Q1 精神障害者とはどのような特性がある人ですか。 精神障害者は、障害者基本法によると「精神障害(発達障害を含む。)がある者であって、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるもの」(第2条から抜粋)と定義されます。 一方、障害者雇用促進法では、精神障害者の範囲を、精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている人または統合失調症、そううつ病(そう病及びうつ病を含む)、てんかんにかかっている人で、病状が安定し、就労が可能な状態にある人としています。また、雇用率算定の対象となるのは精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている人としています。  ただし、神経症等それ以外の精神障害者についても、障害者雇用促進法の障害者、すなわち「身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む。)その他の心身の機能の障害があるため、長期にわたり、職業生活に相当の制限を受け、又は職業生活を営むことが著しく困難な者」に該当しますので、ハローワーク等における支援の対象となります。 以下、精神障害の代表的な疾患に関し、その特性について要約します。 統合失調症 10代から30代の若い世代で発症することが多く、この疾患の頻度は約1%と言われており、およそ100人に1人が罹るポピュラーな疾患といえます。  はっきりとした原因はいまだ不明ですが、脳の神経伝達物質(神経細胞の間で情報を伝達する物質)の異常がさまざまな症状を引き起こすと言われています。主な症状としては発症初期や調子を崩した際に現れやすい陽性症状として、幻視、幻覚、妄想、思考の混乱(自分の考えや気持ちをうまくまとめて言えない)が挙げられます。このほか陰性症状と呼ばれる慢性的な症状として、意欲の低下、感情や表情の平板化(喜怒哀楽の表現が乏しくなる)などがあります。  こうした症状が軽減された人が、就労を目指すことになりますが、一方で「疲れやすい」「細かな指先の動作が苦手」「複雑なことが苦手」「臨機応変に判断することが苦手」「新しいことに不安が強く、緊張しやすい」などの特性が現れることが多く見られます。 気分障害 うつ病やそう病(単一性障害)、そううつ病(双極性障害)の総称です。これらの疾患に罹る原因ははっきりとはわかっていないものの、精神的、肉体的な疲労が続いていくうちに脳内の神経伝達物質に異常を来し、さまざまな症状が出現すると言われています。うつ病は、一生のうちに15人に1人は罹ると言われているほど頻度の高い疾患であり、通常の生活に支障を来すほどに気分が沈む状態が長く続く疾患です。その際、身体の不調として、疲労感、倦怠感、睡眠障害、食欲不振、体重の減少、頭痛・腰痛等があります。また、精神症状としては、抑うつ状態、日内変動(朝方から夕方になるにつれて憂うつ感が軽くなっていく)、集中力低下、注意力散漫、意欲低下、興味・関心の低下、不安、取り越し苦労、自信の喪失などが見られます。 「そう」は、「うつ」と逆に気分の高揚が現れ、気力や活動性の亢進が現れますが、この状態とうつ状態が交互に繰り返されるのがそううつ病です。 他にも、統合失調症やそううつ病よりも軽症であり、精神的な葛藤やストレスによって不安や恐怖を感じて精神や身体的な症状を引き起こす神経症(強迫性障害やパニック障害など)や、精神作用物質(アルコールやシンナーなど)による精神疾患、事故あるいは脳出血などで脳に損傷や衝撃が加わることにより運動機能や思考、言語、記憶などの認知機能に障害が生じる高次脳機能障害などの精神疾患があります。  なお、発達障害は発達障害者支援法において、自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害、その他これに類する脳機能の障害であってその症状が通常低年齢において発現する障害を有するものとされていますが、WHO国際疾病分類では精神障害に位置づけられています。また、冒頭に引用した障害者基本法や障害者雇用促進法でも精神障害に発達障害を含めています。我が国での取扱いの実態について、ハローワークの専門援助部門における発達障害者の実態調査を見ると、199名の発達障害者の約6割が精神障害者保健福祉手帳を取得して就職していた、というデータもあります(※1独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構障害者職業総合センター:調査研究報告書No.99「高次脳機能障害・発達障害のある者の職業生活における支援の必要性に応じた障害認定のあり方に関する基礎研究」(2011年) 【参考1】 働いている精神障害者はこんなに増えています! 民間企業における精神障害者の雇用状況 平成20年 5,997.0人 平成21年 7,710.5人 平成22年 9,941.5人 平成23年 13,024.0人 平成24年 16,607.0人 平成25年 22,218.5人 平成26年 27,708.0人 平成27年 34,637.0人 出典:厚生労働省(6月1日現在の障害者雇用状況の集計結果のうち、精神障害者の雇用状況を抜粋)