□表紙  障害者のキャリアアップや加齢に伴う問題への対応に関する職場改善好事例集  −平成24年度障害者雇用職場改善好事例募集の入賞事例から−  独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 □はじめに 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構では、事業所における障害者雇用及び職場定着を進めるため、雇用管理や職場環境の整備等様々な改善・工夫を行った障害者雇用職場改善好事例を募集し、優秀な事例を表彰、広く周知しています。本募集は平成3年度から開始し、近年では年度ごとにテーマを設定し募集を行っております。 平成24年度においては、継続(長期)雇用のために、障害者のキャリアアップ、加齢に伴う問題に取り組んだ好事例を募集いたしました。全国の事業主の皆様から多数のご応募をいただき、審査員による厳正なる審査の結果、13事業所の入賞を決定いたしました。 このたび、これらの事例を「障害者のキャリアアップや加齢に伴う問題への対応に関する職場改善好事例集―平成24年度障害者雇用職場改善好事例募集の入賞事例から―」としてご紹介します。障害者の雇用促進と職場定着のためにご活用いただければ幸いです。 最後にご応募いただきました事業主の皆様、そしてご協力いただいた関係機関・団体等の皆様にはあらためて感謝申し上げます。 平成25年3月 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 □目次 1ページ はじめに 2ページ 目次 4ページ 用語解説  6ページ 最優秀賞 株式会社島屋横浜店(神奈川県横浜市)百貨店売場をサポートする障害者雇用体制を構築し、職務創出及び販売効率の向上を実現 12ページ 優秀賞 サノフィ株式会社(東京都新宿区)ジョブコーチ等の外部資源を活用したスキルの向上に取り組み職域拡大と業務効率アップを実現 16ページ 優秀賞 株式会社マルイキットセンター(埼玉県戸田市)加齢に伴う諸問題を想定した対策を随所に盛り込み、継続雇用の実現に向けた仕組みを構築 20ページ 優秀賞 株式会社富士電機フロンティア川崎事業所(神奈川県川崎市)目標管理制度による社員個々のキャリアアップ実現を目指して資格取得や職域拡大を達成 24ページ 優秀賞 日総ぴゅあ株式会社(神奈川県横浜市)障害のある社員が主体となる組織体制の構築と経験や実績に応じた賞揚表彰・社内資格認定・職位任命の実施により、意欲やモチベーションを向上 28ページ 優秀賞 株式会社ダイキンサンライズ摂津(大阪府摂津市)公的資格の取得奨励や実績に応じた昇給・昇格を推進し、事業所の生産性の向上と社内活性化を実現 32ページ 優秀賞 ソニー・太陽株式会社(大分県速見郡)加齢問題対策の仕組みを構築、組織内に位置付けて、継続雇用の取り組みによるハッピーリタイアメントの実現を推進 36ページ 奨励賞 社会福祉法人清風会みつや工場(広島県安芸高田市)業務実績に応じた昇給の反映やキャリアに基づく昇格を実施しモチベーションや生産性を向上 40ページ 奨励賞 第一生命チャレンジド株式会社(東京都北区)スキルアップの機会を計画的に設定し、職域拡大や昇格の実施によりプレイングマネージャーを育成 44ページ 奨励賞 大東コーポレートサービス株式会社(東京都港区)リーダー等の管理的役割への登用や業務成果に応じた昇格・昇給を実施しモチベーションを向上 48ページ 奨励賞 富士ソフト企画株式会社(神奈川県鎌倉市)社員の自発性に基づく社内研修等の研鑽機会の推進と親会社の休職者に対する職場復帰支援に取り組み業務拡大を実現 52ページ 奨励賞 株式会社旭化成アビリティ水島営業所(岡山県倉敷市)再雇用制度を導入し、熟練社員の業務ノウハウを若年社員に継承するための人材育成を実施 56ページ 奨励賞 サンアクアTOTO株式会社(福岡県北九州市)障害のある社員が一丸となって加齢化への対応等の職場改善に取り組み、生産性の向上や社内活性化を実現 61ページ 職場改善のために事業所が作成した資料、支援ツール(加齢に伴う問題への対応、障害者のキャリアアップ) 72ページ その他の応募事業所 73ページ 平成24年度障害者雇用職場改善好事例応募状況 74ページ 平成24年度障害者雇用職場改善好事例応募要項 76ページ 平成24年度障害者雇用職場改善好事例の厚生労働大臣賞受賞者について 78ページ 事業主に対する助成措置 80ページ 障害者雇用に役立つ資料 81ページ 就労支援機器の展示・貸出し 82ページ 参考文献の紹介  83ページ 地域障害者職業センター一覧 84ページ 高齢・障害者雇用支援センター一覧 □用語解説 4-5ページ 事業所の職場改善好事例をお読みいただくにあたり、事例に記載されている支援制度等の用語について、概要をご説明します。 1.SST(エスエスティー)  ソーシャルスキルトレーニングの略で、周囲と円滑に付き合っていくために必要な社会的、対人的な技術習得のための訓練のことです。社会的スキルの獲得は基本的に学習によるものなので、新たに学んだり修正することが可能です。 2.障害者職業生活相談員  5人以上の障害のある従業員が働いている事業所では、「障害者の雇用の促進等に関する法律」により、厚生労働省が定める資格を有する従業員のうちから障害者職業生活相談員を選任し、職業生活の相談・指導を行うよう義務づけられています。(各都道府県の高齢・障害者雇用支援センターで障害者職業生活相談員の資格認定講習を実施しています。) 3.職務創出  既存の職務では障害者の雇用が困難な場合に、個々の能力に合わせた作業や新たな作業を組み合わせるなどして、雇用するための職務を創り出すことを言います。どの職場でも、例えば事務所では、コピー、シュレッダー作業、清掃業務、郵便物の仕分け・配送、資料のセット、封入などやり方が決まった簡単な作業があります。  これらの作業は従業員が分散して行っていますが、これを集約し、新しい職務として再構築することで、障害者の職務を創り出すことができます。また、従業員にとっても本来の職務に専念できるというメリットがあります。 4.ジョブコーチ支援  知的障害者、精神障害者等の職場適応を容易にするため、職場にジョブコーチを派遣し、事業所、障害者双方にきめ細かな人的支援を行う制度になります。  ジョブコーチには地域障害者職業センターに所属する配置型ジョブコーチと、就労支援ノウハウを有する社会福祉法人等に所属する第1号ジョブコーチ、事業主自ら配置する第2号ジョブコーチがあります。なお、東京には独自の制度として養成された東京ジョブコーチも配置されています。 5.特例子会社制度  事業主が一定の要件を満たした上で障害者の雇用に特別の配慮をした子会社を設立した場合には、特例としてその子会社に雇用されている労働者を親会社に雇用されているものとみなして、実雇用率を算定できる制度です。  事業主にとってのメリットとして、障害の特性に配慮した仕事の確保・職場環境の整備が容易となり、これにより障害者の能力を十分に引き出すことができるといったことが挙げられます。 6.就労支援センター  東京都や埼玉県、神奈川県など、自治体が独自に設置した施設であり、障害者の就業に関する相談や支援を行っています。 7.リワーク支援  うつ病などの精神疾患で休職をしている社員が円滑な職場復帰を目指し、社外の資源を使った習慣の立て直しや作業活動を行いながらの職場復帰に向けた準備にかかる支援のことであり、各地域障害者職業センターや一部の医療機関等において実施しています。 8.継続雇用制度  「雇用している高年齢者が希望する場合は、当該高年齢者をその定年後も引き続いて雇用する制度」を言います。継続雇用制度には、勤務延長制度と再雇用制度があります。雇用延長とは、定年延長及び継続雇用制度を含む概念です。   勤務延長制度とは、定年年齢に達しても雇用関係を終了させることなく継続させる制度です。中小企業において採用している割合が高くなっており、勤務延長後の役職、賃金等の変動は再雇用制度より小さくなっています。再雇用制度とは、定年年齢に達した場合、いったん雇用関係を終了させたうえで改めて雇用する制度です。 6-11ページ ☆最優秀賞 株式会社島屋横浜店(神奈川県横浜市) 百貨店売場をサポートする障害者雇用体制を構築し、職務創出及び販売効率の向上を実現  ・キャリアアップのキーワード:1.職務創出 2.障害のある社員主体による業務の実施 3.社外研修 4.コミュニケーションスキルの向上 5.企業内ジョブコーチの支援  ・加齢問題対応のキーワード:A.社内研修 B.適性把握  ・事業所の概要   全国に18店舗を展開する百貨店。横浜店は昭和34年10月に横浜駅西口駅前に開業。現在は1日当たり約10万人の利用客がある。  ・従業員数:1,886名  ・障害者雇用の経緯   30年以上前から障害者雇用に取り組んでおり、直営食堂での受入れが多かったが、食堂の閉鎖等に伴い障害のある社員の配置転換や職域開発が迫られる中で、販売以外の適当な職務の設定に苦慮していた。社内での検討を経て平成19年3月から、ワーキングチームを設置し店舗のサポート業務を開始した。  ・業種及び主な事業内容   百貨店業  ・雇用障害者数25名(平均年齢41歳)  ・従事作業   箱折り、伝票書き、ハンコ押し、印刷製本作業、品出し、ダイレクトメールラベル貼りなどの軽作業  ・事例で取り上げた障害者数 11名(内訳:肢体不自由者1名、知的障害者10名) □取り組みの概要 ○改善策1  ・改善前の状況   直営食堂の閉鎖や売場での後方業務に関する子会社への委託などにより、障害のある社員の配置先や業務の創出に苦慮していた。  ・改善内容   社内で専任化した障害者雇用担当者を中心に社内検討を重ねた結果、各売場が販売の合間に行っている様々な軽作業を障害のある社員で構成されるワーキングチームが請負う仕組みを導入した。  ・改善後の効果   障害のある社員それぞれに適した仕事による職務創出につながった。また、販売員の負担が軽減したことにより、販売の効率性が向上した。 ○改善策2  ・改善前の状況   現場で担当者が作業についての細かい指示や援助を障害のある社員に行うことは、かえって作業への自発性や意欲の低下、さらに作業スキルの低迷を招きやすいと考えた。  ・改善内容   担当者は毎日行う作業を指示するにとどめ、進め方はチーム内での話し合いに基づくようにした。また、日常行う作業を一通り経験した上で、障害のある社員がそれぞれ得意とする作業を中心にスキルを高めるようにした。  ・改善後の効果   仕事への自信とモチベーションの向上につながった。また、毎日実施する作業内容が変わる状況の中で、作業の分担や調整について随時指導がなくても各自が話し合い、対応できるようになった。 ○改善策3-1  ・改善前の状況   知的障害のある社員が受講できる社内研修がこれまで用意されていなかった中、障害特性に配慮しつつ、能力開発、キャリアアップ等を進めるための研修プログラムを開発する必要があった。  ・改善内容   作業体験等を通した知識・技能の習得やモチベーション向上を図る研修制度を策定した。   その中で「他社における就業実習」を設定し、自身の課題の再認識や適応力の向上を目指した。  ・改善後の効果   自身の課題や目標の再認識につながるとともに、様々な部署からの作業に対する適応力が向上し、キャリアアップの観点から重要な取り組みとなった。 ○改善策3-2  ・改善前の状況   売場や他の部署に出向いて作業を行う実施体制であるため、コミュニケーションスキルを高め、対人面での積極性を育成する必要があった。また、業務の幅や量が増加する中で、作業効率の向上を図る必要が生じてきた。  ・改善内容   特別支援学校の生徒や福祉系大学の学生などを自社の実習として受け入れた際に、障害のある社員が作業説明や指示、食堂利用などに関わるようにした。また、「チーム内作業検定」を設定し、定期的に実施しつつ、作業効率の向上を目指した。  ・改善後の効果   実習担当者であるという自覚と責任が芽生えるとともに、経験の積み重ねからコミュニケーションスキルが自然に身に付く効果が得られた。作業検定では社員間の競争意欲の強化のもと研鑽が進み、チーム全体の作業能率の向上につながった。 ○改善策4  ・改善前の状況   障害のある社員と業務の依頼元の社員が、業務遂行やコミュニケーション面で、不都合なく自然体で接することができる関係を築きたいと考えていた。  ・改善内容   企業内ジョブコーチは、障害のある社員の自立性を後押しする役割に徹することにより、障害のある社員自らが依頼業務遂行のための調整を行えるように導いていった。また、言葉遣いや礼儀、社会ルール遵守等のための教育にも力を入れた。  ・改善後の効果   現場との仕事上のやり取りも独力で行えるようになり、依頼元の社員からの信頼が広がってきた。時々、依頼元の現場で発生した問題に対して、ジョブコーチの援助がなくとも自主解決できるスキルも身に付いてきた。 ○改善策5  ・改善前の状況   長年、社員食堂に勤務していた下肢に障害のあるDさんが、加齢の影響から筋力が次第に低下し、仕事中に転倒するなどの危険が大きくなってきた。配置転換が必要になったが、Dさんに加齢による影響の自覚がなく、また、作業適性が分からなかった。  ・改善内容   Dさんのワーキングチームへの参加を研修の一環として実施し、一連の作業を通じ、作業適性や体力の確認を行った。また、Dさん自身が加齢の影響を認識していない面があったことから、自己理解が深まるようジョブコーチが相談を実施した。  ・改善後の効果   通算、3ヶ月の研修を実施して、Dさん自身が現在の体力や作業力を認識し、座り作業を中心とする部署を希望するようになった。また、自身の健康や職場の安全に気を付ける行動が見られるようになった。 □インタビュー企業の声 ○仲田 勝彦さん 執行役員・横浜店長(平成24年11月1日現在) ○山田 周二さん 副店長・総務部長 ○池田 勝さん 総務部人事グループ 次長・グループマネージャー  弊社では、様々な雇用管理の方法を模索しながら障害者雇用に取り組み、現在のワーキングチームによる障害者雇用にたどり着きました。売場サポートとして定着したワーキングチームは、百貨店の環境や職務に適合できたシステムになると思います。 ○大橋 恵子さん 総務部人事グループ 販売支援担当係長  ワーキングチーム設置当初は、社内の認知や信頼を得るまでに担当者を含めて苦労の連続でしたが、障害のある社員に仕事を与えるという姿勢ではなく、島屋の一社員としての自覚のもと、自分達が販売のサポートをすることによって、売上に貢献しているという自信や自負が芽生えることがキャリアアップの強い前進力につながるものと考えています。 □インタビュー従業員の声 ○内田 雄二さん 総務部人事グループ ワーキングチーム  入社5年目になります。グループホームから通勤しています。好きな仕事は伝票書や箱折りです。仕事は慣れてきましたが、実習生に仕事を教えることも多いので真剣に分かりやすく指導するように心がけています。売場で販売の仕事ができることを目標にこれからも頑張ります。 ○柳下 翔さん 総務部人事グループ ワーキングチーム  入社2年目です。ワーキングチームでは覚える仕事がたくさんあって大変でしたが、先輩達から分かりやすく教えてもらえるので慣れてきました。これからも得意な仕事を増やして頑張りたいと思います。 □改善策紹介 ○改善策1  ・キャリアアップのキーワード:職務創出  ・改善ポイント:社内スペースの制約や売場の業務ニーズに対応したワーキングチームの設置により百貨店の売場をサポートする体制を構築  これまで百貨店の直営食堂や売場の後方業務に障害のある社員を配置してきたが、食堂の閉鎖や後方業務の子会社への移行などにより、障害のある社員の配置先や業務の創出に苦慮していた。  地域の就労支援センターとの相談や特例子会社の見学などを通じて、まず、障害者雇用担当者の専任化が必要と考え、社内体制を整えることに着手した。一般事務所で指導経験のある大橋さんを障害者雇用担当者に専任し、大橋さんの経験上の視点から、百貨店売場における販売以外の仕事に着目し、職務創出を検討することになった。  売場の各ポジションでは箱折りやスタンプ・はんこ押しなど色々な作業が相当量あり、販売員は接客販売などの合間に手分けして作業を行うという状況だった。こうした作業を複数人の障害のある社員が集中的に実施することによって、販売員の負担軽減と販売業務の効率の向上、そして障害のある社員の職務創出を一度に達成することを目指し、障害のある社員をメンバーとしたワーキングチームを、大橋さんを指導者として平成19年からスタートさせた。  特別支援学校を卒業した知的障害者を定期的に採用して、10人程度のワーキングチームによる業務体制を整えた。一方、百貨店では、売場がある店舗棟や管理部門のある別棟に集団作業に適した広いスペースを確保できないという問題があり、実施方法に工夫を凝らす必要があった。広い作業スペースを必要とせず、かつ、販売員などの仕事の依頼にも臨機応変に対応する方法として、作業場所を固定せずに限られたスペースでも少人数で作業が行えるよう社内出張方式を基本にした。  作業の受注に関しては、当初は各売場から「請負シート」を受理する方法だった。ワーキングチームが浸透しない間は、大橋さんが営業活動のために社内を奔走することが続いたが、依頼を受けた仕事には、確実な仕上がり、納期厳守、緊急時への対応を重視し、売場に対して期待以上の結果を還元するよう取り組んだ。こうした実績を積み重ねたことにより、社内におけるワーキングチームの認知度と信頼感が高まり、現在では、営業活動を行わずとも毎日のように異なる売場からの作業依頼が電話で申し込まれるようになっている。 ○改善策2  ・キャリアップのキーワード:障害のある社員主体による業務の実施  ・改善ポイント:最小限の指導者の援助により、障害のある社員の自発性や作業意欲、協力姿勢を育成  現在、売場等から依頼される作業は100種類を超えており、作業内容は日替わりで何種類も対応する状況となった。例えば、千枚単位の請求書の押印作業から福袋の封入等の季節的なイベントの準備作業など、多種多様な作業が年間を通じて発生する。  こうした納期や量が異なる作業を毎日こなしていくためには、綿密なスケジュール管理と臨機応変に作業をこなすための実施体制が必要だが、大橋さんのこれまでの経験から、各人への作業分担の割振りや仕上がりの点検、次の作業指示といった一通りの管理を逐一指導する方法は、障害のある社員の自発性や作業意欲、作業スキルが低迷する要因になると考えた。  そこで、ワーキングチームでは、毎日行う作業内容の提示までは担当者が行うが、各作業を誰がどのような順番で担当し、いつまでに終わらせるかを全員で話し合って決める方法を取り入れた。こうしたスケジュール管理の方法を定着させるためには、障害のある各社員がそれぞれ得意とする作業や適性について、大橋さんとして見極める必要があった。このため、各人に一通りの作業をしてもらい、正確さやスピードなどを評価した。その上で、苦手な作業よりも得意な作業のスキルを伸ばすことによって、障害のある各社員は、精度の高い作業と誰にも負けない自信が次第に身についていった。  こうした自発性を重視した取り組みによって、チーム内での協調性も形成され、納期が迫った作業では複数人の協力による実施体制で対応することや、自分が担当する作業が終われば引き続き他の作業の手伝いに加わるなど、障害のある社員同士の結束力と協力姿勢が自然に身に付いてきた。  ・写真説明   ワーキングチームの事務室に掲示されているスケジュールボード。前日の夕方、障害のある社員が自主的に翌日の仕事内容を決めて入れていく。作業名を見ただけでどんな仕事になるかを全員が理解しているため、スケジューリングにさほど時間はかからない。人によって得意な作業を優先して入れる場合や自身のスキルを高めるために不得手な作業をあえて選択する場合など様々である。納期が差し迫った緊急の作業では、数名が話し合い調整しながら対応している。 ○改善策3-1  ・キャリアアップのキーワード:社外研修  ・改善ポイント:独自の研修プログラムによってモチベーションや適応力の向上に貢献  人材育成やキャリアアップを目的に実施される研修は専門的な内容が多く、知的障害のある社員が受講できる研修内容は存在していなかった。このため、ワーキングチームの生産性の向上を進めるにあたり、知的障害のある社員の能力開発やキャリアアップ等のための研修プログラムを独自に作成する必要があった。  そこで、障害のある社員の適応力、作業スキル、コミュニケーションスキル及び社会性についての向上、職業人としての自立などを目指した研修として、「他社における就業実習」「就業体験プログラム」「チーム内作業検定」を順次導入した。研修では、知的障害の(理解能力の)特性を踏まえて、講義形式ではなく、実務や体験の中で理解を促進する体験方式とした。「他社における就業実習」は、自己研鑽型の外部研修として1回当たり数名程度の受講とした。ワーキングチームから研修希望者を募り、休務日を利用して協力会社(大阪の特例子会社2社)へ出向き、半日〜1日程度で協力会社の業務体験(メール便の仕分けや名刺入れ箱の組立、配達、回収など)や作業結果のフィードバック、障害のある社員との交流等を実施する内容となっている。  研修中は大橋さんが受講者の見守りとして同行するが、現地までの移動や宿泊先の手配に至るまで、受講者が概ね独力で準備・対応することにより社会性の育成を図る。また、研修先の協力会社では、通常行われている通りの作業を受講者が経験し、スピードや目標達成の面からフィードバックを受けることで、自身の課題を明確化し、目標を再認識することができる。  こうした受講者の変化は、社内で実施する研修だけでは得られにくい。また、ワーキングチームは社内の不特定の部署から作業依頼を受けるため社員の適応力を高めることが必要であり、社員のキャリアアップを図る上でも重要なものと位置付けている。  ・参考 支援ツールP61「就業実習スケジュール」 ○改善策3-2  ・キャリアップのキーワード:コミュニケーションスキルの向上  ・改善ポイント:外部からの実習受入れやチーム内検定で社員のコミュニケーション能力や作業効率を向上  社内研修として位置付けている「就業体験プログラム」は、特別支援学校の生徒や福祉系大学の学生、企業や学校教員、福祉職員などを対象とした職場実習をワーキングチームで実施し、一連の作業説明や作業指導、社内の案内などを障害のある社員が全て担当するという内容である。  面識のない人達に対して作業説明や社内案内をするためには、作業を理解している必要があることや、相手に対して分かりやすい説明を意識したり工夫したりする必要があることから、円滑なコミュニケーションのスキルが経験として身に付くとともに、さらには、職場実習を自らが担当し手本となることにより、島屋の社員としての自覚や自信の形成につながってきた。  「チーム内作業検定」は、ワーキングチームの業務の幅や量が増えていく中で、就業時間内に作業を完了し残業が発生しないようにという作業効率面の目標に対応する取り組みとして設定した。  検定作業種目には、ワーキングチームの作業において比較的実施頻度の高い「パンの保存袋作り」、「進物カード作り」を選定し、定期的に検定時間内の作業出来高を記録するという方法とした。作業結果をチーム内に公開することで競争意識が高まり、また、個々の作業スキルも向上することでチーム全体の作業効率が次第に向上するようになった。  こうした研修の積み重ねによって、ワーキングチームが依頼者からの信頼を得るために掲げている「納期厳守」を、障害のある社員が自覚することができるようになっている。  ・写真説明   海外から就業体験に来た教育関係者に仕事を教えている様子。仕事内容の説明、実際に手本を見せるなど、人に教えることの難しさを実際に体験しながら、人に教えることを通して学んでいる。  ・参考 支援ツールP61「パン袋検定の結果」 ○改善策4  ・キャリアップのキーワード:企業内ジョブコーチの支援  ・改善ポイント:ワーキングチームのサポート役としての企業内ジョブコーチの支援  ワーキングチームの業務体制としては、障害のある社員の他に2名の「企業内ジョブコーチ」を配置している。ジョブコーチは、作業に直接携わっておらず、作業指導を含めた実務面は作業スキルの高い障害のある社員に任せている。ジョブコーチは、障害のある社員から作業上の確認や対応で困ったことがあった場合にのみサポートする体制を取っている。また、家庭や支援機関との連絡調整を行う役割も担っている。  ワーキングチームでは、「ナチュラルサポートの実現」を目標とし、ワーキングチームメンバーが支援者の援助を受けなくても依頼業務に円滑に対応できるようになることや、自然体で社内の他の社員と接することができる関係作りを目指している。このため、ジョブコーチは、障害のある社員の自立心や社員としての自覚、プロ意識などを育成し、指導についても最低限度の度合いで関わるようにしている。  依頼業務では、依頼元の社員との仕事上での調整が随時発生するが、その場合でもジョブコーチは主体的に関わらず、障害のある社員に一切を任せて対応するように心がけている。また、依頼元の社員が違和感をもたないように、ワーキングチームのメンバーに対しては、言葉遣いや礼儀、社会ルールの教育にも力を入れてきた。  ジョブコーチは、ワーキングチームの全体の状況を見るとともに、個々のメンバーの状態を日々把握することや意欲、自信、社員の自覚につながるようなサポートを実施している。一方、ジョブコーチは、入社の段階から家庭に対して人材教育の考え方を説明し、家庭内においても自発性や自立心を促すような接し方を行うように協力を依頼し理解を得ている。このように、職場と家庭とが連携し、本人達の成長を促す考え方を共有し、取り組むことで人材の育成を進めている。  ・企業内ジョブコーチの解説   ジョブコーチは、障害のある社員の職場適応上の諸課題に対して、具体的な支援を実施する。   ジョブコーチは、国や自治体等の支援機関から一定期間派遣される場合が多いが、近年は、企業自らがジョブコーチを選任して(企業内ジョブコーチ)自社の障害のある社員に対する支援に対応する企業も増えてきている。 ○改善策5  ・加齢問題キーワード:社内研修、適性把握  ・改善ポイント:適正配置を検討するためのワーキングチームへの配置  48歳のDさんは、社員食堂に配属となり、厨房内での作業や配膳・片付けに従事する勤続29年のベテランである。しかし、下肢の障害に加えて加齢に伴う筋力低下のために、近年、仕事中に歩行時のふらつきやつまづきが次第に増えてきた。混雑している食堂の利用時に単独で転倒したり人とぶつかることなどがあったため、Dさんの安全性を考慮に入れた配置転換について検討することになった。  下肢に障害があることから、座り作業を中心とする総務部門などへの配置を考えたが、Dさんには事務職の経験がなかったことに加えて、本人が配置転換そのものを受け入れられないという状況にあった。そのため、Dさんの社内研修の位置付けとしてワーキングチームに参加してもらい、厨房内での作業以外における作業適性の把握、Dさんに適した作業環境を見極めるための取り組みを開始した。研修では、労働の持続力や作業の正確性、効率的な作業遂行の確認、対人関係やコミュニケーションスキル、座り作業による疲労度等についての確認を行った上で適材適所を検討した。  約3ヶ月の研修によって、Dさん自身も自分の能力を客観的に把握することで、配置転換の必要性を次第に理解するようになった。Dさんの希望もあって引き続きワーキングチームの研修を継続しており、自分にとって無理なく働ける姿のイメージ作りと労働条件や職場環境の検討をジョブコーチと相談しながら進めている。 12-15ページ ☆優秀賞 サノフィ株式会社(東京都新宿区) ジョブコーチ等の外部資源を活用したスキルの向上に取り組み職域拡大と業務効率アップを実現  ・キャリアアップのキーワード:1.支援機関との連携 2.コミュニケーションスキルの向上 3.個人目標の設定 4.社内研修の実施 5.実地訓練(OJT) 6.業務プロセスの見直し 7.適正配置  ・加齢問題対応のキーワード:A.コミュニケーションスキルの向上 B.支援機関との連携  ・事業所の概要   サノフィ株式会社は、グローバルに多角的事業を展開するヘルスケアリーダーであるサノフィ・グループの一員。   日本法人は平成18年1月設立。サノフィ株式会社では特例子会社という枠組みではなく、会社全体で障害者雇用に取り組んでいる。   その取り組みが会社組織の成長・活性化につながるというコンセプトのもと、平成21年4月に知的障害者の就業の場として「ラ・メゾンサービスセンター(LMSC)」を本社内に設立し、特別支援学校から新卒者を迎えてから3年が経過している。   サノフィ株式会社は、平成24年10月にサノフィ・アベンティス株式会社から社名変更しました。  ・従業員数:3,000名  ・障害者雇用の経緯   都内の特別支援学校から職場実習を受け入れ、個々人の適性を見ながら判断する。採用については人事採用部署や配属部署の責任者などによる最終面談を通じて決定している。  ・業種及び主な事業内容   医薬品及び医療機器の製造販売・輸入、研究開発、医療機関への医薬品情報提供・収集ほか  ・雇用障害者数 37名(平均年齢39歳) サノフィ株式会社における雇用障害者数及び平均年齢になる。  ・従事作業   職場環境整備(シュレッダー、コピー用紙の在庫管理、室温測定、AED点検など)   受託業務(名刺作成、各種印刷、ファイリング、ダイレクトメール、ラミネート、PDF化、データ入力、プロジェクターの貸出しなど)  ・事例で取り上げた障害者数 9名(内訳:知的障害者9名) □取り組みの概要 ○改善策1  ・改善前の状況   職場環境や人間関係に不慣れな障害のある新入社員の中には、仕事に集中できない、こだわりが強い等の様子が見られる者もいたため、職場全体の業務効率にも影響が出ていた。  ・改善内容   嘱託の臨床心理士、就労支援センターと連携し、定期面談や社会性とビジネスマナーを身に付けるためのコミュニケーション訓練を実施した。  ・改善後の効果   こだわり等が見られた障害のある社員にあっては、改善に向けて努力しようとしたり、行動を変化させていくようになった。 ○改善策2  ・改善前の状況   職域拡大によってパソコンを使用する新規業務が増加したため、障害のある社員のパソコンスキルの向上が急務となった。  ・改善内容   東京ジョブコーチのサポートを得て、社内でパソコン訓練を、講習形式と現場での実地訓練に分けて実施した。  ・改善後の効果   障害のある社員全体のパソコンスキルが向上し、パソコンを使用する業務依頼が同時にあっても、複数の社員の対応により円滑にこなせるようになった。また、実地訓練を受け入れた現場の社員にあっては障害のある社員への理解が進んだ。 ○改善策3  ・改善前の状況   既存の業務に加えて新規業務を並行して実施する必要が生じ、障害のある社員で効率良く業務を実施する方法の改善が求められた。  ・改善内容   各業務の分析や障害のある社員全員の作業スキルの評価を行いつつ、既存及び新規業務において最も効率の高い作業体制とした。こうした体制のもと、手が空いた時間にはそれぞれが各担当業務のスキルアップに取り組むようにした。  ・改善後の効果   担当業務のスキルアップが図られたことから、各業務をより少ない人数で行えるようになる一方、別の業務を覚えてもらえるようになった。結果として、職域拡大や生産効率のアップにつながった。 ○改善策4  ・改善前の状況   将来的な社員の加齢に伴う諸問題への対応を準備しておく必要があった。  ・改善内容   コミュニケーション訓練の継続、社内産業保健師と連携した加齢状況の把握、地域支援機関との交流活動をシステムに取り入れた。  ・改善後の効果   本人の家族を含め、将来における家庭からの自立や生活支援など社会資源の活用等に関する認識・理解につながった。 □インタビュー企業の声 ○北川 健二さん 人事・総務本部長  サノフィ・グループは人々の健康に関わる医薬品企業としての社会的責任において、障害者の雇用を重要視し、長年にわたり障害者雇用の分野で積極的な施策を実現してきました。現在、それらの取り組みは世界中のグループ会社に拡大しています。ラ・メゾンサービスセンターは、障害者の法定雇用率を満たすための組織として設立されましたが、今では利益を生み出しかつ社会に貢献する組織として育ってきています。今後はさらに、真にビジネスを支える組織「ラ・メゾンビジネスサポートセンター」として成長させていきたいと考えています。  ラ・メゾンサービスセンターが会社と社会がWin−Winの関係を構築することに大きく貢献することを期待します。 ○尾上 昭隆さん ラ・メゾンサービスセンター事務長  障害のある社員達が貴重な戦力であること、企業に多大な利益をもたらすことを証明することで、企業は改革の新たな展開に自信が持てることになります。また、支援者のサポートが、顧客である障害者の企業内でのキャリアアップにつながり、情報を共有することを積み重ねれば、本当の意味でのネットワーキングの構築と言えるのではと思います。障害者のキャリアアップは、企業内で全て解決できるわけではありません。関係者が協力し合うことで、それぞれの負担も楽になると思います。この3年間、誰一人辞めずに、元気に仕事ができますのも全ての支援関係者の皆様のお陰です。 □インタビュー従業員の声 ○Kさん  入社4年目です。グッドジョブカードの発送、書籍配送の仕事をしています。仕事をしていて良かったことは社員の人達が優しく接してくれるところ。気をつけていることは言葉遣いで、友達ではないので職場で使う丁寧な言葉遣いにすること。頑張ることは新入社員が入ってきたら優しく指導することです。 ○Mさん  入社4年目です。朝のセキュリティーボックスやAEDのチェック、そしてコピー用紙の在庫確認をします。発注はパソコンを使って行います。仕事をして良かったことは、みんなと協力して仕事をすること。気をつけていることは、床にゴミが落ちていないかチェックして帰るようにすることです。これからも正確さとスピードで仕事をこなしていきたいです。 ○Nさん  私の仕事はAED点検と室温点検、名刺作成です。仕事をして楽しいことはイラストを描いているときです。気をつけていることは昼休みや休憩時間に遅れないようにすることと言葉遣いです。たくさん仕事を覚えて頑張りたいです。 □改善策紹介 ○改善策1  ・キャリアアップのキーワード:1.支援機関との連携 2.コミュニケーションスキルの向上 3.個人目標の設定  ・改善ポイント:専門家や支援機関との連携により職場適応の課題を改善  障害のある社員(LMSC社員)のキャリアアップを図る上では、職場適応に関する取り組みが前提となるが、入社後に職場適応上の様々な課題「こだわり行動」の出現、業務スキルの個人差、作業時の集中力低下等)が生じたためにLMSCの業務対応や成果にも影響する状況が見られた。  こうした課題については、LMSCの支援体制だけで対応することが難しかったため、嘱託の臨床心理士、就労支援センター支援員との連携体制を構築して問題改善に向けた対応を継続的に行った。まず、LMSC社員とLMSC担当者に就労支援センター職員が同席する三者面談や個別面談等の機会を設定した。面談の中で三者により現状認識の確認や共有化を図り、適切な職場内の態度の理解と問題改善に向けた話し合いを行った。そして、面談内容は臨床心理士と共有化を図り、社内にて月2回3時間程度で実施するソーシャルスキルトレーニング(SST)のプログラム内容に反映することとした。  SSTの活動は、平成21年12月からスタートし、社会性やビジネスマナーを身につけることをテーマとする各種セッションを実施した。導入は「聞く・見る→分かる」のセッションを経て、「分かる→できる」のセッションへとステップアップ。昨年度からは、さらに「できる→教え、伝える」にプログラム内容を見直した。LMSC社員は毎月の個人目標を自ら決めて臨床心理士に電子メールで報告し、臨床心理士は目標達成に向けた適切な指導を個別に電子メールで返信する。  こうした活動によって、課題が見られたLMSC社員に良い変化がもたらされた。例えば、季節の変わり目などに落ち着きがなくなり「こだわり行動」が見られた社員は、周囲の意見を受け入れてクールダウンする努力が見られるようになった。また、職場内で不適切な言動が見られた社員は、その場で気づき謝罪したり業務日誌の中で振り返り反省できるようになった。  一方、LMSC担当者においても、臨床心理士や就労支援センターなどの専門家との話し合いを通じて、LMSC社員の理解が進み、就業時にはしっかり褒めてあげること、業務の提供の仕方(特に量のコントロール)を改善することにより、コミュニケーションに対する意欲が向上して安定した業務の遂行を取り戻すことができた。  なお、LMSCでは、業務を行う上で必要不可欠となる職場のコミュニケーションスキルの定着と併せ、特別支援学校のインターンの生徒や新入社員に対して仕事を分かりやすく教えていくというテーマで人材育成トレーニングに取り組んでいる。  ・参考 支援ツールP62「SSTテーマ例・実施上の工夫」 ○改善策2  ・キャリアアップのキーワード:1.支援機関との連携 4.社内研修の実施 5.実地訓練(OJT)  ・改善ポイント:知的障害者のパソコンスキルを高め、職域拡大を実現  サノフィ(株)は、LMSCを障害者雇用の受け入れ部署として位置付けるのではなく、将来的にビジネスモデルとしての機能を目指していることから、新規業務の導入検討を継続的に実施している。こうした取り組みの中で、業務遂行におけるスケジュールの組み替えやIT化に伴うパソコン使用業務の依頼が増加し、パソコン使用作業に対応できるLMSC社員の育成が急務となった。LMSC社員へのパソコン訓練やパソコン作業の定着支援については、東京ジョブコーチ支援事業を活用して、東京ジョブコーチがパソコン訓練を個別に実施するとともに障害特性に配慮した業務の最適な見直しを行った。  パソコン訓練は、LMSC社員全員に対してパソコン操作やソフトウェアの利用などを講習形式で学ぶ訓練と、実際のパソコン使用業務を実際の現場で学ぶ実地訓練(OJT)に分けられるが、両訓練を東京ジョブコーチが担当することで専門的な支援を効果的に実施することができた。  特に実地訓練では、LMSC外の別の部署にLMSC社員が出向き、業務を担当するLMSC外の社員からマンツーマンで教わることになるが、障害に応じた適切な教え方が分からずにLMSC外の社員が指導に苦慮する場面もあったため、必ず東京ジョブコーチとLMSC担当者が場面に同席して、操作マニュアルに基づいた分かりやすい教え方を適宜アドバイスしながらLMSC社員のパソコン理解が進むように対応するようにした。  障害のことがあまり分からない業務部署の担当者にLMSC社員の作業指導を一切任せるのではなく、LMSCが指導方法を丁寧に伝えることで、担当者の障害に対する理解が進むとともに、LMSCに仕事を任せようとする信頼感の形成につながった。こうした実地訓練の取り組みによって、現在2人のLMSC社員が、安定した力を発揮して正確さが要求されるIT関連の業務に就いている。  一方、LMSC社員全員がIT業務に対応できることを目指し、東京ジョブコーチには実地業務の支援だけではなく、パソコンスキルの向上のための支援も依頼している。日本語ワープロ検定・情報処理検定(表計算)4級以上の取得を目指した研修を定期的に実施しており、LMSC社員が日常からパソコンに触れる機会が多くなったことで、LMSC全体のパソコンスキルは着実に向上した。新規業務がさらに増えパソコンを使用する業務依頼が同日に重なってもLMSCで引き受けられる体制が整った。  ・解説:東京ジョブコーチ   東京都が独自に実施する「東京ジョブコーチ支援事業」において養成・配置されたジョブコーチのこと。 ○改善策3  ・キャリアアップキーワード:6.業務プロセスの見直し 7.適正配置  ・改善ポイント:個々の社員の特性を評価し作業工程の最適化を図ることにより職域の拡大と生産効率の向上を実現  サノフィ(株)が、これまで業者に外注していた大量のダイレクトメールの封入・発送作業をLMSCの業務として実施できないかとの相談を受けた。従来の名刺作成業務に加えてLMSC社員の仕事の領域を広げる上でも新規業務の導入は有効と考えて引き受けることにしたが、ダイレクトメールの発送業務は厳格な納期が条件となるため、現在のLMSC社員で効率良く遂行するために実施方法の改善が求められた。  そこで、LMSCが実施する各業務のプロセスを見直し、効率良く作業に対応するために作業に携わる人数の最適化を図った。まずLMSC社員全員の作業スキルを評価するために、名刺作成業務の工程を6段階に分け、一人当たりの実施工程数の組み合わせごとの作業効率を評価した(右上図参照)。その結果、LMSC社員の個々のスキル量を加味した場合に、大きく3段階の作業の組み合わせが最適な名刺作成を実施するプロセスであるという結論に至った(右下図参照)。  ダイレクトメール発送業務についても同様な方法で実施プロセスを検討した結果、手先が器用で作業が速い2名のLMSC社員をリーダーとする実施体制が最適なグループ分けになることを確認した。  こうして名刺作成業務及びダイレクトメール発送業務の依頼が同時にあった場合にもLMSC社員全員で対応可能となる実施体制が整ったものの、一部の作業工程でスピードと判断力に課題が見られた。そこで、手の空いた時間は課題克服のための時間として設定し、各人がスキルアップの練習に励むようにしたことで、名刺作成業務は4人から3人の体制に、ダイレクトメール発送業務は6人から5人の体制で実施できるようになった。  LMSC社員全体のスキルアップに取り組むことによって、一つの業務対応に必要とされる人員が減り、他の人員は他の業務を覚えてもらえるようになるため、LMSC社員の職域拡大とLMSCの生産効率のアップを達成することができた。  ・参考 支援ツールP62「行動予定表」 ○改善策4  ・加齢問題対応キーワード:A.コミュニケーションスキルの向上 B.支援機関との連携  ・改善ポイント:将来的な加齢問題に備えてネットワーキングを構築  LMSC社員の平均年齢は20代前半であり、現在、加齢に伴う問題には直面していないものの、事業所における雇用の拡大と雇用継続を推進していく上で、将来的に直面する問題であることから、加齢問題の対策システムについても今から準備を行っておく必要があると位置付けた。  LMSCでは、LMSC社員が自分の体調の変化を的確に他者に伝えるようにするためのコミュニケーション力を身に付ける訓練や将来必要となる支援が受けられるよう地域の支援機関とのネットワークを構築しておくための取り組みを行った。  LMSC社員の健康状態の経歴は個人によって異なることから、LMSCでは毎日健康状態の確認を行うとともに、サノフィ(株)の産業医や看護師との面談を定期的に実施しながら医療的立場からの助言を受け、社員の健康状態の把握に努めている。  職場内のコミュニケーション力を高めるために実施しているSSTは、自ら身体と心の健康を保つためにも有効であり、社会で生き抜くための危機管理を学ぶ訓練でもある。現在は、ビジネスマナーや職場内でのコミュニケーションスキルに主眼を置いたテーマが主なプログラムではあるが、「具合が悪くなったら、誰にどのように伝えるか」などのテーマ設定も組み込んでいる。今後は必要に応じて加齢に関するテーマ設定も具体的に検討することとしている。  危機管理の一環として、「ラ・メゾンビジネスサポーターズミーティング」をLMSCの主催のもとに定期的に実施し、LMSC社員が長く働き続けられるよう、本人・家族、支援者などが集まり、様々な情報交換を通して社会的自立に向けた支援の確認を行っている。今年は、LMSC社員が特別支援学校卒業後4年目に当たるため、支援主体が学校から地域へ完全移行するための支援計画の再構築、地域支援へのバトンタッチ、数年後の家庭からの自立を念頭に置いた支援プラン、働き続けるようにすることへの企業・福祉の役割等について情報交換をした。  本ミーティングは、加齢問題が顕在化する前の段階から、本人が一人で迷わずに地域生活を送ることができるようにネットワーキングを構築するなど、将来への対策に向けた準備を行う場として運営することとしている。 16-19ページ ☆優秀賞 株式会社マルイキットセンター(埼玉県戸田市) 加齢に伴う諸問題を想定した対策を随所に盛り込み、継続雇用の実現に向けた仕組みを構築  ・加齢問題対応のキーワード:A.加齢現象の予防 B.業務改善の実施 C.ジョブローテーション D.配置転換 E.職域開発 F.加齢現象の把握 G.人事評価制度の導入  ・事業所の概要   平成15年10月に株式会社丸井グループの特例子会社として設立。  ・従業員数:48名  ・障害者雇用の経緯   平成4年7月に株式会社丸井の物流センター内に、障害者の雇用職場として開設した「戸田キットデリバリーセンター」が前身。マルイ店舗で使用する用度品のピックアップ業務、時計・宝飾品の検品業務を主に行っている。また、平成18年度からは加齢対応の軽作業職場として印刷サービス業務を開発し職域拡大も図っている。  ・業種及び主な事業内容   マルイ店舗で使用する様々な用度品のピックアップ業務や商品の検品業務、印刷サービス業務  ・雇用障害者数 34名(平均年齢34歳)  ・従事作業   用度品のピックアップ、検品、積込、出荷、納品チェック、棚入れ作業、名刺印刷、冊子印刷、販促物件の封入、抹消データのシュレッダー作業、商品検品、値札付け作業  ・事例で取り上げた障害者数26名(内訳:肢体不自由者3名、知的障害者23名) □取り組みの概要 ○改善策1  ・改善前の状況   社員の平均年齢は30歳を超えていることから、加齢に伴う問題への対応に備えておく必要があった。  ・改善内容   仕事の中に「体を動かす」、「頭を使う」、「会話する」といった要素を意図的に組み込み、加齢現象の発現を遅らせるようにした。  ・改善後の効果   体力の維持・向上、計算処理やコミュニケーションの活性化が図られ、加齢による体力や能力の低下等の課題は現在はほとんど発生していない。 ○改善策2  ・改善前の状況   作業の定型化は変化や刺激が少ないため、作業意欲低下やマンネリ化につながりやすい状況だった。  ・改善内容   ピックアップ業務の改善やジョブローテーションの実施、印刷サービス業務の職域を拡大した。  ・改善後の効果   社員のモチベーション向上や職域拡大に向けたチャレンジ意欲の向上に結びついた。 ○改善策3  ・改善前の状況   加齢に伴う問題へ対応する上で、加齢による変化などを具体的に把握する方法が必要となった。  ・改善内容   全社員の日常の作業量を継続的に記録し、データの変化を加齢現象把握のための客観指標にした。  ・改善後の効果   状況に応じて軽作業への配置転換、短時間勤務への移行などの処遇を実行できる体制が整った。 □インタビュー企業の声 ○堀口 武夫さん 取締役社長  企業の障害者雇用は、定年までの間40年前後にわたります。それは採用に始まり、定着期・継続期・成長期そして加齢期まで続くわけですが、それぞれの時期をうまく乗り越えることによって、ハッピーリタイアメントにたどり着くことができると認識しています。マルイキットセンターは用度品のピックアップ業務開始以来20年目を迎え、最高齢者は53歳と加齢現象が進む時期に入っています。したがって、その対応策として「加齢現象の発現を遅らせること」そして「加齢現象が出た時の準備をしておくこと」に取り組んでまいりました。  幸い取り組みのおかげか、加齢現象で生産性が極端に低下しているという社員はまだおりませんが、これからもさまざまな取り組みを通じ、社員のみなさんが定年まで健康で、元気に働けるよう支援をしていきたいと考えています。 □インタビュー従業員の声 ○蔵野 玲子さん  私は45歳、勤続20年です。53歳で勤続20年になります。用のピックアップ、検品、積込作度品のピックアップ、検品、積込作行っています。入社当時は仕事仕事の中では検品足にできるか不安でしたが、コツをつかんで今は得意な作業になりました。同僚や友達ができて休日腰を痛めないようにラオケにも行きます。この会社に長く勤め続けられてうれしいです。これからも体調管理やケガをしよう気をつけて、長く勤められるよう頑張りたいと思います。 ○高杉 茂さん  53歳で勤続20年になります。用度品のピックアップ、検品、積込作業をしています。仕事の中では検品作業が得意です。この会社に勤めて同僚や仲間がいることがとても励みになります。腰を痛めないように気をつけて、定年まで働き続けられるよう頑張ります。 □改善策紹介 ○改善策1  ・加齢問題対応のキーワード:A.加齢現象の予防  ・改善ポイント:仕事の中に加齢現象を遅らせるための工夫を随所に盛り込む  用度品ピックアップ業務の開始から約20年が経過し、業務に携わる社員の平均年齢も30歳を超えている状況から、事業所として加齢に伴う問題への対応に備えておく必要があった。障害のある社員の加齢の影響は、体力や集中力の低下などが生産性の低下として現れてくることから、日常から体力作りとその維持に取り組み、加齢現象を遅らせる対策が必要だった。そこで、仕事の中に「体を動かす」、「頭を使う」、「会話する」といった要素を意図的に組み込み、加齢現象の発現を遅らせる対策を取り入れた。 事業所の主要業務である用度品ピックアップ業務は、ピックアップ係、検品係、積込係で構成される。障害のある社員が各係の作業を担当し、支援スタッフは、現場で障害のある社員と同じ作業を行いながら、随時、支援や作業確認を行う体制になる。ピックアップ係は、各店舗から発注依頼のあった用度品を倉庫棚から検品場所まで運び出すことを基本としており、1日当たり100往復程度、作業場内を行き来する運搬に従事することによって、体力の養成と維持を図っている。  検品係は、2人1組で発注伝票と用度品の内容を照合し、間違いがないかを確認する作業になる。ここでは、品名と数量が発注伝票通りであるかを確認するため声を出して読み上げることを徹底している。「声を出す」「数える」ことを意識的に行うことでマンネリ化や検品ミスの防止につながるとともに、注意や集中を維持する上で良い刺激となっている。  積込係は、通い箱に入った用度品をかご車に積み込んで出荷準備を行う作業になるが、毎日大きさや数量の違う通い箱を運搬途中に荷くずれしないようレイアウトを考えながら積み込むので、思考の活性化が図られる作業となっている。また、用度品ピックアップ業務は3つの係が複数人のチームで実施するため、お互いに声を掛け合う頻度が高く、作業を通じたコミュニケーションが自然に発生する。  また、作業以外では、「発表する」ことに主眼を置いたミーテイングを、毎朝1時間程度で実施している。障害のある社員全員がミーティングの場で発表することにしており、それぞれがニュースやテレビドラマ等の様々な話題を題材に発表内容を考えて発表する。こうした機会が社員の自己表現力のトレーニングになるとともにストレスの解消にもつながり、事業所内のチームワークが醸成されるようになった。 ○改善策2  ・加齢問題対応のキーワード:B.業務改善の実施 C.ジョブローテーション D.配置転換 E.職域開発  ・改善ポイント:変えるもの、変えないもののバランスで、加齢の発現を抑える  用度品ピックアップ業務におけるピックアップ・検品・積込の一連の流れは、業務開始から20年間変えておらず、各係の作業に障害のある社員全員が安定して対応できていたが、同時に作業のマンネリ化による向上心の低下を招きやすい状況にあった。事業所では、業務改善コンクール等の実施やジョブローテーションを導入することにより、モチベーション向上や能力開発、キャリアアップに取り組んだ。  業務改善コンクールでは、業務上での様々な改善事項の提案を全社員に奨励し、優秀な提案内容に対して事業所表彰を行っている。これまで、用度品ピックアップ方法の工夫、ストック内の表示の工夫、什器備品の改善などを取り入れた。また、業務改善の表彰以外にも毎月のノーミス賞や優秀賞等の表彰を実施し、社員のモチベーション向上を図っている。  ジョブローテーションは、3つの係を障害のある社員がローテーションで担当することにより、ピックアップ業務全体に熟練する社員の育成を目指して実施している。各係の分担は、毎朝、障害のある社員全員が自分達で決めているが、一つの係に希望者が集中する場合もあるため、支援スタッフが、均等な分担になるよう調整を行っている。  一方、加齢に伴い体力の低下等が生じ、体力を必要とするピックアップ業務への従事が難しくなった場合は、印刷サービス業務部署への配置転換を準備している。作業内容には、グループ会社からの依頼による冊子印刷や名刺作成になるが、現在のところ、配置転換の配慮を必要とする社員はいないので、用度品業務に従事する26名のメンバーから毎月5名づつローテーションを組んで作業にあたっている。  なお、印刷サービス業務では、現在の作業以外にも抹消データのシュレッダー作業や通販商品用の用度品詰め合わせ作業などの業務を開発しており、障害のある社員の職域拡大を推進するチャレンジ部署との位置づけのもと、今後も更なる業務の充実を目指している。 ○改善策3  ・加齢問題対応のキーワード:F.加齢現象の把握 G.人事評価制度の導入  ・改善ポイント:加齢現象が現れた時のための具体的な対応の準備  加齢に伴う問題への将来に向けた準備に加えて、障害のある社員の加齢に伴う状況を日常から把握しておく必要があった。また、実際に加齢の影響を判断した場合に、印刷サービス業務部署への配置転換に加えて、体力状況を勘案した短時間労働等の労働条件を設定するための人事制度を整備しておく必要があった。  加齢に伴う身体機能の低下などが日常の生産業務の成果にも影響すると考え、事業所では障害のある社員全員の作業量を継続的に記録し、作業データの変化から加齢現象の状態を客観的に把握するようにしている(右図参照)。  また、事業所では、平成20年に親会社が実施している人事諸制度を適用した(下図参照)。これは、半年ごとに生産性、チームワーク、勤怠を指標とする人事評価を実施し、賞与や昇格降格に反映する人事制度である。なお、本制度では、1年更新の契約社員制度が設定されており、実際に加齢の影響により現行条件のフルタイム勤務が困難になった場合は、印刷サービス業務への配置転換を実施するとともに、短時間勤務への移行についても相談のうえで進めるようにした。  こうした取り組みを本格化するためには、障害のある社員だけでなく、ご家族に対しても事業所の方針を伝え理解を得ることも重要になる。事業所では、ご家族に対して年に1回の家族連絡会を個別に実施し、加齢への対応を始めとした事業所の考え方や人事制度等を説明し、ご家族の意見を踏まえながら連携関係を深めている。また、加齢に伴い、地域生活面で困難が生じた場合に、地域の就労支援機関との連携も重要になることから、定期的な事業所への来所を就労支援担当者に依頼し、ご家族との連携や、余暇活動などに対するアドバイスを受けている。今後は、福祉機関との連携も視野に入れながら、ハッピーリタイアメントへの道筋づくりに取り組むこととしている。  ・参考 支援ツールP67「企業就業におけるハッピーリタイアメントに向けてのフロー図」  ・参考 支援ツールP68「支援ケアメモ」 20-23ページ ☆優秀賞 株式会社富士電機フロンティア川崎事業所(神奈川県川崎市) 目標管理制度による社員個々のキャリアアップ実現を目指して資格取得や職域拡大を達成  ・キャリアアップのキーワード 1.目標管理制度の導入 2.資格等の取得 3.実地訓練(OJT) 4.職位の設定 5.障害のある社員主体による業務の実施  ・加齢問題対応のキーワード A.加齢現象の予防 B.加齢現象の把握  ・事業所の概要   平成6年3月に富士電機株式会社の特例子会社として設立。親会社の委託業務を実施。現在、神奈川、東京、三重、埼玉、大阪に7ヶ所の事業所を開設しており、川崎事業所(本社)では20名の知的障害者を雇用している。  ・従業員数24名  ・障害者雇用の経緯   事業所の設立から18年になるが、親会社の委託業務だけでは社員の雇用創出が難しいこともあり新規業務の開拓に取り組む必要があった。事業所では個人目標制度を導入し、社員一人一人の能力に応じたキャリアアップを図り、職域拡大を図ってきた。  ・業種及び主な事業内容   サービス業(親会社の委託業務)  ・雇用障害者数20名(平均年齢28歳)  ・従事作業   製本・印刷業務、メール配送業務、構内清掃業務、製造支援業務  ・事例で取り上げた障害者数6名(内訳:知的障害者6名) □取り組みの概要 ○改善策1  ・改善前の状況   個人目標の面談結果などから本人の意向を踏まえて、清掃や現場軽作業の経験を積んだ障害のある社員に対して、新たな職域へのチャレンジ等のキャリアアップを進めることにした。  ・改善内容   フォークリフト免許を取得して、機械部品運搬業務への職域拡大に取り組んだ。免許取得後は、1年間の現場訓練を実施し、フォークリフト運転業務の安全性を確認、業務遂行の見極めを行った。  ・改善後の効果   生産現場業務への職域拡大を実現することができた。また、他の障害のある社員への刺激となり、社内全体のモチベーション向上に結びついた。 ○改善策2  ・改善前の状況   個人目標の面談結果などを踏まえて、印刷・製本部署で作業経験を積んだリーダーを務める障害のある社員に対して、高度な印刷技術の習得等のキャリアアップを進めることにした。  ・改善内容   「糊付け製本作業」を習得するため、親会社の現場において1年間の訓練を実施した。  ・改善後の効果   国家検定製本2級の実技に合格するレベルまでの技能が身に付いた。また、本人の仕事ぶりが評価され、親会社からの長期の業務契約に結びついた。 ○改善策3  ・改善前の状況   現場ごとに指導員を配置し、指導員が逐一指示を行う業務管理方法だったが、会社の人件費上の問題に加えて、社員の指導員に対する依存傾向、労働意欲やモチベーションの低下が課題として見られた。  ・改善内容   現場に指導員を配置せず、一定のキャリアを持つ障害のある社員からリーダーを選任。リーダーが中心となり現場業務を管理する体制に見直した。  ・改善後の効果   障害のある社員の現場業務に対する責任感と管理能力が向上し、職場内の自主性や自立心が向上した。また、新入社員や実習生の教育についても障害のある社員が中心となり、対応できるようになった。 ○改善策4  ・改善前の状況   障害のある社員が定年まで継続して働けるようにするためにも、事業所で日頃から体力・知力の維持を図る取り組みが必要と考えていた。  ・改善内容   毎日、全員が参加して筋力トレーニングや計算・漢字問題を実施して、体力や知力の維持を推進した。また、週一回体重・血圧などを測定・記録して、健康状態を把握するための指標にした。  ・改善後の効果   長期にわたり障害のある社員の個人データを蓄積し、変化を把握することによって、加齢による能力の低下を把握するための客観的な指標を整備することができた。 □インタビュー企業の声 ○西村 平和さん(取締役・業務部長)  当社は「採用を継続して社会貢献を果たす」の目標を掲げています。企業は新人を採用、用を継続することによって、活性化が継続さると考えています。ただ、そのためには常にしい職種を開拓しなければなりません。しかし、当社は設立から18年を経過しており、長期わたって雇用を続けていくには、健常者の作領域への進出が不可欠であり、親会社との報交換を密にして、可能性について検討しなら推進をしています。  また、開拓した職種を害のある社員が習得しなければなりませんが、指導員がノウハウや技能を持ち合わせていない場合も多く、その技能を習得するには、障害のある社員にとっては非常に高い目標となります。  したがって、一定期間親会社の職場でOJT教育を実施し、育ててもらうことが必須でそのための人的投資(人件費)も予算化しています。