知的障害者のための職場改善に関する好事例集 −平成19年度障害者雇用職場改善好事例募集の入賞事例から− いきいきと働く障害者を支える職場づくり 明日からできる!職場の改善 独立行政法人 高齢・障害者雇用支援機構 はじめに  独立行政法人高齢・障害者支援機構では、事業所における障害者雇用および職場定着を進めるため、雇用管理や職場環境の整備などを改善・工夫し、働きやすい職場にするためにさまざまな取り組みを行った事例を全国の事業主の皆様から募集し、広く周知、普及しています。障害者雇用職場改善好事例の募集については、平成3年度から開始し、近年では年度ごとにテーマを設定し募集を行っております。   平成19年度につきましては、知的障害者を取り上げ、職務の創出やキャリアアップ等により新たに職域の拡大を図った職場改善好事例をテーマに募集いたしましたところ、全国の事業主の皆様から多数のご応募をいただき、審査員による厳正なる審査の結果、11事業所の入賞を決定いたしました。   このたび、これらの事例を「知的障害者のための職場改善に関する好事例集─平成19年度障害者雇用職場改善好事例募集の入賞事例から─」としてとりまとめましたので、知的障害者の雇用の促進および職域拡大のためにご活用いただければ幸いです。   最後に、ご応募いただきました事業主の皆様、そしてご協力いただいた関係機関・団体等の皆様には改めて感謝申し上げます。 平成19年11月 独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構 ※知的障害者とは、療育手帳を所持している方及び地域障害者職業センターで知的障害と判定され、判定書を所持している方をいいます。 ●はじめ                             1 ●目次                              2 ●入賞事例 最優秀賞 ●大東コーポレートサービス株式会社  今までの概念を打ち破った職域開拓を実現する           4 優秀賞 ●株式会社美交工業  ありのままの姿を受け入れ、ともに歩む「知恵」と「手法」     12 ●有限会社九州ヘラルド  障害者がより使いやすい「便利」で「優しい」システムを開発  18 ●株式会社富士電機フロンティア  自立したい意欲を引き出す社員教育とキャリアアップモデルの構築  24 ●株式会社マルイキットセンター  業務開発による新たな特性を発見 加齢に対応した職務の開発  30 ●株式会社かんでんエルハート  第2号職場適応援助者の養成による社内の支援体制の整備  36 奨励賞 ●日本通運株式会社宇都宮支店  適性を考慮した職務づくりと、「本人のやる気」を受け留めた職務  42 ●株式会社マルキュウ  単純作業から重機を使った新しい職域開発への取り組み  46 ●社会福祉法人共生シンフォニー  障害特性を考慮しながら新たな職域拡大を図る  50 ●株式会社沖縄教育出版  障害者の限界という先入観を捨てた人間尊重の経営  54 ●株式会社クレール  作業をスムーズに行う様々な工夫とは 58  ●その他の応募事業所  62 ●応募事業所の概要    95 ●応募要項    98 ●地域障害者職業センター一覧  100 ●都道府県高齢・障害者雇用支援協会一覧    101 ●各種助成金の内容    102 最優秀賞 大東コーポレートサービス株式会社(東京都港区) 今までの概念を打ち破った職域開拓を実現する 広報と営業を実施し、工夫と改善を重ねて確かな信頼を得る 改善の経緯 大東建託株式会社において特例子会社設立が決定し、平成17年5月に当社が設立されました。当初、まず本社全部門に対して当社へ依頼可能な業務の洗い出しを実施。一定の仕事量を確保して業務を開始し、独自の創意工夫で着実にスキルアップを重ね、業務を拡大していきました。