はじめに  独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構では、事業所における障害者雇用及び職場定着を進めるため、雇用管理や職場環境の整備などを改善・工夫し、働きやすい職場にするために様々な取り組みを行った事例を全国の事業主の皆様から募集し、広く周知、普及しています。障害者雇用職場改善好事例の募集については平成3年度から開始し、近年では年度ごとにテーマを設定し募集を行っております。 平成20年度につきましては、聴覚障害者のキャリアアップに向け、創意工夫を行った職場改善好事例をテーマに募集いたしました。全国の事業主の皆様から多数のご応募をいただき、審査員による厳正なる審査の結果、13事業所の入賞を決定いたしました。 このたび、これらの事例を「聴覚障害者のための職場改善に関する好事例集― 平成20年度障害者雇用職場改善好事例募集の入賞事例から―」としてとりまとめましたので、聴覚障害者の雇用の促進および職域拡大のためにご活用いただければ幸いです。 最後に、ご応募いただきました事業主の皆様、そしてご協力いただいた関係機関・団体等の皆様には改めて感謝申し上げます。 平成21年1月 独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構 ―平成20年度障害者雇用職場改善好事例募集の入賞事例から― 集聴覚障害者のための職場改善に関する好事例集 聴覚障害者と共に働く職場環境づくり ●はじめに1 ●目 次2 最優秀賞 株式会社マルイキットセンター 積極的な職域開発で障害者雇用の幅を広げる4 優秀賞 社会福祉法人光道園 配置の工夫で聴覚障害者の業務幅が拡大10 有限会社西山家具 「いい仕事を速くする」仕事のプロを育て、30年以上の継続雇用14 株式会社リクルートオフィスサポート 新たな職域創出からキャリア形成支援へ18 株式会社エルアイ武田 研修と実践をくり返し、グループ全体がスキルアップ22 千代三洋工業株式会社 多能工化の推進により変化に対応できる人材へ26 ソニー・太陽株式会社 コミュニケーション環境を整備し、キャリアアップを図る30 奨励賞 コーセー化粧品販売株式会社 受注センター 関係機関を活用し支援ノウハウを蓄積34 ASEジャパン株式会社 能力開発を積極的に推進、職場定着を図る38 昭和ケミカル株式会社 コミュニケーションの円滑化により長年の職場定着42 株式会社山ノ木 世界に一つの手作り家具、創作職人世界一を目指す46 株式会社キユーピーあい 積極的な職域拡大と日常的な職場改善で聴覚障害者の能力を活かす50 株式会社かんでんエルハート 「ろう文化」と聴覚障害者の多様性を理解し、スキルアップ・キャリアアップを推進54 ●その他の応募事業所58 ●応募事業所の概要91 ●応募要項92 ●助成金制度94 ●障害者雇用に関する支援制度95 ●障害者雇用支援機関96 平成20年度障害者雇用職場改善好事例最優秀賞 株式会社マルイキットセンター(埼玉県戸田市) 積極的な職域開発で障害者雇用の幅を広げる 全員参加型の作業マニュアルを作成し、業務の検証と改善を行う 事業所の概要と障害者雇用の経緯 平成15年10月に特例子会社として認定される。平成4年、株式会社丸井(現・丸井グループ)の総合物流基地である戸田物流センターの敷地内に開設された「戸田キットデリバリーセンター」が前身である。マルイグループの営業店で使用する包装紙・伝票・事務用品等の用度品のピックアップ・検品・出荷が主な業務であり、知的及び身体障害者の職域として総務部・人事部合同のプロジェクトで開発され、運営が開始された。 平成17年4月には、宝飾・時計等の「商品検品業務」を聴覚障害者の新職域として開発。また翌年4月より、知的障害者を対象に加齢対応を踏まえた軽作業の「印刷サービス業務」も開始するなど、障害者の職域拡大に積極的に取り組んでいる。 業種及び主な事業内容 用度品のピックアップ業務、商品の検品業務、及び印刷サービス業務等。 雇用聴覚障害者数 10名(うち重度10名) 主な職務内容: ◎宝飾・時計等商品の検品業務◎アウトレット商品の売価変更伝票入力及び値札付け業務 取り組みの経緯 聴覚障害者のための新職域を開発設備環境充実・能力開発推進・コミュニケーションの輪で効果発揮 ●聴覚障害者個人の能力に着目した職域開発 株式会社マルイキットセンターでは、丸井グループの業務拡大に伴い、新たな職域開発と障害者雇用の拡大を実施。聴覚障害者の優れた集中力に着目し、平成17年に宝飾・時計等の高額品の商品検品業務を聴覚障害者の職域として開始した。採用活動に関しては、近隣のハローワーク(埼玉県及び東京都の計8ヵ所)の協力のもと実施。業務の開始に合わせて段階的な採用を進め、本年度は4月に新社員2名を迎え10名体制となった。採用時にトライアル雇用制度を利用して、職場へのマッチングを見極めている。宝飾・時計は高額商品が含まれ、商品検品業務の際には商品事故のリスクを減らすため、業務の段取りをきめ細かく組み立ててスタートしたという経緯がある。その際、ただ単に会社側で作ったマニュアルを与えるのではなく、円滑に業務を進めるためにはどうしたらいいかを聴覚障害者たちを含めた作業担当者が考え、その考えがマニュアルという形となりチーム全体で共有。また、自分たちで実際に作業しながらより良い方法を模索することで、本人の自信にもなるという副産物ももたらした。そして、検品作業は1次・2次検品の2段階方式を取るなど、事故がないよう万全を期した仕組みとなった。こうした経緯を経て業務が軌道に乗り、受託先から実績を評価され、新たにアウトレット商品の伝票入力・値札付け業務を受託するなど、さらなる職域拡大にもつながっている。 ●積極的な手話使用で、コミュニケーションが円滑に 施設面では、助成金を活用してフラッシュライトと電光文字表示機及びパトライトを設置。火災・地震等の発生時の伝達、作業の開始・終了等告知など、大いに活用されている。また、聴覚障害者はユニフォームをオレンジ色で統一。戸田物流センター内ではカゴ車等が行き交う環境の中、聴覚障害者は音による危険察知が苦手な場合があり、周囲が安全配慮をしやすいようにした結果である。同時に、個人の能力開発にも力を注ぐ。毎週土曜日にはミーティングや研修を行い、業務知識・技術の習得と生産性向上に向けた取り組みを実施している。また「能力開発シート」も作成し、個人別に細かく指導。さらに、「自己評価表」「実績評価表」を個人ごとに作成し、自己啓発を促進する上で非常に役立っている。コミュニケーション面では、手話用語辞典の作成にも注目したい。日常生活では使用しない業界用語も多くあったので、チーム全体で主に業務に関する手話表現を統一、用語辞典として作成した。同時にマルイグループ福祉会と連携した手話講座を開催、従業員の啓蒙も行っている。今では、検品業務の健聴者は手話検定資格を保有。手話通訳士を介さないでも密なコミュニケーションを取れるまでに成長している。また、聴覚障害者には毎月1回手話通訳士同席の下、個人面談(業務・一部生活面含む)も行うなど、心のケアも怠らない。加えて、65歳までの継続雇用制度を整備するなど、高齢者雇用にも対応している。 こんな改善。ここを工夫。 改善前の状況 改善後の効果 聴覚障害者の新職域開発 障害者雇用を拡大するためには、戸田物流センター内での職域開発と、聴覚障害者の適性を活かした職場づくりが必要だった。 聴覚障害者10名のチームによる商品の検品業務という新職域を開発。聴覚障害者メンバーの集中力、正確性等が評価され、作業実績を通じて受託先から信頼を得た。 注目の改善点1 職場定着に向けた支援制度の活用 新しい職域のため聴覚障害者の適性を見極める必要があった。 採用時のトライアル雇用は雇用側、障害者双方が見極めるのに効果的であった。 作業効率アップへの取り組み 高額商品の検品は専門性が非常に高い業務のため、業務を標準化し、一人ひとりの精度を上げなければならなかった。 聴覚障害者のメンバー全員が参加して、業務マニュアルを作成。業務を標準化できただけでなく、自らが業務の組み立ての検証、改善も同時に行うことで自発的に考える力も身についた。 注目の改善点2 能力開発への取り組み 専門性の高い業務のため、新社員の戦力化も含め、一人ひとりの能力を向上させることが生産性を高めるために必要であった。 目標管理・評価・表彰等の制度の構築と実施により、お互いが啓発し合う風土が醸成された。また、作業を細かく分類してそれぞれのスキル度を示した「能力開発シート」による個人別指導も効果を挙げた。 注目の改善点3 コミュニケーション支 援 立ち上げ当初は業務上の細かい指示がきちんと伝わらないケースがあった。 手話を中心とした双方向のコミュニケーションツール・仕組みづくりを徹底。手話検定資格の取得も含めて社員の手話技量も上がり、実務上は支障なく社員のみで運営が可能となった。また、業務上使用する用語100語を手話用語辞典として作成することで、用語統一を図ることができた。 注目の改善点4 社員の高齢化に対応した制度整備 職場定着すればするほど社員の高齢化も進んでいくので、そのための制度整備が必要であった。 現在は65歳までの継続雇用制度を整備。全社員が安心して長く働ける環境を整えている。 設備環境と安全管理 聴覚障害者が業務上働きやすく、また安心して働ける職場を目指して、ハード面・ソフト面の環境整備が必要であった。 助成金を活用して、パトライト、フラッシュライト、電光文字表示機を設置。業務では、プライスデータをスキャンする際、音だけでなくスキャナーの上部ライトが点滅するものを使用。ソフト面では、消防、震災訓練の定期的実施及び「震災時の行動基準」の作成・携帯で、安全意識を高めてもらうよう取り組んでいる。 注目の改善点5 情報保障 社内の動きは随時、情報共有しなければならない。 毎月1〜2回、「キットセンター通信」を発行。社員全員に対して情報提供及び情報の共有化を継続して行っている。聴覚障害者に対しての情報保障、ご家族への報告も兼ねたものとなっている。 改善策紹介 チームみんなが聴覚障害者チームの結束力により今後はさらなる職域開発を目指す 注目の改善点1 職域開発 効果 聴覚障害者メンバーの集中力、正確性等が活かされる職域を開発することで実績を残すことができた。結果、受託先の信頼も得られ、平成19年にはさらなる職域拡大を実現。 これまでグループ会社が行っていた宝飾・時計等の検品業務を、聴覚障害者の職域として設定。背景には、聴覚障害者の優れた集中力・正確性等への期待があった。実際に業務を受託開始してみると、グループ会社に引けを取らない、むしろ上回るほどの作業効率を発揮したのである。 こうして聴覚障害者メンバーの集中力・正確性等が業務内容の要件とマッチし、作業実績を通じて受託先の信頼を得ることができた。その結果、平成19年10月からはアウトレット商品の伝票入力・値札付け業務を受託開始。新たな職域の拡大を実現している。こうした聴覚障害者の適性はパソコン業務にも適用できると考え、今後さらなる職域開発と雇用の拡大を目指している。 注目の改善点2 作業効率アップへの取り組み 効果 聴覚障害者のメンバー全員が参加して業務マニュアルを作成。業務の標準化・改善及び精度アップが図られた。  「高額商品の検品」という専門性の高い業務であるため、社員への徹底した教育、生産性の向上が課題であった。 そこで、業務受託開始直後から聴覚障害者のメンバー全員が参加してマニュアルを作成。作業工程を写真入りで具体的に説明し、漢字にはすべて「ふりがな」がふられているなどわかりやすいマニュアルとなっている。メンバーの意見に応じてたびたび改定を繰り返し、時間をかけて現在の形となった。メンバー全員が実際に作業してみて考えたことをマニュアルに反映させており、作成を通して作業効率アップはもちろん、自分で考える力、チームワークなども磨かれた。 注目の改善点3 能力開発への取り組み 効果 目標管理・評価や能力開発シートによって個人スキルアップへ取り組み、職場全体のレベルが上がった。  「自己評価表」「実績評価表」によって生産性、正確性の両面で毎日データを取り、目標管理を実施。例えば6ヵ月連続ノーミスの社員には「ノーミス賞」を授与、各月の件数、個数目標比順で上位3名を月間表彰するなど、表彰制度も充実している。この「自己評価表」「実績評価表」は半期ごとに本人と上司によって評価、給与面等での査定としても利用されている。 また「能力開発シート」による個人別指導も実施。不得意な部分が明確になるなど、スキル向上に効果的だ。同時に、毎週土曜日にはミーティング・研修を行い、業務知識・技術の習得と生産性向上に取り組んでいる。 注目の改善点4 コミュニケーション支援 効果 手話を中心とした双方向のコミュニケーションツール・仕組みづくりが徹底され、聴覚障害者とのコミュニケーションの輪が広がりつつある。  業務で頻繁に使う専門用語には一般的な手話表現が存在しないケースが多かった。そこで、手話用語辞典をメンバー全員で作成。専門用語の手話表現統一を図った。また、初期より手話通訳士の派遣を活用している。現在でも毎月1回手話通訳士同席のもと、個人面談を実施。業務内だけでなく生活面まで広く相談を受け、心のケアに取り組んでいる。 また、健聴者社員に対して手話講座も開催している。なお、手話通訳士の派遣には助成金を活用している。 注目の改善点5 助成金を活用した設備環境と安全管理の徹底 効果 助成金を活用してパトライト、フラッシュライト、電光文字表示機設置による安全性の高い職場環境を整備。 助成金を活用してパトライト、フラッシュライト、電光文字表示機を設置。フラッシュライトと電光文字表示機を使用した避難訓練も定期的に実施している。また、災害時にどのように行動すべきかポイントをまとめた「災害時の行動基準」をカードにまとめ配布し、聴覚障害者が安心して働ける職場環境を整備している。 INTERVIEW 代表の声 取締役社長 武居 哲郎さん  今回の職域開発によって聴覚障害者の方々の良い部分を引き出せたのではないか、というのが一番の収穫でした。それと共に、職域開発の重要性は大きく、聴覚障害者雇用の面からもあらゆる可能性を秘めていると考えられます。今回、実績を残したことでさらなる職域拡大へと結びつき、聴覚障害者の可能性を実証することができました。現在ではコンピュータに対する適性もあると考えております。 「法定雇用率1.8%」という法律上の義務としてだけでなく、障害もひとつの個性と言われますが、その個性を活かしたいというのが私たちの願いであり役目です。そしてそれは、健常者にとっても障害者にとっても大きなメリットがあり、ひいてはノーマライゼーションの社会へとつながっていくでしょう。 職場リポート 従業員の声 宝飾・時計等の検品、アウトレット商品の値札付け等担当 森作 純子さん この会社に入って、手話用語辞典をメンバーみんなで作るのがとても楽しかったです。作るのは大変だったけれど、作り上げた時は達成感があったし、業務にもとても役立っています。 従業員の声 宝飾・時計等の検品、アウトレット商品の値札付け等担当 石松 由香さん  業務マニュアルをみんなで作りました。それを見れば何かわからないことがあっても簡単に仕事ができるので助かっています。色々な品物を見ることができるのも、女性としてとても楽しいです。 従業員の声 宝飾・時計等の検品、アウトレット商品の値札付け等担当 新井 沙紀さん  例えば商品の値札付け、時計の検品など、1つの仕事だけではなく様々な仕事を経験できるのが嬉しいです。これからは、仕事が忙しくなる時でも自分が立てた目標を達成できるようにがんばります。 平成20年度障害者雇用職場改善好事例優秀賞 社会福祉法人光道園(福井県鯖江市) 配置の工夫で聴覚障害者の業務幅が拡大 勤務シフトを配慮して、資格取得をサポート 事業所の概要と障害者雇用の経緯 昭和32年10月に身体障害者更生施設として事業開始。日々の中で3つの理念「働く」「訓練・学習する」「共に生活する」を掲げ、盲重複障害者及び高齢者の総合福祉施設として運営している。また、福祉施設の改革を契機に、福祉ニーズに即応した新しい入所型・通所型の整備、居宅型介護サービスの向上、並びに利用者の充実した豊かな暮らしと生きがいを支援する施設運営を推進している。 創設者である故 ・中道益平氏は、本人自らも視覚障害者であることから事業開始直後より積極的に障害者を雇用。現在では聴覚障害者3名、肢体不自由者1名、内部障害者1名、その他の障害者1名が勤務している。 業種及び主な事業内容 障害者・老人の介護や支援、及び福祉事業。 雇用聴覚障害者数 3名(うち重度3名) 主な職務内容: ◎介護支援 取り組みの経緯 コミュニケーションを取ろうとする気持ちが介護の現場で活かされるように  介護業務に聴覚障害者を雇用する上で、まず問題視されたのは夜間勤務への対応である。昼間の勤務はスタッフが多く連携が可能であるが、夜間勤務は通常2名の配置。利用者の声・物音などが聞こえないために、利用者に対する対応などが遅れるのではないかという懸念があった。そこで、聴覚障害者が夜間勤務をする場合は通常2名のところ3名体制とし、聴覚障害者の夜間勤務が可能となった。 また、コミュニケーションは筆談及び手話による会話を基本とした。手話に関しては、手話のワンポイントレッスンを朝礼時に実施。職員全員が日常会話なら手話で十分伝達可能になっている。同時に、業務の申し送りは手話・書面での伝達を徹底しており、朝礼や会議ではOHC※を活用。他にも携帯メール、FAX等で職員間のコミュニケーションを綿密に取り、情報確保に努めている。さらに、研修会等専門用語が多く含まれ説明が必要な場合は、専門の手話通訳士を依頼し確実に情報が理解されるように配慮している。  一方で、聴覚障害者のスキルアップ支援策にも取り組む。資格の講座受講中は夜間勤務から日中の勤務に変更、スクーリングへの出席は特別休暇扱いとし、資格取得に向けたスキルアップを支援。現在、1名が「盲ろう者通訳ガイドヘルパー指導者」資格を取得している。市町村・団体主催の手話通訳士向けの講座、手話サークル等の講師をするなど、交流の輪が広がりさらなる自己の成長につながっている。 聴覚障害者と共に働くことで、言葉だけでなく「コミュニケーションを取りたい気持ち」が一番大切だと職員全員が理解し、業務に活かされている。 ※OHC とは 「Over Head Camera」の略で実物投影機のこと。紙媒体の資料や実物を、直接プロジェクターを通してスクリーン等に投影することができる。 こんな改善。ここを工夫。 改善前の状況 改善後の効果 夜間勤務への対 応 利用者の声・物音が聞こえない等の不安から、聴覚障害者の夜間勤務には不安があった。 聴覚障害者が夜間勤務をする場合は、通常の2名体制から3名体制に変更した。チームワークにより利用者への素早い介助ができるようになり、聴覚障害者の仕事の幅が広がった。 注目の改善点1 OHCの活用 介護という業務特性上、申し送り時にきちんと情報が共有されていないと、支援の低下につながる可能性もある。 申し送りは手話、書面の両方を使って伝達。会議時はOHCを活用し、重要箇所をポインターで示すなどしてわかりやすく説明している。また職員同士の休憩時間の積極的な情報交換、携帯メール、FAXの活用で、聴覚障害者への情報保障に取り組んでいる。 注目の改善点2 手話の内部研修 職場メンバー間の手話によるコミュニケーション推進のため、職場内での研修も必要となってきた。 聴覚障害者からの働きかけにより、朝礼にて手話のワンポイントレッスンを実施。ほぼ全員が手話を介した日常会話ができるようになっている。コミュニケーションの垣根が低くなり、スタッフ間の話し合いの充実、信頼関係が生まれるなど働きやすい職場環境が構築された。 スキルアップ支 援 介護業務には専門知識が必要であり、定期的な研修が必要であった。 受講中は昼間の勤務にシフトを変更、スクーリング時は特別休暇扱いにするなど、働きながら学べる環境を整備している。聴覚障害者が資格取得に挑戦することで良い意味で競い合い、スタッフのスキルアップ・モチベーションアップにつながっている。 注目の改善点3 手話通訳士の活用 研修会等は専門的な用語が多く含まれるが、確実な情報伝達を行う必要があった。 研修や大事な会議の場面は内容も専門的であり手話も専門用語の使用が多くなるため、手話通訳士の派遣を外部機関に依頼。確実に情報が理解されるよう配慮している。 改善策紹介 聴覚障害者から介護支援に対する大切なことを職員全員が学んだ 注目の改善点1 配置人数変更で夜間勤務可能に―聴覚障害者が夜間勤務の場合は3名体制で 効果 3名配置により、利用者の声・物音が聞こえないことによる対応の遅れを防止することができ、聴覚障害者の仕事の幅が広がった。 通常、夜間勤務は2名配置であるが3名を配置することで聴覚障害者を健聴者がフォロー、夜間勤務が可能となった。同時に、手厚い介助が可能となる意味で利用者にとってもメリットが大きかった。また、当施設では同性介助を基本としているため、聴覚障害者を加えた3名体制の方が配置のバランスが取りやすく、同性介助しやすくなったというのもメリットの1つである。 当初、利用者の声や物音が聞こえないことが介護支援を行う際にハンディになるのではないかなどという不安な面があった。しかし、周囲の表情、動作から利用者の誤飲を未然に防いだ事例があり、非言語の情報を一生懸命に読み取る姿勢と能力は高く評価されている。 注目の改善点2 手話・書面を使った情報伝達の徹底―OHC、携帯メール、FAXの活用 効果 情報を的確かつスムーズに伝達。簡単な手話なら職員全員が可能で、聴覚障害者の情報確保を支援している。スタッフ間の垣根もなくなり、信頼関係が構築された。 毎朝の朝礼やミーティング・会議時にはOHCを使用しての報告を徹底している。OHCでプリントをスクリーンに投影して表示。ポインターで指しながら読み上げることで視覚的な理解に結びついている。同時にOHCの使用は聴覚障害者への情報保障の面だけでなく、職員全員が聞き流すのではなく、スクリーンを見て再確認できるという意味でも利点のあるツールだ。 また、介護支援という業務はスタッフ間の何げない会話から利用者の細かな情報が入ることが多いため、休憩時に多種多様な情報交換をする風土を醸成。携帯メールやFAX等による職員間の連絡体制を整備するなど、朝礼や会議以外の密な情報交換ができるよう取り組んでいる。 注目の改善点3 スキルアップ支援―手話通訳士の派遣、シフト変更、特別休暇扱いでバックアップ 効果 1名が「盲ろう者通訳ガイドヘルパー指導者」の資格を取得。地域の手話講座の講師をするなど、活躍の場を広げている。同時に、職員同士、スキルアップに向けた意識が向上した。  職員は「業務報告会」「生活事例報告会」などの内部研修に年に数回参加するほか、外部の研修も受講する。その際、聴覚障害者に対しては手話通訳士を付けて積極的な研修への参加を支援。 また、「社会福祉士」「盲ろう者通訳ガイドヘルパー指導者」資格取得のための講座を受講する際には、負担を考えて夜間勤務から昼間の勤務へとシフト変更した。スクーリング出席時は特別休暇扱いにするなど職場でもフォローをし、本人の並々ならぬ努力もあって資格取得に至っている。聴覚障害者の熱意・やる気は仕事ぶりからも一目瞭然で、健聴者の職員にも良い意味で刺激となり職場活性化につながっている。 INTERVIEW 管理担当者の声 理事・朝日事業所長  荒木 博文さん  当施設には視覚・聴覚共に障害を持ついわゆる盲ろう者も多く入所しており、その方たちとのコミュニケーションに関して、聴覚障害者は非常に優れた面を持っていると感じています。今では、聴覚障害者の“人となり”を入居者が理解し受け止めてもらえるまでになりました。 ちょっとした工夫をするだけで、健聴者の職員と何ら変わらずに活躍をしてくれますし、コミュニケーションを必死に取ろうとする姿は、他の職員にも良い影響を与えており、施設としてプラスに働いているのは間違いありません。 職場リポート 従業員の声 嵯峨崎 友華さん 光道園で働いて10年ほど経ちますが、以前に比べてずいぶん働きやすくなったと感じています。朝礼等ではOHCを使用しているので理解がしやすいです。専門用語も出てきますが、苦労しながら手話通訳してくださるので感謝しています。 梅田 五十恵さん  以前は普通の企業に勤めていましたが、私の発音がきれいなこともあり聴覚障害への理解が少なく、苦労したことも度々でした。でも、今は周りの方の理解もあり情報もきちんと入ってくるので、とても働きやすいと感じています。 吉田 正樹さん  これまでは研修などに参加しても手話通訳が付かないため、口話だけで内容を理解しなければならずに苦労することも多かったのですが、今は手話通訳や要約筆記をしていただけているので、その場で理解が進み、勉強がはかどるようになりました。 平成20年度障害者雇用職場改善好事例優秀賞 有限会社西山家具(鳥取県鳥取市) 「いい仕事を速くする」仕事のプロを育て、30年以上の継続雇用 労務管理担当者が手話や要約筆記を学び、障害者職業生活相談員の講習を受講するなど、自然体かつきめ細かいサポート体制の中で、技能が向上 事業所の概要と障害者雇用の経緯  創業は昭和21年。箱やミシンテーブルの製造から始まり、机、書棚、食器棚などを手がけ、技術を積み重ねることによってより高い加工技術が要求される「婚礼家具」、「特注家具」の製造に携わってきている。 障害者雇用の開始は、昭和50年代。業務拡大の中で多くの人材を必要としていた時期であり、職業能力開発施設から受け入れを始めた。現在まで雇用した障害者は、ほとんどが聴覚障害者である。「戦力として技術指導を行う」ことをモットーに、自然体かつきめ細かい配慮の中で、職場定着率は非常に高く、定年まで勤続した者が多い。現在、雇用している聴覚障害者は、2名。いずれも勤続30年以上であり、うち1名は定年退職を迎えた後も継続雇用中である。 業種及び主な事業内容 CADを駆使したデザイン開発力、真空プレス・CNCマシンによる立体加工技術を用いた木製家具の製造、及び販売。 雇用聴覚障害者数 2名(うち重度2名) 主な職務内容: ◎木工研磨◎木工塗装 取り組みの経緯 コミュニケーションと技能を重視 これまで多くの聴覚障害者を雇用してきた有限会社西山家具では、以前からコミュニケーション面での支援に取り組んできた。ひとつは、終業後に聴覚障害者自身が講師となって手話講習会を行い、多くの従業員が簡単な手話を使うことができるまでになっていることが挙げられる。また、社内の2ヵ所に掲示板を設置し、日程や事務連絡を示すだけでなく、会社の方針、製品のポイントや使用する材料など、できるだけ多くの情報を目に見えるかたちで提供するよう心がけている。さらに、「社長への意見箱」を設置し、社内の誰もが意見や要望をメモに書いて入れることができる。 しかし、朝礼や日々のやり取りの中で、細かな伝達内容が十分に伝わらないという状況は避けられず、聴覚障害者同士で集まっている場面も多かった。そこで、労務管理を担当する従業員が、手話と要約筆記を学ぶこととした。さらに、障害者職業生活相談員講習を受講し、資格を取得。聴覚障害者とのコミュニケーションを確実にするキーパーソンとなったことにより、細かな食い違いも解消され、今ではアフターファイブや余暇を含め従業員全体の交流も深まっている。 また、勤続の長期化に伴い、従業員は日々の業務に携わる中で、着実に技術を積み上げてきている。当社では、さらに高いレベルを目指すため、全従業員に技能検定試験の受験を積極的に奨励している。障害の有無にかかわらず試験に挑戦する者は多く、聴覚障害者の1名は木工塗装の実技試験に合格。試験への挑戦はスキルアップ、キャリアアップ、モチベーションの向上にもつながり、さらなる長期継続雇用や高齢者雇用にもつながっている。 こんな改善。ここを工夫。 改善前の状況 改善後の効果 コミュニケーション面の支援強化 細かなコミュニケーション場面で食い違いが見られ、必要な内容が十分に伝わらなかった。 労務管理を担当する従業員が、手話や要約筆記の講習会へ参加。聴覚障害者と健聴者とのコミュニケーションを確実にするキーパーソンとなることで、細かな食い違いが解消。 注目の改善点1 聴覚障害者同士が集まっている場面が多かった。 労務管理を担当する従業員が障害者職業生活相談員の資格を取得。聴覚障害者の生活全般にわたる相談・指導を行い、個別の相談にも応じられるようになった。次第に聴覚障害者も社内の行事(厚生休暇でのグランドゴルフ、忘年会、親睦会など)に積極的に参加するようになり、従業員同士の交流が深まった。 注目の改善点2 技能の向上 雇用が長期になる中で、従業員の技能のさらなるレベルアップが求められていた。 