今までの結果、1年程度の教育で職場から満足してもらえる技能レベルに達しており、障害のある社員の能力を信じて、今後も積極的に推進をしていきたいと考えています。 □インタビュー従業員の声 ○吉沢 輔さん  フォークリフトの運転は安全に注意しながら事故が起きないように気をつけています。免許は自分の力だけではなく職場の人達からいろいろと教えてもらえたのが良かったと思います。これからも事故が起こらないように気をつけて仕事を頑張っていきたいです。 □改善策紹介 ○改善策1  ・キャリアアップのキーワード:1.目標管理制度の導入 2.資格等の取得  ・改善ポイント:フォークリフト運転の資格を取得して職域の拡大とキャリアアップを実現  吉沢さんは勤続10年になり、これまで事業所構内清掃や工場内現場作業の経験があった。清掃作業などで普段から製造工場の現場に出入りしていた吉沢さんは、物作りの現場を日常から見てきており、自分もいつか製造に携わる仕事で活躍したいと思っていた。個人目標管理制度に係る定期面談時において、本人から頑張ったこと、目標にしたいことなどの個人目標の話を聞く中で、新しい仕事にチャレンジしたいとの意向を確認した。担当部長は、吉沢さんの興味や適性を考慮に入れて、フォークリフト免許を取得して、機械部品運搬業務を目指してはどうか提案したところ、本人も是非チャレンジしたいということからキャリアアップの取り組みを開始した。  まず、免許の取得については、現場の上司が練習に立ち会い、指導を行うなどして円滑に取得できたが、実際に吉沢さんを現場に配置して運転業務を開始する時に、果たして安全に仕事ができるのかという判断が事業所として難しかった。健常者であっても運転事故は発生するため、事業所にとっても知的障害のある社員の運転業務は初の試みであったことから、現場の指導担当者を選任して1年間のOJTを実施し、運転業務の見極めを行った。  こうした取り組みの実現のためには、周囲のサポートと本人の意欲が原動力になる。本人はフォークリフトの運転業務に就いてから1年半が経過するが無事故で業務を維持している。  現在、同じ部署からフォークリフト運転要員の追加希望が挙がっており、障害のある社員の中から候補者を選定し、学科の勉強を現場で実施している。  ・参考 支援ツールP63「フォークリフト実技チェックリスト」  ・参考 支援ツールP63「行動目標達成に向けた歩み」 ○改善策2  ・キャリアップのキーワード:1.資格等の取得 3.実地訓練(OJT)  ・改善ポイント:高度な製本技術を習得してキャリアアップを実現  事業所では、親会社の工事記録、報告書、取扱説明書の作成を印刷・製本の受注業務として実施している。作業内容は、「ファイル綴じ込み完成品を10冊」などのオーダーに対して、大判の図面をA4サイズに折り込む作業、インデックスや背表紙をつけるなど、折りや切断を含めた製本作業から集荷、売上高の管理まで全て対応している。  印刷・製本部門のリーダーである佐々木さんは、ファイル製本工程の全てをマスターしているベテランであるが、個人目標管理制度の面談時において、より難易度の高い製本技術を習得して親会社の現場でも通用する仕事がしたいという本人の目標を確認した。事業所では本人のキャリアアップに対する強い意欲を尊重して、糊付け製本作業(観音製本、クルミ製本)の習得を目標に、親会社に1年間のOJTを依頼。国家検定製本2級合格を具体的な目標に取り組むこととした。  佐々木さんが自ら志願した業務でもあり、仕事へのモチベーションは高く、比較的難しい糊付けの緻密な作業も確実に身に付けることができた。OJTの結果、国家検定製本2級を受検し、学科試験は難しく合格できなかったが、実技試験については合格レベルに達し、親会社からも実務作業は及第との評価を得た。  佐々木さんの技能習得を通じ、親会社からの新たな製本業務の受注契約を長期に結ぶことができ、事業所における職域拡大と生産性向上に結びついた。  なお、現在、事業所では、障害のある社員の中から新たな技能者を養成するべく取り組みを継続している。  ・写真説明 糊付けの作業を行う佐々木さん ○改善策3  ・キャリアアップのキーワード:4.職位の設定 5.障害のある社員主体による業務の実施  ・改善ポイント:指導員がいなくても職場内で自立できる社員を育成する  事業所の業務管理については、以前までは、各業務ごとに健常者の指導員を配置し、指導員の管理の下、障害のある社員に逐一指示を行い、作業を実施する体制であったが、現場ごとに指導員を配置しなければならないという人件費上の問題に加えて、障害のある社員の指導員に対する依存傾向、労働意欲やモチベーションの低下といったデメリットも大きいため、7年前から現場に指導員を配置しない体制に見直した。  さらに、現場の業務管理は、各業務に精通している障害のある社員に任せることとし、職種ごとに一定のキャリアを有するものの中から信望の厚い者をリーダーに選任して、リーダーが中心となり現場業務を実施する方法にした。また、当初は、リーダーが対応できないことについては事務所の指導員に確認するといった最低限の関わりにより、社員の自立性を促進するようにした。  リーダー主体による業務体制が軌道に乗り始めたのは、約5年前からであり、現在は、新入社員や職場実習生の指導や教育についても、グループ内の社員だけで対応できるようになった。  なお、こうした取り組みは、障害のある社員の日常生活面においても良い変化につながっており、例えば、一泊旅行を自主的に企画して実行するなどの積極性に結びついている。個人目標管理制度の面談の中で、将来は指導員を目指したいとする高い志を持つ障害のある社員も出てきていることから、業務体制の改善が障害のある社員の自発性とモチベーションの向上につながった。 ○改善策4  ・加齢問題対応のキーワード:A.加齢現象の予防 B.加齢現象の把握  ・改善ポイント:日々のヘルスチェックを実施し、加齢予防や対策準備  事業所は、知的障害のある社員が働く職場であり、平均年齢は28歳と若年者が多くを占めている。しかし、一般に知的障害者は、体力・知力の低下が健常者に比べて早いと言われていることから、事業所として障害のある社員の能力維持につながる活動に取り組み、定年まで働き続けるようにすることを重要な課題として位置付けており、障害のある社員の社会的自立の支援にもつながるものと考えている。  事業所では、障害のある社員の基礎体力面の維持のために、毎朝のラジオ体操とスクワット30回等を実施している。また、週一回、体重と血圧を測定して記録に残し、自らの健康状態を把握するための材料に用いており、体重の増加等が見られ食生活等の改善が必要な者については、個人目標に加えるなどして障害のある社員の健康管理の意識付けを図っている。  また、思考面の活性化や維持を図る活動として、毎日、簡単な計算問題や、漢字の書き取り、家計簿記録などを実施している。  こうした活動や取り組みは、知的障害のある社員にとって不得意とすることでもあるため、なかなか学習効果が得られにくいとの意見も外部からあったが、職業生活は40年にもわたる長い期間であることから、継続して学習に取り組むことにより、学習した内容の理解が進み効果が得られるとの期待感や可能性をもって継続している。また、こうした活動を長期にわたりデータとして記録に残し、個々人の能力の変化を把握することは、加齢による能力の低下や、将来を見越したキャリア形成にも役立つものと考えている。 24-27ページ ☆優秀賞 日総ぴゅあ株式会社(神奈川県横浜市) 障害のある社員が主体となる組織体制の構築と経験や実績に応じた賞揚表彰・社内資格認定・職位任命の実施により、モチベーションを向上  ・キャリアアップのキーワード:1.組織管理体制 2.表彰制度の導入 3.社内資格制度の導入 4.職位の任命  ・事業所の概要   平成19年4月に日総工産株式会社100%子会社として設立された。設立時は新横浜事業所のみであったが、平成20年には仲町台事業所を開設し障害者の雇用の拡大を進めている。  ・従業員数82名  ・障害者雇用の経緯   設立時は5名の知的障害者でスタートし、5年が経過した現在は63名の障害者が働いている。当初は親会社からの業務を受注していたが、障害者の雇用拡大に伴い業務量の不足も顕著になってきたため、親会社の業務受注だけに頼らない独自事業の開発等、職務創出や職域拡大に力を入れている。  ・業種及び主な事業内容   事務作業、製造系請負、清掃業、食品加工や雑貨等の企画・製造・販売  ・雇用障害者数63名(平均年齢27歳)  ・従事作業   親会社請負作業(事務系作業請負、廃止書類回収、社内メール配達、布きん回収・洗濯、社内ワゴン販売、パソコン入力作業等)、電子機器の組立等の軽作業、高齢者介護施設の清掃、洗車、HP作成、自社商品の「ハーブ&ティ」や雑貨等の加工製造・企画・営業・販売、名刺印刷発送、マッサージ施術のサポート作業等  ・事例で取り上げた障害者数63名(内訳:肢体不自由者1名・聴覚障害者1名・知的障害者54名・精神障害者7名) □取り組みの概要 ○改善策1  ・改善前の状況   各社員の適性を把握し、スキルを伸ばす必要があったが、雇用の拡大に伴う業務内容の増加により、個々の能力に応じたチーム編成とスキルの育成が間に合わなくなってきた。  ・改善内容   人材育成を重視した組織体制として、上司が障害のある社員に対して思いやりの気持ちを持ち、意欲やチャレンジ姿勢を尊重してサポートを行う体制を整備した。  ・改善後の効果   障害のある社員が事業所での中心的な存在になるとともに、仕事に対する主体的な取り組み意識や自発性・責任感・チャレンジ精神の向上に結びついた。 ○改善策2  ・改善前の状況   障害のある社員の個々の能力は様々であり、新入社員が短期間で先輩社員以上の成果や実績を上げてしまうことによって、先輩社員達の意欲やモチベーションが低下するなどの問題が散見された。  ・改善内容   様々な面で実績向上や事業所への貢献に寄与した者を社長表彰の対象とする「月次賞揚制度」を導入し定例化した。  ・改善後の効果   全社員の前で表彰されることが喜びと自信、励みにつながり、自発的な行動や努力する姿勢、積極的な業務への取り組みなどが自然に身に付くようになった。 ○改善策3  ・改善前の状況   幅広い業務に対応できる社員の養成だけでなく、特定分野の業務スキルや専門性を高める熟練技能者の養成が重要と考えていた。  ・改善内容   特定の業務で卓越した技能を習得できた社員を対象に、社内特有の資格を認定する「マイスター制度」を導入した。また、マイスター認定者には認定証の授与と半期ごとの報奨金を支給するようにした。  ・改善後の効果   特定の業務に熟練した社員が増えることによって、事業所の生産性や品質の向上に結びついた。また、社員個々のスキルが向上することで、より高単価かつ難易度の高い受注にも対応できるようになり、業務拡大にも結びついた。 ○改善策4  ・改善前の状況   特定の業務での経験量などを評価して、実現可能なキャリアアップを検討する必要があった。  ・改善内容   各業務の現場において、リーダー、サブリーダーを任命し、現場の作業進捗等の管理や後輩への指導といったリーダー的役割を持たせるようにした。  ・改善後の効果   リーダーの役割を認識し、仕事に対する責任感の自覚や現場全体を見ながら指示や管理を行うスキルが身についた。また、他の社員に対して思いやりの意識で接することができ、現場グループの協力関係や一体感が形成され、職場内の活性化にも結びついた。 □インタビュー企業の声 ○宇田川 利保さん 代表取締役社長  親会社が製造系人材サービス業であり特例子会社に委託可能な業務の範囲が限られていたため、仕事をどのように創出するかが大きな課題でした。親会社の事務系作業の切り出しからスタートしましたが、設立当初は親会社社員の理解がなかなか得られず名刺印刷業務ですら任せてもらえない状況でした。しかし、親会社の異動ローテーションが短いことに着目して、これまでの100枚単位の注文を50枚単位で受け付けることにしました。  その結果、無駄なコストを発生させることなく経費の内製化に貢献できて発注数も増えてきました。このことからニーズに着目して細かく対応することが重要であると気付きました。また、当社では親会社の受注に頼らず今では数多くの独自の事業展開を進め、親会社の受注割合を徐々に下げ、独立採算を目指しています。  当社の人材育成の根幹には「サーバントマネージメント」があります。障害のある社員を育成し雇用定着させるためには彼らが前向きにチャレンジする姿勢を職場が支える体制を作る必要があり、「指導」という立場は馴染みません。  障害のある社員の個々の能力を把握して、それをベースに具体的な「目標」を全員に等しく持たせる、その達成促進に当たりサポーターが辛抱強く支援する、そして達成したり少しでもステップアップしたら、ともかく誉める、自信を持たせて次のチャレンジにつなげる、その繰り返しが重要だと考えています。また、現場との接触機会や関わりを密にしてマイナス面よりもプラス面をとにかく評価するようにしています。当社ではこうした人材育成のノウハウを蓄積し将来的には障害者雇用のコンサル事業も視野に取り組んでいきたいと考えています。 □インタビュー従業員の声 ○埜渡 利隆さん (仲町台事業所 リーダー)  私は入社5年目でサブリーダーを2年経験してから、リーダーを務めて2年になります。ボールペンの組立やワニ口クリップの組立、検品などの仕事をしています。リーダーの仕事は、手の空いている人に指示を出したり荷物の運搬や作業の準備などです。大変ですが、色々な作業ができてうまく仕上げることが楽しいと感じます。仕事の後にプロ野球観戦に行くことが楽しみです。定年はまだまだ先ですが頑張っていきたいです。 ○梅本 佳江さん (仲町台事業所 サブリーダー)  入社4年目で食品加工を担当しています。毎日サンドイッチが作れることが楽しいです。サブリーダーはみんなの仕事の手本になるのでプレッシャーがありますが、指示出しにも慣れてきました。手洗いやうがいを徹底して健康管理に気をつけています。これからの目標は仕事のレパートリーを増やして色んな仕事ができるようになりたいです。 ○渋谷 大地さん(新横浜事業所)  入社1年目です。パンの販売、お菓子の準備、溶解紙の回収、ペットボトルキャップ回収、老人ホームでの清掃等の仕事をしています。この会社に入って嬉しかったことは初給料をもらった時です。サッカーでハットトリックを達成したのと同じくらいうれしかったです。目標は明るく元気に、集中して仕事をする、販売でたくさん売り上げることです。 ○木村 映介さん(新横浜事業所)  入社4年目です。お菓子の納品、在庫確認と賞味期限チェック、親会社での社内販売と金銭の受け渡し、売上報告書の作成などの仕事をしています。お金を扱うのでお釣りを間違えないことや菓子販売の管理をきちんとできるようにして売り上げアップを目指したいです。目標はお菓子販売のマイスターを取ることです。 ○鈴木 南果子さん(新横浜事業所)  入社2年目です。仕事はお茶準備、フキン回収とアイロンがけ、当社事務所や社長室の清掃、ペットボトルキャップ回収、お客様へのハーブティのお茶出し、溶解紙の回収、7階ガーデニングの世話、日報入力をしています。毎日することがたくさんあり忙しいです。自分の目標は後輩に丁寧に教えられるようにする、パソコンを速く打てるようにする、業務リーダーになれるよう頑張ることです。 □改善策紹介 ○改善策1  ・キャリアアップのキーワード:1.組織管理体制  ・改善ポイント:サーバントマネージメント制度の導入により社員の主体性を支援  事業所の設立後、雇用拡大を継続的に実施し、5年が経過した現在は、障害のある社員は60名を超えている。一方、事業所の業務は、設立当初は親会社の受注業務中心であったが、雇用人数に対して既存の受注業務だけでは仕事が足りない状況となってきたため、親会社以外の企業からも新規業務を受注するなど職務創出を推進してきた。現在の業務は、事務系作業、製造系軽作業、高齢者介護施設清掃、企画営業・販売業務など55種類にわたり多種多様となっている。いわば、様々な商品を取り扱うスーパーマーケットのような業務形態となっている。  こうした多岐にわたる業務・作業に対して、障害のある社員のそれぞれの能力を的確に把握するとともに、適性や能力を発揮できる業務への配置と作業スキルを伸ばす人材育成の取り組みが必要だった。  事業所では、障害のある社員の意欲やモチベーションの向上を図ることにより、積極性や主体性も向上し、能力の一層の発揮とキャリアアップにもつながるという人材育成の考えのもと、上司が社員を支えるという考え方を基本とする「サーバントマネージメント制度」に基づく業務運営体制を導入した。  事業所のスタッフは、CS(障害のある社員:チャレンジドスタッフ)とSS(管理を担う社員:サーバントスタッフ)等で構成し、SSはCSに指導的な立場で関わるのではなく、思いやりや奉仕の気持ちを第一にして、CSのチャレンジ姿勢を尊重してサポートする役割を担う。また、CSは全員が「前進目標」を持ち日常業務の中でチャレンジすることを基本とし、SSはCSの目標達成のための「サポート」を実施、CSの目標達成には「誉める」というフィードバックを行う。こうした業務実施のサイクルにより、CSは事業所における中心的な位置づけとなり、また、同サイクルは、CSの業務に対する主体的な意識の形成や自発性、責任感、チャレンジ精神の向上にも結びついている。  ・図表 サーバントマネージメント制度の概要図 ○改善策2  ・キャリアアップのキーワード:2.表彰制度の導入  ・改善ポイント:月次賞揚で社員のモチベーションをアップ  60名を超える障害のある社員の能力は様々である。そのため、入社半年の新入社員が在職期間が長い先輩社員達の作業量を超える力を発揮することや、自分が担当していた仕事を作業力の高い新人と交代したことによって、自分の仕事を奪われたと認識し、意欲やモチベーションが低下するなどの問題が以前から散見され、事業所においても社員の精神的フォローはもちろん意欲やモチベーションを個別に高めることが必要であった。  そこで、事業所では社員のモチベーションを維持する取り組みとして、「月次賞揚制度」を導入した。賞揚の目的は、誰でも公平にチャンスを与え、自信を持たせることにあり、障害のある社員全員が対象となる。例えば、自分自身が立てた目標の達成には至らずとも進捗に成果をみた、現在作業中の業務で何らかの功績を果たした、新規業務ができるようになった、来客者にあいさつを褒められたなどの身近な成果を評価し、毎月1名以上の表彰者を決定。月末に社長から直接賞揚している。また、表彰の写真を社内掲示することにより障害のある社員のステータスとなり、モチベーションの向上に確実に結びついている。なお、これまで延べ150件程度の賞揚実績がある。  ・写真 月次賞揚式の様子 ○改善策3  ・キャリアアップのキーワード:3.社内資格制度の導入  ・改善ポイント:社内検定認定制度によるスキルアップが社内プロの自覚と向上心をもたらす  多種多様な業務に対応できるオールラウンダーを育成することも必要であるが、障害のある社員の個々の得意な能力を活かして特定業務のスキルをより高めて自信や誇りをもたせるような育成の視点も重要になる。  事業所では社内特有の資格である「マイスター制度」を12種類の業務で導入している。技術が卓越した社員に対して、より上位レベルの業務にチャレンジして訓練を実施し、訓練後は社内審査によりマイスターを認定、授与している。審査のためには業務の基本となる小項目全ての課題をクリアする必要がある。事業所長が推薦しマイスター審議委員会で審査基準に照らし合わせた厳しい審査を実施し最終的に選ばれる。  また、マイスターは永続的な資格ではなく有効期限は1年であり、新年度に改めて審査を行う。1業務ごとに1人のマイスターの認定となり現在のマイスターは6名になる。マイスター認定者に対しては認定証と半期ごとの報奨金が支給される。  マイスター制度の導入により特定の業務のスキルアップを重視した結果、障害のある社員個々の得意分野のスキルが向上し、自分の能力に自信を持ち、仕事に対する意欲も高くなり、集中力や精度の求められる他の業務に対しても質の高い作業を提供できるようになった。これにより、業務の依頼企業からの信用や評価が高まるだけでなく、より高単価かつ難易度の高い受注にも対応できるようになった。これが新規取引先の拡充と事業所の利益の貢献にも結びついた。  ・写真 ハーブティ製造のマイスター認定を受けた市川大介さん  ・参考 支援ツールP63「マイスター評価基準項目」 ○改善策4  ・キャリアアップのキーワード:4職位の任命  ・改善ポイント:リーダー&サブリーダー制度の導入で責任とやりがいを醸成  事業所の業務は、簡単な組立といった軽作業のようなものから、計量・袋詰め、販売等での接客や金銭の授受、パソコン入力や名刺作成など様々であり、それぞれの業務で必要とされる能力は異なる。  事業所では、採用後間もない新入社員は、簡単な軽作業の業務から入り、基本的な作業スキルを磨きながら、より難易度の高い作業の習得や計量、販売等の異なる業務へのチャレンジなどを行い、仕事の質や幅を広げていくことで、どのような業務にも対応できる人材を育てることを目指している。  その一方で、特定業務を継続し作業習熟を図ることに適性がある障害のある社員にとっても、現実的にチャレンジできるキャリアアップの方向を検討する必要があった。  事業所では、特定の業務で経験を積み重ねた障害のある社員をリーダー、サブリーダーに任命して、作業進捗等の管理や後輩への実地指導といったリーダー的役割を任せるようにした。リーダー・サブリーダー制度を設定することにより、仕事に対する責任感の自覚とともに、業務全体を見ながら作業指示や管理を行うマネージメントのスキルが身につく効果が得られた。また、同じ障害を持つ社員に対し思いやりの意識で接することもできるため、グループ内での協力関係や一体感といった職場内の雰囲気の向上にも大きく貢献している。  現在、リーダーは精神障害のある社員2名と知的障害のある社員1名が担当しており、サブリーダーは精神障害のある社員1名と知的障害のある社員3名が担当している。  なお、リーダー及びサブリーダーには、任命書辞令と責任者手当を支給している。  ・写真 左が埜渡 利隆さん(仲町台事業所 リーダー) 右が梅本 佳江さん (仲町台事業所 サブリーダー) 28-31ページ ☆優秀賞 株式会社ダイキンサンライズ摂津(大阪府摂津市) 公的資格の取得奨励や実績に応じた昇給・昇格を推進し、事業所の生産性の向上と社内活性化を実現  ・キャリアアップのキーワード:1.目標管理に基づく昇給制度の導入 2.障害のある社員の管理職への登用 3.障害のある社員主体による業務の実施 4.資格等の取得  ・加齢問題対応のキーワード:A.業務改善の実施 B.社内サポート体制の構築  ・事業所の概要   平成5年5月にダイキン工業株式会社の第三セクター方式・特例子会社として設立。  ・従業員数115名  ・障害者雇用の経緯   事業所設立から19年が経過し、自社の努力目標であった100人雇用を平成23年度に達成した。採用は障害者職業能力開発校や特別支援学校からの推薦による定期採用の他、障害者就業・生活支援センターの紹介による委託訓練・社会適応訓練の受入れ、合同面接会や必要に応じた求人募集による中途採用も行っている。  ・業種及び主な事業内容   製造業(親会社の関連業務を受注)  ・雇用障害者数103名(平均年齢35歳)  ・従事作業   グリース潤滑装置用部品機械加工組立、電気電子部品組立、包装、袋入れ、完成品仕上げ、機械部品組立、棄却エアコン・フロンガス回収解体分別、住宅用空気清浄機修理、化学品製造、CAD、名刺作成、化学品充填  ・事例で取り上げた障害者数103名(内訳:肢体不自由者32名、視覚障害者1名、聴覚障害者31名、知的障害者21名、精神障害者18名) □取り組みの概要 ○改善策1-1  ・改善前の状況   設立当初は、障害のある社員は現場業務に従事する体制。勤続年数に応じて昇給・賞与の一律支給であったため、意欲やモチベーションに結びつかないという問題があった。  ・改善内容   障害のある社員の個々の業務実績を評価し、昇給・賞与に反映する昇給システムを導入した。  ・改善後の効果   障害のある社員が一丸となって業務に取り組む活力となり、意欲やモチベーションの向上、事業所の生産性にも結びついた。 ○改善策1-2  ・改善前の状況   健常者が管理監督業務を実施する体制であったため、障害のある社員の業務への自発性が低迷し、現場の活力が高まらない状況があった。  ・改善内容   障害のある社員の個々の能力やキャリアに応じた管理職ポストへの登用を推進した。  ・改善後の効果   事業所全体の一体感が形成されるとともに、全社員が一丸となり業務に邁進する原動力につながり、生産性の向上や事業所の活性化につながった。 ○改善策2  ・改善前の状況   空調機の冷媒ガスの回収作業及び解体分別作業を数名のグループ体制で実施していたが、冷媒ガス回収の有資格者が1名だけであったため、グループの作業効率が高まらない課題を抱えていた。  ・改善内容   「冷媒回収技術者」の資格をグループ全員が取得することを目標に掲げて、グループリーダーが講師となり自主的な学習を行う等して資格取得にチャレンジした。  ・改善後の効果   グループ全員が資格を取得したことにより、現場設備をフル稼働して冷媒回収作業が行えるようになった。回収効率は従来の2倍になり、作業効率が格段に向上した。 ○改善策3  ・改善前の状況   筋ジストロフィのある社員が、障害の進行等により、脚力や腕力の筋力が低下し、トイレの単独使用やデスクワーク業務に支障をきたすようになってきた。  ・改善内容   職場の同僚がアイディアや工夫を出し合い、改善を図った。また、トイレ介助は本人の要請を受けて周囲の社員が協力し援助を実施する体制を整えた。  ・改善後の効果   周囲の援助も受けながら引き続きデスクワーク業務を実施できるようになった。また、社員同士が日常から援助協力を行う関係が一層形成された。 □インタビュー企業の声 ○應武 善郎さん 代表取締役社長  障害者雇用事業所として設立20年を迎えます。これまで様々なハードルに直面し乗り越えてきましたが、結局は障害のある社員がやりがいをもって職業に携われる姿が企業にとって利益をもたらすことを感じています。しかしながら、社員の生活全てを事業所が担える訳ではないので支援機関のサポートは不可欠と考えており、職場のことは第2号ジョブコーチが、生活のことは就業・生活支援センターのサポートを利用しています。 ○後藤 金丸さん 取締役工場長  現在、会社では62歳の雇用継続者が1名います。今年度は2人が60歳に達します。雇用継続は、本人の希望にもとづいて会社が認めた者を再雇用しています。再雇用は現職と同じ仕事を継続します。長く働ける職場作りを目指し取り組んでいきたいと思っています。 ○大西 康代さん 企画部総務課  私は入社4年目です。弊社は、作業ができるように色々な工夫や改善に積極的に皆が取り組んでいく姿勢が社風としてあります。私は総務課で働いており、社員の相談を聞いたり、支援者との中継ぎをするような仕事もしています。社員全員が気持ち良く前向きな気持ちで働けるように、頑張っていきたいと思っています。 □インタビュー従業員の声 ○松本 淳治さん 製造部製造課長  37歳で勤続15年になります。職業訓練を受けて就職しました。これまで製造ラインの作業に従事し、リーダー、職場長、課長を経験してきました。管理職については自分の希望というよりも上司の勧めがありました。部下がつき、業務進捗の確認、人間関係など仕事の質も環境も変わって苦労しました。反面、責任感が身に付いたと思います。丸投げではなくフォローまで責任をもつ意識が身に付きました。今後の目標としては、現場全体の底上げ、兼務体制、リーダーを育成する視点での携わりが必要だと思っています。会社は息苦しくない開放的な職場雰囲気で人間関係も良好です。社長や工場長の後ろ盾が安心感につながっています。 ○谷口 勲さん 企画部業務課  37歳、勤続17年です。購買業務に従事しています。仕事は業者との電話での交渉や納期・生産調整などを行っています。身体の状態から周囲に頼まないとできないことが多いので、遠慮なくサポートをお願いしています。自然体で仕事ができ仲間達には感謝しています。今の仕事はやりがいがあり毎日楽しいです。今後の目標は少しでも会社に貢献していき勤続20年を目指して頑張りたいと思います。 ○原 功平さん  24歳、入社5年目です。職業訓練校の訓練を受けてから就職しました。フロンガスの回収や出荷・積み込みの立ち会いなど色々な仕事をしています。冷媒技術の資格は一度落ちているので、合格した時は本当に嬉しかったです。これからも色々な資格取得にチャレンジして仕事の幅を広げていきたいです。 ○庄司 圭吾さん  22歳、入社4年目です。職業訓練校を卒業して就職しました。グループホームに入居して仕事をしています。資格取得は1回の試験で合格しました。家族も合格を喜んでくれてうれしかったです。今後はリフトの資格取得にチャレンジしたいと思っています。 □改善策紹介 ○改善策1-1  ・キャリアアップのキーワード:1.目標管理に基づく昇給制度の導入  ・改善ポイント:業績に応じた賃金・昇進制度が事業所の生産性の向上と活性化に直結  事業所設立当初は、健常者が全ての管理監督業務を行う組織体制であったが、障害のある社員の意欲や自発性が芽生えにくく、現場の活力が向上しない状況が見られた。また、障害のある社員の昇給・賞与についても、勤続年数が同じであれば業績に関係なく一律に支給していたため、モチベーション向上に結びつかないという問題が見られた。  障害のある社員が、やりがいと生きがいをもって仕事に従事するためには、労働の質を高める仕組み作りが重要と捉えて、障害のある社員の個々の能力や実績の適正な評価と昇給・賞与への反映、業務に精通した障害のある社員による業務管理の実施、実績やキャリアに応じた管理的ポストへの登用などの社内システムを構築した。  