その最大のポイントは、障害者だからという特別扱いに甘んじるのではなく、「大東建託本社の一部門として、純粋に戦力として認められる」ことを常に目標としてきたことです。仕事の段取りや工夫を障害者職業生活相談員(以下、生活相談員)が考え、障害者がスムーズに働ける環境を整えるとともに、仕事の問題発見・改善を重ねた結果、「ミスのない仕事」を実現。それが、より高度で質の高い職域の開拓につながり、知的障害者は単純作業の繰り返ししかできないという先入観を打ち破ることができました。 企業プロフィール 大東コーポレートサービス株式会社 ■代表者:代表取締役社長 山崎亨 〒108-0075 東京都港区港南2-16-1 TEL03-5461-8411 FAX03-5461-8412 URL http://www.daito-copo.com 業種及び主な事業内容 大東建託葛yび関係会社からの事務作業等の受託業務、機密文書の処理(粉砕処理)、社内メール・郵便・宅配小荷物等の受渡し、名刺作成、その他事務作業 障害者雇用状況 従業員数36名うち障害者26名(平成19年7月1日現在) (内訳) ・知的障害者13名(うち重度2名) ・視覚障害者………………1名 ・聴覚障害者………………3名 ・肢体不自由者6名(うち重度2名) ・精神障害者………………3名 雇用の背景 障害への理解から業務受託まで最初に大きな壁がありました サービス1課生活相談員 大竹口益世さん、工藤規親さん 組織全体の問題解決をめざし、仕事の仕組みを構築・改善  私たちは大東建託グループ全体を通して、知的障害者雇用の経験がまったくありませんでした。ですから最初に直面した問題は、とにかく知的障害について、誰も知識がないことでした。どの部署も何の仕事を、一体どの程度頼んでいいのかが分かりません。この問題を解決し、業務を受注するため、当初から社長が先頭に立って「広報・営業活動」を実施し続けました。定期的に本社各部門あての説明会を実施したり、各職場を回って「当社に頼める仕事は何か」をヒアリングしました。私たち自身も手探りでしたが、受注した仕事に一つひとつ着実に応えていくことで、信頼の輪を広げていきました。「当社の問題解決が、実はグループ全体の問題解決につながる」ことをみんなで発見し、全体の協力体制が生まれたことで、私たちが業務受託していく足がかりができたのです。こうやって「知的障害者はこんな仕事もできますよ」お知らせして受注した業務を、確実に効率よく進めるような“仕組みづくり”をして、日々職場改善を進めることが、私たち生活相談員の大きな役割です。 小さな問題を見逃さないこと、個別への対応を大切に  私たちは様々な業務を通じて、「作業手順や個人の能力の改善へとつなげる手助けをすれば、知的障害者は何でもできる」と実感しています。誰でも作業できる、ミスのないやり方を考えて、まずはやってもらいます。もちろんそれでも問題が発生します。しかしそんな時は、「障害者だからできない」とあきらめるのではなく、「一体どこでつまずいているのか」を、どんな小さな問題でも見逃さず、改善を積み重ねています。現場に入り、一緒に仕事をして、じかに接すること。そこから問題が見えてきます。そしてそれが個人的なスキルの課題であった場合は、粘り強い配慮が必要となります。知的障害者は、一人ひとり程度や傾向が異なるからです。各人が抱える課題に対して個別にどう対処すべきかが問われます。 No.1でなく自己ベストを目指す。そこから新たな職域開拓へ  たとえば、何事にも強いこだわりをもつ自閉傾向のある社員に対しては、個人目標を立ててもらい、「達成したことにはマルをつけていきましょう」という約束をしました。すると、「何が何でもすべてにマルをつける」という強い意欲を持ち、非常に早く目標を達成できたのです。このように、障害者の特性を踏まえ、どうしたら意欲をもてるのかを発見し、自ら努力していくきっかけを作ることが、個人の問題解決につながります。