就業支援ハンドブック実践編
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第2章事例1 312第2章 事例1 ワークサンプル幕張版(MWS)等を活用したアセスメントとプランニング相談では、現段階のAさんの主訴を明確に把握するため、①来所の経緯、②職業に関して現在感じている不安や実際に困っていること、③職業センターが行う支援への期待等を聞き取った。①  来所の経緯については、1年ほど前に広汎性発達障害の診断を受け、精神障害者保健福祉手帳を取得したこと、就職に不安があり相談できるところをインターネットで検索をしたところ職業センターを知ったこと等について、断片的に話された。  なお、この時点で職業センターのサービス概要と個人情報に関する取扱等について説明を行い、同意を得た。また職業センターを今後利用しない場合は、個人情報を記録に残さない旨を説明した。②  職業に関して現在感じている不安や実際に困っていることについては、今まで数社で働いたが仕事が長続きしないこと、1年前に広汎性発達障害の診断を受けスッキリしたが、今後の就職にどう影響するか不安があること、自分に向いている仕事が分からないこと、自信が持てず就職活動への一歩が踏み出せないこと等を話されていたPoint3  。  これらの発言からカウンセラーは、広汎性発達障害の診断を受けたことで離転職の要因が少し明確になったことはよいが、障害特性を踏まえた具体的な今後の働き方や求職活動の仕方が分からずに困っているとAさんの状況を捉えた。③  職業センターが行う支援への期待等については、特に上記②についての相談・支援が受けられることを期待されており、障害特性を踏まえた働き方や就職活動の方向性に関するアドバイスが欲しいこと等でよいかAさんに確認し、了承を得た。主訴の聞き取りは、この段階では断片的にならざるを得ません。主訴を安易に支援者がまとめるのではなく、まず本人が話す事実そのものを把握することが重要であり、その上で支援者の受け取った内容が本人の思いと相違ないかを確認します。つまり、主訴を聴取する段階からプランニングに向けた合意形成がスタートしていると言えます。診断が確定した際の気持ちについては、「診断前は、学校や職場で上手くいかないことで自分を責めたり疑っていたが、その理由が分かりスッキリした。」と自然にためらいなく話されていた。このことから、カウンセラーはAさんが広汎性発達障害の診断を前向きに受け止めており、今後の就職に向けた支援が可能な状態にあると推測した。カウンセラーは、主訴の把握と併せてパンフレットを活用しながら職業センターのサービス内容とその流れを一つひとつ説明し、不明点等については補足説明を行った。今後の具体的なAさんの支援については、職業評価を通じて障害特性が及ぼす職業的課題、適性のある職業領域や職務内容等を具体的に整理した上で、Aさんに合った働き方や就職活動の方向性を検討していくことを提案した。Aさんも「職業評価や個別相談を受けたい。」と話されたためPoint4  、次回の来所予約を受け付けるよう所内で調整し、具体的な日程については追って連絡することを伝えたPoint5  。Aさんは終始穏やかな表情ではあったが、「実は相談を断られるかもしれないと不安だった。継続相談ができることになってホッとした。」と話されたPoint6  。② 障害受容について③ インテーク後の支援の方向性について

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