技能検定試験の受験を積極的に奨励。スキルアップ、キャリアアップ、モチベーションの向上につながった。 注目の改善点3 高齢化への対応 定年を迎える従業員が増えてきた。 平成18年4月1日の高齢年者雇用安定法の改正に伴い、就業規則を改定し、行う取り組みを開始。これにより、1名の聴覚障害者が定年前と変わらない技能工として活躍している。 改善策紹介 誰もが長期に安心して働くことができる職場環境づくり 注目の改善点1 労務管理担当者が手話や要約筆記を学ぶ 効果 朝礼の内容や、日々の細かな伝達事項が確実に伝わるようになった。  労務主任の児玉佳代子さんは、入社して35年。社長の西山林一さんと共に、当社で働く従業員のことを最もよくわかっている頼もしい存在である。聴覚障害者と十分にコミュニケーションを図ることができない状況をいち早くキャッチし、自ら地元の手話講習会と要約筆記の会に通い、中級レベルの手話と、要約筆記を学んだ。以後、そこで学んだ技能を活かし、朝礼や会合の場で、伝達役として活躍している。また、聴覚障害者からの個別の相談に対しても、以前は外部から手話通訳の派遣をお願いしていたこともあったが、児玉さんが対応できるようになった。 注目の改善点2 労務管理担当者が障害者職業生活相談員の資格を取得 効果 障害に対する理解が深まり、個別の相談などにも難なく応じることができるようになった。  労務主任の児玉さんは、鳥取県高齢・障害者雇用促進協会の勧めにより、障害者職業生活相談員講習を受講し、相談員の資格を取得。障害の特性や必要な支援について理解が深まり、個別の相談にもスムーズに応じることができるようになった。 障害者職業生活相談員とは 障害者を5人以上雇用する事業所においては、「障害者の雇用の促進等に関する法律」に基づき、障害者の職業生活全般にわたる相談・指導を行う障害者職業生活相談員を選任することが義務づけられている。当相談員の資格は、独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構が実施する認定講習を終了すること等によって得ることができる。 ※詳細は独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構のホームページをご覧ください↓ http://www.jeed.go.jp/disability/employer/employer01.html 注目の改善点3 技能検定試験へのチャレンジを奨励 効果 スキルアップが図られ、キャリアアップ、長期雇用、高齢雇用にもつながっている。 当社では、「戦力として技術指導を行う」ことをモットーに、従業員が日々の業務の中で着実に技能を向上させている。さらに、技能検定試験の受験を奨励、終業後に熟練者が実技を指導する中で、これまで何名も試験にチャレンジしている。 聴覚障害者の村岡勇夫さんと米原義郎さんも、共に勤続30年以上、試験にチャレンジしながら、技能に応じて昇級し、今では当社に欠かせない熟練工となっている。 村岡さんは、数年前に定年を迎え、本人の希望も聞いた上で勤務形態を変えたものの、これまでと同じ職務内容で、片道2時間かけて元気に通勤してきている。 INTERVIEW 代表の声 代表取締役 西山 林一さん 仕事のプロとは、「いい仕事を速くする」ということです。当社は先代の社長が創業してから、障害の有無にかかわらず、仕事のプロをたくさん育ててきました。勤続年数は長い人が多く、「手に技術がある、体力がある」条件をクリアしていれば、定年を迎えた人も継続雇用していきたいと思っています。 当社では中小企業のメリットを活かして、1対1の関わり合いを大事にしたいと思っています。聴覚障害者の従業員に対しても、「トイレなどで会った際に声をかけたり、肩をたたく。目と目を合わせる。」などを普段から心がけています。 平成20年度障害者雇用職場改善好事例優秀賞 株式会社リクルートオフィスサポート(東京都中央区) 新たな職域創出からキャリア形成支援へ 上位職級への登用を意図した人事制度の改訂がキャリアアップへつながる 事業所の概要と障害者雇用の経緯  障害者の雇用促進のために、株式会社リクルートの特例子会社として平成2年2月14日に設立された。 個の尊重、可能性の追求、社会への貢献を経営の3原則とし、「あらゆる人が能力・意欲の発揮できる機会を創造し成果を高めることにより、豊かで人に優しい社会の実現をめざします。」という経営理念を掲げている。様々な障害部位の方が働いていることが同社の特徴の一つであるが、聴覚障害者については、会社設立当初から雇用している。 業種及び主な事業内容 リクルート及びリクルートグループに対する、事務作業代行業務、スタッフ代行業務等各種サービスの提供。 雇用聴覚障害者数 12名(うち重度6名) 主な職務内容: ◎印刷・コピー業務◎情報管理業務◎文書管理業務◎経理事務業務 取り組みの経緯 時代環境の変化に対応し雇用の継続とキャリア形成支援に取り組む  設立当初から聴覚障害者を雇用していたため、緊急時用のパトランプ設置やメールによる伝達手段の導入など、物理的環境面での配慮は行ってきた。また、手話サークルの開催、会社行事の際の手話通訳士手配等のコミュニケーション支援策も整備している。聴覚障害者の雇用管理のノウハウも社内に蓄積されてきた。しかし環境の変化に伴い、様々な課題が浮き彫りになった。 聴覚障害者を集中的に配置した印刷部門が人員過剰気味となり、キャリアアップが図りづらいという問題が表面化したため、共通する事業特性を持つコピー部門へ配置転換を行った。その結果、本人の志向や能力を新しい職場で活かせることが、本人や受け入れた職場の活性化につながり、キャリア形成を考える上でも有効な策となった。 一方、給与制度改革では安定的雇用を重視する思想に基づき、給与・賞与のバランスを変え、より給与を安定させる体系に変更。これにより採用時の給与もあがったため、採用力が強化された。また、人事制度改革では職級の内容を細かく設定することで、ステップアップにより成長感を得やすい体系に改めた。 聴覚障害者を新たな部署へ配属したことによって生じた受け入れ側の不安は、雇用ノウハウを社内で共有することで解消している。聴覚障害者とのコミュニケーションについては手話に関する資格取得の支援や現場での実践的な手話使用の推進などで、日常的なスキルアップに取り組んでいる。 こんな改善。ここを工夫。 改善前の状況 改善後の効果 事業構造の変化への対応  聴覚障害者を集中的に配置した部署が、人員過剰気味となってしまった。 共通する事業特性を持つ他部門への配置転換を行った。一人当たりの生産性が向上し、本人の志向や能力を活かせたことでキャリア形成上にもプラスの効果をもたらした。 注目の改善点1 同一職級への滞留打破 聴覚障害者の配属が集中する事業では、キャリアステップが設けづらいという特徴があり、職級が頭打ちになってしまっていた。 複数の職群を一本化し、上位職級の概念を設定。本人にやる気と能力があれば上位職級になれるという理解が進み、意欲向上への後押しとなっている。また、職級を増やし職級間の階差を低くしたことで職級アップの機会が増加。 キャリア形成の基礎を支援する施策の実施 職業人としてのモラル・マナー・協働のあり方を補強する必要性が出てきた。 研修を聴覚障害のある講師に来てもらい実施。同じ障害を持つため講師との距離感が近く、主体的参加意識が高まった。また、同じ障害を持つ講師が壇上で活躍する姿を見ること自体に刺激を受ける者もいた。 聴覚障害者の採用領域の狭まりへの対応 事務サービス領域は電話応対等が必要なケースが多く、聴覚障害者は配置しづらかった。 事務サービス領域の中でも、電話応対等を必要としない新たな職域を創出。狭まってきていた聴覚障害者の採用領域を広げるきっかけとなった。 注目の改善点2 配置の広がりに対する対応 これまでは聴覚障害者を集中配置してきたため、新たに受け入れが決まった部署に対しての教育が必要となった。 ニュアルを整備し、聴覚障害者だけでなくすべての人にわかりやすいようビジュアル化した。同時にマネジャー会議で聴覚障害者の特性理解やマネジメント・ノウハウ等を情報交換。マネジメント不安解消に努めている。 注目の改善点3 コミュニケーション支援強化策 手話勉強会だけでは聴覚障害者との実質的なコミュニケーションが図りづらかった。 手話資格を資格手当支給の対象とし、コミュニケーション向上の支援策としている。チーム会での発表では必ず手話を使わせるなど、日常的に使う機会を増やし、手話習得を推進している。 視覚による情報周 知 聴覚障害者に対する緊急時などの情報伝達手段が整っていなかった。 全社員へのアナウンスは、館内放送のみならず屋内3箇所にテレビを設置して視覚による周知も行っている。また、火災などの緊急時に点滅させるフリッカーランプも社内全部署いたるところに設置。 改善策紹介 本人の能力を最大限に活かした配置転換でキャリア形成を支援 注目の改善点1 共通する事業特性を持つ他部門への配置転換を行った 効果 生産性が向上。また、本人の志向や能力を活かすことができ、キャリア形成上効果的でもあった。 会社設立当初からしばらくの間、聴覚障害者を主に配属してきたのは、印刷部門であった。しかし、省力化、効率化が求められていく中で印刷の需要は徐々に減少。グループ内の会議資料や調査資料等、カラー化も含めて、小部数に適したコピーが主流に変わりつつあった。そこで、業務が減少している印刷部門からコピー部門へ5名のうち3名を配置転換することにした。今まで単色印刷していた印刷物もコピーで対応。スピードと美しさやデータからの直接出力などから、コピーの需要がますます高まり業務も拡大していった。さらに、一人1時間当たりの利益率が印刷業務に比べて非常に高く、この配置転換は一定以上の効果を上げた。 また、印刷部門が専門的な知識を極めるのに対して、コピー部門は機械の操作だけではなく、それに付随したパソコンスキルや顧客への提案力、生産性向上のためのノウハウ等も必須であり、幅広い知識が求められる。その結果、日々業務を遂行していく中で、幅広いスキルを身につけることとなった。 注目の改善点2 新たな職域の創出と能力に応じた配置 効果 これまで困難だと考えられていた領域へも聴覚障害者が採用・配属され、雇用の確保にもつながった。  印刷部門からコピー部門への配置転換が軌道に乗ったことは、聴覚障害者の職域拡大の可能性を考えるきっかけとなった。これまでは困難だと考えられていた事務サービス領域にも、少しずつ聴覚障害者の採用・配属が復活した。現在では、コピーのミス率を減らすためのデータ分析業務などを担当している聴覚障害者もいる。 採用の際は面接で障害の程度やコミュニケーション手段を確認、同時にコミュニケーションスキルを見て採用を決める。あくまで本人のやる気や能力を見て採用することで、聴覚障害者の職域拡大と能力に応じた配置に努めている。 注目の改善点3 各業務におけるマニュアルの整備 効果 マニュアル整備によって業務を視覚的に表現。また、マネジメント情報の共有により受け入れ側の不安も解消された。 新たな部門に聴覚障害者を配置するようになったことにより、聴覚障害者の受け入れに関するノウハウを、聴覚障害者を新たに受け入れた部門に対して移植していく必要があった。まずは各業務におけるマニュアルを整備し、業務の視覚化を強化した。視覚化は聴覚障害者だけでなく、その他の従業員にもわかりやすい方法である。 また、定期的に行われているマネジャー会議では特徴的な障害について報告することになっている。聴覚障害者の特性理解やマネジメントノウハウ、勤怠等の情報を共有し、マネジメントする側の不安の解消をバックアップしている。 INTERVIEW 管理担当者の声 事業推進室グループマネジャー 近藤 康昭さん 障害の有無にかかわらず、雇用定着に必要な条件として「経営方針への共感」「職場風土が良い」「仕事にやりがいがある」「福利厚生面の充実」「報酬の充実」などがあります。これらを複合的・効果的に組み合わせて職場定着を図ります。特に情報・コミュニケーション障害と言われる聴覚障害のある方の場合、これらの施策内容を「きちんと伝えること」が大切です。会社の方針は理解されているか、風通しの良い職場風土ができているか、モチベーションを高める施策は浸透しているか等々、折に触れ振り返ることです。かくいう私たちもいまだにトライアンドエラーを続けていますが、努力の方向性の核心には、きっと「コミュニケア(共有)」があると信じています。 職場リポート 従業員の声 コピーワーク全般担当 佐塚 博さん  僕は主にコピーに関する仕事を担当しています。「コピーが終わった」「紙詰まりした」などという時に、ランプの色を目で見て確認できるよう会社が機械を整備してくれたので、仕事がとてもやりやすいです。また、忙しくてそのランプに自分が気づけない時でも、僕の障害を理解してくれている職場のメンバーが声をかけてきちんと教えてくれるから、助かっています。メンバーとは手話も交えてコミュニケーションをしながら、楽しく働いています。コピー業務だけでなく、関係した色々な仕事が経験できる点もやりがいを感じるところです。 平成20年度障害者雇用職場改善好事例優秀賞 株式会社エルアイ武田(大阪府大阪市) 研修と実践をくり返し、グループ全体がスキルアップ 専門業者に負けない清掃ができるスタッフの育成と職域拡大を果たす 事業所の概要と障害者雇用の経緯  平成7年6月、武田薬品工業株式会社100%出資の特例子会社として設立。既存の清掃・印刷業務担当に加え、聴覚障害者4名(うち重度3名)・知的障害者4名(うち重度2名)計8名を新規採用し、同年10月に事業を開始した。現在に至るまでに障害者の新しい職域を拡大し、現在では57名の従業員の中で46名の障害者が働いている(うち聴覚障害者19名)。 安定した委託業務の拡大に取り組むなど雇用の確保にも尽力。また、障害者の定着率はきわめて高く、ほとんどが定年退職まで働き続けている。社名の「エル」はLaborのL、「アイ」は愛情を意味する。「働く障害者を愛する会社」を経営理念として、障害者の社会的自立の支援に取り組んでいる。 業種及び主な事業内容 印刷業務、清掃業務、包材補助業務、洗濯業務、細断業務等。 雇用聴覚障害者数 19名(うち重度19名) 主な職務内容: ◎清掃業務◎印刷・組版業務 取り組みの経緯 職域拡大、グループ全体のレベルアップに加え、チームの連携も強化  当社の設立時より、聴覚障害者は主にグループで行う清掃業務を担当していた。しかし長年に亘り日常清掃のみを受託し、専門知識がないこともあって業務量が増えない状態が続いていた。そこで、これまで外部業者に委託していた定期清掃という新たな職域拡大を目指すこととなった。 まず専門業者の協力を得て、グループ全体に清掃の基本知識にかかる研修を実施。続いてグループの中の3名に対し、専門知識を付与すると共に1年かけてマンツーマン指導による実地研修を実施し、その後先行メンバーによる定期清掃業務を開始した。同時に、清掃グループの勉強会を開催する中で、先行メンバーの知識・技術を他のメンバーに付与し、清掃グループ全体のレベルアップを企図。新たな定期清掃先も受託し、徐々にグループ全員での定期清掃への取り組みが始まった。 しかし、業務を進めていく中で様々な問題も浮上してきた。定期清掃は短時間でいかにきれいにできるかがポイントで、そのためにはメンバー同士が声を掛け合い連携を取らなければならない。しかし、作業を進めながらの情報伝達が困難でメンバー間の連携がうまく取れておらず、無駄な動きも多く発生していた。そこで、事前に綿密な打ち合わせをし、また作業終了後には反省会を実施。そしてその反省会での内容を踏まえて事前打ち合わせを行い、作業に臨む…という手順を毎回繰り返していった。すると、準備段階からメンバーが情報を共有でき、作業の効率がアップ。同時に、これまで健聴者が行ってきた作業スケジュール表や道具準備表の作成も先行メンバーが徐々にできるようになるなど、清掃以外のスキルも向上した。グループには一体感が生まれ、作業時間も短縮。社外からの評価も高まり、会社の売上に貢献している。 こんな改善。ここを工夫。 改善前の状況 改善後の効果 新たな職域拡大 従来の日常清掃のみではスキルアップや業務量拡大が期待できなかった。 専門業者の協力のもと、以下のステップによりスキルアップを図り、定期清掃を受託できるようになった。@グループ全体への基礎研修A一部のメンバーに対する定期清掃の技能の付与Bグループ全体に対する定期清掃の技能の付与 注目の改善点1 グループ全体の技能向上 グループのメンバー間にスキルの差が見られた。 作業前後の打ち合わせや反省会を綿密に行った結果、メンバー全体のスキルが強化された。 注目の改善点2 業務以外のスキルアップ 作業スケジュールの作成や道具の準備、打ち合わせや反省会などは健聴者がリードしていた。 一部のメンバーが先行して定期清掃を実施し、その知識・技能を他のメンバーに付与するかたちをとったことで、リーダーとしての自覚が高まり、業務以外の場面でもグループをリードできるようになった。 注目の改善点3 改善策紹介 職域拡大が作業以外のスキルアップにもつながる 注目の改善点1 定期清掃のスキルを付与 効果 定期清掃の受託が可能となり、職域拡大が実現した。 定期清掃の受託を目指して、次のステップで清掃グループの技能向上を図った。@清掃グループ全体に対し、専門業者による基礎知識に関する研修を実施(ケミカル、汚れ、床材、安全の知識など) Aグループの中から3名に対し、専門業者による基本技能の研修を実施(吸水機・ポリッシャーなどの機器操作やシミ取りの基本など) BAの先行メンバーに対し、マンツーマンによる1年間の実地研修を実施 C先行メンバーだけで定期清掃を実施 D他メンバーに対し、専門業者による基本技能の研修を実施 E清掃グループメンバーに対し、先行メンバーによる勉強会、実地研修の実施  以上の取り組みの過程では、情報保障として、手話通訳を配置。必要な機器購入のための助成金も申請し、清掃グループ全体で定期清掃を実施できるようになった。 注目の改善点2 作業前後に徹底した話し合いを実施 効果 メンバー間のスキルの差が縮まり、グループ全体のスキルアップが実現した。 グループで定期清掃を実施できるようになったものの、先行メンバーがリードする形態で、先行メンバーとその他のメンバーの間にスキルの差があり、無駄な時間や指示をされないと動けないメンバーがいるというような場面が見られた。また、作業を進めながら情報伝達をすることが困難で、メンバー間の連携も取れておらず、突発事項に対応できないといった場面も見られた。そこで、作業前の打ち合わせと作業後の反省会を毎日繰り返し、メンバー全員が細かな課題や情報を共有することができるようにした。その結果、一人ひとりが「今、何をすべきか」ということを自覚でき自主的に動くことができるようになると共に、結束力も高まった。グループ全体のスキルアップにもつながり、社外から評価を得て売り上げにも貢献、さらに、従来行っていた日常清掃のレベルまで向上するという、相乗効果まで表れた。 注目の改善点3 作業スキル向上によるリーダーの育成 効果 作業以外の場面でもリーダーの役割を果たすなど、作業以外のスキルアップにもつながった。 定期清掃への職域拡大を目指す過程で、グループの中の特定の3名に対し、定期清掃の先行実施を行い、他のメンバーへ知識・技能を付与するなど、リーダーとしての役割を担うよう働きかけた。その結果、作業スキルの向上と共にリーダーとしての自覚が高まった。従来は、打ち合わせや反省会の進行や、作業スケジュール表や道具の準備表の作成など、作業以外のリーダー的な役割は健聴者が行っていたが、いずれも3名のメンバーが担うことができるようになった。今では、同じ聴覚障害者として、他のメンバーの目標となり、グループ全体のモチベーション向上にもつながっている。 INTERVIEW 代表の声 取締役社長 峯村 信太郎さん 職域拡大のため定期清掃に取り組んでからは、多くの変化がありました。聴覚障害者が知識・技術を習得するための研修には様々な苦労もありましたが、彼らの熱心さがすべての困難を乗り越えてくれたのです。現在では専門業者に負けない技術を身につけ、定期清掃場所も確実に増加し、売上向上に大きく貢献しています。この事例は、健常者が勝手に無理だと判断していた業務に障害者が挑戦し、周りの協力を得て成功したものです。障害者の能力を健常者が勝手に判断するのではなく、障害者が色々なことに思い切って挑戦することの大切さを教えてくれました。 職場リポート 従業員の声 清掃業務サブチームリーダー 菅原 さとさん  定期清掃に取り組み始めて3年経ちますが、初めはわからないことばかりで不安も多かったです。でも、専門業者の方の指導による技能研修、実地研修に参加させてもらったことで徐々に知識が身につき、今ではスピードもだいぶ上がってきました。研修の際は手話通訳の方が付いてくださったので、安心して受講できたのも嬉しかったです。以前の日常清掃に比べてやりがいも増していますし、毎日、楽しく仕事に取り組んでいます。これからはサブチームリーダーとして、チームリーダーの補佐役を心がけグループ全員をさらに引っ張れるようにがんばっていきたいと思います。 平成20年度障害者雇用職場改善好事例優秀賞 千代三洋工業株式会社(鳥取県鳥取市) 多能工化の推進により変化に対応できる人材へ 少量多品種の製造工程において、様々な工程を担当できるようスキルアップを図る 事業所の概要と障害者雇用の経緯 平成4年、鳥取県、鳥取市、鳥取三洋電機株式会社(現三洋電機コンシューマエレクトロニクス株式会社)による重度障害者多数雇用事業所(第3セクター方式)として設立された。 「私たちは、ノーマライゼーションの理念の実践を通じ、地域社会に貢献したい」を経営理念に掲げ、障害者・健常者の区別なく、自己啓発によるスキルの向上を図り、個性を尊重した適材適所の配置を行いながら、仕事量の確保、雇用の安定に努めている。 業種及び主な事業内容 素子、半導体関連製造を経て、現在は主にLED(発光ダイオード)応用商品の組み立て、製造を行っている。 雇用聴覚障害者数 12名(うち重度9名) 主な職務内容: ◎精密機械、製品検査マシンのオペレーター、顕微鏡検査、製品データ入力◎全工程習得者は試作ラインを担当 取り組みの経緯 自己啓発推進により個人個人の存在感がアップさらなる職場定着につながる 従業員の1/4以上を障害者(うち、聴覚障害者は44%)が占めており、障害を持った社員が戦力として存在感を発揮することが、会社経営の安定の大きなカギである。さらに親会社、地域社会から必要とされる会社になるためには、意識改革に加え一人ひとりの能力を向上させることが最善策であると考えた。 そのための具体的な取り組みとして、自己啓発による資格取得や多能工化による職域拡大、各種研修参加による個人スキル向上等を推進し、職場全体のレベルアップを行った。その結果、社員全員が個々の能力を発揮できる体制が整い、愛社精神が育まれ、生産性が向上した。また、コミュニケーション面での支援も重視。手話が話せない中途の聴覚障害者に対し、第2号職場適応援助者がきめ細かにサポートする体制をつくり、手話を主なコミュニケーション手段とする聴覚障害者に対しては、社内で手話通訳ができる社員を多数養成した。こうした取り組みにより、職場定着率が向上し、過去3年間の退職者はゼロとなっている。 こんな改善。ここを工夫。 改善前の状況 改善後の効果 変化に適応できる人材育成 時代の流れと共に、生産品に応じた仕事を習得する必要性が出てきた。 一人ひとりに適した多能工化を推進、様々な仕事内容に対応できる人材の育成を図った。多能工推進表を食堂に掲示することで、個人の習得スキルが一目瞭然。職場にやる気が満ちてきた。 注目の改善点1 資格取得の推進 資格取得は個人の判断に任せていた。 ビジネスマナー検定、秘書検定等の資格取得者が生まれ、職場に活気が出た。合格者は掲示板で発表し、意欲向上につなげている。仕事に関係する一部の資格には、合格した際、受講料や受験料などをすべて会社が負担している。 積極的な外部宿泊研修参加 社内に手話通訳者も少ない上、障害者を受け入れたことのない研修も多かった。 高度精密切断機等メーカー宿泊研修に手話通訳者と共に参加。初めて障害者の受講を受け入れたメーカー側も、熱心な姿を高く評価。聴覚障害者が外部研修に参加する足がかりを作ることができた。 注目の改善点2 親会社依存の会社体質 業務形態は親会社からの100%受注による。技術開発部門では全面的に親会社を頼っていた。 親会社の技術、品質保証部門へ聴覚障害者を4ヵ月間派遣した。親会社に提言できる人材の育成を図ることができた。現在、聴覚障害者1名が新規製品の立ち上げなど試作部門の中心となって活躍している。 中途障害者の職場定着 中途障害者は手話が使えないケースが多く、障害者の輪に溶け込むことができない。 社員が「第2号職場適応援助者(事業所型ジョブコーチ)」の資格を取得し聴覚障害者を支援。一対一の支援により、職場定着につながった。外部に頼らないサポート体制を目指し、現在、2名の第2号職場適応援助者がいる。 聴覚障害者とのコミュニケーション 当社雇用障害者の半分を占める聴覚障害者とのコミュニケーションは特例子会社として存続していくための大きなポイントとなっている。 現在22名の手話通訳可能者(健聴者)が在籍。社内研修等でも一対一の手話通訳が可能な体制である。聴覚障害者と健聴者とのコミュニケーションを十分図ることで、職場定着を支援している。また交換ノートで日頃の悩みを相談する取り組みも行っている。 注目の改善点3 改善策紹介 聴覚障害者も会社の戦力積極的なスキルアップで会社の業績につなげる 注目の改善点1 一人ひとりに適した多能工化を推進 効果 常に変化、多様化していく仕事内容に適切に対応できる人材の育成を図ることができた。各個人のスキル・意欲向上が会社全体の業績にも結びついている。  多能工推進表により一人ひとりの仕事上のスキルの程度が確認できる。表上部には全社員の顔写真とフルネームを入れ、その下に仕事のスキル度を色分けして表示している。「物の良品がわかるか」「しっかりメンテナンスができるか」等、こと細かな作業が表内にずらりと並ぶ。また表の下部は資格取得の状況を表示している。 この多能工推進表により、給料の40%の査定を行っている。スキル度が高い色が表示される、また資格を取得などすると給料が上がる。障害者、健聴者の区別なく一覧表となっているため、互いに切磋琢磨し合うことで意欲向上につながりやすい。自己啓発の励みになる点が、多能工推進表の大きなポイントである。 INTERVIEW 代表取締役会長 野津 国朝さん  当社は自己啓発に非常に力を注いでいます。というのも、自己啓発に取り組むことで人は前向きになり、そこから行動が変わる。そしてその行動そのものが他の社員の見本となり、障害者も健常者も関係なく本人の自信となります。ひいてはそれが会社全体の士気にもつながっていくのです。 今は障害者も自立しなければならない時代です。チャレンジドとして、会社での様々な経験を通して自分がどう生きていきたいかをしっかりと考えてほしい。これが私たちの願いでもあります。そしてその場を提供し続けるのが、私たちの役目なのです。 職場リポート 従業員の声 製造部製造技術係 赤堀 宗範さん  もともと何か「ものづくり」をしてみたいとの思いがあったので、3ヵ月間のトライアル雇用を経て入社を決めました。このトライアル雇用で仕事への姿勢を一から教えてもらえたし、会社の雰囲気も肌で感じられたので、大変良かったです。現在は、まだ生産したことのない新規製品立ち上げの仕事をしているのですが、親会社へ4ヵ月間研修に行かせてもらったことがとても役に立っています。研修前は、親会社に言われたままをやるだけでしたが、今は「このやり方の方が適しているのでは?」などと提案できるようになりました。 注目の改善点2 資格取得の推進、外部研修への参加の推進 効果 社員の意欲が増し職場が活性化した。また、外部研修の主催者に聴覚障害者の情報保障に対する理解を促すことができた。  多能工推進表にも資格の欄を設け、現在、社員が取得している資格を公開している。取って欲しい資格の情報も掲示板に貼り、常に資格取得を支援している。資格を取得すると、多能工推進表にマークすると共に掲示板にてフルネームで発表される。給与にも関わってくる。表になっていることで、社員同士で一緒に勉強して合格を目指すなど目標を設定しやすいというメリットもある。 また、外部研修への参加も支援している。