仕事のスピードも習熟度も一人ひとり異なりますが、全体の中の何番という形で競争させるのではなく、本人がどれだけ成長できたかを見て、現在の能力も少しずつ上の仕事をやってもらい、あえて負荷をかけることで、いつの間にか個人や全体のスキルが上がっていた─そんな職場づくりで、「知的障害者は1つか2つの仕事しかできない。複数の仕事は無理」という先入観を打ち破る職域開拓を進めていきたいと思います。 改善策紹介 業務の棚卸しや仕組みづくりで組織力アップ 効果的な目標設定や改善で個人のスキルアップ ここがPOINT 「できる仕事」の発見と拡大 〜相互協力と業務レベルの向上  自分たちができる仕事を発注元に知らせ、同時に発注元の業務内容を洗い出し、受託できそうな仕事を見つけていった。そして受注した仕事は、誰でもミスなくできる仕組みをつくった。また各人が目標を立て、レベルの向上を続けることで作業の効率化と職場改善を進め、職域を拡大していった。  「知的障害者は単純作業しかできない」という先入観を打ち破るために、できる仕事の周知を徹底するとともに、本社でのアウトソーシング、臨時社員や派遣社員がやっている業務、また残業して行っている業務を見直してもらうことで、新たな受注に結びつけた。さらに組織と個人のスキルアップで、当社への委託が効率化や経費節減につながることの理解を広げていった。障害者だから、という甘えを捨て、純粋に「確実な戦力」としての実力をつけることが、職域の拡大につながった。 業務調査アンケートを実施 業務の洗い出しのため、社長自らが先頭に立って本社各部門を訪問してヒアリング。地道な努力が職域の拡大につながった。 改善策1 簡単でやりやすい方法の開発 廃棄文書処理 廃棄文書を出す人も、回収・作業する人も「これなら間違いなくできる」という方法を開発し、定着させた。 [回収]  廃棄文書は本社の各部門で指定場所を決め、回収した。廃棄文書を入れる段ボール箱には「ピンク色の名札」を表示し、課の名前も記入した。ホチキスなどの混入物を防ぐため、注意書きを通知し、さらに段ボール箱本体にも貼った。 [仕分け]  回収した文書を用紙サイズ別の箱(A4・B4・A3)の3つに区分。自分で区別がつかないものは「わからないボックス」に入れるようにした。また、一連の作業工程をつかんでもらうため、手順を書いた「作業カード」を配布した。 [シュレッダー処理]  操作手順をマニュアル化し、作業カードを利用した。またゴミ袋節減のため、隙間なくくずを詰められるように反復練習をした。 廃棄文書について守ること  @回収する際に落とさない。  Aホチキスを取るとき内容を読まない。  Bシュレッダーにかけるとき、内容を読まない。  C廃棄文書についての内容を人に話さない。  D廃棄文書を持って帰らない。 (※職場に掲示して意識を徹底) その他の改善と工夫 【回収段ボールの乗せ方】@目で見て分かるように絵で表記。台車本体に掲示してあるので、作業しながら確認できる。 【ゴミ袋を正確に数える工夫】Aゴミ袋を所定の場所に移すたびに、それに対応する数のマグネットをホワイトボートに貼り、視覚的にわかりやすくするなどの工夫で、ゴミ袋の数を正確に数えられるようになった。 【電話対応】?電話応対の研修を実施。事務所とシュレッダー室との間を、練習カードを見ずに電話連絡できるようになった。 効果 廃棄文書の多い時期には1ヵ月に20tを処理できるようになった。 【回収】正しい出し方、正しい回収が定着。スピードも速まった。 【仕分け】素早く丁寧に効率よく、省スペースで作業できるようになった。 【シュレッダー処理】安全で速い処理を実現。また、ゴミ袋経費を半分以下に削減できた。 改善策2 ミスをなくし正確にできる工夫 メールや郵便物の仕分け・受発信と封入 業務に興味をもって、作業がスムーズにできるように工夫した。また作業後の再チェックによって精度を高めた。 [メールや郵便物の仕分け・受発信]  全国188支店のメールボックスへの投函作業をスムーズに行うため、各自が持っている支店名リストに仮名をふった。