平成21年度障害者雇用職場改善好事例募集の入賞事例から 精神障害者のための職場改善好事例集 障害者の働きやすい環境づくり 独立行政法人 高齢・障害者雇用支援機構 1ページ はじめに  独立行政法人 高齢・障害者雇用支援機構では、事業所における障害者雇用及び職場定着を進めるため、雇用管理や職場環境の整備等、様々な改善・工夫を行った障害者雇用職場改善好事例を募集し、優秀な事例を表彰、広く周知しています。本募集は平成3年度から開始し、近年では年度ごとにテーマを設定し、募集を行っております。平成21年度においては、精神障害者の新規雇用または職場復帰をテーマに、職場改善好事例を募集いたしました。全国の事業主の皆様から多数のご応募をいただき、審査員による厳正なる審査の結果、11事業所の入賞を決定いたしました。  このたび、入賞事業所のうち、取材にご協力いただいた10事業所の事例を「精神障害者のための職場改善好事例集 へいせい21年度障害者雇用職場改善好事例募集の入賞事例から  」としてご紹介します。精神障害者の雇用促進と職域拡大、及び職場定着のためにご活用いただければ幸いです。 最後に、ご応募いただきました事業主の皆様、そしてご協力いただいた関係機関・団体等の皆様には改めて感謝申し上げます。 平成22年1月 独立行政法人 高齢・障害者雇用支援機構 目次 1ページ はじめに 2ページ 目次 3ページ 精神障害とは 6ページ 用語解説 8ページ 富士ソフト企画株式会社 掲載内容 フレックスタイム制、カウンセリング室の設置等、多彩な就労支援システムを構築 キーワード  勤務時間の配慮、相談・コミュニケーション、メンタルヘルスケア、職務遂行、障害者委託訓練 14ページ 有限会社井上技建 掲載内容 日々の振り返りを通じた業務指導で、介護職員として成長 キーワード 職務遂行、不安・緊張感の軽減、障害理解、相談・コミュニケーション、支援制度の活用 18ページ 綾瀬市リサイクル協同組合 掲載内容 複数の中小企業からなる事業協同組合において、雇用拡大を実現 キーワード 職務創出、職務遂行、不安・緊張感の軽減、障害理解、相談・コミュニケーション、支援機関との連携 22ページ 日本イーライリリー株式会社 掲載内容 新たな職務で、雇用創出とコスト削減を両立 キーワード 障害理解、職務創出、支援機関との連携、職務遂行、相談・コミュニケーション 26ページ 大東コーポレートサービス株式会社 掲載内容 特性に応じたきめ細かな支援により、安定した就労環境を構築 キーワード 勤務時間の配慮、職務創出、職務遂行、相談・コミュニケーション、不安・緊張感の軽減 30ページ 有限会社サカイダ工研 掲載内容 特性をふまえたきめ細かな配慮、保健所等との協力により、長期にわたる継続雇用 キーワード:障害理解、職務遂行、不安・緊張感の軽減、体調管理、支援機関との連携 34ページ 株式会社リコー 福井事業所 掲載内容 社内体制の整備とリワーク支援の活用で、職場復帰をサポート キーワード リワーク支援、職場復帰、相談・コミュニケーション、メンタルヘルスケア 38ページ 株式会社共同運輸 掲載内容 支援制度の活用、社内の受け入れ体制の整備により、複数めいの 職場定着を果たす キーワード 支援制度の活用、勤務時間の配慮、体調管理、相談・コミュニケーション、障害理解 42ページ 株式会社サムズインターナショナル 掲載内容 休職から職場復帰を経て、CADエンジニアとしての雇用を継続 キーワード  支援機関との連携、職場復帰、リワーク支援、勤務時間の配慮、相談・コミュニケーション、職務遂行、 ジョブコーチ支援 46ページ 社会福祉法人まつみ福祉会 介護老人保健施設 桜山荘 掲載内容 グループワークやアンケートを通じて、障害者の意見を職場に反映 キーワード  障害理解、ジョブコーチ支援、職務遂行、体調管理、相談・コミュニケーション 50ページ 職場改善のために、事業所が作成した資料、支援ツール 64ページ その他の応募事業所 85ページ 応募状況 86ページ 応募要項 88ページ 入賞事業所一覧 90ページ 支援制度 97ページ 地域障害者職業センター 3ページ 精神障害とは  精神障害は、さまざまな精神疾患が原因となって起こります。主な精神疾患には、統合失調症、気分障害(うつ病、そううつ病など)、精神作用物質(アルコール、シンナーなど) による精神疾患などがあります。厚生労働省では、障害者雇用促進のための各種助成金制度等の対象となる精神障害者の範囲を、精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている人、または統合失調症、そううつ病(そう病及びうつ病を含む)、てんかんにかかっている人で、症状が安定し、就労が可能な状態にある人としています。また、雇用率の算定対象となる精神障害者の範囲を、精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている人としています。  なお、てんかんはWHO 国際疾病分類では「神経系及び感覚器の疾患」の一部とされていますが、厚生労働省における精神障害者としての施策の対象としています。 4ページ 統合失調症とは  統合失調症は精神疾患の中でも、社会復帰への援助に最も力を入れなければならないものの一つです。患者数が多く、感情表出や思考、知覚の面で様々な症状を示す急性期から回復しても、各種の障害が後遺症として残って、社会での自立した生活を困難にすることが多くあります。  この病気にかかると、精神活動の様々な側面に大きな変化が現れます。例えば、感情表出の面では、表情や身のこなしが硬い、感情を示さない、自分の殻に閉じ込もるなどの症状がみられ、思考面では、支離滅裂な思考や強迫観念、妄想などの独特の症状が現れます。また、幻覚や幻聴のような知覚面での症状や、自分が自分でないように感じたり、人に操られていると感じるといった、自我意識面での特異な症状もみられます。  この病気の原因は、まだ十分に解明されてはいません。現時点では、ストレスに対する脆弱性(もろくて弱いこと)に、ある種の原因が加わると発病することがあるということです。発病するのは青年期が多く、先進工業国では、約100人に1人の割合で発病するといわれています。  薬物療法を中心とした精神医療や、リハビリテーションの進歩によって、病気から回復し、自立した職業生活を送る人も大変多くなっています。  統合失調症の場合、先に述べたように、一旦回復しても、人によっては後遺症が残ることが知られています。この後遺症としての障害は、先に述べた症状とは必ずしも同じではありません。また、それらの中には、再発予防のために服用している薬の副作用や、入院体験による社会性の減退によると考えられるものもあります。  統合失調症から回復した人によく見られる特徴としては、これらの人を指導したり、雇用した方々の指摘によれば、次のようなものがあげられます。 ・細かな指先の動作が苦手 ・動作が緩慢 ・周囲への関心が乏しい ・複雑なことが苦手 ・臨機応変に判断することが苦手 ・問題を切り抜けることが苦手 ・自信がない ・新しいことに対して不安が強い  これらの特徴は、マイナスイメージとしてとらえられがちですが、仕事の中身や指導の方法を工夫することにより、十分克服できることも指摘されています。 5ページ 気分障害(うつ病、そううつ病)とは  気分障害とは、生活に支障をきたすほどに、異常に気分が沈んだり、ハイになったりする状態が長く続く病気で、その代表は、うつ病(単一性障害)と、そううつ病(双極性障害)です。以前は感情障害と呼ばれていましたが、気分が高揚して、泣いたり笑ったりする感情の病気というよりも、持続的な身体全体の調子の病気ととらえられるようになり、現在では一般に気分障害と呼んでいます。  うつ病では、一般に身体と精神の両方に症状が現れます。しんたい症状としては、睡眠障害、食欲不振、性欲減退、頭痛・腰痛・肩の痛み、疲労感・倦怠感などが見られます。精神症状は、しんたい症状に隠れて見逃されがちですが、抑うつ状態、日内変動(特に朝方の憂うつ感がひどく、夕方になるにつれて軽くなっていく状態が続く)、集中力低下、注意力散漫、意欲低下、不安、取り越し苦労、自信の喪失などが特徴的です。身体の症状が強く表面に出て、精神の症状が目立たない「仮面うつ病」と呼ばれるタイプもあります。  「そう」は、「うつ」とは逆に気分の高揚が特徴で、気力や活動性の亢進があります。例えば、社交性が高まり、あちこちに電話をかけたり、話が止まらなかったり、過度の馴れ馴れしさが出たりといった、特異な行動が見られることがあります。うつの睡眠障害とは反対に、寝なくても平気である場合が多いのが特徴です。この、そう状態と、うつ状態が交互に繰り返されるのが、そううつ病です。 引用文献 独立行政法人 高齢・障害者雇用支援機構(2006) 「精神障害者雇用管理マニュアル」、障害者職域拡大マニュアル8 独立行政法人 高齢・障害者雇用支援機構(2009) 「平成21年版 障害者職業生活相談員資格認定講習・障害者雇用推進者講習テキスト」 6ページ 用語解説 事例をお読みになるにあたって  事業所の職場改善好事例をお読みいただくにあたり、事例に掲載されている支援制度等の用語について、概要をご説明します。巻末の90ページからの「支援制度」と合わせて参考にしてください。 1 EAP  EAPとは、Employee Assistance Program(従業員援助プログラム)と呼ばれる米国生まれの職場のメンタルヘルスサービスで、企業が自社内部で設置する場合と、外部のEAP会社にアウトソースして、社員の悩み、相談に対応する場合とがある。(日本EAP協会ホームページより) 2 業務遂行援助者の配置助成金  重度知的障害者、または精神障害者を雇い入れ、その者に対する業務の遂行を通じた雇用管理のために必要な、援助及び指導の業務を担当する業務遂行援助者を配置する事業主を対象とする助成金。 3 重度中途障害者職場適応助成金  採用後に労働災害、交通事故、疾病等のために障害を有するに至った、いわゆる中途障害者の職場復帰を促進するための、職場適応措置を実施する事業主を対象とする助成金。 4 障害者委託訓練(障害者の態様に応じた委託訓練)  企業、社会福祉法人、NPO法人、民間教育訓練機関等に委託して、就職に必要な知識・技能を習得するための、公共職業訓練を実施している(訓練機関3ヶ月(標準) )。 5 障害者作業施設設置等助成金  障害者が障害を克服し、作業を容易に行うことができるよう配慮された作業施設、または改造等がなされた作業設備の整備等を行う費用に対する助成金。 6 障害者職業生活相談員  障害者を5人以上雇用する事業所については、障害者の雇用の促進等に関する法律の規定に基づき、障害者の職業生活全般にわたる相談・指導を行う、障害者職業生活相談員を選任することが義務付けられている。  障害者職業生活相談員の資格は、独立行政法人 高齢・障害者雇用支援機構が実施する「障害者職業生活相談員資格認定講習」を修了することにより得ることができる。 7 職務創出  既存の業務では対応困難な場合に、個々の能力に合わせた作業や、新たな作業を組み合わせるなどして、雇用できるための職務を創り出すこと。 8 ジョブコーチ支援  知的障害者、精神障害者等の職場適応を容易にするため、職場にジョブコーチを派遣し、事業所、障害者双方にきめ細かな人的支援を行う制度。ジョブコーチは、地域障害者職業センターに所属する配置型ジョブコーチと、就労支援ノウハウを有する社会福祉法人等に所属する第1号ジョブコーチ、事業主が自ら配置する第2号ジョブコーチがいる。 9 精神障害者社会適応訓練事業(職親制度)  精神障害者が社会に適応できるように、一定期間、協力事業所に通い、作業を通じて対人能力、仕事に対する持久力、環境への適応力等を養うことを目的としている制度。期間は原則6か月で、3年を限度として更新できる。(実施主体は都道府県であるが、保健所が相談や申請の窓口となっている) 10 精神障害者ステップアップ雇用  求職精神障害者が事業主と有期雇用契約を締結し、短時間就労(週10時間以上)から始め、一定の期間(3ヶ月以上12ヶ月以内)をかけて就職に対する不安を軽減し、事業主と精神障害者の相互理解を深めながら、就業時間を延長し、その後の常用就労を目指す。 11 特例子会社制度  事業主が障害者の雇用に特別の配慮をした子会社を設立し、一定の要件を満たす場合には、特例としてその子会社に雇用されている労働者を親会社に雇用されているものとみなして、実雇用率を算定できる制度。  事業ぬしにとってのメリットとして、障害の特性に配慮した仕事の確保・職場環境の整備が容易となり、これにより、障害者の能力を十分にひきだすことができるといったことが挙げられる。 12 リワーク支援  主治医等との連携のもと、職場復帰に向けたコーディネート、生活リズムの建て直し、リハビリ出勤による復職前のウォーミングアップ、職場の受入体制の整備等の支援を行う。 8ページ 平成21年度 障害者雇用職場改善好事例 最優秀賞 フレックスタイム制、カウンセリング室の設置等、多彩な就労支援システムを構築 富士ソフト企画株式会社(神奈川県鎌倉市) キーワード 1 勤務時間の配慮 2 相談・コミュニケーション 3 メンタルヘルスケア 4 職務遂行 5 障害者委託訓練 精神障害者雇用の経緯  平成15年に神奈川県精神保健福祉センターの推薦を受け、1名の精神障害者を職場実習で受け入れる。その後、3ヶ月間のトライアル雇用を経て嘱託社員として採用。平成16年からは、精神障害者を対象にした就労支援プログラムを開発し、障害者委託訓練事業とし実施する。障害者委託訓練修了者を中心に、精神障害者の雇用を積極的に進めている。 事業所の概要  平成3年1月 ソフトウェアメーカーの富士ソフト株式会社の子会社として設立。平成12年4月に特例子会社(7ページ参照)として認定される。平成12年当時は身体障害者中心の採用であったが、平成13年から知的障害者、平成15年4月から精神障害者の採用を進めている。  社会貢献の一環として、社員による鎌倉海浜公園プールの壁画作成、地域の就労支援機関と連携して障害者委託訓練事業を実施している。 主な事業内容 名刺作成、データ入力、ホームページ作成、サーバー管理、印刷物全般の製作、ダイレクトメール発送、生命保険・損害保険代理店業務、障害者委託訓練業務 精神障害者雇用状況 従業員数170名、うち精神障害者68名 従事作業 Web制作、データ入力、名刺・パンフレット等の印刷物制作、システム保守・管理、映像編集、研修講師、庶務業務等 9ページ 取り組みの概要 詳細は11ページより紹介します キーワード1 勤務時間の配慮 改善前の状況 精神障害者の疲労の蓄積や体調管理に配慮できるよう、勤務時間を柔軟に設定する必要があった。 改善内容 入社時に短時間(一日5時間から6時間)から勤務することを可能とした。コアタイムなしのフレックスタイム制を導入した。 これについては改善策1の内容をご参照下さい。 改善後の効果 段階的に勤務時間を延長する等して、3割がフルタイムに移行した。 キーワード2 相談・コミュニケーション 改善前の状況 従業員の職場定着のための相談体制を整備する必要があった。 改善内容 カウンセリング室を設置した。これについては改善策2の内容をご参照下さい。 改善後の効果 カウンセリングを通じて、精神障害者の体調や不安等を把握しやすくなり、職場定着につながった。 キーワード3 メンタルヘルスケア 改善前の状況 職場定着を進めていくためには、管理監督者の部下に対するケアが重要と判断した。 改善内容 管理監督者に対する研修を実施。これについては改善策3の内容をご参照下さい。 改善後の効果 部下との接し方について理解が進んだ。メンタルヘルス・マネジメント検定に挑戦することになった。 キーワード4 職務遂行 改善前の状況 体調不良で休んだ時のために、部署内でフォローできる体制を構築する必要があった。 改善内容 単独で作業せず、チーム、ペアで作業する体制とした。これについては改善策4の内容をご参照下さい。 改善後の効果 チームでフォローできるため、作業が滞らずに進行可能となった。 キーワード4 職務遂行 改善前の状況 障害特性に応じた指導方法を検討する必要があった。 改善内容 具体的で丁寧な指示をしている。昇進・昇格は、本人の意思と能力を勘案して慎重におこなった。これについては改善策5の内容をご参照下さい。 改善後の効果 スキルアップして、サブリーダーとして活躍する人材がでてきた。 キーワード5 障害者委託訓練 改善前の状況 精神障害者雇用を更に進めていくことや、精神障害者のスキルアップの方策を検討していた。 改善内容 障害者委託訓練(6ページ参照) を実施し、精神障害者に対する就労支援プログラムをおこなった。これについては改善策6をご参照下さい。 改善後の効果 通算で200名弱が受講。そのうち7割が就職( 富士ソフト企画及び他社への就職)している。 10ページ インタビュー 企業の声 代表取締役社長 長嶋 龍平さん  今後の障害者雇用のテーマとして「自立と貢献」、「生涯働ける会社」を目標としています。社員には、働く上で必要な社会性、責任感を持ち、会社を支える人になって欲しいと思っています。また、自分の仕事を通じて社会に貢献して欲しいです。  障害に応じた配慮をしながらも、社員個々の能力を伸ばし、「生涯働ける会社」につなげていきたいと考えています。  現在、親会社からの委託業務が中心ですが、IT技術に特化した会社の特徴を活かしながら業務の幅を広げ、会社としての自立も目指していきたいです。 取締役 渡辺 芳明さん  面接時には、本人が病気のことを正しく認識しているか確認します。病状やケアが必要な場面について時間をかけて把握をします。自身の病状を理解していれば、体調不良時には早めに休む、上司、カウンセラーと相談する等、対策が立てやすくなります。また、発症後、過去の経歴、スキルを十分に発揮できないケースもあるので、面接だけでなくトライアル雇用制度を活用して、本人の適性や体調の変化を把握することも有効といえます。 従業員の声 秋葉原営業所 サブリーダー 堀越 隆之さん  親会社から依頼される仕事が多いので、親会社のニーズを的確に掴んで、仕事に取り組むようにしています。体調管理も重要なので納期を見極めながら、できないときには断る勇気も必要だと考えています。 秋葉原営業所 サブリーダー 永瀬 英二さん  自分が行う作業の目的を把握することに努めています。例えば、依頼されたファイリング作業を行うことで、親会社の事務作業が軽減され、残業が減る等、どのように貢献できるかを理解しながら取り組むようにしています。 秋葉原営業所 Aさん   業務を進める上で、親会社の社員と密接にコミュニケーションを図ることが重要と考えています。自分の業務に関わるかただけでなく、他のフロアーのかたにも積極的に挨拶をしています。それがきっかけで、仕事を教えてもらうことも増え、自分のやりがいにつながっています。 秋葉原営業所 Bさん  週に1回、カウンセラーのかたと相談できる機会を設けていただいているので、悩みがある場合には相談をしています。また、週5日働けるように体力づくりに取り組んでいます。 大船本社 サブリーダー 槻田さとしさん  訓練生に対しては上からの指導とならないよう、対等な目線で同僚と接する気持ちで講義をしています。講師としてスキルの向上のために勉強も続けています(入社後に VBAエキスパートの資格を取得)。入社して3年経ちますが、仕事を通じて様々な経験を積ませていただいたことに感謝しています。 大船本社 木村健太郎さん  パソコンを使用した訓練ではありますが、障害者委託訓練では社会的スキル、働くためのコミュニケーションの取得を重視しています。訓練生の皆さんに、訓練を通じて自信をつけてもらうために、講師と訓練生間のコミュニケーションを大切にしながら進めています。 大船本社 千田裕子さん  3年前に障害者委託訓練を受講しました。その当時の訓練生とは今でも親交があり、支えになっています。訓練受講の経験を活かして、訓練生の立場になってアドバイスができるようにしたいと考えています。規則正しい朝型生活を送ることが体調管理には重要と感じています。 大船本社 大柿のぞみさん  2009年の5月から6月に、障害者委託訓練を受講しました。当事者のかたが講師をしているということに驚きました。現在はアシスタントとして勉強中ですが、先輩がたのように講師となって、訓練生の皆様に就労支援の恩返しできたらいいなと思っています。 改善策紹介 様々な視点からの支援体制を構築、 就労の定着やさらなる雇用へと結びつく 改善策1 キーワード1 勤務時間の配慮 柔軟な勤務時間の設定と、フレックスタイム制の活用で働きやすい環境に  精神障害者の疲労の蓄積や体調管理に配慮できるよう、勤務時間を柔軟に設定している。  採用された精神障害者の多くは、一日5時間から6時間の短時間勤務から開始している。勤務時間は1ヶ月単位で変更が可能であり、体調を見極めながら、職場の上司、カウンセラーと相談の上、延長や短縮をしている。  また、コアタイム無しのフレックスタイム制を導入しているため、通院や体調不良により出勤が遅れる場合にも、休暇を取らずに勤務ができる環境となっている。  これらの勤務時間の配慮により、雇用されている精神障害者約70名のうち3割が、フルタイム勤務に移行している。 フレックスタイム制  一日の労働時間帯を、必ず勤務すべき時間帯(コアタイム)と、労働時間帯の中であればいつ出社または退社してもよい時間帯(フレキシブルタイム)とに分け、出社、退社の時刻を労働者の決定に委ねるもの。なお、必ずしもコアタイムを設ける必要はなく、全部をフレキシブルタイムとすることもできる。(厚生労働省ホームページより) 改善策2 キーワード2 相談・コミュニケーション 3名のカウンセラーと支援機関との連携で、職場定着につなげる  平成19年9月に「社員が心身ともに安定した職業生活を送ること、そして社員の個性の発達と、自己実現を支援すること」を目的に、全従業員を対象としたカウンセリング室を設置(設置要綱は51ページ参照)。現在は3名のカウンセラーが、大船本社、横浜営業所、秋葉原営業所を巡回し、従業員の相談に対応している。  入社して3ヶ月までは月に2回、カウンセリングの機会を設定。また、従業員から電話やメールで予約を入れ、カウンセリングを受けることも可能である。必要に応じて、本人の了解のもと、上司や家族、医療機関、就労支援機関が同席し、様々な助言を得ながら相談を行い、職場定着につなげている。52ページの「カウンセリング上の留意点」参照) 改善策3 キーワード3 ワードメンタルヘルスケア 管理監督者によるケアの重要性を研修  管理監督者が、部下の過度な疲労や心理的負担に対して配慮できるよう、「役職員研修」を実施している。研修対象者は各部署のリーダー、サブリーダー以上としている。  カウンセリング室のカウンセラーが講師として研修を行い、研修対象者全員が大阪商工会議所主催の「メンタルヘルス・マネジメント検定試験」の二種(ラインケアコース)合格を目指している。研修を通じて、部下との接し方について新たな気付きが得られたとの声も挙がっている。 改善策4 キーワード4 職務遂行 障害者をチーム、ペアで配置することにより、円滑な業務が可能となる  体調不良で休んだ時に備え、部署内でフォローできる体制を検討。障害者が1つの業務を単独で行うのではなく、チームまたはペアで作業を行い、互いにフォローができるようにした。職場配置については、障害種別で分けることをせず、個々人の適性に応じて配置をしている。障害特性上発生する、得意、不得意についてチームで支えあいながら仕事を進めることが可能となっている。  また、単独で作業を行うと「自分が休むことで迷惑をかける」といった気持ちが強まるあまり、無理をしてしまったり、孤独感を感じやすくなったりするという。ペアで採用、配置することで職場定着にもつながっているという。 改善策5 キーワード4 職務遂行 具体的な指示と建設的な指導で、成長を促す  精神障害者の職業上の特性として、必要以上に頑張りすぎてしまうことや、プレッシャーを感じやすいことがあるという。指導方法として、「責任は上司がとる」という考えのもと、曖昧な指示をせず、具体的、丁寧な指示を心がけている。ミスやトラブルに関しては、個人の責任を追及するのではなく、ミスの原因を整理しながら、同じ失敗を繰り返さないよう指導している。  また、昇進・昇格については、プレッシャーにならぬよう、本人の意思と能力を勘案して慎重におこなっており、現在ではサブリーダーとして活躍している者もいる。 改善策6 キーワード5 障害者委託訓練 特性に応じたきめ細やかな配慮と実践的プログラムで、就職率7割を達成  精神障害者雇用を更に進めていくだけでなく、他企業における障害者雇用の推進に寄与することを目的に、就労支援プログラムの開発を行った(53ページの「職業リハビリテーションプログラムカリキュラム」参照)。  開発したプログラムをベースに、平成16年から国の障害者委託訓練を受託し、精神障害者に対する職業訓練を実施する。名刺作成の講義では職場で注文を受けたことを想定し、グループで役割分担を決めながら作業を行い、プレゼンテーション演習では、スーツを着用し、企業やハローワーク職員の前で発表する等、実践的なカリキュラムが組まれている。障害者委託訓練の評判が高まるにつれ、本社以外の場所で開催を要望されることとなる。これまでに、東京都府中市、国立市、埼玉県所沢市などで、地域の就労支援センターと連携しながら開催しており、通算で200名弱が受講している。  障害者委託訓練を修了した精神障害者が講師として採用され、当事者として配慮して欲しいポイントを押さえながら、きめ細やかな運営がなされている。修了者のうち、富士ソフト企画、または他社へ就職した者が7割に達しており、高い就職率を誇っている。 14ページ 平成21年度 障害者雇用職場改善好事例 優秀賞 日々の振り返りを通じた業務指導で、介護職員として成長 有限会社井上技建(宮城県石巻市) キーワード 1 職務遂行 2 不安・緊張感の軽減 3 障害理解 4 相談・コミュニケーション 5 支援制度の活用 精神障害者雇用の経緯  ハローワークから1名の精神障害者を紹介され、平成19年10月からトライアル雇用を活用し受け入れる。平成20年1月から契約社員として継続雇用となる。 事業所の概要  昭和61年4月に創業し、一般建設業を営む。井上技建の取締役が心臓疾患により障害認定を受けたことがきっかけで、当事者として障害者と交流する機会が増える。交流を通じ、障害者の就労する場が少ない現状を知り、平成12年4月から平成18年8月にかけて、めだか訪問介護センター、めだかのがっこう(通所介護)、めだかの楽園(小規模多機能型居宅介護)などを順次開所し、併せて障害者雇用を進めている。 主な事業内容 一般建設業、飲食業、介護保険事業(訪問・通所・居宅介護支援・福祉用具・小規模多機能型居宅) 精神障害者雇用状況 従業員数57名、うち精神障害者2名 従事作業 通所介護事業所の介護補助業務(入浴介助、衣服の着脱介助、移乗介助、レクリエーション等) 取り組みの概要 キーワード1 職務遂行 改善前の状況 頑張りすぎて、疲労が蓄積してしまうことがあった。 改善内容 作業について、押さえるべき基本を助言した。疲労度に応じて担当業務が変更できるようにした。これらについては改善策1の内容をご参照下さい。 改善後の効果 担当職務の幅が広がった。週30時間勤務で働くことが可能となる。 