聴覚障害者の受講を受け入れたことがない研修に、聴覚障害者が手話通訳士と共に積極的に参加することで、研修主催側の聴覚障害者の研修受講への理解が深まると共に、聴覚障害者が研修を受けやすい環境づくりに目を向けるきっかけとなった。 注目の改善点3 手話通訳可能者の養成 効果 健聴者とのコミュニケーションが取りやすくなり、聴覚障害者自身、自然体の自分を出せるようになり、さらに前向きに仕事に取り組めるようになった。 手話通訳者を養成したのは現場の社員の声がきっかけであった。聴覚障害者と仕事を共にする上でのコミュニケーション手段として、必要不可欠だと考えたからである。そして自発的に県主催の講習会などに通ってもらい、手話通訳のスキル取得を推進。その輪は徐々に広がり、平成20年11月現在、聴覚障害者12名に対し、健聴者22名が手話通訳可能者である。聴覚障害者は研修等に手話通訳者を伴って参加できるため、意欲的になった。 また、聴覚障害者と健聴者のコミュニケーションがスムーズに進むことで聴覚障害者が自身の存在感をさらに示せるようになったのも、会社全体として大きなプラスである。 平成20年度障害者雇用職場改善好事例優秀賞 ソニー・太陽株式会社(大分県日出町) コミュニケーション環境を整備し、キャリアアップを図る 障害の有無を問わない合同研修、「聴覚障がい者受入マニュアル」の作成などにより、能力を発揮できる環境を整備 事業所の概要と障害者雇用の経緯 昭和53年にソニー株式会社と社会福祉法人太陽の家との共同出資により設立され、昭和56年にソニー株式会社の特例子会社に認定された。当初はソニー株式会社の音響機器アクセサリーの製造をしていたが、現在はマイクロホンの設計からデバイス、組立、修理・メンテナンス等のサービスまで一貫生産を行うソニー国内唯一のマイクロホン基幹工場として位置づけられている。その他、メモリースティック等デジタル関連製品の製造やソニー製品の部品データベース構築・関連業務も行っている。 障害者は製造職・事務職問わず、各部署で活躍している。 業種及び主な事業内容 マイクロホン、ヘッドホン、メモリースティック、ビデオカメラ・デジタルカメラ周辺機器の製造等。 雇用聴覚障害者数 26名(うち重度19名) 主な職務内容: ◎技術部門では、デジタル周辺機器の治具設計◎その他、購買業務・経理・システム等 取り組みの経緯 コミュニケーションにおける平等な環境が構築されたことでそれぞれの特性が活かせる職場となった 聴覚障害者とその他の従業員双方でコミュニケーションの問題に直面していた。聴覚障害者側は、自分たちから発信する情報が伝わらないと感じていた。健聴者側も同様に、聴覚障害者に情報が伝わりにくいと感じていた。このような状況から、聴覚障害者は様々な場面で意思伝達の難しさを感じ、個性を活かすことが困難であった。また、入手できる情報の少なさからコミュニケーション上のトラブルが生じ、モチベーションも上がらなかった。そこで、新人研修から筆談で指導する等、情報保障に重点を置き、社内全部門において最大限の能力を発揮できるようにサポートした。また、聴覚障害者に対する対応は配属された部署に委ねていたが、受入部署の対応に差を無くすため「聴覚障がい者受入マニュアル」を作成した。さらに、コミュニケーション面の支援強化として、朝礼やミーティング、研修等の際には、内容が迅速かつ的確に伝わるようにするため、要約筆記を活用すると共に、社内に手話通訳ができる者を養成した。コミュニケーションにおける平等な環境が構築されたことで、それぞれの特性が活かせる職場となり、リーダー、係長へも登用された。そして誰もが平等にチャンスを与えられることが理解され、聴覚障害者、健聴者双方の意識に変化をもたらした。 こんな改善。ここを工夫。 改善前の状況 改善後の効果 新人研修 聴覚障害者が含まれる場合でも、特別な配慮をせずに研修をしていた。 障害者、健常者全員一緒に研修を実施し、聴覚障害者には細かく筆談で指導。新人全員が一定のコミュニケーション能力や技術を習得できるようになった。 聴覚障害者の受入 受入ノウハウは、配属された部署の所属長が保有している経験や技量に委ねられていた。 受入マニュアルを作成したことで、部署ごとの受入の対応に差がなくなった。 注目の改善点1 社外での研修 聴覚障害者は社外研修への参加は不可能だと判断し、参加する機会を設けていなかった。 要約筆記者と共に参加することにした結果、マネージャークラスが受講する内容の研修にも受講が可能となり、聴覚障害者の職域拡大につながっている。 手話通訳者の養成 筆談で十分だと判断し、積極的な養成を行っていなかった。 手話ができる社員がいると聴覚障害者は安心するということがわかり、3名の手話通訳者を養成中。コミュニケーション手段が増え、社内が活性化された。 注目の改善点2 要約筆記の活用 朝礼や部署のミーティングでは、資料をポインターで示しながら、隣の人がメモ用紙に結論だけを書いていた。 IPtalk(聴覚障害者とのコミュニケーションのための要約筆記用ソフト)とPSPR(プレイステーション・ポータブル)を使用することで、朝礼やミーティング、研修等の内容が迅速かつ的確に伝わるようになった。 注目の改善点3 職域の拡大 経理や社内システム(ITインフラ)構築業務など専門職への登用はなかなか難しかった。 要約筆記や手話通訳者により社外の研修にも積極的に参加できるようになり、聴覚障害者のスキルが向上した。 作業の視覚化 マイクロホンの製造において、音をチェックしなければならない最終的なテスト業務は任せることができなかった。 現在試作段階ではあるが、音を視覚表現することで聴覚障害者が音の検査を行える取り組みを行い、さらなる職域拡大を図っている。 改善策紹介 障害を感じさせない職場は障害者の立場に立って初めて完成される 注目の改善点1 「聴覚障がい者受入マニュアル」の作成 効果 これまで部署によって違っていた受入対応に差がなくなり、聴覚障害者の職場定着率が飛躍的にアップした。 聴覚障害者の指導に関しては配属部署に委ねられており、研修後いざ現場に配属となると「現場のリーダーがわかってくれない」などという声がよく聞かれた。そこで会社全体を教育するために作成したのが「聴覚障がい者受入マニュアル」である。作成に当たり聴覚障害者、及び聴覚障害者と共に働いていた健聴者に念入りにヒアリングを行った。働いていく上での不安や実際の苦労談を一人ひとりから聞き取り、長年かけて最近ようやく完成した。このマニュアルをまとめることで、健聴者の聴覚障害者に対する理解が深まった。同時に、聴覚障害者側も健聴者が歩み寄ってきていると感じたことで、職場に一体感が生まれ、挨拶も手話で交わすなど、活気が出てきた。 注目の改善点2 手話通訳者の養成 効果 コミュニケーション手段が増えたことで、聴覚障害者との意見交換がさらに活発化。活躍の場も広がっている。  元々当社には2名の手話通訳者養成講師がおり、その講師の指導のもと、10名ほどが手話サークルとして活動している。そのサークルを通して手話の基礎を学んだ人の中から3名を選定し、手話通訳者を養成。毎週水曜日の就業後2時間ほど、当社の業務に関する専門的な言葉を学習している。3名に関しては手話の資格取得も視野に入れているが、まずは手話で通訳ができることを目標に日々勉強中である。なお、頻出用語は手話用語カードに記載してあり、確認しやすいよう工夫されている。 手話で会話ができると、聴覚障害者はとてもホッとするという。手話通訳とは言わないまでも、挨拶程度は手話でできるようにするなど、全社員に対しても手話の重要性についてアナウンスをしている。 注目の改善点3 要約筆記の活用 効果 これまで不可能だと思われていた社外研修等へも、聴覚障害者が要約筆記者と共に受講が可能となった。聴覚障害者のスキルアップに大いに役立っている。 要約筆記は、主に、会議や研修、講演会などで、話し手の意図をすばやく要約して書き、正確に伝えるコミュニケーション方法である。当社では、部署の会議ではタイピングに慣れた者が要約筆記を行っている。朝礼や研修では、要約筆記したものをPSPR(無線LAN内蔵端末)へ送信している。従来は朝礼や研修では要約筆記したものをスクリーンに転写していたため、聴覚障害者は講師の立ち位置や説明用スクリーンの位置関係を考えながら座らなければならなかったが、PSPRは自由に持ち運びができるため好きな場所へ座ることができるようになった。また、スクリーンと比較して疲れにくく、文字が見やすいという利点がある。 INTERVIEW 代表の声 代表取締役社長 長田 博行さん 会社設立時より多くの障害者を雇用してきましたが、離職率が一番高いのは聴覚障害者でした。一番の原因はやはりコミュニケーションのズレ。きちんと説明したつもりでも正確に伝わっていないなど、トラブルも多かったのです。そこで現在ではPSPRを使った要約筆記を取り入れ、離職率も激減、聴覚障害者雇用の仕組みが整いつつあります。しかし、まだまだ細かいところで次の課題が残っているのも現状です。聴覚障害者の中からも会社の中核をなす人材が出るよう、さらなる環境づくりに励みたいと考えています。 職場リポート 従業員の声 製品の受入から出荷までの事務全般担当 二ノ宮 志乃さん  就職活動中、見学に来た時に、単調な仕事だけではなくて様々なことを体験させてもらえる会社だと感じて、ここで働こうと決めました。入社した当初は筆談での会話がほとんどで、一歩遅れてやっと理解できるためタイムラグがあるのが悩みでした。でも今は要約筆記をしてくださるので、リアルタイムにコミュニケーションを取れるのでとても助かっています。おかげで仕事も円滑に進むようになったし、やりがいのある仕事も任されるようになってきました。これからも人との出会いを大切にして、人の役に立てるよう頑張りたいです。 平成20年度障害者雇用職場改善好事例奨励賞 コーセー化粧品販売株式会社 受注センター(秋田県秋田市) 関係機関を活用し支援ノウハウを蓄積 従業員が一丸となってわかりやすい作業の進め方を検討 事業所の概要と障害者雇用の経緯  全国にあるコーセー化粧品販売株式会社の取引先からの受注、取引先への請求業務を集約、平成16年6月より業務を開始。 コーセーグループには、平成5年に設立された「株式会社アドバンス」という特例子会社がある。アドバンスの活動内容を見聞きしている中で、当センターにも聴覚障害者を雇用して任せられる業務があるのではないかと考え、業務の洗い出しを開始。平成17年2月に就職面接会に参加。2名の聴覚障害者を雇用し現在に至る。 業種及び主な事業内容 コーセー化粧品の全国契約取引先からの受注と、取引先への売掛業務を行う。 雇用聴覚障害者数 2名(うち重度1名) 主な職務内容: ◎受注処理をするための得意先マスター登録◎Eosマスター(受発注を行うための商品マスター)登録 取り組みの経緯 コミュニケーションの和(輪)を大切に誰もが働きやすい職場へ コーセーグループの特例子会社であるアドバンスの取り組みを参考に聴覚障害者を雇用することに決めたとはいえ、受注センターでは実際に障害者と接したことのある従業員がいなかった。そこでハローワークの協力のもと、障害種別や障害者に対する理解、企業の心構えを学んだ。その内容を従業員に教育。聴覚障害者の雇用に対する不安を払拭するよう意識改革に努めた。 障害者の就職面接会を経て2名の聴覚障害者を雇用、健聴者4名とチームを組んでもらった。取引先や商品の情報等をマスター登録するのが主な業務内容であったが、業務を進めていくうちに浮き彫りとなった“業務のシステム化”という難題にも挑戦。初めはチーム内に手話ができる者がおらず、筆談の繰り返しで言葉の意味が伝わらない等、壁にぶつかるばかりであった。しかし徐々に手話のできる人が増え、メンバー全員があらゆるコミュニケーション手段を駆使し話し合いを重ねた結果、1年半の月日をかけてシステム化環境が整備、職場のスムーズな業務遂行に一役も二役も買うこととなった。 業務のシステム化作業を通じ、誰とでもコミュニケーションが取れるようにとメンバーの自発的な呼びかけにより手話勉強会が開催され、コミュニケーションの輪がチーム内から職場全体へと広がった。 こんな改善。ここを工夫。 改善前の状況 改善後の効果 作業を円滑に進める体制の整 備 システム化が進んでおらず、円滑に進める体制が整っていなかった。 聴覚障害者を含めたチーム全員で、システム化を推進。障害の有無にかかわらず誰にでもわかる業務手順を模索し、マニュアルを作成した。業務が標準化されたことで作業の効率化が図られると共に、メンバーを増員、業務量が拡大した。 注目の改善点1 聴覚障害者とのコミュニケーション 聴覚障害者とのコミュニケーションが手探り状態だった。 手話勉強会の開催を求める声が自発的に生まれ、聴覚障害者を講師として勉強会を開催。手話を通して公私共に相互理解が深まると同時に、コミュニケーションが取りやすくなり業務がスムーズに進むようになった。また、手話に関連した資料を集めた「手話図書館」を設置した。 注目の改善点2 会議時の手話通 訳 手話通訳を担当しているメンバーは会議の時に発言する機会が減ってしまった。 県身体障害者福祉協会と連携を取り、重要な会議の際は手話通訳者を派遣してもらって会議を開催。今まで手話通訳に徹していたメンバーも意見できるようになった。 関係機関の活 用 聴覚障害者雇用の経験が少なく、支援ノウハウがわからなかった。 主に聴力障害者協会やハローワークなどに相談し、問題が生じた際の対処法や会議の際の情報保障に対するノウハウが構築されていった。 注目の改善点3 情報保障 複数人が発言する場合もある会議では十分に情報伝達ができなかった。 会議では手話通訳すると共に、議事録を作成。また毎日行われる朝礼では、朝礼の要旨をまとめて聴覚障害者に閲覧して、情報保障に努めている。 改善策紹介 コミュニケーション手段を駆使すれば必ず伝えられる 注目の改善点1 業務手順の標準化を図った 効果 作業が効率化され、業務量が拡大。チームの結束力が高まり、人間関係が良好となった。  業務開始当初は、取引先によって登録内容が違っており、担当者がそれぞれの方法でマスター登録をしていたのが現状であった。そのため、担当者が休みなどという際に業務が滞ってしまうことも度々だった。そこで、すべてのマスターの内容を洗い出し、分析。まずは誰もが作業できるようマスター入力事項を統一化した。そして、マクロやリンクなどの技術的な設定をし、新システムに移行となった。調査・開発には実に1年半の月日を費やしたというが、この新システムに移行してからは最大で月に172時間の作業時間抑制となり、効果は絶大。結果、他の支店で行っていた作業も当センターが請け負うことになり、業務拡大につながっている。また、悪戦苦闘しながらもシステム開発をやり遂げたことで、チームワークに磨きがかかった。 注目の改善点2 手話教室の開催 効果 聴覚障害者・健聴者の相互理解、コミュニケーション力が強化され、業務が円滑に進むようになった。 社員より自発的に手話勉強会の開催依頼の声が出たのをきっかけに、聴力障害者協会、ハローワークに相談。聴覚障害者を講師に、手話で日常会話ができることを目標に、タイムテーブル作成・教材の手配をして開催した。受講者は12人。全10回を無事終了。勉強会終了後は、所内に「手話図書館」を設置、手話についてわからないことがあればいつでも調べられるよう、センター全体で支援している。 手話でのコミュニケーションにより筆談で生じていたタイムラグがなくなり、リアルタイムで談笑ができるようになった。聴覚障害者が周囲と時間を共有できるようになったことは、職場活性化に大きな役割を果たした。 注目の改善点3 関係機関の活用 効果 聴覚障害者に対する支援体制が確立され、聴覚障害者雇用のノウハウが蓄積された。 障害者雇用を始める頃、実際に障害者と接した従業員がおらず不安を感じたこともあった。そのため、ハローワークから障害に対する理解や企業の心構えをレクチャーしてもらい、その内容を朝礼時に周知し、従業員の意識改革につなげた。聴覚障害者を雇用した後は、秋田県聴力障害者協会主催のフォーラムで所長の井上勉氏が講演。その講演を聞いた秋田県立聾学校から職場見学会や職場体験学習等を依頼されるなど、様々な関係機関とのネットワークが形成された。その後、聴覚障害者の採用活動や手話通訳者の派遣など、ネットワークを活かし聴覚障害者雇用のノウハウを蓄積。平成20年4月には体験学習に訪れていた聾学校の生徒を従業員として雇用している。 職場リポート チームメンバーの声 羽沢 孝枝さん(左上)伊藤 真理子さん(左下)三浦 玲香さん(右上)大橋 めぐみさん(右下)  聴覚障害者は育った環境等でコミュニケーション方法が異なること、見た目が健聴者と変わらないため、視界の外で声をかけられて反応できないと無視していると思われる、手話でないと会話ができないという先入観から話しかけてもらいづらい等々、直接触れ合ってみてわかったことがたくさんあります。手話ができなくても、積極的に「話そう」という意識を持ち、身振り手振りを交えゆっくりと大きく口を開けて話せば伝わるということもわかりました。彼女たちと共に働く中で私たち健聴者の意識も変わり視野が広がったことは、何にも替えがたい宝物となっています。 従業員の声 EOSマスター登録業務 三浦 美和子さん(左)加藤 るり子さん(右) 初めは筆談でのコミュニケーションが主で、同時性がなく感情の共有が難しいため、手話教室の開催が決まりとても嬉しかったことを今でも覚えています。自分からも積極的に聴覚障害者が不安や不便を感じること等を話し、チーム全体が業務のシステム化のために一丸となりました。もちろん、何もかもスムーズに進んだわけではなく時には喧嘩もしたけど、やり遂げたことで信頼関係が強まったのは間違いありません。また、外部パソコン研修にも手話通訳付きで参加させてもらえるなど、障害の有無に関係なくチャンスをいただけることに感謝と喜びを感じています。 平成20年度障害者雇用職場改善好事例奨励賞 ASEジャパン株式会社(山形県高畠町) 能力開発を積極的に推進、職場定着を図る テロップ入り作業指導用ビデオ、TOEIC受験の奨励などにより個々の力を伸ばす 事業所の概要と障害者雇用の経緯  山形日本電気株式会社(現在はNECセミコンダクターズ山形株式会社)の高畠工場が前身となり、平成16年6月1日に台湾の半導体組立専業メーカーAdvanced Semiconductor Engineering(ASE)の日本法人としてスタートした。 国内において設計開発から営業、生産と一貫したビジネスを展開する中で、障害者に、より多くの雇用の場を提供することができている。聴覚障害者のほか肢体不自由者、内部障害者、また直近では知的障害者も雇用し、障害者の能力開発と新たな職域開発に積極的に取り組んでいる。 業種及び主な事業内容 半導体、アセンブリ・テスト受託事業。 雇用聴覚障害者数 4名(うち重度4名) 主な職務内容: ◎技術部門における設備仕様書や一般文書の管理、書記業務◎製造部門における生産ラインのオペレーション 取り組みの経緯 業務時間内外を含めた、多角的な職場改善への取り組み 現在雇用されている4名の聴覚障害者は、全員が勤続15年程度である。雇用した当初は、社内に聴覚障害者と接した経験のある従業員がほとんどいなかったため、どのようにコミュニケーションを取ったら良いか、どのような作業指導や職場環境の整備が必要か等がわからない状況で、聴覚障害者を直接サポートする従業員がごく一部に限られていた。従って、聴覚障害者同士で集まるか、一人でいる等孤立している場面が多く見られ、またサポートする者が不在の場合や聴覚障害者が他の部署に異動した際にコミュニケーションや作業が順調に進まない、といった場面も見られていた。そこで、社内全体の聴覚障害者への理解促進、コミュニケーション面や作業面への支援強化を目指し、全社的な取り組みを開始した。取り組みの内容は就業時間内から就業時間外まで多岐にわたり、この取り組みにより、現在までの長期的な職場定着につながっている。また、平成16年6月に外資系となったことにより、英語のスキルが重要となってきた。TOEICテストにはリスニングも含まれるため、聴覚障害者のチャレンジを推奨してこなかったが、ここで発想を転換、1名にリーディングのみのチャレンジを勧めた。当人は驚きつつも喜び、TOEICテストに果敢にチャレンジし、意欲の向上や今後の職域の拡大の可能性につながっている。 こんな改善。ここを工夫。 改善前の状況 改善後の効果 聴覚障害者への対応 聴覚障害者と接した経験がほとんどなく、対応方法がわからなかった。 各職場にキーパーソンを選定し、事前に障害特性などの基本的な教育を行うことにより、作業面、職場内の相談が気楽にできる体制ができた。 作業中のコミュニケーション 作業が一人でできるようになると、作業中のコミュニケーションが減り孤立してしまった。 管理者が定期的に聴覚障害者に対し職場のキーパーソンの接し方や指導内容を確認。コミュニケーションの機会の維持、聴覚障害者への理解、指導方法の改善につながった。 作業指導 作業方法についてどう指導したら理解しやすいか、試行錯誤の状況だった。 機械作業のため、紙より動画のほうが流れを理解しやすいと判断し、ビデオを作製した。ビデオでは簡潔にテロップにして見せ、ステップごとに作業を区切り、習熟した時点で次へ進むように指導。わからない部分が明確になり、フォローしやすくなった。 注目の改善点1 設備の稼働状況表示 設備の稼働状況をパイロットランプで表示していたが、職場によって違っていた。 パイロットランプの形状と色を全社的に統一することで、作業効率を改善。また稼働状況を管理室のモニターで確認できるよう整備し、体調の異変等にも対応できるようになった。 注目の改善点2 スキルの向上 スキルアップに必要な研修や試験へ参加する機会が限られていた。 リスニングセクションを除いたTOEICの受験や英文書類作成研修を推奨。本人も喜びを持ち、テストに向け自主的に勉強を始めるなど、新たな業務に向けての意識づけとなった。 注目の改善点3 タイムリーな連絡方法 筆談や人を介する連絡方法が主であり、遠慮したり、タイムリーに対応できなかった。 パソコンを一人に1台配置。電子メールによるやり取りが可能になったことに加え、「IPメッセンジャー」を使用することにより、より迅速にやり取りができるようになった。 食堂の利用 選択を必要とするメニューを注文する際、うまく伝わらないことがあった。 注文カウンターに絵入りの選択メニューを用意、相手が誰であっても間違いなく注文することができるようになった。 職場以外でのコミュニケーション 新年会、花見、芋煮会、忘年会等を設定したが、聴覚障害者が積極的に参加するか不安な状況だった。 職場での意思疎通ができるようになるにつれ積極的に参加、自然にイベントが行われるようになり、また各自の携帯メールで健聴者とも密に連絡を取るようになり、人間関係がより親密になった。 改善策紹介 すべての人が能力を発揮できる職場環境づくり 注目の改善点1 テロップ入りのビデオを作製し、作業手順をステップごとに確認 効果 作業を十分に理解し、職場のリーダー的な役割をこなせるまでにスキルアップした。  聴覚障害者にどのように仕事を教えたら良いか試行錯誤した結果、新人教育用として作製していた作業指導用ビデオに、場面ごとに内容やポイントをわかりやすく示したテロップを加えた。このビデオを用いながら、「最初に一連の作業手順をすべて見る→ステップごとに作業を区切る→1つのステップの作業を完全に覚えた後に、次のステップの作業に進む」という指導方法を確立した。 それまでは、指導する側の従業員は聴覚障害者がどこを十分理解していないのかはっきりとわからない場合があり、また、聴覚障害者も自分自身がどこを十分に理解していないかわからない場合があったが、テロップ入りのビデオと作業ステップごとの指導法により、双方の問題が解消され、着実に理解が図られ、作業をスムーズに行うことができるようになった。 その後、スキルアップが図られ、職場の中心的な立場として、新たに配属された従業員の指導を行うまでに成長が見られている。 注目の改善点2 設備の稼働表示方法を全社で統一 効果 職場を異動しても戸惑うことがなくなり、作業効率の改善にもつながった。  製造部門においては、設備の安全対策として、稼働状況を確認するためのパイロットランプを設置していた。しかし、職場によって細かなルールが異なり、異動があった場合に戸惑うことがあった。 そこで、パイロットランプの形状を統一し、設備の稼働状況を全社共通の色で表示することとした。その結果、どこの職場に異動しても統一した対応を取ることができるようになり、作業効率の改善にもつながった。 さらに、「設備情報ネットワーク」によって、設備の稼働状況が管理室の稼働状況モニターで確認できるようにしたところ、異常や従業員の体調の異変等を素早くキャッチできるようになり、誰もが安心して働ける職場環境が整った。 注目の改善点3 リスニングを除いたTOEIC受験の奨励 効果 英語力がアップ、新たな職域拡大と本人のモチベーション向上につながっている。 英語のスキルアップについては、英会話レッスンへの参加が困難な点やTOEICテストもリスニングセクションがある点から、「聴覚障害者には難しいのではないか」という固定観念により積極的には奨励していなかった。 しかし、外資系となり英語のスキルが重要となる中、能力開発の一環として、リスニングセクションを除いたTOEICの受験を奨励したところ、聴覚障害者本人もリーディングセクションを受けられる喜びを感じ、テストに向けて自主的に勉強するようになった。 特に技術部門では、海外と電子メールで連絡を取り合わなければならないケースや仕様書等の書類を英文で作成する必要もあるため、新たな職域拡大に向けての意識づけのきっかけにもなっている。 INTERVIEW 管理担当者の声 事業企画本部長代理 兼 管理部長 古瀬 和則さん 企業の活力は人材が原点にあります。障害の有無や性別、年齢などは関係なく、すべての人に能力を発揮して欲しい。ですから、聴覚障害者の方と共に仕事をするのは当たり前のことですし、彼、彼女たちから健聴者が学ぶこともとても多いのです。私たちの会社は、すべての社員が手話を使えるわけではありません。聴覚障害者本人の努力もあって、はじめてコミュニケーションが成り立つのです。安易な妥協はせず、でもお互いに伝える努力をする。その積み重ねが、今花開いて、聴覚障害者の長期雇用につながっているような気がします。 職場リポート 従業員の声 一般事務担当 鈴木 秀美さん  この会社に入って14年ほど経ちます。こんなに長く勤めることができたのは、周りのみなさんの理解があったからこそ。本当に感謝の気持ちでいっぱいです。Eメール等が使えるようになってからは、意思の疎通がスムーズに進むようになり、お互いの理解がさらに深まった気がします。またTOEICに挑戦させてもらえたのも、とても貴重な経験となっています。聴覚に障害があるために、私自身諦めかけていたことだったので、大変な励みとなりました。今後は仕事で英語をもっと使えるように、より一層勉強をがんばりたいと思っています。 平成20年度障害者雇用職場改善好事例奨励賞 昭和ケミカル株式会社(京都府京都市) コミュニケーションの円滑化により長年の職場定着 継続雇用制度を導入し、聴覚障害者の高齢化に対応 事業所の概要と障害者雇用の経緯  昭和31年に創業し、工業用ゴム製品の販売、各種プラスチック素材の加工・販売を行っていたが、昭和45年に半導体企業向けウェハー洗浄装置の製造に着手し、現在に至っている。 昭和58年、ハローワークより聴覚障害者の雇用について打診があり、初めて聴覚障害者を雇用した。聴覚障害者もその他の従業員と同じ職務に従事する中で、重視したのは聴覚障害者のコミュニケーション支援である。その後も聴覚障害者を積極的に採用し、これまで雇用した障害者7名全員が聴覚障害者である。勤続年数も非常に長く、定年後に継続雇用された聴覚障害者は4名である。現在は3名の聴覚障害者が働いており、そのうち2名は定年後にも継続雇用されている。 業種及び主な事業内容 装置製造業、半導体企業向けウェハー洗浄装置の製造 雇用聴覚障害者数 3名(うち重度3名) 主な職務内容: ◎硬質塩化ビニール板の寸法切断、溶接組立、洗浄槽の制作、薬液及び純水の配管作業 取り組みの経緯 十分な意思疎通がなければ円滑に物事は運ばない 聴覚障害者もその他の従業員と同じ職務に就けており、聴覚障害者のコミュニケーション支援を重視している。聴覚障害者が伝えたいことを伝えたい時に伝えられるという環境が安心感を生み、職場定着にもつながると考えた。 聴覚障害者を雇用した当初は、業務内容は主に筆談で伝え、口話や身振り等でコミュニケーションを図っていた。