社員研修で読み上げや書き出しを実施するとともに、「支店名カルタ」を作って練習した。文字を映像的にとらえて覚える効果が得られ、取り組んでから3ヵ月で、仮名がなくても全員が支店名を判別できるようになった。さらに速読競争も頻繁に行った。他人との比較で争うのではなく、自分の読み上げたタイムを記録。一人ひとりの成長の過程を見守り、その伸び率による評価を実施した。また仕分け作業は3〜4人体制で行い、自分以外が仕分けした文書や名刺にミスがないかを再チェックした。 [封入作業]  各部門から依頼された文書・冊子などの封入にあたって、事前に封筒・用紙とも各10枚単位で数えておき、作業を行った。またミスの有無をその都度、生活相談員が確認した。 効果  支店名を覚える方法を工夫することで、社員の業務に対する好奇心と向上心をかきたて、メール仕分けが正確にできるようになった。また作業後の再チェックで、仕分け・封入ともに「うっかりミス」のない発信が可能になった。 改善策3 質の高い業務への飛躍 人事・総務文書管理業務、印刷業務 知的障害者の能力に身体障害者の担当できる仕事を組み合わせ、共同作業によって、より質の高い業務を請け負うことができるよう工夫した。 [人事・総務文書管理業務]  保険証や年金手帳等の書類を人事から預かり、スキャニングや書類のセット・確認等を経て郵便・メール発送するまでの一連の業務を、知的障害者と身体障害者の社員が共同で作業している。 [印刷業務]  データ入力、紙面構成から印刷・製本・発送までを、一貫して作業できるようにした。とりわけ名刺印刷は、本社には受注当日納品、各支店は受注日発送・翌日着で実行している。 名刺作成業務で優れている点 @経費節減 A納期が早い B作成枚数が多い 効果  従来の障害者業務の範ちゅうを超えた業務が可能になり、それまで残業や派遣社員、外注で処理していた仕事を受託。本社各部門および関係会社の経費削減・利益貢献を果たし、グループ全体から高い評価を得るに至った。 改善策4 より高度な業務の受託 領収書の発送、給与明細の発送 ここまで職域開拓を進めてきたことで、当社に対する本社の認識も大きく変化してきた。この「信頼の獲得」によって、より高度な業務で貢献できるよう取り組んだ。 [領収書の発送]  6種類の複写式で、各ページごとに固有のナンバリングがされている領収書を、各支店の注文数量分だけ間違いなく発送するとともに、作業効率を高めるため、省スペース・少人数(1作業につき生活相談員1人・社員2人)の流れ作業システムをつくった。作業は次のように分担した。  @封筒の準備をして宛先と冊数の事前記入Aナンバリングされている数字の確認と冊数の確認作業B封入・梱包作業 [給与明細の発送]  個人情報を扱い、発送ミスが許されない作業に対して、急遽発生した退職者・異動者の抜き取り確認を生活相談員が行い、支店毎の仕分け、メール袋への封入・梱包・発送を知的障害の社員が担当した。 作業量の実績 [領収書の発送]  1ヵ月送付冊数は、6種類合計で2,500冊〜3,500冊。 [給与明細の発送]  大東建託8,200人、関係会社3,000人分の発送を処理。 効果 【領収書の発送】ミスがなくなり、作業が飛躍的に速くなった。 【給与明細の発送】正確で速い処理が可能になり、大東建託M本体と子会社2社分の受託に結びついた。 今後の取り組みと課題 「メンタルヘルスの充実」 会社設立、そして特例会社の認定から2年あまりが経ち、社員の「心の健康」もサポートする必要が見えてきた。そこで、1年前から生活相談員がSST(ソーシャル・スキルズ・トレーニング)研修に参加し、社員の円滑な対人関係とより質の高い生活の構築をめざしている。  まず課題の一つとして「エレベーター使用時のマナー」を取り上げた。業務上、エレベーター内では社内外のお客様が乗り降りするため、マナーをしっかり身につけておく必要がある。