事業所が年度ごとに策定する基本方針に基づき、業務グループごとの年間目標を設定し、各社員が一丸となって目標の達成に向けて取り組むことを基本とする。障害の有無にかかわらず社員の業務実績は期末に評価し、次年度の昇給に反映。また、昇格については人事異動などの人員体制の変更時に障害のある社員の管理職ポストへの登用を随時検討し実施することとした。  なお、業務実績に基づく給与の反映に変更したことから、障害のある社員に対しては個々により支給金額が異なることを予め説明し理解を得ている。  こうした取り組みによって、障害のある社員が努力や研鑽を自ら行う姿勢が見られるようになり、その結果、事業所の生産性向上や社内活性化といった利益につながっていった。 ○改善策1-2  ・キャリアアップのキーワード:2.障害のある社員の管理職への登用 3.障害のある社員主体による業務の実施  ・改善ポイント:現場でキャリアを積んだ社員を管理職やリーダーに登用  事業所設立当初は、親会社からの出向社員などが管理・指導を実施する管理体制であったが、現場の障害のある社員の労働意欲やモチベーションが向上しないという問題意識を抱えていた。  事業所では、障害のある社員の成長と並行して当事者主体による生産管理へ順次切り替えることにより、生産性の向上に加えて健常者と障害者の双方の信頼感が形成され、全社員が一丸となって業務に取り組むという事業所全体の活性化につながった。  事業所の設立から2年後の平成7年に、現場でキャリアを積んだ障害のある社員のリーダー登用を開始。以後はリーダー、職場長、課長へのキャリアアップを順次進めている。  現在、課長職3名、職場長(係長)3名、リーダー(班長)7名が障害のある社員(肢体不自由、聴覚障害)で構成されている。  松本さんは、勤続15年のベテランであり、製造現場の作業員として採用されてから業務経験を積み重ねて、リーダー、職場長へと昇進、1年半前に製造課長に昇進した。  日々の業務管理に携わる一方で、月1回のリーダー以上が出席する職場定着推進会議において、各現場の状況や課題などについて社内全体で情報共有を行い、課題や対策の協議を行っている。  なお、事業所の方針として管理職(課長・部長)は全員が第2号ジョブコーチ研修を受講しており、日常の部下の雇用管理を行う上で研修から学んだ知識を活用している。  ・写真:製造課長の松本さんは、対外的な見学や研修にも対応する事務所の広告塔としての役割も担っている。 ○改善策2  ・キャリアアップのキーワード:4.資格等の取得  ・改善ポイント:公的資格の取得によって作業効率が飛躍的に向上し事業所の利益に貢献  親会社の委託業務として、空調機の冷媒ガスの回収作業及び解体分別作業を社員5名(下肢障害者(リーダー)1名、聴覚障害者1名、知的障害者3名)のグループ体制で実施していたが、冷媒ガスの回収作業には冷媒回収技術者の民間資格が必要であり、グループ内の有資格者はリーダー1名のみであった。他の社員は解体分別作業に従事するが、冷媒回収要員が少ないことから効率的に作業が進められないという課題があった。  冷媒回収技術者の資格取得者が増えることによってグループの作業効率は格段に向上することからグループ全員が資格取得に挑戦することを決めた。しかし、資格取得には認定講習会の受講とその後実施される学科試験に合格する必要があったため、リーダーが講師となり仕事の合間や休憩時間などに学科試験の勉強会を自主的に実施し受験に備えた。その結果、1回目の受験で2名が合格し、残りの者も2回目の受験で無事合格できた。  グループ全員が資格を取得できたことによって、常時、現場の設備をフル稼働し冷媒回収作業にあたれるようになり、回収効率は1日32台から64台と2倍に向上した。  事業所では仕事を行う上で必要となる資格はもちろんのこと、仕事の領域や幅が広がる資格についても取得を推奨しており、取得後は社員の昇給などに反映している。  なお、知的障害者では、冷媒技術者以外にフォークリフト運転、ろう付基本級の資格を取得している者がおり、今後は、クレーン操作などの資格についてもチャレンジを検討するなど知的障害者のキャリアアップについても引き続き取り組むこととしている。  ・写真:冷媒ガス回収作業の様子 ○改善策3  ・加齢問題対応キーワード:A.業改善策務改善の実施 B.社内サポート体制の構築  ・改善ポイント:事業所全体の協力体制で加齢に伴う身体能力の低下をサポート  谷口さんは38歳で勤続17年になる。進行性筋ジストロフィのため加齢経過とともに筋力低下が進み、車椅子による自立移動の困難さや上腕が上がりにくいなどの状態が見られるようになった。採用から7年間は製造現場で組立作業に従事していたが、筋力低下の影響により生産性の著しい低下が見られたことから、10年前から身体的負担の少ない業務課へ配置転換し、業者との材料調達や生産調整を行う購買業務を担当していた。  しかし、両腕を持ち上げる動作が次第に難しくなり、片手で携帯電話を持ち耳元に当てて話すということにも支障をきたすようになった。周囲の同僚もそれに気づき改善のアイディアや工夫を出しあった結果、市販のイヤホンとピン型マイクを使って電話の応対ができるよう改善を図った。しかし、こうした改善を行っても独力でできないこともあり周囲に援助を求める必要がある。谷口さんは周囲に自発的に援助を申し出ることができる気さくな性格なので、援助を求めることに全く抵抗はない。また、社内でのトイレ介助についても周囲の社員が自発的に自然体で行っているなど、事業所の社員全体が協力やフォローを行う体制が定着している。  現在は、谷口さんは電動車椅子を使用して電車通勤を行っているが、今後、筋力低下がさらに進行し自力通勤も困難になってきた場合には会社としても在宅勤務を検討する必要があると考えている。   32-35ページ ☆優秀賞 ソニー・太陽株式会社(大分県速見郡) 加齢問題対策の仕組みを構築、組織内に位置付けて、継続雇用の取り組みによるハッピーリタイアメントの実現を推進  ・加齢問題対応:A.組織的実行体制の整備 B.加齢現象の把握 C.業務改善の実施 D.加齢現象の予防 E.社内研修  ・事業所の概要   昭和53年にソニー株式会社と社会福祉法人太陽の家との共同出資により設立。昭和56年にソニー株式会社の特例子会社として認定された。障害のある社員が働き甲斐をもって働ける環境を創出し、常に高い目標の研鑚と挑戦を続け、障害者の社会的「自律」を目標に活動している。  ・従業員数181名  ・障害者雇用の経緯   設立から35年を迎える。全社員の約64パーセントを障害者が占めており、一人ひとりが個性や能力を発揮できる業務に従事し活躍している。  ・業種及び主な事業内容   製造業(マイクロホン、ヘッドホン、メモリー機器の製造等)  ・雇用障害者数117名 平均年齢39歳  ・従事作業   基板実装作業、マイクロホン組立作業、品質検査作業、部品検査作業、工程内物流作業など   技術情報管理業務、商品設計、生産技術業務、製造技術業務など   情報システム管理業務、SCM業務(資材購買、製販計画等)、経理業務、総務業務、ファシリティ業務など  ・事例で取り上げた障害者数117名(内訳:肢体不自由者81名、視覚障害者2名、聴覚障害者22名、内部障害者8名、精神障害者3名、その他1名) □取り組みの概要 ○改善策1  ・改善前の状況   障害のある社員の加齢経過に伴う障害の進行や基礎体力面の低下の訴えとともに出勤率低下、退社など徐々に影響が出ていた。  ・改善内容   社員の健康状態の把握、健康増進や維持を図るための対策、加齢に伴う問題が発生した場合の改善など、一連の対策を組織的な枠組みで実施する体制を整備した。  ・改善後の効果   障害のある社員が、日々の健康維持に留意しながら安心して働ける職場作りの基盤が構築できた。 ○改善策2  ・改善前の状況   障害のある社員の加齢に伴う問題への把握や対処は、現場の上長だけで行ったり、人事のみが動いたり流れが決まっておらず、まちまちの対応をしていた。  ・改善内容   人事部門、職場、産業医・看護師が組織的に対応する管理方法を導入した。  ・改善後の効果   加齢問題の早期発見、対策の判断基準の社内統一化、必要な対応の迅速化が図れた。また、加齢問題の改善事例を組織間で共有しやすくなり、マネージメント効率が向上した。 ○改善策3  ・改善前の状況   健康管理等を各社員の自己管理に委ねていたため、加齢に伴う体力の低下等の予防が浸透せず、問題が顕在化しにくい状況にあった。  ・改善内容   各現場において障害状況に適した職場環境の改善を推進。また、産業医・看護師との連絡・相談を円滑に行うためのツールの開発や社員へのスポーツ・文化活動等の奨励を行った。  ・改善後の効果   各社員が自身の障害や健康状態に対する自己認識や理解が深まった。スポーツ活動の参加等を通じて、社員同士のコミュニケーションが高まり、社内のモチベーション向上につながった。 ○改善策4  ・改善前の状況   障害のある社員の中には、加齢に伴い将来的な不安を持っている者が多いため、モチベーションの低下や退職の要因につながりやすい状況にあった。  ・改善内容   ライフプランに関する社内研修を新たに設定し、将来設計に役立つ様々な知識や情報を提供するようにした。  ・改善後の効果   将来に対する不安が軽減されるとともに、長く働くことへのモチベーションの向上につながった。 □インタビュー企業の声  ○寺岡 千年さん 代表取締役社長   当社はソニー株式会社の特例子会社として設立し35年になります。設立以来、障害のある方を多数雇用しマイクロホンやヘッドホン等、もの造りを中心として活躍してもらっています。   これまでの主だった退社理由は、専門学校で勉強をしたいとかやりたいことがあるなど積極的退社と仕事をしたいが加齢による障害の悪化等の影響で仕事ができなくなりやむを得ず退社など消極的退社に分けることができます。前者の場合は何も問題はありませんが、後者の場合は本人にとって将来のワークライフバランスが崩れるなど大変深刻な事態となります。   従って、『障害のある方が将来不安なく勤務できるようにしよう』をスローガンに加齢問題をテーマに約1年半かけて取り組みました。この仕組みのポイントは、加齢問題の見える化、予防活動、加齢による悪化後の対策からなっています。   ここで大切なことは、加齢問題をマイナスイメージとしてとらえるのではなく、最適勤務形態や職種を自ら選択でき、これからも勤務継続できるようにすることにあります。   今後はこの仕組みを運用しながらさらに改善を図り、よりよいものにできたらと思います。そして、仕組みができたから安心ではなく、この仕組みを運用し加齢問題に真正面から取り組んでいく姿勢と実行こそが、精神的発展文化であり継続すべき大事なことと考えています。  ○佐藤 いづみさん 総務部統括部長   自社では、社員全員が働き甲斐を持ち、将来を不安なく安心して働いて欲しいと考えこの仕組みを構築しました。この仕組みを利用して自分の将来を自分で設計できるようになることを期待し今後も取組みを継続していきたいと思います。  ○荒木 広重さん ビジネス推進部生産技術課統括課長   これまで個々の社員の悩みは組織的に拾い上げられませんでしたが、この仕組みによって、相談の必要性の高い社員自らが上長や看護師に相談を行うなど声を挙げやすくなっています。  ○野田 浩二さん 障がい者雇用推進室室長   対策を組織的に行うための仕組み作りは試行錯誤の連続であり苦労をしましたが、細かい点は見直しも行いながら機能していける仕組みとして熟成させていきたいと思います。  ・写真 左が荒木さん、右上が佐藤さん、右下が野田さん □インタビュー従業員の声  ○竹下 侑希さん   勤続7年の29歳。製造組立やパソコン入力作業の経験を経て、現在は人事関係の業務に従事しています。椅子に座わっているときは、足が床に届かないことが普通でしたが、だんだん首の痛みなどの症状が出始めました。   看護師との面談を重ね、椅子の高さ調整や同僚から踏み台を作ってもらうなどして、痛みも軽減され作業もしやすくなりました。   いまでは、健康のことも意識するようになりました。余暇活動では、吹奏楽部に入り障害に関係なくメンバーとの交流を楽しんだり、さまざまな経験を通して、自分の障害への意識も変わり嫌な気持ちから個性としての捉え方に少しずつ変化してきました。   社会貢献活動(理科教室など)で、子どもたちとふれあう機会もありますので、いろいろな場面を通じて障害のある方が活躍する姿を学校や社会に広めていきたいです。  ○上田 久美さん   勤怠関係など庶務の仕事に従事しています。パソコンを使用する業務でしたが、上半身が痛く肘に水がたまるなど、痛みなどがありそれが次第に悪化していきました。パソコン、キーボードの高さや傾きを調整し、またジェルパットで肘部をカバーしたところ両腕の疲れと痛みが軽減しました。   今まで自分でも痛くないよう工夫していましたが、解決に結びつかず周囲の提案が効果的でした。これからはあまり体に負担をかけないようにしたいと思います。看護師さんとの相談は心強く「ほっとプロジェクト」は自分にとって有益です。これからは体調の維持と継続でできるだけ長く勤めたいと思います。 □改善策紹介 ○改善策1  ・加齢問題対応のキーワード:A.組織的実行体制の整備  ・改善ポイント:加齢問題で必要となる一連の対策を組織的な枠組みで実施する体制を整備  事業所の設立から35年が経過している。途中退職者の多くは在職中の加齢経過に伴う障害の悪化、体力面の低下等が退職の要因であり、事業所では深刻な問題として認識している。  事業所では、全社員が日々の健康の維持を図り安心して働け、もし退職に至っても安心して第2の人生をはじめられるようなハッピーリタイアメントの実現を目標に、加齢問題解決の仕組みづくりを行うべく「ほっとプロジェクト」を平成23年に発足した。  プロジェクトは総務部が中心となり、過去に退職した社員の状況分析と現役社員への健康に関するアンケート調査等の実施結果から、社員の健康状態の把握、健康の増進や維持を図るための対策、加齢に伴う障害の悪化や能力低下が発生した場合の具体的改善に関する対策等、加齢問題の対策に必要となる基本的な対策の枠組みを設定した。プロジェクトの社内への浸透と組織的な対応を定着させるためにトップの理解と協力のもと現場上長や社員に説明、周知を行った。  ・参考 支援ツールP69「加齢問題対応フロー図」  ・参考 支援ツールP70「ほっとプロジェクトの仕組み」 ○改善策2  ・加齢問題対応のキーワード:B.加齢現象の把握 C.業務改善の実施  ・改善ポイント:「ほっとチェック」で社員の健康状態を見える化し職場改善対策を組織的に実行  これまで、社員の加齢に伴う問題の把握は、社員の勤怠状況や仕事中の様子などに現場の上長が気づき、加齢問題が顕在化した後に個別に対応していたため、問題の早期発見や組織的な対処が行えないような状況であった。そこで社員の健康状態を継続的に確認し加齢問題の早期発見が行えるよう「ほっとチェック」を実施している。  ほっとチェックは社員の健康状態の把握を2段階に分けて行う仕組みである。1次ほっとチェックでは、全社員が毎年行っている一般健康診断の問診票を用いて、加齢問題に関連した項目にチェックしている社員を把握し、引き続き2次ほっとチェックとして、事業所が独自に作成したチェックシートを用いて加齢に伴う問題傾向の把握を行い、問題を見える化できるようにした。  ほっとチェックの結果と産業医、看護師の意見から、人事担当と上長が検討し、対策が必要と判断した場合は、職場改善等の対策を組織的に実行する。実行に当たっては、2次ほっとチェックシートの内容を元に作業環境の改善や仕事内容の調整、就労時間の最適化など、本人の合意に基づくものとする。  なお、対策実施後の経過や対策の有効性を、春秋の面談時や健康診断、本人の申告で適宜評価する。また、経過観察シートを用いて作業環境でのやりづらさ、仕事の量や適性、就労時間、その他配慮事項などを確認し、必要であれば追加対策を実施する。  この取り組みによって加齢問題対策の必要な社員が鮮明になり、必要となる対応を迅速に行えるようになった。また、加齢問題の改善事例の情報共有を組織間で共有しやすくなりマネージメントの業務効率が向上、対策の判断基準を社内で統一化でき、より合理的な対応を会社と本人の双方で合意した形で行えるようになった。さらに、対策の記録から障害別に加齢問題の予測ができるようになり、早期の段階でどのように予防すればよいかが考えられるようになってきた。  ・参考 支援ツールP70「2次ほっとチェックシート」 ○改善策3  ・加齢問題対応のキーワード:D.加齢現象の予防  ・改善ポイント:予防対策  障害のある社員の加齢に伴う機能低下等の進行を遅らせ、ひいては未然防止につなげる施策として、社員のライフスタイルの見直しやスポーツ活動を推進している。  まず、入社時と配転時に、社員から、仕事をする上で必要な作業環境についてサポート内容を確認し、障害に適した職場環境を作る。また、自分自身の障害に対しての知識を深め、障害の進行や疾病の予防意識を高める。事業所では社員と産業医・看護師の双方のコミュニケーションツールとして自社開発した健康自己管理システムを用い、各自の治療や検査データを記録し、自身の健康の変化に気付いてもらうようにし、健康管理に役立てている。また、社員からの健康相談は、このシステムを使用し安心して障害の変化等、相談ができるようにセキュリティが確保されている。  また、障害のある社員に対するスポーツの重要性を啓発し、スポーツの種類や開催日等の社内周知を掲示、全社メールなどで行う。大会出場者への激励会や全国大会レベルで優秀な成績をおさめた社員には社長表彰を行う。さらに、文化・芸術においては、文化祭として毎年、写真・生け花・洋裁・鉛筆画・模型・茶道などの展示やデモンストレーションが行われ、社内のコミュニケーション活性化やモチベーション向上につながっている。  こうした取り組みに加え、健康増進や維持のために食生活改善を推奨している。社内食堂業者と連携して、ヘルシーメニューを設けて、利用者には数々の特典を進呈し利用増進を図っている。  ・参考 支援ツールP70「健康自己管理システム画面」 ○改善策4  ・加齢問題対応のキーワード:E.社内研修  ・改善ポイント:ハッピーリタイアメント施策に向けての取り組み  ほっとプロジェクトで構築された仕組みは、今後はさらに様々な施策を加えていくこととしている。その一つにライフプラン研修が挙げられる。  本研修は、障害のある社員が加齢に伴う経過とともに、定年後といった将来の生活に対しても漠然とした不安が重なり、それが現在の仕事の意欲やモチベーションの低迷、退職に結びつくという課題の対応策に位置付けている。  研修では、将来設計に関すること、貯蓄・年金に関すること、社会福祉サービス等の制度や施設等の利用に関すること、などのテーマで構成。計画当初は、概ね50歳になる障害のある社員を対象に受講の奨励を想定していたが、事業所における退職者の割合が高い30歳代と45歳代の社員についても参考になる研修内容であったことから、受講年齢に制限を設けず全社員に研修を呼びかけて希望者に対して研修を実施する。  本研修の取り組みは開始したばかりであるが、障害のある社員が10年20年先といった将来の自分の姿を考えるきっかけになるとともに、研修によって退職後の自分をイメージしてどんな備えが必要になるかの具体的な知識を得ることができ、不安感の軽減や働くことへの安心感、モチベーションの向上にもつながっている。 36-39ページ ☆奨励賞 社会福祉法人清風会みつや工場(広島県安芸高田市) 業務実績に応じた昇給の反映やキャリアに基づく昇格を実施しモチベーションや生産性を向上  ・キャリアアップのキーワード:1.業務評価に基づく昇給・昇格の実施  ・加齢問題対応のキーワード:A.職場と生活面のサポート体制  ・事業所の概要   社会福祉法人清風会は昭和47年に設立され、身体障害、知的障害、精神障害と総ての障害に対応する雇用施設、社会就労施設(授産施設)、生活施設の整備を行ってきた。   清風会みつや工場は昭和63年4月に全国で2番目となる知的障害者福祉工場として開設され、平成18年10月に障害者自立支援法に基づく就労継続支援A型事業所(定員70名)に体系移行した。  ・従業員数94名  ・障害者雇用の経緯   工場開設から25年が経過している。障害者雇用として労働基準法に則り最低賃金のクリアを基本理念に運営している。   工場内でのクリーニング作業に従事できる基礎体力や作業能力が備わっている知的障害者を採用しており、主に児童施設、特別支援学校、福祉事務所、ハローワークから受け入れている。  ・業種及び主な事業内容   ホテル等のリネン品のクリーニング(リネンサプライ業)  ・雇用障害者数74名 平均年齢41歳  ・従事作業   リネン品の洗い、仕上げ、出荷準備  ・事例で取り上げた障害者数6名(内訳:知的障害者6名) □取り組みの概要 ○改善策1  ・改善前の状況   現場での支援員のマンパワーが不足しており、業務管理に対応することが難しくなってきた。また、障害のある社員のキャリアアップを具体的に検討する必要があった。  ・改善内容   業務評価制度を導入して、障害のある社員個々の作業能力等を評価し、適性に応じた職場配置や昇給等への反映、班長や現場リーダーへの任命を行った。  ・改善後の効果   障害のある社員個々の目標が明確となり、仕事への責任感や作業品質の向上を心がけるようになった。また、班長、リーダーに任命された社員は、現場責任者の自覚を持ち、他の社員の模範となるよう積極的な行動が自発的に見られ、業務管理を任せられるようになった。こうした変化が工場全体の活性化と生産性の向上に結びついた。 ○改善策2  ・改善前の状況   障害のある社員の平均年齢が40歳を超え、加齢に伴う問題への対応が急務となった。  ・改善内容   障害のある社員の職場と生活面の両方に支援員を配置し、一体的なサポートを行う体制を整え、職場における配慮の実施とあわせて、生活面におけるサポートを実施した。  ・改善後の効果   障害のある社員の状況を踏まえた配慮を実施することができ、職場での安定的な勤務や定着が図られた。 □インタビュー企業の声  ○黒坪 寛さん 施設長   従業員の能力を引き出すために、独自の「作業評価表」を作成し評価することで、働く意欲のスキルを上げることができ、本人の「やる気」が起き生産性の向上につながっていると思います。従業員の方が人生形成できるよう、引き続き支援していきたいと思います。 □インタビュー従業員の声  ○河井 正樹さん 班長   工場に勤めて24年です。洗い場と出荷準備はベテランです。班長になって15年になりました。周りが一生懸命仕事をしてくれるので指示出しはそんなに必要ありません。シーツに汚れや破れ、不良がないかを常に注意して見ています。仕事をしていて良かったことは給料がもらえて自分の好きなことができることです。定年を過ぎても今の仕事を続けていきたいと思います。  ○西村 美穂子さん リーダー   24年働いています。リーダーの仕事は作業場の人達の声かけと作業報告です。仕事をしていて良かったことは好事例の表彰状をもらったことです。シーツの作業で気をつけていることは、シーツの汚れやしわ、破れがないかをしっかり確認することです。また、作業場のみんなの調子が悪くなっていないかを一人一人みています。現在、グループホームで暮らしていて休日に友達と買い物や旅行に行くのが楽しみです。自分達がクリーニングしたリネンが使われているホテルにも泊まりに行きました。これからも清風会で元気に働き続けたいです。 □改善策紹介 ○改善策1  ・キャリアアップのキーワード:1.業務評価に基づく昇給・昇格の実施  ・改善ポイント:社内業務評価の実施と現場の作業に熟練した社員の班長、リーダーへの任命により、工場生産性のパフォーマンスを向上  工場には、6つの作業部署(仕分け洗い部、仕上げ部4部署、出荷部)があり、約70名の障害のある社員がそれぞれの工程作業に従事している。管理体制については、4名の支援員が複数の部署の担当を兼任しながら、作業指導、生活支援、生産管理、機械管理の各業務を日々こなしている。支援員は、障害のある社員に対する精神面での支援を毎日のように行う必要があるほか、障害のある社員の急な欠勤が生じた場合に生産要員としても対応する必要があることから、これらの業務を現行の支援体制でこなすことが厳しい状況となってきた。  一方、障害のある社員の中には、作業能力の高い者や、作業経験の積み重ねにより現場作業だけでなく、機械操作や保守点検など高度なスキルが身についている者もおり、彼らの能力をどのように活かし発揮していくかが指導上での問題としてクローズアップされてきた。このため、評価のあり方やキャリアアップについて検討する必要が生じた。  事業所では、平成10年頃から、障害のある社員個々の作業能力等を評価し、適性に応じた配置や業務内容に応じた処遇検討を行うため事業所独自の「作業評価表」を作成する業務評価制度を導入した。作業評価表は、「作業能力」「業務実績」「勤務態度」「知識判断」の4項目を評価基準に基づいて年度末に評価するものであり、評価結果は次年度の昇給などに反映する仕組みになる。支援担当者は年間の勤務状況を評価した評価表を障害のある社員ごとに作成し、管理職、支援員(職場担当、生活担当)が出席するケース会議を通じて個々の評価について検討を行う。評価結果は、本人に個別にフィードバックを行っている。なお、仮に評価が下がったとしても減給とはせず現状維持として判断している。  業務評価制度の導入によって、障害のある社員個々の目標設定や評価結果の本人へのフィードバック、昇給への反映が行われるようになり、社員に仕事への責任感の自覚が芽生えた。欠勤が目立っていた社員が安定的に出勤できるようになったり、シーツ類の汚れやシワを見逃さず品質の向上を心がけるようになるなど、各社員の仕事に対する意欲やモチベーションの向上につながるとともに工場全体の活性化と生産性の向上にも具体的に結びついている。  一方、リネン業は、長年作業工程に大きな変動がなく作業内容を細分化しやすいので、作業経験量や習熟度に応じて、ジョブローテーション等を行い障害のある社員の仕事の幅を広げることや、機械操作の熟練といったスキルアップに取り組みやすい。事業所では業務評価と連動して、現場作業の経験を積み、一定のスキルアップを果たした社員を対象として班長や現場リーダーに任命するキャリアアップの制度を設定している。なお、班長やリーダーになった者には、給与規程により「班長手当」「リーダー手当」が毎月支給される。  班長、リーダーの職務は、日常の現場作業に加えて朝のミーティング時に各現場の作業内容や目標等の指示を伝えること、作業進捗状況の把握と作業完了の報告、機械等の不具合があった場合の報告といった生産管理全般にわたる。リーダーは一つの部署を担当するが、班長は複数の部署を担当しており守備範囲も広い。また、事業所では班長、リーダーに対する社内教育に取り組んでおり、年4回半日程度で機械の安全管理や社員の健康管理といったテーマの研修を実施している。そのほか、法人内で実施される研修に参加させるなど責任感や管理能力が身につくような教育を行っている。なお、研修内容や配付資料については知的障害のある社員向けに分かりやすく用語をかみ砕いて説明するなどの工夫を行っている。  こうして、班長、リーダーに任命された社員の勤務態度や仕事に対する取り組み姿勢は良い方向へ変化していった。他の社員よりも早く出勤して作業準備に取り掛かる、作業中は常に周囲の社員の動きを観察しながら声かけを行う、具合の悪そうな社員がいると支援員に素速く報告に行くなど、現場の責任者であるという自覚を持ち、他の社員の模範としての積極的な行動も見られるようになった。このため、支援員はあくまで間接的なサポートを行う役割として定着している。  今後は、班長やリーダーのポストを増やし、障害のある社員のキャリアアップを推進していく方針である。また、班長を務める障害のある社員のさらなるキャリアアップとして、法人内の他工場への出向等を行うことにより他部署でのスキルや経験を高めていくことを検討している。  ・参考 支援ツールP64「作業評価表」 ○改善策2  ・加齢問題対応のキーワード:A.職場と生活面のサポート体制  ・改善ポイント:グループホームの生活支援担当者と連携して社員の雇用継続を支援  在職している障害のある社員の平均年齢は41歳となり、加齢に伴う体力や能力の低下等による作業能率の低下や不定期の欠勤等の問題が事業所においても顕在化しつつある。事業所では、生活支援を担当する支援員と密接に連携して、障害のある社員の日常生活の状況や健康状態等の把握を行っており、必要があれば、職場における身体負担の軽減や労働時間の短縮といった配慮を個別に実施している。  障害のある社員の多くは、事業所に隣接する法人が運営するグループホームに居住しており、事業所とグループホームには、それぞれ職場と生活を担当する支援員が配置されていることから、障害のある社員の職場と生活面の両方を一体的にサポートできる体制が整っている。  グループホームの支援員が、障害のある社員の体調不良等の変化を把握した場合には、事業所の支援員に状況報告を行うとともに、事業所では本人の体調面を踏まえた職場内での配慮を実施している。また、加齢に伴う体力低下等の課題が継続的に発生した場合においても、事業所とグループホームの支援者によるミーティングやケース会議を開催し、事業所では、身体的負担の少ない部署や作業への配置転換、労働時間の短縮といった配慮を実施するとともに、グループホームの支援員に対して、食事や運動などの健康管理や生活管理に関するサポートの依頼を行う。  こうした職場と生活面の一体的なサポートの実施により、障害のある社員個々の状況を踏まえた対応が効果的に実施され、職場での安定的な勤務や定着が図られている。また、事業所では、今後、障害のある社員の高齢化が一層進むことを想定し、ハッピーリタイアメントの対策についても具体的な検討を行っている。  