しかし会議や業務の打ち合わせ等、複雑な内容の場合には筆談では時間がかかる上に、内容が正確に伝わらない場合もあった。また、聴覚障害者の個人的な相談等、意思疎通が必要な時には筆談では不十分であった。聴覚障害者とその他の従業員との十分な意思疎通がなければ円滑に物事が運ばないことを実感し、その解決手段として手話が堪能な人を採用することとなった。 手話が堪能な人を採用したことで、朝礼や会議の内容を、タイムリーに、かつ正確に聴覚障害者に伝えることができるようになった。また、聴覚障害者と手話が堪能な人が手話で話をしているのを見てその他の従業員も自然に手話を覚え、意思疎通がスムーズになった。 聴覚障害者とその他の従業員のコミュニケーションが円滑になったことは業績にも現れ、製品の納期も徐々に短縮されていった。 また、17年間勤務した聴覚障害者が定年を迎えることとなり、本人が継続雇用を希望したため、嘱託社員として継続雇用することとなった。その後新たに定年退職となった3名も、全員が継続雇用を希望したため、同じ条件で継続雇用することとした。 業務内容は寸法切断、溶接組立といった熟練した技術を必要とするものであるため、継続雇用により、長年勤務した熟練した従業員のノウハウが他の従業員に継承されることは会社にとっても大きなメリットとなっている。 こんな改善。ここを工夫。 改善前の状況 改善後の効果 コミュニケーション支援 朝礼や会議の内容は、終了後でなければ確認できなかった。 手話が堪能な人を採用したことにより、朝礼や会議等に並行して内容を確認することができるようになり、業務がスムーズに進むようになった。 注目の改善点1 コミュニケーション支援-2 対話・指導を筆談で行っていたため時間がかかっていた。 手話が堪能な人を採用したことにより、その場で指導ができるので生産性がアップした。 業務の拡大 客先での対応が不可能であったため、出張に行くことに困難を感じていた。 手話が堪能な人が出張に同行するようになったため、聴覚障害者もその他の従業員と同様に出張できることとなった。 注目の改善点2 高齢化への対応 定年を迎える従業員が増えてきた。 就業規則を変更し1年ごとに契約更新の嘱託社員として継続雇用することとした。現在2名の聴覚障害者が定年後も継続雇用されている。 注目の改善点3 改善策紹介 聴覚障害者の立場に立ったサポートが職場定着につながる 注目の改善点1 手話が堪能な人をキーパーソンとして採用 効果 業務がスムーズに行くようになり、業績もアップ。コミュニケーションが円滑になり職場環境も良くなった。 朝礼や会議の際、近くにいる人が身振り手振りで内容を伝えていたが、途中で考え込むことや考え違いをしていることが多かったため、手話が堪能な藤井悟さんが朝礼や会議の内容を同時に通訳することとし、内容をタイムリーに把握できるようにした。 また、寸法切断、溶接組立といった職務特性上、聴覚障害者には業務内容を図面に書き込み、伝えていたが、取引先により製品が異なるため十分に理解できないことが多かった。手話が堪能な藤井さんを聴覚障害者と同じ業務に配置し、疑問点を直ちに確認できるようにしたことで失敗数が激減し、生産性が向上し業績アップにつながった。 また、労働条件等の話をする際や、個人的な相談の際には藤井さんに同席してもらうようにした。筆談では十分にやり取りができず、食い違いが生じることもあったが、手話が堪能な人を介すことで内容を正確に伝えられると共に不十分な気持ちも解消された。 業務がスムーズに行くようになると共に、聴覚障害者とその他の従業員とのコミュニケーションも円滑になった。以前は聴覚障害者と他の従業員とは別のグループに分かれていたが、一緒に談笑するようになった。 注目の改善点2 出張に手話が堪能な人が同行 効果 聴覚障害者も出張可能となり、業務の幅が広がった。  出張先では作業中にマスクをするため出張先企業の従業員の口が見えず、コミュニケーションに苦慮することから、出張することに困難を感じていた。 そこで聴覚障害者の出張には手話が堪能な藤井さんが同行することとし、聴覚障害者も滞りなく出張業務をこなせるようにした。出張回数もその他の従業員と同様の回数とになり、業務の幅が広がった。また、聴覚障害者の仕事に対するモチベーションもアップした。 INTERVIEW 代表の声 代表取締役会長 平田 博さん  藤井さんを採用したことで聴覚障害者とその他の従業員との意思疎通が円滑に行われるようになりました。その結果、聴覚障害者もその他の従業員も働きやすくなり、長年の職場定着につながったと感じています。 職場リポート 従業員の声 藤井 悟さん  手話は市内の手話サークルで学びました。入社当初は聴覚障害者に呼ばれる回数が多く、1回当たりにかかる時間も長かったですが、徐々に呼ばれる回数、費やす時間共に減少していきました。 注目の改善点3 高齢化への対応 効果 勤続年数の長期化によるノウハウの継承を重視。  平成14年3月に17年間勤務した聴覚障害者1名が創業後初めての定年退職を迎えたが、本人が継続雇用を希望したため継続雇用した。その後就業規則を変更し、本人が希望すれば定年後も1年契約更新の嘱託社員として70歳まで継続雇用する制度を設けた。 定年退職者の継続雇用により職員の勤続年数が長期化し、熟練した従業員のノウハウを他の従業員に継承することが一層可能になった。 職場リポート 従業員の声  以前は食い違いも多かったですが、藤井さんが来て以来、他の従業員も自然に手話を覚え、意思疎通がスムーズになりました。働きやすくなりました。岡野 稔さん 川村 章夫さん 仕事の内容は筆談していましたが、わかる時とわからない時があり、食い違うことや、困ることが多かったです。手話で仕事内容が説明してもらえるようになって、所要時間が短くなりました。 山岡 元さん 細かい内容は手話でないと難しいです。仕事の内容は専門の言葉が多いので筆談等では時間がかかる上に、取引先により発注品がすべて異なるため、よくわかりませんでした。藤井さんが来たことで働きやすくなり、満足しています。 平成20年度障害者雇用職場改善好事例奨励賞 株式会社山ノ木(和歌山県和歌山市) 世界に一つの手作り家具、創作職人世界一を目指す わからないことはメモで必ず確認技能競技大会に積極的に参加して卓越した技能を身につける 事業所の概要と障害者雇用の経緯 “より自然・より自由・より個性的な”をモットーに人と環境に優しいオーダー家具を提供している株式会社山ノ木は、昭和49年12月に山ノ木家具として創業(平成2年9月に株式会社山ノ木に組織変更)。 障害者雇用のきっかけは、昭和56年に採用した聴覚障害者との出会いだった。 「図面が読めること、何より手先が器用であることを見込んでの採用だったが、初めての障害者雇用であり、不安もあった。しかし、彼のひた向きに取り組む姿勢に職人として一本立ちしてほしいと思った」(代表取締役社長和中輝雄さん) 「世界に一つの手作り家具、創作職人世界一」を目指す職場では、聴覚障害者に対する理解と配慮を欠かすことなく、職人としての自覚と自立を促す取り組みがなされ、現在3名の聴覚障害者が働いている。 業種及び主な事業内容 伝統工芸家具、別注和洋家具設計製作、増改築内装工事請負業。 雇用聴覚障害者数 3名(うち重度3名) 主な職務内容: ◎キッチン、洗面化粧台、クローゼット、カウンター等家具製作◎伝統工芸無垢材家具、店舗什器家具設計制作 取り組みの経緯 確実な指示の伝達と技術の伝承に向けて  聴覚障害者は健聴者と比較して、職場で得る情報が少なくなりがちである。そのため、指示を勘違いしてしまったり、十分に理解していなかったりすることがある。口話では指示を読み取ることに時間もかかり、誤って理解してしまうこともあった。家具製造の職場では、電動工具や機械を扱う場面が多く、指示の勘違いや理解不足が事故につながる恐れもある。指示を確実に理解するための改善に取り組む必要があった。 また、家具職人として一生続けるために必要な技能の伝承にも力を入れていた。 こんな改善。ここを工夫。 改善前の状況 改善後の効果 伝達方法の改善 伝達事項を口話で伝えていたが、時間を要するだけでなく、指示内容を十分に伝えることも難しかった。 1週間の作業工程表と連絡事項を文書で配布することで、伝達事項が正確に伝わり作業もスムーズに進めることができた。 注目の改善点1 安全管理の徹底 安全確認と指示の伝達方法について、筆談のみでは不安であり、確実性に乏しかった。 ペアで作業を徹底し、機械、工具類の取り扱いについて実技指導し、質問点はメモや図によりフィードバックを徹底させたことで不安を払拭した。 注目の改善点2 技術向上をサポート 技術向上のため技能検定への挑戦。 2名の聴覚障害者が一級技能検定に合格し、障害者技能競技大会(アビリンピック)の世界大会に家具部門日本代表として出場している。 注目の改善点3 改善策紹介 1週間の作業工程表と連絡事項を文書で配布全従業員が確実に把握 注目の改善点1 職場内外での伝達方法の改善 効果 トラブル解消につながり、現場でのコミュニケーションもスムーズになった。  これまで、毎週月曜日に行われていた朝礼では、伝達事項を口話で伝えていたが、時間を要するだけでなく、指示内容を十分に伝えることも難しかった。 それを改善するために1週間の作業工程表と連絡事項を文書で配布することで、伝達事項が正確に伝わり作業もスムーズに進めることができた。作業工程表は聴覚障害者に限らず従業員全員が確実に工程を把握できる効果を生むことになった。繁忙期にも対応できるように作業工程表には数量、仕様、納期の項目に加え、各工程の作業担当者、時間、用法等を記入して指示内容の明確化を図った。 現場で作業する聴覚障害者への指示・連絡体制にも工夫がされた。聴覚障害者1名と健聴者2名の3名体制を組み、1名の従業員が現場からの指示、変更内容を伝達することで発注者や他社の従業員とのトラブル解消につながり、現場でのコミュニケーションもスムーズになった。 このように従業員の配置を工夫することで現場作業や出張作業にも積極的に出掛けることができるようになり、業務の幅に拡がりをみせた。 注目の改善点2 ペアで作業を徹底し、質問点はメモや図でフィードバックさせる 効果 質問の徹底と安全確認を自覚させることでケガ、事故を防止。 最初に工具使用の要領、保守を確実に教示するためにペアで作業を徹底した。機械、工具類の取扱いについて実技指導し、質問点はメモや図により聴覚障害者にフィードバックを徹底させた。電動ノコギリなどの機械作業に入る前には、必ず手の置き方、手押しによる木材の流し方の順序を繰り返し説明。また、音による機械の不具合を感知できないこともあり、より慎重な機械操作を心掛けさせた。「道具類は職人の命であり、その扱い方は自己責任に任せる」とし、安全面での自覚を促した。徹底した安全管理によりこれまでケガ、事故はない。 注目の改善点3 技能検定挑戦へのサポート 効果 一級技能検定への合格、障害者技能競技大会日本代表として卓越した技能を発揮。  株式会社山ノ木では、家具製造は一生の仕事として続けられ、健聴者とハンディのない職種であることを伝えている。また、技能競技大会や技能検定に挑戦する機会を積極的に提供し、家具職人としてさらなる成長を促している。 技能検定の準備のために、実技の練習を行い、学科試験に備えて手話通訳士の派遣を依頼し知識習得をサポートしている。 スキルアップの成果として、現在2名の聴覚障害者が一級技能検定(家具手加工作業)に合格。そのうち1名は障害者技能競技大会(アビリンピック)の世界大会において家具部門日本代表として出場している。卓越した技能を身につけ、家具職人として活躍をしている。 INTERVIEW 管理担当者の声 代表取締役社長 和中 輝雄さん  作業指示が正しく伝わらないのは健聴者の責任。職人たるもの人に教えられるようになったら一人前。 最近の若い人にも言えることだが、職場内のコミュニケーション不足を感じている。社会に送り出す教育機関などにおいて、手話学習のみならず他のコミュニケーション手段(メモでの指示確認などの方法)も併せて身につけさせてほしい。 健聴者とハンディがない職種で、一生の仕事として希望の与えられる職場にしていきたい。 職場リポート 従業員の声 堀 健次さん まだまだ先になるけれど、先輩を見習って一級技能士検定に挑戦したい。分業作業ではなく、最初から最後まで一人で仕上げないといけないので大変だけれど、働き甲斐があります。 山原 耕一さん まだまだ先輩との差はありますが、早く追いつけるよう努力し頑張っていきたい。いろんな家具を、チャレンジャーとして製作していきたい。 鈴木 眞道さん  これからも使ってくれる人が楽しくなるような家具を製作したい。年齢に関係なく、一生の仕事としてできるところまで頑張りたい。 平成20年度障害者雇用職場改善好事例奨励賞 株式会社キユーピーあい(東京都町田市) 積極的な職域拡大と日常的な職場改善で聴覚障害者の能力を活かす 食堂・売店における接客業務への配置、Web制作におけるリーダー登用など幅広い人材活用 事業所の概要と障害者雇用の経緯 「マヨネーズソース」の製造販売等を行うキユーピー株式会社の子会社として平成15年6月に設立。同年12月に特例子会社として認定される。設立当時は障害者5名にて伝票の照合業務を開始。その後、キユーピーグループ各社から業務を受託し、経理補助業務、名刺印刷、メールの仕分け、Web制作、切手類販売、リラクゼーション、食堂売店の運営等幅広く職務を創出し、障害者雇用を拡大。 現在は、町田市の本社に加え、渋谷事務所にて身体障害者、知的障害者、精神障害者を雇用。常勤の手話通訳者の配置、第2号職場適応援助者の配置もしている。 また、地域の就労支援センターや職業訓練校、特別支援学校等と連携を深め、アドバイスや職場実習の受入れを行っている。 業種及び主な事業内容 キユーピーグループ各社から、経理及び労務に係る各種届出書類作成業務、伝票及び帳簿などに関する各種照合業務、Web制作・更新管理等を行う。 雇用聴覚障害者数 5名(うち重度3名) 主な職務内容: ◎売店・食堂・喫茶コーナーの管理業務、接客業務◎Web制作・更新業務◎店頭販売員の賃金勘定科目仕訳、売上処理、入金確認業務 取り組みの経緯 顧客の信頼を得るための絶え間ない改善が、聴覚障害者の職場改善に活かされる 株式会社キユーピーあいでは、グループ会社から様々な業務を請け負っている。設立当初、5名の障害者で伝票の照合業務を開始。社内に営業部門を設け積極的に業務拡大に取り組んできた。業務拡大に伴い、障害者雇用も拡大していくが、配属は障害種別にとらわれず、一人ひとりの技能・知識等の適性を考慮し決定している。適性を把握するにあたっては、障害者の委託訓練や障害者試行雇用(トライアル雇用)事業を活用し本人と職務のマッチングを進めている。 その結果、聴覚障害者については、食堂・売店チーム、Webチーム、経理チームの3チームに所属しており、障害状況はろう者、難聴者、中途失聴者と様々である。 3チームにそれぞれ障害状況の異なる聴覚障害者が勤務しているため、コミュニケーションの取り方も一律ではなく、チームごとにコミュニケーションの方法を検討する必要があった。 一方で、株式会社キユーピーあいにおいては業務を進める上で「お客様に信頼される仕事をする」という共通意識があった。そのため、信頼を勝ち得るために日常的に役員クラスのトップ会議、チームリーダーによるリーダー会議、また現場においては実務責任者会議を開き、日常業務の改善点を絶えず点検する土壌があった。これらの業務を点検する土壌が、チームごとのコミュニケーション方法を生み出し、様々な職場改善に至ったのである。 こんな改善。ここを工夫。 改善前の状況 改善後の効果 伝達ミスの防 止 レジ担当者と喫茶担当者との伝達がうまくいかず飲み物を出す際、お客様を特定しづらかった。 色で判別できる注文カードを作成。伝達ミスが無くなり、お客様に確実に飲み物を提供することができた。 注目の改善点1 顧客のニーズを確実に共有 Web制作担当者と営業担当者の席が離れており、打ち合わせがしづらかった。 Web制作担当者と営業担当者の席を近くにし、打ち合わせのしやすい環境に。顧客のニーズと技術面をWeb制作担当者や営業担当者が共有することで、顧客に対する提案力がアップ。 注目の改善点2 経験と能力のある者をリーダーに 2003年に設立した当時は聴覚障害者のチームリーダーがいなかった。 年2回の面接を通じて本人の能力を評価。Webチームでチームリーダーに登用。 注目の改善点3 経理チームへの電話問い合わせをサポート 経理チームの聴覚障害者が店頭販売員への支払い金額をメールにて連絡しているが、時々電話で問い合わせがある。 電話による問い合わせは、隣の同僚がホワイトボードで内容を伝え、本人の回答をもらって返答。ホワイトボードを互いの質問や進捗状況の確認にも活用。 注目の改善点4 INTERVIEW 代表の声 代表取締役 湯田 正樹さん 社会貢献の一環として福祉施設や特別支援学校に通う障害者を職場実習などで積極的に受け入れています。企業として雇用率は達成しているものの、毎年絶やさず障害者を雇用していきたいと思っています。雇用を拡大するためには、業務の拡大が必要です。弊社では、仕事を創出するための営業グループがあり、親会社からの仕事を待つだけでなく、積極的な業務拡大を進めていくつもりです。 職場リポート 従業員の声 食堂・売店チーム 塚本 真由美さん  注文カードを作成してもらって、お客様からの注文を間違えることがなくなったのでとても安心しています。 お客様からの質問があった際、自分でわかる時は対応しますが、わからない時は他のスタッフに代わってもらっています。周りのスタッフにも支えられながら頑張っています。 改善策紹介 各部署で障害状況に応じたサポート方法を創意工夫 注目の改善点1 色で判別できるバーコード付き注文カードで伝達ミスを防止 効果 お客様が注文カードを喫茶カウンターに持っていく方式に変更し、注文時の伝達ミスを防止。  食堂・売店チームでは接客業務も含まれているが、聴覚障害者が2名所属している。本人の適性とチームが受け入れを前向きに考えたことから配属になった。 従来はレジにて注文を聞いてから、売店レジ担当者から喫茶担当者に注文内容を伝えていた。聴覚障害者が売店レジ、視覚障害者が喫茶を担当した際は、注文内容の伝達に不安があり、喫茶担当者がお客様を特定できないことがあった。そこで、注文カードを作成し、注文時にお客様にカードを渡すシステムとすることで、お客様と注文内容の照合が確実になった。 注文カードはPOSレジに対応できるようバーコードを貼り付け、商品ごとに色を変えている。これは、視覚障害者の社員が食堂・売店チームに所属しているため、注文カードの読み間違いを防ぐ効果がある。 注目の改善点2 座席レイアウトの工夫で打ち合わせのしやすい環境 効果 顧客のニーズと技術面をWeb制作担当者や営業担当者が共有することで、顧客に対する提案力がアップ。 Webチームでは、営業担当者が受けた顧客の要望をもとにWeb制作担当者がホームページを制作している。従来は、営業担当者とWeb制作担当者の席が離れていたが、チーム内の座席レイアウトを変えることで、打ち合わせがしやすい環境に。 ホームページ更新の際には、営業担当者がホームページの画面を印刷し、更新すべき箇所に指示を書き込むことにしている。指示を書き込んだ用紙とWeb制作担当者のパソコン画面を見比べながら具体的に説明することで、顧客ニーズが共有しやすくなる。 顧客ニーズとそれに応じるための技術情報をWeb制作担当者と営業担当者が共有することで、より具体的なアイデアが浮かび、顧客への提案力がアップした。 以前の席の配置は、Web制作担当者の席と営業担当者の席が離れていたが、今の配置では、みんなの顔が見えるようになった。報告だけではなく、作業中のちょっとした会話や質問なども席にいながら気軽にできる。結果として、営業担当者と制作担当者間でのやり取りが増えた。 注目の改善点3 年2回の面接で本人の能力を評価 効果 Webチームのリーダーとしてキャリアアップ。 Webチームに所属している荒井康善さんは、チームリーダーとしてチームをとりまとめている。キユーピーあいでは、障害の有無を問わず年2回の面接を通じて本人の能力を評価。荒井さんは就職後、Web制作に関する知識をさらに高めるために、国立職業リハビリテーションセンターで在職者対象の訓練を受講したという。専門的知識と部下に対する指導力をかわれてキャリアアップを果たしている。 インタビュー (荒井 康善さん)職場改善に取り組んだ結果、お客様のイメージをスタッフ全員がスムーズに共有できるようになりました。お客様からのニーズに、より良い解決策を提示できるようになっています。 (城所 仁治さん)具体的には、メニューの配置、配色、予算に応じた提案などお客様に対して色々な提案ができるようになりました。お客様からも高い評価を受けています。 (佐藤 公一郎さん)仕事に関する問題点については、常に話し合いをしながら改善に心がけています。 注目の改善点4 電話による問い合わせを、同僚がホワイトボードでサポート 効果 業務への電話問い合わせに迅速に回答することが可能に。 経理チームに所属する堀場裕恵さんは、売上処理や店頭販売員に対する給与の支払い金額の報告等を担当している。支払先からの問い合わせは、通常メールでやり取りしているが、急ぎの場合、電話による問い合わせを受けることが多い。その際、電話を受けた同僚がホワイトボードに用件を記入し、堀場さんの回答をうけ、問い合わせに対応している。 ホワイトボードは机の左右に1つずつ設置している。1つは電話問い合わせの回答等に、もう1つは他部署の人が話しかける時に使用している。 堀場さんは簿記2級の資格を有しており、電話対応が発生する部署であってもサポートを受けながら、技能を発揮している。 平成20年度障害者雇用職場改善好事例奨励賞 株式会社かんでんエルハート(大阪府大阪市) 「ろう文化」と聴覚障害者の多様性を理解し、スキルアップ・キャリアアップを推進 「ろう文化」との出会いと社内への理解促進、聴覚障害者が中心となった聴覚障害者の多様性への理解と個々に応じた情報保障により、社員の意欲がアップ 事業所の概要と障害者雇用の経緯 平成5年12月9日の障害者の日に、関西電力、大阪府、大阪市の共同出資による第3セクター方式で設立した特例子会社。特に雇用の遅れている重度身体障害者、知的障害者、精神障害者を多数雇用するために多様な業務を行っている。 聴覚障害者の受け入れは、平成7年から。現在8名の聴覚障害者が在籍しており、そのうち3名が勤続10年を超えている。 開業から14年が経過、雇用の長期化に伴い、障害者のキャリアアップも図られており、現在役職者となっている者が4名いる(このうち1名は聴覚障害者)。 業種及び主な事業内容 園芸・貸農園事業、印刷、商事、社内文書の発・受信サービス、産業マッサージなど。 雇用聴覚障害者数 8名(うち重度7名) 主な職務内容: ◎印刷課(グラフィックデザイン、印刷・製本、IT関連業務、営業事務、経理)◎メールサービス業務(社内連絡便・郵便物・新聞雑誌等の受発信業務、ゴミの分別処理業務) 取り組みの経緯 「もっと聴覚障害者のことを理解するにはどうしたらよいか」と常に考える 聴覚障害者を雇用し始めた当初から8年間ほどの間は、在籍する社員全員が「ろう者」であった。聴覚障害者を講師とした手話教室を開催する中で手話を積極的に学ぶ等、聴覚障害者を理解しようとする姿勢を持っていたにもかかわらず、聴覚障害者と健聴者との仲が次第にぎくしゃくしてきた。 この事態を打開すべく、手話習得レベルの比較的高い社員が当事者団体が主催するシンポジウムや講演会等に参加したところ、「ろう文化※」を知ることとなった。手話が聴覚障害者にとって自文化を尊重する誇りであり伝統である「言語」であること、また、これまで「手話ができるようになること=ろう者を理解すること」と信じ、手話を「たくさん」「早く」「簡単に」取得することに力点をおいていたが、そのことが聴覚障害者との溝を広げる要因となっていたこと等に気づいた。その後、「ろう文化」に関する社内教育を実施、社内全体に確実に理解が浸透し、聴覚障害者の意欲向上、健聴者との人間関係の向上にもつながった。 その後、手話ができない中途失聴者や難聴者が入社してくる等、個人の状況やニーズが多様化してきた。 そこで、役職者である聴覚障害者と、役職者でかつ第2号職場適応援助者の資格を有する健聴者が中心となって、一人ひとりの特性を把握・分析し、特に「会議や教育の場における、様々なコミュニケーション上のサポート」に優先的に取り組んだ。 ※ろう文化とは『ろう文化宣言』(木村晴美・市田泰弘1995『現代思想3月号』より)の冒頭の一節より「ろう者とは、日本手話という、日本語とは異なる言語を話す、言語的少数者である。」  ―――これが、私たちの「ろう者」の定義である。これは、「ろう者」=「耳の聞こえない者」、つまり「障害者」という病理的視点から、「ろう者」=「日本手話を日常言語として用いる者」、つまり「言語的少数者」という社会的文化的視点への転換である。このような視点の転換は、ろう者の用いる手話が、音声言語と比べて遜色のない、“完全な”言語であるとの認識のもとに、初めて可能になったものだ。 こんな改善。ここを工夫。 改善前の状況 改善後の効果 コミュニケーション面の理解、支援強化 聴覚障害者は仕事を真面目にこなし、社内にも熱心に手話を学ぼうとする状況が見られていたにもかかわらず、次第に聴覚障害者と健聴者との関係がぎくしゃくしていた。 手話は、音声言語を使うことのできない人のための不完全な代用品ではなく、日本人が日本語を、フランス人がフランス語を使うように、ろう者は手話を用いるのである。ろう者は手話という独自のコミュニケーションツールを用いる誇り高き人々である−このようなろう文化を知り、手話だけでなく「ろう文化」を理解することの重要性に気づいた。また、社内教育を実施することにより社内全体に「ろう文化」の理解が深まり、聴覚障害者の意欲向上、健聴者との人間関係の向上につながった。 注目の改善点1 雇用する聴覚障害者が多様化してきたにもかかわらず、個別の状況やニーズへの理解が十分でなく、多様性に応じた情報保障が十分に整備されていなかった。 聴覚障害者の役職者が中心となって多様性を把握し、聴覚障害者自身の意見を取り入れながら、会議や教育の場における情報保障のサポート強化に取り組んだ。 注目の改善点2 注目の改善点3 上記の取り組みのほか、社内情報周知用のモニターの設置、「脳丸洗いゼーションセミナー」と称した社内教育を定期的に実施している。 注目の改善点4 改善策紹介 すべてのタイプの聴覚障害者にとって、働きやすい職場づくり 注目の改善点1 「ろう文化」の理解 効果 聴覚障害者への理解の促進、聴覚障害者の意欲向上、人間関係の改善が見られた。  「ろう文化」に出会い、それまで「手話ができるようになれば聴覚障害者を理解できる」と考えていたことを反省した。その後、社外から講師を招き、「ろう文化」の理解を目的とした社内教育を実施したことにより、社内に聴覚障害者に対する真の理解が深まった。 注)「ろう文化宣言」の発表は、多くの聴覚障害者(ろう者)に誇りと尊厳を取り戻させた衝撃的な出来事であった。しかし、一方現在では、聴覚障害者の中でも賛否の議論が繰り返されているようである。これは一口に聴覚障害といっても、実に多様な価値観が存在することを証明しているのではないだろうか。当社は、「ろう文化」を理解する一方で、以上のような点と、さらに「ろう者」や「手話」といった聴覚障害者を取り巻く多くの言葉も、使用する者の立場によって定義が変わることについても、理解しておきたいというスタンスである。 注目の改善点2 聴覚障害者の多様性を把握 効果 個々の状況やニーズに応じたサポートが把握できた。  「聞こえない」と「聞こえにくい」、「先天性」と「中途失聴」、「第一言語を日本語とする」のか「日本手話とする」のか、「手話ができる」のか「できない」のか、使用する手話は「日本手話」なのか「シムコム(日本語対応手話)」なのか、あるいはその両方の「バイリンガル」なのか、「ろう教育」を受けて育ったのか「普通教育」なのか…。 そして、先天性のろうであり、ろう教育を受けて育った聴覚障害者に、特有の誇りと文化、つまりは特有のアイデンティティーを持った人が多い。ろう者はこれを「ろう文化」、「デフ・コミュニティー」と呼び、強い同朋意識でつながっている。こうしたデフ・コミュニティーに属する「Deaf(キャピタルデフ)」であるか、そうではない「deaf(スモールデフ)」であるかも、聴覚障害者従業員一人ひとりの個性・特性を把握する上では理解しておきたい項目である。 