そのために、次のような状況についてのSSTを行った。  【1】乗る時のマナー  【2】降りる時のマナー  【3】エレベーター内でのマナー  これらについて数人でロールプレイを実施し、課題に取り組んだ。その結果、今まであいまいだった「エレベーター使用時のマナー」について各自の判断が明確になり、社員全員の共通ルールとして意識できるようになった。  その他、集団の中で練習することが難しい内容・ためらいがちなテーマについては、生活相談員が個別に対応する「ひとりSST」も実施している。  @笑顔をうまく表現できない社員に対する「笑顔の作り方」トレーニング  A感情コントロールが難しい社員に対する「怒りのコントロールの仕方」トレーニング  B対人関係で、苦手な人とうまく距離を保つための「挨拶の仕方」トレーニング  C言いづらいことを相手に伝え、自分の思いや考えを言えるようになるための「自己主張トレーニング」  この実践を通して、社員一人ひとりの社会的なコミュニケーション能力を高め、安定した就労や生活につながるような職場環境を、これからも築いていきたい。 用語解説 「特例子会社」  障害者雇用率制度による障害者雇用の義務は、個々の事業主ごとに課せられますが、事業主が障害者の雇用に特別の配慮をした子会社を設立し、一定の要件を満たしているとの厚生労働大臣の認定を受けた場合には、その子会社に雇用されている労働者を親会社に雇用されているものとみなし、実雇用率を計算できることとされています。要件、手続き等の問い合わせ先はハローワークです。 「SST(ソーシャル・スキルズ・トレーニング)」  社会生活技能訓練。日常生活の中で必要な対人技能やストレス対処技術の獲得を援助する訓練方法。 どんなことにも前向きに取り組みたい ずっとここで働き続けたいですね サービス1課 樋口哲也さん  樋口さんは平成17年5月、会社設立と同時に入社しました。最初に従事した業務は廃棄文書の処理です。以前勤めていた職場で同じ作業をしていましたが、「ブランクがあったので、思い出すまでは苦労しました」とのこと。今では当時の倍以上の量ができるようになりました。樋口さんは、作業スピードをもっとあげたいという目標をもっています。現状に決して満足せず、さらにできるようになろうという気持ちが強くなってきたようです。「その結果、『シュレッダーのゴミ袋を上手に結べるようになりたい』という目標も達成できました」と話す表情は、とても晴れやかです。  樋口さんは、今では幅広い業務に従事しています。それぞれに作業レベルの向上を図っていくには大変な苦労が伴います。以前ならば「これができないからダメ」と後向きな考えをしがちでしたが、今では「できるようになろう」と前向きな姿勢がもてるまでに成長しました。樋口さんには、「定年までこの会社で仕事を続けたい」「独立して一人暮らしをしてみたい」という、大きな夢があります。知的障害者の成長を優しく、時には厳しく見守る会社の環境、そして樋口さん自身の向上心が広がり続ける限り、その夢はきっとかなうに違いありません。 当社における知的障害者雇用に対する基本理念、態度  知的障害者雇用にあたっては、次のような「障害者雇用に対する理念、理解」が必要だと考えています。  @IQにとわられないA知的障害の特性を理解するB一人ひとりの特性をとらえるC仕事の中で能力を開発するB社会的な支援を得る  これらの理念を土台として、雇用に向けた環境づくりを行い、知的障害者に対して配慮ある雇用を進めることが大切です。 企業の紹介 大東コーポレートサービスに学ぶ、知的障害者の職場改善 従来の概念を超えた雇用をめざす理想を掲げる  会社設立から3ヵ月という異例の早さで特例子会社の認定を受けた「大東コーポレートサービス」には、障害者雇用に対する大きな構想があった。山?社長はこう振り返る。「設立当初から、障害者の社員が増員していっても、一定の仕事量が確保できるような組織づくりをめざしていました」。