令和4年度就業支援ハンドブック
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第1章第4節  b 就業を支える仕組みを伝える ジョブコーチは対象者の就業を支える仕組みを企業の内外で作っていくわけであるが、形式だけ引き継ぎ、考え方を引き継がないと仕組みは形骸化してしまい、果ては担当者が替わって背景が分からなくなると「何でこんなことしてるの?面倒だし、止めたら?」ということになりかねない。 例えば、分からないことがあっても質問できず、周囲から孤立し被害的になり休職してしまった精神障害者を復職支援したケースでは、支える仕組みとして、定期的に上司に報告することとし、それにより、本人が作業のできばえを確認できることが安心感につながり、また、評価されることでモチベーションの維持につながった。この場合、なぜ、対象者には仕事の区切り毎に「報告する」というルールが必要なのか、対象者にとっての報告行為の意味合い、そのメカニズムを企業や周囲で働いている人に理解してもらう必要がある。 ただし、難しいのは課題が発生しないと、その大切さがなかなか理解できないというところである。おわりに ジョブコーチ支援は、企業の内外で障害者の就業を支える仕組みを作る作業と言える。 現場の状況を正確に把握し(本人と取り巻く環境のアセスメント)、設計図(支援計画)に基づき就業を支えるために必要な柱を企業の内外で打ち立てる。言わばジョブコーチは「大工さん」なのである。もちろん一旦構築した仕組みは、半永久的に存続するわけでない。長い間には、風雨にさらされることもあるだろうし、時には地震にも見舞われるかも知れない。それを可能な限り予測し防災対策をとる。その都度柱の立替えであったり、土台の補強などのメンテナンス作業、場合によってはリフォーム(再度の集中支援)も必要になる。何年たってもきちんとメンテナンスしてくれることが保障されていれば(フォローアップ)、安心して働けるし、安心して雇用できることになる。 第4節 就職から雇用継続に向けた支援 75

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