以上のような点を踏まえ、役職者である聴覚障害者の宮中一成さん(印刷課 副主任)が中心となって、聴覚障害者の多様性と必要なサポートを整理した。 注目の改善点3 研修・教育プログラムにおける、多様な情報保障 効果 聴覚障害者の意欲向上、スキルアップ、キャリアアップにつながった。  聴覚障害者の多様化に加えて、会議や教育の形態や内容の多様化、さらには宮中さんが出席する役職者会議は機密性が高く外部の手話通訳を用意することができない、等々の課題が出てきた。 そこで、出席する聴覚障害者のタイプや会議の内容によって、以下サポートのいずれか、もしくは複数を組み合わせて実施することとした。@パワーポイントA外部手話通訳B音声入力ソフトC要約筆記ボランティアD要約筆記ソフト Dは、中途失聴者であり手話ができない黒田幹雄さん(印刷課)が自ら開発したもの。要約筆記担当者がパソコンに入力した発言者の氏名と発言内容の履歴がモニターに映し出される。 注目の改善点4 社内情報周知用モニターの設置、さらなる社内教育の充実 効果 聴覚障害者のみならず、社内全体の情報共有、障害理解のレベルアップにつながった。  聴覚障害者はちょっとした情報を「小耳にはさむ」ことができず、直接自分に関係のない情報が入りにくいことから、社内の最も目に付きやすい位置に情報周知用モニターを設置した。聴覚障害者のみならず、今では全員の情報共有のツールとして役立っている。 また、障害者理解とサポート力強化を目的として、毎回異なるテーマと講師を迎える「脳丸洗いゼーションセミナー」と称する社員教育を、3ヵ月に1回実施している。 INTERVIEW 代表の声 代表取締役 中井 志郎さん  今後も聴覚障害社員の中から、役職者を輩出していきたいと考えています。コミュニケーション面での支援は、聴覚障害社員をより戦力化し、企業力を高めるための重点実施項目として捉え、今後ますますの改善を図っていきたいと思っています。 職場リポート 従業員の声 印刷課 副主任 宮中 一成さん  「ろう文化」について、全員ではないものの、確実に理解している人が何人かいることで、働きやすくなりました。今後も役職者として、社内のコミュニケーション支援の強化と、社員の職場定着に力を注ぎたいと思っています。 その他の応募事業所  平成20年度につきましては、聴覚障害者のキャリアアップに向け、創意工夫を行った職場改善好事例をテーマに募集いたしましたところ、全国78の事業所からのご応募をいただきました。 残念ながら入賞にいたらなかった64事業所の職場改善の取り組みにも、今後の聴覚障害者雇用の参考になる事例が多く見られます。そこで、各事業所の改善・取り組みの概要をまとめてみました。 ●株式会社アイワード(北海道)●株式会社北海道健誠社(北海道)●グットフーズ有限会社(青森県)●株式会社ジョイ・ワールド・パシフィック(青森県)●ソニーイーエムシーエス株式会社千厩テック(岩手県)●有限会社なかよし産業(宮城県)●株式会社たけや製パン(秋田県)●株式会社かわでん(山形県)●会津オリンパス株式会社(福島県)●松井電器産業株式会社(栃木県)●株式会社フジスタッフ(栃木県)●株式会社エスコアール(千葉県)●新日本石油株式会社(東京都)●株式会社大林組(東京都)●身体障害者雇用促進研究所株式会社(東京都)●株式会社シーイーシー(神奈川県)●富士通株式会社(神奈川県)●ベストトレーディング株式会社(神奈川県)●ジョブサポートパワー株式会社(神奈川県)●富士ソフト企画株式会社(神奈川県)●一正蒲鉾株式会社(新潟県)●北日本巻食品株式会社(新潟県)●NECトーキン株式会社 富山事業所(富山県)●加賀東芝エレクトロニクス株式会社(石川県)●未来工業株式会社(岐阜県)●岐阜信用金庫(岐阜県)●株式会社レンティック中部(静岡県)●アスモ株式会社(静岡県)●株式会社レアールパスコベーカリーズ(愛知県)●中電ウイング株式会社(愛知県)●パナソニック電工滋賀株式会社(滋賀県)●電気硝子ユニバーサポート株式会社(滋賀県)●株式会社ワコール(京都府)●日新電機株式会社(京都府)●オムロン京都太陽株式会社(京都府)●和田精密歯研株式会社(大阪府)●シャープ特選工業株式会社(大阪府)●株式会社ニッセイ・ニュークリエーション(大阪府)●住友精密工業株式会社(兵庫県)●日本イーライリリー株式会社(兵庫県)●シバタ工業株式会社(兵庫県)●パナソニック株式会社 AVCネットワーク社 ITプロダクツ事業部 神戸(兵庫県)●株式会社エス・アイ(兵庫県)●特別養護老人ホーム淡路ふくろうの郷(兵庫県)●YC川西北部・YC清和台(兵庫県)●トットリレッキス工業株式会社(鳥取県)●マツダ株式会社(広島県)●有限会社リベルタス興産(山口県)●株式会社斉藤鉄工所(徳島県)●和田精密歯研株式会社 クラウンセンター綾上(香川県)●日本食研株式会社(愛媛県)●シンセイフードサービス株式会社(愛媛県)●高知市農業協同組合(高知県)●ローム・アポロ株式会社(福岡県)●タカタ九州株式会社佐賀製造所(佐賀県)●白山陶器株式会社(長崎県)●希望の里ホンダ株式会社(熊本県)●株式会社トキハインダストリー(大分県)●株式会社東芝セミコンダクター大分工場(大分県)●日立プラズマディスプレイ株式会社(宮崎県)●JUKI宮崎精密株式会社(宮崎県)●ソニーセミコンダクタ九州株式会社 鹿児島テクノロジーセンター(鹿児島県)●株式会社南光(鹿児島県)●有限会社佐野正開発(沖縄県) 平成20年度 障害者雇用職場改善好事例 その他の応募事業所 株式会社アイワード 北海道札幌市 業種及び主な事業内容企画メディア事業、情報処理・システム開発事業、印刷事業 雇用聴覚障害者数 26名 事業所の概要と障害者雇用の経緯 昭和40年に北海道共同軽印刷として創業。平成5年にグループ会社を合併し、株式会社アイワードとして発足。障害者雇用を拡大したきっかけは、昭和48年第一次オイルショックで経営が悪化した時に経営の建て直しを図った現社長が「企業は社会の縮図である」と考え、性別、障害による差別のない雇用を目指したことによる。現在障害者30名のうち29名が重度障害者である。共に学び、共に育つ職場づくりに取り組み、職場におけるノーマライゼーションの実現を目指している。 取り組みの経緯 聴覚障害者の多くが製本作業に集中していたが、職域拡大の要望が高まる一方、製本作業においても、効率化が求められていた。また、雇用の長期化に伴い、加齢・高齢化への対応も必要になってきた。 主な改善内容と効果 【改善内容】@ DTP部門にまず1名雇用し、その後部署の拡大に伴いもう1  名雇用した。コミュニケーション面を重視し、繰り返し確認することやホワイトボード等を活用した情報共有を徹底した。A 製本部門で、機械に支障をきたした場合、異常音が聞こえなくてもすぐ不具合に気づくよう、製造メーカーに依頼し、写真を添付したわかりやすい取り扱い説明書を用意した。また、個々の作業員が手動で調整する手間を省くよう、新しい機械を購入し、オートメーション化を徹底した。B 重量のある紙を運ぶ手間を省く機械を購入した。また、定年を迎えた聴覚障害者について、負担が少なくかつ定年までの経験が活かせる仕分け・梱包等の職務を検討した。【効  果】@ 2名共にDTP業務に意欲的に取り組んでおり、職域拡大、能力開発が図られた(1名は、国際アビリンピックのDTP部門で銀メダルを受賞した)。A 手作業によるムラや対応の遅れが軽減され、生産性がアップした。B 加齢・高齢化に応じた働きやすい職場環境が整い、一層職場定着が図られつつある。 株式会社北海道健誠社 北海道東神楽町 業種及び主な事業内容リネンサプライ業 雇用聴覚障害者数 7名うち重度7名 事業所の概要と障害者雇用の経緯 平成4年6月に設立し、病院用寝具類の洗濯専門工場を建設、開業。2年後、財団法人医療関連サービス振興会により、医療関連サービスマーク(寝具類洗濯業務)の認可を受ける。その後、布団の丸洗い、ホテルリネン事業、ホームクリーニング等、事業を拡大。障害者の雇用は平成8年度より開始し、ほぼ毎年新規に雇用している。 取り組みの経緯 聴覚障害者とどのように円滑にコミュニケーションを図ったら良いかわからず、試行錯誤していた。また、機械による作業が多く、安全面の強化が必要であった。 主な改善内容と効果 【改善内容】@ 手話ができる人が入社したことがきっかけとなり、週一回朝礼時に手話教室を開催するようになった。A 危険防止のための絵入りのポスターを掲示した。また、機械に点滅回転灯を設置した。【効  果】@ 手話教室以外の場面においても、社内全体が聴覚障害者とのコミュニケーションに積極的な姿勢を自然と持つようになり、職場の活性化につながった。A 安全に対する意識の強化が図られた。 グッドフーズ有限会社 青森県青森市 業種及び主な事業内容 飲食業 雇用聴覚障害者数 3名うち重度2名 事業所の概要と障害者雇用の経緯 弁当配達、学校給食、企業社員食堂、レストランの飲食業。青森県立青森高等技術専門学校の学生を1ヵ月職場実習で受け入れた後3ヵ月のトライアル雇用を活用して、平成18年から障害者を雇用している。 取り組みの経緯 仕事の段取りがわからず、作業に時間がかかっていた。 主な改善内容と効果 【改善内容】 朝礼や昼食時の時間を活用し、聴覚障害者の意見を表現する機会を増やした。【効  果】 仕事内容について意見交換することが増え、段取りの理解につながった。 株式会社ジョイ・ワールド・パシフィック 青森県平川市 業種及び主な事業内容 光学機器加工・組立/半導体検査装置製造/福祉機器設計企画/カロリー測定装置・販売 雇用聴覚障害者数 2名うち重度2名 事業所の概要と障害者雇用の経緯 昭和53年10月に光学メーカーの協力工場として操業開始。昭和59年4月、新工場を新築した際、ろう学校の先生から聴覚障害者の雇用を相談され、カメラ部品組立及びラジオ製作作業で受け入れを始める。これを機に、積極的な障害者雇用を展開し、平成11年に障害者雇用優良事業所として厚生労働大臣表彰を受ける。 取り組みの経緯 他の従業員が、聴覚障害があることを知らなかったため「話しかけても無視された」という誤解が発生した。聴覚障害者が働いていることを周知すると共に、適切なコミュニケーション方法を取る必要があった。 主な改善内容と効果 【改善内容】@ 全体集会の内容を簡単に書面にして配布し、質問等確認ができるようにした。A 口話のできる聴覚障害者だったので、話す時はゆっくり話すことを心がけた。B 一人で昼食を取る姿がみられたので、同じ部署の従業員と一緒に昼食を取り、会話に参加できるようにした。C 従業員とすれ違う時は、会釈や手を上げる等挨拶をするようにした。【効  果】 他の従業員と溶け込むことができ、勤続20年を超えている。当社のコア技術ともいえる作業に従事しており、大きな戦力となっている。 ソニーイーエムシーエス株式会社千厩テック 岩手県一関市 業種及び主な事業内容 モバイル通信機器、ロケーションフリー等の設計、製造、カスタマーサービス雇用聴覚障害者数 9名うち重度1名 事業所の概要と障害者雇用の経緯 無線技術を長年手がけてきたが、ラジオ、カーステレオから始まった技術を活かしていち早く携帯電話の開発・製造に携わり、現在はカメラ付携帯電話、複合商品等を製造している。障害者雇用は平成元年、ハローワークの紹介で聴覚障害者の男性を1名採用したのが最初である。採用経路はハローワークの紹介によることが多いが、地元の就職活動フェア等に人事担当者が参加し、就職希望者と面接を行った上で採用に至るケースもある。 取り組みの経緯 左右の人と連携が必要なラインでの作業が難しかった(流れに乗ることができず機械を止めることがあった)。また、伝達がうまくいかず、連絡事項の誤認が見られたり、無断欠勤がある等の状況がみられた。 主な改善内容と効果 【改善内容】@ ライン外で製造課の前加工の過程で商品検査の作業を作り出した。A ハローワークの担当者と手話通訳者を交えて話し合いをもった。不満や悩みの相談に乗った上で連絡の徹底を図るよう助言した。B グループ企業と足並みを揃えて契約社員から正社員に処遇を改善した。【効  果】@ ライン外で一人で作業が完結できるため、あせらず自分の仕事に取り組むことができた。A 無断欠勤がなくなり仕事や同僚に慣れて業務に取り組んでいる。B正社員になったことにより、働くモチベーションも向上した。 有限会社なかよし産業 宮城県白石市 業種及び主な事業内容 自動車解体業、中古部品、中古建設機械販売輸出/新車・中古車販売、廃棄物処理 雇用聴覚障害者数 1名うち重度1名 事業所の概要と障害者雇用の経緯 中古車・廃車の買取・廃車処理を中心に、中古建設機械・中古部品の販売等を行っている。環境・福祉(障害者雇用)配慮企業として自動車リサイクル法への対応を目指しISO14001の資格を取得。障害者雇用については、社会貢献の意味で開始した。 取り組みの経緯 自動車解体業の仕事ではフォークリフト免許が必須であったが、雇用した聴覚障害者が免許を持っていなかったことに加え、免許取得に消極的であった。 主な改善内容と効果 【改善内容】@ 手話通訳者を通じ、資格取得の必要性を説明した。A フォークリフト講習を受講するにあたり、手話通訳者を派遣してもらい、講習受講のサポートをした。B 手話通訳者から聴覚障害者に対するコミュニケーションのポイントを学んだ。【効  果】@ 業務遂行上、資格取得の必要性を理解することができた。A フォークリフト講習を受講し免許を取得した。免許取得により自信がつき、大型自動車免許にもチャレンジし、取得することができた。B コミュニケーションのポイントを参考に、ホワイトボードの活用や口話により、仕事上のコミュニケーションが成り立つようになった。 株式会社たけや製パン 秋田県秋田市 業種及び主な事業内容 パン・和洋菓子の製造販売 雇用聴覚障害者数 4名 事業所の概要と障害者雇用の経緯 秋田県秋田市を拠点とし、パン・和菓子・洋菓子の製造販売の他、コンビニエンスストアの店舗開発事業等の事業展開を図る。創業は昭和26年2月1日、秋田駅前の一角に開いた小さなパン屋からスタートし、昭和43年には業界第一位の山崎製パン株式会社との業務提携、同年現在の臨海工業団地内に工場を建設移転した。 取り組みの経緯 総務担当者が作業場において声をかけ、筆談でコミュニケーションを図ったが、周囲の目を気にすることが多く本音を引き出すことができにくかった。そこで、別室でコミュニケーションを図れるように対応したが、時間を気にするあまり面談回数が限られてしまった。 主な改善内容と効果 【改善内容】 総務担当者に直接会わなくても、本人の本音が伝えられるように、担当者のメールアドレスを配布した。【効  果】 会社に質問してみたかったこと(就業規則、作業内容、人間関係の悩み等)がメールで届き、コミュニケーションが促進され、職場定着に役立った。 株式会社かわでん 山形県南陽市 業種及び主な事業内容 配電制御システムの設計・製造及び販売 雇用聴覚障害者数 6名うち重度5名 事業所の概要と障害者雇用の経緯 大正15年の創業以来、社是「電気に生きる」という基本精神のもと、カスタム型配電制御設備の大手専業メーカーとして全国に事業を展開している。ハローワークからの助言が、障害者雇用に関する考え方、企業の社会的責任に対して認識を改める機会となり、平成4年に聴覚障害者1名を雇用。製品銘板の製作部門に配属。その後同部門で複数人を雇用するに至る。 取り組みの経緯 聴覚障害者の多くが彫刻機を使用し製品銘板の製作に従事しているが、図面から情報を読み取ってデータを直接入力する方法が中心であったため、ロスもみられた。また、仕事上の情報伝達手段は口話や筆談が中心であり、外部との連絡は他の従業員に電話をしてもらう必要があった。さらに、聴覚障害者のチームリーダーがいなかった。 主な改善内容と効果 【改善内容】@ 設計部門から彫刻情報を入手し自動的に彫刻ができるパソコンと連動した彫刻設備を導入した。A 電子メールの利用環境を整備した。B 全社員に同一の人事考課制度を導入した。【効  果】@ 情報を手入力する必要がなくなり、作業時間が大幅に短縮、ミスも減少し作業効率が向上した。A 社内及び社外とのコミュニケーションが円滑にできるようになった。B 聴覚障害者の中からチームリーダー(管理・監督職)に1名、補佐的立場としてライン長に1名登用することで、聴覚障害者の所属する部署において作業の改善活動が活発に行われるようになった。 会津オリンパス株式会社 福島県会津若松市 業種及び主な事業内容 医療用内視鏡の製造および周辺機器の開発・製造 雇用聴覚障害者数 5名うち重度4名 事業所の概要と障害者雇用の経緯 昭和45年、オリンパス光学工業株式会社(現オリンパス株式会社)の100%出資子会社として、会津若松市に設立。以来、一貫して医療用内視鏡の生産に取り組んできた。現在、高齢化、機能の高度化により世界的に需要が拡大している消化器系医療用内視鏡で世界シェア70%を誇る。需要拡大により障害者雇用も増加。法定雇用率を遵守するため、ハローワークを通じて求人を行い、雇用を進めている。 取り組みの経緯 内視鏡部品の組立はノウハウが必要であり、習熟のために丁寧な作業指導が必要であった。また、重要な工程を担当するためには「社内ライセンス」の取得が必要であった。聴覚障害者が別々の工程で作業をしていたため、孤立しかけていた。 主な改善内容と効果 【改善内容】@ 作業指導の際は、作業を例示し、手話、ジェスチャー、筆談等で説明を行った。また、手話を覚える従業員を増やした。A同じ工程内に聴覚障害者を配属した。B 「社内ライセンス」に必要な内容をホワイトボードに記載し、講習を実施した。【効 果】@品質や効率を落とさずに作業ができるようになった。A 聴覚障害者同士コミュニケーションが取れることで、精神的な落ち着きがみられた。B 「社内ライセンス」を取得し、内視鏡製造にかかる重要な工程を担当することができた。 松井電器産業株式会社 栃木県鹿沼市 業種及び主な事業内容 各種電子機器のプリント配線基盤への実装・回路組立・製造 雇用聴覚障害者数 3名うち重度2名 事業所の概要と障害者雇用の経緯 各種電子機器のプリント配線基盤への実装・回路組立・製造等を行う。昭和42年に設立し、翌年から障害者雇用をはじめた。鹿沼本社工場、那須烏山工場、東北事業所を開設する等業績を伸ばし、平成18年に「快適職場」奨励賞を受賞し、同年11月には栃木県経営革新計画認証企業となっている。昭和48年には障害者雇用優良事業所として県知事賞を受賞。 取り組みの経緯 作業指示に際しては口話、筆談を行っていたが、作業精度が求められたり、時間的制約を受ける場合には、細部にわたる指示ができず不安であった。会議等情報量が多い場合は確実に伝えられていないことがあった。聴覚障害者や周囲の従業員が感じている問題等が把握しづらかった。 主な改善内容と効果 【改善内容】@ 手話のできる従業員を1名配置した。A 安全衛生委員会等、会議の議事録を作成し全従業員に回覧することにした。B 安全衛生関係の社員アンケートを行う際に障害を持つ従業員への配慮等に関する設問を設定し、問題の把握に努めた。【効  果】@ 細かい指示を伝えることができるようになった。A 議事録を回覧することにより、聴覚障害者にとって自分の所属部署以外の情報が入ることになり、全体を把握しながら仕事ができるとの意見をもらっている。B 聴覚障害者の状況がこれまで以上に把握でき、問題が生じる前に対応ができるようになった。 株式会社フジスタッフ 栃木県宇都宮市 業種及び主な事業内容 労働者派遣業。事務系人材派遣および人材紹介 雇用聴覚障害者数 13名うち重度12名 事業所の概要と障害者雇用の経緯 昭和55年に設立し、28年の歴史を持つ人材派遣会社。全国に50の支店を持ち、北海道から九州までの営業エリアをカバーする。平成16年に障害者雇用促進専任組織を整備し、各支店における障害者雇用に取り組んできた。 取り組みの経緯 聴覚障害者を雇用し始めた頃は、コミュニケーションの取りづらさと孤独感が原因で、退職する人が多く定着が悪かった。 主な改善内容と効果 【改善内容】@ 定着のためにはきめ細かいケアが必要と判断し、「チャレンジド支援事業部」を立ち上げ、専任組織による雇用管理を始めた。A 業務能力向上のための研修会に併せて、職場や仕事の悩みを話し合う「自由懇談会」を実施した。B チャレンジド支援事業部が各地の聴覚障害者と個人面談を実施すると共に、「聴覚障害者コンサルタント」を配置しインフォーマルな相談もできる体制にした。C 働く障害者の思いを綴った文集「挑戦」を発行した。D 聴覚障害者に対するパソコンスキルアップ研修を聴覚障害者がインストラクターとして実施した。E アビリンピックへの参加を積極的に推進した。F 営業職の職務を分析し、事務的作業を抽出し、職務創出を図った。【効  果】@、A、B、C悩みを相談しやすい体制ができ、孤独感が払拭され定着率が向上した。また、文集で綴られた聴覚障害者の努力が、他の従業員の共感と励ましにつながった。D、E聴覚障害者が講師のため、指導がスムーズに進んだ。また、アビリンピック入賞に向けて努力したことがパソコン技能の向上につながった。F事務的作業を抽出したことにより、営業職は本来の業務に専念でき、また創出した作業で聴覚障害者を雇用することができた。 株式会社エスコアール 千葉県木更津市 業種及び主な事業内容 障害者用検査・訓練教材の開発・製造・販売、書籍出版、他 雇用聴覚障害者数 1名うち重度1名 事業所の概要と障害者雇用の経緯 平成2年4月に創立し「人と環境に優しい企業」を社是として、障害者関連の教材、教具等の製造・販売、出版、塾、事務代行等を業務として行ってきた。販売対象は全国の病院、特別支援学校、福祉施設、個人等。平成4年4月、重度障害者を雇用。以降、障害者合同面接会へほぼ毎年参加し、積極的に障害者雇用に取り組んでいる。障害者の雇用数は常時正社員の半数以上である。 取り組みの経緯 全従業員向けの情報は、聴覚障害者については個別に筆談で伝達していたが、内容が不確実で遅れることもあった。加えて、筆談では情報量が少なく、メモを紛失することもあった。会議の場で、聴覚障害者への対応がなされていなかった。作業中の聴覚障害者が来客に気づかず、来訪者に不愉快な思いをさせることがあった。 主な改善内容と効果 【改善内容】@ グループウェアを導入し、パソコン上で情報伝達ができるようにした。A 重要な指示は、聴覚障害者のパソコンに複写・保存するようにした。B 会議に手話通訳者を派遣してもらった。C 搬入口に人感センサーとパトライトを設置し、来客がわかるようにした。【効  果】@ 聴覚障害者に迅速に確実な情報が伝達されることになった。A パソコンで指示が確認できるようになり、作業の見落としが軽減された。B 会議の内容が聴覚障害者にも伝わるようになり、会議で積極的に発言する機会が増えた。C 来客への対応が可能となり、来訪者に不愉快な思いをさせることがなくなった。 新日本石油株式会社 東京都港区 業種及び主な事業内容 石油製品の販売 雇用聴覚障害者数 9名うち重度5名 事業所の概要と障害者雇用の経緯 エネルギーの未来を創造し、人と自然とが調和した豊かな社会の実現に貢献する“Your Choice of Energy”を経営理念として掲げている。行動規範の一つに「Relationship(人々との絆)」を定め、障害者と健常者が互いに協働できるよう職場環境へ配慮を行うと共に、職場に馴染み、戦力となり、長く会社に勤められる「環境整備」と「職場定着」を大きなポイントと考えている。 取り組みの経緯 聴覚障害があっても言葉によるやり取り以外は他の従業員と同様の能力を有しているのではないかという声から、幅広い業務を担当してもらえるように処遇の改善を検討することになった。社員教育の一環として多岐にわたる研修メニューを用意していたが、聴覚障害者が参加しやすい環境ではなかった。 主な改善内容と効果 【改善内容】@ 平成18年から、希望者については嘱託職員から正社員へ登用した。A 聴覚障害者が参加する研修には、手話通訳や筆談によりサポートを行うことにした。B 職場のコミュニケーションを促進するために、聴覚障害者を講師として「手話教室」を開催した。【効  果】@ 正社員に登用されたことにより「自分のスキルを磨き、会社を通じて社会貢献したい」という気持ちが高まる等、士気の高揚につながった。A 聴覚障害者が研修に参加しやすくなったことに加え、研修時に全国の他部門の従業員と交流する機会が増えた。B 手話教室を企画することで、聴覚障害者以外の人ともコミュニケーションを図る機会が増えた。 株式会社大林組 東京都港区 業種及び主な事業内容 総合建設業 雇用聴覚障害者数 17名うち重度11名 事業所の概要と障害者雇用の経緯 昭和11年に設立し、国内外建設工事、地域開発・都市開発・海洋開発・環境整備・その他建設に関する事業、及びこれらに関するエンジニアリング・マネージメント・コンサルティング業務の受託、不動産事業を行っている。障害者の雇用に当たっては、在職中に病気・怪我等で障害者手帳を取得した職員を継続雇用すると共に、聴覚障害者を中心に新卒者としての採用も実施してきた。平成13年には、特例子会社(オーク・フレンドリーサービス株式会社)を設立した。 取り組みの経緯 聴覚障害者に対しては筆談を中心にコミュニケーションを図っていたが、手書きの場合、読みにくい字の判別や間違った時に書き直すことに労力がかかっていた。また、席が離れている場合、相手の席まで出向く必要があった。 主な改善内容と効果 【改善内容】 フリーソフト「DeskChat」を導入し、パソコンを通じて情報の伝達ができるようにした。【効  果】 一度の入力で意思が伝えられ、書き直す負担が軽減された。慣れれば手書きの約半分の時間で入力可能となった。また、相手の席が離れていても、気軽に会話ができるようになった。さらに、チャット内容をテキストデータとして保存することにより、記録を兼ねることができた。 身体障害者雇用促進研究所株式会社 東京都中野区 業種及び主な事業内容 事務支援、サプライセンター、チャレンジド・サポート(就労支援)、オフィスサービス、よこはま夢工房(クッキー製造)、保険代理店 雇用聴覚障害者数 15名うち重度4名 事業所の概要と障害者雇用の経緯 障害者の雇用促進を目的として、平成3年に設立された総合人材サービス企業、テンプスタッフのグループ会社である。平成6年に特例子会社として認定され、障害者と共に、多様な業務を展開している。現在は、東京都中野区の本社をはじめ、豊島区、横浜市と3拠点で事業を展開し、障害者一人ひとりの能力、適正を十分に発揮できる会社として、新たな職域開発や安定就労を目指している。 取り組みの経緯 聴覚障害者に対しては、口話と筆談という限定されたコミュニケーション手段のため、情報が不足し、業務の流れや状況を把握できず、仕事に対するモチベーションの低下を招いていた。多忙な時期には、同僚に質問することも遠慮してしまい、十分な意思疎通ができず、誤解が生じやすかった。 主な改善内容と効果 【改善内容】@ 集合会議や部内ミーティングの際に、配布資料に加え質疑応答場面の情報を伝達できるようにパソコンによる要約筆記を行うこととした。A 電話連絡の用件、来訪者の予定、勤務時間中の様々なコミュニケーションについて、口話だけでなく社内メールを活用し、確実な情報伝達を行うこととした。B 聴覚障害者の社員に対する理解を深めるために、手話に触れる学習時間を各部署で取り入れた(朝のミーティングで1単語ずつ手話を学ぶ等)。【効  果】@ 社内研修や会議に聴覚障害者が参加しやすくなり、スキルアップによる知識も増え、モチベーションが向上した。A 電話連絡の用件(日時、誰から、対応者、用件)について、メールで連絡することにより業務の状況が把握しやすくなった。B 手話の活用により気持ちが伝えやすくなり、職場内の人間関係を深めることにつながった。 株式会社シーイーシー 神奈川県座間市 業種及び主な事業内容 ソフトウェア開発 雇用聴覚障害者数 6名うち重度5名 事業所の概要と障害者雇用の経緯 ソフトウェア開発及び情報サービス事業を展開。企業の社会的責任と障害者の自立支援を目的とし、障害者が担当できる業務の創造と業務の見直しを進め、障害者雇用相談員への相談、ハローワーク他会社説明会への参加を現在も積極的に行っている。 取り組みの経緯 人事・経理部門担当者が行う事務作業のうち、コミュニケーションの必要性が低いものを整理し、聴覚障害者が担当する業務として創出した。社内メール運搬車の運転手の退職に伴い、聴覚障害者を新たに採用した。 主な改善内容と効果 【改善内容】@ 聴覚障害者の雇用を進めるために、人事・経理部門の事務作業を細分化し、職務を創出した。