キーワード2 不安・緊張感の軽減 改善前の状況 慣れない場面では緊張しやすかった。 改善内容 緊張を和らげるために、始業前にコーヒータイムを設定した。日報による、上司との振り返りの機会を設定した。これらについては改善策2の内容をご参照下さい。 改善後の効果 仕事を始める前の緊張を和らげることができた。業務上で、わからないことをすぐに相談でき、不安が軽減した。 キーワード3 障害理解 改善前の状況 職員にとって、統合失調症の特性が分からなかった。 改善内容 ミーティングの機会を利用して、勉強会を開催した。これについては改善策3の内容をご参照下さい。 改善後の効果 勉強会の開催と、本人と共に働く機会を通じて障害理解が進み、特性に応じた配慮が可能になった。 キーワード4 相談・コミュニケーション キーワード5 支援制度の活用 改善前の状況 職場定着にむけて、相談体制の構築が必要と感じた。業務遂行援助者の配置助成金(6ページ参照)を活用することにした。これについては改善策4の内容をご参照下さい。 改善後の効果 業務遂行援助者の配置により、業務指導、不安への相談、服薬管理の確認等、きめ細やかな対応が可能になった。 インタビュー 企業の声 管理者 井上 利枝さん 障害者の働く場を提供するという事業所の方針について、職員に理解が得られるよう、説明を繰り返しおこなってきました。野村さんを雇用した当初は、雇用管理の方法がわからず、負担をかけてしまった時期もありましたが、今では本人の様子を見ながら業務を組み立てており、安定した出勤につながっています。各事業所において障害者雇用の取り組みがなされていると思いますが、これらの取り組みが広く周知され、他の事業所の障害者雇用につながるとうれしいです。 従業員の声 野村 貴紀さん 病気に対して理解があり、様々なフォローをしていただけるので非常に働きやすいです。安定して仕事ができるように、規則正しい生活と、食事をきちんととることを心がけています。将来は介護福祉士の資格取得を目指したいです。介護職員として会社に貢献できるようになりたいです。 16ページ 改善策紹介 体調や業務への慣れを考慮、またミーティングでの相互理解で職員として成長 改善策1 キーワード1 職務遂行 業務の基本方針をわかりやすく伝え、体調に配慮した指導で担当職務の幅を広げる  トライアル雇用期間中、野村さんは業務を完璧にこなそうとするあまり、疲労を蓄積させてしまう場面が見られた。そこで、業務に対する基本的な方針をわかりやすく伝え、方針を押さえておけば大丈夫であることを助言。肩の力を抜いて業務に取り組むことができるようになってきた。  また、上司や施設長が野村さんの表情や様子を見極めながら、疲労度に応じて当日の担当業務を変更し、体調に配慮した業務管理を行っている。  採用から2年経過した現在では、担当職務の幅が広がり、一日6時間の週5日勤務(4きん1きゅうのシフト)の中で、概ね他の職員と同様の業務をこなしている。 業務の基本方針(一部抜粋) 1 愉快な日常生活の提供 2 楽しい食事の提供 3 気持ちの良い食事の提供 4 いつも元気に健康チェックの提供 5 安全な送迎の提供 改善策2 キーワード2 不安・緊張感の軽減 始業前の一息入れる時間と、日報を使ったコミュニケーションで不安が軽減  職場で慣れない場面に遭遇すると、過度に緊張してしまうことがあった。そのため、始業前にコーヒータイムを設定し、一息入れる場面を設定することで、緊張感の軽減につなげた。  また、トライアル雇用期間中は、野村さんが「実習記録用紙」(54ページ参照)に一日の作業内容や感想、仕事を進める上で気になったことを記録。記載内容に対して上司がコメントを書いたり、面談による振り返りをしたりすることで、野村さんの不安を和らげる効果があった。 改善策3 キーワード3 障害理解 ミーティングを利用した勉強会と、本人と共に働く機会を通じて、障害理解が広まる  野村さんを雇い入れる際には、管理者の井上さんから、職員に対し精神障害者雇用を進める方針を伝えた。しかし、管理職、現場職員ともに統合失調症の特性がわからなかったため、職場において勉強会を実施した。  現場のリーダー数名に対し、ミーティングの機会を利用して、統合失調症の基礎知識の資料を配付。また、野村さんから了解を得た上で、ご自身の病状について施設長が説明を行った。  これらの取り組みと野村さんの誠実な仕事ぶりが相まって、現在では周囲の職員が野村さんの表情の変化を読みとり、過度に疲労が蓄積しないよう、業務上の配慮が行えるようになっている。 勉強会において伝えた、雇用にあたっての配慮事項 1 短時間から勤務を開始し、少しずつ勤務する時間を増やしていく 2 本人が相談できる担当者の配置 3 簡単な業務から始め、本人に確認しながら、少しずつやれることを増やしていく 4 日々、顔色を見て、必要に応じて声がけし、本人の体調の把握に努める 5 調子が悪いときに、休みを取りやすくする 6 朝は、打合せ前後を使いコーヒータイムを作り、緊張を和らげる 7 休憩は現場を離れ、気持ちの切り替えや集中力の維持に活用する 8 定期的に受診しているかの確認を含めた、定期(随時)面談 改善策 4 キーワード 4 相談・コミュニケーション 5 支援制度の活用 助成金を有効活用し相談体制を構築  社団法人 宮城県雇用支援協会の雇用アドバイザーの助言を受け、障害者雇用納付金制度に基づく、業務遂行援助者の配置助成金を申請することに。上司の山口さんを業務遂行援助者として選任し、介護業務への指導、業務上の不安への相談、服薬管理や、病院への定期受診が行われているかの確認などを行っている。また、やむを得ず欠勤をしてしまった場合には、本人と連絡を取り、安心して出勤ができるよう声かけをしている。  山口さんだけでなく、管理者の井上さん、施設長の渥美さんも、野村さんへのこえかけを欠かさない。また、井上さん、渥美さんは、障害者雇用を進めていく上で、野村さん以外の職員の相談にも対応し、事業所全体で障害者雇用をサポートできるように配慮している。 18ページ 平成21年度 障害者雇用職場改善好事例 優秀賞 複数の中小企業からなる事業協同組合において、雇用拡大を実現 綾瀬市リサイクル協同組合(神奈川県綾瀬市) キーワード 1 職務創出 2 職務遂行 3 不安・緊張感の軽減 4 障害理解 5 相談・コミュニケーション 6 支援機関との連携 精神障害者雇用の経緯  組合員企業において、組合の共同作業施設の中で、作業に従事する知的障害者を13年以上雇用してきた経験があったため、組合自体においても、障害者雇用ができるのではないかと考えた。平成16年より、社会福祉法人 県央福祉会「県央地域就労援助センター ぽむ」の協力を得ながら、精神障害者社会適応訓練事業協力事業所として、精神障害者の受け入れを開始。同時に、知的障害者の受け入れも始める。その後作業現場の整備を進め、平成18年より継続的に雇用を進めている。 事業所の概要  昭和61年に設立。約3,000坪の共同作業施設において、綾瀬市民から排出される資源物(アルミ類、スチール類、ビン類、紙類等)の回収、容器プラスチックとペットボトル(綾瀬市が、ちょくに回収・搬入)のリサイクル処理(選別・解体等)を行っている。組合員企業数は5社で、各社が各資源の問屋機能としての実績をもつ。 主な従事作業 資源物等の回収・運搬・処理(選別・解体) 精神障害者雇用状況 従業員数11名 うち精神障害者6名 従事作業 資源物等の選別、解体 取り組みの概要 詳細は20ページより紹介します。 キーワード1 職務創出 キーワード2 職務遂行 改善前の状況 どのような作業に従事してもらったらよいか、検討がつかなかった。 改善内容 担当者が職務を細分化、いくつかの職務を組み合わせることで職務を創出した。また、作業のやり方を整理し、マニュアルを作成した。これについては改善策1の内容をご参照下さい。 改善後の効果 一人ひとりのマンパワーが発揮されるとともに、事業所全体の業務の効率化につながった。 キーワード3 不安・緊張感の軽減 キーワード4 障害理解 改善前の状況 組合に係わる従業員が一人ひとりの特性を把握しきれず、統一した対応をとることができなかった。 改善内容 担当者が中心となって一人ひとりの特性を整理し、対応マニュアルを作成した。これについては改善策2の内容をご参照下さい。 改善後の効果 精神障害者、周囲の従業員の相互理解と安心につながった。 キーワード5 相談・コミュニケーション キーワード6 支援機関との連携 改善前の状況 精神障害者、組合に係わる従業員双方が働きやすい職場作りが必要と考えた。 改善内容 専任の担当者の配置、支援機関との連携によるきめ細かな相談、グループによる作業等を行った。これについては改善策3の内容をご参照下さい。 改善後の効果 精神障害者がマンパワーを発揮でき、かつ周囲の従業員全員が働きやすい環境が整い、継続雇用につながった。 キーワード4 障害理解 キーワード6 支援機関との連携 改善前の状況 日々の細かな対応については担当者に任せるが、障害者雇用には、組織的な検討や対応が重要との考えが基本にあった。 改善内容 組合の役員会議、精神障害者に日常的に係わる従業員との会合等の場において、雇用状況にかかる情報を共有するとともに、対応法について検討した。これについては改善策4の内容をご参照下さい。 改善後の効果 精神障害者に対する理解向上、障害者作業施設設置等助成金の活用(6ページ参照)、雇用拡大につながった。 インタビュー 企業の声 湯山 真理子さん  障害者雇用を担当する組合所属の従業員は私1人ですが、私のほかにも、組合の共同作業施設で働く組合員企業の従業員等、合わせて15から16名が障害者と係わっています。  精神障害者が安定して働いていくためには、日常生活が安定していることが欠かせませんが、会社としては、生活面のフォローまではできないので、支援機関(地域就労援助センター)と連携し、役割分担をするようにしています。  現在一人ひとりが力を発揮し、戦力となっています。 20ページ 改善策紹介 担当者の専任、職務の創出、作業手順や支援方法の共有化等により、雇用拡大を図る 改善策1 キーワード1 職務創出 キーワード2 職務遂行 精神障害者のマンパワーを活かす職務をつくり出すとともに、作業マニュアルを整備  多岐にわたる作業の中で、どの作業を精神障害者に従事してもらえばよいかわからなかった。そこで、担当者に湯山さんを専任し、作業を一つひとつの工程に細分化して考えることから開始。その中で、効率性がそれほど求められず、かつ反復性がある作業(選別、解体)に焦点を絞り、それらをいくつか組み合わせることで、新たな職務を創出した。さらに、作業ごとにやり方を整理し、マニュアルを作成。組合に係わる従業員全員で共有した。  これらの取り組みの結果、組合の作業全般の見直しが図られ、精神障害者のマンパワーが発揮されるとともに、それまで選別、解体作業に従事していた従業員が、ほかの作業に集中することができるようになり、組合全体の作業の効率化につながった。 改善策2 キーワード3 不安・緊張感の軽減 キーワード4 障害理解 個々の特性を示した「タイプ別マニュアル」の作成  精神障害者の雇用にあたっては、同じ仲間がいるという安心感が継続雇用につながるとして、複数めい同時に受け入れてきた。しかし、それぞれの特性について組合に係わる従業員が把握しきれず、対応がバラバラになることがあり、障害者・周囲の従業員双方が不安になる状況がみられた。そこで、湯山さんが中心となって、一人ひとりの特性を整理した「タイプ別マニュアル」を作成。周囲の従業員が共有することによって、精神障害者への理解が深まるとともに、統一した対応をとることができ、障害者・周囲の従業員の不安が軽減した。 タイプ別マニュアルの内容は、次の通りです。 解体作業については 解体物は自分で選んでもらう。 自分で選ぶことによって、最後まで責任をもって作業にあたる姿勢を身につけることができる。 ミックス作業については 自分のペースで、作業してもらう。 その日その日の自分の体調に合わせての進め方ができるので、気持ちが楽になり、作業への意欲が出る。 また、一時間に一回、5分間の休憩を取ってもらう。 それで気持ちをリフレッシュしてもらう。 そして、次の作業への作業意欲がわく。 解体、ミックス、ライン作業については どの作業についても、何も言われない程度にこなしている面がある。 そこで、1つの作業を任せてやらせてみたり、「頼りにしているから、今日この作業を頑張ってくれる?」などと声をかけると、やる気を出して、いつも以上に頑張れる。 体調については 体調については、薬を飲むなどして自分で管理してもらう。 ○○の話題は、あまりしないほうが良い。 体調が悪くなる場合がある。 また、本人から○○の話題をふってきた場合は、話に乗る。 変に気を使うと、気にしてしまってかえって体調が悪くなる場合がある。 改善策3 働きやすい職場環境の整備 キーワード5 相談・コミュニケーション キーワード6 支援機関との連携  精神障害者がそれぞれのマンパワーを最大限に発揮し、かつ精神障害者と、組合に係わる従業員双方が働きやすい職場をつくるため、次の取り組みを行っている。 1 障害者雇用の担当として湯山さんを専任し、業務遂行援助者の配置助成金(6ページ参照)も活用。組合の共同作業施設内では、湯山さん以外にも、代表理事や組合員企業5社の従業員等、合わせて15人から16人の従業員が日々障害者に係わっているが、担当窓口を一本化することによって、職務内容の調整や従業員への障害理解等をスムーズに行うことができている。 2 湯山さんが中心となり、作業日誌やミーティング、定期的な個別相談(3ヶ月に1回程度)を通して一人ひとりの状況を把握し、勤務時間や休憩時間の調整等、必要に応じた対応をとっている。日常生活面の相談については事業所だけでは対応できないため、地域就労援助センターと連携を図っている。 3 一度に複数めいを受け入れ、グループで作業を行う形態をとることによって、限られた人員の中で周囲の従業員が目配りしやすくなり、さらに、障害者同士が協力し励まし合う、作業効率が上がる、リーダー的な役割の従業員が育成される等の効果が見られている。 4「できないことを指摘する」のではなく、「できるようにするためにどうするか」を一緒に考え「できることを増やす」ことをポイントに対応。自信が高まるとともに、出勤の安定につながっている。 改善策4 キーワード4 障害理解 キーワード6 支援機関との連携 事業所全体の対応により、雇用拡大を図る  普段は主として湯山さんが障害者に対応しているが、障害者雇用を含め、組合で行われるあらゆる事項については、月に1回おこなっている5社の組合員企業の代表者からなる役員会議において決定している。この役員会議の場を活用して、湯山さんが地域就労援助センターの協力のもと、障害者雇用が組合の生産性向上に寄与していること、また活用できる助成金制度について、具体例を挙げながら説明。さらに、役員会議終了後、湯山さんと、組合の共同作業施設において、日常的に障害者に係わっている組合員企業の従業員 数名とで話し合いの場を設け、障害者に係る情報の共有や対応方法の検討を行うよう努めている。  これらの取り組みにより、役員をはじめとした組合に係わる従業員全員の障害理解が高まり、平成21年4月より、綾瀬市から新たな業務を受託(プラスチック選別業務、固定燃料化処理業務)、障害者作業施設設置等助成金を活用して、作業施設を設置するとともに雇用拡大を図り、現在の精神障害者6名の雇用につながっている。  さらに、近隣の障害者の福祉施設から作業体験実習を受け入れる等、地域の障害者雇用拡大にも貢献している。 22ページ 平成21年度 障害者雇用職場改善好事例 優秀賞 新たな職務で、雇用創出とコスト削減を両立 日本イーライリリー株式会社(兵庫県神戸市) キーワード 1 障害理解 2 職務創出 3 支援機関との連携 4 職務遂行 5 相談・コミュニケーション 精神障害者雇用の経緯  平成13年4月、統合失調症治療薬の発売を機に、治療薬による症状緩和だけでなく、当事者の社会復帰や就労支援も企業使命であるとして、精神障害者雇用を検討。職務創出や仕事量の確保を行うとともに、ハローワークや地域の就労支援センターを訪問し、精神障害者の職業上の配慮事項等について理解を深め、平成18年2月に3名の精神障害者を採用した。 事業所の概要  米国インディアナ州インディアナポリスに本社を置く製薬会社、イーライリリー・アンド・カンパニーの日本法人。統合失調症、パーキンソン病、糖尿病、こつそ小症、成長ホルモン分泌不全に伴う低身長、非小細胞肺癌、膵癌等の治療薬を提供している。  精神障害(特に統合失調症)に関する、一般の人たちの理解を深める一助となることを目的として、精神保健福祉に貢献している人や、当事者を表彰する活動(精神障害者自立支援活動賞(リリー賞))を行っている。 主な事業内容 医療用 医薬品製造輸入販売 精神障害者雇用状況 従業員数1,874名 うち精神障害者7名 従事作業 施設管理(ファシリティマネジメント)部門でのクリアファイル仕分け、データ入力、倉庫整理、会議室管理、発送業務、請求書への支払い、施設管理部門のホームページ更新、人事部門での異動者の情報管理、情報技術部でのサーバ・電話の管理、メールアドレス作成等、医薬品製造工場での製造用水の試験業務 取り組みの概要 詳細は 24ページより紹介 キーワード1 障害理解 改善前の状況 精神障害者雇用を進めるためには従業員の理解が必要であった。 改善内容 社内専用イントラネットや社内報を通じて、精神障害者雇用の方針、取り組みを発信した。これについては改善策1の内容をご参照下さい。 改善後の効果 従業員の理解が進み、精神障害者に対する、声かけが増える。 キーワード2 職務創出 改善前の状況 コピーやメール発送のみでは作業量が確保できなかった。 改善内容 文房具のリサイクルや施設管理を新たな職務として創出した。これについては改善策2の内容をご参照ください。 改善後の効果 作業量が確保されるとともに、物品購入費の削減が実現した。 キーワード1 障害理解 キーワード2 支援機関との連携 新たな部署で雇用する際、現場からどのように接したらいいかという、不安の声があがった。 改善内容 ハローワーク職員と精神科医の協力のもとに、勉強会を開催するとともに、定期的に職場定着に関する助言をもらった。これについては改善策3の内容をご参照下さい。 改善後の効果 定期的に職場定着に関する助言が得られ、障害理解につながった。 キーワード4 職務遂行 キーワード5 相談・コミュニケーション 改善前の状況 精神障害者の不安を軽減し、業務に専念できる体制構築が必要と感じた。 改善内容 作業指導と業務の調整役として業務支援者を配置した。これについては改善策4の内容をご参照下さい。 改善後の効果 不安が軽減され、適切に業務遂行ができるようになり、モチベーション向上にもつながった。 インタビュー 企業の声 人事本部長 白江 正明さん  精神障害者の中には不安のつよいかたも多かったので、雇用を進める際には、急がず焦らず、成功体験を積み重ねてもらえるように取り組んできました。また、ハローワークや地域の就労支援機関の助言等を受けながら雇用を進めること、受け入れ部署のみの対応ではなく、企業として障害者雇用をサポートする体制を作っていくことが重要です。  周囲の従業員には、統合失調症の治療薬を製造している企業として、精神障害者への理解、雇用を進める上でのサポートを求めてきました。雇用が進むにつれ、他の部署からも障害者の受け入れを進めたいという声も出てくるようになりました。 従業員の声 施設管理部 井村 耕太郎さん  入社して働きやすい会社だと感じました。病気の有無に関係なく働けるからです。「この仕事をやることが自分にとってプラスになる」と意識しながら仕事をしています。それと、失敗を恐れず仕事をしていきたいと思っています。 従業員の声 Cさん  自分の体調に合わせた勤務時間や定時退社等、働きやすい仕組みが整っていると感じています。業務中は集中して、時間を大切に使うことを心がけています。 従業員の声 Dさん  私は会社勤務の経験が少なく、失敗もありましたが、会社は長い目で見てくれました。仕事ですから失敗は誰でもあると思います。その中で素直に言うことを聞いて、実行にうつすこと、向上心をいつも持って働くことを心がけています。 従業員の声 Eさん  プレッシャーはありますが、働くことができて充実しています。一人暮らしができていることは、昔では考えられないことです。経済的にも、精神的にも家族から独立できたことは喜びです。 従業員の声 Fさん  入社初期に比べて、依頼される仕事の内容のレベルがあがってきていると思います。障害者でも、普通の人と同じように仕事ができるという認識が広まったのではないかと感じています。他の従業員も普通に接してくれているのは、有難いと思います。 改善策紹介 障害への理解で新たな職務を創出、コミュニケーションで適切な業務遂行 改善策1 キーワード1 障害理解 社内イントラネットや社内報を通じて、精神障害者雇用の方針、取り組みを発信  日本イーライリリーでは「いつも患者様を中心に」という基本理念がある。精神障害者雇用の取り組みが患者理解につながると考え、雇用プロジェクトを立ち上げた。プロジェクトの推進には従業員の理解と協力が必要であると判断。社内イントラネット(LiliyNet)を活用し、社長の方針や福祉施設からの講演、働く精神障害者の声等を動画配信した。また、社内報で、精神障害者が働く施設管理部門の紹介も行った。  従来から従業員にダイバーシティーの意識が醸成されていたことや、製薬会社として統合失調症に対する理解があったこと、加えて、人事部が精神障害者雇用の取り組みを積極的に発信していったことが従業員の理解につながり、今では精神障害者に対する、さりげないこえかけを行う良い環境が芽生えている。 ダイバーシティーとは  性別、人種、国籍、宗教など異なる背景や価値観を持つ人々が一緒に働き、生産性を向上し、創造性を高めていこうとする考え方。社会倫理として「機会均等」を企業の人材戦略として前向きに捉えなおすもので、近年、企業において女性、若年者、高齢者、障害者などの多様な人材を登用する動きがみられている。 改善策2 キーワード2 職務創出 新たな職務創出が、作業量の確保とコスト削減につながる  当初、採用された精神障害者3名は、コピーやメール発送業務の一部を担当してもらっていた。しかし、作業量の確保や能力に応じた職務を担当してもらうためには、新たに職務創出(7ページ参照)する必要があった。  一方、従業員から会議室の椅子、カーペットの修繕等、施設管理に関する要望があげられていたものの、専属のスタッフがおらず、十分な対応ができていなかった。また、会社で必要な文房具が部署ごとに購入され、リサイクルが不十分であったため、コストがかかっていた。そこで、施設管理や文房具のリサイクルを新たな職務として創出した。  施設管理の専属スタッフとして従事することで、椅子やカーペットの修繕費用の削減、文房具のリサイクルが進み、前年度比で72万円の削減効果が得られた。  現在では施設管理に関して、各部署からの様々な依頼に対応している(「職務の一覧」は56ページ参照)。 改善策3 キーワード1 障害理解 キーワード3 支援機関との連携 専門家からの講義と定期的な助言により、障害理解が進む  平成20年に、研究所で製造用水の試験業務担当として精神障害者雇用を進めることに。研究所での受け入れが初めてであったため、統合失調症の特性や対応方法、体調が変調したときの兆候等について、勉強会を開催することとした。日常的に連携しているハローワーク職員と、こころの健康センターの精神科医に協力を仰ぎ、講義と質疑応答を実施。正しい知識を持つことで、従業員も安心して受け入れを行うことが可能となった。  なお、現在も定期的に、ハローワーク職員と、こころの健康センターの精神科医が研究所に訪問している。職場定着に関する助言が得られ、一層の障害理解につながっている。 改善策4 キーワード4 職務遂行 キーワード5 相談・コミュニケーション 業務支援者が作業指導と各部署からの調整を行う  本社では複数めいの精神障害者を雇用しており、彼らの職場定着を進めるためには、不安を軽減し、業務に専念できるよう、サポート体制を構築する必要があった。そこで、業務支援者を採用し、業務分担の割り振り、作業の仕上がりに対する助言、各部署から依頼される施設管理内容の調整を行うこととした(業務支援者が作成した「業務分担の週間スケジュール」は、57ページ参照)。  判断に悩む場合に相談できる業務支援者がいることで、精神障害者は安心して業務に専念することが可能となった。また、業務支援者が調整役になり、各部署の要望や自分たちの仕事の成果を本人達にフィードバックしている。そうすることで、適切な業務遂行とモチベーションの向上につながっている。 26ページ 優秀賞 大東コーポレートサービス株式会社(東京都港区) 特性に応じたきめ細かな支援により、安定した就労環境を構築 キーワード1 勤務時間の配慮 キーワード2 職務創出 キーワード3 職務遂行 キーワード4 相談・コミュニケーション キーワード5 不安・緊張感の軽減 精神障害者雇用の経緯  平成18年7月、関係者からの紹介がきっかけで精神障害者を雇用。試行錯誤しながら支援を行っていたが、より一層の支援体制の強化を目的に平成19年5月に精神障害者のサポート役として精神保健福祉士の資格を持つ従業員を雇用した。同年10月には精神障害者の雇用を目的とした部署を新たに立ち上げ、現在はこの部署も含め、合計9名の精神障害者が勤務している。 事業所の概要  平成17年5月、障害者の雇用を目的に大東建託株式会社の子会社として設立。同年8月に特例子会社(7ページ参照)の認定を受ける。  設立時は知的障害者4名、身体障害者1名、障害者職業生活相談員3名の計8名でスタート。親会社や関連会社の事務作業を受託して職域を広げ、現在従業員数は60名近くなり、知的障害者及び身体障害者、精神障害者が共に業務を行っている。 主な事業内容  大東建託株式会社・関連会社からの事務作業等の受託業務。名刺作成、大東建託株式会社の顧客向け冊子の印刷・製本・発送等、幅広く業務を行っている。 精神障害者雇用状況 従業員数58名、うち精神障害者9名 従事作業  文書のスキャン作業、アンケート入力、アパートの鍵、及び注文書管理、建物のペーパークラフト模型づくり、各種書類ファイリング等 27ページ 取り組みの概要 詳細は28ページより紹介 キーワード1、勤務時間の配慮 改善前の状況 精神障害者雇用をスムーズに進めていく方法を考える必要があった。 改善策1 改善内容 精神保健福祉士の資格をもつサポート役の従業員を雇用するとともに新たな部署を立ち上げた。また、勤務時間を3時間から徐々に増やしていくこととした。 改善後の効果 社内の支援体制が強化されるとともに仕事の内容・職場環境・通勤等に少しずつ慣れることが可能になった。 キーワード2、職務創出 改善前の状況 精神障害者がどのような仕事に取り組めるかを把握しておらず、業務内容が限定されていたため、モチベーションが低下した。 改善策2 改善内容 精神障害者の能力を把握し、受託業務を拡大。1人が一日に3から4種の業務に携われるようにした。 改善後の効果 作業のマンネリ化を防ぎ、集中力を維持することができるようになった。 キーワード3、職務遂行 改善前の状況 全員が統一的に業務を行うことができるよう、作業体制を整える必要が出てきた。 改善策3 改善内容 ミス防止のために、システムを開発し、パソコンに導入したり、作業のコツを伝える意見交換の場を設けたりした。 