれば、是非ともまた障害者に従事していただきたい。 ・よい人材であれば、障害にかかわらず採用をしたい。 ・欲しい人材であれば障害者であるかどうかは関係ない。 問17「障害者の職場定着や新たな雇用に当たって必要な支援」 ・支援以前に障害者雇用ができる現場をみつけるのが困難な部分がある。障害にも個性があると思うので、その状況で支援してほしいことは変わると思う。 ・障害者雇用率算定方法の改善。中小企業において身体障害者従業員が取締役に昇格した場合、雇用率算定対象に繰り入れ可としていただきたい。 ・障害者の社会参加、職場定着を目指した挨拶、マナーの教育。 ・支援機関や支援措置が多過ぎる為、障害者を雇用しようとする時に迷う。もう少し簡単に(窓口の統一等)してほしい。弊社は、助成金よりもジョブコーチのような支援が充実する方が障害者を雇用しやすい。 ・各種助成金制度の受給要件の中に特別支援学校の実習受け入れを必須要件にしたらどうか。 ・障害者の内面的な支援。ジョブコーチの生活支援のようなものがあれば助かります。 ・障がい者を派遣労働者として派遣した場合に、派遣元および派遣先の両方に雇用実績が反映される様な法改正。 ・教員免許を有する優秀な人物を採用できるような人材育成システムを国の責任で構築してもらいたい。 ・高次脳機能障害の方で、身体障害者の認定を受けるべく複数の医療機関(医師)の診察を受けるも、他覚症状が明確でない為か認定を受けられずにいます。医師をたらいまわしにされることもあり、当該の障害を持つ方に対する改善を要望します。 ・公共交通機関があまりない地域では受け入れ側に送迎の仕組みがなければ障害者を雇用するに当たり難しい面もあるので、行政の仕組み作りも必要と思います。 ・障害者の家族との連絡等、中間に入ってほしい。 ・今後、弊社でも障害者の方が働ける環境が整備された場合は雇用していけると思いますが、業務内容上、障害者の方が単独で業務を行うことが難しい環境にあります。その辺りの雇用条件に伴う条件設定等も勘案していく必要があると考えております。 ・障害そのものに対する情報、対応の仕方。 ・先進的企業への見学会。 ・就業前の職業訓練だけでなく、就業後のトラブルに対処するための職業訓練制度。 ・障害者の方が一般企業で普通に働くことに対する一般の方々の理解の促進。 ・助成金手続きの簡素化。また、助成金制度自体をよりわかりやすく。手続き時のフォロー強化。 ・障がい者雇用等に関しても経済的な支援が大きくかかわる。弊社は障がい者施設でもあり、単価(収入)設定が良くなると雇用にも進みやすい。 参考文献一覧 ○厚生労働省職業安定局(2012) 「地域の就労支援の在り方に関する研究会報告書」 ○独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構障害者職業総合センター(2012) 「企業に対する障害者の職場定着支援の進め方に関する研究」調査研究報告書No.107 ○独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構障害者職業総合センター(2013) 「中小企業における障害者雇用促進の方策に関する研究」 平成24年度:障害者職域拡大等調査報告書No.2 中小企業における初めての障害者雇用に係る課題と対応に関する調査 平成25年3月発行 発行 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 〒261-0014 千葉県千葉市美浜区若葉3-1-3(障害者職業総合センター内) 電話:043-297-9513(雇用開発推進部雇用開発課) FAX:043-297-9547 URL:http://www.jeed.or.jp/