それを実現するには、個人と組織のスキルを上げ、従事できる職域の幅を広げていかなければならない。つまり、知的障害者は1つか2つの単純な作業しかできない、という「今までの概念を打ち破る」決意表明を、まず第一に宣言していたのだ。  とは言うものの、社長をはじめ大東建託グループ全体を見渡しても、知的障害者のことを知る者は皆無だった。「採用面接や試験のやり方もまったく分からない。だから最初はすべて東京障害者職業センターに窓口になっていただきました。ジョブコーチの派遣も含め、各支援機関や助成金などの支援内容をよく知り、トライアル雇用という制度も利用し、同センターをフル活用したことが非常にプラスになりました」と社長は回想する。雇用拡大の大切な要となる生活相談員を、早い時期から採用・増員していったことも効果を上げた。そしてもう一つ大事なポイントとなったのが、「本社社員への周知(意識づけ)」である。山崎社長は、知的障害者への理解を広げようと、本社での説明会や東京障害者職業センターによる講演会の実施、社内報への記事掲載などに加えて、本社朝礼に知的障害者の社員を参加させた。そこで大声での挨拶を実施したことが、社員の存在を知らせ、好感を得ることにもつながったという。 業務の見直しを組織全体の利益につなげる  同社の業務は当初、「廃棄文書の回収・仕分け・シュレッダー処理」がほとんどだった。「まずシュレッダー処理で日本一の会社を目指そう!」という山崎社長の呼びかけのもと、本社フロア内へ積極的に出向いて回収し、業務開始から1年経った頃には各職場の協力体制も定着。さらに社員の作業スキルの向上によって、廃棄文書の処理量は、多い時期には1ヵ月に20tにも達するようになった。  まず一つ、目に見える形で役に立つことが、次の仕事につながる」と考えた山崎社長の狙いが、ここから見事に的中していく。各職場に配置した廃棄文書管理者に信頼感が生まれ、ここを窓口として様々な業務を紹介してもらえるようになったのだ。社長の右腕として活躍する村田課長もこう振り返る。「各職場に“味方”が一人ずつ欲しかったんです。信頼を得た後は、飛躍的に業務が拡大していきました」。実際の業務受託においては、すぐできる仕事・少し訓練を実施すればできる仕事・習得に時間がかかるがいずれ業務可能な仕事、とレベルを3段階に区分し、業務案を具体的に提案していったことも功を奏した。  山崎社長、村田課長を中心とした各職場へのセールス活動にも拍車がかかる。「皆さんの職場でやっていることを当社に委託すれば、これだけ効率アップや経費節減につながりますよ」という啓発を地道に続け、また、本社内で実施した第3回説明会(平成18年3月)では、管理職を集めて業務の洗い出しを呼びかけた。この時に、「各部門の業務を見直して委託することは、グループ全体への利益貢献につながる取り組みなのだ」という意識が共有されたという。 現状に満足せず、常に高いレベルの課題に取り組む  村田課長は「今では逆に『こんな仕事はできませんか?』と、各職場から高度な業務の相談を持ちかけられるようになりました」という。たとえ高度な技術を要することであっても、まずはやってみる。その結果、可能であれば受託し、内容・費用等を勘案して難しいと判断すれば、ここから外注に出す。そんな新たな流れが生まれてきているという。それらの業務は、従来ならば各部門で棚上げにされ、ともすれば後回しにされていたものである。そういった懸案事項を動かす「窓口」としても機能しはじめたのだ。  とりわけ、名刺作成などは障害者の社員自らの発案から、受注が飛躍的に伸びている。「受注した翌日には必ずお届けしたい」という目標を自ら申し出て、驚異的な納品量を達成。内製化による経費節減も大きな評価を得て、今では全国8エリアの支店と多数の関係会社に受注拡大している。「『本当に明日手に入るんですか!』という驚きの声が励みともなり、自信と誇りにつながっているんです」と、山?