改善後の効果 効率的で安定した職務遂行が可能になった。 キーワード4、相談・コミュニケーション及び、キーワード5、不安・緊張感の軽減 改善前の状況 悩みや疑問を相談できる時間、場所が定められていなかった。また、職場での対人関係に悩む従業員がいた。 改善策4 改善内容 障害者職業生活相談員(7ページ参照)との相談場面を週に1度設けることとした。また業務研修としてSSTを導入した。 改善後の効果 ストレスが軽減され、安定した就労生活を進めることが可能となった。また、職場環境がよい方向に変化し、不安を和らげることができた。 インタビュー 企業の声 代表取締役社長 山崎亨さん  仕事に人をマッチングさせるのではなく、人に仕事を合わせることが大切だと考えています。事務の仕事の利点は、職務をいくらでも切り出すことができる点です。切り出した業務のバリエーションが約400種類ある中で、「納期を必ず守る」、「ミスのない仕事をする」をモットーに、その人ができる仕事を行ってもらうようにしています。 従業員の声 大山泰史さん  体調管理には気をつけており、疲れをためこまず、次の日につながるように仕事をしています。一日の中で一つの仕事をするのではなく、いろいろな仕事をすることは気分転換にもなります。 28ページ 改善策紹介 サポート役の従業員の雇用で、複数業務への従事を実現。相談や意見交換で安定した職務遂行へ。 キーワード1、勤務時間の配慮 改善策1 サポート役の従業員を雇用し、精神障害者の雇用を目的とした部署を新たに設置。短時間勤務から開始し、安定した就労環境を構築  精神障害者の雇用を進めるためにサポート体制の充実が必要と考え、精神保健福祉士の資格をもつ原さんを雇用し、さらに新たに部署(サービス4課)を立ち上げた。その後、原さんは障害者職業生活相談員の資格も取得。  雇用にあたっては、大半の人が3時間勤務のパートから開始し、様子を見ながら徐々に勤務時間を増やすこととしている。勤務時間は、会社と本人のみではなく、本人の主治医や医療機関のソーシャルワーカー等の助言を参考に決定している。  短時間勤務から始めることで、仕事の内容・職場環境・通勤等に少しずつ慣れることができた。本人のペースを中心とした勤務体系を障害者職業生活相談員と精神障害者が共に考え、短時間でもできる業務をこなすことで、安定した就労につながっている。体調が悪い場合は勤務時間を減らす、休みを多めに取る等、生活のリズム改善に努めてもらうようにしている。  また、サービス4課の設立当初は、障害者職業生活相談員と精神障害者のみであったが、今では他の障害の従業員や障害のない従業員を配属。最近では他の課への業務支援も取り入れたところ、いろいろな従業員と関わる機会を持つことで積極的に行動することができるようになり、職場に活気も出てきた。 キーワード2、職務創出 改善策2 一日に3から4種類の業務をローテーションすることにより、集中力を維持するとともに利益に貢献  雇用開始当初は、精神障害者がどのような仕事に取り組めるかを十分把握しておらず、業務内容を限定していた。そのため毎日同じ作業を繰り返すことになり、従業員のモチベーションが下がり気味であった。  そこで精神障害者の能力に応じた業務を見い出し、受託することとした。また、1人が一日のうち3から4種類の業務をローテーションで行うことができるよう、毎朝、障害者職業生活相談員が業務の分担を決定することとした。その結果、作業のマンネリ化を防ぎ、集中力が維持できるようになり、生産性の向上につながった。個々人の業務量については、必ず就業時間内に終わるよう調整を行うことで、自信や達成感をもてるよう工夫している。 29ページ キーワード3、職務遂行 改善策3 システムの開発、意見交換等による職務遂行の改善  精神障害者が従事する業務の一つである鍵の管理作業は、注文書の番号を1人が読み、もう1人がリストに手書きでチェックするという作業であった。手書きでチェックを行うため、ミスが多く、時間がかかっていた。そこで、注文書を検索するためのシステムを開発し、パソコンに導入することとした。この結果、チェックミスが減少。加えて作業に伴う疲労が軽減され、効率的で安定した職務遂行につながった。  また、指先の器用さを要求され、従業員により完成のレベルが、異なってしまうペーパークラフト作成業務については、作成が得意な従業員が手本となり、他の従業員にコツを伝える、作成に関する意見交換の場を設ける等の工夫を重ね、発注元のニーズに対応することができるようになった。 キーワード4、相談・コミュニケーション及び、キーワード5、不安・緊張感の軽減 改善策4 障害者職業生活相談員との相談時間を定期的に設けることによりストレスを軽減、コミュニケーション能力を高めるためにSSTを導入  精神障害者の抱えている悩みや疑問について相談できる場所がなかったことから、毎週金曜日に1人あたり15分から30分の「振り返り時間」を設け、障害者職業生活相談員が対応することとした。「振り返り時間」の中では、職場におけるスキルアップ目標の実施状況を確認し、一つひとつ乗り越えられるように支援した。また、振り返り用紙(58ページ参照)を元に就労面や生活面での困りごとや悩みごとの相談を受けるようにした。障害者職業生活相談員のみでは対応できない場合には本人と関わりのある関係機関や病院と連携する等、社会資源を活用して対応している。  「振り返り時間」を設け、職場と生活の両方の話を聴ける体制をつくることでストレスの軽減を図ることが可能となり、継続雇用にもつながっている。  また、就労生活を円滑に送る上で、対人関係を豊かにしていくことが重要であるという考えから、業務研修としてSST(社会生活技能訓練。日常生活の中で必要な対人技能やストレス対処技術の獲得を支援する訓練方法。取り組み内容は59ページ参照)を導入した。ひとりで行うSSTから取り組み、その後、身体障害者や知的障害者と一緒に行う、グループSSTも展開。コミュニケーションの練習を積み重ね、成功体験を積むことで不安を和らげることへつながった。コミュニケーション能力が高まり、取材や講演会に対応できる人が出てきている。 30ページ 奨励賞 有限会社サカイダ工研(宮城県村田町) 特性をふまえたきめ細かな配慮、保健所等との協力により、長期にわたる継続雇用 キーワード1 障害理解 キーワード2 職務遂行 キーワード3 不安・緊張感の軽減 キーワード4 体調管理 キーワード5 支援機関との連携 精神障害者雇用の経緯  社長と親交のあった町役場の保健衛生課長、地区担当の医師からの依頼をきっかけに、精神障害者の福祉作業所、宮城県精神保健職親会の設立・運営に係わる。昭和56年、初めて福祉作業所の通所生の中から3名を精神障害者社会適応訓練事業の訓練生として、受け入れ、その後2名を雇用する。家庭の事情等で2名とも退職したことから、新たに福祉作業所の通所生の中から2名を精神障害者社会適応訓練事業の訓練生として、受け入れ、平成11年12月に雇用に移行し、現在にいたる。 事業所の概要  昭和56年4月、境田社長が個人企業として創業し、昭和60年に有限会社となる。障害者雇用については、障害種別を問わず雇用経験はあるが、特に精神障害者の社会復帰に力を注いでおり、社長は宮城県精神保健職親会の副会長を務めている。 主な事業内容 自動車部分品・付属品製造業(精密金属プレス加工、精密金属カシメ・タップ加工、各種部品組立、スイッチ・コネクターエンボス加工等) 精神障害者雇用状況 従業員数21名、うち精神障害者2名 従事作業 金属プレス加工、梱包作業、集荷作業、カシメ作業 31ページ 取り組みの概要 詳細は32ページより紹介 キーワード1、障害理解 改善前の状況 従業員が精神障害者と一緒に働いた経験が無く、どのように接すればよいのかわからなかった。 改善策1 改善内容 地区担当の医師、保健師の協力を得て、社内教育を行った。 改善後の効果 従業員の理解が深まり、自然な体勢で受け入れることができた。 キーワード2、職務遂行及び、キーワード3、不安・緊張感の軽減 改善前の状況 障害特性に合った、継続勤務が可能な職種、職場環境を考える必要があった。 改善策2 改善内容 精神障害者社会適応訓練事業(職親制度 7ページ参照)からスタートし、目で見てわかりやすい指示を出したり、多種類の仕事に従事させる等、仕事や職場環境に徐々に慣れるよう配慮した。 改善後の効果 不安を感じたり、集中力が途切れることなく仕事に慣れることができ、長期的な継続雇用につながった。 キーワード2、職務遂行及び、キーワード3、不安・緊張感の軽減 改善前の状況 障害特性に合った、継続勤務が可能な職種、職場環境を考える必要があった。 改善策3 改善内容 精神障害者を1名ではなく複数名受け入れる、専任の指導者をつける等、安心して働くことのできる環境を整えた。 改善後の効果 仲間や指導者と、いつでもコミュニケーションを取ることができ、長期的な継続雇用につながった。 キーワード4、体調管理及び、キーワード5、支援機関との連携 改善前の状況 従業員の障害理解、体調管理、家族との連携において、事業所だけでは十分に対応できなかった。 改善策4 改善内容 地区担当の医師、保健師、家族と、ところどころで連絡を取り合った。 改善後の効果 各機関が役割を分担し、何かあればすぐに対応できる支援体制ができた。 インタビュー 企業の声 代表取締役 境田浩さん  仕事に慣れるまでには時間がかかりますが、慣れると堅実な仕事ぶりで間違いなく仕事ができ、他の従業員の模範になると感じています。自信をつけることが大事なので、始めから難しいことに取り組むのではなくて、「できること」から始めて実績を積み重ねる等、次第に目標を高くすることが、継続雇用につながっています。また、従業員全員の理解と協力が、精神障害者の社会復帰の基盤であると考えています。 32ページ 改善策紹介 医師や保健師等の協力のもと、障害への理解が深まり、働きやすい職場に キーワード1、障害理解 改善策1 地区担当の医師、保健師の協力を得て、社内教育を実施し、従業員の理解を深める  初めて精神障害者を受け入れた当時、社長は精神障害者の福祉作業所や宮城県精神保健職親会の設立・運営に係わっており、精神障害者に対する知識を得ていたが、他の従業員は精神障害者に対する知識や、一緒に働くうえでの心構え等がわからなかった。  従業員の理解と協力が不可欠と考えた社長は、地区担当の医師、保健師に来社してもらい、従業員全員に対して、精神障害者の特性について、理解を深めるための社内教育を行った。これにより、従業員全員に理解が深まり、スムーズな受け入れにつながった。  もともと家族的な雰囲気の職場で、休憩や昼食時は従業員全員で一緒に過ごす等、人間関係やコミュニケーションが密であるため、その後、従業員が何人か入れ替わっているものの、その都度、改めて社内教育を行わなくても、従業員の理解は受け入れ当初と変わらずに得られている。 キーワード2、職務遂行及び、キーワード3、不安・緊張感の軽減 改善策2 徐々に仕事や職場環境に慣れるよう、作業指示や職務の内容を配慮  精神障害者社会適応訓練事業を利用して受け入れを開始し、時間をかけて、不安と緊張を軽減しながら雇用に結びつけることを目的として、以下の取り組みを行った。 1 部品の使用目的のポイントをイラストで示す等、わかりやすい指示を出す 2 簡単な作業から始める 3 長時間同じ作業を行うことで集中力が低下しないよう、何種類かの仕事をローテーションで行うようにする  この結果、徐々に仕事や職場環境に慣れ、フルタイムで長期的な継続雇用につながった。現在、真面目で黙々と働く姿は他の従業員の模範となっている。 33ページ キーワード2、職務遂行、及びキーワード3、不安・緊張感の軽減 改善策3 精神障害者を複数受け入れ、指導者の専任により、安心して働くことのできる環境をつくる  過去に福祉作業所より精神障害者を1名受け入れたことがあったが、初めての場所に1人で来たことで、不安を感じて、勤務が続かなかったことがあった。この経験をふまえ、複数を同時に受け入れるようにしたところ、自分1人ではない、という、心強さにつながるとともに、よい意味でお互いのライバル意識も芽生えている。また、複数のうち、1名が社内で注意されたり、ほめられた際に、お互いに情報交換をすることで、注意されないよう気をつけたり、自分もほめられたい、という、刺激になる等、複数を雇用することの効果が見られている。  また、仕事をするうえでは、それぞれに専任の指導者をつけ、いつでも相談できる体制をとっている。  これらの取り組みにより、安心感につながり、長期的な継続雇用の一因になっている。 キーワード4、体調管理及び、キーワード5、支援機関との連携 改善策4 医師や保健師、家族と連携・役割分担することにより、支援体制を強化  精神障害者の雇用の継続には、服薬や通院を継続すること、日常生活が安定していることが欠かせない。ただし、事業所では勤務時間の8時間は相談にのることができるが、それ以外の時間を支えるのは難しい。このような考えのもと、医師や保健師、家族と、ところどころで連絡をとるように努めてきた。  例えば、社長や従業員が本人の顔色や態度から、体調がすぐれないことを察し、本人から直接、話を聞いたところ自己判断で服薬をしていないことがわかった。そこで、保健師に連絡、保健師が来社し、本人に対して指導するとともに、保健師から通院先の主治医にも報告し、主治医からも本人に対して、指導をしてもらった。このような早急な連携プレーにより、体調の悪化につながらずに済んだ。  また、家族の理解や協力も重要と考え、家庭において自然に接しつつ、できるだけその日にあったできごとを聞いてもらうよう、繰り返し伝えた。この結果、職業生活を支える家族の役割について、理解が深まった。  このように、事業所、支援機関、家族がそれぞれの役割を担いながら、支援体制を強化し、長期的な継続雇用を支えている。 34ページ 奨励賞 株式会社リコー 福井事業所(福井県坂井市) 社内体制の整備とリワーク支援の活用で職場復帰をサポート キーワード1 リワーク支援 キーワード2 職場復帰 キーワード3 相談・コミュニケーション キーワード4 メンタルヘルスケア 精神障害者雇用の経緯  平成10年代に入社した男性社員Gさんは、職場に派遣社員が多くなる等の環境の変化によりストレスを感じ、精神疾患を発症。平成18年7月から休職をする。株式会社リコーの他の工場から地域障害者職業センターのリワーク支援について情報提供を受け、平成19年4月から同支援の利用を開始。併せて、事業所、福井障害者職業センター、産業医等による職場復帰支援体制を整備し、平成19年9月に職場復帰にいたる。 事業所の概要  昭和57年4月から操業を開始し、高度化する情報化社会の中で情報を出力するために不可欠な情報機器関連サプライ(トナー、感熱紙、熱転写リボン)製品を生産している。また、より信頼性の高い製品を提供するために、生産体質の革新、安全衛生活動、環境改善活動にも力を入れている。 主な事業内容 OA機器用サプライ製造(トナー、感熱紙、熱転写リボン) 精神障害者雇用状況 従業員数318名、うち精神障害者1名 従事作業 トナーの品質向上のための、コンピューターを活用したシミュレーション 35ページ 取り組みの概要 詳細は36ページより紹介 キーワード1、リワーク支援 改善前の状況 1年2ヶ月間、休職していたので体力不足や生活リズムが整っているか不安であった。 改善策1 改善内容 福井障害者職業センターが実施しているリワーク支援(7ページ参照)を活用した。 改善後の効果 生活リズムが整い、リワーク支援修了後、職場復帰した。 キーワード2、職場復帰 改善前の状況 職場復帰後は、復帰先部署が対応していたため、きめ細やかな対応が難しかった。 改善策2 改善内容 人事担当者、産業医、保健スタッフ、復帰先部署の上司、福井障害者職業センター等でサポート体制を整備し、情報共有の機会を設定した。 改善後の効果 関係者の情報共有と助言をもとに、Gさんの状況に応じたサポートが可能となり、職場復帰がスムーズに進んだ。 キーワード3、相談・コミュニケーション 改善前の状況 職場における、メンタルヘルス不全のリスクを軽減するための、取り組みが必要であった。 改善策3 改善内容 従業員に対するカウンセリングとウェルネスチェックにより、高リスク者の早期発見と対処に努めた。 改善後の効果 メンタル不全による新たな休職者の増加がみられなくなった。 キーワード4、メンタルヘルスケア 改善前の状況 組織として、メンタルヘルスケアに取り組む必要性を感じていた。 改善策4 改善内容 管理監督者に対するメンタルヘルスケアの研修や長時間過重労働への対策を行った。 改善後の効果 新たな休職者の増加がみられなくなった。 インタビュー 企業の声 福井総務グループ 坪川佐多夫さん、医務室看護師 南坂一美さん  職場復帰については、主治医、産業医の意見を良く聞くことが大切です。今回の事例では、休職から職場復帰まで、こまめに情報を収集し、本人の状況に応じた配慮ができたことが良かったと思います。  病状が安定したと診断されても、職場ですぐに力を発揮できない場合があります。その場合には、リワーク支援を活用して、職場復帰に備えるということも、有効な方法だと思います。 従業員の声 Gさん  福井障害者職業センターのリワーク支援では、徐々に参加する時間を延長したので、疲労を溜めずにプログラムに参加することができました。また、職場復帰を目指すメンバー同士と意見交換することができて、とても励みになりました。精神的にも楽になったのを覚えています。今は、規則正しい生活リズムを送れるように心がけています。 36ページ 改善策紹介 リワーク支援の活用で、安心して職場復帰を実現。復帰後もメンタルヘルスケア等を実施 キーワード1、リワーク支援 改善策1 リワーク支援を活用し、職場復帰に向けて、ソフトランディング  1年2カ月休職していたGさんにとっては、会社で働くことを想定した体力の向上、生活リズムを整えることが必要であったという。その頃、他の工場から地域障害者職業センターが実施している、リワーク支援について情報提供を受ける。  本人、主治医、事業所3者で話し合い、平成19年4月から6月の3カ月間、リワーク支援を利用することになった。  リワーク支援では、福井障害者職業センターに通所しながら、軽作業や事務作業を通じて、生活リズムを整えていく。また、グループミーティングや個別相談を通じて、仕事に対する考え方(頑張りすぎて自分に負担をかけてしまう、完璧を目指す等)を見つめ直す機会を設けている。  Gさんは週3日半日のプログラムから開始し、最終的には週5日6時間のプログラムに参加することが可能となり、職場の復職判定の結果、職場復帰することとなった。  事業所にとっても、職場復帰する前にソフトランディングできる場があったことで、職場で必要な配慮を見極めることができたという。 リワークカリキュラムの一例 月曜日 午前、事務課題 午後、自習課題(資格試験等) 火曜日 午前、事務課題 午後、自習課題(資格試験等) 水曜日 午前、事務課題 木曜日 午前、アサーショントレーニング(コミュニケーション訓練) 午後、グループミーティング(ストレス対処) 金曜日 午前、個別相談 午後、リラクゼーション  支援期間及び時間、カリキュラム、スケジュールについては、個々の状況を踏まえて設定している。 キーワード2、職場復帰 改善策2 人事、医療関係者、福井障害者職業センターがチームで職場復帰をサポート  従来、職場復帰後の対応は、復帰先部署が中心におこなっており、必ずしも個々の病状に応じた配慮がとれていなかった。そこで、Gさんの職場復帰にあたり、社内の職場復帰支援体制を、整備することとした。  支援体制は、人事担当者、産業医、看護師、Gさんが所属する職場の上司、外部委託しているEAP(6ページ参照)実施機関のカウンセラー(以下、EAPカウンセラー)、福井障害者職業センターで構成する。  2週間に1回、関係者が集まり、EAPカウンセラーや看護師がおこなったGさんとの相談内容や、リワーク支援の経過について情報共有し、職場の対応方法等について検討を行った。  復帰先の職場の上司にとって、人事や医療関係者、福井障害者職業センターの助言を得ながら、Gさんをサポートできたメリットは大きかった。また、Gさん自身にとっても、EAPカウンセラーや看護師を通じて自分の状況を会社に伝えてもらえるため、無理のない職場復帰が可能となった。  職場復帰後3ヵ月間、関係者間で情報共有の機会を継続し、フォローを行った。現在では、EAPカウンセラーと看護師の面談を中心に、ケアを行っている。 37ページ キーワード3、相談・コミュニケーション 改善策3 カウンセリングとウェルネスチェックでリスクを軽減  Gさんの職場復帰後、継続的なフォロー体制として、EAPカウンセラーが、2週間に1回カウンセリングをしている。EAPカウンセラーが来所しない週は、看護師が、面談を行っている。  EAPカウンセラーによるカウンセリングは、一般従業員も利用可能である。カウンセリングを気軽に受けてもらえるよう、全従業員に対し、30分間の体験カウンセリングを実施している。  また、1年に1回、全従業員が中央労働災害防止協会の中災防ウェルネスチェックシートを実施し、その結果を基に、産業医とEAPカウンセラーが個別面談を行い、メンタルヘルス不全の高リスク者の早期発見と対処に努めている。  さらに、毎週水曜日をノーメールデーとし、メールによる連絡を控え、電話や直接対話を増やすことで、社内のコミュニケーションを活性化するという工夫も行われている。  これらの取り組みを開始してから、メンタル不全による新たな休職者の増加はみられていないという。 キーワード4、メンタルヘルスケア 改善策4 組織としてメンタルヘルスケアができるシステムづくり  さらなるメンタルヘルスケアの取り組みとして、管理監督者に対するメンタルヘルスセミナーを実施し、ケアの充実を目指した。セミナーは、課長、係長の92%が受講している。  また、長時間過重労働への対策も実施。1ヶ月53時間以上の残業を行った従業員に、その都度、労働者の疲労蓄積度自己診断チェックリスト(ホームページ・アドレス http://wwwドットjaishドットgrドットjp/td_chk/tdchk_e_listドットhtml)を、行うこととしている。チェックリストを通じて、 1 体調不良を自覚し、産業医の面談を希望する従業員 2 本人が産業医の面談の必要性を感じずとも、上司からみてフォローが必要な従業員 3 産業医からフォローが必要と思われる従業員、 に対して、面談を実施することで、早期にフォローできるようシステムを構築している(60ページの長時間残業者健康管理システムでの個人フォローの仕組みを参照)。  さらに、毎週、水曜日と金曜日をノー残業デーとして設定。ICカードの社員証により入館、退館時間が記録され、ノー残業の実施率を詳細に把握することで、残業時間の縮減に努めている。併せて、業務の改善を通じて効率化を進め、一層の残業縮減につなげているという。 38ページ 奨励賞 株式会社共同運輸(熊本県合志市) 支援制度の活用、社内の受け入れ体制の整備により、複数の職場定着を果たす キーワード1 支援制度の活用 キーワード2 勤務時間の配慮 キーワード3 体調管理 キーワード4 相談・コミュニケーション キーワード5 障害理解 精神障害者雇用の経緯  社長が社会福祉法人共生福祉会の評議員になり、同法人が運営する福祉工場で働く障害者を見たことがきっかけで、障害者の受け入れに協力できないかとの考えを持つようになった。その時期に、就労支援機関から障害者の受け入れについて要請があったため、受け入れを開始した。以来、関係機関との連携のもと、精神障害者を含め、障害を限定せず、職場体験を通じて本人に合う仕事があれば雇用している。 事業所の概要  昭和46年に設立。熊本県内に幾つかの物流センターを持ち、顧客のニーズに合わせた物流システムを開発・提案している。例えば、顧客企業の調達物流から販売物流までトータルに取り扱うことで効率化、コストダウンに寄与している。商品の集荷・在庫・流通加工・仕分け・配送の各業務においても、蓄積したノウハウと改善の継続により、高い品質を持っている。単にモノを運ぶだけではなく物流全般のトータルソリューションを提案する物流コンサルティングを手がけている。 主な事業内容 一般貨物運送業、物流センター事業 精神障害者雇用状況 従業員数299名、うち精神障害者6名 従事作業 荷下ろし、仕分け、梱包等 39ページ 取り組みの概要 詳細は40ページより紹介 キーワード1、支援制度の活用 改善前の状況 個々の状況に合わせた受け入れを、進めていきたいとの考えがあった。 改善策1 改善内容 障害者委託訓練、精神障害者ステップアップ雇用、ジョブコーチ支援、リワーク支援等、さまざまな制度を活用した(以上6ページから7ページ参照)。 改善後の効果 複数の雇用、職場定着につながった。 キーワード2、勤務時間の配慮、及びキーワード3、体調管理 改善前の状況 最初から通常の勤務条件で継続することには不安があった。 改善策2 改善内容 精神障害者ステップアップ雇用とジョブコーチ支援を、活用する中で、徐々に勤務時間の延長を行ったり、体調管理を適切に行うようはたらきかけた。 改善後の効果 勤務時間の延長、体調の自己管理を果たし、継続勤務につながった。 キーワード4、相談・コミュニケーション 改善前の状況 ミスをした際の、適切な対応や、わからない時の質問が十分にできない傾向が見られた。 改善策3 改善内容 ジョブコーチ支援を活用する中で、ジョブコーチが本人、周りで働く従業員双方の意見を聞き、調整を行った。 改善後の効果 適切な対応ができるようになるとともに、周りで働く従業員との人間関係の改善につながった。 キーワード5、障害理解 改善前の状況 関係機関の支援だけに頼らず、社内の理解や支援体制の整備が必要だと感じていた。 改善策4 改善内容 障害者職業生活相談員(7ページ参照)認定講習、労働衛生委員会、外部機関の勉強会等、様々な機会を通じて、支援者の育成、精神障害者の理解促進に努めた。 改善後の効果 社内の理解促進、支援体制の強化につながった。 インタビュー 企業の声 第2物流センター長 坂本英之さん、第1事業部長兼第3物流センター長 村井良司さん  精神障害のかたは、仕事の理解度が高いと感じています。雇用管理のポイントは、メンタル面のフォローであり、相談はマメに行うようにしています。今後も、当社の中でステップアップを図っていくよう、支援していければと思っています。 従業員の声 Jさん  仕事には慣れてきました。ここの会社で働くことで、仕事と休日のメリハリがついて、よいと感じています。今後も長く働いていきたいと思っています。 40ページ 改善策紹介 様々な職務と支援制度の組み合わせで、個々にあった受け入れを実現 キーワード1、支援制度の活用 改善策1 個々の状況に合わせた受け入れを行うことで、複数の雇用及び職場定着を果たす  物流関係業務は職務内容が細分化されており、様々な職務が組み立てやすいことから、障害を問わず、個々の特性に応じた受け入れを行うというスタンスで、障害者雇用を行ってきた。  精神障害者についても、このスタンスのもとで一人ひとりに合った職務を検討し、さらに、障害者委託訓練、精神障害者ステップアップ雇用、地域障害者職業センターのジョブコーチ支援等の、支援制度を活用している。また、休職した従業員で、地域障害者職業センターのリワーク支援を活用して、職場復帰を果たした例もある。  