法人では、事業所に隣接する工場で就労継続支援B型事業所を運営しており、障害のある社員の定年退職や加齢の影響により、万が一事業所を退職した場合に、本人の働きたいという希望を実現する上で、就労継続支援B型事業所の福祉サービス利用への移行を選択肢の一つに用意している。  両事業所とも、リネンサプライ事業を実施する点で共通しているが、事業所は雇用契約に基づく労働であるのに対し、就労継続支援B型事業所は、雇用契約を締結しない労働となる。障害のある社員にとって、長年従事してきたリネンの仕事を、体力的な負担の少ない条件や内容で継続できること、生活環境の変化が少ない中で生きがいとしての仕事に従事できる点が有用であることから、ハッピーリタイアメントの方策の一つに位置付けている。 40-43ページ ☆奨励賞 第一生命チャレンジド株式会社(東京都北区) スキルアップの機会を計画的に設定し、職域拡大や昇格の実施によりプレイングマネージャーを育成  ・キャリアアップのキーワード:1.目標管理制度の導入 2.職位の設定 3.スキルに応じた業務のステップアップ 4.障害のある社員主体による業務の実施  ・加齢問題対応のキーワード:A.職場復帰の取り組み B.支援機関との連携  ・事業所の概要   平成18年8月に第一生命保険株式会社の100%出資子会社として設立され、同年11月に特例子会社として認定された。4つの事業部門を設置し、東京都(北区、世田谷区、千代田区、江東区)と神奈川県(横浜市)にて、主として親会社から委託された業務を行っている。  ・従業員数150名  ・障害者雇用の経緯   事例対象者は、事業開始または拡大に伴う求人に対し就労支援機関を通して応募。障害者委託訓練を経て採用した。  ・業種及び主な事業内容   印刷業、書類発送(田端事業部)、清掃業(相娯園事業部)、喫茶業(喫茶事業部)、洗濯業(東戸塚事業部)  ・雇用障害者数101名 平均年齢32歳  ・従事作業   屋外清掃業務、書類発送業務、喫茶サービス及び給茶業務  ・事例で取り上げた障害者数12名(内訳:知的障害者10名、精神障害者2名) □取り組みの概要 ○改善策1  ・改善前の状況   障害のある社員のキャリアアップを推進するための社内制度を準備しておく必要があった。  ・改善内容   障害のある社員のレベルアップのツールとして、個人目標管理制度を導入。また、プレイングマネージャーの位置づけとして「トレーナー」の職位を新たに設定した。  ・改善後の効果   各社員が目標を意識しつつ業務に臨む基本姿勢が備わった。また、業務管理面に障害のある社員が参画することで、業務への主体的な意識が強化され、社内コミュニケーションの活性化につながった。 ○改善策2  ・改善前の状況   コミュニケーションへの苦手意識が強く、仕事の意欲やモチベーションが低い社員に対するキャリアアップを計画的に進める必要があった。  ・改善内容   本人の職場での成長度合いや内面的な変化を把握しつつ、約5年間にわたりステップアップの目標を段階的に設定し取り組んだ。  ・改善後の効果   目標の明確化とスモールステップによる目標達成の積み重ねが、本人の仕事への自信や積極性、主体性の向上につながった。また、トレーナーに昇進し、周囲から模範視されるようになり、職場全体の活性化やモチベーション向上につながった。 ○改善策3  ・改善前の状況   障害特性に配慮して、業務の単純化や作業の定型化・単純操作機器等の整備を推進したが、障害のある社員自らが考え工夫や挑戦する機会も減少したことで、意欲やモチベーション向上につながらないという問題を抱えていた。  ・改善内容   新規事業の導入に際して、障害のある社員に企画段階から検討メンバーに参画してもらい、意見等を反映した方法等を固め、新規事業を開始した。  ・改善後の効果   事業グループ内の一体感が形成され、各々が役割を認識して行動でき、目標設定とその達成に向けたチャレンジが当たり前のように定着するなど社員のモチベーション向上につながった。 ○改善策4  ・改善前の状況   屋外の清掃作業に従事する社員が、加齢に伴う体力の低下に加えて強度の腰痛により3ヶ月間の休職を余儀なくされたため、職場復帰や職場定着への対応を進める必要があった。  ・改善内容   就労支援センターに休職期間中の本人への支援を依頼。また、職場復帰後は、身体的負担を軽減する環境への配置、作業内容の選定、労働時間の短縮等の配慮を実施した。  ・改善後の効果   就労支援センターから本人への健康管理面の助言によって、体調を崩すことなく円滑な職場復帰につながった。また、復帰後も健康管理の意識を持ち、無理をしない姿勢が身に付いた。 □インタビュー企業の声  ○湯浅 善樹さん 代表取締役社長   キャリアアップとは人が育っていくことです。そして、会社の役割は従業員がキャリアップできる場を提供することです。弊社は、各々がプロ意識を持ちつつ責任とやりがいのある仕事に取り組める場作りを目指しております。   一人ひとりが周囲から認められ意欲やモチベーションが向上することで明るい職場を生み出し、それがさらなる意欲やモチベーションの向上につながる、という正のスパイラルを生む組織に成長していきたいと考えています。 □インタビュー従業員の声  ○二見さん 田端事業部トレーナー   6年間働いている中で、新しい仕事を任されたり、自分の意見が仕事に反映されたりしてやりがいを感じ、自分が会社の一員だと思えるようになりました。トレーナーになって、後輩から目標とされるような行動をしなければという意識が強くなった一方で、以前の職員だった時の経験を活かして、職員の視点で考えることが大切だと思うようになりました。   今は書類発送グループの中の1つのチームを任されていて、同じチームの仲間と一緒に働きやすい環境作りを意識して取り組んでいます。まずはチームでミーティングをしたり、自分から仲間に声をかけたり、お互いに話しやすい関係になるようにしています。   トレーナーになってからは、周囲から期待されプレッシャーに感じることも増えましたが、仲間に相談できるので心強いですし、一緒に仕事をするのが楽しいです。これからもリーダーになることを目標にして頑張りたいと思います。  ○佐藤さん 喫茶事業部トレーナー   お茶の出し下げや電話当番、カフェのレジ、商品の提供など、覚えることがたくさんあって大変ですが、職場の仲間と出会えて周りが支えてくれることが良かったと思います。何よりお客さんからの感謝の言葉が嬉しいです。職場の仲間との関係を大事にしていますが、トレーナーになって言うべきことはしっかり言わないといけないことに気をつけています。上司のように冷静に仕事ができることが目標で、バリスタを目指し勉強中です。資格が取れるようにチャレンジしたいと思います。  ○柴山さん(相娯園事業部)   相娯園で掃除の仕事や封筒折り、シュレッダーの作業をしています。掃除の仕事は片付けてきれいになるところにやりがいを感じます。腰を痛めているので転ばないように足元の段差に気をつけています。また、手洗い、うがいや1日7時間の睡眠を取るように心がけています。これからも体のことを考えながら今の任された仕事を続けていきたいと思います。 □改善策紹介 ○改善策1  ・キャリアアップのキーワード:1.目標管理制度の導入 2.職位の設定  ・改善ポイント:プレイングマネージャー育成に向けた社内キャリアアップの仕組み作り  事業所の開設から6年が経過。障害のある社員の育成については、3年前から従来の管理指導方式からボトムアップ方式へ切り替えて実践している。事業所におけるスキルアップの考え方としては、特定の業務に特化して業務経験を積み重ねていき現場に精通した社員を育成。その者に現場を任せていき、中心となって業務と管理の両方が行える「プレイングマネージャー」となるよう育成することである。障害のある社員が業務の管理面にも参画することによって、自分達が仕事を担っていることを意識できるようになり、モチベーションや意欲の向上につながるものと考えている。  事業所ではキャリアアップを推進するために親会社の人事評価制度を参考に個人目標管理を導入している。個人目標管理は社員のレベルアップといった人材育成のツールとして利用しており、昇給・昇格といった人事評価への反映を主たる目的としていない。全社員が年間の個人目標を策定し半年ごとに上長と面談を行いながら進捗状況などを確認し期末に評価を行う。評価結果は上長から本人に伝えて次年度の目標設定などを話し合う。各々の目標は社内で共有を図っており社員は目標を意識しながら業務に臨む基本姿勢が備わり競争心や向上心に加えて高いモチベーションが形成される。また、社内での上長等とのコミュニケーションが活性化されるというメリットもある。  これまで障害のある社員は一般社員のみの横並びの職位設定であったが、プレイングマネージャーにふさわしいキャリアアップとして「トレーナー」の職位を新たに設定した。  現在、トレーナーを務める社員は6名になる。  ・図表 障害のある社員の昇格ルート、障害のない社員の昇格ルート  ・参考 支援ツールP65「目標管理表」 ○改善策2  ・キャリアアップのキーワード:3.スキルに応じた業務のステップアップ  ・改善ポイント:トレーナーへのキャリアアップを実現  Fさんは勤続6年目の32歳。田端事業部の書類発送グループに所属。入社当初は体調を崩しやすく欠勤が多かった。また、社会人経験も少なく人とのコミュニケーションが得意でなかったこともあり、仕事の意欲も高まりにくい状況にあったが、事業所ではFさんの育成とキャリアアップを考えていく上で本人の成長度合いや変化を踏まえて要所にステップアップの取り組みを行った。  入社1年目は「働く体勢作り」を目標とし、生活リズムの改善、ミスを発生させない作業手順の見直し、研修やミーティング機会の充実に取り組んだ。職場内でコミュニケーションの機会を多く持ったことで、人との関わりに消極的だったFさんは次第に職場内に溶け込めるようになった。また、作業面ではミスの発見に力を発揮し点検は誰にも負けない正確さと速さが身に付いた。  入社2〜3年は「新規業務への挑戦とスキルアップ」を目標に親会社からの新規業務(手続書類業務発送)を3名の少数チームで対応した。今までの業務に比べて複雑な点検内容で納期も短くハードであったが、リーダーに率先して分からないことを聞き努力する姿が見られた。また、チームメンバーの社員との競争意識が本人にとっても良い刺激となり着実に対応力を身に付けていった。  入社3〜4年目は「新たな役割への挑戦(チームワーク)」を目標に取り組んだ。手続書類業務発送への対応も軌道に乗り、さらに業務量を拡大するため7名体制に増員。この頃のFさんは持ち前の穏やかな性格と他者の長所を見つけ相手に伝えられるような関係性ができてきたため、将来はマネージャー的な役割も担えるよう業務の幅を広げていくことにした。新たに在庫管理業務を担当させて親会社との連絡や調整が円滑に行えるように管理票等を作成した。また、後輩社員への業務指導にリーダーと一緒に携わるようになってからは、本人から研修講師に挑戦したいとの申し出があり、社会人マナーのテーマを数回に分けて実施。研修企画から運営までをFさんに担当させた。こうした経験により自分自身で判断し人と協力しながら進めることに自信を持ち始めていた。  5年目〜現在は「トレーナー昇格とプレイングマネージャー」を目標に取り組んでいる。周りからの信頼が厚いこと、業務遂行状況や対人面での良好さを評価し、昨年4月に社内第一号のトレーナーに昇格。マネージャー的役割に重点を置いて、活動の範囲をグループ内だけでなく他の事業部や親会社、社外等に広げていった。リーダーが行ってきた発送書類の最終的な内容点検を習得、後輩社員の育成計画の立案とフォローアップ、当事者の立場で働き感じたこと等について社内外で発表を行う等、事業所におけるキャリアアップモデルの一躍を担っている。 ○改善策3  ・キャリアアップのキーワード:4.障害のある社員主体による業務の実施  ・改善ポイント:障害のある社員が参画した新規業務の立ち上げ  事業所設立当初は、“誰でもできる業務"を念頭におき、「業務を分解し単純化する」「操作の簡単な機械を導入する」ことで知的障害や精神障害のある多くの社員が働ける会社を目指していた。業務のスキームやマニュアルの作成、イレギュラーやミスが生じた際の対処のほとんどをリーダーが対応し、障害のある社員はリーダーの指示のもと、スキーム通りに作業をするだけであり、各々が自ら考えたり工夫するといった機会が少なく業務への主体的な役割を促せなかった。また、誰であっても簡単に操作できる機械を導入したことで、難しいことに挑戦する機会も減り、障害のある社員のモチベーションが向上しにくい状態となっていた。事業所では主体的に動ける社員をどのように育てていくかをテーマとして自ら考えて工夫できる社員を育てるための職場作りに取り組んだ。  親会社日比谷本社内の集中応接室での給茶業務はこれまで専門業者に委託していたが、親会社豊洲本社ビル建設にあたり、障害者の職域拡大を図るため特例子会社の委託へ切り替えることになり、社内に喫茶事業部準備室を設立し約1年の準備期間を経て平成23年4月から喫茶・給茶業務を開始した。現在、グループは13名の体制で障害のある社員は9名おり、来客者への給茶業務と社員向けのカフェを運営している。  準備室設立の段階からスタッフとなる障害のある社員と共にカフェのコンセプトの立案から導入機器の選定、マナー研修に至るまでの運営準備をミーティングの中で意見を出し合い具体化していった。喫茶・給茶は「プロ意識の向上」を目標に、一般のカフェと競争できる質の高いサービスを提供することを目指し、喫茶業務のノウハウや給茶の礼儀・作法はプロの業者から実地研修という形で直接学んだ。  また、誰もが自分の意見を言えるグループ作りを意識してミーティングにも時間を割き、各々の課題や目標の確認とそれを踏まえた研修、業務スキーム作り等をグループ全員で意見を出し合いながら作り上げていった。  業務開始から1年半が経過した現在、障害のある社員1名がトレーナーに昇格。喫茶業務では、プロが使うセミオートのエスプレッソマシーンを操作して様々な種類の商品を素早く提供している。一方、給茶業務では、受付から来客を電話で受け付け、人数と部屋番号を確認しお茶を迅速に部屋まで運ぶ。リーダーが指示を出さずともグループとしての一体感が形成され各々が自分の役割を認識して何の混乱なく各業務にあたっている。グループのミーティングは日常化しており社員間のコミュニケーションや何か困った時に話し合う場として位置づいている。  社員それぞれが目標を立てており、その達成に向けたチャレンジが日々続いている。具体的な売上額を掲げる者、新商品の開発を目指す者、社員同士でエスプレッソの作り方を学ぶ者、バリスタ資格を目指して研鑽を欠かさない者などモチベーションの向上が障害のある社員の能力発揮と原動力に結びついている。 ○改善策4  ・加齢問題対応のキーワード:A.職改善策場復帰の取り組み B.支援機関との連携  ・改善ポイント:支援機関と連携し円滑な職場復帰と職場定着に取り組む  Sさんは48歳で勤続6年になる。地域の就労支援センターを通じて求人応募し採用となった。相娯園事業部に所属し屋外の清掃作業に従事している。入社当初から作業中に身体姿勢の不安定さが見られており、年を重ねるごとにその傾向が強くなり仕事中に木の根や階段につまずき転倒したことがあった。リーダーから転倒危険性の低い平坦な場所での作業を指示したが、人一倍仕事熱心だったSさんは特別扱いされることを嫌がり聞き入れないことが見られた。  Sさんの加齢に伴う体力の低下や姿勢の不安定さに加えて腰痛もひどくなり、昨年夏頃から3ヶ月間休職することになった。事業所では本人の円滑な職場復帰と職場定着を図るために休職中と職場復帰後の対応に取り組んだ。  休職期間中は地域の就労支援センターと連携して、@通院同行、A支援センターへの定期通所による労働習慣の維持、B就労支援センター作業療法士によるリハビリの実施に取り組んだ。職場復帰に際して産業医から「重い物の運搬や長時間の立ち仕事は控えたほうが良い」と診断されたため、本人の新たな仕事として、書類発送グループで使用する封筒の口を折る作業、事務所の廃棄書類のシュレッダー作業を1日の業務に組み込んだ。従来の清掃業務では、転倒事故を防止するために安全な場所での作業担当とし、力を必要とする掃き作業の時間を減らし、椅子拭きなどのあまり力の要らない作業の割合を高めた。そして、これまでリーダーが行っていた新しい職員に対して仕事の手順を教える役割をSさんに任せることにした。職場復帰により仕事内容が以前と変わることについて就労支援センター職員立ち会いのもとでSさんに説明、仕事で腰痛がひどくならないための対応ということで納得が得られた。  ・図表 Sさんの1日のスケジュール 44-47ページ ☆奨励賞 大東コーポレートサービス株式会社(東京都港区) リーダー等の管理的役割への登用や業務成果に応じた昇格・昇給を実施しモチベーションを向上  ・キャリアアップのキーワード:1.目標管理に基づく昇給・昇格制度の導入 2.職位の設定 3.能力に応じた業務への配置  ・事業所の概要   平成17年5月に大東建託株式会社の100%出資の子会社として設立。同年8月に特例子会社として認定される。平成20年5月には北九州事業所、平成22年12月には浦安事業所を開設。  ・従業員数:82名  ・障害者雇用の経緯   事業所設立時は知的障害者4名、身体障害者1名、障害者職業生活相談員3名の計8名でスタート。その後、北九州事業所・浦安事業所を展開し、徐々に社員を増やし現在55名の障害者を雇用している。  ・業種及び主な事業内容   本社では、親会社である大東建託株式会社及び関連会社から受託した事務業務を行っている。また、北九州事業所・浦安事業所では印刷業務を中心に行っている。あわせて400種類を超える業務を行っている。  ・雇用障害者数55名(平均年齢34歳)  ・従事作業   シュレッダーがけ、廃棄文書回収、名刺作製、メール便・ハガキ等の仕分け、データ入力作業、メール配送、制服整理、書類管理、郵便物回収、   エコキャップ・茶紙回収、ハンコ押し、領収書の梱包・発送、アパート向けのキーの封入・発送、書類のデータファイル化、お客様アンケート集計、   点検表とパソコンデータの照合作業、建物定期報告書の印刷・封入・発送、ネームプレート・ゴム印作製、ペーパークラフト作製など。  ・事例で取り上げた障害者数55名(内訳:肢体不自由者8名、聴覚障害者6名、内部障害者1名、知的障害者26名、精神障害者14名) □取り組みの概要 ○改善策1  ・改善前の状況   これまで、障害のある社員の業務実績を評価し、賃金や昇格に反映する制度を整備していなかったため、社員のモチベーション向上に結びつきにくい状況があった。  ・改善内容   目標管理制度を導入し、社員の能力に応じて実績を評価し賞与や昇給・昇格に反映するようにした。  ・改善後の効果   昇給・昇格という明確な形で各社員に評価を示すことで、仕事への積極性やモチベーションの向上が見られるようになった。 ○改善策2  ・改善前の状況   現場の業務に熟練した障害のある社員が、仕事ができない他の社員にストレスを募らせ、周囲の人や物にあたることが続き、職場内の人間関係や業務遂行にも影響が及ぶ状況にあった。  ・改善内容   障害のある社員のキャリアアップの制度としてリーダー制度を導入。本人の業務実績を評価して、サブリーダーに登用した。  ・改善後の効果   サブリーダーになり、ベテラン社員としての自覚と責任感の形成と、周囲への気配りやチームワークを意識できるようになった。本人の態度も改善し、周囲からも認められるようになり、社内の人間関係は改善した。 ○改善策3  ・改善前の状況   記憶力が優れている社員の特性を活かした業務を検討して、キャリアアップを推進する必要があった。  ・改善内容   名刺作製部門に配属し、親会社及び関連会社の名刺情報のデータ管理から名刺作製までの業務を教育訓練し任せることにした。  ・改善後の効果   本人が名刺作製の担当になったことで、名刺作製の大幅な時間短縮につながり、会社の生産性向上とロス率の減少に大きく貢献した。実績を評価しリーダーに昇進した。 ○改善策4  ・改善前の状況   服薬等の影響により業務時間中の集中力の維持に課題を抱えていた社員に対して、集中力を維持しやすい業務の検討が必要だった。  ・改善内容   様々な業務を経験させて、本人が集中力を維持しやすい職場環境や作業内容等の条件を確認した上で、名刺作製業務のレイアウト等業務に配置した。  ・改善後の効果   単純な反復作業ではなく自分で考えながら判断する業務であり、集中力を維持できるようになった。また、本人の実績を評価しサブリーダーに昇進した。 □インタビュー企業の声  ○村田 洋司さん 代表取締役社長   障害のある社員が、自身の能力を発揮し、業務のスキルを高め、キャリアアップしていくために、私たちは、障害のある社員を、企業の戦力として育成するということを大切にしています。   これまでSSTを活用したコミュニケーションのトレーニング、ジョブローテーション、目標管理制度やリーダー制度の導入など、様々な取り組みにより実践を積み重ねてきました。これらを各現場で機能させるために、障害のある社員を配置する部署には必ず障害者職業生活相談員を配置しております。多種多様な業務の管理を行いつつ障害のある社員に対して具体的な指導と目標管理の助言を行っています。 □インタビュー従業員の声  ○坂本 嘉明さん サービス2課リーダー   勤続5年5ヶ月になります。サービス2課で名刺を作っています。入力は慣れていましたが仕事の手順はやりながら覚えました。過去に大きなミスをした反省から仕事では気が緩まないように緊張感をもって取り組んでいます。   忙しいときこそ間違えないように心がけて入力のミス率はゼロです。今年4月からリーダーになりました。リーダーはみんなのお手本なのでプレッシャーにならないように今まで通りの仕事に徹しています。会社は環境に恵まれて仕事がしやすいです。これからの目標は名刺を間違えないようにしてこなす量も増やしていきたいです。また、データーベースの整理や親会社・関連会社の仕事も手がけていきたいです。  ○石山 裕一さん サービス1課サブリーダー   勤続7年です。仕事はシュレッダー作業や荷物の運搬作業などの力仕事が多いです。サブリーダーになってからは周りを意識してストレスを溜めないようにしています。仕事が忙しくても自分のペースが崩れないように心がけています。自分の目標は焦らず自分のペースで仕事をすること。また、怪我をしないこと、体力が落ちないように筋トレを毎日やっています。仕事と趣味を両立できるように長く働き続けていきたいと思います。  ○佐藤 明さん サービス2課サブリーダー   在勤4年目です。体調不良の心配はありますが、会社のサポートや配慮を得られますのでこの会社で仕事ができて良かったと思います。サブリーダーになってから特に変わったことは感じていませんが、経験と周囲への声かけなどチームワークを大切にしたいと思います。これからはチームをまとめられるような技量を身につけられるように力をつけていきたいと思います。 □改善策紹介 ○改善策1  ・キャリアアップのキーワード:1.目標管理に基づく昇給・昇格制度の導入  ・改善ポイント:職務遂行能力や業績に応じて賃金や昇格に反映させる目標管理制度の導入  事業所では障害のある社員を正社員で雇用しているが、これまで業務実績を評価し賃金に反映させる仕組みがなかったために、社員のモチベーションを維持することに事業所として難しさを感じていた。そこで、障害のある社員の能力に合わせて実績を評価し賞与や昇給・昇格に反映させる目標管理制度を導入した。  評価制度の基本モデルは親会社の制度を参考にしている。目標は2週間ごとに設定しており、日常業務や生活面に関することなどから障害のある社員が自ら考えて決めている。日々の業務は日報に記録し、その際に掲げた個人目標を達成できたかについて自己評価を行うとともに上司である障害者職業生活相談員が評価を行う。目標管理に係る査定は年2回実施することになるが、社員のモチベーションの向上や自信の強化につなげることを目的としているため、昇給もしくは現状維持のどちらかの判断になる。また、個別面談を通じて障害のある社員が現在の課題をしっかりと認識でき、新しい目標を設定することによって業務に対する意識付けを図っている。  知的障害のある社員の中には、自分に割り振られた作業工程を行うことに加え、周囲の仕事の状況を見ながら仕事を行うことができるようになった社員もいる。状況をみて、他の社員に作業を教えたり、手伝うなどの判断が自主的にできるようになるなど、仕事への積極性やモチベーションの具体的な変化が行動面に表れてきている。  身体障害のある社員においては、親会社のスキャン業務を自社の業務として内製化することに積極的に取り組み、親会社の経費節約に大きく貢献。その後、リーダー、障害者職業生活相談員兼係長を経て現在は課長代理を務め管理職として本社全体の運営にも関わっている。昇格という明確な形で会社における現在の評価と今後の期待を各社員に表すことによって、モチベーションを向上させ、業務に取り組む姿勢をより積極的なものに変える効果が得られた。 ○改善策2  ・キャリアアップのキーワード:2.職位の設定  ・改善ポイント:業務態度に課題の見られた社員をサブリーダーに任命し責任者としての自覚の形成につなげ課題を改善    事業所では、2年前からリーダー制を導入しており、障害のある社員のキャリアアップに位置付けている。なお、リーダーは係長相当、サブリーダーは主任相当の役割になる。  知的障害のある石山さんはサービス1課に所属している。現場業務の経験があり作業スキルが高かったことから、事業所は本人の仕事ぶりを高く評価していた。しかし、一方で、他の障害のある社員が自分と同じように仕事ができないことにイライラし、周囲の人や物にあたることが見られ、次第に職場内での人間関係がうまくいかなくなり、業務遂行上にも影響が出るようになった。  事業所は、石山さんに対して注意喚起や態度改善を指導しても、本人の自負心を損なうだけであり、課題の改善にはつながらないと考え、石山さんをサブリーダーに任命することにした。  サブリーダーの任命によって、石山さんに責任者としての立場を自覚してもらうことで業務態度の自発的な改善に結びつける事業所の期待があった。  実際に石山さんはサブリーダーという形で事業所に認められたことによって、責任者としての自覚と責任感が生まれ、モチベーションが向上した。さらに、以前見られていた業務態度の課題についても、周囲の気配りやチームワークを意識するといった態度の変化が見られるようになった。石山さんの態度が改善したことで周囲からの評価が高くなり社内の人間関係の改善に結びついた。 ○改善策3  ・キャリアアップのキーワード:3.能力に応じた業務への配置  ・改善ポイント:得意とする能力を勘案した専門的な職務への配置転換により能力の発揮とキャリアアップを実現  知的障害のある坂本さんはサービス2課で名刺作製業務に携わっている。坂本さんはパソコン作業での集中力が極めて高く、数回の作業を繰り返すことで正確に情報を記憶できる優れた能力を持っている。こうした優れた能力を業務面に活かして親会社214支店及び関連会社の名刺情報、約1万6千人分のデータ管理を任せることにした。その後、関連会社H社(127支店、社員数940人)に関してデータ管理だけでなく名刺作製までを全て任せることとなった。  データ管理業務では社員情報データの修正や変更を行う。坂本さんは個人データを一通り記憶しているため修正・変更の作業が正確かつ迅速である。また、間違えやすい漢字(崎とアなど)についても見落としがない。さらに、名刺レイアウトについても約80種類のレイアウトを記憶しているため、レイアウト配置は正確かつ迅速である。また、印刷物を見ただけでレイアウトの間違い(誤字・脱字等)が発見できる。  坂本さんが名刺作製の担当になったことによって、昨年度は約9万3千ケースの名刺を作製した。異動の多い3〜4月には1日930ケースを作製した日もあった。また、これまで2%程度発生していたロス率は坂本さんが担当してからはゼロとなった。  名刺作製にかかる時間の大幅な短縮と正確性が向上し、会社としての生産性の向上やロス率の減少などに大きく貢献した結果を評価し、坂本さんをサービス2課のリーダーに登用した。 ○改善策4  ・キャリアアップのキーワード:3.能力に応じた業務への配置  ・改善ポイント:業務遂行に課題のあった社員の適性に応じた業務への配置転換により能力の発揮とキャリアアップを実現  サービス2課に所属して名刺作製業務を行っている佐藤さんは重度の内部障害とてんかんがある。服薬の副作用の影響のためか業務時間中に眠くなり、業務への集中力を保つことが難しい。そのため、度々業務ミスを起こすことがあった。  佐藤さんの集中力の課題については、注意喚起を行うだけでは十分に解決できなかった。そこで、本人にとって集中力の維持しやすい業務を模索することにした。  様々な業務を実際に経験してもらった結果、佐藤さんには単純な作業を繰り返す業務よりも、自分で考えながら創意工夫を凝らし実施する業務の方が集中力を保ちやすいことを確認した。  そこで、本人の適性にあった名刺作製業務のレイアウトを担当してもらうことになった。また、パソコン用ソフトのインストールやデータ調整などにも携わってもらった。その結果、業務における集中力や責任感が高まり、さらには、これまで以上に体調管理に気を配るようになり出勤率も向上した。佐藤さんの勤務状況の改善と業務における取り組み実績を評価し、サービス2課のサブリーダーに登用した。 48-51ページ ☆奨励賞 富士ソフト企画株式会社(神奈川県鎌倉市) 社員の自発性に基づく社内研修等の研鑽機会の推進と親会社の休職者に対する職場復帰支援に取り組み業務拡大を実現  ・キャリアアップのキーワード:1.障害のある社員主体による業務の実施 2.個人目標の設定 3.社内研修の実施  ・事業所の概要   平成3年1月に富士ソフト株式会社の子会社として設立。平成12年9月に特例子会社として認定される。事業所は大船本社のほか、横浜市、東京都、佐世保市の3ヶ所に営業所を開所している。  ・従業員数:156名  ・障害者雇用の経緯   身体障害者、知的障害者、精神障害者など様々な障害を持った社員が就業できる企業を目指している。身体障害者と精神障害者はハローワークを通じた入社が多く、知的障害者は特別支援学校在学時に職場実習を行い、その後、障害者職業能力開発校でパソコンのスキルを身に付けて入社する場合が多い。  ・業種及び主な事業内容   ホームページ作成(デザイン・企画・保守・更新全般)、親会社庶務業務全般、名刺作製、データ入力、アンケート入力、サーバー管理、   印刷物全般の制作、DM発送、生命・損害保険代理業務、障害者委託訓練、障害者実習受け入れ(身体・知的・精神・発達)、研修・見学・講演依頼対応等  ・雇用障害者数133名(平均年齢27歳)  ・従事作業   親会社庶務業務全般、名刺作製、データ入力、アンケート入力、研修・社内見学・講演依頼対応等  ・事例で取り上げた障害者数133名(内訳:肢体不自由者28名、視覚障害者2名、聴覚障害者10名、内部障害者5名、知的障害者21名、精神障害者67名) □取り組みの概要 ○改善策1  ・改善前の状況   障害のある社員が個別に各業務を行っているため、事業所全体のモチベーションの向上や活性化を図る必要があった。  ・改善内容   障害のある各社員が、個人目標を設定するとともに、共有ファイルサーバーでの目標の公開や、ミーティングを開催しての各自の目標や改善の発表を行うようにした。  ・改善後の効果   自己目標を他の社員に宣言することで、自身が次第に目標を意識できるようになった。また、各々が仕事の改善工夫を考えるようになり、自主的に研修会を実施するなど、仕事ぶりや行動に変化が見られるようになっている。 ○改善策2  ・改善前の状況   パソコンを使用する頻度が多い現場業務であるが、経験や能力の差によって社員のパソコンスキルの程度にばらつきがあった。このため、社員がパソコン業務を含め幅広く業務に対応できる力を身につける必要があった。  ・改善内容   パソコンスキルの高い障害のある社員が、知的障害のある社員へのパソコン研修の講師を務めることとした。研修では講義学習と操作実施に加え、実際の業務を課題とする実践的な内容を盛り込んだ。  ・改善後の効果   スキルアップに対する受講者の意欲やモチベーションの向上につながっている。また、研修内容が実践的であるため業務面のスキルアップにもつながっている。 ○改善策3  ・改善前の状況   親会社ではメンタル疾患で休職する社員が増加しており、休職者の円滑な職場復帰を目指すための対策について親会社や産業医との検討を重ねていた。  ・改善内容   休職中の親会社の社員を職場復帰プログラムの一環として事業所で受け入れ、その社員が障害のある社員に対する研修の講師を務めるという取り組みを実施した。  ・改善後の効果   親会社の社員は、研修講師の経験を通じ、達成感を得て職場復帰への自信を持つことができるようになっている。また、障害のある社員においても親会社の社員から直接業務に役立つ知識を学ぶことができ、仕事のモチベーションの向上につながっている。 □インタビュー企業の声  ○長嶋 龍平さん 代表取締役社長   当社では、社員に多くの学ぶ場や機会を提供することを重要と考えています。   親会社は情報通信業であり、受注業務の内容は幅広く刻々と変化していくものになりますが、障害のある社員に対して基礎を学ばせ、身に付けさせる機会を多く作ることによって、様々な仕事に対応できる力を育成し能力を発揮させることにつながります。   そして、障害のある社員が職場内で自立できるように育てていく視点も重要です。   社員の自立性を育てることによって、社員の一員であるという自覚や仕事に対する活力、意欲につながっていきます。   自立した人材を育て親会社においても活躍できるようなキャリアアップを目指し今後も取り組んでいきたいと思います。 □インタビュー従業員の声  ○松山さん 大船本社   36歳、勤続12年目。名刺印刷、データ整理、他部署への手伝いを行っています。10年以上勤めることができて自分でもびっくりしています。仕事を通じて交友関係が広まり本音で話せる人も増えました。定年を過ぎても働き続けられるように何でもトライしたいと思います。  ○三上さん 秋葉原営業所   32歳、勤続3年目。英語の研修講師を担当しています。学生時代に北欧に留学していた経験から自分の知識を研修の場で教えています。   休憩時間等に研修準備を行いますが、負担に感じたことはありません。人に教えたいという意欲が高く、研修の内容や工夫を色々考えることが楽しみです。   研修の後に職場の仲間である受講者から感想などのフィードバックを受けられることにも意義があると思います。  ○堀越さん 秋葉原営業所   47歳、勤続6年目。会社では多くの研修機会や学ぶ時間をもらえています。英語の研修を仕事に役立てることよりも英語を学んだという実績が仕事への自信につながっています。親会社の社員や外部の人達と直接やり取りをする仕事をしていますが緊張せずに対応できています。  ○中島さん 秋葉原営業所   勤続3年目。たくさんの研修の機会が得られることが嬉しいです。英語の研修などは現在の仕事に直結することは少ないですが、親会社では外国からのお客様の対応もよくあるので、勉強を続けて活かせるようにしたいと思います。  ○黒瀬さん 大船本社   32歳、勤続11年目。親会社からのデータ入力の仕事に従事しています。研修ではHTMLやマクロを覚えることができ仕事にも役立ちました。現在、エクセルやワードを勉強しています。入力以外にもたくさんの仕事に携わることができ、長く続けられたことが良かったと思います。  ○永瀬さん 秋葉原営業所   33歳、勤続6年目。現在、個人情報保護士の勉強をしているので、個人情報保護に関する研修講師を担当しています。最初は会社から依頼されて義務的にスタートしたのですが、人に教える機会を得ることで視点の広がりや教える技術が身に付くと思いました。受講者からは疑問や質問が毎回出てくるので、質問の答えを考えて分かりやすく教えることに気をつけています。  ○大塚さん 秋葉原営業所   44歳、勤続4年。研修は週に1回で業務状況を見ながらの断片的な学び方になりますが、講師が経験した英語圏での習慣やエピソードなど実践的な話が聞けるので大変勉強になります。仕事上で英語を活かせる機会は少ないですが、自身がレベルアップに努力することは必要だと思います。 □改善策紹介 ○改善策1  ・キャリアアップのキーワード:1.障害のある社員改善策主体による業務の実施 2.個人目標の設定  ・改善ポイント:自主的な目標設定と共有化により職場改善や自立性を推進  秋葉原営業所は、障害のある社員が、主体的に全ての業務をこなしていく実施体制になっている。障害のある社員各々が親会社の受注業務を担当しているが、業務遂行上でのお互いのやり取りは少なく、各人が個別に業務をこなす体制が基本であることから、事業所全体のモチベーションの向上や活性化を図ることが必要だった。  事業所では、障害のある社員が仕事に楽しさを感じ、目標に向かって前向きに取り組み、その達成によって充実感が得られることができれば、本人にとって良い変化がもたらされるのではないかと考え、このため、個人目標の設定と、その共有により業務改善を推進する取り組みを行った。  目標の項目として、「年間目標」「今月の目標」「先月の結果」「先月の業務改善」の4点を設定し、各々が自主的に内容を考えて具体的に行動することを基本とした。また、掲げた目標を共有ファイルサーバーに公開して、各々の目標や改善事項を社員同士で確認できるようにすることで、個人目標を社内に宣言して取り組み意識を高められるようにした。  取り組み開始当初は、障害のある社員の態度・行動面に変化は見られず、目標に対する意識もさほど高まらない状況が続いた。そこで、社員間での共有意識を高めるために月1回の月例ミーティングで社員全員が目標や改善を発表し、きちんと記録を残すように取り組むことにした。その結果、具体的な言葉で社員に宣言することによって次第に各自で掲げた目標を意識できるようになり、各々の仕事ぶりや行動にも変化が見られるようになった。他者の業務改善の発表を聞いて自分の仕事に実際に取り入れたりすることに加え、質の高い仕事に取り組むことを目標に掲げる社員達が自主的に研修会を開催して、各々が持つ知識を他の社員に広げようと取り組むようにもなってきている。  このように、障害のある社員の仕事に対する意欲やモチベーションの向上に一定の効果をもたらしているこの取り組みを、事業所では継続し、活性化していくこととしている。 ○改善策2  ・キャリアアップのキーワード:3.社内研修の実施  ・改善ポイント:幅広い研修機会の設定により社員のキャリアアップと学習へのモチベーションを向上  事業所の業務内容としては、ダイレクトメールなどの仕分けや封入といった手作業もあるが、全般的にはデータ入力や名刺作成などパソコンを操作しながらこなしていく業務が多い。  障害のある社員の中には、パソコンスキルを持ち採用された者もいれば、パソコンスキルを持たずに採用された者もおり、社員によってパソコンスキルの程度にばらつきがある。また、知的障害のある社員では各々で能力に差があることからパソコンを使用する業務の設定に苦慮する状況にあった。  事業所では、障害のある社員がパソコン業務を含めた幅広い業務に対応できるようにするため、パソコンスキルの高い障害のある社員が講師となり知的障害のある社員にパソコン技能を教えるといった社内研修を約2年前から実施している。  研修は月単位でテーマを決定し、社内各部から受講者を募り、就業時間内の1〜2時間程度で毎日実施している。集団方式による研修スタイルになるが、理解の度合いは社員によって異なるためマンツーマン指導も随時行う。  研修はパソコン初級レベルからHTML言語、マクロ処理など、希望に応じた内容となり、講義学習と操作実技を実施する。また、親会社の新たな受注業務に対応する場合にこれを課題とするなど実践的な研修も実施している。パソコン技能の習得程度については、実際の業務であるデータ入力業務作業を効果指標として用いている。  こうした取り組みの推進は、障害のある社員の業務面のスキルアップとともに、学習することについての意欲やモチベーションの向上につながっている。  なお、研修テーマについては、パソコンスキルの学習だけでなく、例えば、海外の企業からの受注業務にも対応できるように英会話の研修を設定するなど、業務に必要となる内容も随時設定し実施している。 ○改善策3  ・キャリアアップのキーワード:3.社内研修の実施  ・改善ポイント:親会社の社員に対する職場復帰プログラムを社内で実施するとともに障害のある社員のスキルアップを推進  親会社では、プログラマーやシステムエンジニアなどの専門的な職業に従事している社員が多い。一方、うつ病などにより休職する社員の増加という課題を抱えている。  事業所では、うつ病などで休職している親会社の社員を対象とする独自の職場復帰プログラム(以下、「リワーク支援」という。)を立案し、親会社や産業医と内容検討を重ねながら、昨年度からリワーク支援を開始した。  リワーク支援は、産業医から職場復帰の許可が出た休職中の親会社の社員が、障害のある社員の研修講師を務めるという内容になる。研修期間は約2週間であり、事業所への定期出社と研修の準備、複数回の研修を実施する。  研修テーマは、講師を務める社員が得意とする内容を自由に設定するようにしている。例えば、パソコン操作に関すること、英会話に関すること、社会常識に関することなど様々である。研修準備に関しては、障害のある社員の理解力やレベルに合わせた内容の検討、写真や図表を加えた分かりやすい資料の作成などを自らが行う。また、研修当日は、障害のある社員に対して、分かりやすい説明や時間配分などを勘案しながら研修を実施する。こうした一連の経験を通じ、職場復帰を控えた親会社の社員は、達成感や職場復帰への自信を得ることになる。なお、これまで親会社の社員11人全員がリワーク支援を受けて職場復帰を果たした。  一方、障害のある社員にとってのリワーク支援は、親会社の社員を講師とした自らのスキルアップにつなげるための研修の場と位置付けられている。障害のある社員にとって、親会社の社員から詳しい仕事内容を聞くことは、グループ社員の一員としての自覚を持つことにつながる。また、専門的な技術や業務に役立つ知識を分かりやすく学ぶことができ、新たな知識の獲得や学習へのモチベーションの向上にもつながっている。  さらに、リワーク支援は事業所の受注業務の拡大においても大きな効果をもたらす。リワーク支援は親会社とのコンサルタント契約に基づいて実施されており、実施期間中は事業所と親会社との電話連絡や報告書のやり取りが頻繁になる等、双方の関係が密になる。  親会社との関係が密になることによって、相互の信頼関係や親会社による事業所への理解が深まり、ひいては、新たな業務受注といった業務拡大にもつながるものと事業所は考えている。  ・参考 支援ツールP66「リワークカリキュラム」  ・参考 支援ツールP66「リワークスケジュール表」 52-55ページ ☆奨励賞 株式会社旭化成アビリティ水島営業所(岡山県倉敷市) 再雇用制度を導入し、熟練社員の業務ノウハウを若年社員に継承するための人材育成を実施  ・加齢問題対応のキーワード:A.再雇用制度の導入 B.組織的な健康活動の推進 C.加齢現象の予防 D.適正配置の検討  ・事業所の概要   旭化成アビリティは旭化成株式会社が100%出資する特例子会社として昭和60年に設立し、水島営業所は昭和61年に開設した。  ・従業員数:57名  ・障害者雇用の経緯   2名ともハローワークを通じて雇用。再雇用制度の導入により60歳以降も雇用継続し、現場リーダーを担当している。(1名は、64歳で雇用契約満了のため退職)  ・業種及び主な事業内容   親会社の旭化成グループから以下の業務を受注して事業を行っている。   @パソコンによるPDF文書等の作成、デザイン等Aクリーニング、襖・障子の張替え、掛け軸表装、裁断、緑化B事務所・独身寮・宴会施設・グランドの清掃Cカットレタリング、国家資格取得の受験窓口、研修所管理等  ・雇用障害者数52名(平均年齢39歳)  ・従事作業   独身寮等の清掃業務、営繕業務  ・事例で取り上げた障害者数2名(内訳:肢体不自由者2名) □取り組みの概要 ○改善策1  ・改善前の状況   50歳以上の障害のある社員が多くなり、高齢化の対策が急務となった。とりわけ長年の経験により培われた仕事のノウハウや技術をどのように若年社員に伝達・継承を進めていくかが喫緊の課題となっていた。  ・改善内容   60歳を超えた障害のある社員の再雇用制度を導入。また、再雇用者の定年時の職責ポストを継続する仕組みを導入した。  ・改善後の効果   長年の経験による技術・技能、ノウハウを若年社員に伝達・継承していくための枠組みが組織的に構築できた。また、再雇用制度の導入によって社員の将来に対する不安を軽減でき、仕事に対するモチベーションの向上につながった。 ○改善策2  ・改善前の状況   障害のある社員が日頃から健康を意識し、自発的な健康増進活動に参加する取り組みが重要と考えていた。  ・改善内容   健康推進の担当者を選任し、安全健康推進活動を実施。   全社員が健康管理の目標を立て健康増進活動に取り組むことや、産業医による講演会の実施といった取り組みを行った。  ・改善後の効果   事業所の全社員が健康管理を意識することにつながり、具体的な健康増進活動の活性化に結びつくようになった。 ○改善策3  ・改善前の状況   事業所の業務内容には、屋外清掃や施設営繕、緑化作業等のように体力や身体的負担の伴う現場作業が多い。そのため、高年齢者が従事する場合における身体負担の軽減策を具体的に検討する必要があった。  ・改善内容   高年齢者が在籍する現業部門に若年・中堅の障害のある社員を計画的に配置。高年齢者の身体負担の軽減を図るための人員の適正化に取り組んだ。  ・改善後の効果   身体的負担の伴う作業を、若年・中堅に分担したことで高年齢者の負担が軽くなった。また、高年齢者が業務経験の少ない若年社員に対する業務指導に専念できるようになった。さらに、高年齢者と若年者が相互にフォローする関係が構築され良好な人間関係の形成につながった。 □インタビュー企業の声  ○新谷 修さん 水島営業所長   60歳を超える人の雇用が定着して来ました。このことを通じて、障害を持つ人達が安心して働ける職場として、雇用の拡大にもつながることを期待しています。   また、知的障害(特に重度障害)のある人の育成について、経験豊富な再雇用者等の貢献度が高いことが判明しましたが、これは今後も有効であると考え、一つの育成モデルとして確立していきたいと考えています。 □インタビュー従業員の声  ○和氣さん 営繕責任者   64歳。55歳に入社して勤続5年、雇用継続4年。前職は建築業だった経験から、採用当初は親会社の宿舎営繕の業務を行っていました。   現在は緑化営繕のリーダーの役割で仕事に従事しています。屋外の仕事は夏暑く冬は寒いので体調管理が大変ですが仕事は気にいっています。   知的障害のある社員には分かりやすい手順書を作ったところ理解が進みました。また、作業を繰り返していくに従い仕事を覚えていくことができました。   指導上で分からないことは企業内ジョブコーチに相談しますが、教えることに辛抱強さや我慢も大事だと思いました。   障害のある社員に一人前になって欲しいとの親心もあり、ゆくゆくは先輩になるから仕事をしっかり覚えるようにと働きかけて社員の自覚をも身に付けさせています。   彼らの成長する姿を楽しみにしています。  ○木村さん(清掃リーダー)   61歳。勤続8年、雇用継続2年。現役時代の担当業務を継続して清掃リーダーを担当しています。   年々体力が落ち作業上で階段の昇り降りに負担を感じていましたが、会社側で労務状況を把握してもらい掃除道具を各階に整備してもらったことで、階段使用の頻度を減らすことができ身体の負担が軽くなりました。   知的障害のある社員の指導については、企業内ジョブコーチから障害の知識や対応方法を教わり、障害者職業生活相談員資格認定講習会で障害特性や対応方法を学びました。   私は母親のような立場で教えるスタンスですが、甘やかさないように自立心を育てていきたいと思っています。 □改善策紹介 ○改善策1  ・加齢問題対応のキーワード:A.再雇用制度の導入  ・改善ポイント:社員の高年齢化に対応する再雇用制度の導入により若年社員を育成する社内体制を構築  事業所の設立から約20年が経過した平成17年4月の時点で、事業所における障害のある社員の3割強が50歳以上となっており、障害のある社員の高齢化への対策が急務となっていた。  一方、業務の多くは親会社からの受注業務であるが、その中には、長きにわたる業務経験や熟練度を必要とする仕事も少なくない。これらの仕事に携わっていた人は、平成17年当時で50歳代以上が多かったことから、仕事のノウハウ・技術をどのように若年社員に継承していくかが課題となった。特に、親会社が保有する福利施設の襖・障子等の張り替えや緑化管理等の営繕業務等の業務について、技術やノウハウの円滑な継承が喫緊の課題になっていた。  事業所では、平成18年4月から60歳を超えた社員の再雇用制度を導入した。また、親会社の再雇用制度では60歳でのポストオフが基本となるが、仕事のノウハウ、技術・技能の継承の問題の解決や若年の障害のある社員の育成の観点から、会社が必要と判断する場合は、定年時の職責ポストを継続して再雇用する仕組みを独自に導入した。なお、職責者に支給していた職責手当は、再雇用後も継続するようにしている。  こうした再雇用制度等の導入により、長年の経験による技術・技能、ノウハウを若年社員に伝達・継承していくための社内体制を組織的に構築できた。また、再雇用制度を導入することによって、障害のある社員の将来の雇用継続に対する不安を軽減し、モチベーションの向上につなげている。  ・再雇用制度の解説   継続雇用制度の一つで、定年年齢に達しても雇用関係を終了させることなく継続させる勤務延長制度とは異なり、定年年齢に達した場合、いったん雇用関係を終了させたうえで改めて雇用する制度。 ○改善策2  ・加齢問題対応のキーワード:B.組織的な健康活動の推進 C.加齢現象の予防  ・改善ポイント:60歳を超えても雇用の継続を目指すための健康推進活動の強化  事業所では、60歳以降も働き続けられる雇用継続制度を整備するだけではなく、障害のある社員が60歳に達する以前から働き続けるための健康を維持していることが重要と考え、平成20年から健康推進の責任者を選任して健康の増進活動を全社的に推進する「安全健康推進活動」を開始した。  本活動を事業所では、安全健康方針の重要事項に位置付けられ、社員一人一人が安全と健康に責任を持ち、全員参加でP(計画)D(実施)C(評価)A(改善)のサイクルを実施することで、健康レベルの全体的な底上げとその継続を目指している。  具体的な活動例は、ウォーキング等の軽運動の推奨、社員全員参加による健康管理目標の設定と達成に向けた具体的な取り組み、産業医による健康管理に関する講演会の実施など多岐にわたる。  本活動は事業所においてモデル的に開始されたものだが、事業所での1年間の活動の成果を踏まえて、各事業所にも健康推進活動を拡大する方針を本社が決め、平成21年には本社及び各事業所に「安全健康推進部」を発足させた。本社は、各事業所の活動内容を集約するとともに、各事業所の責任者が集まる会議を定期的に本社で開催して、活動内容に関する事業所間の情報交換・情報共有を密に行い、全国的な活動の活性化を目指している。なお、安全健康推進部の責任者は、各事業所の社員を任命して実施体制を整えている。  こうした活動によって、事業所の全社員が健康管理を意識することにつながり、具体的な健康増進活動の参加にも結びついている。 ○改善策3  ・加齢問題対応のキーワード:D.適正配置の検討  ・改善ポイント:高年齢者と若年者が混在するグループ構成により効果的な業務指導と技術・技能の継承を実現  事業所では、業務熟練者から後輩への仕事のノウハウの伝達・継承と高年齢者の負担軽減の両課題に対応するため、高年齢者が在籍する現業部門に若年・中堅社員を計画的に配置して、重量物の運搬や社用車の運転等、高年齢者にとって身体的負担の伴う作業を若年・中堅に分担することにより、高年齢者の身体負担の軽減を図る取り組みを進めている。  2年前に再雇用となり、清掃リ−ダ−を継続担当する木村さんのもとに20〜30歳代の障害のある社員4名が、3年の間に計画的に配置された。清掃グループでは社用車を運転して朝夕清掃要員を親会社の工場まで送迎していたが、木村さんにとって運転は身体的に負担があったことから、現在では若年の障害のある社員が運転を担当している。また、清掃用具の運搬においても同様に若年・中堅者が木村さんのカバ−役を務めている。  こうした取り組みによって、身体的な負担が軽くなった木村さんは、業務経験の少ない若年の障害のある社員に対する業務指導に専念できるようになった。特に重度の知的障害のある社員に対しては、作業の習得にも時間を要する中、OJTにより粘り強い指導を行っている。  一方、営繕責任者の和氣さんも再雇用4年になる。営繕グループにも20歳代の知的障害者3名が配置された。和氣さんは営繕業務に精通しているが、障害に加えて体力の低下から重量物の運搬が次第に困難となってきていた。襖・障子の張替えと納品や、イベント会場の設営、レンタルマットの職場への配送等のような重量物の運搬を、若年の障害のある社員が積極的に担当するようになり高年齢者と若年者の分業が図られている。  和氣さんは、重度の知的障害のある社員に対して書類裁断・緑化業務等多岐の業務についての指導を3年にわたり継続し、作業習得に一定の成果があがっている。  また、こうした取り組みによって、高年齢者に配慮した職場環境改善が事業所全体で考えられるようになった。例えば、親会社の4階建て独身寮には掃除用具入れが1階にしか設置されておらず、用具の出し入れで頻繁に階段の上り下りを行う必要があったが、各階に用具入れを設置するように改善し、身体負担の軽減を図るようにした。こうしたことは、身体負担軽減だけではなく、仕事の効率性においても効果の高い改善となった。  さらに、高年齢者と若年者による作業グループの構成は、お互いにいたわりの気持ちを育てる点でも効果を発揮している。高年齢者を知的障害のある社員の指導者に位置付けることによって、豊富な人生経験や子育て経験を活かした教え方につながり、また、根気強さ、度量の広さ、真剣に彼らの将来を願う親心などが、知的障害のある社員の育成にも効果をもたらし、良好な職場関係の形成につながっている。 56-59ページ ☆奨励賞 サンアクアTOTO株式会社(福岡県北九州市) 障害のある社員が一丸となって加齢化への対応等の職場改善に取り組み、生産性の向上や社内活性化を実現  ・キャリアアップのキーワード:1.個人目標設定 2.目標の共有 3.業務改善  ・加齢問題対応のキーワード:A.社内支援体制 B.加齢現象の把握方法 C.環境の改善  ・事業所の概要   平成5年2月に福岡県、北九州市、TOTO株式会社の共同出資による第三セクター方式の重度障害者雇用企業として設立。平成6年7月から創業を開始した。  ・従業員数:81名  ・障害者雇用の経緯   主たる採用経路としては、障害者職業能力開発校から職場実習の受入れとその後の社員採用試験の実施により採用している。  ・業種及び主な事業内容   親会社(TOTO株式会社)の業務受注として組立作業(水栓金具、排水配管等)、印刷物の版下制作を実施。  ・雇用障害者数44名(平均年齢40歳代)  ・従事作業   水栓金具及び給排水配管等の製品・部品の加工・組立、印刷物の版下制作。  ・事例で取り上げた障害者数44名(内訳:肢体不自由者24名、聴覚障害者8名、内部障害者2名、知的障害者7名、精神障害者3名) □取り組みの概要 ○改善策1  ・改善前の状況   生産品質や納期について、親会社の要求に確実に応ていくことを、障害のある社員に意識してもらうことが必要であった。  ・改善内容   親会社が適用しているキャリアアップの仕組みを事業所に導入。また、障害のある社員のキャリアアップの状況を「スキルマップ」にまとめ「見える化」し、掲示した。  ・改善後の効果   障害のある社員がスキルアップを自覚するとともに、業務に対する目標を意識することにより、生産性向上に結びついた。 ○改善策2  ・改善前の状況   障害のある社員自らが、働きやすい職場作りを考えることで、事業所の運営に主体的に関わる意識につなげたいと考えていた。  ・改善内容   障害のある社員が職場改善を提案する「改善発表会」を継続的に実施した。  ・改善後の効果   障害のある社員の視点による職場環境の改善や業務効率の工夫改善に結びつき、職場全体の活性化につながっている。 ○改善策3  ・改善前の状況   下肢に障害のある社員による単独転倒等の事故が発生し、安全対策の検討が必要になった。  ・改善内容   社員の中から「ライフワークマネージャー」を任命し、障害のある社員との相談や安全対策を実施する体制を整備した。また、障害のある社員の「下肢障がい者安全確認履歴(カルテ)」を作成した。  ・改善後の効果   障害のある社員の健康状態の把握や加齢に伴う体力低下の早期発見につながり、事前に安全対策を円滑に進められるようになった。 □インタビュー企業の声  ○西村 和芳さん 代表取締役社長   弊社では、「お金を掛けずに知恵をつかう」「手元化(コンパクト)」「改善の継続」の3点を事業所方針に掲げて社員に認識を図っています。人は誰でも得意・不得意があるので、障害者だからと言って過敏にならないように自然体で社員に接しています。また、現場や当事者の意見を吸い上げて全社員が協力しながら具体的改善につなげる活動が浸透しています。 □インタビュー従業員の声  ○柴田さん   勤続13年目になります。DTPソフトを使ってTOTO製品の取扱説明書、施工説明書などを作成する仕事をしています。会社ではライフワークマネージャーのサポートが得られ、また、「カルテ」を通じて自分の障害を知ってもらえていることが、会社に配慮して欲しいことを意見として挙げやすいという点で安心感につながっています。   今の職場では特にストレスはありません。障害のある人が働ける会社がもっと広がることを願い、私自身も積極的に社会に発信していきたいと思います。 □改善策紹介 ○改善策1  ・キャリアアップのキーワード:1.個人目標設定 2.目標の共有  ・改善ポイント:スキルアップの姿をスキルマップで見える化し、キャリアップへの意識化とモチベーションの向上を実現  事業所は、親会社から給排水製品等の組立・加工業務を受注している。親会社の製品を手がけていることから、製造品質や納期等の親会社の要求についても、事業所として確実に応えていく必要があった。  このため、製造部門における障害のある社員のキャリアアップは、生産性や品質の向上を目指す上で特に重要と考え、親会社が適用しているキャリアアップの仕組みを導入している。  事業所では、各製造部門に従事する障害のある社員の経験やスキル、目標達成度などを定期的に評価して、「多能工」、「スペシャリスト」、「指導員」といった製造業務のキャリアアップに段階的につながるように取り組んでいる。また、障害のある社員のスキルアップや目標達成の状況を視覚的に分かりやすく表示(見える化)するため、「スキルマップ」を作成して工場内に掲示している。  スキルマップを掲示し社内で共有することは、障害のある社員のキャリアアップの自覚と業務に対する目標達成の意識、モチベーションの向上につながっており、さらには、生産効率や品質の向上にも結びついている。  ・写真説明 工場内に掲示されているスキルマップ ○改善策2  ・キャリアアップのキーワード:3.