令和4年度就業支援ハンドブック
95/296

第1章第4節5)「できる」ための支援を 福祉の分野における生活支援とあえて差別化をはかるのであれば、「本人ができるように」という視点を最優先するということである。 生活支援の基本的なスタンスとしては、本人のアセスメント結果等を踏まえつつ「本人ができる」を目的に支援を展開する。他機関との連携が必要な場合には、最終的には支援対象者本人が主体的にそれらの機関を利用できるようになることが理想であり、そのためのサポートを心掛けること 表4を見ていただくとわかるように、一般的には小学校、中学校と年齢を重ねるに従い情報伝達が本人主導に移行していると言える。しかし、特別支援教育から福祉へと進んだ場合には、家族は本人以外に情報を得るツールを十分に有しており、伝達の移行がなされていないと言える。このような環境下で過ごしてきた方が就職するとどうなるだろうか。一部特例子会社のように障害のあるスタッフに対して厚い支援体制が整っている企業を除けば、ほとんどの場合、連絡帳や保護者会などは無い。家族にとって唯一の情報源が支援対象者本人であるという状況になる。この状況に慣れていないと、家族は情報不足から大きな不安を抱えることになる。本来であれば、支援者と情報を共有し対象者を支えるチームに属することが望ましい家族が、チームの外にいる形になってしまう。この状況になると、家庭での支援はスムーズにいかなくなり、効果的な支援を行えなくなる。そればかりか、状況によっては情報不足に起因する誤解等から、対象者本人ではなく家族の言動が雇用継続を困難にしてしまうようなことも起こりかねない。 以上のことから家族への支援、とりわけ情報の提供・共有は障害者の就業支援においては欠かすことが出来ないと言える。また、家族によってはすぐに適切な支援者としての理解や対応が期待できない場合もあるため、一方的な価値観を押しつけることなく、支援の段階に応じて、必要な情報提供を行い障害特性や職業生活への理解を促しつつ、適切な支援のスタンスが共有できるよう支援を進めることが望まれる。家族と情報を共有し、支援チームを組むことにより対象者の就業と生活を一体的に支援することが可能になる。 第4節 就職から雇用継続に向けた支援 89

元のページ  ../index.html#95

このブックを見る