令和4年度就業支援ハンドブック
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第2章第2節第3項 精神障害者の支援を通じて感じること116 第2章 就業支援の実際(事例)4)採用とその後 Aさんの主な業務は、パソコンでのデータ入力作業であるが、合間に資料の印刷や発送も行っている。採用当初は、時々障害者就業・生活支援センターの担当者が職場に同行し、業務遂行の仕方を助言したが、1か月後には、指示された業務を自分で行うことができるようになった。 当施設では就職後の利用者への支援として、必要に応じて電話相談や職場訪問を行っている。Aさんの職場にも定期的に出向き、職場の方から様子をうかがい、Aさんからも話を聴くなどして支援を続けている。その他施設恒例の一泊旅行や忘年会などにはAさんも参加し、充実した余暇を楽しんでいる。 ところで就労移行支援事業所は、利用者が就職してもサービスは終了しない。就職は喜びと同時に、緊張と不安を胸にした新たなスタートである。就職した後も様々な課題が生じる。「上司から注意されたがうまくできず、やめた方がいいのか」「挨拶してもしてくれない人がいる。嫌われているのでは」という不安や、指示された仕事がなかなかうまくできない、お昼休みの過ごし方がわからない、といったことなど様々である。必要に応じて職場に同行し、職場環境や業務内容、社内の人間関係など一緒に確認しながら対処法を検討することが大切である。また企業も本人にどう接していいかわからない場合もあるので、適切に説明し担当者を支援することも求められている。 就業支援には、当然のことながら、①本人の職業準備性、②支援機関のチーム支援、③労働条件と本人の特性のマッチング、が重要である。ただこの3点すべてが最初からきれいに揃うことは難しく、試行錯誤しながら支援を進めることになる。100人いれば100通りの事例がある。 また、就業支援は単に「働く」ことだけの支援ではない。ひとりの生活者、あるいは人生そのものの支援をも含んでいる。体調管理にしても、心理教育のみならず主治医との関係や医療サービスの内容、家族との関係、本人の価値観、生活スタイルなどが影響している。精神障害者保健福祉手帳に

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