業務改善  ・改善ポイント:障害のある社員の主体的な職場改善への取り組みにより働きやすい職場作りや社内活性化を推進  事業所には、障害のある社員が、事業所の運営にも主体的に関わっていくという自覚のもと、自らが働きやすい職場作りを考え、職場改善の取り組みにも参加していくことにより、障害のある社員のキャリアアップや事業所の活性化が図られると考えている。特に、聴覚障害者や車椅子使用者など、様々な障害のある社員が多く働く職場であることから、当事者の視点での工夫・改善を行うことが、より良い職場作りの実現につながる効果的な方法であると考えている。  このため、障害のある社員が主体的に運営に携わる意識を持てるように、障害のある社員が具体的な職場改善を事業所に提案し、実行する仕組みとして「改善発表会」を7年前から実施している。  具体的には障害のある社員が、提案用紙に日常の困りごとと改善内容を記載し提出する。事業所は改善内容の中から適当な改善策を採用し、具体的に改善の実行につなげていく。なお、採用した改善内容は、改善発表会において全社員の出席のもとで紹介され、優秀な改善策には表彰が行なわれる。  改善例としては、生産能率や出来高、不良品等のグラフ化、コンテナを積み上げる高さの目安線の設置(車椅子使用者への配慮)、ライン業務の担当者名と目標スローガンの明示など、工場内の見える化の推進が挙げられる。また、身体障害者の職場環境の改善では、事業所の社員全員がアイディアを出しながら取り組んでいる。なお、作業机の高さの調節や手すりの設置といったものは、全て社内にある材料や工具を使い社員が手作りしている。  改善発表会の取り組みを通じて挙がってくる障害のある社員の困りごとは実に様々であり、職場内の身近な仕事の効率化などが多い。これらは、必ずしも障害のある社員全てに共通しているものとは言えないが、障害のある社員個々の不都合さを少しでも軽減できれば仕事に対する意欲や職場の活性化につながり、ひいては生産性の向上をもたらし、会社の利益につながるものと考えている。 ○改善策3  ・加齢問題対応のキーワード:A.社内支援体制改善策 B.加齢現象の把握方法 C.環境の改善  ・改善ポイント:ライフワークマネージャーによる社員サポート体制の構築とカルテ運用による円滑な対策の実施  事業所では、就業時間中に本人の過失に基づく単独転倒等による労災が過去5年間に3件発生している。事故原因は各人の筋力低下等の体の衰えだった(足があがらない、歩行が不安定でつまずきやすい等)。こうした状況は、障害のある社員の加齢が今後進むことにより、一層増加する問題になると考えられることから、事業所においても社内での安全対策を検討する必要があった。  このため事業所では、障害のある社員の加齢の影響を継続的に把握した上で、対応を行うためのサポート体制を社内で構築している。具体的には、事業所の社員からライフワークマネージャー2名(男性女性を各1名)を選任し、ライフワークマネージャーが下肢に障害のある社員を中心に、日頃から健康管理面や安全面の観察を行った上で社員面談を定期的に実施し、障害のある社員の個別の状況を把握するようにしている。  また、年に1回、直属の上司の同席のもとで障害のある社員との面談を実施し、ライフワークマネージャーが安全確認や事故防止策の状況を伝えて改善等に対応している。  なお、事業所には障害者職業生活相談員も配置されているが、障害者職業生活相談員は障害のある社員の現場業務をサポートし、ライフワークマネージャーは健康面や安全管理の対応を行うなど、それぞれの役割は分担されている。  一方、ライフワークマネージャーが障害のある社員の安全対策を検討するためには、社員の個々の状況を記録し、身体的な状況の変化などを経過として蓄積しておく必要があった。そこで、事業所では「下肢障がい者安全確認履歴(以下、「カルテ」という。)を作成し、定期的に面談と社内施設使用状況の立会い確認などで把握した内容をカルテに記録している。  障害のある社員へのカルテのフィードバックに当たっては、上司から言いにくいことをどのように伝えるかなどをはじめ、ライフワークマネージャーとしては障害に対してどこまで踏み込んでよいか躊躇し遠慮してしまいがちになる。しかし、社内での安全対策を推進する上では個人の障害に踏み込んだ相談も大事であることを障害のある社員に理解してもらいつつ、ライフワークマネージャーは本人に必要なことをしっかり伝えるように心がけている。  こうしたカルテの作成と管理を行うことで、事業所にとっては、障害のある社員の加齢状況などの経過を確認することができ、安全配慮を個々の社員ごとに実施できるようになった。また、障害のある社員にとっては、自らの加齢による身体的変化をカルテの継続的な記録から客観的に確認できることで加齢による影響に気づくことができるようになった。  柴田さんは41歳になり普段は車椅子を使用しているが、筋ジストロフィーの障害の進行により、就業時間内での疲労感の増大とトイレ使用時に立ち上がる際の姿勢が不安定になるという課題をライフワークマネージャーが確認した。柴田さんの疲労感の増大については、デスクワークで座った状態の姿勢を長時間続けることが影響していたため、職場内で対策を検討し、職場の社員が本人の足置きを自作してデスク作業時に使うようにしたところ、疲労の軽減に結びついた。また、トイレの使用については、カルテを活用して転倒事故の危険性と防止対策を本人とライフワークマネージャーが相談し、その結果、職場内の女性社員の中から介助者を選任の上、必要がある時は本人から介助者に声をかけてトイレへの付き添いと必要な介助を行うようにした。  なお、カルテは、現在のところ、下肢障害のある社員に適用しているが、障害のある各社員の加齢に伴い、様々な職場で問題が出現することが想定される中、将来的には障害のある社員全員に対してカルテを作成することとしている。  ・参考 支援ツールP71「下肢障がい者安全確認履歴」  ・写真説明 ライフワークマネージャーを担当する古賀さん(右)と西岡さん(左) 60-71ページ □職場改善のために事業所が作成した資料、支援ツール  キャリアアップや加齢に伴う問題への対応において用いた資料や支援ツール等を、取材先事業所のご了解のもと、当機構において一部修正を加えて掲載しています。  障害者のキャリアアップ、加齢に伴う問題への対応に対して役立つ実践的な資料ですので、是非、参考にしてください。 ○株式会社島屋横浜店  @パン袋検定の結果(本文はP10)  A就業実習スケジュール(本文はP10) ○サノフィ株式会社  BSSTテーマ例・実施上の工夫(本文はP14)  C行動予定表(本文はP15) ○株式会社富士電機フロンティア川崎事業所  Dフォークリフト実技チェックリスト(本文はP22)  E行動目標達成に向けた歩み(本文はP22) ○日総ぴゅあ株式会社  Fマイスター評価基準項目(本文はP27) ○社会福祉法人清風会みつや工場  G作業評価表(本文はP38) ○第一生命チャレンジド株式会社  H目標管理表[一部抜粋](本文はP42) ○富士ソフト企画株式会社  Iリワークカリキュラム(本文はP51)  Jリワークスケジュール表(本文はP51) ○株式会社マルイキットセンター  K企業就業におけるハッピーリタイアメントに向けてのフロー図(本文はP19) ○株式会社マルイキットセンター  L支援ケアメモ(本文はP19)  支援スタッフが障害のある社員の職場での様子から気付いた変化などを「支援ケアメモ」に日々入力していく(上段の表)。記録例としては、昼食の弁当を残し体調が悪そうだったので声かけした、ミーティングの時間中に終始考え込んでいる様子が見られた、作業中に手を休めることが頻繁になった等。  支援ケアメモは時系列的に記録・蓄積していくが、表計算ソフトの並び替え機能を使うことで社員毎に情報を整理し、社内での対応検討やご家族との相談に役立てている(下段の表)。 ○ソニー・太陽株式会社  M加齢問題対応フロー図(本文はP34) ○ソニー・太陽株式会社  Nほっとプロジェクト各種資料(本文はP34) ○サンアクアTOTO株式会社  O下肢障がい者安全確認履歴(本文はP59) 72ページ □その他の応募事業所 平成24年度の障害者雇用職場改善好事例募集において、障害者のキャリアアップや加齢に伴う問題への対応をテーマに募集したところ、全国101事業所からご応募がありました。入賞事業所以外の応募事業所は以下のとおりです。 1.株式会社アレフ(北海道) 2.株式会社ほくやく(北海道) 3.株式会社ほくでんアソシエ(北海道) 4.東洋建物管理株式会社(青森) 5.社会福祉法人青森県コロニー協会 セルプステーション青森(青森) 6.株式会社ジャスター(岩手) 7.アイリスオーヤマ株式会社大河原工場(宮城) 8.有限会社佐々木化工所(秋田) 9.医療法人宏友会介護老人保健施設うらら(山形) 10.テクノメタル株式会社(福島) 11.株式会社アキタつくば工場(茨城) 12.NTK石岡ワークス株式会社(茨城) 13.学校法人東光寺幼稚園(栃木) 14.正田醤油株式会社(群馬) 15.ブリジストンケミテック株式会社上尾製造所(埼玉) 16.三菱マテリアル株式会社人財開発センター(埼玉) 17.ソフトバンク・フレームワークス株式会社(千葉) 18.株式会社舞浜コーポレーション(千葉) 19.株式会社ぐるなびサポートアソシエ(千葉) 20.ALSOKビジネスサポート株式会社(千葉) 21.東京海上日動システムズ株式会社(東京) 22.リゾートトラスト株式会社東京本社(東京) 23.グリーンホスピタリティフードサービス株式会社(東京) 24.株式会社日立ソリューションズ(東京) 25.アクサ生命保険株式会社(東京) 26.TOHOシネマズ株式会社(東京) 27.一建設株式会社(東京) 28.株式会社博報堂DYアイ・オー(東京) 29.NECフレンドリースタフ株式会社(東京) 30.大和ライフプラス株式会社(東京) 31.ANA・ウィング・フェローズ株式会社(東京) 32.株式会社ビジネスパートナーズ(東京) 33.株式会社ベネッセビジネスメイト(東京) 34.株式会社アイエスエフネットハーモニー(東京) 35.クオールアシスト株式会社(東京) 36.株式会社ワールドビジネスサポート東京店(東京) 37.株式会社トランスコスモス・アシスト(東京) 38.株式会社シンフォニア東武押上事業所(東京) 39.NTTクラルティ株式会社(東京) 40.財団法人横浜市知的障害者育成会(神奈川) 41.株式会社リンクライン(神奈川) 42.株式会社スタッフサービス・ビジネスサポート(神奈川) 43.新潟ワコール縫製株式会社(新潟) 44.協伸静塗株式会社(富山) 45.社会医療法人財団松原愛育会松原病院(石川) 46.社会福祉法人福泉会介護老人保健施設九頭竜長生苑(福井) 47.洋信産業株式会社(山梨) 48.株式会社深山(長野) 49.長野リネンサプライ株式会社(長野) 50.京丸園株式会社(静岡) 51.株式会社ヤマハアイワークス(静岡) 52.日東電工ひまわり株式会社(愛知) 53.株式会社ゲオビジネスサポート愛知 54.新旭電子工業株式会社(滋賀) 55.株式会社京のちから(京都) 56.株式会社かね松老舗(京都) 57.タツタ電線株式会社(大阪) 58.一般財団法人箕面市障害者事業団(大阪) 59.フジアルテスタッフサポートセンター株式会社(大阪) 60.シャープ特選工業株式会社(大阪) 61.株式会社ニッセイ・ニュークリエーション(大阪) 62.SMBCグリーンサービス株式会社(大阪) 63.三洋ハートエコロジー株式会社大阪事業所(大阪) 64.阪神友愛食品株式会社(兵庫) 65.日本パーソネルセンター株式会社(兵庫) 66.社会福祉法人仁南会(奈良) 67.株式会社松源(和歌山) 68.社会福祉法人スミや和佐福祉工場(和歌山) 69.大山乳業農業協同組合(鳥取) 70.千代三洋工業株式会社(鳥取) 71.株式会社日立金属安来製作所(島根) 72.株式会社グロップサンセリテ(岡山) 73.JFEアップル西日本株式会社(岡山) 74.株式会社フレスタ(広島) 75.株式会社ハートランドひろしま(広島) 76.特別養護老人ホーム水明荘(徳島) 77.株式会社サニーサイド(香川) 78.あなぶきパートナー株式会社(香川) 79.株式会社フジファミリーフーズ(愛媛) 80.株式会社サニーマート(高知) 81.株式会社障がい者つくし更生会(福岡) 82.タカタ九州株式会社(佐賀) 83.長崎基準寝具有限会社(長崎) 84.有限会社大和プロパン(熊本) 85.オムロン太陽株式会社(大分) 86.株式会社ホンダロック(宮崎) 87.株式会社日の丸交通(鹿児島) 88.有限会社ニューラッキーランドリー(沖縄) 73ページ □平成24年度障害者雇用職場改善好事例応募状況 1.都道府県別応募数 北海道 3 青森 2 岩手 1 宮城 1 秋田 1 山形 1 福島 1 茨城 2 栃木 1 群馬 1 埼玉 3 千葉 4 東京 22 神奈川 7 新潟 1 富山 1 石川 1 福井 1 山梨 1 長野 2 岐阜 0 静岡 2 愛知 2 三重 0 滋賀 1 京都 2 大阪 8 兵庫 2 奈良 1 和歌山 2 鳥取 2 島根 1 岡山 3 広島 3 山口 0 徳島 1 香川 2 愛媛 1 高知 1 福岡 2 佐賀 1 長崎 1 熊本 1 大分 2 宮崎 1 鹿児島 1 沖縄 1 合計 101 2.事業所規模別応募数 ・1,001人以上 13 ・501人以上1,000人以下 1 ・301人以上500人以下 9 ・101人以上300人以下 18 ・56人以上100人以下 20 ・55人以下 40 合計101 3.産業別応募数 ・農業、林業 2 ・製造業 27 ・食料品製造業 3 ・繊維工業 2 ・パルプ・紙・紙加工品製造業 1 ・印刷・同関連業 2 ・化学工業 1 ・非鉄金属製品製造業 3 ・金属製品製造業 2 ・業務用機械器具製造業 1 ・電子部品・デバイス・電子回路製造業 4 ・電気機械器具製造業 3 ・輸送用機械器具製造業 5 ・電気・ガス・熱供給・水道業 1 ・情報通信業 8 ・通信業 0 ・映像・音声・文字情報制作業 8 ・運輸業、郵便業 1 ・道路貨物運送業 1 ・郵便業 0 ・卸売業、小売業 8 ・各種商品卸売業 0 ・繊維・衣服等卸売業 0 ・その他の卸売業 1 ・各種商品小売業 4 ・その他の小売業 3 ・金融業、保険業 1 ・不動産業・物品賃貸業 1 ・宿泊業、飲食サービス業 5 ・生活関連サービス業、娯楽業 7 ・教育、学習支援業 1 ・医療・福祉 9 ・医療業 3 ・保険衛生 3 ・社会保険・社会福祉・介護事業 3 ・複合サービス業 0 ・サービス業(他に分類されないもの) 28 ・機械等修理業 1 ・その他の事業サービス業 27 ・分類不能の産業 2 合計 101 4.部門別応募数 ・一般企業A(301人以上) 23 ・一般企業B(300人以下) 35 ・特例子会社 43 合計 101 74-75ページ □平成24年度障害者雇用職場改善好事例応募要項 1.趣旨 障害者雇用において雇用管理、雇用環境等を改善・工夫し、様々な取組を行っている事業所の中から、他の事業所のモデルとなる好事例を募集し、これを広く一般に周知することにより、事業所における障害者の雇用促進と職域の拡大及び職場定着の促進を図るとともに、障害者雇用に関する理解の向上に資することを目的とします。 2.募集テーマ  平成23年障害者雇用状況の集計結果によると、民間企業における雇用障害者数は36万6,199人と過去最高を更新しており、雇用される障害者の数は着実に増加しています。  その一方、平成20年度の障害者雇用実態調査結果によると、身体障害者の3割強が職場において改善が必要な事項として「能力に応じた評価、昇進・昇格」と回答し、また知的障害者の1割が職場への要望事項として「他の仕事もしてみたい」と回答しており、新規雇用の次の段階の課題として、雇用を継続していく中で障害者のキャリアアップを図っていくことが求められているところです。  また、平成23年度に当機構が実施した特例子会社に対するアンケート調査によると、約3割の特例子会社が雇用管理に関する課題として「加齢に伴う変化」を上げていますが、これは特例子会社に限らず、長期に雇用されている障害者が増加するに伴い、多くの企業が直面する課題と考えられます。  このように今後は、雇用する障害者の数を増加させることだけでなく、障害者が真に能力を発揮して、長期にわたり職場で活躍するために、キャリアアップや加齢に伴う問題へ対応していくことが、企業にとって避けては通れない課題になっていると言えます。  そこで、平成24年度においては、継続(長期)雇用のために、障害者のキャリアアップ、加齢に伴う問題に取り組んだ、以下に掲げる職場改善好事例を募集します。  (1)能力開発、職務創出、社内体制整備に取り組むことでキャリアアップを図った職場改善好事例  例:@研修やOJTの実施、自主研修の勧奨等により、障害者の能力開発や資格の取得を促進し、職域を拡大しキャリアアップを図った事例  A目標管理制度により職務遂行能力や業績に応じて賃金に反映させる、正社員に登用する、管理職や職場のリーダーに登用する等により、キャリアアップを図った事例  B障害特性を勘案し、より専門的な職務を担当させることによりキャリアアップを図った事例  (2)加齢に伴う問題に対応するために、雇用管理上の工夫、社内体制整備に取り組んだ職場改善好事例  例:@加齢による身体機能や認知機能の低下を防止するための取組みや、配置転換、職務の創出により継続勤務を可能とした事例  A加齢による身体機能の低下や、疾病等への対応のために、短時間勤務、休暇取得への配慮、勤務日数の調整、健康管理への配慮等を行い、継続勤務を可能とした事例  B加齢による身体機能や認知機能の低下があっても対応しやすいよう、作業環境や作業施設の整備、支援機器の活用、作業内容や作業方法の変更等を行った事例(作業環境等の整備等に当たって各種助成金を活用した事例を含む)  C加齢による身体機能や認知機能の低下に対応するため、作業や勤務時間を分割して担当する等、ワークシェアリングやペア就労などにより働きやすい職場環境を整えている事例  Dキャリアアップや加齢に伴う問題について相談しやすいように相談窓口や担当者を決めたり、働きやすい職場をつくるための取組み(改善活動、提案活動など)を行っている事例  (3)支援制度の活用や支援機関との連携により、障害者のキャリアアップや加齢化に伴う問題に取り組んだ事例  例:@地域障害者職業センターのジョブコーチ支援により、職域の拡大、職場におけるマナーやルールの習得、機能低下を防止するための取組み等を行い、キャリアアップを図った事例や、加齢に伴う問題への対応を行った事例  A加齢に伴う問題への対応のために、障害者就業・生活支援センター等の生活支援機関と連携し、生活面のサポートの充実、家族の高齢化への対応等に取り組んだ事例 3.主催 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 4.後援 厚生労働省 5.応募締切日 平成24年6月1日(金)(必着) 6.応募資格  (1)障害者を雇用している企業又は事業所  (2)応募時点において、労働関係法令に関し重大な違反がないこと及びその他の法令上又は社会通念上、表彰するにふさわしくないと判断される問題を起こしていないこと。  ※応募事例の対象となる障害者の障害種別は問わないが、身体障害者手帳、療育手帳、精神障害者保健福祉手帳、その他「診断書」等により雇用対策上の障害者であることが確認できる障害者。 7.応募方法  (1)指定の応募用紙を使用し、応募用紙のみで改善の内容が簡潔にわかるようにご記入ください。また、応募用紙の各項目は変更しないでください。なお、参考資料として、図、イラスト、写真等をつけても構いません(添付資料はA4サイズにおさめてください)。  (2)応募する事例については、上記2の募集テーマ(1)〜(3)の全部又は一部に該当するものとします。  (3)応募用紙は、表紙に記載している「提出先・お問い合わせ先」のほか、厚生労働省、都道府県労働局、ハローワーク、地域障害者職業センター、高齢・障害者雇用支援センター、障害者就業・生活支援センター等で配布します。また、当機構のホームページからダウンロードした用紙も使用できます。  (4)応募用紙は、表紙に記載している「提出先・お問い合わせ先」に郵送またはメールにて提出してください。 8.賞 優秀な事例には、最優秀賞(厚生労働大臣賞)、優秀賞(独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構理事長賞)、奨励賞(独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構理事長賞)を贈ります。なお、優秀賞と奨励賞については、部門(一般部門、特例子会社部門)を設け、部門ごとに賞を贈ります。 9.審査 当機構に審査員会を設置し、審査します。なお、審査において同程度の評価を受けた応募事例があった場合は、過去の受賞歴のない事業所を優先的に選定します。 10.表彰 上記の最優秀賞、優秀賞の入賞事業所の表彰式は、平成24年9月に東京で開催する予定です。 11.その他  (1)応募の際、事例の対象となる障害者の承諾を得てください。  (2)応募書類は、返却しません。  (3)応募した文書の著作権及びこれに付随する一切の権利は、当機構に帰属するものとします。  (4)応募に際して得られた個人情報は、当機構が管理し、本募集の実施運営にかかわる作業と障害者雇用の普及・啓発に関する資料送付のみを目的として使用します。  (5)応募事例については好事例集としてまとめ、事業所、関係団体等に配布します。このうち、入賞事例については取材を行い、具体的な事例の内容を好事例集へ掲載するとともに、当機構のホームページにも掲載します。 ○審査員の構成(敬称略五十音順、所属・役職は平成24年7月20日現在) ・遠藤 和夫 一般社団法人日本経済団体連合会労働政策本部 主幹 ・沖山 稚子 越谷市障害者就労支援センター 所長 ・金田 弘幸 厚生労働省職業安定局高齢・障害者雇用対策部地域就労支援室 室長 ・秦 政 NPO法人障がい者就業・雇用支援センター 理事長 ・吉光 清 九州看護福祉大学看護福祉学部社会福祉学科 学科長 ・姉崎 猛 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構 理事 76-77ページ □平成24年度障害者雇用職場改善好事例の厚生労働大臣賞受賞者について ・「障害者雇用職場改善好事例募集」の趣旨 障害者雇用事業所で行われている雇用管理や雇用環境の改善等の様々な取組の中から、他の事業所のモデルとなる好事例を募集し、優秀事例を表彰するとともに、広く一般に周知することによって、 企業における障害者の雇用と職域の拡大及び職場定着の促進を図るとともに、障害者雇用に関する理解の向上を図る。  ※平成24年度は継続(長期)雇用のために、障害者のキャリアップ、加齢に伴う問題に取り組んだ職場改善好事例を募集 ○最優秀賞(厚生労働大臣賞)計1件 ・神奈川県 株式会社島屋横浜店  講評  特例子会社ではない一般事業所がきめ細かい取り組みを行うことにより、障害者雇用を推進している事例である。知的障害者と企業内ジョブコーチのユニットによるワーキングチームが各売場の間接業務を実施することで、障害者向けの職務を創出できただけでなく、各売場も販売業務に当たる時間を確保することができ、結果として事業所全体の業績面にも貢献している点が評価できる。また、研修の一環として他の障害者雇用事業所での体験実習を実施したり、生産性向上のための社内検定制度を独自に実施したりするなど、障害者が経験を積み、意欲が高まるような機会を提供して知的障害者のキャリアアップに結びつくよう取り組んでいる。さらに、加齢問題についても、関係機関と連携した対象者の生活支援の実施や社内での配置転換等により雇用継続に取り組んでいる点も評価できる。 □平成24年度障害者雇用職場改善好事例の独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構理事長賞受賞者について ○優秀賞(独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構理事長賞)(計6件) ・一般事業所 東京都 サノフィ・アベンティス株式会社  講評  IT化及びペーパレス化に伴う既存業務の減少に伴い、納期を重視する業務やパソコンを使用する業務へ職域を拡大するため、業務プロセスの分析、従事するメンバーのスキルの評価によるプロセスや人員配置の最適化、個別訓練の実施、ITスキルの付与等に取り組む他、日々の業務に対する目標設定と結果のフィードバック、コミュニケーションスキルの向上を目指した定期的なSSTの実施等により、個々の障害者のスキルアップを図り、全体としてのパフォーマンスが向上している点が評価できる。 ・特例子会社 埼玉県 株式会社マルイキットセンター  講評  加齢問題について、予防と対策の両面から取り組んでいる点が評価できる。予防に当たっては、個人に対して能力維持、健康管理のための取組を行うとともに、業務改善やジョブローテーション等職場全体での取組も実施している。また、加齢現象を客観的に判断できるよう業務遂行能力について日々のデータを蓄積するとともに、加齢現象が発現した場合に備え、軽作業の職務の創出、短時間勤務への移行も可能な人事制度の導入を行っている。さらにハッピーリタイアメントに向けた地域の支援機関とのネットワークづくりなど、加齢問題に対して総合的な取組を行っている。 ・特例子会社 神奈川県 株式会社富士電機フロンティア川崎事業所  講評  本人の希望に基づく資格(フォークリフト運転)取得の支援及び資格取得を奨励する表彰規定の作成、製本業務における障害のある従業員からのリーダーの育成、新たな機器の導入や治具の考案製作、OJTによる技能習得により一定の技能を必要とする製造部門での業務への進出等、個々の障害者の状況に応じたキャリアアップの取組を実施し、職域を拡大している点が評価できる。 ・特例子会社 神奈川県 日総ぴゅあ株式会社  講評  卓越した技能を有する社員をマイスターとして認定し、報奨金を支給する「マイスター制度」を導入し、求められる技術を見える化することにより技術の向上を目指している。また、マイスター制度等人材育成制度により日頃から社員の能力把握もできているため、突然の変更等にも対応した人員配置が可能となっている。さらに、目標の設定や表彰制度の導入、年間を通じた各種イベントの実施等、社員のモチベーションの向上のために様々な取組を幅広く実施している点も評価できる。 ・特例子会社 大阪府 株式会社ダイキンサンライズ摂津  講評  業績に応じた賃金・昇進制度を導入し、障害のある社員も管理的職務に登用するとともに、資格取得によるキャリアアップも推進している。例えば空調機の解体グループでは、自身も障害があり、有資格者(冷媒回収技術)であるリーダーが指導を行うことにより知的障害のある社員も含めたグループ全員が資格を取得し、その結果、設備をフル稼働させることが可能となり、生産性にも貢献している。また、障害の進行と加齢により上肢の機能が低下している社員に対しては、治具の導入、上肢での作業の少ない業務への配置転換、同僚社員による身の回りの介助等、その都度、状況に応じた改善を図り、長期の継続雇用を実現している点が評価できる。 ・特例子会社 大分県 ソニー・太陽株式会社  講評  加齢問題に対して、平成23年から社内プロジェクトを立ち上げ、加齢による問題の予防(ライフスタイルの見直しやスポーツの奨励等)、早期把握(健康診断結果や独自で開発したチェックシートの活用)、把握後の対応(人事担当者と上長との検討により、作業環境の改善、仕事内容の調整、就労時間の最適化等の措置の実施)といった一貫した取組を社全体で包括的に実施していることが評価に値する。 ○奨励賞(独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構理事長賞)(計6件) ・一般事業所 広島県 社会福祉法人清風会 みつや工場  講評  事業所独自の評価基準を設け、従業員の作業能力を評価している。評価結果は本人にフィードバックするとともに、昇給にも反映しており、従業員のモチベーションの向上につながっている。また、評価により作業能力の高い者は、生産管理の責任者に任命するとともに役職手当を支給しており、本人の意欲、責任感の向上だけでなく、職場の支援者が他の障害のある従業員に対する作業支援に専念することができるため、全体としての生産性の向上につながったことが評価できる。 ・特例子会社 東京都 第一生命チャレンジド株式会社  講評  個々の状況に応じたその時々の対応により、職域の拡大や勤務時間の延長等各人の仕事の幅が広がっている点が評価できる。例えば、入社5年目のある社員については、まずは働くことに慣れるよう支援を行い、安定的な業務遂行が可能になると新規業務への挑戦、在庫管理や後輩社員の指導等マネージャー的な役割への挑戦と、次々に課題を与えることによりキャリアアップを図っている。また、加齢に伴う体力低下により休職した社員についても、復職後、作業内容の見直し、勤務時間の段階的な延長等を行うことにより、休職前から勤務時間の短縮を伴わない雇用継続を実現している。 ・特例子会社 東京都 大東コーポレートサービス株式会社  講評  プロセスの細分化によるスモールステップでの業務の習得や、課内での複数業務の担当、他課での業務研修の結果、各社員の職域拡大が図られただけでなく、繁忙期等での柔軟な人員配置が可能となり、安定的な業務処理が可能となった。また、このような職域の拡大は、加齢により従事できない業務が発生した場合にも、他の選択肢があることから雇用継続につながっている点が評価できる。加えて、リーダー等管理的役割への登用、評価制度の導入と賞与への反映、業務成果に対する昇格・昇給を実施し、社員のモチベーションの維持・向上等にも取り組んでいる。 ・特例子会社 神奈川県 富士ソフト企画株式会社  講評  各種の社内研修を実施しているが、受講者本人のキャリアアップの場としてだけでなく、休職中の社員が自分の担当していた業務について研修講師を務めることにより、職場復帰のステップとしての機能を持たせたり、休職から復帰した社員に本人の経験のある分野での研修を受講させることにより、生活のリズムや仕事への意欲の回復を促すといった機能を持たせている点が新奇である。 ・特例子会社 岡山県 株式会社旭化成アビリティ 水島営業所  講評  50代の増加という社員の高齢化に対して、定年後も会社が必要と判断する場合には定年時の職責やそれに伴う手当を維持する仕組み等社内の雇用継続制度を整備するとともに、若手・中堅社員とのバランスのとれた配置による負担軽減及び技能継承が図られている。特に、豊富な経験や習熟した技能などを有する再雇用の高齢者が、知的障害者、重度障害者の指導、支援といった新たな役割において高い貢献を示している点が評価できる。 ・特例子会社 福岡県 サンアクアTOTO株式会社  講評  加齢に伴う運動機能の低下による転倒を防止するため、下肢障害者の移動・歩行に関する安全確認の独自のカルテ(チェックシート)等による定期的な確認を行い、危険要因を把握し、職場改善(手すりの設置等)やリスクの高いポイントでの介助を行った。これにより、職場での安全確保が図られるとともに、加齢に伴う体力低下の実態について職場の理解が進み、障害特性に関する情報共有が図られている。 78-79ページ □事業主に対する助成措置 障害者を雇用した場合、事業主の経済的負担の軽減などのため、雇用した障害者の賃金や施設改善などに対する助成措置があり、主だったものとして以下の助成措置が挙げられます。ただし、受給するためには、助成金の対象となる要件を満たすほか、事業主が申請期間内に適正な支給申請を行うことが必要となりますので、担当機関の窓口に早めに相談することが望まれます。 1.特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者雇用開発助成金) 身体障害者、知的障害者または精神障害者などの就職が特に困難な者を新たにハローワークなどの紹介により雇い入れた事業主に対して、その賃金の一部を雇い入れた日から一定期間助成することにより、雇用機会の増大を図るものです。 ・対象事業主 次の全ての要件を満たす事業主です。 @ハローワークまたは適正な運用を期すことのできる有料・無料職業紹介事業者の紹介により、身体障害者、知的障害者または精神障害者など(65歳末満の者に限る。)を継続して雇用する労働者として雇い入れ、助成金支給後も引き続き相当期間雇用することが確実であると認められる雇用保険の適用事業主。 A当該雇い入れの前および後6か月間において当該雇い入れに係る事業所で雇用する被保険者を事業主の都合により解雇したことがないものであること。 B当該雇い入れの前および後6か月間において当該雇い入れに係る事業所において特定受給資格者となる離職理由により雇用する被保険者を、当該雇い入れ日における被保険者の6%を超えて離職させていないこと(特定受給資格者となる離職理由により離職した者が3人以下である場合を除く)。 ・対象労働者が身体障害者、知的障害者(短時間労働者※2以外) 大企業の場合、助成額50万円、助成期間1年 中小企業の場合、助成額135万円、助成期間1年6か月   ・対象労働者が身体障害者、知的障害者、精神障害者(短時間労働者) 大企業の場合、助成額30万円、助成期間1年 中小企業の場合、助成額90万円、助成期間1年6か月 ・対象労働者が重度身体障害者、重度知的障害者、精神障害者、45歳以上の身体・知的障害者(短時間労働者以外) 大企業の場合、助成額100万円、助成期間1年6か月 中小企業の場合、助成額240万円、助成期間2年 ・問い合せ先 都道府県労働局、ハローワーク ※1 ここでいう中小企業の範囲は以下のとおりです。 小売業(飲食店含) 資本または出資額が5,000万円以下、または常時雇用する労働者が50人以下 サービス業 資本または出資額が5,000万円以下、または常時雇用する労働者が100人以下 卸売業 資本または出資額が1億円以下、または常時雇用する労働者が100人以下 その他業種 資本または出資額が3億円以下、または常時雇用する労働者が300人以下 ※2 ここでいう「短時間労働者」とは、1週間の所定労働時間が20時間以上30時間未満の者をいいます。 2.障害者雇用納付金制度に基づく助成金 障害者を労働者として雇用するにあたって、障害者個々人の障害による課題に対応した施設・設備の整備や適切な雇用管理を行うための特別な措置を実施する場合に要する費用の一部を助成することにより、その経済的負担を軽減し、障害者の雇用の促進や雇用の継続を図ることとしています。 ・障害者作業施設設置等助成金 障害者を常時雇用する労働者として雇い入れるか継続して雇用している事業主が、その障害者が障害を克服し、作業を容易に行うことができるよう配慮された作業施設、就労を容易にするために配慮されたトイレ、スロープ等の附帯施設もしくは作業を容易にするために配慮された作業設備の設置または整備等を行う場合に、その費用の一部を助成するものです。 ・障害者福祉施設設置等助成金 障害者を常時雇用する労働者として継続して雇用している事業主又はその事業主が加入している事業主団体が、障害者である労働者の福祉の増進を図るため、障害者が利用できるよう配慮された保健施設、給食施設、教養文化施設等の福利厚生施設の設置又は整備を行う場合に、その費用の一部を助成するものです。 ・障害者介助等助成金 重度身体障害者、知的障害者、精神障害者又は就職が特に困難と認められる身体障害者を常時雇用する労働者として雇い入れるか継続して雇用している事業主が、障害の種類や程度に応じた適切な雇用管理のために必要な介助等の措置を実施する場合に、その費用の一部を助成するものです。 ・職場適応援助者助成金 職場適応援助者による援助を受けなければ事業主による雇い入れ又は雇用の継続が困難と認められる障害者に対して、職場に適応することを容易にするため、職場適応援助者(機構が行う研修又は厚生労働大臣が定める研修を修了し、援助の実施に関し必要な相当程度の経験及び能力を有すると認められる者)を障害者を雇用している事業所に派遣して、援助を実施する社会福祉法人等又は自社の事業所に職場適応援助者を配置し、雇用する障害者に対する援助を実施する事業主に対して、その費用の一部を助成するものです。 ・重度障害者等通勤対策助成金 重度身体障害者、知的障害者、精神障害者又は通勤が特に困難と認められる身体障害者を常時雇用する労働者として雇い入れるかあるいは継続して雇用する事業主、又はこれらの重度障害者等を雇用している事業主を構成員とする事業主団体が、これらの者の通勤を容易にするための措置を行う場合に、その費用の一部を助成するものです。 ・重度障害者多数雇用事業所施設設置等助成金 重度身体障害者、知的障害者又は精神障害者を常時雇用する労働者として多数雇い入れるかあるいは継続して雇用し、かつ、安定した雇用を継続することができると認められる事業主が、これらの障害者のために事業施設等の整備等を行う場合に、その費用の一部を助成するものです。 ・障害者能力開発助成金 障害者の職業に必要な能力を開発し、向上させるための能力開発訓練事業を行う事業主やその団体もしくは社会福祉法人等が能力開発訓練事業のための施設・設備の整備等を行う場合、その能力開発訓練事業を運営する場合、障害者である労働者を雇用する事業主が、その障害者である労働者に障害者能力開発訓練事業を受講させる場合、及び障害者をグループにして事業所で就労することを通じて常時雇用する労働者として雇用されるための教育訓練の事業を実施する場合に、その費用の一部を助成するものです。 ・問い合せ先 各都道府県高齢・障害者雇用支援センター(84ページを参照) 80ページ □障害者雇用に役立つ資料 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構では、事業主や事業主団体の方々に対し、障害者の雇入れに当たっての工夫・改善、障害者が能力を発揮して活躍するための実践的なマニュアルや好事例集等の提供のほか、障害者雇用に関するDVD等の貸出しを行っておりますのでご活用ください 1.マニュアル、事例集等 ・職場定着推進マニュアル 障害者に適した職域を創出し雇用拡大を図るためのポイントとして、受入れ準備、仕事の選定、雇用管理上の配慮等について解説したマニュアル ・障害者雇用マニュアル コミック版 ノウハウや具体的な雇用事例を障害別にコミック形式でまとめたマニュアル ・はじめからわかる障害者雇用 〜事業主のためのQ&A集〜 障害者雇用を進めるにあたり職務の選定や労働条件の検討、職場環境の整備等について不安や悩みを抱える事業主のために、関連情報や具体的方策を30のQ&Aを通じてわかりやすく解説したQ&A集 ○マニュアル等の資料は、ホームページからダウンロードできます。(PDFファイルまたはTEXTファイル) 障害者雇用資料 で検索 2.障害者雇用事例リファレンスサービス 積極的に障害者雇用への取組を行っている全国の事業所の事例をデータベースに蓄積し、「障害者雇用事例リファレンスサービス」としてホームページで紹介しています。業種や障害、事業所規模、指定するキーワード等によって雇用事例を検索することができます。 https://www.ref.jeed.go.jp/ 3.DVD等の貸出し 障害者雇用事業所の取組をDVD・ビデオにまとめ事業主に貸出しています。障害者が実際に働く姿や職場での具体的工夫の内容を動画でみることができます。貸出しの概要、リストはホームページに掲載しています。 https://www.jeed.go.jp/disability/data/handbook/dvd/index.html ○お問い合わせ先 ・マニュアル、事例集等、障害者雇用事例リファレンスサービスについては、雇用開発推進部雇用開発課へ TEL 043-297-9513 FAX 043-297-9547 ・DVD等の貸出しについては、中央障害者雇用情報センターへ TEL 03-5638-2792 FAX03-5638-2282 81ページ □就労支援機器の展示・貸出し 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構では、障害者の就労を容易にするための支援機器について、ホームページで紹介しています。また、一部の機器について、一定の要件を満たす事業主や事業主団体に対して、支援機器の無料貸出しを行っています。その他、中央障害者雇用情報センターで一部の就労支援機器を展示するとともに、就労支援機器の導入や活用に関しての相談を行っておりますので、是非ご活用ください。 1.貸出しの対象となる事業主 障害者を雇用している、または雇用しようとしている事業主等(国、地方公共団体、独立行政法人等は除く) 2.貸出し期間 原則として6ヶ月以内。職場実習やトライアル雇用の場合も利用できます。 3.視覚障害者用の主な貸出し機器 拡大読書器(卓上型・携帯型)、画面読み上げソフト、画面拡大ソフト、点字ディスプレイ、カルテ管理ソフト、名刺管理ソフト等 ・複数の機器を同時に貸出しできます。 ・ソフトウェアはパソコンにインストールして貸出します。スキャナーが必要な場合はスキャナーも貸出します。 ・貸出しの台数に限りがあります。ご希望に添えない場合がありますのでご了承ください。 4.貸出しの流れ ・申請書の提出 申請書を記入し、メールまたは郵送でご提出ください。 電子メール kiki@jeed.go.jp 郵送 〒261-0014 千葉市美浜区若葉3-1-3障害者職業総合センター内雇用開発推進部雇用開発課 ・貸出しの決定 決定内容を通知し、機器を配送します。 ・貸出しの終了・回収 機構契約業者が回収に伺います。 就労支援機器のお問合せやお申し込みについては、下記ホームページへ(就労支援機器で検索) https://www.kiki.jeed.go.jp/ 就労支援機器の導入や活用の相談、展示については、中央障害者雇用情報センターへ 〒130-0022/東京都墨田区江東橋2-19-12ハローワーク墨田5階 TEL 03-5638-2792、FAX 03-5638-2282 電子メール:syougai-soudan@jeed.go.jp 82ページ □参考文献の紹介 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構では、障害者雇用に関する様々なテーマの調査研究を実施しています。過去に取りまとめられた調査研究報告書等の中から「キャリアアップ」や「加齢に伴う問題への対応」に関する報告書等をご紹介します。 ○調査研究報告書(研究企画部) https://www.nivr.jeed.go.jp/research/report/houkoku/index.html ・62タイトル「障害者の雇用管理とキャリア形成に関する研究」障害者のキャリア形成 (2004年3月発行) 概要 障害者の雇用対策が今後一層の効果を上げるためには、入社後の雇用の質の向上に向けた体制整備が必要になることから理論的な整理やヒアリング調査等をもとに、障害者のキャリア形成についての課題を検討し、とりまとめた報告書。 ・97タイトル「高齢化社会における障害者の雇用促進と雇用安定に関する調査研究」−中高年齢障害者の雇用促進、雇用安定のために− (2010年4月発行) 概要 中高年齢障害者の採用や雇用継続に焦点を当てて、事業所に対する郵送調査と訪問等による聴き取り調査、専門家からの取材を行い、中高年齢障害者の雇用の実態を把握。この結果を分析し、障害のある中高年齢従業員の加齢に伴う就業上の課題と事業所が行っている就業継続のための配慮、工夫の事例を提供する報告書。 ○資料シリーズ(研究企画部) https://www.nivr.jeed.go.jp/research/report/shiryou/index.html ・62タイトル:「障害のある中高年齢従業員の加齢に伴う就業上の支障と対策に関する調査研究」−特例子会社(主として設立20年以上)における配慮と工夫− (2011年3月発行) 概要 以下を目的に、特例子会社への調査等に基づき、とりまとめた資料。 中高年齢障害者の雇用促進及び雇用継続に係る対策の基礎資料とする。 障害従業員の中高年齢化に伴う就業上の課題に関心をもつ事業所、及び中高年齢障害者の採用や雇用継続に不安を感じる事業所に対し、活用可能な配慮と工夫の事例を提供する。 中高年齢の障害従業員や就労・就業支援者に対し中高年齢化に伴って生じる就業上の課題に対して、特例小会社等が実際に講じた措置の中から、他者においても有効であり、かつ実施可能な配慮や工夫例を示す。 ・64タイトル「障害のある中高年齢求職者の就職活動に関する研究」 (2012年3月発行) 概要 障害のある中高年齢求職者の就職活動を取り巻く事項に焦点を当て、求職者が直面する課題やこれに対する支援の状況について整理し、採用に当たっての課題を解決するための配慮と工夫の事例及び障害のある中高年齢求職者を支援する際の留意点をとりまとめた資料。 83ページ □地域障害者職業センター 都道府県における職業リハビリテーションサービスの中核として、ハローワークなどの関係機関と緊密な連携を図り、障害者に対して専門的な職業リハビリテーションサービスを行うとともに、事業主に対して雇用管理に関する相談・援助を行っています。また、地域の関係機関に対して職業リハビリテーションに関する助言・援助を行っています。 北海道障害者職業センター/〒001-0024/札幌市北区北24条西5丁目1-1札幌サンプラザ5階/TEL011-747-8231 北海道障害者職業センター旭川支所/〒070-0034/旭川市4条通8丁目右1号ツジビル5階/TEL0166-26-8231 青森障害者職業センター/〒030-0845青森市緑2丁目17番地2号/TEL017-774-7123 岩手障害者職業センター/〒020-0133/岩手県盛岡市青山4丁目12番30号/TEL019-646-4117 宮城障害者職業センター/〒983-0836/仙台市宮城野区幸町4丁目6番1号/TEL022-257-5601 秋田障害者職業センター/〒010-0944/秋田市川尻若葉町4番48号/TEL018-864-3608 山形障害者職業センター/〒990-0021/山形市小白川町2丁目3番68号/TEL023-624-2102 福島障害者職業センター/〒960-8135/福島市腰浜町23-28/TEL024-522-2230 茨城障害者職業センター/〒309-1703/茨城県笠間市鯉淵6528-66/TEL0296-77-7373 栃木障害者職業センター/〒320-0865/栃木県宇都宮市睦町3番8号/TEL028-637-3216 群馬障害者職業センター/〒379-2154/群馬県前橋市天川大島町130-1/TEL027-290-2540 埼玉障害者職業センター/〒338-0825/さいたま市桜区下大久保136-1/TEL048-854-3222 千葉障害者職業センター/〒261-0001/千葉市美浜区幸町1-1-3/TEL043-204-2080 東京障害者職業センター/〒110-0015/東京都台東区東上野4-27-3上野トーセイビル3階/TEL03-6673-3938 東京障害者職業センター多摩支所/〒190-0012/立川市曙町2-38-5立川ビジネスセンタービル5階/TEL042-529-3341 神奈川障害者職業センター/〒252-0315/神奈川県相模原市南区桜台13-1/TEL042-745-3131 富山障害者職業センター/〒930-0004/富山市桜橋通り1-18住友生命富山ビル7階/TEL076-413-5515 石川障害者職業センター/〒920-0856/石川県金沢市昭和町16-1ヴィサージュ1階/TEL076-225-5011 福井障害者職業センター/〒910-0026/福井市光陽2丁目3番32号/TEL0776-25-3685 新潟障害者職業センター/〒950-0067/新潟市東区大山2丁目13-1/TEL025-271-0333 山梨障害者職業センター/〒400-0864/山梨県甲府市湯田2丁目17番地14号/TEL055-232-7069 長野障害者職業センター/〒380-0935/長野市中御所3丁目2番4号/TEL026-227-9774 岐阜障害者職業センター/〒502-0933/岐阜市日光町6丁目30番地/TEL058-231-1222 静岡障害者職業センター/〒420-0851/静岡市葵区黒金町59-6大同生命静岡ビル7階/TEL054-652-3322 愛知障害者職業センター/〒453-0015/名古屋市中村区椿町1-16 井門名古屋ビル4階/TEL052-452-3541 愛知障害者職業センター豊橋支所/〒440-0888/愛知県豊橋市駅前大通り1-27 MUS豊橋ビル6階/TEL0532-56-3861 三重障害者職業センター/〒514-0002/三重県津市島崎町327-1/TEL059-224-4726 滋賀障害者職業センター/〒525-0027/滋賀県草津市野村2丁目20-5/TEL077-564-1641 京都障害者職業センター/〒600-8235/京都市下京区西洞院通塩小路下る東油小路町803/TEL075-341-2666 大阪障害者職業センター/〒541-0056/大阪市中央区久太郎町2-4-11クラボウアネックスビル4階/TEL06-6261-7005 大阪障害者職業センター南大阪支所/〒591-8025/大阪府堺市北区長曽根町130-23堺商工会議所会館5階/TEL072-258-7137 兵庫障害者職業センター/〒657-0833/神戸市灘区大内通5-2-2/TEL078-881-6776 奈良障害者職業センター/〒630-8014/奈良市四条大路4丁目2-4/TEL0742-34-5335 和歌山障害者職業センター/〒640-8323/和歌山市太田130番地の3/TEL073-472-3233 鳥取障害者職業センター/〒680-0842/鳥取市吉方189/TEL0857-22-0260 島根障害者職業センター/〒690-0877/島根県松江市春日町532/TEL0852-21-0900 岡山障害者職業センター/〒700-0821/岡山市北区中山下1-8-45NTTクレド岡山ビル17階/TEL086-235-0830 広島障害者職業センター/〒732-0052/広島市東区光町2-15-55(広島市児童総合相談センター2階)/TEL082-263-7080 山口障害者職業センター/〒747-0803/山口県防府市岡村町3-1/TEL0835-21-0520 徳島障害者職業センター/〒770-0823/徳島市出来島本町1-5 4・5階/TEL088-611-8111 香川障害者職業センター/〒760-0055/香川県高松市観光通2丁目5番20号/TEL087-861-6868 愛媛障害者職業センター/〒790-0808/愛媛県松山市若草町7番地の2/TEL089-921-1213 高知障害者職業センター/〒781-5102/高知市大津甲770-3/TEL088-866-2111 福岡障害者職業センター/〒810-0042/福岡市中央区赤坂1-6-19ワークプラザ赤坂5階/TEL092-752-5801 福岡障害者職業センター北九州支所/〒802-0066/福岡県北九州市小倉北区萩崎町1-27/TEL093-941-8521 佐賀障害者職業センター/〒840-0851/佐賀市天祐1丁目8番5号/TEL0952-24-8030 長崎障害者職業センター/〒852-8104/長崎市茂里町3-26/TEL095-844-3431 熊本障害者職業センター/〒862-0971/熊本市中央区大江6丁目1-38熊本公共職業安定所4階/TEL096-371-8333 大分障害者職業センター/〒874-0905/大分県別府市上野口町3088の170/TEL0977-25-9035 宮崎障害者職業センター/〒880-0014/宮崎市鶴島2丁目14-17/TEL0985-26-5226 鹿児島障害者職業センター/〒890-0063/鹿児島市鴨池2丁目30-10/TEL099-257-9240 沖縄障害者職業センター/〒900-0006/沖縄県那覇市おもろまち1-3-25沖縄職業総合庁舎5階/TEL098-861-1254 84ページ □高齢・障害者雇用支援センター 高齢・障害者雇用支援センターは、地域障害者職業センターの雇用支援課(東京、大阪は支援業務課及び窓口サービス課)の通称です。以下のような、障害者雇用支援業務を実施しているほか、高年齢者雇用に関する相談・援助、各種給付金の支給申請の受付等の高齢者雇用支援業務を行っています。 ○障害者雇用納付金等の申告・申請受付 ○各種助成金の申請受付 ○障害者雇用に関する講習・啓発活動等 ○地方アビリンピックの開催 北海道高齢・障害者雇用支援センター/〒060-0004/札幌市中央区北4条西4-1札幌国際ビル4階/TEL011-200-6685 青森高齢・障害者雇用支援センター/〒030-0822/青森市中央1-25-9あおばビル中央6階/TEL017-721-2125 岩手高齢・障害者雇用支援センター/〒020-0024/岩手県盛岡市菜園1-12-10日鉄鉱盛岡ビル5階/TEL019-654-2081 宮城高齢・障害者雇用支援センター/〒980-0021/仙台市青葉区中央3-2-1青葉通プラザ13階/TEL022-713-6121 秋田高齢・障害者雇用支援センター/〒010-0951/秋田市山王3-1-7東カンビル3階/TEL018-883-3610 山形高齢・障害者雇用支援センター/〒990-0039/山形市香澄町2-2-31カーニープレイス山形3階/TEL023-674-9567 福島高齢・障害者雇用支援センター/〒960-8054/福島市三河北町7-14福島職業訓練支援センター内/TEL024-526-1510 茨城高齢・障害者雇用支援センター/〒310-0803/茨城県水戸市城南1-1-6サザン水戸ビル7階/TEL029-300-1215 栃木高齢・障害者雇用支援センター/〒320-0811/栃木県宇都宮市大通2-1-5/明治安田生命宇都宮大通りビル2階/TEL028-610-0655 群馬高齢・障害者雇用支援センター/〒379-2154/群馬県前橋市天川大島町130-1/TEL027-287-1511 埼玉高齢・障害者雇用支援センター/〒330-0074/さいたま市浦和区北浦和4-5-5北浦和大栄ビル5階/TEL048-814-3522 千葉高齢・障害者雇用支援センター/〒261-0001/千葉市美浜区幸町1-1-3/TEL043-204-2901 東京高齢・障害者雇用支援センター/〒130-0022/東京都墨田区江東橋2-19-12墨田公共職業安定所5階/TEL03-5638-2794(支援業務課) 神奈川高齢・障害者雇用支援センター/〒231-0003/横浜市中区北仲通4-40商工中金横浜ビル5階/TEL045-640-3046 新潟高齢・障害者雇用支援センター/〒951-8061/新潟市中央区西堀通6-866NEXT21ビル12階/TEL025-226-6011 富山高齢・障害者雇用支援センター/〒930-0004/富山市桜橋通り1-18住友生命富山ビル7階/TEL076-471-7770 石川高齢・障害者雇用支援センター/〒920-0856/石川県金沢市昭和町16-1ヴィサージュ1階/TEL076-255-6001 福井高齢・障害者雇用支援センター/〒910-0005/福井市大手2-7-15明治安田生命福井ビル10階/TEL0776-22-5560 山梨高齢・障害者雇用支援センター/〒400-0031/山梨県甲府市丸の内2-7-23鈴与甲府ビル1階/TEL055-236-3163 長野高齢・障害者雇用支援センター/〒380-0836/長野市南県町1040-1日本生命長野県庁前ビル6階/TEL026-269-0366 岐阜高齢・障害者雇用支援センター/〒500-8856/岐阜市橋本町2-20濃飛ビル5階/TEL058-253-2723 静岡高齢・障害者雇用支援センター/〒420-0851/静岡市葵区黒金町59-6大同生命静岡ビル7階(静岡障害者職業センターと同一フロア)/TEL054-205-3307 愛知高齢・障害者雇用支援センター/〒450-0002/名古屋市中村区名駅4-2-28名古屋第二埼玉ビル4階/TEL052-533-5625 三重高齢・障害者雇用支援センター/〒514-0002/三重県津市島崎町327-1/TEL059-213-9255 滋賀高齢・障害者雇用支援センター/〒520-0056/滋賀県大津市末広町1-1日本生命大津ビル3階/TEL077-526-8841 京都高齢・障害者雇用支援センター/〒600-8006/京都市下京区四条通柳馬場西入立売中之町99四条SETビル5階/TEL075-254-7166 大阪高齢・障害者雇用支援センター/〒541-0056/大阪市中央区久太郎町2-4-11クラボウアネックスビル3階/TEL06-4705-6927(窓口サービス課) 兵庫高齢・障害者雇用支援センター/〒650-0023/神戸市中央区栄町通1-2-7大同生命神戸ビル2階/TEL078-325-1792 奈良高齢・障害者雇用支援センター/〒630-8122/奈良市三条本町9-21JR奈良伝宝ビル6階/TEL0742-30-2245 和歌山高齢・障害者雇用支援センター/〒640-8154/和歌山市六番丁24ニッセイ和歌山ビル6階/TEL073-499-4175 鳥取高齢・障害者雇用支援センター/〒680-0835/鳥取市東品治町102鳥取駅前ビル3階/TEL0857-50-1545 島根高齢・障害者雇用支援センター/〒690-0887/島根県松江市殿町111山陰放送・第一生命共同ビル3階/TEL0852-60-1677 岡山高齢・障害者雇用支援センター/〒700-0907/岡山市北区下石井2-1-3岡山第一生命ビル4階/TEL086-801-5150 広島高齢・障害者雇用支援センター/〒730-0013/広島市中区八丁堀16-14第2広電ビル7階/TEL082-511-2631 山口高齢・障害者雇用支援センター/〒753-0074/山口市中央5-7-3山口センタービル2階/TEL083-995-2050 徳島高齢・障害者雇用支援センター/〒770-0823/徳島市出来島本町1-5/TEL088-611-2388 香川高齢・障害者雇用支援センター/〒761-8063/高松市花ノ宮町2-4-3香川職業訓練支援センター内/TEL087-814-3791 愛媛高齢・障害者雇用支援センター/〒790-0006/愛媛県松山市南堀端町5-8オワセビル4階/TEL089-986-3201 高知高齢・障害者雇用支援センター/〒780-0053/高知市駅前町5-5大同生命高知ビル7階/TEL088-861-2212 福岡高齢・障害者雇用支援センター/〒810-0073/福岡市中央区舞鶴2-1-10ORE福岡赤坂ビル5階/TEL092-718-1310 佐賀高齢・障害者雇用支援センター/〒840-0816/佐賀市駅南本町5-1住友生命佐賀ビル5階/TEL0952-37-9117 長崎高齢・障害者雇用支援センター/〒850-0862/長崎市出島町1-14出島朝日生命青木ビル5階/TEL095-811-3500 熊本高齢・障害者雇用支援センター/〒860-0844/熊本市中央区水道町8-6朝日生命熊本ビル3階/TEL096-311-5660 大分高齢・障害者雇用支援センター/〒870-0026/大分市金池町1-1-1大交セントラルビル3階/TEL097-548-6691 宮崎高齢・障害者雇用支援センター/〒880-0805/宮崎市橘通東5-4-8岩切第2ビル3階/TEL0985-77-5177 鹿児島高齢・障害者雇用支援センター/〒892-0844/鹿児島市山之口町1-10/鹿児島中央ビル11階/TEL099-219-2000 沖縄高齢・障害者雇用支援センター/〒900-0006/那覇市おもろまち1-3-25/沖縄職業総合庁舎4階/TEL098-941-3301