A 社内メール運搬車の運転手の退職に伴い、聴覚障害者を新たに採用した。【効  果】@ 聴覚障害者雇用に加え、従来、事務作業を担当していた者が他の作業に専念することができた。また、事務作業を集約することでミスがないかチェックしやすくなった。A 休暇や体調不良に備えて、運転手を2名体制にしたことにより、聴覚障害者を2名雇用することができた。 富士通株式会社 神奈川県川崎市 業種及び主な事業内容 通信システム、情報処理システムおよび電子デバイスの製造・販売ならびにこれらに関するサービスの提供 雇用聴覚障害者数 90名うち重度76名 事業所の概要と障害者雇用の経緯 昭和10年6月に富士電機製造株式会社(現・富士電機ホールディングス株式会社)の電話部所管業務を分離し、富士通信機製造株式会社を設立。IT分野において、最先端かつ高性能、高品質を備えた強いテクノロジーをベースに、品質の高いプロダクト、電子デバイス及びこれらを活用した各種サービスの提供によるトータルソリューションを提供している。 取り組みの経緯 全社従業員の教育を専門としている部門があり、社員研修や教育プログラムが多くある中で、聴覚障害者については、コミュニケーション上、研修に参加することが難しかった。また、研修を受講できるように手話通訳者の派遣を要請すると費用がかさみ、1つの講座に対するコストが高いことが課題であった。 主な改善内容と効果 【改善内容】@ 社内で開講している講座と同一の内容を聴覚障害者向けとして開設した。A 聴覚障害者一人の受講ではなく、全国から参加可能とすることで手話通訳者の派遣回数を集約した。B 聴覚障害者向け講座を用意していることを全社に情報発信すると共に、受講履歴が実績として残る仕組みをつくった。【効  果】@ 一般社員と同じ講座を受講することが可能となり、仕事へのモチベーションが向上した。A 手話通訳者派遣にかかるコストが削減できたと共に、全国から参加した聴覚障害者とコミュニケーションを深めることができた。B 講座を受講することが実績として残されるので、キャリアアップにつながることを実感できた。 ベストトレーディング株式会社 神奈川県厚木市 業種及び主な事業内容 空き飲料容器類のリサイクル事業 雇用聴覚障害者数 12名うち重度10名 事業所の概要と障害者雇用の経緯 聴覚障害者の雇用は平成11年10月、空き飲料容器類のリサイクル事業を立ち上げる際、ハローワークの助言に基づき、4名採用したのがきっかけだった。障害者が生きがいを持って社会で活躍できる職場環境の整備を目指しており、工場見学やろう学校在学生の職場実習も積極的に受け入れている。 取り組みの経緯 聴覚障害者が責任者として運営管理ができることを目指しており、そのためには聴覚障害者個々の仕事に対する理解度が違うことの解消、責任者としての自覚、職務について理解していくことが必要であった。 主な改善内容と効果 【改善内容】@ 全員が様々な職場を体験し、会社全体の業務を理解できるようにした。A 責任者として自覚を持つための勉強会、現場監督や部下と一緒に作業工程の予定を一緒に考えるミーティング等を開催した。B 作業を行う上で、危険箇所をピックアップし、聴覚障害者の立場から何が危険か話し合いの場を持つようにした。さらに、事故事例の写真を掲示し、事故の恐ろしさを伝えた。【効  果】@ 自分の担当作業以外の前後の工程を理解することができた。全体の流れを把握することで、業務の改善策にも気がつくようになった。A 責任者としての自覚が芽生え、会社の勉強会で提起された課題についても「何をすべきか」を考えていくようになった。B 全員の話し合いを通じて、自分だけでなくお互いの危険行為についても注意できるようになった。回収車を運転する聴覚障害者については、人身事故歴はゼロである。 ジョブサポートパワー株式会社 神奈川県横浜市 業種及び主な事業内容 親会社からの事務請負サービス事業(データ入力、社内外郵便取扱い、名刺印刷、ファイリング・文書管理、クイックマッサージ、在宅調査業務、Webサイト管理、タイムシートチェック、社会保険手続等) 雇用聴覚障害者数 5名うち重度3名 事業所の概要と障害者雇用の経緯 平成13年東京都港区新橋に設立し、平成15年特例子会社として認定を受ける。認定時の従業員は6名、障害者は5名であり、そのうち4名は聴覚障害者であった。担当業務は、社内外郵便業務等親会社からの受託業務であった。平成18年、親会社のマンパワー・ジャパンが本社を横浜に移転、同時に当社も横浜に移転した。障害者の社員も100名を超え、親会社からの受託業務も当社の補助的な業務のみならず、業務全体を一括受託するまでになった。 取り組みの経緯 コミュニケーション不足により意思疎通が十分に図れず、聴覚障害者とその他の従業員との間に誤解や考えのすれ違いがあり、また、職場のルールや業務の理解が十分に図られていない状況も見られた。 主な改善内容と効果 【改善内容】@ 個人面談を行い、聴覚障害者のニーズや悩みの聞き取りを行った。A専任の担当者をおき、きめ細かな指導を行った。Bメールやメモ等により、聴覚障害者にこまめに情報を伝えた。【効  果】@ 聴覚障害者とその他の従業員との相互理解が深まり、人間関係が良好になった。A職場のルールや業務に対する理解が十分図られた。B 職場の上司・同僚との溝が埋まり、聴覚障害者から進んでコミュニケーションを取ることができるようになった。 富士ソフト企画株式会社 神奈川県鎌倉市 業種及び主な事業内容 データ入力・HP制作・サーバー管理・名刺作成及び印刷全般・DM発送 雇用聴覚障害者数 14名うち重度9名 事業所の概要と障害者雇用の経緯 平成12年9月富士ソフトABC株式会社(現:富士ソフト株式会社)の特例子会社として認定された。様々な障害を持った社員が就業できる企業を目指し、富士ソフトグループのIT関連特例子会社として、社会貢献活動を推進している。 取り組みの経緯 @電話での依頼に対応することが難しい、A聴覚障害者以外のメンバーとのコミュニケーションが困難である、B業務の詳細が伝わりにくい、C地方部所の聴覚障害者が孤立している、Dコミュニケーションの問題により技術教育の実施が困難である等の問題があった。 主な改善内容と効果 【改善内容】@ メールによる依頼を徹底し、複数名で常時チェックすることとした。また、メールの内容は全員で共有できるようにした。A 聴覚障害者のみでメンバーを構成することとし、座席も1ヵ所に集中した。B メールやテキストエディタを使用して伝えることとした。C WEBテレビ会議システムを導入した。D 聴覚障害者のメンバーを一つの組織とし、その中にリーダー、サブリーダーを配置した。【効  果】@ 処理がスムーズになり、メンバー間のコミュニケーションが向上した。同時チェックにより見落としがほぼゼロになった。情報を共有することで業務の進捗管理、整理ができるようになった。A 一体感が生まれ、業務効率も向上した。B データとして残るため再確認が可能となり、各人が内容を把握できるようになった。C 地方部所の聴覚障害者とのリアルタイムコミュニケーション、手話を使用した会話が実現した。このことにより、地方部所の聴覚障害者のモチベーションが向上した。D OJTによるスキル教育を行うことが可能になり、新たに入社した聴覚障害者にもスキルを教授することができるようになった。 一正蒲鉾株式会社 新潟県新潟市 業種及び主な事業内容 食料品製造業 雇用聴覚障害者数 7名うち重度3名 事業所の概要と障害者雇用の経緯 創業は昭和40年であり、現在全国に工場、支店、営業所を持つ。平成15年社内清掃の外部委託を止め、清掃部門を新設し、積極的に障害者雇用に取り組んできた。ハローワークからの紹介、及び集団面接会への積極的参加により、重度障害者を含めた雇用を進め、現在清掃部門は、社内に評価される部門へと成長している。 取り組みの経緯 聴覚障害者にとって機械作業は危険であると判断していたことから、聴覚障害者の従事する職務内容は限定され、雇用の拡大が図られなかった。 主な改善内容と効果 【改善内容】 社内の職務を見直し、外部に委託していた清掃作業について、外部委託をやめて障害者雇用の新たな部署とした。【効  果】 雇用の場が広がり、職域が拡大された。社内全体の障害者雇用への意識も高まり、また経費面での効率化にもつながった。 北日本巻食品株式会社 新潟県新潟市 業種及び主な事業内容 食料品製造業 雇用聴覚障害者数 2名うち重度1名 事業所の概要と障害者雇用の経緯 株式会社ブルボングループに属し、昭和44年に旧巻町で創業を開始した。主に米菓を中心として、和菓子の製造を行っている。障害者雇用のきっかけは、@ハローワーク主催の障害者雇用支援フェアへの参加A学校訪問により、職場実習体験を実施し、卒業後に採用等である。 取り組みの経緯 初めて聴覚障害者を雇用するに当たって、社内の理解、コミュニケーション面の支援、人間関係等に不安があった。 主な改善内容と効果 【改善内容】@朝礼で社内に周知した。A 仕事中はマスクを着用し口話ができないため、メモポケットを携帯し、活用した。B 同じ工程の班長を育成係とし、作業場所が変わる場合、班長と同一の工程に配置した。その後聴覚障害者を新たに採用し、近くに配置した。【効  果】@社内への理解が浸透した。A 仕事中のコミュニケーションが円滑に取れるようになった。B 2名共安心感を持ち、スムーズに職場に溶け込むことができた。 NECトーキン株式会社 富山事業所 富山県入善町 業種及び主な事業内容 電気機械器具製造業(キャパシタ、プロードライザ、リチウムイオン電池電極)製造 雇用聴覚障害者数 3名うち重度3名 事業所の概要と障害者雇用の経緯 平成14年、富山日本電気株式会社との分割によりNECトーキン富山株式会社として設立、平成18年に親会社であったNECトーキン株式会社に統合・合併された。富山事業所はキャパシタ事業及びラミネート電池事業の開発生産基地として利益を創出し、NECトーキングループの一翼を担っている。また聴覚障害者の定着率は高く、全員長期勤続となっている。手話講習を開催する等、聴覚障害者とのコミュニケーション向上に努めている。 取り組みの経緯 作業指導、引継ぎ等をすべて筆談で行っていたため、確認事項がある場合には作業を停止させなければならず、即座に対応することが不可能であった。 主な改善内容と効果 【改善内容】@ 引継ぎ内容は、聴覚障害者用のチェック欄を設け、内容を理解しながらチェックを行うフォーマットへ変更した。A 聴覚障害者の作業工程に品質異常発生ランプを取り付けた。B 製品保管容器をライン別に識別化し、複雑な物の流れを色で明確化した。また、容器に流れの工程名を表示した。C 設備トラブル発生表示灯を設置した。【効  果】@ 引継ぎ内容が確実に伝達されることとなった。A 品質異常発生時に、情報収集及び処置を速やかにできるようになった。B 製品の混入が激減すると共に、生産性が向上した。C 設備トラブルによる停止時間が削減された。 上記の取り組みにより情報伝達が速くなると共に筆談にゆとりが生まれ、コミュニケーションが社内全体へ広がった。また、「見える化」により聴覚障害者からの情報伝達が速くなり、指導者が他の工程で安心して作業に従事することが可能となった。 加賀東芝エレクトロニクス株式会社 石川県能美市 業種及び主な事業内容 個別半導体の製造及び販売 雇用聴覚障害者数 8名うち重度8名 事業所の概要と障害者雇用の経緯 電気製品の回路基板に数多く使われるトランジスタ、ダイオード、ICといった個別半導体を製造する東芝グループの製造会社である。主としてハローワークからの紹介により障害者の雇用を行っている。 取り組みの経緯 聴覚障害者の雇用当初からコミュニケーションの支援に取り組み、業務上のコミュニケーションは問題なく進められている。しかし職場がクリーンルーム環境のため紙の貼り出し等が制限されていることから、業務に直接関係のない話については、他の従業員と比較して聴覚障害者に伝わりにくい状況であった。 主な改善内容と効果 【改善内容】 情報提供用のパソコンを職場に設置した。【効  果】 社内に発信されている各種情報をタイミングよく知ることができるようになり、会社への一体感が高まった。また、メールを使用することで、より密度の高いコミュニケーションが可能となった。 未来工業株式会社 岐阜県輪之内町 業種及び主な事業内容 電設資材の総合メーカー雇用聴覚障害者数4名うち重度4名 事業所の概要と障害者雇用の経緯 電設資材の総合メーカーとして、電気配線に使用する設備資材を独創的なアイデアを付加した商品で提供している。また、定番商品はもとより、特別注文品についても即時に提供する態勢を整えている。今日では、OAフロア(電気配線可能な床材)や給水給湯関係の設備資材を提供している。障害者雇用については、昭和58年に聴覚障害者を雇用している。障害者の状況に配慮しつつ、健常者と同様の処遇を行うことを基本的な考えとしている。 取り組みの経緯 従来、コミュニケーションの手段として、筆談や手話を用いていたが、時間がかかったり、完全には伝わらず、業務において聴覚障害者が自主的に動くことができない場面も見られた。さらに、職務内容が限定されていたり、機械の稼働状況が目視で確認できない等の状況も見られた。 主な改善内容と効果 【改善内容】@ 健聴者が社外の手話講習会、あるいは聴覚障害者を講師とした手話講習会に参加した。A 社内LANを設け、職場に端末を設置した。B FAXに、着信時に点滅する回転灯を設置した。C 口話が可能な聴覚障害者を、これまで聴覚障害者が配属されたことのない、社外の人と接触する職場へ配属した。D 切断、切削の機械に、異常時に点滅する回転灯を設置した。【効  果】@ 健聴者が日常会話程度の手話ができるようになり、コミュニケーションがスムーズに取れるようになった。A 、B業務上必要な情報がスムーズに伝わるようになり、業務に対する自主性や判断力が高まった。C 最初は戸惑いがあったが、社内外の障害に対する理解も促進され、職域拡大が図られた。D 安全に対する意識が高まり、未然に災害を防止することができるようになった。 岐阜信用金庫 岐阜県岐阜市 業種及び主な事業内容 金融業 雇用聴覚障害者数4名うち重度4名 事業所の概要と障害者雇用の経緯 地域の皆さまに「安心感」と「満足感」をお届けし、信頼され親しまれることをモットーに、質の高い地域密着型総合金融サービスの提供に努めている。聴覚障害者については、平成5年から新卒者として採用が始まり、その後岐阜聾学校卒業者を中心に学校と連携を深めつつこれまでに7名を採用し、現在は4名が在職している。聴覚障害者4名のうち、3名は事務集中センターに勤務し為替・公金事務を担当、1名は人事部に勤務し厚生関係事務・経費支払事務を担当している。 取り組みの経緯 コミュニケーションの不足、また、雇用の長期化に伴い、仕事に対する意欲停滞やマンネリ化が生まれていた。 主な改善内容と効果 【改善内容】@ 口話に加えて筆談を用いることとし、さらには自主的に手話を覚える人が増えた。A 新規に聴覚障害者を雇用し、その者にOJT教育を行った。【効  果】@ コミュニケーションが円滑に図られるようになった。A OJT教育を円滑に行う工夫をする中で、職場の結束力が強まり、組織が活性化した。また、聴覚障害者とその他の従業員との間のコミュニケーションが一層深まり、職場の雰囲気に好影響を与えた。 株式会社レンティック中部 静岡県浜松市 業種及び主な事業内容 リネンサプライ業/病院・ホテル関係のリネンサプライ 雇用聴覚障害者数 1名うち重度1名 事業所の概要と障害者雇用の経緯 昭和27年6月浜松市山下町にて、半場ふとん店として創業。製綿工場開設を経て昭和30年有限会社中部リネンサプライを設立し、リネンサプライ業に本格的に参入した。一方、リネン業とは別にレンタル業、調剤薬局部門も開設、平成17年6月株式会社レンティック中部に社名を変更、平成19年3月に浜松工場を大人見に移転した。障害者雇用については昭和54年頃より開始し、聴覚障害者は平成19年3月布団工場に雇用した。 取り組みの経緯 作業の進め方や職場のマナーが理解しきれず、作業や人間関係に支障が出ている者がいたが、コミュニケーションがうまく取れず、どのように指導したらよいかわからなかった。 主な改善内容と効果 【改善内容】 ジョブコーチによる支援を利用し、ジョブコーチの助言のもと、マニュアルの整備、テープや段差による作業範囲や危険範囲の提示等、視覚的にわかりやすい工夫を取り入れながら、以下の点の改善に取り組んだ。@コミュニケーションAマナーB作業指示C作業環境D朝礼 加えて、社外の人も含めた聴覚障害者の人的サポート体制の強化にも取り組んでいる。 【効  果】 作業の進め方や職場のマナーへの理解が深まったことにより、作業が円滑に進むようになり、人間関係も改善した。また、一連の取り組みを通して、社内の障害者に対する理解が深まり、自然な支援体制が構築された。 アスモ株式会社 静岡県湖西市 業種及び主な事業内容 電気機械器具製造/自動車用各種小型モータの製造・販売 雇用聴覚障害者数 43名うち重度35名 事業所の概要と障害者雇用の経緯 昭和54年に設立し、自動車及びOA機器用等の小型モータシステム製品の開発・製造・販売を行っており、小型モータのシェアは国内では約60%、全世界では約25%を占めている。雇用管理の考え方は、「障害者と健常者が一緒に就労できる職場運営を行うこと」を基本としている。平成2年より障害者の定着対策に本格的な取り組みを開始し、配属先スタッフを対象とした研修会の開催、外部機関主催の各種講習会へ参加し、知識の向上等に努めてきた。 取り組みの経緯 聴覚障害者の業務内容を変更するにあたり、次のような問題点が生じた。@設備や品質に異常が発生した場合、シグナルタワーと警報により伝達する仕組みになっているため、情報伝達が遅くなり設備稼働率の低下が懸念される。A設備背面では設備の状態がわかりにくく、安全が確保できにくい状態である。B高度な知識・技能が要求される。 主な改善内容と効果 【改善内容】@ 聴覚障害者がバイブレーターを携帯し、異常が発生した場合にはバイブレーターが振動するようにした。A 設備の背面に設備運転ランプ・非常停止スイッチを設置した。B 聴覚障害者が社内検定を受講することを奨励した。【効  果】@ 異常を迅速に把握できるようになった。A 設備の背面でも設備停止状態が把握できるようになり、安全が確保された。B さらなるスキルアップを実現できた。 株式会社レアールパスコベーカリーズ 愛知県名古屋市 業種及び主な事業内容 パン・菓子の製造・販売 雇用聴覚障害者数 8名うち重度3名 事業所の概要と障害者雇用の経緯 百貨店・スーパー・駅構内・テナントビルを中心に、焼き立てパンの店舗を全国で134店運営している。障害者雇用については、東京地区4名、名古屋地区10名、大阪地区4名を雇用しており、その中で聴覚障害者は東京地区2名、名古屋地区6名計8名となっている。 取り組みの経緯 聴覚障害者を雇用するにあたり、社員全員がコミュニケーションを円滑に図ることができるか、また仕事にうまく対応できるか不安感を持っていた。 主な改善内容と効果 【改善内容】@入社前に2週間のインターンシップ(就業体験)を実施した。A 仕事の流れが一目で確認できるように、パンを作る順番、使用する原料一覧表、分割重量等を厨房内に掲示した。また、重要な事項はお絵かきボードに記入して伝えるようにした。B お客様との会話を心配して厨房内だけで作業を行っていたが、売り場に陳列する作業を担当することとした。【効  果】@ 入社にあたり、全社員が聴覚障害者とコミュニケーションを取るための工夫や心がまえを持つことができた。A 仕事を正確に伝えることができ、ミスを少なくすることができた。B 慣れるにつれてお客様とのふれあいを恐れず品出しを行うことができるようになる等、職域拡大が図られた。 中電ウイング株式会社 愛知県名古屋市 業種及び主な事業内容 デザイン・印刷・製本、ノベルティ商品の販売・箱詰・包装、花栽培・販売・花壇保守等 雇用聴覚障害者数 4名うち重度3名 事業所の概要と障害者雇用の経緯 平成13年4月、中部電力株式会社の経営理念の一つである「社会との共生」の具体化として、雇用が十分に進んでいなかった重度身体障害者と知的障害者の雇用促進を目的に設立された、中部電力100%出資の特例子会社である。「社会貢献とビジネスの両立」を目指し、共に働く障害者と健常者が心と力を合わせて、夢に挑みながら共に成長し、人と環境に優しい、地域社会に貢献できる会社を築こうとしている。業務の順次拡大にあわせて、徐々に雇用を拡大している。 取り組みの経緯 印刷工場に勤務する3名のスキルアップにあたり、以下の課題が見られた。@各人の責任の所在が不明確であり、品質管理が不十分である。Aトラブル発生時に工場メンバー全員参加の検討を行っておらず、意識の共有が十分にできていない。B各人が何を目標に、どの水準を目指すのかが不明確であり、モチベーションを高く維持するのが難しい。 主な改善内容と効果 【改善内容】@ 各印刷機器に機長制度を導入し、当該機器のメンテナンス及び印刷業務についてメンバー自身で責任を持って取り組むようにした。A 印刷不具合でトラブルが発生した場合は、メンバー主体で全員参加の検討を行い、原因究明・再発防止策立案・検証を行った。B オフセット印刷作業2級(都道府県知事が実施する技能検定)にチャレンジすることとした。【効  果】@ 各人の納期・品質管理能力を向上することができた。A危機管理意識の向上を図ることができた。B 技能検定に合格したことにより、各人が自信を持ち、業務に対するモチベーションを向上することができた。 パナソニック電工滋賀株式会社 滋賀県彦根市 業種及び主な事業内容 電気器具製造業/電子回路の製造、販売 雇用聴覚障害者数 7名うち重度6名 事業所の概要と障害者雇用の経緯 重度障害者多数雇用事業所として、働く意志と能力を持ちながら適職や職場環境に恵まれない人々に安定した環境と雇用を確保・促進するために、滋賀県と彦根市及び松下電工株式会社の第3セクター方式によって設立され、平成8年に特例子会社に認定された。明るい環境の下で生産活動に励み、快適な職場生活が送れるよう十分な配慮がされており、障害者の職業的自立を支えるモデル事業所として、また地域社会に貢献できる会社を目指している。 取り組みの経緯 品質の向上のために、技能レベルの向上が必要とされていたが、トレーニングの機会がなかなか持てず、また技能が客観的に評価される機会もなかったため、モチベーションも上がらない状況であった。あわせて、周囲とのコミュニケーション不足も見られた。 主な改善内容と効果 【改善内容】@ 国家技能検定の受験及び競技大会への参加を奨励し、参加の2ヵ月前から、毎週土曜日を課題練習日と定め、手話通訳と共にトレーニングを繰り返すこととした。A 毎日朝礼の最後に、社員全員で手話を習得する時間を設けた。B 会社運営検討会、家族懇談会、親睦会、安全衛生委員会等の各種会合の参加を奨励した。 【効  果】@ トレーニングの機会の拡大や技能向上が図られ、モチベーションの向上にもつながった。A 手話ができる人が増え、コミュニケーションをスムーズに取ることができるようになった。B 周囲とのコミュニケーションを取る機会が増えると共に、積極的に参加する姿勢や、疲労・ストレスの軽減にもつながっている。 電気硝子ユニバーサポート株式会社 滋賀県大津市 業種及び主な事業内容 その他のサービス業(警備、ビルメンテナンス、環境プラント管理、印刷 他) 雇用聴覚障害者数 7名うち重度6名 事業所の概要と障害者雇用の経緯 障害者のための職場を開発し、親会社である日本電気硝子株式会社と一体で障害者雇用率を達成するために設立され、今年で28周年を迎えた特例子会社。事業内容は、親会社の周辺業務である警備、ビルメンテナンス、環境プラント管理、印刷等である。これまでは、身体障害者の採用が多かったが、最近では知的障害者や精神障害者の採用にも力を注いでおり、現在の内訳は身体障害者47名、知的障害者18名、精神障害者4名となっている。 取り組みの経緯 事業再編が余儀なくされる中、障害者雇用の促進と定着化を図る必要があった。 主な改善内容と効果 【改善内容】@ 障害者雇用についての啓発活動、個別相談・職場懇談会、作業環境の整備等を実施した。A オリジナル手話テキストを作成し、従業員全員に入門講習を実施した。また、各事業所から選任された指導担当者に対して、1年間手話講習を実施した。さらに、手話講習会を終了した指導担当者が講師となって、各事業所で手話講習会を実施した。【効  果】 聴覚障害に対する理解が深まり、簡単な日常会話の手話ができる従業員が増え、聴覚障害の有無にかかわらず、職場への満足度が高まった。 株式会社ワコール 京都府京都市 業種及び主な事業内容 インナーウェア、アウターウェア、スポーツウェア、その他の繊維製品及び関連製品の製造、卸売販売及び一部製品の消費者への直接販売を主な事業としている 雇用聴覚障害者数 34名うち重度23名 事業所の概要と障害者雇用の経緯 半世紀以上にわたり日本女性の思いと共に歩んできた事業領域を〈ボディデザイニングビジネス〉と定め、「身体」と「こころ」を総称して「ボディ」ととらえ、「美」「快適」「健康」という三つの価値を提供している。京都市南区にある株式会社ワコールホールディングス及び株式会社ワコールの本社ビルにおいては、当社全体の障害者従業員58名の中の35%が就労している。 取り組みの経緯 社内放送で連絡している内容について、聴覚障害者に直接関係ないものは個別に伝えていなかったり、食堂において注文する際に、食い違いが見られる等、コミュニケーション面の支援体制に不足が見られた。また、様々なお客様に対応するため、店頭販売員が手話を理解する必要があった。 主な改善内容と効果 月に一度本社内の聴覚障害者が全員出席して、仕事・会社を通じて生きがいや達成感を感じることをテーマとした聴覚障害者だけの「デフ・ハートフル活動」を実施している。【改善内容】@ 緊急時や日常の社内放送の内容を、パソコンやPHSで全社員に一斉に通達した。A 食堂内に、注文カードや、ポールやテープによる目印を設置した。B 店頭販売員研修会に手話講習を導入すると共に、店頭販売員の手帳に手話や手話を用いた接客マニュアルを記載した。【効  果】 コミュニケーション面の支援体制が強化され、社員、お客様共に満足する職場づくりにつながった。 日新電機株式会社 京都府京都市 業種及び主な事業内容 電力流通システム、太陽光発電システム、各種制御システム、電子線照射装置、半導体製造装置、薄膜コーティング装置等の製造及び販売 雇用聴覚障害者数 12名うち重度10名 事業所の概要と障害者雇用の経緯 創立90年を迎えた京都の老舗電気機器メーカーであり、「人と技術の未来をひらく」を合言葉に、人や環境にやさしい社会の実現を目指して、独創的な技術により、社会と産業の基盤を支えることを使命とし、「誠実、信頼、永いお付き合い」を行動原点に、お客様に満足いただける製品を提供している。電気機器の製造職場を中心に、主に聴覚障害者の雇用を行ってきた。 取り組みの経緯 社員の能力養成や変化に強い組織の体質づくりのため、多能化を目指した取り組みを進めているが、聴覚障害者については、本人の意思を聞く機会が乏しかったこと等から、業務が固定化されがちであった。 主な改善内容と効果 【改善内容】@ 聴覚障害者と面談を行い、取り組んでみたい仕事や伸ばしたい能力について意向を聞いた。A 面識のない相手とコミュニケーションを取る際には上司や同僚が大半を代行していたが、上司や同僚は通訳として介在する形にとどめ、基本的には聴覚障害者が直接相手と意見や疑問等についてやり取りをするようにした。【効  果】@ 面談により、作業マニュアルの電子化という新たな仕事にチャレンジし、意欲的に成し遂げる等、職域拡大につながった。A 自分で考えて対応するという主体的な関わりを通じて、仕事に対する能力が磨かれ、コミュニケーションの力もレベルアップした。 オムロン京都太陽株式会社 京都府京都市 業種及び主な事業内容 電子機器(ソケット・センサ・電源装置)の生産・販売 雇用聴覚障害者数 1名うち重度1名 事業所の概要と障害者雇用の経緯 オムロン株式会社の2番目の特例子会社として、社会福祉法人太陽の家の京都事業本部と共に昭和61年4月に創業した。オムロン京都太陽の従業員が主に生産管理、生産技術等の業務を担当し、社会福祉法人太陽の家の福祉工場及び授産所が生産を担当しており、創業以来「障害者が働きやすい環境づくり」を目指した事業運営を展開している。 