このように、多種類の職務と制度を組み合わせることで、個々の状況に合った無理のない受け入れが可能となり、合わせて6名の雇用、職場定着につながっている。 キーワード2、勤務時間の配慮及び、キーワード3、体調管理 改善策2 精神障害者ステップアップ雇用とジョブコーチ支援を活用し、段階的に継続勤務を果たす  物流センターに勤務するJさんは、最初から通常の勤務条件で働くには不安があったため、3ヵ月間の障害者委託訓練からスタート。障害者委託訓練は、現在の勤務場所ではなく、本社で行った。仕事の内容はお菓子のラッピングや箱詰め等、座って行う作業で、勤務時間も3時間から、というように、心身の負担がかかり過ぎない条件を配慮。この結果、徐々に職場に慣れ、勤務時間も増やすことができ、雇用が決定した。  雇用にあたって、勤務場所は、通勤の利便性や業務内容を考えた結果、現在の物流センターに決定。また、精神障害者ステップアップ雇用を活用することとし、物流センターの勤務時間がこれまでの障害者委託訓練期間とは異なり、午後の勤務であったため、まずは4時間勤務からスタート。さらに、物流センターにおいては精神障害者の受け入れが初めてであったことから、本人、事業所の間に立つ支援者が必要であると考え、熊本障害者職業センターのジョブコーチ支援も、併せて活用することとした。  雇用当初、慣れない午後からの勤務であり、また曜日によっては肉体的にきつい作業もあったため、休みが目立つようになった。そこで、ジョブコーチが本人や家族、医療機関とも相談のうえ、「体調不良時の対応表」や「体調のチェック表」を作成し、体調を確認しながら、出勤できるような状態であればできるだけ出勤することを促した。この結果、休みが減り出勤が安定するようになり、勤務時間も1時間延長することができた。その後精神障害者ステップアップ雇用から正式な雇用に移行し、現在にいたっている。 41ページ キーワード4、相談・コミュニケーション 改善策3 ジョブコーチ支援を活用し、周囲の従業員との人間関係をつくる  雇用当初、ミスをした際に、適切な対応をとることがなかなかできない、わからないことがあっても周りの従業員に質問することができず、自己判断で行ってしまう、といった面も見られた。また、従業員の何気ない一言を、被害的に捉えてしまうこともあった。  そこでジョブコーチが間に入り、本人及び従業員と相談、ミスをした際の適切な対応方法について、話し合ったり、わからないことがあった場合の具体的な対応方法について、ルールを決めるようにした。また、従業員が、本人にどのように接したらよいか戸惑っていたため、従業員とジョブコーチのミーティングを定期的に行い、本人への理解促進をはたらきかけた。  この結果、適切な対応ができるようになり、また周囲の従業員の理解も徐々に得られ、人間関係の改善が図られている。 キーワード5、障害理解 改善策4 障害者職業生活相談員講習、安全衛生委員会、勉強会等の機会を通じて、社内の支援体制を整備  これまで、支援機関や支援制度をうまく活用し雇用につなげているが、長期的に継続雇用していくためには、社内の支援体制の整備も必要であると考え、3・4年前から1年に1から2名のペースで、従業員が障害者職業生活相談員講習を受講している。現在、障害者職業生活相談員として認定されているのは、9名。第2物流センターの坂本センター長は、障害者職業生活相談員の認定に加え、第2号職場適応援助者の資格も取得している。  また、月1回本社で行う安全衛生委員会において、精神障害者の状況について報告して対応方法について検討したり、産業医からアドバイスを受ける等、精神障害者に対する対応方法の理解を、深める取り組みも行っている。  さらに、近隣の社会福祉法人が主催する、精神障害者に関する勉強会に、管理職3名が参加し、そこで学んだ内容を各職場に持ち帰って、啓発を行った。  このように、様々な機会を通じて、支援者の育成、社内の支援体制の強化を図っている。 用語解説 第2号職場適応援助者  第2号職場適応援助者とは事業主が自ら配置するジョブコーチ。地域障害者職業センターと連携しながら、職場適応援助者助成金を活用して、支援を行います。配置にあたっては要件があります。詳しくは、地域障害者職業センター(97ページ参照)にお問い合わせ下さい。 42ページ 奨励賞 株式会社サムズインターナショナル(沖縄県中城村) 休職から職場復帰を経て、CADエンジニアとしての雇用を継続 キーワード1 支援機関との連携 キーワード2 職場復帰 キーワード3 リワーク支援 キーワード4 勤務時間の配慮 キーワード5 相談・コミュニケーション キーワード6 職務遂行 キーワード7 ジョブコーチ支援 精神障害者雇用の経緯  5年前にCADエンジニアとして雇用したHさん(男性)。他県に赴任したが、他県での不慣れな生活や単身赴任による孤独感等から、精神的に悩むようになり、休みが増えた。その後、病院で精神的疾患と診断され、休職する。約2年間の休職期間を得て、復職。 事業所の概要  沖縄県では数少ないバイリンガルIT企業。東京都にも事業所がある。ハワイの学校から社員を採用する等、外国人や留学経験のあるバイリンガル・スタッフを基盤として、主に日本に進出している外資系の会社(特に金融系や通信系企業)にて開発や運用のサポート業務を行い、順調に業績を伸ばしている。さらに、新しい分野では、3次元キャド(CATIA等の機械設計キャド)にも力を注いでいる。 主な事業内容 情報サービス業 精神障害者雇用状況 従業員56名、うち精神障害者1名 従事作業 CADエンジニア 43ページ 取り組みの概要 詳細は44ページより紹介 キーワード1、支援機関との連携 改善前の状況 休職中の居住地が他県(熊本県)にあり、どのように復職に向けた相談を始めたらよいかわからなかった。 改善策1 改善内容 熊本障害者職業センターと、事業所所在地にある沖縄障害者職業センターを活用した。 改善後の効果 熊本県から沖縄県に戻り、復職を果たすまで、支援が途切れることがなく、復職に向けた取り組みがスムーズに進んだ。 キーワード2、職場復帰及び、キーワード3、リワーク支援 改善前の状況 本人、事業所双方に復職に対する不安が大きかった。 改善策2 改善内容 リワーク支援(7ページ参照)を活用した。 改善後の効果 復職に向けて、徐々に体力や気力を回復することができ、また事業所も本人の様子がわかり、適切なタイミングと条件で復職を果たすことができた。 キーワード4、勤務時間の配慮及び、キーワード5、相談・コミュニケーション 改善前の状況 復職にあたって、本人の働きやすい環境を整える必要があった。 改善策3 改善内容 勤務条件の調整、社内における支援者の専任等を行った。 改善後の効果 復職にあたって、不安を軽減することができた。 キーワード6、職務遂行及び、キーワード7、ジョブコーチ支援 改善前の状況 復職後、意欲が先走る、がんばり過ぎてしまう、整理整頓がうまくできない等の状況が見られた。 改善策4 改善内容 ジョブコーチ支援(7ページ参照)を活用し、仕事の内容及び、進め方の整理や、整理整頓に関する支援を行った。 改善後の効果 適度に仕事を行う姿勢、整理整頓等が徐々に身についた。 インタビュー 企業の声 事業推進本部 津田泰志さん  当社として初めてのケースで、どのように対応したらよいかわかりませんでしたが、熊本及び、沖縄障害者職業センターの支援を得て、本人の状況や対応方法がわかり、復職に向けて具体的に取り組むことができました。また、本人は何か困ったことがあっても自分からなかなか言えないタイプですが、ジョブコーチを通してだんだん言えるようになり、よかったと感じています。 44ページ 改善策紹介 リワーク支援やジョブコーチ支援の活用で、本人、会社の不安を解消、段階的に職務復帰を果たす キーワード1、支援機関との連携 改善策1 2つの県の地域障害者職業センターを活用し、連続した支援を得る  雇用後に調子を崩し休職することになったHさんは、しばらくの間、熊本県で生活することとなった。休職して約1年経った頃、復職に対する焦りや不安が見えてきた。この間、Hさんから月1回程度連絡をもらうようにしていたが、沖縄県に戻って復職することに向けて、どのように準備を進めてよいかわからなかった。その頃、主治医から本人に対し、熊本障害者職業センターの情報提供があり、本人が相談のために出向いたことがきっかけとなり、以後熊本障害者職業センターと係わりをもつようになった。熊本障害者職業センターの障害者職業カウンセラーから、時折メールでHさんの様子について連絡が入るようになり、Hさん自身からの連絡と合わせて、Hさんの様子がタイムリーにわかるようになった。  その後、Hさんは沖縄県に戻ることとなり、沖縄障害者職業センターの利用を開始。Hさんと沖縄障害者職業センターの障害者職業カウンセラーを交え、復職に向けた具体的な相談を開始した。  全都道府県で支援を展開している、地域障害者職業センターを利用することで、熊本県で得られていた支援が沖縄県でもスムーズに引き継がれ、両県で連続性のある支援を受けることができ、復職に向けた具体的な取り組みにつながった。 キーワード2、職場復帰及び、キーワード3、リワーク支援 改善策2 リワーク支援の活用  熊本障害者職業センターと沖縄障害者職業センターにおいて、リワーク支援の場を活用。具体的には、復職に向けた生活リズムを取り戻すことを目的に、センター内で行われている講座等のプログラムに週に2、さんにち、それぞれ半日程度通うことから始め、徐々に回数と時間を伸ばした。また、同じように復職を目指す他の利用者の人達とグループで意見交換を行うプログラムにも参加する等、他者とコミュニケーションをとることも目標とした。  一方、Hさんに、エンジニアとしての技術のブランクを取り戻したい、という、強い希望も見られ、熊本県にいる間に、企業が無料で行っている異業種交流会のキャド(機械設計)講習にも参加。技術の維持・向上にも取り組んだ。  これらの様子は、2つの障害者職業センターから定期的に伝えられ、復職の目安となった。 45ページ キーワード4、勤務時間の配慮及び、キーワード5、相談・コミュニケーション 改善策3 復職に向けた条件や環境の整備を行う  2つの障害者職業センターの支援を通して、体調の回復や技術の維持を確認することができたため、復職に向けた条件の整理を行った。無理なく復帰できるよう、Hさん、主治医、沖縄障害者職業センターを交えた話し合いのもと、次の配慮を行うことに決定。  勤務時間は復職前と同様に9時から18時とするが、休日を一日増やし、土日・祝日に加え、水曜日を休日とした。また、できるだけ残業はしないよう配慮する。  社内で業務面と日常面で本人をサポートするための従業員を専任する。(業務面 直属の上司1名、日常面 総務担当の4名が交代でサポート)サポート役の従業員は、毎日声をかけ、健康状態や業務の進捗状況等を確認しつつ、Hさんが気軽に相談できるよう心がける。  また、復職にあたっては、重度中途障害者等職場適応助成金(6ページ参照)を活用した。 キーワード6、職務遂行及び、キーワード7、ジョブコーチ支援 改善策4 ジョブコーチ支援を活用し、適切に仕事を行う体制づくりや、整理整頓に取り組む  復職後、CATIA技術者育成のための講師として業務に従事したが、意欲が先走り、また他の従業員へ負担をかけまいとして、1人で頑張りすぎて、行き詰まってしまい、精神的に不安定になる状況が見られた。また、業務に集中し過ぎて、データや書類の整理がうまくできずに、かえって非効率になってしまう状況も見られた。  社内のサポート役を中心に相談・助言を行うことで対応してきたが、どのように対応したらよいかわからない場面もあり、なかなか根本的な改善が図られなかった。そこで、沖縄障害者職業センターの障害者職業カウンセラーと相談。一定期間で集中的に課題の整理・改善を図るため、ジョブコーチ支援を利用することとし、ジョブコーチの助言のもと、主として次の取り組みを行った。  1つの業務に集中しすぎて行き詰まることを避けるため、講師の業務に加え、Hさんの趣味でもある機械整備に関連する「パソコンの解体・組み立て」を行うこととし、適度に気分転換を図ることができるようにした。  整理整頓をスムーズに行うため、USBメモリーとファイルを使って、データや書類をカテゴリー別に整理・保管するよう助言した。  この結果、適切なスケジュール管理や整理整頓ができるようになり、精神面の安定、業務の効率化につながった。 46ページ 奨励賞 社会福祉法人まつみ福祉会介護老人保健施設桜山荘(沖縄県豊見城市) グループワークやアンケートを通じて、障害者の意見を職場に反映 キーワード1 障害理解 キーワード2 ジョブコーチ支援 キーワード3 職務遂行 キーワード4 体調管理 キーワード5 相談・コミュニケーション 精神障害者雇用の経緯  高齢者介護においては安易な機械化・合理化は不適切であり、多くの人材が必要である。しょうし高齢化が進展する中、ますます介護職員の確保が困難になることを想定し、障害者雇用を検討。平成15年に、清掃、ベットメイキングの作業で障害者求人を出したところ、精神障害者からの応募があった。法人内の関係施設において、既に精神障害者を雇用した実績があったことから、トライアル雇用を活用し採用した。 事業所の概要  平成元年12月に介護老人保健施設桜山荘を開所。その後、通所リハビリテーションセンター、訪問介護センター、グループホーム、地域活動支援センター等を開所。また、平成20年4月に複合施設「共に生きる町」を設立し、高齢者、障害者、乳幼児等がお互いに支えあいながら、日中の生活を共に過ごす共生ケアの実現を目指し、就労移行支援、就労継続支援事業を運営している。 主な事業内容 介護保険法に基づく高齢者介護、障害者自立支援法に基づく障害者福祉サービス事業 精神障害者雇用状況 従業員数271名、うち精神障害者6名 従事作業 事務補助、シーツ交換、配茶、おやつ配り、清掃、洗濯、衣服たたみ、収納、送迎補助、体位交換、食事摂取介助、着脱介助、入浴介助、オムツ交換、トイレ誘導、介助等 47ページ 取り組みの概要 詳細は48ページより紹介 キーワード1、障害理解及び、キーワード2、ジョブコーチ支援 改善前の状況 障害者雇用を進めるに当たり、職員のコンセンサスを得る必要があった。 改善策1 改善内容 職員会議において、「障害者雇用促進に関する理念」を提案した。受け入れに際し、沖縄障害者職業センターのジョブコーチ支援(7ページ参照)を利用した。 改善後の効果 清掃業務で障害者雇用を開始。現在、介護業務に職域が拡大した。 キーワード3、職務遂行 改善前の状況 作業中に複数の指示が出されたため、障害者が混乱した。 改善策2 改善内容 業務指示の一本化を図った。就労支援向上計画書でスキル習得状況に応じた業務分担を行った。 改善後の効果 指示が一本化され、混乱がなくなった。段階的な指導により、着実な職務遂行に結びついた。 キーワード4、体調管理 改善前の状況 服薬管理が十分でなく、体調不良を引き起こすケースがあった。 改善策3 改善内容 障害者職業生活相談員(7ページ参照)が中心となって、出勤時に体調や服薬状況を確認。 改善後の効果 体調不良の早期発見と対処が可能となった。 キーワード5、相談・コミュニケーション 改善前の状況 障害者職員の意見、要望を把握する機会が少なかった。 改善策4 改善内容 グループワークやアンケートを通じて、障害者職員の意見、要望を確認。 改善後の効果 障害者職員の意見を反映し、休憩スペースを設置する等の改善につながる。また、グループワークで新たなスキルを獲得。就職してよかったという意見が増える。 インタビュー 企業の声 事務長 山下政広さん  精神障害者を雇用して良かった点は、お年寄りに対して根気良く食事介助をしてくれたり、気持ちに寄り添って接してくれたりするところです。採用にあたっては、本人との面接に加え、ハローワークや沖縄障害者職業センター等の、本人を良く知る支援者から、得意なこと、不得意なことについて、助言を聞きながら進めています。 従業員の声 上原京子さん  午前は総合相談室でパソコン入力や電話の取り次ぎ等をしています。午後は通所リハビリで、レクリエーションの手工芸の手伝いや清掃をしています。桜山荘では、月1回、おむつ交換等の勉強会を開催してくれますし、仕事で気になっていることについて面談をしてくれる等、働きやすい環境を整えてくれています。 ヨヘナ聡さん  食事の配膳、下膳、食事介助、パット補充等の仕事をしています。長く働き続けたいと思います。介護の知識を高めるために、研修を受けたいと考えています。 Iさん  ベッドメイク、清掃、パット補充、食事の配膳、下膳の仕事をしています。利用者様の安全に気をつけながら仕事をしています。 48ページ 改善策紹介 障害者の混乱防止に、業務指示を一本化。本人の意見を職場に反映し、環境が向上 キーワード1、障害理解及び、キーワード2、ジョブコーチ支援 改善策1 障害者雇用の理念の提案と研修会の開催で、施設内のコンセンサスを得る  職員がおこなっていた清掃業務を障害者に担当してもらうことで、介護業務に専念できるといったメリットを、現場職員に対し説明。併せて、障害者雇用促進に関する理念を作成し、職員会議で提案。施設内の障害者雇用のコンセンサスを得ることができた。  実際、雇用を進めるにあたっては、精神障害についての知識がなく、指導経験もなかったことから、ハローワークの専門援助部門、沖縄障害者職業センターと連携し、勉強会を開催。また、採用時にジョブコーチ支援を活用し、働く場面を通じて、ジョブコーチから指示の出し方、特性について助言を受けることで、一層の障害理解が進んだ。  障害者の仕事ぶりを見て、清掃業務以外でも対応が可能と判断。介護業務へ職務を拡大し、更なる障害者雇用を進めていった。 キーワード3、職務遂行 改善策2 業務指示の一本化と就労支援向上計画書により成長  採用当初、現場職員から複数の指示を出され、混乱する場面が見られた。そのため、業務指示は現場責任者が行うことで、一本化を図った。現場責任者不在時は、現場責任者が選任した職員が、指示を出すこととしている。  また、現場責任者は精神障害者の就労支援向上計画書(62ページ参照)を作成し、担当している業務日課と併せて、部署内で情報を共有している。精神障害者のスキル習得状況に応じた業務分担と指示により、着実な職務遂行につながっている。  業務を進める上で相談や意見がある場合は、障害者職業生活相談員、障害者、現場責任者、現場職員が話し合う場面を設定している。業務指示のそご、誤解が解消されるとともに、職員の相互理解に一役買っている。 49ページ キーワード4、体調管理 改善策3 障害者職業生活相談員が服薬状況を確認。体調不良の早期対処が可能に  精神障害者職員の中に、服薬管理が十分でなく、体調不良を引き起こしたケースがあった。そこで、障害者職業生活相談員が中心となって、出勤時に、精神障害者職員の体調や服薬状況を確認。また、精神障害者の様子の変化について、現場職員から報告があった場合には、本人と面談を行い、勤務時間や業務内容の調整をしている。このような取り組みにより、体調不良の早期発見と対処が、可能となっている。 キーワード5、相談・コミュニケーション 改善策4 グループワークとアンケートで障害者の意見を反映し、働きやすい職場に  毎月第3木曜日の16時30分から17時30分に、全障害者を対象としたグループワークを実施している。職場で感じていることの意見交換や、シーツ、おむつ交換等のスキル勉強会の場として、活用している。  意見交換では、休憩所が1ヵ所しかなく、大勢の職員の中ではプレッシャーを感じて休憩が取れない、という、意見が出され、障害者職員用の休憩スペースが設置されることになった。  また、障害者職員の満足度を把握するために、年2回アンケートを実施(職員アンケート用紙は63ページを参照)。アンケートを通じて、新しい仕事をしてみたい、という、要望が出され、現場責任者の指導のもと、挑戦している事例があるという。障害者職員の意見を反映し、働きやすい職場を目指して改善を続けた結果、就職してよかったという回答が増えている。 職場改善のために事業所が作成した資料、支援ツール 職場改善のために作成した資料や、精神障害者に対して用いた支援ツール等を、取材先事業所のご了解のもと、当機構において一部修正を加えて掲載しています。精神障害者雇用の職場改善に役立つ実践的な資料ですので、是非、参考にしてください。 51ページ 富士ソフト企画株式会社 1 「カウンセリング室設置要綱」(本文は11ページ) カウンセリング室は経営陣の直轄組織となっており、職場の上司を通さず、直接相談することが可能。 支援ツール カウンセリング室設置要綱 目的 社員が心身ともに安定した職業生活を送ること、そして、社員の個性の発達と、自己実現を支援することを本しつ設置の目的とする。 活動の要旨 1 カウンセリング対象ケース(優先順) カウンセリングの対象となる事柄は以下に記述する通り、職務に関するもの、個人的な問題に関するもの等、多岐にわたる。 カッコ1 緊急の対応 ・精神に疾患を持つ社員の精神症状の失調、不安や緊張などしんたい症状や気分や感情の不全とうがあり、症状の再発が危惧される場合 ・精神に疾患があるという診断は受けていないが、ストレス等により、精神疾患を発症する可能性があると考えられる場合 カッコ2 日常的対応 ・職務上の不安や、心配等をいだいている場合 ・社内や家庭で、ストレスを感じている場合 ・職場の人間関係等で悩んでいる場合 ・何らかの理由で、部所の変更等を希望している場合 ・キャリア等の問題で葛藤している場合 ・理由は何であっても、社員本人がカウンセリングを受けたいと思う場合 カッコ3 その他 ・勤務時間の変更の相談 ・年金受給、生活保護などの生活設計や、ソーシャルワーク領域の相談 ・心身の健康に関する相談 52ページ 富士ソフト企画株式会社 2「カウンセリング上の留意点」(本文は11ページ) 三名のカウンセラーが、留意点を踏まえながら、大船本社、横浜営業所、秋葉原営業所を巡回し、従業員の相談に対応している。 支援ツール カウンセリング上の留意点 ・表面上の言葉・身振り・手振り・表情などだけでの判断はしない。  必ず、心の内面・内省(自分はどうなのか・どうあるべきか・どうしたいのか の時間を入れる。自分で考える。ともに考える) ・会社の方針、グループの方針を把握する。 ・休みたい、これは誰でも考えること、このときのアプローチは慎重に。 二度と社会復帰できない(引きこもり)を作る危険性もある。富士ソフト企画のカウンセラーである以上は、プロ意識に徹すること。 まず、休まないようにするにはどうしたらよいのかを話し合う。休むことによって、良くなるというメリットが見出せれば、休む。 ・人のいい、やさしいカウンセラーが腕がいいとは限らない。時には、毅然と憎まれ役になることも大切。本人にとってなにが必要なのかを考えると、いい人では通用しない。 馴れ合いにはならない。それが本人のためになるなら、時には、毅然と。 ・本気で本人と対峙し、本人自身とともに、本人の心のなかに、はいり込むこと。 ・周囲の意見・考えをよく聞くこと。上司・同僚・保護者・医師・支援者ほか。  一方的な偏った意見・考えで事象を判断しないこと。 ・性格なのか、要望なのか、願望なのかを見極める。 あくまで相手は同僚であり、会社が雇用している人間である。畏敬・尊敬の念を忘れないように。 58ページ 大東コーポレートサービス株式会社 8「業務振り返り用紙」(本文は29ページ) あらかじめ記入してもらった「振り返り用紙」を元に、障害者職業生活相談員が、就労面や生活面での困りごとや悩みごとの相談を受ける。 業務の振り返り用紙 質問項目を○で囲んでください 1 体調はいかがでしたか? 良い まあまあ良い 普通 あまり良くない 悪い 2 疲れ具合はいかがですか? すごく疲れた 程よい疲れ 疲れていない 3 二週間の目標を意識できましたか? できた だいぶできた 普通  あまりできなかった 取り組めなかった 4 仕事は集中して取り組めましたか? 取り組めた だいぶ取り組めた 普通  あまり取り組めなかった 取り組めなかった 5 他社員との対人関係はいかがでしたか? できた だいぶできた 普通  あまりできなかった できなかった 6 業務やその他で困りごとはありましたか? あった なかった 7 具体的に何に困りましたか? 8 質問項目以外に話したいことはありますか? 59ページ 大東コーポレートサービス株式会社 9「SST取り組み内容」(本文は29ページ) コミュニケーション技術向上に向け、以下のプログラムに基づき、SSTを行っている。 コミュニケーション技術の向上には、SSTです。 安定した就労生活を過ごす上で、周囲の人に、自分をよく分かってもらう必要があります。 そのためには、自分の考えや思いをうまく伝えることが大切です。SSTでは、良いコミュニケーションの練習をします。 ひとりSST  職場や日常での困りごと、悩みごと、取り組んでみたいことを自由に出し、目標へ向かって練習する場 グループSST  参加者の共通目標を基に、困りごと、悩みごと、取り組んでみたいことを練習する場 ひとりSST セッション内容 1 将来の希望について 2 SSTって何 3 違う課の社員から、冗談を振られた場合 4 冗談に対して、どう切り返すか 5、6 共通の話題探し 7 相手に質問してみましょう 8 相手の言ってることがわからない場合 9 うれしい気持ち、感謝の言葉を伝える 10 自分の気持ちを交えて会話する 11 自分のストレス探し 12 言いたいことを、相手に伝える 13 ほめ言葉を受け入れる 14 望まない助言への対応 15 ワークパーソナリティーと職場環境 グループSST セッション予定表 共通目標 職場でのよい関係づくりと自己主張で、ストレスをうまくコントロールしよう ○ねん○がつ○にち オリエンテーション調査(アンケートと面接) ○ねん○がつ○にち 会話を始める ○ねん○がつ○にち 会話を続ける ○ねん○がつ○にち 会話を終える ○ねん○がつ○にち 怒りの気持ちを伝える ○ねん○がつ○にち 不愉快な気持ちを伝える ○ねん○がつ○にち 問題解決法 ○ねん○がつ○にち 問題解決法の修了式 SST実践のポイント 1 動機を明確にして、主体的に参加する 2 目標設定を丁寧に行う 3 一人ひとりの未来や希望に焦点をあてる 4 練習を通して自信を持ち、成功体験をする 5 ほめ言葉のシャワー・エンパワメントをする 61ページ 株式会社共同運輸 11「体調不良時の対応表」(本文は40ページ) 体調の不良を感じた時に、どのような行動をとったらよいか確認し、安心感にもつながる。 体調不良の場合 1 地域障害者職業センターに電話します 2 具体的な体調について説明します(不眠・頭痛・風邪症状・気分の落ち込み・不安感など) 体調不良でも出勤出来そうなら 1 出勤します 2 本日の体調を、具体的にスタッフに報告します 3 勤務途中、どうしても勤務継続出来ないなら ・勤務中の体調を具体的に報告します ・早退の申し出を行います ・事業所スタッフからの早退の許可をいただき、早退します 体調不良で、どうしても出勤出来ないなら 1 本日の体調を、具体的にスタッフに報告します 2 事業所スタッフからの欠勤の許可をいただき、休みます 欠勤した場合の過ごし方は 1 病院を受診する(相談支援事業所などへ行く) 2 自宅療養する 63ページ 社会福祉法人まつみ福祉会 介護老人保健施設 桜山荘 13 職員アンケート用紙(本文は49ページ) 障害者職員の満足度を把握するために、年2回職員アンケートを実施している。 