就業支援ハンドブック実践編
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第2章事例25 6770第2章 事例2 施設内作業、職場実習等におけるアセスメントとプランニング初期アセスメントの後に、支援を行う中で本人は長期目標と短期目標の意味を体感することになります。当施設は可能な限り支援状況を確認するための会議を開催し、目標の達成状況や現況を本人と確認するなど、重要なポイントにしています。また、個別会議で設定した目標に関しては、毎月の工賃支給日前に、Aさんに目標達成度をフィードバックする機会を設けている。Aさんは、欲しい物を買いたいという思いから、工賃支給日を非常に楽しみにしていた。そのため、欲しい物を買うためにはお金が必要であり、お金(工賃)を得るためには目標を達成しなければいけないという意識につながるようになっていた。このように、毎月の目標のフィードバック(工賃説明)の機会は、お金と労働をつなげる場となっているPoint6  。フィードバックに際しては、目標に対する評価を伝えるだけでなく、自己評価と職員評価との違いを認識してもらい、次月への目標達成に向けた意欲向上につなげていくことが重要です。また「お金=働く」ことのつながりを伝える場でもあり、普段の作業への姿勢や目標への達成度等により工賃額が変化することを伝え、理解を深めていきます。入所5か月目に、喫茶店での職場体験実習を行った。学生時代には就職を希望していなかったため、職場実習の経験自体がなかった。今回の実習が初めての職場体験実習となった。業務面は比較的評価が高く、テーブル拭きや開店準備などの工程が比較的定型化されている業務は、より理解がスムーズであり、かつ丁寧な仕上がりと喫茶店側から好評価を得た。一方で、Aさんが気に入っているスタッフの前では張り切る様子が見られたが、接する人により接客場面での声の小ささや、業務を拒否する姿勢等、意欲の低下が見られた。また、休み時間から業務に戻る際に遅れる等の時間管理の課題、衛生面での意識の薄さも課題として見られた。喫茶店側からは、企業で働く意識の低さや職場のルールの順守ができないという指摘も受けたが、Aさん自身は、まずは初めての実習を1か月間やり遂げ、達成感と自信につながるコメントを述べていた Point7  。社会経験の少ない方にとっては、初めての職場体験実習の成功・失敗体験が、今後の就業への“向き合い方”に大きく影響します。今回は職場体験実習を乗り切り、できる仕事が増えた点を本人に重点的にフィードバックしています。このように「『実習』=『楽しい』」の気持ちを「『働く』=『楽しい』」に向けた流れを支援することを目標に、指摘された課題を今後改善していく姿勢が望まれます。(3) 初めての職場体験実習 〜“働く楽しさ”に向けた意識作り〜

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