取り組みの経緯 聴覚障害者とコミュニケーションを十分図ることができず、誤解が生じることがあった。また、一番多く用いていたコミュニケーション手段は筆談だったが、時間がかかる等の課題を感じていた。 主な改善内容と効果 【改善内容】@ 生産関連業務の教育や実績報告において、パワーポイントで作成した資料を用いたプレゼンテーションを導入した。A パソコンを活用し、対話方式で文章を打ちながら会話ができるようにした。B 会社の携帯電話のアドレスを周知した。C 作業要領書にイラストや写真をふんだんに盛り込み、電子化した。D 作業ラインに部品挿入忘れ防止ランプを取り付けた。【効  果】@ 業務内容の理解が深まると共に、パソコンで資料を作成することにより、パソコン操作のスキルアップにもつながった。A 短時間で確実にコミュニケーションが取れるようになった。B 外出中にも連絡が取れるようになった。また、緊急時にも対応が可能になった。C 作業の正確性が向上した。Dミスの軽減、品質の向上につながった。 和田精密歯研株式会社 大阪府大阪市 業種及び主な事業内容 歯科医師から歯型と指示を受けて義歯、ブリッジ、前装冠、歯科矯正装置等を製造・販売する。 雇用聴覚障害者数 26名うち重度24名 事業所の概要と障害者雇用の経緯 全国に20ヵ所の義歯等の製造拠点を持つ国内最大の歯科技工会社であり、今年で創業50周年を迎えた。製造拠点のうち、7ヵ所の事業所で聴覚障害者の歯科技工士26名が勤務している。昭和37年に大阪府立堺聾学校、昭和46年に筑波大学附属聾学校に聴覚障害者のための歯科技工士養成コースが設置されたことに伴い、手技術の歯科技工に障害の有無は関係なく、個人の能力の問題であるとの信念のもとに、この両校の卒業生を採用してきた。他の障害者も8名採用し、一般事務に従事している。 取り組みの経緯 障害特性が十分把握できず、作業指示や必要な情報が十分に伝わらず、聴覚障害者、周囲の従業員、双方に戸惑いが大きかった。 主な改善内容と効果 【改善内容】@ 聴覚障害者を担当する者を決めて手話サークルに通うようにし、また、聴覚障害者が卒業したろう学校と頻繁に連絡を取り合い、個別の状況を把握するように努めた。A 伝えたいことを予めわかりやすくまとめたり、正面から口の動きがわかるように話すように努めた。また、重要なことは復唱や筆談で内容を確認することとした。B 情報量、内容に健聴者と差をつけないように、朝礼後に内容を回覧する、社内報を個人に配布する、仕事の実績を共有して見られるようにする、等の取り組みを行った。C社内で歯科技工の競技大会を開催した。【効  果】 聴覚障害者とその他の従業員の双方の理解が高まり、戸惑いが解消し、職場定着率の向上、技能の向上、生産性の向上につながった。 シャープ特選工業株式会社 大阪府大阪市 業種及び主な事業内容 電子デバイス製造(液晶バックライト組立、レーザチップ分割・検査、携帯電話修理、翻訳、印刷・製本、データ電子化) 雇用聴覚障害者数 33名うち重度31名 事業所の概要と障害者雇用の経緯 昭和25年に障害者の雇用を創出し自立を支援するため、合資会社「特選金属工場」が設立された。昭和38年には「早川特選金属工場」に改称し、昭和52年に日本で初めて特例子会社の認定を受けた。昭和57年に現在の「シャープ特選工業株式会社」として、活動を開始した。設立以来58年にわたりシャープのエレクトロニクス事業の発展に合わせ業務を拡大しており、現在では最先端のデジタル機器(液晶ディスプレイ・DVD)等の部品の生産を行っている。 取り組みの経緯 以下の課題が見られていた。@昼食時のテレビ内容を十分に理解することができない。A仕事上の問題等を打ち明けられず悩んでいる者がいる。B筆談では中途半端なやり取りになり、聴覚障害者と健聴者双方に不満が残りストレスになっている。C作業所がクリーンルームのため緊急連絡を即座に伝えることが困難である。D社内の連絡や指導等は各部署で行っているが、全員に十分に伝わらないことがある。 主な改善内容と効果 【改善内容】@大型テレビと文字放送設備を設置した。A 社長とメールで直接話ができる「社長へのホットメール」を設置した。B 紙を使わず何度でも筆談できるかきポン、チョークレスボードを購入した。CLED文字表示器を設置した。D 玄関ホールに大型液晶インフォメーションディスプレイを設置した。【効  果】@ 昼食時にテレビ観賞ができるようになり、ストレス発散につながった。A 仕事上の問題等をメールで社長に打ち明け、解決することができた。B 作業指導事項や連絡等、気軽に書くことができるようになり、作業者同士のトラブルが減少した。C 災害や緊急連絡を、すぐに知らせることが可能になった。D 全員が必ず通る場所に設置したことで、情報がタイムリーに伝わるようになり、知識の向上につながった。 株式会社ニッセイ・ニュークリエーション 大阪府大阪市 業種及び主な事業内容 印刷・製本及び一般事務代行 雇用聴覚障害者数 39名うち重度39名 事業所の概要と障害者雇用の経緯 日本生命保険相互会社が平成5年4月に全額出資で設立した重度障害者多数雇用事業所で、平成6年3月に保険業界で初めて特例子会社認定を受けた。全館バリアフリービルでの一拠点経営に拘り独自の企業文化を築いた。障害者雇用については、重度障害者を中心とした4月1日の定例採用を原則としている。人材育成に注力し、管理者登用にも積極的である。社員の自主性を重んじた独自の11の委員会制度が会社機能を縦横に担っている。これらの取り組みの結果、定着率96%を維持しており、将来的にもさらなる雇用拡大を構想中である。 取り組みの経緯 @聴覚障害者の文章理解力や作成力が不足し、ミスにつながることがあった。A聴覚障害者と健聴者のコミュニケーションが不足していた。B聴覚障害者の組織管理者の育成が必要だった。 主な改善内容と効果 【改善内容】@ 読書量の増大を推進すると共に、業務マニュアルのビジュアル化を図った。また、聴覚障害者の新人に対して聴覚障害者の先輩をアドバイザーとして配置したり、各種能力開発プログラムを実施する等の取り組みを行った。A 手話教室を実施すると共に、手話等級認定制度を導入した。また、専門用語をまとめた手話ハンドブックを作成した。B 日常の人事管理、教育研修、目標面談等を通じ、リーダー資質を有する聴覚障害者の発掘・育成に努めた。【効  果】@業務に対する理解が進み、ミスの数が減少した。A 手話の使用が社内に普及し、スムーズなコミュニケーションが図られるようになり、安定した職場定着につながった。B 聴覚障害者のキャリアアップが図られ、組織管理者が輩出された。 住友精密工業株式会社 兵庫県尼崎市 業種及び主な事業内容 輸送用機械器具製造業(航空宇宙機器・熱交換器・オゾナイザー・半導体製造装置等の製造&営業) 雇用聴覚障害者数 10名うち重度10名 事業所の概要と障害者雇用の経緯 主に航空宇宙機器・熱交換器の製造(少量多品種のため、人の手で加工・組み立て・検査をする作業が多い)を行っている。ろう学校の進路指導の先生からの電話があったことがきっかけとなり、障害者雇用を開始した。聴覚障害者の特性を活かせる業務を積極的に発掘している。 取り組みの経緯 障害者の雇用は中高年が主体で、作業内容も限られていた。また、障害者の受け入れに対する理解が不十分であった。 主な改善内容と効果 【改善内容】@ 職場実習やマンツーマン指導等を導入した。A ろう学校や、聴覚障害者を長期採用している他社を見学し、職務を検討する際の参考にした。B 全職場の作業内容を熟知した担当者が、聴覚障害者の特性を活かすことができる業務を検討した。【効  果】@ 入社予定者と受け入れ予定職場の双方の理解が深まり、スムーズな雇い入れにつながった。A 製造現場への職域拡大が図られた。B 社内において聴覚障害への理解が深まり、職場の活性化につながった。また、聴覚障害者とその他の従業員がお互いにサポートしあうやさしさや心遣いがこれまで以上に生まれた。 日本イーライリリー株式会社 兵庫県神戸市 業種及び主な事業内容 医療用医薬品の輸入製造販売雇用聴覚障害者数 4名うち重度3名 事業所の概要と障害者雇用の経緯 米国製薬会社イーライリリーの日本法人である。イーライリリーの医療用医薬品は、世界143カ国で人々の生命とQOL(生活の質)の向上に貢献している。昭和61年から本格的な営業活動を開始し、中枢神経領域、癌領域、内分泌・代謝・骨領域の画期的な治療薬を供給している。急速な企業規模拡大に伴い、常用雇用従業員数も1800名に達し、同時に障害者雇用も積極的に進めている。 取り組みの経緯 聴覚障害者は会社の業績報告や社内外顧客から特別講演や体験談を聞く「コミュニケーション会議」に対して参加意欲が高まらず、欠席しがちであった。また、自分以外の障害者の情報が伝わらず、寂しさを感じることもあった。 主な改善内容と効果 【改善内容】 「コミュニケーション会議」に手話通訳者を委嘱した。【効  果】@ 手話通訳者を委嘱したことにより「コミュニケーション会議」に参加が可能となり、リアルタイムに情報を得られるようになった。A 会議に出席することにより、同じ障害を持つ社員に出会えて相談できる仲間がいることを心強く感じ、会社に対する信頼感の向上につながった。 シバタ工業株式会社 兵庫県明石市 業種及び主な事業内容 工業用ゴム製品の設計、製造、販売 雇用聴覚障害者数 5名うち重度3名 事業所の概要と障害者雇用の経緯 大正12年の創業以来、ゴム会社として80年以上の歴史を重ねてきた。伝統あるゴム長靴、大型工業製品、電子機器用シート等、幅広い事業を展開している。また「ゴム+α」で、環境、安全、防災に役立つハイブリッド商品の開発に力を入れている。アットホームな社風で、11名の障害者と健常者は同じ職場で分け隔てなく働いている。従業員が安全で気持ち良く働ける環境づくりが基本である。 取り組みの経緯 従来、障害者の職域は主に製造現場であったが、人材に対するニーズが労働力からPC技術等のデスクワークへ移行、拡大してきた。当社のホームページの全面刷新の計画が持ち上がったが、膨大な情報処理量に対するマンパワーの不足、最新ソフトウェアへの移行作業という技術的な壁に直面し、苦慮していた。 主な改善内容と効果 【改善内容】 すでにパソコンの基本操作をマスターしていた聴覚障害者を、製造現場から商品企画へ配置転換した。【効  果】@ データ分析や最新ソフトウェアの導入テスト等、スキルアップが図られた。またホームページ制作の経験と知識を活かし、企画意図へ迅速な理解、有効な提案ができるようになる等、パソコン技能以外のスキルアップも図られた。A ホームページのサイトそのものが活性化したため、飛躍的にアクセス数が向上した。 パナソニック株式会社AVCネットワーク社ITプロダクツ事業部 神戸兵庫県神戸市 業種及び主な事業内容 ノートパソコン及びその周辺機器の製造 雇用聴覚障害者数 5名うち重度5名 事業所の概要と障害者雇用の経緯 情報機器関連の生産拠点としての使命を担い、ノートパソコンを中心とした事業を推進する中、開発から製造・販売そしてサービス・サポートまで一貫した体制で“Made in JAPAN”で対応している。工場設立当初より聴覚障害者を中心に雇用し、障害者の雇用促進と職域の拡大及び職場定着の促進を図ると同時に、スキルアップ、スキルチェンジの実践を行っている。 取り組みの経緯 工場におけるモノづくりが海外への生産シフト、請負化の推進等大きく変化する中で、従業員の資質の変革も求められていた。聴覚障害者も例外ではなく、スキルアップ・スキルチェンジを求められていた。 主な改善内容と効果 【改善内容】 聴覚障害者のキャリアアップを図る方策として、1名に対して、「電子機器組立て」のエキスパートとしての養成を図った。【効  果】@ 国家検定1級に合格し、平成20年度PAVC社モノづくり競技大会において金賞を受賞した。A 工場における聴覚障害者のリーダー的役割として、業務及びスキルアップにチャレンジする風土の醸成に貢献した。B 工場の活性化にもつながった。 株式会社エス・アイ 兵庫県姫路市 業種及び主な事業内容 データ入力加工業務(総務・人事・マーケティング、業務単位のアウトソーシング) 雇用聴覚障害者数 4名うち重度4名 事業所の概要と障害者雇用の経緯 求人を出してもなかなか人材が集まらず苦慮していた時に、ハローワークより聴覚障害者の雇用を薦められた。試験的に1名を雇い入れ、実際に障害者に作業を行ってもらうことにより、作業が十分できることを確認した。その後、さらに何名かの障害者を雇用することとなった。 取り組みの経緯 作業内容や連絡事項について、毎朝の朝礼で全体説明を行っていたが、聴覚障害者には筆談等で個別に説明していた。また、自由出勤制により出勤時間が異なるため、朝礼に参加しない人に対しては、健聴者も含め、出社後に連絡事項等を個別に伝える必要があった。さらに、前日や当日にならないと仕事量が把握できない場合があり、個別に電話連絡を取らなければならないこともあった。 主な改善内容と効果 【改善内容】@ 当日の作業内容や連絡事項等について、プロジェクターを利用し、スクリーンに映し出すようにした。また、スクリーンに映し出した内容はプリントアウトしてファイルに綴じるようにした。A 仕事の内容について、全社員の携帯電話へ一斉にメールを配信するようにした。【効  果】 聴覚障害者も含め、従業員全員が作業状況や連絡事項等必要な情報をタイムリーに共有することができるようになった。 特別養護老人ホーム淡路ふくろうの郷 兵庫県洲本市 業種及び主な事業内容 介護事業(特別養護老人ホーム) 雇用聴覚障害者数 9名うち重度9名 事業所の概要と障害者雇用の経緯 全国で3番目の聴覚障害者に専門的に対応できる特別養護老人ホームとして、平成18年4月に定員60名でオープンした。聴覚障害の高齢者が快適に生活できるように、ハード面、ソフト面で各種の配慮を行っているのが特徴である。とりわけ、施設建設の主体となった聴覚障害者を多数採用したことがあげられる。同じ障害を持つ者同士のピアカウンセリングは、入所者の処遇の向上を考える上では、必要不可欠である。 取り組みの経緯 設備等のハード面での支援は一定のものが整備できていたが、職場での打ち合わせでは十分な意思疎通が図れず、聴覚障害者が意見を出しにくかった。また、その他の従業員同士が日常会話で手話を用いない場合は、聴覚障害者に疎外感があった。 主な改善内容と効果 【改善内容】 聴覚障害者が意見交換を行う「デフの会」を毎月1回開くこととした。【効  果】@ 自分達の力で職場を変えるために主体的に情報を発信していこうという意識が高まり、毎月の職員全体会議において、日常業務の中で必要な手話の講習を自らが講師となって行うようになった。A 社内において、聴覚障害者がいる場では誰もが安心できるように手話を使おうという雰囲気が高まった。B市の手話講習会に参加する職員もでてきた。C @からBのように職場が変化したことによって、聴覚障害者の自信や仕事に対する意欲向上につながった。 YC川西北部・YC清和台 兵庫県川西市 業種及び主な事業内容 読売新聞の販売、配達 雇用聴覚障害者数 8名うち重度7名 事業所の概要と障害者雇用の経緯 YC川西北部で平成18年度に新卒の聴覚障害者を雇用し、その後YC清和台でも聴覚障害者を雇用した。今春、最初に入店した聴覚障害者を他店へ派遣した。現在、聴覚障害者8名の大半が、主に折込・配達業務を行っている。※YCは読売センターの略である。 取り組みの経緯 仕事の内容の理解やビジネスマナーが不足する傾向が見られた。 主な改善内容と効果 【改善内容】 ビジネスマナーや仕事の基本的ルールの研修を専門的に行う人材派遣会社を設立。派遣会社において、当社と密な連携のもと、手話やわかりやすいテキストを活用しながら集中的に研修を行い、研修後のフォローアップも行った。【効  果】@ 仕事の流れを理解し、一つひとつの業務についてポイントを整理できるようになった。あわせて、自主性も身につき、スケジュール管理もできるようになった。A周囲への気配りができるようになった。 トットリレッキス工業株式会社 鳥取県大山町 業種及び主な事業内容 パイプねじ切り機用刃物(チェーザー)製造 雇用聴覚障害者数 3名うち重度3名 事業所の概要と障害者雇用の経緯 平成8年12月に大山町(旧名和町)の誘致企業として、親会社であるレッキス工業株式会社の創業理念である「お客様、社員、会社の三者の理」の共存共栄の精神を企業ポリシーとし、配管用工具刃物機器製造業を創業した。設立当時、親会社から出向者14名(うち聴覚障害者8名)の作業応援、指導で行っていたが、親会社の昭和13年からの積極的な障害者雇用の姿勢を受け継ぎ、現在は従業員18名(うち重度聴覚障害者3名)を雇用している。 取り組みの経緯 上司の指示内容を理解できず、仕事中に不安になったり、心配事があっても相談できないことがあった。また、朝礼時は従業員が手話により内容を伝えていたが、連絡事項や諸注意が十分に理解できないことがあった。 主な改善内容と効果 【改善内容】@ 地域障害者職業センターと聴覚障害者との間で、手話通訳者を交え2ヵ月に1回個別相談を行った。相談の後に地域障害者職業センター、手話通訳者、当社との間で問題点等を検討し、改善を行った。A 朝礼後、連絡事項はホワイトボードに記載することとした。【効  果】@障害者の抱えている不安・疑問等が軽減した。A連絡内容を十分に理解できるようになった。 マツダ株式会社 広島県府中町 業種及び主な事業内容 輸送用機械器具製造 乗用車・トラックの製造、販売等 雇用聴覚障害者数 128名うち重度118名 事業所の概要と障害者雇用の経緯 イ等に生産拠点を持ち、年間120万台強生産する88年の歴史を持つ自動車メーカーである。昭和55年より多くの聴覚障害者が健聴者と共に変速機組立ラインやエンジン組立ラインで活躍している。配属先部門と人事部門が一体になり、働き易い職場環境づくりを推進し、事務技術部門も含めて採用の拡大に取り組んでいる。 取り組みの経緯 音による警報の検知等が困難であることから、対応工程が限定され技能向上や職域拡大が進まなかったり、作業の正確性にも不安が残されていた。また、紙とペンを使用した筆談は不便な場合があった。 主な改善内容と効果 【改善内容】@ 機械装置の異常警報、作業確認等についてパトランプを設置する等、視認性を重視した環境を整備した。A マグネットで文字がON、OFFするペン付伝言板を使用することとした。また、職場における改善策と解決策をいつでも書き込める改善アイテム表を貼り出した。【効  果】@ 聴覚障害者が異常警報等を検知確認できるようになり、技能や正確性の向上、及び職域拡大につながった。A コミュニケーションが取りやすくなった。 以上の改善活動を全員参加型で行ったことにより、誰が行っても品質が保証されるシンプルな工程改善につながり、さらに職域拡大に至った。 有限会社リベルタス興産 山口県宇部市 業種及び主な事業内容 印刷・デジタル化業務、清掃業務 雇用聴覚障害者数 7名うち重度7名 事業所の概要と障害者雇用の経緯 宇部興産株式会社の特例子会社として平成3年に設立された。重度障害者多数雇用事業所の認定も受ける。平成15年に知的障害者を主体とした清掃業務を開始した。社名の「リベルタス」はラテン語で「解放」を表す。障害があるから特別なのではなく、障害があって当たり前、そして障害は才能を発揮するさまたげにならないとの観点から、企業活動を通じて社会全体への心豊かな資産の提供を目指している。「ハートフルマーク」の活用推進や地域活動にも積極的に取り組んでいる。 取り組みの経緯 専門用語の正しい読み方と表現方法が聴覚障害者の中で統一されていなかった。手話通訳が不在の場合の緊急時の対応に不便を感じていた。パソコン技術指導の際に、画面と手話通訳の両方を見る必要があり、疲労が大きかった。 主な改善内容と効果 【改善内容】@ 「会社で使う手話」作成委員会を立ち上げ、定例の手話勉強会において全社に広げた。A2人目の手話通訳者を採用した。B 他のパソコンから作業中のパソコンにアクセスできるバーチャルネットワークコンピューティングを活用した。【効  果】@ 専門用語の使い方の間違いによる行き違いを防ぐことができるようになった。A 会議や研修等における情報保障が一層図られた。また、緊急時にも対応できるようになり、本人の安心感につながった。B 画面に集中して作業を覚えることができるようになり、負担が軽減された。 株式会社斉藤鉄工所 徳島県徳島市 業種及び主な事業内容 金属製造業 雇用聴覚障害者数 5名 事業所の概要と障害者雇用の経緯 昭和22年に徳島市南佐古町にて創業し、平成7年にマリンピア沖洲に移転した。レーザー加工、精密板金加工は35年の実績があり、顧客数は500社である。家族3人からスタートして、現在の従業員数は18名である。初めて障害者を雇用したのは平成4年であり、ハローワークの紹介で聴覚障害者を雇用した。 取り組みの経緯 危険に配慮しながら、仕事の内容の理解、能力向上、職域拡大を確実に図ることが必要とされていた。 主な改善内容と効果 【改善内容】@ 社長がマンツーマンで、丁寧かつ段階的に仕事を教えた。A 教える際は、コミュニケーション面を重視し、身振りや手振りに加え、込み入ったことは文章にしてわかりやすくした。B 疑問があったらすぐに聞くことができ、周囲の従業員もすぐに答えることができる環境をつくった。【効  果】@ 図面の見方や機械の使い方等、着実に習得し、能力が最大限に発揮されるようになり、従事する仕事の幅も広がった。A 周囲の従業員が自然と手話を覚えたり、また聴覚障害者が何を言いたいのか雰囲気でおおよそわかるようになる等、コミュニケーション面での支援体制が強化された。 和田精密歯研株式会社 クラウンセンター綾上 香川県綾川町 業種及び主な事業内容 歯科技工業(入れ歯・さし歯の作製) 雇用聴覚障害者数 7名うち重度5名 事業所の概要と障害者雇用の経緯 大阪本社では35年にわたり、当工場でも25年にわたり障害者を雇用している。会長・社長自身、「障害者は可能性を秘め」、「いろんな人がいて、いろんな視点から学ぶ」という考え方を持っており、障害者雇用は社会貢献と考えて積極的に取り組んでいる。 取り組みの経緯 聴覚障害者に業務内容が十分伝わらないことがあり、ミスが多かった。また、コミュニケーションが取りにくく、障害者だけで集まっていることが多かった。 主な改善内容と効果 【改善内容】@ 業務内容を筆談で伝え、文章や図を見せるようにした。また、伝えた内容を、確認のために本人に再度書いてもらうようにした。A 口話・筆談で世間話をすることとした。【効  果】@ ミスが減り、疑問点を質問してくる等、自主的に取り組む姿勢も見られるようになった。A健聴者と関わることも多くなり、孤立感がなくなった。 日本食研株式会社 愛媛県今治市 業種及び主な事業内容 調味料の製造販売、ハム・ソーセージの製造販売、海外事業、健康食品事業、ホテル業、他 雇用聴覚障害者数 13名うち重度9名 事業所の概要と障害者雇用の経緯 「世界の食文化の開拓者」をモットーに、調味料から冷凍食材まで、様々な食品を手がける総合食品メーカーである。平成18年には愛媛県今治市に新工場「KO宮殿工場」が完成、世界食文化博物館・宮殿食文化博物館等、広く一般の方々に世界の食文化を学んでいただける施設も充実させている。障害者の雇用は、昭和56年から取り組んでおり、現在生産本部を中心に34名が活躍している。 取り組みの経緯 聴覚障害者は雇用当初は調味料工場でのサンプル製造に従事し、その後の本人の成長によって、調味料の製造現場へ配属してきた。しかしその一方で、その他の部署への配属はほとんどなかった。 主な改善内容と効果 【改善内容】 在職中の聴覚障害者に対して他の部署で1週間程度の現場実習を行い、新たな職域拡大が可能かどうか検証を行った。現場実習にあたっては、聴覚障害者と十分打ち合わせを行い、実習の趣旨を理解してもらうよう働きかけた。【効  果】@ 実習を行った聴覚障害者から意見を聞いたことにより、障害者が働く上での職場の問題点を洗い出し、改善につなげることができた。A 障害者の受け入れは難しいと思い込んでいた他部署が、障害者の受け入れが可能であると認識することができた。B 新たに障害者雇用の受け皿として機能する部署を開拓することができた。 シンセイフードサービス株式会社 愛媛県松山市 業種及び主な事業内容 食品製造販売業 病院給食・施設給食の受託業務、在宅介護食・治療食の宅配業務 雇用聴覚障害者数 5名うち重度5名 事業所の概要と障害者雇用の経緯 病院給食・施設給食の受託業務、在宅介護食・治療食の宅配業務、弁当惣菜の製造販売、チルド・レトルト・フリーズ食材の製造販売を行う事業の一括製造を実施する工場である。障害者雇用のきっかけは、愛媛障害者職業センターの紹介による。 取り組みの経緯 平成18年、初めて聴覚障害者を雇用するにあたり、作業中はマスクを着用するため口元の動きを見ることができないことから、「コミュニケーションをいかに行なうか」ということが課題となった。また、休憩の時間に独りで寂しそうに過ごしている時があるように見受けられた。 主な改善内容と効果 【改善内容】@ 作業説明、注意事項の伝達を筆談やジェスチャーで行うようにした。また、新たに採用した聴覚障害者を同じ作業工程に配属した。A ボランティアによる手話教室を開催し、聴覚障害者と同じ部署の従業員全員が参加した。【効  果】@ 聴覚障害者同士で作業指導を円滑に行うことが可能となった。A 休憩時間には聴覚障害者以外の従業員も会話に加わり、コミュニケーションが活発になった。 高知市農業協同組合 高知県高知市 業種及び主な事業内容 総合農協(金融、共済、販売、購買) 雇用聴覚障害者数 4名うち重度4名 事業所の概要と障害者雇用の経緯 昭和64年、当時の高知市・土佐山村・鏡村にあった14農協が合併して誕生した。管内では、水稲をはじめ施設野菜、露地野菜、花卉、果樹が生産されている。組合では、組合員・利用者の暮らしを守ること、及び豊かな地域社会づくりを目的として活動している。障害者の社会参加と職業的自立を図るため、雇用、就労の場を確保することは企業としての社会的責任であるという認識に立ち、平成2年に初めて障害者を雇用し、現在では4名の聴覚障害者が在職している。 取り組みの経緯 初めて聴覚障害者を雇用するにあたり、必要な指導、指示ができるか、作業場の安全確保ができるか、他の同僚とのコミュニケーションができるか等、様々な問題が考えられた。 主な改善内容と効果 【改善内容】@ ろう学校からの指導を受け、簡単な手話の勉強会を行い、相互のコミュニケーションづくりからスタートした。特に重要な事項については、筆談で指示、指導をした。A 以前は機械の不具合を知らせる手段はブザーのみであったが、ランプでも異常を知らせる装置を設置した。B 当初は契約期限のある臨時職員としての雇用であったが、正職員として雇用することにより、身分の安定を図った。【効  果】@ 徐々に簡単な挨拶等の手話ができるようになり、日常のコミュニケーションが取れるようになった。Aトラブル時の対応が早くなった。B 職場に定着し、それぞれの部署で貴重な戦力として活躍している。 ローム・アポロ株式会社 福岡県広川町業種及び主な事業内容 製造業 電子部品の製造(主要製品トランジスタ、ダイオード、タンタルコンデンサ) 雇用聴覚障害者数 6名うち重度5名 事業所の概要と障害者雇用の経緯 昭和45年に創業し、現在資本金は4億5千万円、日本、タイ、フィリピンに生産拠点をおいている。「われわれは、つねに品質を第一とする」という企業目的を掲げ、生産設備の開発段階から最終工程に至るまで品質管理を徹底させ、高品質な製品の安定供給に努めている。障害者の職場定着にも力を入れており、現在の平均勤続年数は15年を超えている。 取り組みの経緯 会社全体で行う講習において、講師が遠くにいる場合や、聴覚障害者の知らない言葉に対しては理解に難色を示すことがあり、コミュニケーション不足が見受けられた。 主な改善内容と効果 【改善内容】@ 資料は配布し、プロジェクターや朝礼伝達シートを活用した。A社内メール、携帯メールを活用した。【効  果】@ 伝達漏れが解決され、聴覚障害者が持っているノウハウを発揮できるようになった。A 相互に意思疎通を図ることができ、他のメンバーの能力向上にも大きく貢献できた。 タカタ九州株式会社 佐賀製造所 佐賀県東多久町 業種及び主な事業内容 自動車用エアバックの製造 雇用聴覚障害者数 5名うち重度4名 事業所の概要と障害者雇用の経緯 平成3年5月タカタ株式会社100%出資関連会社として設立された。