職員アンケート 毎日、お仕事お疲れ様です。 皆さんが、日頃どのような思いでお仕事されているか、働きやすい環境をつくるために参考にできればと思います。 お忙しいとは存じますが、アンケートへのご協力を宜しくお願い致します。 1 桜山荘に就職して、よかったところはありますか はい それはどんなことですか いいえ 2 桜山荘に就職してがっかりした事、いやなところ、つらいところはありますか はい それはどんなことですか いいえ 3 仕事内容に満足していますか はい いいえ それはどうしてですか 4 同僚とは上手くいっていますか はい いいえ それはどうしてですか 5 職場に安心して相談できる人がいますか はい それは誰ですか いいえ 6 給料は満足していますか はい いいえ それはどうしてですか 7 休日に満足していますか はい いいえ それはどうしてですか 8 桜山荘に望むこと、ご意見があればお聞かせ下さい ご協力ありがとうございました 64ページ  その他の応募事業所 平成21年度の障害者雇用職場改善好事例募集において、精神障害者の新規雇用、または職場復帰をテーマに募集したところ、全国71事業所からご応募がありました。入賞事業所以外の事例にも、精神障害者雇用の参考となる取り組みが多く見られます。その他の応募事業所の、職場改善の概要をご紹介します。 社会福祉法人 奥入瀬会 特別養護老人ホーム百石荘 青森県 株式会社ニュートン 岩手県 農事組合法人水鳥 宮城県 WOODY GARDEN 宮城県 有限会社みやぎ保健企画 セントラルキッチン事業部 宮城県 生活協同組合共立社 山形県 東京美装興業株式会社 山形出張所 山形県 三共貨物自動車株式会社 茨城県 郵便局株式会社 埼玉監査室 埼玉県 有限会社貫井園 埼玉県 ハートフルエイム株式会社 千葉県 東京事務代行株式会社 東京都 株式会社いなげや 東京都 株式会社サンキュウ・ウィズ 東京都 株式会社アイエスエフネット 東京都 株式会社ココット 神奈川県 こうぶん図書株式会社 神奈川県 武藤工業株式会社 神奈川県 テンプスタッフフォーラム株式会社 新潟県 有限会社小川電子工業 富山県 株式会社スギヨ 石川県 クリーニングホワイトランド 福井県 財団法人住吉病院 山梨県 Man to Man G Animo ドットcom株式会社 岐阜県 岐阜日産自動車株式会社 岐阜県 旭産業株式会社 静岡県 目黒化工株式会社静岡工場 静岡県 日東電工ひまわり株式会社 愛知県 株式会社 みえデータクラフト 三重県 パシフィック技研株式会社 滋賀県 ユニプラス滋賀株式会社 甲南工場 滋賀県 有限会社 夢工房 京都府 星和電機株式会社 京都府 英興株式会社 京都府 アクテック株式会社 大阪府 SMBCグリーンサービス株式会社 大阪府 株式会社エスコアハーツ 兵庫県 阪神友愛食品株式会社 兵庫県 YKK六甲株式会社 兵庫県 株式会社エスジーユー 兵庫県 社会福祉法人 一麦会 和歌山県 社会福祉法人 あすなろ会 鳥取西デイサービスセンター 鳥取県 千代三洋工業株式会社 鳥取県 株式会社 さんようプロスハート 島根県 株式会社 ベネッセビジネスメイト 岡山事業所 岡山県 医療法人さくら診療所 徳島県 石垣メンテナンス株式会社 香川県 特別養護老人ホーム 今治なごみ苑 愛媛県 株式会社フタガミ 高知県 社会福祉法人友悠会 佐賀県 有限会社はるかぜ 長崎県 トレジャーオブ テクノロジー株式会社 熊本県 有限会社オーシャン企画 大分県 合同会社デバン 大分県 ヤマエ 久野株式会社 宮崎支店 宮崎県 慈英病院 宮崎県 有限会社 宮一建設 宮崎県 有限会社二幸食鳥 松元工場 鹿児島県 特定非営利活動法人 クリンカ鹿児島 鹿児島県 65ページ 社会福祉法人 奥入瀬会 特別養護老人ホーム百石荘 青森県おいらせ町 事業内容 介護老人福祉施設 雇用状況 従業員数110名 うち精神障害者雇用数2名 主な従事作業 館内の清掃全般 キーワード 職務遂行、体調管理 改善前の状況 1 作業に対して自信が持てず、発言が少なくなったり、消極的になったりしがちであった。 2 健康管理のために、減量する必要があった。 改善内容 1 勤務時間を延長する際に、自信をつけてもらうために、業務内容を増やした。 2 体力向上をかねて、徒歩通勤とした。 改善後の効果 1 担当業務が増えたことで自信がつき、発言が増えてきた。 2 減量し、体力が付いたことで疲れにくくなった。 株式会社ニュートン 岩手県 八幡平市 事業内容 工業用精密プラスチック製品製造 雇用状況 従業員数100名 うち精神障害者雇用数2名 主な従事作業 屋内外清掃及び花壇の維持・管理業務 キーワード 職務創出 改善前の状況 どのような仕事を担当してもらったらよいか、分からなかった。 改善内容 1 5S(整理・整頓・清掃・清潔・躾)の行き届いた会社を目指しており、その活動の一環で「屋内外清掃」及び「花壇の維持・管理業務」の職務を創出した。 2 本人たちに「お疲れ様」、「ありがとう」の声をかけて、コミュニケーションを積極的に図るようにした。 改善後の効果  事業所内の清掃が行き届くようになったこと、花壇については、来社したかたにも評価をいただいた。 農事組合法人水鳥 宮城県 栗原市 事業内容 しいたけの菌床製造・販売、菌床椎茸の生産・販売 雇用状況 従業員数110名 うち精神障害者雇用数1名 主な従事作業 菌床椎茸の生産(発生作業) キーワード 支援機関との連携、トライアル雇用 改善前の状況 トライアル雇用を行おうとしても、開始直前になると、不安や、緊張から辞退するというケースが目立っていた。 改善内容 1 不安や緊張を少しでも軽減させるため、トライアル雇用前に、支援機関の指導員のサポートを得ながら、作業体験を実施した。 2 その後サポートを徐々に減らしていき、本人同意のもと、トライアル雇用、常用雇用へ移行していくかたちをとるようにした。 3 常用雇用移行後も、本人、支援機関、事業所の三者で話し合いの場をつくり、アフターケアも行うようにしている。 改善後の効果 1 事前に作業体験の場を通じて、仕事に対する自信をもてるようになり、スムーズなトライアル雇用、常用雇用への移行ができるようになった。 2 改善策後半年を経過したが、問題なく継続勤務している。 66ページ WOODY GARDEN 宮城県 東松島市 事業内容 生花、観葉植物の販売、及びリース 雇用状況 従業員数2名 うち精神障害者雇用数1名 主な従事作業 生花・観葉植物の販売補助、観葉植物リース商品メンテナンスの補助業務 キーワード 職務遂行、不安・緊張感の軽減 改善前の状況 店舗が手狭となり、商品損傷等を防ごうと気を使うあまり、精神的な負担となっていた。また、作業ばの安全性を確保する必要があった。 改善内容 1 作業ばをぞうしょうし、動線を確保。床を注意喚起につながる色にし、滑り止めを施した。 2 リラックス効果が得られるように、つくばいや障子、壁面に杉の端材を貼り付ける等、店舗を改装した。 改善後の効果 1 作業ばが広くなり、業務遂行援助者の視野、配慮が行き届くようになった。 2 作業効率が上がり、時間的・精神的ゆとりが発生。体調にあわせた勤務時間の設定や、業務遂行援助者によるカウンセリング的プログラムの実施が可能となった。 有限会社みやぎ保健企画 セントラルキッチン事業部 宮城県 利府町 事業内容 給食事業(調理済みの料理を病院・老人施設へ配食) 雇用状況 従業員数228名 うち精神障害者雇用数6名 主な従事作業 食器洗浄作業、食材梱包作業、食材入れダンボール作り等 キーワード 相談・コミュニケーション、障害理解 改善前の状況 周囲の従業員が、障害者ができる仕事に制限があると決め付けていた。 改善内容 1 相談担当者を決めて、障害者が質問や相談を行える環境を整えた。 2 障害者の受け入れに際し、学習会を開催し、従業員の意思統一を図った。 3 作業完了した際、次に行うべき作業を明確化し、段取りを理解できるようにした。 改善後の効果 食器の洗浄だけでなく、梱包や納品書作成等、作業の幅が増え、戦力になっている。 生活協同組合共立社 山形県 鶴岡市 事業内容 供給事業、共済事業、福祉事業、葬祭事業 雇用状況 従業員数1,275名 うち精神障害者雇用数2名 主な従事作業 不要な発泡スチロールの破材作業、リサイクル(破材したものをげんようし、原料ブロックに再生する)作業 キーワード 障害理解、ジョブコーチ支援 改善前の状況 1 初めての精神障害者雇用であり、周囲の従業員と良好な人間関係を築けるか、不安があった。 2 機械を使用し危険な作業を行うため、作業内容をしっかり理解してもらえるか、不安があった。 改善内容 1 障害者職業センターと連携し、障害に対する理解を深めるための、社内学習会を開催するとともに、定期的に本人、事業所、センター、ハローワーク、家族で、話し合いの場を持った。 2 従業員の中から専任の支援者を選定するとともに、ジョブコーチ支援を活用し、人間関係及び、作業能力の向上を目指した。 改善後の効果 1 職場内のコミュニケーションが活発となり、良好な人間関係を築くことができた。 2 作業を正しく理解することに加え、責任感の向上がみられた。 67ページ 東京美装興業株式会社 山形出張所 山形県 山形市 事業内容 総合ビルメンテナンス業 雇用状況 従業員数79名 うち精神障害者雇用数1名 主な従事作業 施設内日常清掃業務(ビル共有部分、ビジネスホテル共有部分) キーワード 職務遂行 改善前の状況 1 作業手順を忘れることが多かった。 2 一人で判断をすることが難しかった。 3 マニュアルに示していない、応用的な作業へ対応することができなかった。 改善内容 1 作業手順を明記したスケジュール表を作成し、手順を確認しながら作業を行った。時間が余った場合に行う作業も明記した。 2 責任者が時折巡回し、作業がスムーズに行われているか確認した。 3 注意をした後は、必ず改善された部分を褒めるようにした。 4 写真を見せる、紙に書く等の手段を使って、丁寧に説明するようにした。 改善後の効果 1 スケジュール表を見て、自分で判断しながら作業を行うことができるようになり、不安な気持ちも軽減した。 2 注意されたことに対して、積極的に努力するようになった。 3 応用的な作業に対しても、理解が深まった。 三共貨物自動車株式会社 茨城県 ちくせい市 事業内容 運送業(店舗配送・集荷配送)、構内委託業務(検収・ピッキング) 雇用状況 従業員数207名 うち精神障害者雇用数2名 主な従事作業 リサイクル作業、仕分け・荷降ろし作業、台車セット・点番記入作業、清掃作業、容器の整理 キーワード 職場実習、職務遂行 改善前の状況 1 雇用するにあたり、社員全員が、円滑にコミュニケーションをとることができるか不安であった。 2 職務への対応が可能か、不安であった。 改善内容 1 雇用前に1ヶ月間の職場実習期間を取り入れ、職場適応の見極めを行った。 2 仕事の流れを把握できるように、作業と時間管理を記載したボードを設置した。 3 各部署責任者から、作業指示を細かく出すようにした。 4 休憩時間や昼休みに、コミュニケーションをとるようにした。 改善後の効果 1 職場実習を経て、採用にいたった。 2 一日の作業スケジュールが分かるようになった。 3 各部署責任者が障害者とコミュニケーションを取ることにより、個々人の作業レベル、特性について理解が深まった。 郵便局株式会社 埼玉監査室 埼玉県 さいたま市 事業内容 埼玉県内の郵便局に対する内部監査業務、関東エリア各県の、監査室の統括室としての連絡調整、取りまとめ等 雇用状況 従業員数42名 うち精神障害者雇用数2名 主な従事作業 社内文書の受付、配布及び決裁処理、社内の簡易資料の作成 キーワード 障害理解、職務遂行、相談・コミュニケーション 改善前の状況 本人の希望と能力に即した業務を、負担にならない程度に担当してもらうための方法を、検討する必要があった。 改善内容 1 配属部署に対して、事前に勉強会を開催し、障害特性や雇用管理上の配慮等の理解を図った。 2 業務処理について、マニュアルを作成した。 3 業務に慣れるまで、指導担当者を1名配置した。 4 管理者が定期的に本人と対話をし、健康状態や仕事上の悩み等を聞き、フォローアップを行った。 改善後の効果 1 フォローをしていけば、コミュニケーションや勤務状況も、他の従業員と変わらずに働けることを理解することができた。 2 マニュアルにより、業務処理をマスターすることができた。 3 パソコン操作に挑戦したいという希望も聞かれ、業務の合間をみて、パソコンの基本操作の勉強を始めるようになった。 68ページ 有限会社貫井園 埼玉県 入間市 事業内容 原木しいたけ、及び狭山茶の製造・販売 雇用状況 従業員数5名 うち精神障害者雇用数3名 主な従事作業 原木しいたけの植菌作業(作業所内)、ほだ木づくり(林内)、林内の整備、原木しいたけの収穫 キーワード 不安・緊張感の軽減 改善前の状況 他者との関わりを苦手としていた。 改善内容 精神障害者専用の作業場所を設置した。 改善後の効果 1 障害者同士、緊張せずに互いに協力しながら作業に取り組んでいる。互いに勤労意欲の向上、責任感の芽生えにつながっている。 2 作業遂行が向上し、原木しいたけの増産体制が可能となった。 ハートフルエイム株式会社 千葉県 千葉市 事業内容 名刺やパンフレットの印刷・デザイン事業、親会社庶務業務のサポート、親会社の採用フリーダイアルの代行受付 雇用状況 従業員数15名 うち精神障害者雇用数7名 主な従事作業 印刷、印刷物のデザイン、電話対応や外部との交渉 キーワード 職務遂行、勤務時間の配慮 改善前の状況 1 専門家や、親会社からの出向社員が中心となって指示を出していたため、障害者スタッフの主体性が育ちにくかった。 2 体調に応じた勤務時間の設定が必要であった。 改善内容 1 自分たちで考え、行動してもらう機会を増やした。どうしても解決できない問題や、疑問についてだけ対応するようにした。 2 いつから勤務延長するか、事前に目標を共有し、短時間勤務を開始した。目標に向けて、体調管理を促した。 改善後の効果 1 障害者社員の主体性が育まれた。 2 従来業務に加え、見学対応や受発注の管理、外部との交渉を担当することが可能になった。 東京事務代行株式会社 東京都 港区 事業内容 事務及び技術業務請負業、労働者人材派遣業 雇用状況 従業員数731名 うち精神障害者雇用数3名 主な従事作業 CADによる、建物くたいのトレース業務・ガス配管の作図業務 キーワード 障害理解、相談・コミュニケーション、不安・緊張感の軽減 改善前の状況 1 コミュニケーションの取り方と、仕事の指示の方法を、どうしたらよいかという不安があった。 2 仕事以外で悩みが発生した時の、対応者が決まっていなかった。 改善内容 1 本社の各グループリーダーと拠点の所長に対して、障害者雇用を進める方針を伝えて、理解を求めた。 2 同僚、及び管理職に対して、指示の仕方、健康面の日常的な声かけについて、励行した。教育担当者と、指揮命令者を同一の者にした。 3 精神面での相談については、総務部長または担当役員が行うこととした。 4 仕事に集中でき、孤立しないよう、座席位置を配慮した。 5 支援機関から、フォローアップを実施してもらった。 改善後の効果 1 日常業務を通じて信頼関係が増し、相互に充分なコミュニケーションが取れるようになった。 2 体調や精神面の、気になることを即座に相談で対応しているので、大きな問題は発生していない。 3 支援機関のフォローアップにより、精神的な安定が得られた。 69ページ 株式会社いなげや 東京都 立川市 事業内容 小売業、食料品を主体とした、スーパーマーケットチェーンストア 雇用状況 従業員数9,732名 うち精神障害者雇用数45名 主な従事作業 店舗一般食品雑貨部門における、商品の補充・陳列・整理作業、本社財務部における、一般事務(伝票チェック処理、取引先への請求業務等) キーワード 職務遂行、障害理解、体調管理、相談・コミュニケーション、支援機関との連携 改善前の状況 1 症状悪化、対人関係の問題により、退職者が発生した。 2 採用後の雇用管理を、店長任せにしていたため、問題の把握が不十分だった。 改善内容 1 短時間(3.5時間)をユニットとした職務構成で、トレーニングツール(作業習得度確認表)を改訂し、OJTを行った。 2 管理職教育を通じて、部下とのコミュニケーション能力の向上、メンタルヘルス(ラインケア)への対応方法を習得させた。 3 通院日を公休とし、服薬や水分補給のための休憩時間を設定。病状、体力、作業習熟度に応じて、雇用契約時間を調整した(1ヶ月単位で変更可能)。 4 2008年10月より、専任のトレーナーを配置。現状把握とトレーニング指導、ピアカウンセリングを実施。 5 障害者職業センターの、ジョブコーチ支援の活用のほか、各就労支援機関と連携。 改善後の効果 1 短時間から無理なく就労できる職務条件、管理職による、きめ細かな雇用管理と配慮により、雇用後の定着率が向上した。 2 専任トレーナーがフォローを行うことで、店舗における早期の問題発見、解決を図れるようになった。 3 2008年8月に、本社財務部の一般事務職で、精神障害者を1名採用。店舗以外に新たな職域を開拓した。 株式会社サンキュウ・ウィズ 東京都 中央区 事業内容 ビルメンテナンス業、事務補助業務(メール集配事業、データ入力事業) 雇用状況 従業員数11名 うち精神障害者雇用数1名 主な従事作業 パソコンを使った経理データ入力業務、及び文書資料等の作成業務、所轄の役所や、金融機関への各種手続き業務、電話や、来客者への応対業務、事務所の整理・美化等の庶務業務(植栽の水やり他) キーワード 障害理解、職務創出、職務遂行、相談・コミュニケーション 改善前の状況 1 精神障害者の雇用経験がなく、どのように職務創出をすべきか、どのように接すべきか、知識がなかった。 2 試用期間中は、仕事を覚えられず、疲労を訴えることが多かった。 改善内容 1 外部支援機関や企業等が開催するセミナーを受講して、精神障害者への接し方を学んだ。 2 経理データ入力業務、発送業務、役所や金融機関への対応業務、出退勤データ作成等を、職務として設定した。 3 業務マニュアルと、業務日程表を作成し、仕事の管理を一人でできるようにした。 4 上司と同僚の2名体制で、業務面のみならず、精神的なフォローを行った。 5 ハローワークや就労支援機関と連携し、困った時に相談できる体制を確保した。 改善後の効果 1 職場における精神障害者への理解が進んだ。 2 与えられた業務は単独で遂行できるようになり、自信をもてるようになった。 3 精神的に安定して勤務できている。 株式会社アイエスエフネット 東京都 港区 事業内容 ITサービスにおける、ネットワークインフラの設計・構築・運用・保守 雇用状況 従業員数1,608名 うち精神障害者雇用数8名 主な従事作業 様々なシステムデータ入力、Webサイト構築・保守・運営等、パソコンセッティング(動作確認、ソフトウェアインストール)作業、中古パソコンクリーニングサービス、名刺作成 キーワード 勤務時間の配慮、体調管理、職務遂行 改善前の状況 復職時の基準があいまいであった。また、復職者に対する、従業員の理解やケアが十分でなかった。 改善内容 1 復職専門部署「チャレンジンググループ」を創設。本人が希望する勤務時間(一日5時間から8時間)により、パートで働くことを可能にした。現状勤怠の80%達成が2ヶ月続いたら、延長について検討した。 2 週に1回勤怠時間を振り返り、必要に応じて、生活サイクル把握のための「生活メモ帳」を活用した。 3 他部署の業務を切り出し、職務を創出。手順を整理し、誰が休んでも、他の従業員がフォローできる体制を構築した。 改善後の効果 1 他部署の業務を集約したことから、外部委託費が40%減、管理者の残業が30%減となった。 2 復職率は80%強と改善された。また、メンタル不全になっても、会社に居場所があるという意識が、従業員の安心につながった。 3 短時間勤務の創出により、産休前、育休後の従業員に対しても適用し、多様な働き方が可能となった。 70ページ 株式会社ココット 神奈川県 横浜市 事業内容 関連会社店舗のレポート提出状況の確認、レポート提出用封筒の作成、内部監査業務、親会社コロワイド社内報の梱包・発送、その他親会社から委託業務 雇用状況 従業員数20名 うち精神障害者雇用数2名 主な従事作業 事務作業(内部監査業務) キーワード 相談・コミュニケーション、不安・緊張感の軽減、体調管理 改善前の状況 1 ストレスを溜めずに働ける方法を、検討する必要があった。 2 生活リズムを崩さずに働ける方法を、検討する必要があった。 改善内容 1 月に1度の個人面談に加え、個別に相談担当制度を設けたり、社内メールを活用したりする等、常時相談を受けられる体制をつくった。 2 ストレス軽減のため、仕事のペース配分を本人に任せ、睡眠時間や体調を日誌で報告させることで、生活リズムの乱れがないか確認した。 改善後の効果 1 常時相談を受け、迅速に対応することにより、ストレスやトラブルの早期解決ができた。 2 本人が自らペース配分を設定したことにより、仕事へのストレスを感じることなく、長時間働くことができている。睡眠時間に乱れが出た時は確認をとり、改善にむけ、アドバイスを行っている。 こうぶん図書株式会社 神奈川県 大和市 事業内容 小学校図書・教材の製造・発送 雇用状況 従業員数71名 うち精神障害者雇用数8名 主な従事作業 製本機械のオペレーター助手 キーワード 障害理解、勤務時間の配慮 改善前の状況 精神障害者同士だけで作業する場所を作ったが、会社で仕事をしているという意識が弱くなりがちであった。 改善内容 1 他の従業員と同じ場所で作業してもらうことにし、従業員には精神障害者雇用の趣旨を説明し、理解を求めた。 2 勤務時間の延長、担当業務の拡大については、責任・負担が重圧とならないよう慎重に対処した。 改善後の効果 勤務時間が、10時から15時までから、9時から17時まで延長することが可能となり、残業もできるようになった。 武藤工業 株式会社 神奈川県 大和市 事業内容 金属熱処理加工 雇用状況 従業員数13名 うち精神障害者雇用数1名 主な従事作業 金属熱処理作業の熱処理まえセッティング作業、金属熱処理完了後の品質最終検査作業、工場内清掃作業 キーワード 相談・コミュニケーション、職務遂行 改善前の状況 1 来客時、挨拶ができず、お客様が不快に思ってしまったことがある。 2 毎日違う製品が入荷されるので、段取りを覚えるまでに時間がかかった。 改善内容 1 工場長から毎日コミュニケーションをとり、お客様への対応の仕方について話をするとともに、毎週月曜日の朝礼の司会を担当してもらった。 2 従業員が本人の顔色、動作を通じて体調を見極めながら、段取りを覚えられるよう1つずつ指示を出した。 改善後の効果 1 一人で留守番していてもお客様への挨拶ができるようになり、わからないことがあると、事務所に報告できるようになった。 2 仕事の段取りを覚え、単独で遂行が可能となった。 71ページ テンプスタッフフォーラム株式会社 新潟県 新潟市 事業内容 労働者派遣業 雇用状況 従業員数198名 うち精神障害者雇用数1名 主な従事作業 パソコン入力作業、営業事務の補助作業(見積り作成、提案書作成、データ作成等 仕様書作成)、コピー、郵送作業等 キーワード ジョブコーチ支援、勤務時間の配慮 改善前の状況 精神障害者の雇用経験がなく、不安があった。 改善内容 1 雇用を進めていく上での、問題点を検討する会議を開催した。 2 ジョブコーチ支援を活用した。 3 職場に慣れるように、短時間勤務、日数の配慮を行った。 4 社内でマンツーマンで指導するスタッフを配置した。 改善後の効果 1 一日6時間勤務が可能となった。 2 他の従業員ともコミュニケーションが取れ、福利厚生行事(新年会、送別会等)に参加をするようになった。 3 障害者雇用の負担感と不安が払拭された。 有限会社 小川電子工業 富山県 富山市 事業内容 プラスチック検査、包装 雇用状況 従業員数29名 うち精神障害者雇用数5名 主な従事作業 プラスチック検査、タオルたたみ キーワード ジョブコーチ支援、支援機関との連携 改善前の状況 入社後、症状の変調があり、不安や被害的に捉える言動がみられた。 改善内容 1 ジョブコーチ支援を利用し、フォローアップをしてもらった。 2 医療機関と連携し、ケースワーカーの 職場訪問によるサポートを行った。 改善後の効果 長期的に休むことなく、勤務が可能になった。 株式会社スギヨ 石川県 七尾市 事業内容 食料品製造、及び水産練製品製造販売業 雇用状況 従業員数738名 うち精神障害者雇用数2名 主な従事作業 収穫・入庫された原料を、日毎に数量をチェックし、作業場へ搬入し、カット加工(前処理から最終カット袋詰めまで)、使用済み容器の殺菌洗浄作業 キーワード ジョブコーチ支援、職場復帰、不安・緊張感の軽減 改善前の状況 うつ病を発症し、1年間余り休職していた者が復帰することとなったが、作業環境や同僚との交わりに不安を抱いていた。 改善内容 1 障害者職業センターのジョブコーチ支援を利用し、不安の軽減、新しい仕事の作業習得支援を行った。 2 午前中は、同僚との関わりに慣れるために集団作業、午後はモチベーションをもって取り組めるよう、個別作業を導入した。 3 昼食時は個別スペースで休憩を取り、リラックスできる環境を整備した。 改善後の効果 1 同僚との関わりにも慣れ、職場復帰が可能となった。 2 個別作業を担当したことで自信につながり、安定した勤務ができている。 72ページ クリーニングホワイトランド 福井県 敦賀市 事業内容 クリーニング業 雇用状況 従業員数5名 うち精神障害者雇用数3名 主な従事作業 包装、アイロン掛け、集配業務、仕分け、たたみ キーワード 相談・コミュニケーション、体調管理、支援機関との連携 改善前の状況 1 同僚とコミュニケーションをとるのが苦手で、自己表現が十分にできずストレスとなり、欠勤が見られた。 2 健康に対する自己管理ができず、体調を崩し休みがちであった。 3 継続雇用につなげるため、家庭や支援機関との連携が重要と考えた。 改善内容 1 仕事上の問題点、顧客ニーズ、心身の健康、個人的な悩み等について、課題の解決方法を自由に話し合う、短時間のミーティングを毎日継続した。 2 医療機関への通院日を会社カレンダーに書き込み、受診日を忘れないようにした。 3 家庭訪問による家族との情報共有や、障害者就業・生活支援センターとの連携を図った。 改善後の効果 1 同僚とのコミュニケーションがうまくとれるようになり、職場内での人間関係が向上、ストレスや緊張状態が軽減した。 2 健康管理に対する意識が高まり、お互いに体調についてチェックし合うようになった。一日2時間勤務が限界だった者が、6時間勤務ができるようになった。 3 事業所、家庭、支援機関が連携し、支援体制が強化され、職場定着につながった。 財団法人住吉病院 山梨県 甲府市 事業内容 病院(精神科)、及び各種社会復帰施設の運営 雇用状況 従業員数244名 うち精神障害者雇用数5名 主な従事作業 看護補助員 キーワード 相談・コミュニケーション、体調管理、職務遂行 改善前の状況 精神障害者の雇用を始めた時に、ジョブコーチ支援等活用したが、疾病を含む体調管理をサポートする担当者がいなかったため、十分な就労支援ができなかった。 