就業支援ハンドブック実践編
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第2章事例1 事例1 地域障害者職業センター 発達障害25約2時間程度を要した。終了後に疲労感について確認すると、「色々と話せて良かった。疲労については大丈夫です。」と話されたが、表情からはやや疲れている様子が窺えた。特に発達障害のある方には、これまで示したツールやホワイトボード等を活用し、認知特性に合わせたコミュニケーション方法に配慮しつつ相談を進めることが大切です。本ケースは、言語理解の能力が高いためコミュニケーションが比較的円滑に進んだ事例ですが、発達障害の方の場合は、うまく発言できないことや十分に伝えられないことがある場合がよくあります。また、質問する意図を明らかにするとともに、不明なことは遠慮なく尋ねるように伝えておくことも重要です。本人も安心して回答ができ、情報収集が円滑になる側面があります。相談では、Aさんには事務、接客、商品管理等幅広い業務経験があること、また作業面のエピソードについては、同じミスを繰り返したり仕事を覚えるのに時間がかかる等があることを把握した。次回からは、今回の面接・調査の結果を踏まえ、各種検査を通して仕事面における具体的な課題や特徴等を確認したい旨を伝え、Aさんから了承を得た。なお各種検査については、今後の就職先として想定される可能性が高い事務や店舗内作業で求められる能力を把握するための検査を選定することを伝えた。2日目は、厚生労働省編一般職業適性検査(通称GATB:General Aptitude Test Battery)を実施した。<GATBの概要>検査の趣旨GATBは、多様な職業分野で仕事をする上で必要とされる9つの能力(適性能)を検出することにより、個人の理解や適性のある職業領域の探索等、望ましい職業選択を行うための情報提供を目的として作成されています。この検査は進路指導用、職業指導用の2種類があり、中学・高校・大学及び職業相談機関等において幅広く活用されています。なお、適性のある職業領域を検討する際には、GATBの結果のみに基づき本人に情報提供するのではなく、後述の他のワークサンプル等の作業検査や個々の障害特性を踏まえながら、適職を検討する際の材料の一つとして慎重に勘案していきます。職業センターでは、本人の職業能力の大枠を把握するための最初の方法の一つとして活用することが比較的多くあります。検査の概要同検査は、指定の用紙を用いて鉛筆で記入し11種類の検査を行う紙筆検査(45〜50分)と、4種類の器具検査(12〜15分)の2つから構成されています。指先・手腕の器用さを要する検査、計算を正確に行う数理能力を用いる検査、物の位置や大きさを正確に判別する検査等、様々な職業に必要な9つの職業適性能を測定し、その結果により13の職業適性群が検出され、本人の職業適性を把握する一助としています。説明と練習を実施してやり方を確認した上で、本検査を所定時間行います。(2) 厚生労働省編一般職業適性検査の実施(アセスメント第2日目)12

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