平成4年4月より、国内各自動車メーカー全車種に適応するエアバックの製造を開始する。障害者雇用は、平成9年5月、ハローワークから身体障害者の雇用要請等もあり、採用したのがはじまりである。従業員の採用は、色々な形で地元に貢献していくという経営者の方針のもと、設立以降、一貫して地元からの採用を行い、障害者の雇用も関係機関や団体等からの要請もあり、創業後早い段階から取り組んでいる。 取り組みの経緯 どのようにしたら作業指示がうまく伝わり、確実に作業を行うことができるか不安に感じていた。 主な改善内容と効果 【改善内容】@ 手話(手話通訳の協力も含む)や筆談を用いると共に、生産ラインにリーダーを配置し、仕事のみならず生活面についても相談できる体制をとった。A 作業手順のマニュアル化や、パトライトの設置を行った。B 必要に応じて聴覚障害者の家族に職場に来てもらった。【効  果】@ A確実に作業内容が理解できるようになり、能力開発が図られ、生産性の向上や職場定着にもつながった。B 家族が聴覚障害者の作業内容を理解し、本人を支える体制が強化された。 白山陶器株式会社 長崎県波佐見町 業種及び主な事業内容 家庭用陶磁器食器製造販売 雇用聴覚障害者数 5名うち重度5名 事業所の概要と障害者雇用の経緯 近くに窯業科を持つろう学校があったため、45年前から卒業生の受け入れを積極的に進めてきた。その結果、聴覚障害者を多数雇用することとなったが、各々の出身は県下に幅広く、社員寮が必要となり、男子寮、女子寮と増設して健常者、障害者が共同生活を送ってきた。近年結婚や定年等で退職者が出始め、8名在籍していた聴覚障害者が現在5名となった。他に知的障害者1名、内部障害者1名が在籍している。 取り組みの経緯 社員寮における生活面に課題があり、職場でも影響が見られてきた社員がいた。 主な改善内容と効果 【改善内容】 安全面や使いやすさの観点から社員寮を整備、加えて時折事業主が社員寮を訪問したり、本人に生活状況の確認を取るようにした。【効  果】 安全かつ安心して生活を送ることができるようになり、仕事の安定、勤労意欲の向上につながった。 希望の里ホンダ株式会社 熊本県宇城市 業種及び主な事業内容 製造業 2輪・4輪・汎用の輸送用機器の部品組立 雇用聴覚障害者数 15名うち重度13名 事業所の概要と障害者雇用の経緯 本田技研工業株式会社の特例子会社で、昭和60年8月本田技研工業株式会社・熊本県・宇城市の共同出資により設立された、自動車業界初の第3セクター方式の重度身体障害者雇用事業所である。従業員34名(うち重度身体障害者14名)でスタートし、現在は従業員64名(うち重度身体障害者31名)で、創業以来、ホンダ二輪・四輪・汎用の部品組立を行っている。 取り組みの経緯 障害者を雇用して20年以上経過する中で、従業員が増えた分、手話によるコミュニケーションにバラつきが生じてきた。また、聴覚障害者はチャイムが聞こえないため、特に単独作業の工程においては始業、終業等のタイミングがわかりづらかった。 主な改善内容と効果 【改善内容】@ 指文字や身近な手話を掲載したカレンダーを作成した。A QCサークル活動で「健聴者と聴覚障害者のコミュニケーションUP」をテーマに挙げ、推進した。B聴覚障害者が指導者となり毎週1回手話講習会を実施した。C 始業、終業時間等を知らせるチャイムに連動して振動する腕時計(シルウォッチ)を聴覚障害者が身につけることとした。【効  果】@従業員が統一的に手話や指文字を覚えるきっかけとなった。A手話は難しいという概念を軽減することができた。B 社員から手話を習うことで手話を身近に感じ、雑談にも少しずつ手話・指文字を取り入れるようになった。C 聴覚障害者が時計を気にせず作業に集中できると共に、健聴者と同じタイミングで行動することが可能になった。 株式会社トキハインダストリー 大分県大分市 業種及び主な事業内容 スーパーマーケット等の店舗運営雇用聴覚障害者数 7名うち重度7名 事業所の概要と障害者雇用の経緯 大分県大分市に本社を置くスーパーマーケットチェーンである。障害者雇用の経緯は、地域障害者職業センター、ハローワーク、県関係者からの人材紹介がきっかけである。 取り組みの経緯 最初は障害者という意識を持たず、通常のチームアプローチということで障害者雇用を開始したが、@忙しい時に遠くから声かけをしても伝わらない、A衛生管理についての基本的考え方がうまく伝わらない、B接客についての考え方がうまく伝わらない、等の課題が生じた。 主な改善内容と効果 【改善内容】 値付けのためのパソコンへのデータ打ち込み、商品管理、衛生管理、接客等、すべての作業において、写真入りマニュアルやイラスト入りマニュアルを作成した。【効  果】@ マニュアルの作成により、必要最小限の時間で最大の情報を伝えることが可能となり、職場でのコミュニケーションが円滑になった。A マニュアルの一部は、聴覚障害者のみならず全従業員に役立つツールとなった。B 聴覚障害者の雇用を契機に、手話を自主的に習い、手話サークルも立ち上げた従業員もでる等、社内に理解が浸透した。 株式会社東芝セミコンダクター大分工場 大分県大分市 業種及び主な事業内容 半導体製造 雇用聴覚障害者数 22名うち重度16名 事業所の概要と障害者雇用の経緯 昭和45年、半導体の生産拠点として操業を始めた。県立聾学校、ハローワークの紹介を中心に障害者を雇用している。個々人の経歴や志向を確認し、一人ひとりを活かすことのできる職場、仕事を考えることを基本姿勢としている。そのため、職場においては健常者・障害者の区別なく勤務している。また、様々な視覚的なインフラ整備(パイロットライトやホワイトボードの設置)に取り組んでいる。 取り組みの経緯 当初、障害者には特定範囲の仕事に限定し、完成度のみを追及しており、キャリアアップの視点に不足があった。また、配属部署が限られていたため、職域開発の検討が不十分であった。さらに、職務の円滑な遂行に向けた情報環境、コミュニケーション向上のための人的環境、双方の環境整備が不十分であった。 主な改善内容と効果 【改善内容】@国家技能検定試験への挑戦を奨励した。A技術開発チームに所属する聴覚障害者の人材育成を図った。B 連絡事項等、あらゆる情報をペーパーにして、回覧による周知徹底を図った。【効  果】@ 国家技能検定試験の受験にあたり、職場の先輩から仕事のコツを教えてもらうプロセス等も含め、能力開発につながった。Aキャリアアップが図られつつある。B 聴覚障害者と健聴者の情報の共有化、相互のコミュニケーション向上による働きやすい職場づくり、モチベーションのアップ、業務の効率化等が可能となった。 日立プラズマディスプレイ株式会社 宮崎県国富町 業種及び主な事業内容 プラズマディスプレイパネルの製造 雇用聴覚障害者数 8名うち重度8名 事業所の概要と障害者雇用の経緯 株式会社日立製作所100%出資のプラズマディスプレイパネルの製造会社であり、最先端の技術を駆使して最高品質のモノづくりに取り組んでいる。設立当初から障害者雇用に取り組み、製造工場への就業に対し、健常者と変わらない、安全・快適な環境確保に向けた各種改善に取り組んでいる。 取り組みの経緯 工場勤務においては就業時間が長く、職場内、休憩時間等で孤立しないために、良好な関係を持つ同僚の存在が不可欠である。そのためには、職場の理解と入社時からの連帯感を強化することが重要であった。 主な改善内容と効果 【改善内容】@ 新人社員に対する教育において、従来聴覚障害者は別メニューで実施していたが、外部の手話講師を招き、健聴者と一緒に実施した。A 聴覚障害者を講師とした、聴覚障害者に対する理解を深めるための教育プログラムを追加した。B 社宅において、訪問者があった場合、呼び鈴と室内設置のパトライトが連動する仕組みに改造した。【効  果】@ 新入社員全体の仲間意識が向上し、連帯感が高まった。A 聴覚障害者に対する理解が深まり、コミュニケーションの機会が増えた。B 訪問者に気づくことが可能となり、生活面の安心感につながった。 JUKI宮崎精密株式会社 宮崎県都城市 業種及び主な事業内容 工業用ミシン、半導体製造装置、電子機器等の高精度加工部品の製造 雇用聴覚障害者数 3名うち重度2名 事業所の概要と障害者雇用の経緯 昭和48年に県の誘致企業として山シロ町に進出、以来主な生産品目は工業用ミシンの部品等を製造している。障害者の雇用は、昭和60年から現在に至るまで4名となっている。 取り組みの経緯 指導者が手話ができなかったため、コミュニケーションを取るのが難しかった。また、機械作業において、音で判断する作業が困難であった。 主な改善内容と効果 【改善内容】@紙に要点を書いて伝えるようにした。A火花をチェックする等、視覚的に判断するように指導をした。【効  果】@コミュニケーションが円滑に図れるようになった。A作業をスムーズに行うことができるようになった。 ソニーセミコンダクタ九州株式会社鹿児島テクノロジーセンター 鹿児島県霧島市 業種及び主な事業内容 各種半導体の設計・開発・製造・カスタマーサービス 雇用聴覚障害者数 12名うち重度9名 事業所の概要と障害者雇用の経緯 昭和48年に創立し、4つのテクノロジーセンターの中でも最も長い歴史を誇る半導体マルチカテゴリープラットフォームとして、開発・設計技術、製造技術にいたるまで先進かつ幅広い技術を有している。当テクノロジーセンターでは現在28名の障害者を積極的に雇用し、職場定着をサポートしている。 取り組みの経緯 聴覚障害者がコミュニケーション上の悩みを持ったり、メンタル面で悩みを抱える状況が見られた。また、全社員が参加する講演会等において手話通訳者を手配していたが、聴覚障害者の半数以上が日常のコミュニケーションツールとして手話を使用していなかったため、その内容をあまり理解できなかった。 主な改善内容と効果 【改善内容】@ 聴覚障害者とその上司へ就労状況に関するアンケート調査と、必要に応じて人事面談を行った。その結果をもとに、職場で聴覚障害者を受け入れる際の準備や細かな配慮点、配属後の定期フォローまでの一連の流れをマニュアル化した。A 講演会等で使用した資料と、その内容を要約してパソコンで打ち込んだものを、別途設けた小型スクリーンに並べて映し出すようにした。【効  果】@ 聴覚障害者が抱えている問題が職場に理解され、コミュニケーション不足を原因とする各種トラブルが減少した。A 全員が講演会等の内容を理解できるようになり、実施後のアンケート結果でも「わかりやすい」との評価が得られる等、全従業員の情報量の差がなくなった。 株式会社南光 鹿児島県鹿児島市 業種及び主な事業内容 金属製品製造業(建築金物設計・施工、半導体製造装置製作・組立、環境関連機器開発・製作・販売等) 雇用聴覚障害者数 3名うち重度3名 事業所の概要と障害者雇用の経緯 昭和46年に創業。現在は、金属加工を含む製造拠点を6工場、営業拠点を3ヵ所擁し、建築金物・精密板金製缶・プラント等お客様の幅広いニーズに対応してきた。商品のコストダウン・納期の短縮化・精度の高度化・発注の小ロット化に対応するため、新しい設備と技術の導入を図り、技術の向上に努めている。障害者・健常者関係なく、常に前向きに一生懸命で、明日への飛躍に向け全社一丸となって日々邁進していける人を雇用している。 取り組みの経緯 資格取得について、業務上必要に迫られて会社の指示により取得するか、あるいは個人の希望により取得するというパターンであった。また、個人の力量や目標が明確にされていなかった。 主な改善内容と効果 【改善内容】@ 業務上必要な資格を計画的に取得することを奨励すると共に、特定の資格にしかつけていなかった手当ての範囲を拡大した。A 個人の力量を「見える化」するために、スキルマップを工場に設置し、目標や進捗状況を管理するようにした。B指示書により業務を行うこととした。【効  果】@ 自己啓発として、計画的に資格を取得する者が増えると共に、資格取得、職務力量に応じて職務配置の見直しを行うことができるようになった。A スキルアップに対する意欲向上が図られた。B 作業を指示する際の効率化が図られ、また作業の正確性も向上した。 有限会社佐野正開発 沖縄県那覇市 業種及び主な事業内容 高齢者ディサービス・障害児ディサービス・介護保険訪問介助・障害福祉サービス・地域生活支援事業・高齢者及び障害者の共同住宅 雇用聴覚障害者数 2名うち重度2名 事業所の概要と障害者雇用の経緯 平成12年4月の介護保険法施行に伴い、介護事業における訪問介護事業に新規に参入した。平成15年4月に障害者に対する支援費制度がスタートし、障害者介護に参入すると共に、障害者がどのように考え、どのように行動するのかを身近で確認するため障害者雇用に踏み切った。職場環境の整備、指導育成方法等多くの問題について、障害者職業生活相談員を中心に模索を重ね、今日に至っている。 取り組みの経緯 コミュニケーションの不足があり、聴覚障害者に孤立感や作業への戸惑いが見られていた。 主な改善内容と効果 【改善内容】@聴覚障害者をさらに1名追採用した。A 障害者職業生活相談員がその障害者の特性をできるだけ早く見抜き、得手な仕事を多く、不得手な仕事を極力少なくした。【効  果】@ 孤立感が解消され、聴覚障害者が健聴者にも仕事を通して手話を教えてくれるようになった。次第に楽しくコミュニケーションを取ることが可能となり、お互いが理解できるようになった。A効率よく仕事に取り組むようになった。 平成20年度障害者雇用職場改善好事例応募事業所の概要 1.都道府県別応募数 都道府県 計 北海道2 青 森2 岩 手1 宮 城1 秋 田2 山 形2 福 島1 茨 城1 栃 木2 群 馬0 埼 玉1 千 葉1 東 京5 神奈川5 山 梨0 長 野0 新 潟2 富 山1 石 川1 福 井1 岐 阜2 静 岡2 愛 知2 三 重0 滋 賀2 京 都4 大 阪5 兵 庫7 奈 良0 和歌山1 鳥 取3 島 根0 岡 山0 広 島1 山 口1 徳 島1 香 川1 愛 媛2 高 知1 福 岡1 佐 賀1 長 崎1 熊 本1 大 分3 宮 崎2 鹿児島2 沖 縄1 合 計78 2.事業所規模別応募数 事業所規模 計 1,000人〜17 500人〜999人13 300人〜499人9 100人〜299人16 56人〜99人5 55人以下18 合計78 3.業種別応募数 業 種 計 建設業1 総合工事業1 製造業46 食料品製造業6 衣服その他の繊維製品製造業1 家具・装備品製造業2 印刷・同関連業 4 金属製品製造業2 ゴム製品製造業1 一般機械器具製造業3 電気機械器具製造業5 電子部品・デバイス製造業12 情報通信機械器具製造業3 輸送用機械器具製造業4 精密機械器具製造業2 その他の製造業1 情報通信業1 情報サービス業1 卸売・小売業7 建築材料、鉱物・金属材料等卸売業1 その他の卸売業2 各種商品小売業1 自動車・自転車小売業1 その他の小売業2 金融・保険業3 協同組織金融業3 飲食店、宿泊業1 一般飲食店1 医療・福祉業5 医療業2 社会保険・社会福祉・介護事業3 サービス業14 洗濯・理容・美容・浴場業2 廃棄物処理業1 その他の事業サービス業11 合 計78 4.部門別応募数 一般会社59 特例子会社19 合 計78 平成20年度障害者雇用 1 趣旨 障害者雇用において雇用管理、雇用環境等を改善・工夫し、様々な取り組みを行っている事業所の中から、他の事業所のモデルとなる好事例を募集し、これを広く一般に周知することによって、事業所における障害者の雇用促進と職域の拡大及び職場定着の促進を図ると共に、障害者雇用に関する理解の向上に資することを目的とします。 2 募集テーマ 働く障害者の高齢化の問題が指摘されていますが、聴覚障害者は他の障害者と比べて勤続年数が長く、各企業における対応が求められています。このため、聴覚障害者を対象として、キャリアアップに向けた取り組みに関する職場改善好事例を募集します。こんな事例をお寄せください。(1)聴覚障害者に対する能力開発に積極的に取り組んだ改善好事例例:聴覚障害者のキャリアアップを図る一環として、企業における聴覚障害者の能力開発を目的としたIT講習等の実施を通じて、必要なスキルを習得させるための創意工夫、改善等に積極的に取り組んだ好事例(2)聴覚障害者の新たな職域拡大に取り組んだ改善好事例例:聴覚障害者のキャリアアップを図る一環として、既存の職務を組み合わせたり、新たな職務を創出するなど、聴覚障害者の職域拡大を進めるための創意工夫、改善等に積極的に取り組んだ好事例(3)聴覚障害者へのコミュニケーション面での支援に効果的に取り組んだ改善好事例例:聴覚障害者のキャリアアップを図る一環として、手話や筆談、口話のほか、社内メール、携帯電話、FAX等の情報通信機器等を効果的に活用するなど、聴覚障害者に対する円滑なコミュニケーション面での支援について、聴覚障害者が働きやすい職場にするための創意工夫、改善等に積極的に取り組んだ好事例(4)聴覚障害者の職場定着を図るために各種支援制度を効果的に活用した改善好事例例:聴覚障害者のキャリアアップを図る一環として、企業内に設置した職場定着推進チームやジョブコーチ等の各種支援制度を効果的に活用するなどして、聴覚障害者の職場定着のための創意工夫、改善等に積極的に取り組んだ事例(5)聴覚障害者の加齢・高齢化に対応した支援に取り組んだ改善好事例例:聴覚障害者のキャリアアップを図る一環として、聴覚障害者の加齢・高齢化に対応した支援を行うため、高齢者雇用の実践的なノウハウ等も取り入れるなど、聴覚障害者が働きやすい職場にするための創意工夫、改善等に積極的に取り組んだ好事例 3 主催 独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構 4 後援 厚生労働省 5 応募締切日 平成20年6月30日(月)(必着) 6 応募資格 聴覚障害者を雇用している事業所とします。 職場改善好事例応募要項 7 応募方法 (1)指定の応募用紙を使用し、応募用紙のみで改善の内容が簡潔にわかるようにご記入ください。また、応募用紙の各項目は変更しないでください。なお、参考資料として、図、イラスト、写真等をつけても構いません。(添付資料はA4サイズにおさめてください。)(2)応募する事例については、上記2の募集テーマの全部又は一部に該当するものとします。(3)応募用紙は、下記12の問い合わせ先のほか、厚生労働省、都道府県労働局、ハローワーク、地域障害者職業センター、都道府県協会等で配布します。また、独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構のホームページからダウンロードした用紙も使用できます。 8 賞 優秀な事例には、最優秀賞(厚生労働大臣賞)・優秀賞(独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構理事長賞)・奨励賞(独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構理事長賞)を贈ります。 なお、優秀賞と奨励賞については、部門(一般部門、特例子会社部門)を設け、各部門ごとに賞を贈ります。 9 審査 独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構に審査員会を設置し、審査します。 10 表彰 上記の最優秀賞・優秀賞の入賞事業所の表彰式は、平成20年9月に東京で開催する予定です。 11 その他 (1)応募した文書の著作権及びこれに付随する一切の権利は、独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構に帰属するものとします。(2)応募書類は、返却しません。(3)応募事例については好事例集としてまとめ、関係団体、事業所等に配布します。 このうち、入賞事例については取材を行い、具体的な事例の内容を好事例集へ掲載すると共に、当機構ホームページにも掲載します。その他の事例については、事業所名及び取り組み内容の概要を好事例集へ掲載します。また、先駆的な事例については映像資料としてビデオ・DVDを作成する予定です。 12 提出先・お問い合わせ 独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構雇用開発推進部職域開発課〒105-0022 東京都港区海岸1-11-1 ニューピア竹芝ノースタワー13階TEL 03-5400-1625 FAX 03-5400-1608メールアドレス manual@jeed.go.jp ホームページ https://www.jeed.go.jp/ 【審査員】 審査員名所 属役 職 田中  勉 法政大学人間環境学部 教授 田中 恒行 社団法人日本経済団体連合会 労政第一本部雇用管理グループ長 中橋 道紀 財団法人全日本聾唖連盟 労働対策部長 吉永 和生 厚生労働省職業安定局 障害者雇用対策課長 吉光  清 九州看護福祉大学看護福祉学部 教授 五月女英介 独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構 理事長代理 (敬称略 五十音順 所属、役職は平成20年8月5日時点) 助成金制度 障害者雇用納付金制度に基づく助成金 問い合わせ→都道府県高齢・障害者雇用支援協会等 事業主が障害者を新たに雇い入れたり、重度障害者の安定した雇用を維持するために、少なからぬ経済的負担がかかることがあります。障害者雇用納付金制度に基づく助成金は、その費用の一部を助成し、負担の軽減を図ることで障害者の雇い入れや継続雇用を容易にしようとする制度です。 ○助成金の種類(助成金の対象、助成率、限度額等は当機構ホームページhttps://www.jeed.go.jp/disability/subsidy/をご覧ください。) 助成金 内 容 障害者作業施設設置等助成金 障害者を常用労働者として雇い入れるか継続して雇用している事業主が、その障害を克服し作業を容易に行うことができるよう配慮された作業施設または改造等がなされた作業設備の整備等を行う費用に対する助成金です。 障害者福祉施設設置等助成金 障害者を常用労働者として雇い入れるか継続して雇用している事業主またはその事業主が加入している事業主団体が、障害者である労働者の福祉の増進を図るため、障害者が利用できるよう配慮された福利厚生施設の整備等を行う費用に対する助成金です。 障害者介助等助成金 重度身体障害者、知的障害者、精神障害者または就職が特に困難と認められる身体障害者を常用労働者として雇い入れるか継続して雇用している事業主が、障害の種類や程度に応じた適切な雇用管理のために必要な介助等の措置を実施する費用に対する助成金です。 職場適応援助者助成金 職場適応援助者による援助を受けなければ、事業主による雇い入れまたは雇用の継続が困難と認められる障害者に対して、職場に適応することを容易にするために職場適応援助者(機構が行う養成研修または厚生労働大臣が定める研修を修了し、援助の実施に関し必要な相当程度の経験及び能力を有すると認められる者)を配置し援助を実施する費用に対する助成金です。 重度障害者等通勤対策助成金 重度身体障害者、知的障害者、精神障害者または就職が特に困難と認められる身体障害者を常用労働者として雇い入れるか継続して雇用している事業主、またはこれらの事業主が加入している事業主団体が、これらの者の通勤を容易にするための措置を行う費用に対する助成金です。 重度障害者多数雇用事業所施設設置等助成金 重度身体障害者、知的障害者、精神障害者を常用労働者として多数雇い入れるか継続して雇用し、かつ、安定した雇用を継続することができると認められる事業主で、これらの障害者のために事業施設等の整備等を行う費用に対する助成金です。 障害者能力開発助成金 障害者の職業に必要な能力を開発し、向上させるための能力開発訓練事業(厚生労働大臣告示による基準に該当するもの)を行う事業主等が、能力開発訓練のために施設・設備の整備等を行う費用、その能力開発訓練事業を運営する費用や障害者である労働者を常用労働者として雇用する事業主が、その障害者である労働者に障害者能力開発訓練を受講させる費用に対する助成金です。 特定求職者雇用開発助成金(特定就職困難者雇用開発助成金) 問い合わせ→都道府県労働局、ハローワーク 身体障害者、知的障害者又は精神障害者等の就職が特に困難な者をハローワーク等の紹介により雇い入れた事業主に対して、その賃金の一部を雇い入れた日から一定期間助成するものです。 障害者雇用に関する支援制度 いずれの制度にも要件等がありますので、詳細は各機関にお問い合せください。 職場適応援助者(ジョブコーチ)による支援 →問い合わせ 地域障害者職業センター  障害者が円滑に職場に適応することができるよう、ジョブコーチが事業所に出向き、職場内において様々な支援を行います。地域障害者職業センターに所属するジョブコーチ(配置型ジョブコーチ)と社会福祉法人等に所属するジョブコーチ(第1号職場適応援助者)が各地域に配置されており、必要に応じて両者が連携して支援を行います。  上記のジョブコーチ以外に事業主が自ら雇用する障害者(在職者)のために、職場適応援助者を配置することができます(第2号職場適応援助者)。また、第1号及び第2号職場適応援助者配置に関し、助成金が支給されます。 集中支援 不適応課題を分析し、集中的に改善を図る週3〜4日訪問 移動支援 支援ノウハウの伝授やキーパーソンの育成により、支援の主体を徐々に職場に移行週1〜2日訪問 フォローアップ 数週間〜数ヵ月に一度訪問 支援期間1〜7ヵ月(標準2〜4ヵ月)(地域障害者職業センターの場合) 障害者試行雇用試行(トライアル雇用)事業 →問い合わせ ハローワーク  障害者に関する知識や雇用経験がないことから、障害者雇用をためらっている事業所が、障害者を原則3ヵ月間、試行雇用(トライアル雇用)の形で受け入れ、本格的な障害者雇用に取り組むきっかけづくりを進める事業です。トライアル雇用を実施した事業主に対しては、トライアル雇用終了後、トライアル雇用奨励金が支給されます。 障害者雇用事例リファレンスサービス →問い合わせ 都道府県高齢・障害者雇用支援協会等 障害者雇用における課題に対して解決の参考となる、全国の事業所の取り組み事例等をホームページで紹介しています。(https://www.ref.jeed.go.jp/) 雇用管理サポート事業 → 問い合わせ 地域障害者職業センター、駐在事務所、都道府県高齢・障害者雇用支援協会等  障害者の雇用、雇用継続又は職場復帰に当たっての雇用管理に関して、専門的な知識や支援を必要としている事業主に対して、地域障害者職業センターの障害者職業カウンセラーまたは駐在事務所や都道府県高齢・障害者雇用支援協会等の障害者雇用アドバイザーが、地域の各種専門家(協力専門家)と一緒に事業所を訪問し、相談・助言を行っています。 就労支援機器の普及啓発 →問い合わせ 駐在事務所  特に重度障害者の方々の雇用促進と雇用継続を図るため、ホームページを活用して障害者の就労を支援する機器及びソフトウエアなどの普及を図っています。 また、障害者を雇用する事業主の方々や事業主の団体に対して、就労支援機器を一定期間無料で貸出すことにより、その普及を促進しています。 就労支援機器は、ホームページから検索することができます。(https://www.kiki.jeed.go.jp/) 機器等の貸出を受けようとする際は、管轄する駐在事務所の障害者雇用アドバイザーにご相談ください。また、申請書は上記ホームページからダウンロードできます。 障害者雇用支援機関 ・地域障害者職業センター(https://www.jeed.go.jp/location/chiiki/index.html) 障害者職業カウンセラーが配置され、公共職業安定所等の関係機関との密接な連携のもと、地域の職業リハビリテーションネットワークの中核として、地域に密着した職業リハビリテーションサービスを実施しています。  ・駐在事務所(https://www.jeed.go.jp/location/chiiki/index.html)   障害者の雇用相談、就労支援機器の貸し出し等を実施しています。 −平成20年度障害者雇用職場改善好事例募集の入賞事例から− 聴覚障害者のための職場改善に関する好事例集 聴覚障害者と共に働く職場環境づくり 平成21年1月 発  行 独立行政法人 高齢・障害者雇用支援機構 〒105-0022 東京都港区海岸1-11-1 ニューピア竹芝ノースタワー内 TEL O3-5400-1625 FAX O3-5400-1808 URL https://www.jeed.go.jp/