改善内容 1 作業療法士を就労支援の専任者として配置し、認知機能障害の評価と活動分析をもとに、業務マニュアルを作成した。 2 精神障害のある社会保険労務士を採用し、体調管理のための注意サインや、自己対処法等を盛り込んだ、就労支援の個別プランを作成できる体制にした。 3 月に1回、就労支援会議を開催。必要に応じて、主治医と作業療法士が打ち合わせを行い、医療的介入の必要性について検討した。 改善後の効果 1 統合失調症者の認知機能を適切に評価し、それに合わせた仕事の手順の構造化・合理化が図れた。 2 本人が苦手とする業務について重点的にOJTを行い、スムーズな採用につなげることができた。 3 疲労と症状の変調がみられた者に対して、主治医と連携し、早めの医療的介入が可能となった。 Man to Man G Animo ドットcom株式会社 岐阜県 おおがき市 事業内容 文書電子化、Web制作 雇用状況 従業員数18名 うち精神障害者雇用数2名 主な従事作業 医療関係のカルテの電子化、Webデザイン キーワード 職務遂行、相談・コミュニケーション、職務創出 改善前の状況 1 記憶障害により、1度に2つ以上の指示をすると、混乱し、ストレスを感じることがある。 2 注意障害により、他の作業を並行して行うことが困難であった。 3 本人のペースで取り組めていた作業がなくなり、新たな作業を検討する必要がでてきた。 改善内容 1 指導者を一人に限定し、様々な指示が入らないようにした。ストレス軽減のために、指導者と交換日記を行い、仕事の進行状況、分からないこと等やりとりした。 2 新しい作業を行うときは、本人がメモする時間を充分にとった。 3 イラストが上手だったので、 Webデザインの作業を担当してもらうことにした。 改善後の効果 1 ミスやトラブルに対して、自分で考えをまとめ、指導者に伝えることができるようになり、冷静な対処が可能になった。 2 仕事に取りかかる前にメモをもとに復習することで、判断ミスが減ってきた。 3 イラストに興味を持っていたため、以前の業務のときより集中して取り組んでいる。 73ページ 岐阜日産自動車株式会社 岐阜県 岐阜市 事業内容 自動車販売、及び修理 雇用状況 従業員数784名 うち精神障害者雇用数5名 主な従事作業 廃棄書類の収集、運搬、分別整理 キーワード 職務遂行、体調管理 改善前の状況 1 会議室で廃棄書類の分別作業を行っているが、会議室が空いていないときは、廊下で作業を行わなければならなかった。 2 廃棄書類には、個人情報の含まれるもの、含まれていないもの、ファイルに綴じられた書類等が混在しており、ぶんべつに時間がかかっていた。 3 定型作業が続くため、集中力が低下しやすかった。 4 昼休みの休憩以外の随時休憩が、忙しいと十分にとれなかった。 改善内容 1 会議室が空いていないときは、社内の清掃作業を取り入れる等、職務の幅を広げた。 2 廃棄書類を出す時点において、分類をしてもらうよう、従業員に指示をした。 3 個々の能力に応じて作業分担に変化をもたせ、集中して作業ができるように配慮した。 4 昼休憩以外に午前、午後の決まった時間に休憩をいれることにした。 改善後の効果 1 様々な職務を担当することで、個々の職業能力を把握することができた。 2 事前の分類がなされたことで、より多くの廃棄書類の、ぶんべつが可能となった。 3 集中して作業に取り組むことができ、作業内容の改善策について提案ができるようになった。 4 休憩時間を通じて、同僚同士のコミュニケーションが活発になった。 旭産業株式会社 静岡県 富士市 事業内容 トイレットペーパーの製造販売、リサイクル事業、清涼飲料水製造販売、その他 多目的ホール経営 雇用状況 従業員数47名 うち精神障害者雇用数5名 主な従事作業 トイレットペーパー加工製造補助、製品梱包用段ボール箱の組立、梱包・出荷(パレット積み)、その他 各工程の補助作業、リサイクル事業部門における、アルミ等回収缶の分別作業 キーワード 支援機関との連携、障害理解、勤務時間の配慮 改善前の状況 体調の波や疲労により、欠勤しがちであった。 改善内容 1 生活面のサポート等が必要な場合には、病院のワーカーと連携し、対応することにした。 2 従業員に対して、障害の特性や状態を説明して、周囲がサポートする体制をつくった。 3 一日の労働時間は、8時30分から16時30分であるが、体調不良の時は早めに休憩、休暇の取得を勧めるとともに、従業員に対しても周知徹底した。 改善後の効果 1 従業員の精神障害者に対する理解が深まり、業務上のみならず、業務外においても自然にサポートが行われ、本人と従業員との信頼関係が構築された。そのため、病院のワーカーに対応を依頼する頻度が減った。 2 体調不良の時に、遠慮せず休憩・休暇を取得することができ、ストレスや疲労の蓄積による欠勤が減少した。 目黒化工株式会社 静岡工場 静岡県 掛川市 事業内容 医薬品、医薬部外品、化粧品、食品等の受託製造 雇用状況 従業員数230名 うち精神障害者雇用数1名 主な従事作業 環境管理、緑化、清掃、洗濯、無災害記録掲示等 キーワード 職務創出、トライアル雇用、勤務時間の配慮、ジョブコーチ支援 改善前の状況 障害者雇用自体が初めてであったため、職務の設定や、雇用管理上の配慮事項等がわからなかった。 改善内容 1 ハローワーク、障害者職業センターから助言を得ながら、敷地内点検作業、廃棄物処理作業を中心に、精神障害者に対応可能な職務、労働条件の設定を行った。 2 トライアル雇用を活用し、10時から15時で、週4日勤務から開始した。 3 職場で指導にあたる担当者を1名選出するとともに、指示の出し方、雇用管理の支援を受けるために、ジョブコーチ支援を活用した。 4 本人の体調管理や生活面の支援について、地域活動支援センターの相談場面を活用した。 改善後の効果 1 精神状態は安定しており、週4日から、週5日勤務に延長している。 2 本人が対応可能な事務補助を加え、職務内容の幅が広がっている。 3 総務部を中心に、「焦らず ゆっくりやればよい」と声かけを行い、長いスパンで、本人の成長を見ていこうと考えるようになった。 74ページ 日東電工ひまわり株式会社 愛知県 豊橋市 事業内容 各種テープ類の切断包装・梱包作業、製品輸送容器類の清掃再活作業、名刺・封筒類印刷 雇用状況 従業員数55名 うち精神障害者雇用数4名 主な従事作業 印刷事業、クリーニング事業 キーワード 相談・コミュニケーション 改善前の状況 注文内容確認、仕様打ち合わせ、納品等のやりとりの際に、相手の態度を気にして電話に出ることに、抵抗を感じてしまうことがあった。 改善内容 1 電話対応については他の人に依頼し、他の作業に専念してもらうこととした。 2 仕事で同僚の協力を得たいときや、体調不良のときに、我慢せずに声をかけあえるようにした。 改善後の効果 不安感が軽減され、封筒印刷、各種仕分け作業において生産効率が上がり、同僚の手本となる技量を身に付けることができた。 株式会社 みえデータクラフト 三重県 津市 事業内容 Excel、Word、及び オートCADによる情報サービス業 雇用状況 従業員数61名 うち精神障害者雇用数1名 主な従事作業 Excel・Wordによるデータ入力、オートCAD LTによる図面のトレース作業、社内報作成のサポート(写真撮影、画像編集ソフトによるデザイン構成作業他) キーワード ジョブコーチ支援、職務遂行 改善前の状況 1 対人関係に敏感で、落ち着きがみられなかった。 2 曖昧な指示に対する理解や、臨機応変な対応、自分から質問、相談することが苦手であった。 改善内容 1 周囲との接触が少ない、比較的マイペースでできる、入力作業を担当してもらった。ジョブコーチを介して、仕事の進捗状況や職場で感じていること等、相談できるようにした。 2 抽象的な指示を避け、複雑な内容は口頭ではなく指示書を渡す、あるいは本人にメモをとらせた。 3 複数の上司から異なる指示が出ることを避けるため、指示系統を一本化した。 改善後の効果 1 会社を休むことなく、勤務状態は安定している。 2 Excel、Wordによる通常の入力作業においては、スピード、正確性ともに優れている。オートCADによる図面のトレース作業も、習得できている。 3 デザイン系の仕事を新規開拓し、関連会社の社内報、ポスター作成にも従事し、評価されている。 パシフィックぎけん株式会社 滋賀県 野洲市 事業内容 不職ふ加工業(メディコン資材、工業資材、電気資材、空調資材、自動車資材、衣料資材) 雇用状況 従業員数160名 うち精神障害者雇用数1名 主な従事作業 医療用機器の減菌加工における物性測定と評価、不職ふ製品のラミネート、及びボンディング加工における物性測定と評価、異常品の物性測定と解析 キーワード 障害理解、職務遂行 改善前の状況 障害者雇用の経験はあったものの、精神障害者を受け入れるにあたっては不安があり、また、社内の理解や作業の標準化が遅れていた。 改善内容 1 月2回の朝礼において、社長から従業員に対し、精神障害者雇用について説明した。 2 精神障害者の受け入れに向けて、作業の手順書・要点書、設備安全基準、就業規則、福利厚生等の見直しを行った。 3 併せて人権啓発の一環として、セクハラやパワハラ、コンプライアンス等について、啓発を行った。 改善後の効果 1 精神障害者の、安定した職場定着につながった。 2 全従業員にとって他者への思いやりや配慮、人の良さを見出す視点が育まれた。 75ページ ユニプラス滋賀株式会社 甲南工場 滋賀県 甲賀市 事業内容 モノフィラメントの製造 雇用状況 従業員数53名 うち精神障害者雇用数1名 主な従事作業 糸巻き(ボビン)を色ごとに仕分ける作業、糸巻き(ボビン)に残っている糸をカッターや紙やすりできれいにする作業、出荷に係る梱包作業 キーワード ジョブコーチ支援 改善前の状況 採用時、週30時間勤務であったが、1ヶ月程度で疲労を訴えたため、勤務時間の変更を検討する必要があった。 改善内容 ジョブコーチを交えて相談を行い、木曜日と日曜日を休日にし、連続して3日以上勤務することを避けた(週25時間勤務とした)。 改善後の効果 本人にとって、よいペースで働くことができ、本人の意欲も向上、周囲支援の従業員との良好な人間関係も構築された。 有限会社 夢工房 京都府 京都市 事業内容 清掃業 雇用状況 従業員数103名 うち精神障害者雇用数5名 主な従事作業 公衆浴場の清掃作業(ごみ回収、脱衣場の掃除、整頓、浴室の掃除・整頓、備品のセット・補充・点検)、番台(点検、あいさつ、商品管理、補充、代金の受け渡し)、湯守(ボイラー点検、湯張り・湯抜き、塩素の取り扱い・濾過機操作) キーワード 職場復帰、勤務時間の配慮 改善前の状況 公衆浴場の番台業務を行っていたが、お客様からのクレーム等の対応に緊張してしまい、出勤することができなくなってしまった。 改善内容 1 本人、家族と相談すると共に、主治医に職場復帰にむけた助言をもらった。 2 一日1時間、週2日から3日の出勤から始め、担当業務を接客が発生しない浴場の清掃業務とした。 3 知的障害者3名とチームを組んでもらい、職場の人間関係に慣れてもらった。 改善後の効果 1 徐々に勤務時間を延長することができた。 2 清掃業務だけでなく、ボイラー操作業務を習得し、リーダー的存在となっている。 星和電機株式会社 京都府 城陽市 事業内容 電気機器製造・販売 雇用状況 従業員数554名 うち精神障害者雇用数1名 主な従事作業 照明器具の部品組立作業 キーワード 職務創出、ジョブコーチ支援、トライアル雇用 改善前の状況 工場において障害者雇用が進まなかった。 改善内容 1 工場内の業務、及び外注・内職委託業務の中から、障害者が担当できる作業を抽出した。 2 ジョブコーチ支援、トライアル雇用を活用し、新規雇用と定着を目指した。 3 職場全体で、障害者をフォローする雰囲気を作るよう心がけた。 改善後の効果 身体障害者、知的障害者、精神障害者と、段階的な雇用をすることができた。 76ページ 英興株式会社 京都府 京都市 事業内容 石英ガラス加工・販売等 雇用状況 従業員数116名 うち精神障害者雇用数1名 主な従事作業 清掃業務 キーワード 支援機関との連携、相談・コミュニケーション 改善前の状況 本人が担当していた業務が不況によりなくなり、配置転換を余儀なくされた。 改善内容 1 社内清掃に配置転換するために、障害者職業センターと連携し、清掃に必要なトレーニングを行った。 2 配置転換前の部署のキーパーソンの女性従業員が、定期的に清掃現場を訪問したり、一緒に休憩したりして、職場環境の変化に徐々に慣れるようにフォローした。 改善後の効果 新しい配属先に慣れ、単独で清掃作業ができることが可能となった。 アクテック株式会社 大阪府 枚方市 事業内容 金属加工業(あらゆる機器を運び、保護し、保管するためのケース等製造) 雇用状況 従業員数52名 うち精神障害者雇用数4名 主な従事作業 アルミ押し出し、及び異型材の切断・プレス加工・ボール盤加工、商品の梱包、部品・商品の組み立て、商品検査 キーワード 職務遂行 改善前の状況 1 部品の入れ忘れによるミスが発生。誰が作業してもミスに気付き、事前防止できるようにする必要があった。 2 毎日の作業内容は、朝礼で部門の責任者から指示がないと分からないため、受身になりがちだった。 3 作業量に対する意識が持ちづらかった。 改善内容 1 必要な数だけ部品を準備する、ダブルチェックを行う等、作業標準書を改善し、仕事を行った。 2 小集団部門別採算制度を導入し、進捗ボードに、年間・月間・週間・日次の目標数や、部門の仕事について表示を行った。 3 30分刻みで、作業数を記録することにした。 改善後の効果 1 ミスが生じやすい仕事については、事前に部門内で情報共有がなされるようになり、ミスの防止につながっている。 2 部門内の目標に向けて、従業員が自発的に作業に取り組むようになった。 3 具体的な作業数を記録することで、自分の成果を意識するようになった。また、作業量の変化が、体調不良を察知することにもつながっている。 4 時間当たりの成果で、他部門と遜色のない結果が見られている。 SMBCグリーンサービス株式会社 大阪府 東大阪市 事業内容 みつい住友銀行の事務請負業。預金等の出入表作成業務、マル優関連業務、手形小切手発行業務、マイクロ撮影データスキャン業務等 雇用状況 従業員数220名 うち精神障害者雇用数1名 主な従事作業 貯金口座の出入内容の照会業務 キーワード ジョブコーチ支援、職務遂行、体調管理、相談・コミュニケーション 改善前の状況 1 職場で精神障害者雇用の経験がなかったため、どのように対応していいかわからなかった。 2 指示系統が複数あると、混乱が見られた。 3 体調が変化した時や困ったことがあった時に、職場に意思表示ができるか不安があった。 改善内容 1 障害者職業センターのジョブコーチ支援を中心に、支援機関と連携をとり、本人をサポートする体制を構築した。また、外部講師から「精神障害者が働くということ」をテーマに勉強会を開催した。 2 伝達事項の通知方法を一本化し、仕事量は担当管理者が小刻みに与えることにした。 3 執務チェックリストを作成し、前夜の睡眠状況、仕事に対する力の配分に気付かせるようにした。チェックリストに基づき、管理者等が適宜指示、アドバイスを行った。 4 「なんでも話そうノート」(交換日記形式)を随時利用することにした。昼食時に数人で座談会を開き、コミュニケーションをとるきっかけを設定した。 改善後の効果 1 ジョブコーチや他の支援機関から助言を得たことで、精神障害者と共に働く際の基本意識を学ぶことができた。 2 混乱することなく作業に取り組むことができた。 3 執務チェックリストの活用により、自分の状態を冷静に判断できるようになったことと、本人の体調に合わせて指示をすることができた。 4 ノートでの意見交換により、本人の悩みや要望、精神状態を管理者・相談者が共有することが可能となった。座談会で仕事以外の話に広がり、コミュニケーション能力の向上にもつながっている。 77ページ 株式会社エスコアハーツ 兵庫県 明石市 事業内容 部品組立、印刷、発送、リサイクル(機器分解、分別) 雇用状況 従業員数37名 主な従事作業 発送業務、リサイクル(分解、ぶんべつ)業務、受注入力、オンデマンド印刷 キーワード 職場復帰、勤務時間の配慮 改善前の状況 精神疾患による休職者がいるが、体調が整わないまま復帰し、再発や退職してしまう事例があった。 改善内容 1 特例子会社に一時復帰し、体調等を整え正式な職場復帰を目指した。 2 復帰1週間目は半日勤務から開始し、2週目から終日勤務とした。 3 月1回の産業医との面談を設定した。 4 本人の能力に応じた職務(発送業務、受注入力、リサイクル、オンデマンド印刷)を設定した。 改善後の効果 1 不安感が軽減され、欠勤することなく通勤している。 2 幅広い職務に対応できており、本社への職場復帰も見込まれる。 阪神友愛食品株式会社 兵庫県 西宮市 事業内容 食品の製造・加工(水煮、レトルト商品) 雇用状況 従業員数34名 うち精神障害者雇用数2名 主な従事作業 原料缶開け・水洗・水きり、商品の袋づめ・真空包装 キーワード ジョブコーチ支援 改善前の状況 仕事上の悩みを、上司に相談することができなかった。 改善内容 障害者職業センターのジョブコーチ支援を活用し、本人が抱えている、会社に言いにくいことや悩みを把握してもらった。 改善後の効果 仕事上の悩みを上司に相談できるようになり、安定出勤が可能となった。 YKK六甲株式会社 兵庫県 神戸市 事業内容 印刷業、及びWebサイト構築運営 雇用状況 従業員数19名 うち精神障害者雇用数2名 主な従事作業 印刷業務(製版する前の工程である「データチェック・訂正」等)、Webサイトのアイテムの制作業務(SNSサイトで使われる「アバタ・バナー」等のアイテム制作) キーワード 支援機関との連携、不安・緊張感の軽減 改善前の状況 1 ハローワークの紹介で、委託訓練やトライアル雇用の受け入れを行ったが、通勤、服薬管理、家庭のサポート等生活面の課題により、継続されなかったケースがあった。 2 同じ業務を行っている人と自分の能力を比較してしまい、焦りを感じてしまう者がいた。 改善内容 1 行政機関・福祉施設との連携による「施設内就労プログラム」を立ち上げ、福祉施設内に、YKK六甲分室を設置、精神障害者の職場定着を推進した。 2 事務所内に、周囲の従業員や出入りする人に影響されず集中できる、Webサイト製作専用のIT室を開設した。 改善後の効果 1 福祉的サポートを受けやすい分室で1年勤務した後、「事務所で勤務してみたい」と意欲が高まり、事務所勤務への移行が可能となった。 2 本人の状態に応じて、事務所、IT室いずれかでの勤務が選択できたことにより、精神的な落ち着きが見られた。 78ページ 株式会社エスジーユー 兵庫県 多可町 事業内容 家電製品等の組立・検査業務 雇用状況 従業員数36名 うち精神障害者雇用数8名 主な従事作業 再タップ作業(塗装されたねじ穴の塗装をはがす)、脱脂作業(建築金物の部品を洗浄するため、専用のかごに並べて収める)、プレス・カシメ作業(建築金物の部品をプレス、またはカシメる) キーワード 勤務時間の配慮、不安・緊張感の軽減、支援機関との連携 改善前の状況 1 勤務時間の設定については、本人の体調に合わせるものの、時間を長めに設定していた。 2 休憩室で障害者同士のコミュニケーションが取りづらかった。 3 作業所修了者と、ハローワークから紹介された障害者では、サポート体制が同一でなかった。 改善内容 1 個々人の体調、病気の特性により、本人が可能な勤務時間の80%程度を目安に設定した(8時間勤務が可能であっても、7時間で設定)。 2 障害者同士が気兼ねなくコミュニケーションができるように、休憩室を別に作った。 3 事業所、作業所職員、ハローワーク職員、ジョブコーチ、保健師を交えサポートする体制にした。 改善後の効果 1 余力を残せることで、安定した出勤が可能となった。 2 障害者個々の悩み、余暇の過ごし方等、障害者同士が話し合えることで、ストレス解消につながった。 3 障害者も支援機関の助言を参考にしながら、仕事に取り組むことができた。 社会福祉法人一麦会 和歌山県 和歌山市 事業内容 業務用リネンクリーニング、医療関係白衣クリーニング業 雇用状況 従業員数119名 うち精神障害者雇用数12名 主な従事作業 リネンサプライ、白衣、衣類、タオル等のクリーニング業務 キーワード 職務遂行、体調管理 改善前の状況 個々人の対応能力に差があり、作業の仕上がりにばらつきが見られた。 改善内容 1 職員が作業の手本をみせ、作業内容のチェック、ミスへの対応を行い、技術のレベルアップを図った。 2 障害程度に応じた適材適所の配置。 3 作業者個々の健康状態を見極め、精神面の変化への対応を行った。 改善後の効果 作業能力が向上し、収益アップにつながった。 社会福祉法人あすなろ会 鳥取西デイサービスセンター 鳥取県 鳥取市 事業内容 在宅介護サービスを中心とする介護保険事業所 雇用状況 従業員数24名 うち精神障害者雇用数2名 主な従事作業 介護補助、散歩つきそい、ゲームの相手、洗髪後ドライヤー介助、花壇等の管理、施設周りの掃除 キーワード 支援機関との連携、職務創出 改善前の状況 1 2級ヘルパー資格を取得し介護業務に従事していたが、利用者との関係づくりに、ストレスを感じていた。 2 体調を崩し、椅子に座り込んでいたり、勤務中、休憩室に閉じこもったりすることがみられた。 改善内容 1 障害者職業センター、病院の医療ソーシャルワーカーと話し合いの場ををもった。 2 座っていたり休憩室に閉じこもったりしている場合は、見守り、気分の落ち着くのを待つことにした。 3 本人と相談しながら、花壇の植木の世話、施設周りの掃除等、直接利用者に関わらない仕事に就いてもらうようにした。 改善後の効果 1 仕事内容を変えたことにより、気分転換が図られ、ストレスが軽減できた。 2 園芸に詳しい利用者と自然に会話が弾んだり、花が咲いたときに一緒に喜んだり、関係作りがスムーズにできる場面が増えてきた。 3 掃除をしていると、利用者から労をねぎらう言葉をかけられ、達成感を感じ、やる気につながった。 79ページ ちよ三洋工業株式会社 鳥取県 鳥取市 事業内容 LED(発光ダイオード)応用商品の組立 雇用状況 従業員数100名 うち精神障害者雇用数1名 主な従事作業 車載用LED(ストップランプ、ウインカー等)ランプ点灯検査。 キーワード 障害者委託訓練、トライアル雇用、ジョブコーチ支援 改善前の状況 1 精神障害者の雇用経験がなく、どのような対応をしたら良いか不安であった。 2 自分から質問する勇気が出ず、製品が適正か否かの判断に手間取ったり、休憩時間に、周囲とコミュニケーションをとることができなかった。 3 本人が、仕事に対して自信が持てなかった。 改善内容 1 障害者委託訓練やトライアル雇用を活用し、段階的に受け入れを行った。 2 第2号ジョブコーチによる支援を行い、作業状況の把握、声かけをした。休憩時間中、周囲に溶け込めるような橋渡しをした。交換ノートを使用して、本人の気持ちの整理とアドバイスを行った。 3 各種資格試験、技能競技大会への参加を促した。 改善後の効果 1 段階的な受け入れ方法を、他の精神障害者にも応用した。現時点で、定着率は100%である。 2 徐々に周囲の者とコミュニケーションをとることができるようになり、親睦会にも参加するようになった。 3 ビジネスマナー実務検定3級・2級取得、簡単な手話の習得、鳥取県障害者作業技能競技大会「ワード・プロセッサ課題B」において金賞を受賞し、自信をつけた。 株式会社 さんようプロスハート 島根県 松江市 事業内容 「ネオナイト」(凝集剤)の製造・販売、水質検査、ネオナイト処理システムの設計・販売・レンタル 雇用状況 従業員数9名 うち精神障害者雇用数1名 主な従事作業 凝集剤の製造及び在庫管理、プラント整備作業補助 キーワード 職務遂行、相談・コミュニケーション、ジョブコーチ支援、体調管理 改善前の状況 1 作業スペースが狭いため、作業がしづらく、荷物を積み上げなくてはいけなかった。 2 本人に対して精神的ケアをする時間が十分にとれなかった。 3 通院するための休暇がとりにくかった。 改善内容 1 新工場の移転に伴い、作業スペースを確保した。 2 業務遂行援助者を配置して、作業指導や仕事上の相談がしやすい体制にした。 3 月1回の社内ミーティング、始業前のミーティングを行い、コミュニケーションがしやすい環境にした。 4 障害者職業センターのジョブコーチ支援を活用し、安全意識や、本人の不安軽減にむけたサポートを行った。 5 定期通院のために、時間単位で休暇が取れるようにした。 改善後の効果 1 作業スペースの確保により、危険回避がしやすくなった。 2 新しい仕事に対する不安が解消され、作業内容の改善につながった。 3 部内のコンセンサスが得られやすくなり、障害者への声かけや、疲労時の作業の変更等サポートが得やすくなった。 4 ジョブコーチの橋渡しにより、障害者と他の従業員とのコミュニケーションが促進され、本人も安心して作業に取り組めた。 5 定期通院がしやすくなった。 株式会社ベネッセビジネスメイト 岡山事業所 岡山県 岡山市 事業内容 清掃業務、メール・郵便物等集配業務、図書館運営管理業務、オフィスサービス業務、OAセンター運営業務 雇用状況 従業員数53名 うち精神障害者雇用数6名 主な従事作業 清掃業務、食堂食器洗い キーワード 支援機関との連携、精神障害者ステップアップ雇用、不安・緊張感の軽減 改善前の状況 雇用後に、服薬管理の問題、就労意欲の低下等がみられ、業務の見直し、社内調整、支援会議の開催等、多大な時間を費やした。 改善内容 1 採用時にフォローアップや、本人、関係者との調整について、支援機関にサポートしてもらえるよう依頼した。 2 精神障害者ステップアップ雇用・グループ雇用を活用し、短時間勤務から始め、本人のペースに合わせて雇用を進めた。 3 精神障害者の緊張、不安を和らげるために、定期的に支援会議を開催し、業務遂行状況の確認、今後の目標を明確にした。 改善後の効果 1 支援機関のサポートを得たことで、企業単独で医療機関や家族と調整する負担が軽減された。 2 就労経験の少ない精神障害者を雇用する際、2時間ぐらいから開始すれば継続的に働けることが分かった。 80ページ 医療法人 さくら診療所 徳島県 吉野川市 事業内容 医療及び介護 雇用状況 従業員数45名 うち精神障害者雇用数2名 主な従事作業 通所リハビリテーションにおける老人の送迎、及び介護補助 キーワード 体調管理、勤務時間の配慮、支援機関との連携 改善前の状況 一日6時間の週5日勤務で働いていたが、1年経過して症状が不安定となり、作業効率の低下や、欠勤が多く見られるようになった。 改善内容 1 障害者職業センターに相談し、体調の自己チェック表を導入した。職場の業務遂行援助者がチェック表を参考に、体調に合わせて業務調整を行った。 2 出勤日数を週5日から週3日、勤務時間を一日6時間から3時間に変更し、3カ月程度経ってから徐々に勤務時間を増やすこととした。 3 本人の同意のもと、障害者職業センターを通じて医療機関と情報を共有し、診察やカウンセリングの内容を踏まえ、本人に関わった。 改善後の効果 1 自己チェック表の導入で、体調の変化やその原因を徐々に認識できるようになった。 2 段階的に、勤務時間や日数を増やすことができた。 石垣メンテナンス株式会社 香川県 坂出市 事業内容 小規模水処理設備の設計・施工、水処理薬品の製造・販売等 雇用状況 従業員数350名 うち精神障害者雇用数1名 主な従事作業 小規模水処理機械の組立作業 キーワード 不安・緊張感の軽減、相談・コミュニケーション 改善前の状況 従業員の多くが専門分野の仕事に従事しており、本人にとって、従業員とのコミュニケーションや作業環境に、戸惑いがみられた。 改善内容 1 2人から3人の少人数で行える、小型水処理機械の組立作業(軽作業)を担当してもらった。 2 作業場所は、静かで落ち着ける場所に設定した。 3 定期的に、本人とコミュニケーションを取る機会を設定した。 改善後の効果 作業や環境に慣れ、業務に取り組んでいる。 特別養護老人ホーム 今治なごみ苑 愛媛県 今治市 事業内容 高齢者の介護及び支援、福祉事業 雇用状況 従業員数61名 うち精神障害者雇用数1名 主な従事作業 施設内の清掃 キーワード ジョブコーチ支援、障害理解、不安・緊張感の軽減 改善前の状況 精神障害者雇用の経験、知識がなかったため不安があった。 改善内容 1 障害者職業センターのジョブコーチ支援を活用し、本人に対し、掃除機の使用方法や、腰の負担が少ない動作を助言してもらった。 2 精神障害の特性について、障害者職業センターから、基礎的な知識と対応方法について助言をもらった。 3 気分の不安定さについては、本人と関係性のある精神保健福祉士に相談してもらった。 改善後の効果 サポートにより職場定着が進んだ。 81ページ 株式会社フタガミ 高知県 南国市 事業内容 ホームセンター、小売業 雇用状況 従業員数333名 うち精神障害者雇用数1名 主な従事作業 総務事務、入力作業、販売接客 キーワード 職務創出 改善前の状況 精神障害者に対する理解を深め、どのように受け入れるか検討する必要があった。 改善内容 1 OJT担当者の接し方を、他の従業員も真似た。 2 職務内容を、主担当者の補助、単発で終わる仕事、年1回の処理業務等、体調不良で休んだ時にフォローがしやすいようした。 3 仕事が単調にならぬよう、週2日混雑する時間帯を避けて、レジ作業を担当してもらった。 改善後の効果 1 周囲の従業員が、障害特性を理解しながら受け入れができている。 2 本人と従業員のコミュニケーションが促進され、自発的に自分の症状や、仕事上の課題を相談できるようになった。 社会福祉法人友悠会 佐賀県 嬉野市 事業内容 病院職員の白衣等のクリーニング、病院給食用のパン製造 雇用状況 従業員数43名 うち精神障害者雇用数24名 主な従事作業 クリーニング業務(洗濯、畳み等)、パン製造業務(パン製造) キーワード 相談・コミュニケーション、不安・緊張感の軽減、体調管理 改善前の状況 対人関係、健康面等を理由に仕事への意欲が見られず、安定した勤務に課題があった。 改善内容 1 本人から休みの連絡があれば、電話による現状把握、翌日に自宅訪問し、食事や疲労、病状等の聞き取りを行った。 2 従業員同士の交流会を開き、コミュニケーションを図った。 3 精神保健福祉士を採用し、定期的な訪問介護を実施。本人の悩みや家での行動を把握した。体調不良時には、主治医に休養や薬の処方について助言を得た。 改善後の効果 1 仕事への意欲も出始め、長期に休むことが減ってきた。 2 主治医との連携を密にしたことで、早期の対応が可能となり、作業能力が向上した。 3 障害者が相談しやすくなり、人間関係も良くなった。 有限会社はるかぜ 長崎県 長崎市 事業内容 ホームヘルパー 雇用状況 従業員数10名 うち精神障害者雇用数1名 主な従事作業 利用者の日常生活介助、病院、公共施設などへの移動介助 キーワード 職務遂行 改善前の状況 作業内容が覚えられなかった。 改善内容 逐次、スタッフから作業内容について声かけをしている。 改善後の効果 自分から作業内容を確認しながら取り組むようになった。 82ページ トレジャーオブテクノロジー株式会社 熊本県 益城町 事業内容 総合エンジニアリング事業、及び人材派遣業 雇用状況 従業員数350名 うち精神障害者雇用数1名 主な従事作業 テナント・駐車場・社用車の管理、労働社会保険関連書類の提出・管理、建物管理、照明器具の点検・保守、郵便物の受発信、文具・事務用品の購入、建物内清掃委託会社の指導・管理 キーワード リワーク支援、職場復帰、相談・コミュニケーション 改善前の状況 1 精神障害者の特性について認識がなく、フォローする体制がなかった。 2 休職者が申請できる制度(傷病手当金等)が周知されていなかった。 改善内容 1 障害者職業センターと連携し、リワーク支援を活用した。 2 「メンタルヘルス規程」を策定した。 3 傷病手当金、高額医療費、就業規則等の、定期的な説明会を開催した。 4 社会保険委員、障害者職業生活相談員、年金アドバイザー等の有資格者を配置して、職場復帰の相談体制を確立した。 改善後の効果 1 リワーク支援活用により、職場復帰につながった。 2 傷病手当金等の説明会を通じて、労働法規やメンタルヘルス規程の周知がされるようになった。 3 職場復帰事例や障害者職業生活相談員の配置により、精神障害者に対する理解が得られるようになった。 4 上司自らコミュニケーションデーを設定して、部下の不安、緊張感、ストレスの軽減に努めるようになった。 有限会社オーシャン企画 大分県 大分市 事業内容 農業生産法人(ブルーベリー他、貸し農園等) 雇用状況 従業員数14名 うち精神障害者雇用数7名 主な従事作業 農地整備、野菜・果実・花類の植え込み、厨房内作業 キーワード 障害者委託訓練、トライアル雇用、体調管理 改善前の状況 障害特性がわからなかった。 改善内容 1 障害者委託訓練の受託やトライアル雇用を活用し、施設からの受け入れを行った。 2 主治医と密接に連携し、本人の服薬の状況や心身面の健康状態を確認しながら、作業指示を出した。 改善後の効果 作業や職場環境に慣れ、雇用にいたった。 合同会社デバン 大分県 佐伯市 事業内容 施設園芸(高糖度トマトの周年栽培) 雇用状況 従業員数5名 うち精神障害者雇用数1名 主な従事作業 トマトの播種作業、生育期間中の管理(農薬散布を除く)、栽培温室の環境管理、収穫作業、収穫後の栽培ベンチの清掃作業、出荷作業・販売業務補佐、配達、栽培管理作業上の指示指導補佐 キーワード 職務遂行、体調管理、支援機関との連携 改善前の状況 1 養液栽培システムによる高糖度トマトの栽培は、作業の精度が求められており、作業遂行上のフォローが必要であった。 2 体調の変化が日によって見られた。 3 社会人としてのマナーが、十分習得されていなかった。 改善内容 1 当日の作業内容と流れを全員に指示・確認、作業ブロック毎に予定を掲示した。作業手順は口頭だけでなく、実際に手を添えて指導した。 2 助成金を活用し、音声・表示機能を持つ糖度選別機「フルーツ・セレクター」を導入した。 3 通院・服薬管理・睡眠等について、こえかけを行っている。精神障害者の通所授産施設から精神保健福祉士の訪問を受け、本人との相談、職員との意見交換を行っている。 4 社会人としてのマナーを、代表や業務遂行援助者から適宜助言している。 改善後の効果 1 作業手順を理解し、自力で取り組むことができている。「フルーツ・セレクター」を使用することで、糖度選別作業をベテラン並に取り組むことができた。 2 体調の変化はみられるものの、作業能力の向上と精神的安定が見られた。 3 社会人としてのマナーが習得された。 83ページ ヤマエ久野株式会社 宮崎支店 宮崎県 宮崎市 事業内容 総合卸売業 雇用状況 従業員数56名 うち精神障害者雇用数1名 主な従事作業 商品仕分け及び付帯作業 キーワード ジョブコーチ支援、トライアル雇用、障害理解 改善前の状況 初めての障害者雇用であり、どのように対応すればよいのかわからなかった。 改善内容 1 障害者職業センターと連携し、雇用前のジョブコーチ支援とトライアル雇用を利用した。 2 従業員の理解促進のために、障害者への接し方について、障害者職業センターの助言や説明資料を提供してもらった。 3 勤務時間は段階的に延長するとともに、職務内容は簡易なものから指導した。 改善後の効果 仕事や人間関係に慣れ、担当している作業について、他の従業員と同様にこなしている。 慈英病院 宮崎県 宮崎市 事業内容 病院 雇用状況 従業員数100名 うち精神障害者雇用数1名 主な従事作業 おしぼりの準備や床頭台拭き、配茶等、介護業務補助 キーワード 障害理解、勤務時間の配慮、ジョブコーチ支援 改善前の状況 1 障害者に対する接し方や、指示・指導の仕方がわからなかった。 2 本人が抱える仕事の悩みを相談できる人がおらず、早めの対応ができなかった。 改善内容 1 障害者職業センターのカウンセラーから、精神障害者の特性や、接する際の配慮事項について助言をもらい、看護師長、事務長、事務課長が協議し、担当業務、指導者を選定した。 2 勤務時間は一日5時間から始め、慣れた時点で本人の意思を踏まえながら、業務内容や、勤務時間を見直す等、柔軟な対応を行った。 3 障害者職業センターのジョブコーチを活用し、本人の不安や悩みを把握し、早期の対応を図った。 改善後の効果 悩みを抱え、退職を申し出ることもあったが、ジョブコーチによる相談を行いながら継続勤務している。現在では、体調不良であっても、少し休憩を挟むことで業務に戻れている。仕事に対する、前向きな言葉も聞かれるようになった。 有限会社 宮一建設 宮崎県 宮崎市 事業内容 土木業、給排水設備業 雇用状況 従業員数4名 うち精神障害者雇用数1名 主な従事作業 作業員 キーワード 職務遂行 改善前の状況 1 職場において、敬語の使用や来客の対応に不慣れであった。 2 報告や質問の際に、語尾が曖昧になって、何を伝えたいかわかりにくい時があった。 改善内容 1 支援機関と相談の上、職場で求められる身支度、言葉遣いについて助言をした。 2 報告や質問については、はっきり内容や意思を伝えるよう指導した。 3 仕事に対するモチベーションを高めるために、本人の名刺を作成した。 改善後の効果 1 来客用のスリッパの準備、庭の水やり等、環境整備を自ら取り組むようになった。 2 コミュニケーションが図られ、周囲との信頼関係が強くなった。 84ページ 有限会社二幸食鳥 松元工場 鹿児島県 鹿児島市 事業内容 食鳥の処理・加工・販売 雇用状況 従業員数119名 うち精神障害者雇用数3名 主な従事作業 容器等の洗浄、製品の計量・包装、衛生管理検査 キーワード 職務遂行、支援機関との連携、勤務時間の配慮 改善前の状況 1 洗浄機の操作に慣れず、機械のスピードについていけなかった。 2 精神症状の変調が見られた。 改善内容 1 従業員が一緒に作業を行い、機械操作等の習得を支援した。 2 主治医の指示のもと、自宅療養とした。その間は、障害者支援センターが家庭訪問を行い、状況把握に努めた。復帰にあたっては、短時間勤務から開始した。 改善後の効果 1 単独で機械操作ができるようになった。 2 職場に復帰し、精神的に安定して勤務している。 特定非営利活動法人 クリンカ鹿児島 鹿児島県 鹿児島市 事業内容 自立支援事業 雇用状況 従業員数24名 うち精神障害者雇用数10名 主な従事作業 悠々亭「鴨いけ」での、弁当製造の調理補助 キーワード 職務遂行 改善前の状況 1 職場で障害者の訓練を行っているため、訓練と混同し、仕事をしているという意識が弱くなりがちであった。 2 食材の準備を忘れてしまうことがあった。 改善内容 1 本人に責任のある仕事を任せたり、業務日誌を記入させたりして、働くことの意識を高めた。 2 前日にメニューに必要な食材を準備し、間違いがないか確認させた。食材ごとに色分けした伝票を使用し、混同を防いだ。 改善後の効果 1 業務日誌を通じ、仕事に対する建設的な意見がみられるようになった。 2 メニューに必要な食材を理解し、食材を忘れることがなくなった。 85ページ 平成21年 度障害者雇用職場改善好事例応募状況 1.都道府県別応募数 都道府県 北海道 0件 青森 1件 岩手 1件 宮城 6件 秋田 0件 山形 2件 福島 0件 茨城 1件 栃木 1件 群馬 0件 埼玉 2件 千葉 1件 東京 5件 神奈川 5件 山梨 1件 長野 0件 新潟 1件 富山 1件 石川 1件 福井 2件 岐阜 2件 静岡 2件 愛知 1件 みえ 1件 滋賀 2件 京都 3件 大阪 2件 兵庫 5件 奈良 0件 和歌山 1件 鳥取 2件 島根 1件 岡山 1件 広島 0件 山口 0件 徳島 1件 香川 1件 愛媛 1件 高知 1件 福岡 0件 佐賀 1件 長崎 1件 熊本 2件 おおいた 2件 宮崎 3件 鹿児島 2件 沖縄 2件 合計 71件 2.事業所規模別応募数 事業所規模1,000人以上 計4件 事業所規模500人以上999人以下 計4件 事業所規模300人以上499人以下 計5件 事業所規模100人以上299人以下 計19件 事業所規模56人以上99人以下 計8件 事業所規模55人以下 計31件 合計71件 3.業種別応募数 業種 農業.林業 計4件 内訳 農業4件 業種 建設業 計1件 内訳 綜合工事業1件 業種 製造業 計21件 内訳 食品製造業3件 繊維工業2件 パルプ.紙.紙加工品製造業1件 印刷.同関連業2件 化学工業4件 プラスチック製品製造業1件 窯業.土石製品製造業1件 金属製品製造業3件 電気機械器具製造業4件 業種 情報通信業 計3件 内訳 情報サービス業3件 業種 運輸業.郵便業 計2件 内訳 道路貨物運送業2件 業種 卸売業.小売業 計6件 内訳 各種商品卸売業1 各種商品小売業2件 機械器具小売業1件 その他小売業2件 業種 学術研究.専門.技術サービス業 計1件 内訳 技術サービス業(他に分類されないもの)1件 業種 生活活関連サービス業.娯楽業 計2件 内訳 洗濯.理容.美容.浴場業1件 その他の生活関連サービス業1件 業種 医療.福祉 計12件 内訳 医療業3件 社会保険.社会福祉.介護事業9件 業種 サービス業 計19件 内訳 廃棄物処理業1件 職業紹介.労働者派遣業1件 その他の事業サービス業17件 合計 71件 4.部門別応募数 一般会社 57件 特例子会社 14件 合計 71件 86ページ 平成21年度 障害者雇用職場改善好事例応募要項 1. 趣旨 障害者雇用において雇用管理、雇用環境等を改善・工夫し、様々な取組を行っている事業所の中から、他の事業所のモデルとなる好事例を募集し、これを広く一般に周知することによって、事業所における障害者の雇用促進と職域の拡大及び職場定着の促進を図るとともに、障害者雇用に関する理解の向上に資することを目的とします。 2. 募集テーマ 精神障害者の雇用については、障害者の就労意欲の高まりや企業側の取組の拡大(コンプライアンス、CSR(企業の社会的責任)の観点からの障害者雇用の進展)及び障害者雇用促進施策の充実等に加え、平成 18年 4月より障害者雇用率制度において実雇用率に算定が可能になったことから、精神障害者の新規求職件数や就職件数の着実な伸びが見られています。 そこで、平成21年度においては、更なる精神障害者の雇用促進を図ることを目的として、精神障害者の新規雇用又は職場復帰に向けた以下の例示のような職場改善好事例を募集します。 (1) 職務遂行の改善に取り組んだ改善好事例 例 1.作業工程のマニュアルを作成して、作業内容の理解を促進した事例 例 2.仕事の進め方、ペース配分にメリハリをつけられる工夫をして、安定した作業遂行が可能となった事例 例 3.職場復帰に際して、病状や適性に応じた新たな職務を創出した事例 例 4.高齢化に対応して、配置転換や新たな職務を創出した事例 例 5.研修や資格取得によりスキルアップを図った事例 (2) 不安、緊張感、ストレスの軽減に取り組んだ改善好事例 例 1.指導者からの適切な声かけにより、緊張感が軽減し作業に対する適切な自己評価ができるようになった事例 例 2.職場におけるコミュニケーションを円滑にし、不安、緊張を軽減した事例 例 3.休憩時間のとり方を工夫し、緊張やストレスを軽減した事例 (3) 病状に配慮した雇用管理又は社内体制整備に取り組んだ改善好事例 例 1.短時間勤務等勤務時間の配慮や通院・服薬管理等医療上の配慮をした事例 例 2.職場内における健康管理等相談支援体制を整備した事例 例 3.リハビリ出勤や職場復帰プログラム等を整備した事例 例 4.高齢化に伴い、就業規則の改正等通じて継続雇用につなげた事例 (4) 支援制度の活用や支援機関との連携により、新規雇用又は職場復帰に取り組んだ改善好事例 例 1.地域障害者職業センター等のジョブコーチ支援により新規雇用又は継続雇用が実現した事例 例 2.地域障害者職業センター等のリワーク支援により職場復帰が実現した事例 例 3.トライアル雇用制度や精神障害者ステップアップ雇用、グループ雇用により新規雇用が実現した事例 例 4.支援機関(医療機関を含む)と連携することで継続雇用や職場復帰につながった事例  3 主催 独立行政法人 高齢・障害者雇用支援機構 4 後援 厚生労働省 5 応募締切日 平成 21年 6月15日(月)(必着) 6 応募資格 (1) 精神障害者を雇用している企業又は事業所。 (2) 応募時点において、労働関係法令に関し重大な違反がないこと及びその他の法令上又は社会通念上、表彰するにふさわしくないと判断される問題を起こしていないこと。 87ページ 本募集の対象となる精神障害者とは、以下のとおりです。 1.精神保健福祉法第45条第2項の規程により精神障害者保健福祉手帳の交付を受けている者 2.統合失調症、そううつ病(そう病及びうつ病を含む。)又はてんかんにかかっている者(1に該当する者を除く) 7 応募方法 (1) 指定の応募用紙を使用し、応募用紙のみで改善の内容が簡潔にわかるようにご記入ください。また、応募用紙の各項目は変更しないでください。なお、参考資料として、図、イラスト、写真等をつけても構いません(添付資料はA4サイズにおさめてください)。 (2) 応募する事例については、上記2の募集テーマの全部又は一部に該当するものとします。 (3) 応募用紙は、表紙の問い合わせ先のほか、厚生労働省、都道府県労働局、ハローワーク、地域障害者職業センター、各都道府県協会等で配布します。また、独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構のホームページ からダウンロードした用紙も使用できます。 (4) 応募用紙は、表紙の提出先に郵送またはメールにて提出してください。 8 賞 優秀な事例には、最優秀賞(厚生労働大臣賞)、優秀賞(独立行政法人 高齢・障害者雇用支援機構理事長賞)、奨励賞(独立行政法人 高齢・障害者雇用支援機構理事長賞)を贈ります。 なお、優秀賞と奨励賞については、部門(一般部門、特例子会社部門)を設け、部門ごとに賞を贈ります。 9 審査 独立行政法人 高齢・障害者雇用支援機構に審査員会を設置し、審査します。 10 表彰 上記の最優秀賞、優秀賞の入賞事業所の表彰式は、平成21年9月に東京で開催する予定です。 11 その他 (1) 応募の際、事例の対象となる精神障害者の承諾を得てください。 (2) 応募書類は、返却しません。 (3) 応募した文書の著作権及びこれに付随する一切の権利は、独立行政法人 高齢・障害者雇用支援機構に帰属するものとします。 (4)応募に際して得られた個人情報は、独立行政法人 高齢・障害者雇用支援機構が管理し、本募集の実施運営にかかわる作業と障害者雇用の普及・啓発に関する資料送付のみを目的として使用します。 (5)応募事例については好事例集としてまとめ、事業所、関係団体等に配布します。このうち、入賞事例については取材を行い、具体的な事例の内容を好事例集へ掲載するとともに、独立行政法人 高齢・障害者雇用支援機構のホームページにも掲載します。その他の事例については、事業所名及び取組内容の概要を好事例集へ掲載します。 審査員の構成 審査員名 天野聖子 所属 社会福祉法人 多摩棕櫚亭協会 役職 理事長 審査員名 遠藤和夫 所属 社団法人 日本経済団体連合会 労働政策本部 役職 主幹 審査員名 白石弘巳 所属 東洋大学ライフデザイン学部 生活支援学科 役職 教授 審査員名 奈尾基弘 所属 厚生労働省職業安定局 高齢・障害者雇用対策部 役職 障害者雇用対策課長 審査員名 吉光清 所属 九州看護福祉大学 社会福祉学部 社会福祉学科 役職 学科長 審査員名 五月女英介 所属 独立行政法人 高齢・障害者雇用支援機構 役職 理事長代理 敬称略 五十音順 所属、役職は平成21年7月31日現在 88ページ 平成21年度障害者雇用職場改善好事例入賞事業所一覧 最優秀賞 厚生労働大臣賞 1件 区分 特例子会社 都道府県 神奈川県 事業所名 富士ソフト企画株式会社 講評 精神障害者の職業上の特性に対して、カウンセリング室にカウンセラー3名を配置、役職者に対するメンタルヘルス研修、フレックスタイム制の導入等幅広く、きめ細やかな対応が図られており、就労支援システムの構築がなされている、併せて、多くの精神障害者を雇用している点も評価できる。企業内で障害者の委託訓練を実施しており、精神障害者社員が講師となり訓練生を指導し、当事者同士の能力向上の機会を設定している点も評価できる。 優秀賞 独立行政法人 高齢・障害者雇用支援機構理事長賞 4件 区分 一般事業所 都道府県 宮城県 事業所名 有限会社井上技建 講評 業務マニュアルの作成、疲労度を見極めたうえでの随時休憩、本人とのコミュニケーションを進めるための日々の振返り等障害特性に応じた、きめ細やかな配慮がなされている。これらの取組を通じて、体調の自己管理が適切になされ、継続雇用につながった点が評価できる。 区分 一般事業所 都道府県 神奈川県 事業所名 綾瀬市リサイクル協同組合 講評 事業所全体の作業を見直し、障害者の職域拡大に取組んでいる。マニュアル整備による作業の効率化、精神障害者の従業員が体調を崩した際、一人ひとりの対処法を整理している点が評価できる。 区分 一般事業所 都道府県 兵庫県 事業所名 日本イーライリリー株式会社 講評 精神障害者雇用を推進していくために、社長自らの訓話、社内報による周知等全社的な取組がなされている。また、受入れ部署においてハローワーク職員、関係機関の精神科医を招き、統合失調症に関する勉強会を開催したことは、障害理解を進める上で効果的な取組であると評価できる。 区分 特例子会社 都道府県 東京都 事業所名 大東コーポレートサービス株式会社 講評 精神保健福祉士を採用し、精神障害者への、きめ細やかな対応をしている。また、精神障害者雇用を進めるために、新たな課の立ち上げ、短時間勤務から正社員への登用、ひとりSST(ソーシャルスキルトレーニング)による、自己管理技術の向上等の取組が評価できる。 89ページ 平成21年度障害者雇用職場改善好事例入賞事業所一覧 奨励賞 独立行政法人 高齢・障害者雇用支援機構理事長賞 6件 区分 一般事業所 都道府県 宮城県 事業所名 有限会社サカイダ工研 講評 作業内容を理解しやすくするためのイラストやマンガの活用、集中力が持続できるような作業ローテーションの工夫、体調管理のための投薬管理の確認等、精神障害者の職業上の特性に対して、配慮がなされている点が評価できる。 区分 一般事業所 都道府県 栃木県 事業所名 株式会社東京インテリア家具 講評 精神障害者に対する声かけや、指示の出し方、業務負荷の調整等について、地域障害者職業センターのジョブコーチと協議をしながら、週15時間勤務から始め、段階的に勤務時間を延長したところが評価できる。複数店舗において、同様に精神障害者の受入れを進めており、他の企業においても参考となる取組である。 区分 一般事業所 都道府県 福井県 事業所名 株式会社リコー福井事業所 講評 主治医の助言をもとに職場復帰支援体制の構築に取組むとともに、地域障害者職業センターのリワーク支援を活用しながら、職場復帰に成功した事例である。1名の職場復帰を契機に事業所内のメンタルヘルスケアを進め、積極的に予防活動を進めている点が評価できる。 区分 一般事業所 都道府県 熊本県 事業所名 株式会社共同運輸 講評 精神障害者ステップアップ雇用を活用し、段階的に勤務時間を延長する配慮がなされている。精神障害者の特性理解のために、障害者職業生活相談員認定講習の受講、事業所内の安全衛生委員会における、産業医からの助言を参考にする等の取組も評価できる。 区分 一般事業所 都道府県 沖縄県 事業所名 株式会社サムズインターナショナル 講評 出勤日の調整や相談役としての社員を配置するとともに、地域障害者職業センターのネットワークを活用して、療養先におけるリワーク支援、復帰先の沖縄県でジョブコーチ支援を受け、職場復帰に成功したところが評価できる。 区分 一般事業所 都道府県 沖縄県 事業所名 社会福祉法人 まつみ福祉会介護老人保健施設 桜山荘 講評 障害者職員に対する業務指示を、現場責任者に一本化することで、業務指示、職員の役割が明確化される。障害者職員へのアンケート実施による孤独感の軽減、専用の休憩室配備によるストレス軽減の取組が評価できる。 90ページ 支援制度 障害者雇用納付金制度の概要 障害者を雇用するには、作業施設や設備の改善、職場環境の整備、特別の雇用管理等が必要とされることが多く、経済的負担が伴うことから、雇用義務を履行している事業主と履行していない事業主とではその経済的負担に差が生じることとなります。 障害者雇用納付金制度は、障害者を雇用することは事業主が共同して果たしていくべき責任であるとの社会連帯責任の理念に立って、事業主間の障害者雇用に伴う経済的負担の調整を図るとともに、障害者を雇用する事業主に対して助成、援助を行うことにより、障害者雇用の促進と職業の安定を図るため「障害者の雇用の促進等に関する法律」に基づき設けられた制度です。 「障害者雇用納付金制度」の一部改正 「障害者の雇用の促進等に関する法律」の一部を改正する法律(平成20年法律第96号)が成立し、平成21年4月から段階的に施行されています。これに伴い、「障害者雇用納付金制度」の一部が平成22年7月1日から次のように変わります。 1. 新たに、常用雇用労働者数201人以上300人以下のすべての中小企業に障害者雇用納付金の申告を行っていただくこととなりました。 2. 週20時間以上30時間未満の短時間労働者を労働者等に加えて納付金の申告等を行っていただくこととなりました。(労働者の数及び雇用障害者数ともに算入) 3. 除外率設定業種の除外率がそれぞれ10%ポイント引き下げられることになりました。 ※平成27年4月1日からは、常用雇用労働者数101人以上の事業主に納付金制度の適用が拡大されます。 91ページ 1 障害者雇用納付金制度に基づく助成金  事業主が障害者を新たに雇い入れたり、障害者の安定した雇用を維持するために、少なからぬ経済的負担がかかることがあります。障害者雇用納付金制度に基づく助成金は、その費用の一部を助成し、負担の軽減を図ることで、障害者の雇い入れや継続雇用を容易にしようとする制度です。 助成金の種類 障害者作業施設設置等助成金  障害者を常用労働者として雇い入れるか、継続して雇用している事業主が、その障害者が障害を克服し、作業を容易に行うことができるよう配慮された作業施設、または、改善等がなされた作業設備の整備等を行う費用に対する助成金です。 障害者福祉施設設置等助成金  障害者を常用労働者として雇い入れるか、継続して雇用している事業主、またはその事業主が加入している事業主団体が、障害者である労働者の福祉の増進を図るため、障害者が利用できるよう配慮された、福利厚生施設の整備等を行う費用に対する助成金です。 障害者介助等助成金  重度身体障害者、知的障害者、精神障害者、または就職が特に困難と認められる身体障害者を、常用労働者として雇い入れるか、継続して雇用している事業主が、障害の種類や程度に応じた適切な雇用管理のために、必要な介助等の措置を実施する費用に対する助成金です。  このうち「重度中途障害者職場適応助成金」は、採用後に労働災害、交通事故、疾病等のために障害を有するに至った、いわゆる中途障害者の職場復帰を促進するための、職場適応措置を実施する事業主が対象です。また、「業務遂行援助者の配置助成金」は、重度知的障害者、または精神障害者を雇い入れ、その者に対する業務の遂行を通じた雇用管理のために、必要な援助、及び指導の業務を担当する、業務遂行援助者を配置する事業主が対象です。 職場適応援助者助成金  職場適応援助者による援助を受けなければ、事業ぬしによる雇い入れ、または雇用の継続が困難と認められる障害者に対して、職場に適応することを容易にするために、職場適応援助者(機構が行う養成研修、または厚生労働大臣が定める研修を修了し、援助の実施に関し、必要な相当程度の経験及び能力を有すると認められる者)を配置し、援助を実施する費用に対する助成金です。  職場適応援助者助成金には、第1号職場適応援助者助成金、並びに、第2号職場適応援助者の助成金の、2種類があります。第1号職場適応援助者助成金は、職場適応援助者による援助を受けなければ、事業ぬしによる雇い入れ、または雇用の継続が困難と認められる障害者に対して、職場に適応することを容易にするため、職場適応援助者による、援助の事業を行う社会福祉法人等が対象です。第2号職場適応援助者助成金は、雇用する障害者の職場適応援助を行うために必要な、第2号職場適応援助者を配置する事業主が対象です。 重度障害者等通勤対策助成金  重度身体障害者、知的障害者、精神障害者、または通勤が特に困難と認められる身体障害者を、常用労働者として雇い入れるか、継続して雇用している事業主、またはこれらの事業主が加入している事業主団体が、これらの者の通勤を容易にするための措置を行う費用に対する助成金です。 重度障害者多数雇用事業所施設設置等助成金  重度身体障害者、知的障害者、または精神障害者を、常用労働者として多数雇い入れるか継続して雇用し、かつ、安定した雇用を継続することができると認められる事業主が、これらの障害者のために、事業施設等の整備等を行う費用に対する助成金です。 障害者能力開発助成金  障害者の職業に必要な能力を開発し、向上させるための能力開発訓練事業(厚生労働大臣告示による基準に該当するもの)を行う事業主等が、能力開発訓練のために、施設・設備の整備等を行う費用、その能力開発訓練事業を運営する費用や、障害者である労働者を常用労働者として雇用する事業主が、その障害者である労働者に、障害者能力開発訓練を受講させる費用に対する助成金です。  助成金の対象、助成率、限度額、手続き等は、当機構ホームページ https://www.jeed.go.jp/disability/subsidy/をご覧下さい。 92ページ 2 特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者雇用開発助成金) 問い合わせ 都道府県労働局、ハローワーク(公共職業安定所)  身体障害者、知的障害者、または精神障害者等の、就職が特に困難な者を、新たに公共職業安定所等の紹介により雇い入れた事業主に対して、その賃金の一部を、雇い入れた日から一定期間助成することにより、雇用機会の増大を図るものです。 対象事業主  受給できるのは、次の全ての要件を満たす事業主です。 1 ハローワーク、又は適正な運用を期すことのできる、有料・無料職業紹介事業者の紹介により、身体障害者、知的障害者、又は精神障害者等(65歳未満の者に限る)を継続して雇用する労働者として雇い入れ、助成金支給後も、引き続き相当期間雇用することが確実であると認められる雇用保険の適用事業主。 2 当該雇いいれの前、及び後6ヶ月間において、当該雇い入れに係る事業所で雇用する被保険者を、事業主の都合により解雇したことがないものであること。 3 当該雇いいれの前、及び後6ヶ月間において、当該雇い入れに係る事業所において、特定受給資格者となる離職理由により雇用する被保険者を、当該雇い入れびにおける、被保険者の6%を超えて離職させていないこと(特定受給資格者となる離職理由により離職した者が、3人以下である場合を除く) 助成額・助成期間等  助成額、助成期間は次のとおりです。助成対象期間を6ヶ月ごとの支給対象期に区切り、この支給対象期ごとに支給されます。 短時間労働者以外の身体障害者、知的障害者(重度障害者等に該当する者を除く) 企業が中小企業事業主以外の場合 助成対象期間 1年 第1期支給額 25万円 第2期支給額 25万円 支給総額 50万円 支給回数 2回 企業が中小企業事業主の場合 助成対象期間 1年6カ月 第1期支給額 45万円 第2期支給額 45万円 第3期支給額 45万円 支給総額 135万円 支給回数 3回 短時間労働者以外の重度障害者等 企業が中小企業事業主以外の場合 助成対象期間 1年6カ月 第1期支給額 33万円 第2期支給額 33万円 第3期支給額 34万円 支給総額 100万円 支給回数 3回 企業が中小企業事業主の場合 助成対象期間 2年 第1期支給額 60万円 第2期支給額 60万円 第3期支給額 60万円 第4期支給額 60万円 支給総額 240万円 支給回数 4回 短時間労働者の身体障害者、知的障害者、精神障害者 企業が中小企業事業主以外の場合 助成対象期間 1年 第1期支給額 15万円 第2期支給額 15万円 支給総額 30万円 支給回数 2回 企業が中小企業事業主の場合 助成対象期間 1年6カ月 第1期支給額 30万円 第2期支給額 30万円 第3期支給額 30万円 支給総額 90万円 支給回数 3回 ※短時間労働者とは、1週間の所定労働時間が20時間以上30時間未満の者をいう。 ※重度障害者等とは、重度身体障害者、45歳以上の身体障害者、重度知的障害者、45歳以上の知的障害者、及び精神障害者であって、短時間労働者として、雇い入れられた者を除く。  ただし、対象労働者を雇い入れた事業主が当該対象労働者について、最低賃金の減額の特例の許可を受けている場合は、支給対象期について、対象労働者に支払った賃金額に、次の助成率を乗じた額(さきほどの支給対象期ごとの支給額が上限)、となります。 重度障害者等以外の者 中小企業事業主以外の場合 4分の1 中小企業事業主の場合 3分の1 重度障害者等 中小企業事業主以外の場合 3分の1 中小企業事業主の場合 二分の一 3 障害者初回雇用奨励金(ファースト・ステップ奨励金) 問い合わせ 都道府県労働局、ハローワーク(公共職業安定所)  中小企業における雇用状況は低水準で推移しており、特に中小企業における法定雇用率未達成企業のうち、雇用障害者数が0人である企業が約8割を占めていること、また、今般の景気悪化により、障害者の雇用情勢が後退するおそれがあること等の状況の中で、障害者雇用の経験のない中小企業において、初めて身体障害者、知的障害者、又は精神障害者を雇用した場合に、奨励金を支給することにより、障害者雇用の促進を図るものです。なお、特定求職者雇用開発助成金、試行雇用奨励金との併給は可能です。 対象事業主  障害者雇用の経験のない中小企業、(障害者の雇用義務制度の対象となる56人〜300人規模の中小企業)の事業主 支給額  1人目の障害者を雇用する場合100万円支給(雇い入れ後6ヶ月経過後に支給) 93ページ 4 障害者試行雇用(トライアル雇用)事業 問い合わせ ハローワーク(公共職業安定所)  障害者に関する知識や経験がないことから、障害者雇用をためらっている事業所に、障害者を試行雇用(トライアル雇用)の形で受け入れていただき、本格的な障害者雇用に取り組むきっかけづくりを進める事業です。 対象事業主 雇用保険の適用事業の事業主であること 過去6ヶ月の間に、労働者の解雇を行っていないこと 雇い入れた対象者を、過去3年の間に雇用していないことなど  ただし、国、地方公共団体、及び特定独立行政法人は対象となりません。 トライアル雇用実施期間  トライアル雇用の期間は原則として3ヶ月間で、ハローワークの職業紹介により、事業主と対象障害者との間で、有期雇用契約を締結します。  トライアル雇用期間を途中で中断させて、常用雇用に移行することも可能です。3ヶ月の期間を経過し、常用雇用に至らなかった場合は、契約期間満了による終了となります。ただし、契約期間中に事業主の都合で中止した場合は、解雇の扱いとなります。 トライアル雇用期間中の労働条件  トライアル雇用は、事業主と対象障害者との間の有期雇用契約です。したがって、トライアル雇用期間中の労働条件は、労働基準法等の労働関係法令に基づき、定めなければなりません。また、通常の労働者として要件を満たす場合は、労働保険等が適用されます。 トライアル雇用の申込手続き  トライアル雇用に係る求人申し込みを、当該事業所を管轄するハローワークで行ってください。 トライアル雇用奨励金の支給  トライアル雇用を実施した事業ぬしに対しては、トライアル雇用終了後、トライアル雇用奨励金が支給されます。奨励金の額は、原則としてトライアル雇用した対象者1人当たり1カ月4万円です。 トライアル雇用に係る職業リハビリテーションサービスの利用  トライアル雇用実施に当たり、障害者の雇用管理に係る支援等が必要な場合は、トライアル雇用開始前から、地域障害者職業センター等が実施する、各種職業リハビリテーションサービスを利用することができます。 94ページ 5 精神障害者ステップアップ雇用 問い合わせ ハローワーク(公共職業安定所)  精神障害者は、就職が可能であっても、当初から障害者雇用率の対象となる週20時間以上勤務することが難しい場合が多く、また、採用後に、仕事等の影響から不安定な状態が続くことも多いことから、事業ぬしにとっても、そのやとい入れについて不安が大きい場合が少なくありません。このため、精神障害者の求職者について、一定程度の期間をかけ、職場への適応状況等に合わせて、就業時間を延長していく「ステップアップ雇用」を行うことにより、精神障害者、及び事業主の相互理解の促進と不安の軽減を図っています。(精神障害者対象の、トライアル雇用類似制度です) 対象事業主(トライアル雇用の対象事業主と同じ) 雇用保険の適用事業の事業主であること 過去6ヶ月の間に、労働者の解雇を行っていないこと 雇い入れた対象者を、過去3年の間に雇用していないことなど  ただし、国、地方公共団体及び特定独立行政法人は対象となりません。 ステップアップ雇用実施期間  ステップアップ雇用の期間は、原則として3カ月以上12カ月以内で、ハローワークの職業紹介により、事業主と対象障害者との間で有期雇用契約を締結します。  ステップアップ雇用期間を途中で中断させて、常用雇用に移行することも可能です。ステップアップ雇用の期間を経過し、常用雇用に至らなかった場合は、契約期間満了による終了となります。ただし、契約期間中に事業主の都合で中止した場合は、解雇の扱いとなります。 ステップアップ雇用期間中の労働条件  ステップアップ雇用は、事業主と対象障害者との間の有期雇用契約です。ステップアップ雇用期間中の労働条件は、労働基準法等の労働関係法令に基づき、定めなければなりませんが、1週間の所定労働時間は、原則として10時間以上としてください。  また、通常の労働者として要件を満たす場合は、労働保険等が適用されますので、必要な手続きを行ってください。 ステップアップ雇用の申込手続き  ステップアップ雇用に係る求人申込みを、当該事業所を管轄するハローワークで行ってください。 ステップアップ雇用奨励金の支給  ステップアップ雇用を実施した事業ぬしに対しては、ステップアップ雇用奨励金が支給されます。奨励金の額は、原則としてステップアップ雇用した対象者1人当たり、1カ月2万5千円です。  また、精神障害者2人以上5人以下のグループでステップアップ雇用を実施し、支援担当者を選任して対象者の援助を行う場合は、ステップアップ雇用奨励金に加えて、グループ雇用奨励加算金が加算されます。加算金の額は、原則としてグループ当たり、1カ月2万5千円です。 ステップアップ雇用に係る、職業リハビリテーションサービスの利用  ステップアップ雇用実施に当たり、障害者の雇用管理に係る支援等が必要な場合は、ステップアップ雇用開始前から、地域障害者職業センター等が実施する、各種職業リハビリテーションサービスを利用することができます。 95ページ 6 職場適応援助者(ジョブコーチ)による支援 問い合わせ 地域障害者職業センター  障害者が円滑に適応することができるよう、ジョブコーチが事務所に出向き、職場内においてさまざまな支援を行います。地域障害者職業センターに所属するジョブコーチ(配置型ジョブコーチ)と、社会福祉法人等に所属するジョブコーチ(第1号職場適応援助者)が各地域に配置されており、必要に応じて、両者が連携して支援を行います。  ジョブコーチ以外に、事業主が自ら雇用する障害者(在職者)のために、職場適応援助者を配置することができます(第2号職場適応援助者)。また、第1号及び第2号職場適応援助者配置に関し、助成金が支給されます。 ジョブコーチは、事業主(管理監督者・人事担当者)に対し、障害特性に配慮した雇用管理に関する助言、配置、職務内容の設定に関する助言を行います。 ジョブコーチは、事務所の同僚、上司に対し、障害の理解に係る社内啓発、障害者との関わり方に関する助言、指導方法に関する助言を行います。 ジョブコーチは、障害者に対し、作業遂行力の向上支援、職場内コミュニケーション能力の向上支援 、健康管理、生活リズムの構築支援を行います。 ジョブコーチは、家族に対し、安定した職業生活を送るための、家族の関わり方に関する助言を行います。 集中支援 不適応課題を分析し、集中的に改善を図ります。週に3日から4日、訪問します。 移行支援 支援ノウハウの伝授やキーパーソンの育成により、支援の主体を徐々に職場に移行させます。週に一日から二日訪問します。 フォローアップ 数週間〜数ヵ月に一度訪問します。 地域障害者職業センターの場合、集中支援と移行支援の支援期間は、1ヵ月から7ヵ月(標準は2ヵ月から4ヵ月)です。 7 リワーク支援 問い合わせ 地域障害者職業センター  支援対象者、雇用事業主、主治医の3者の合意内容に基づき、地域障害者職業センターが、職業リハビリテーション計画と事業主支援計画を策定し、支援対象者、及び事業主がこれらの計画に沿って、職場復帰に向けての取組みを着実に進めることができるよう、障害者職業カウンセラーが、主治医のバックアップを得ながら、次の支援を行います。 事業ぬしに対して  職場復帰に当たっての、適切な職務内容や労働条件の設定、職場復帰の受入れに向けての、上司、同僚等の理解の促進、職場復帰後の、支援対象者の状況把握や対処方法、家族や主治医との連携の方法等について、事業ぬしに対して助言・援助を行います。 96ページ 精神障害者に対して  支援対象者ごとに用意したプログラムに沿って、パソコン入力等の簡易作業、ストレス対処法や自己表現トレーニングの講習、支援対象者同士の問題解決演習、復帰予定の職場への出勤の訓練などを行います。これらを通じて、職場復帰に向けた生活リズムの立直しや集中力・持続力の向上、気分・体調の自己管理の仕方や場面に応じたコミュニケーション方法の習得を図ります。  さらに、復職後の新たな職務や環境に対する対応力の向上を図るため、再発予防に関する講習やキャリアプランの再構築に向けた支援を行います。  職場復帰後は、支援対象者の状態や特性等に応じて、来所、訪問、メールなどにより、職場への適応状況を的確に把握し、継続的に職場復帰をフォローアップします。 8 障害者雇用事例リファレンスサービス  障害者雇用における課題に対して解決の参考となる、全国の事業所の取組事例等をホームページで紹介しています。 ホームページアドレス https://www.ref.jeed.go.jp/ 9 雇用管理サポート事業 問い合わせ 地域障害者職業センター等  障害者の雇用、雇用継続、又は職場復帰に当たっての雇用管理に関して、専門的な知識やノウハウを必要としている事業ぬしに対して、地域障害者職業センターの障害者職業カウンセラー等が、地域の各種専門家(協力専門家)と一緒に事業所を訪問し、相談・助言を行っています。 97ページ 地域障害者職業センター  都道府県における職業リハビリテーションの中核として、ハローワークなどの関係機関と緊密な連携を図り、障害者に対して専門的な職業リハビリテーションサービスを行うとともに、事業ぬしに対して雇用管理に関する相談・援助を行っています。また、地域の関係機関に対して、職業リハビリテーションに関する助言・援助を行っています。 北海道障害者職業センター 郵便番号 001-0024 札幌市 北区北二十四条西 5の1の1 札幌サンプラザ5階 電話番号 011-747-8231 ファックス番号 011-747-8134 北海道障害者職業センター 旭川支所 郵便番号 070-0034 旭川市 四条通8丁目右1号 ツジビル5階 電話番号 0166-26-8231 ファックス番号 0166-26-8232 青森障害者職業センター 郵便番号 030-0845 青森市緑 2の17の2 電話番号 017-774-7123 ファックス番号 017-776-2610 岩手障害者職業センター 郵便番号 020-0133 盛岡市青山 4の12の30 電話番号 019−646−4117 ファックス番号 019-646-6860 宮城障害者職業センター 郵便番号 983-0836 仙台市宮城野区幸町 4の6の1 電話番号 022-257-5601 ファックス番号 022-257-5675 秋田障害者職業センター 郵便番号 010-0944 秋田市川尻若葉町 4の48 電話番号 018-864-3608 ファックス番号 018-864-3609 山形障害者職業センター 郵便番号 990-0021 山形市 こじらかわまち 2の3の68 電話番号 023-624-2102 ファックス番号 023-624-2179 福島障害者職業センター 郵便番号 960-8135 福島市腰浜ちょう 23の28 電話番号 024-522-2230 ファックス番号 024-522-2261 茨城障害者職業センター 郵便番号 309-1703 笠間市鯉淵 6528の66 電話番号 0296-77-7373 ファックス番号 0296-77-4752 栃木障害者職業センター 郵便番号 320-0865 宇都宮市むつみ町 3の8 電話番号 028-637-3216 ファックス番号 028-637-3190 群馬障害者職業センター 郵便番号 379-2154 前橋市天川大島町 130の1 電話番号 027-290-2540 ファックス番号 027-290-2541 埼玉障害者職業センター 郵便番号 338-0825 さいたま市 桜区下大久保 136の1 電話番号 048-854-3222 ファックス番号 048-854-3260 千葉障害者職業センター 郵便番号 261-0001 千葉市美浜区幸町 1の1の3 電話番号 043-204-2080 ファックス番号 043-204-2083 東京障害者職業センター 郵便番号 110-0015 台東区東上野 4の27の3 上野トーセイビル3階 電話番号 03-6673-3938 ファックス番号 03-6673-3948 東京障害者職業センター 多摩支所 郵便番号 190-0012 立川市あけぼの町 2の38の5 立川ビジネスセンタービル5階 電話番号 042-529-3341 ファックス番号 042-529-3356 神奈川障害者職業センター 郵便番号 228-0815 相模原市桜台 13の1 電話番号 042-745-3131 ファックス番号 042-742-5789 新潟障害者職業センター 郵便番号 950-0067 新潟市東区大山 2の13の1 電話番号 025-271-0333 ファックス番号 025-271-9522 富山障害者職業センター 郵便番号 930-0004 富山市桜橋通り 1の18 住友生命富山ビル7階 電話番号 076-413-5515 ファックス番号 076-413-5516 石川障害者職業センター 郵便番号 920-0856 金沢市昭和町 16の1 ヴィサージュ1階 電話番号 076-225-5011 ファックス番号 076-225-5017 福井障害者職業センター 郵便番号 910-0026 福井市光陽 2の3の32 電話番号 0776-25-3685 ファックス番号 0776-25-3694 山梨障害者職業センター 郵便番号 400-0864 甲府市湯田 2の17の14 電話番号 055-232-7069 ファックス番号 055-232-7077 長野障害者職業センター 郵便番号 380-0935 長野市中御所 3の2の4 電話番号 026-227-9774 ファックス番号 026-224-7089 岐阜障害者職業センター 郵便番号 502-0933 岐阜市日光町 6の30 電話番号 058-231-1222 ファックス番号 058-231-1049 静岡障害者職業センター 郵便番号 420-0851 静岡市葵区黒金町 59の6 大同生命静岡ビル7階 電話番号 054-652-3322 ファックス番号 054-652-3325 愛知障害者職業センター 郵便番号 453-0015 名古屋市中村区椿町 1の16 井門名古屋ビル4階 電話番号 052-452-3541 ファックス番号 052-452-6218 愛知障害者職業センター 豊橋支所 郵便番号 440-0888 豊橋市駅前大通り 1の27 三菱UFJ証券豊橋ビル6階 電話番号 0532-56-3861 ファックス番号 0532-56-3860 三重 障害者職業センター 郵便番号 514-0002 津市島崎町 327の1 電話番号 059-224-4726 ファックス番号 059-224-4707 滋賀障害者職業センター 郵便番号 525-0027 草津市野村 2の20の5 電話番号 077-564-1641 ファックス番号 077-564-1663 京都障害者職業センター 郵便番号 600-8235 京都市下京区 西洞院通塩小路下る 東油小路町803 電話番号 075-341-2666 ファックス番号 075-341-2678 大阪障害者職業センター 郵便番号 541-0056 大阪市中央区久太郎町 2の4の11 クラボウアネックスビル4階 電話番号 06-6261-7005 ファックス番号 06-6261-7066 大阪障害者職業センター 南大阪支所 郵便番号 591-8025 堺市北区 長曽根町 130の23 堺商工会議所5階 電話番号 072-258-7137 ファックス番号 072-258-7139 兵庫障害者職業センター 郵便番号 657-0833 神戸市灘区 大内通り 5の2の2 電話番号 078-881-6776 ファックス番号 078-881-6596 奈良障害者職業センター 郵便番号 630-8014 奈良市四条大路 4の2の4 電話番号 0742-34-5335 ファックス番号 0742-34-1899 和歌山障害者職業センター 郵便番号 640-8323 和歌山市太田 130の3 電話番号 073-472-3233 ファックス番号 073-474-3069 鳥取障害者職業センター 郵便番号 680-0842 鳥取市吉方 189 電話番号 0857-22-0260 ファックス番号 0857-26-1987 島根障害者職業センター 郵便番号 690-0877 松江市春日町 532 電話番号 0852-21-0900 ファックス番号 0852-21-1909 岡山障害者職業センター 郵便番号 700-0821 岡山市北区 中山した 1の8の45 NTTクレド岡山ビル17階 電話番号 086-235-0830 ファックス番号 086-235-0831 広島障害者職業センター 郵便番号 732-0052 広島市東区光町 2の15の55 電話番号 082-263-7080 ファックス番号 082-263-7319 山口障害者職業センター 郵便番号 747-0803 防府市岡村町 3の1 電話番号 0835-21-0520 ファックス番号 0835-21-0569 徳島障害者職業センター 郵便番号 770-0823 徳島市出来島本町 1の5 電話番号 088-611-8111 ファックス番号 088-611-8220 香川障害者職業センター 郵便番号 760-0055 高松市観光通 2の5の20 電話番号 087-861-6868 ファックス番号 087-861-6880 愛媛障害者職業センター 郵便番号 790-0808 松山市若草町 7の2 電話番号 089-921-1213 ファックス番号 089-921-1214 高知障害者職業センター 郵便番号 781-5102 高知市大津甲 770の3 電話番号 088-866-2111 ファックス番号 088-866-0676 福岡障害者職業センター 郵便番号 810-0042 福岡市中央区赤坂 1の6の19 ワークプラザ赤坂5階 電話番号 092-752-5801 ファックス番号 092-752-5751 福岡障害者職業センター 北九州支所 郵便番号 802-0066 北九州市小倉北区萩崎町 1の27 電話番号 093-941-8521 ファックス番号 093-941-8513 佐賀障害者職業センター 郵便番号 840-0851 佐賀市天祐 1の8の5 電話番号 0952-24-8030 ファックス番号 0952-24-8035 長崎障害者職業センター 郵便番号 852-8104 長崎市茂里町 3の26 電話番号 095-844-3431 ファックス番号 095-848-1886 熊本障害者職業センター 郵便番号 862-0971 熊本市大江 6の1の38 4階 電話番号 096-371-8333 ファックス番号 096-371-8806 おおいた障害者職業センター 郵便番号 874-0905 別府市かみのぐち町 3088の170 電話番号 0977-25-9035 ファックス番号 0977-25-9042 宮崎障害者職業センター 郵便番号 880-0014 宮崎市鶴島 2の14の17 電話番号 0985-26-5226 ファックス番号 0985-25-6425 鹿児島障害者職業センター 郵便番号 890-0063 鹿児島市鴨池 2の30の10 電話番号 099-257-9240 ファックス番号 099-257-9281 沖縄障害者職業センター 郵便番号 900-0006 那覇市おもろまち 1の3の25 沖縄職業総合庁舎5階 電話番号 098-861-1254 ファックス番号 098-861-1116 誰もが職業をとおして社会参加できる 「共生社会」を目指しています 企画・発行 独立行政法人 高齢・障害者雇用支援機構 雇用開発推進部職域開発課 郵便番号105の0022 東京都港区海岸 1の11の1 ニューピア竹芝ノースタワー内  電話番号03-5400-1625 ファックス番号03-5400-1608 URL https://www.jeed.go.jp/ 平成 22年1月発行