社長と村田課長は目を細める。  現在では、知的障害者が複数の業務や高度な業務に従事できるようになった。経費削減や利益の面でグループ会社に大きな貢献を果たしたことで、本社をはじめとするグループ全体の認識が変わり、そこからさらに高度な委託に応え続けてきた結果「知的障害者は何でもできる」という確信を得たという。  今後はメンタルヘルスの充実や、SSTといった対人関係の訓練にも取り組み、いま働いている社員が安心して、一生ここで働けるような職場環境を築いていくことが目標となっている。現状に満足せず、常に改善し、高いレベルの課題に取り組む。この姿勢が続く限り、同社は発展し続けることだろう。 知的障害者への理解と雇用の輪を広げたい 山崎亨代表取締役社長  会社を立ち上げた当時は、本当に何もかもが手探りでした。採用時の集団面接ではおとなしかった社員たちが、毎日朝礼で大きな声を出し続けたことで、元気な職場を作ってこれたと思います。日頃から全員に1年間の「長期目標」と2週間の「短期目標」を掲げてもらっていますが、朝礼の3分間スピーチで、社員自らが進んで自分の目標を話すようになったのは嬉しかったですね。やはり上から押しつけてばかりではダメで、「自分で、自らの力でやろう」とする意欲を引き出すことが大事だと痛感しています。  社員自身のスキルアップや生活指導員のバックアップなどによって、今では大東建託グループから大きな評価をいただくようになりました。障害者だからといって特別扱いされるのではなく、あくまでも「対等な一部門として認めていただける業務」ができる会社をめざしていましたので、本当に良かったと思っています。しかし満足はしていません。私たちはまだまだ発展途上ですから、今もSSTの勉強会、障害者雇用に取り組む企業が一堂に介するセミナーやワークショップなどに積極的に参加して、日々学び続けています。向上心をもって新しいことを吸収し、より良い仕事の取り組み方を常に模索していきたいと思います。  知的障害者は何でもできる。当社ではそう確信しています。その理解を広げるため、私は全国各地で講演活動をしています。もちろん、当グループ全体での知的障害者雇用の増員にも取り組んでいますが、やはり1グループという「器」だけでは自ずと限界があります。もっと視野を広げて、社会全体に知的障害者の雇用の輪が広がってくれれば、本当に幸せです。そんな夢を、これからも追いかけていきたいですね。 優秀賞 株式会社美交工業(大阪府大阪市) ありのままの姿を受け入れ、ともに歩む「知恵」と「手法」 ケース会議と現場専任者の配置で、会社全体のモチベーションアップ 改善の経緯  当社では、公共施設の清掃維持管理を中心に大阪市内の公園清掃や地下鉄の駅構内清掃、地下鉄の車内広告の取替えなど幅広い業務を展開しています。障害者雇用は、大阪知的障害者雇用促進建物サービス事業協同組合(通称:エル・チャレンジ)の協力を得て、平成15年1月より同組合の訓練生(知的障害者19名)を清掃作業スタッフとして雇用しています。さらに、本社にて障害者職業生活相談員を8名配置し、現場専任者によるきめ細かいサポート体制の確立を目指しています。  現在、府営公園 住吉公園の指定管理者として園芸福祉活動を展開しており、ビルメンテナンス業の枠を超えた地域住民との温かいふれあいを実感しています。 企業プロフィール 株式会社美交工業 ■代表者:代表取締役 福田丈人 〒550-0025 大阪府大阪市西区九条南2-7-23 TEL06-6581-3300 FAX06-6581-3310 URL http://www.bikoh.biz/ 業種及び主な事業内容  総合ビルメンテナンス業(施設管理・清掃・除草・各種広告の取替など可能なこと全て)、知的障害者・ホームレスの雇用促進への取組み。 障害者雇用状況 従業員数70名うち障害者19名 (内訳) ・知的障害者………………14名 ・聴覚障害者………………1名 ・肢体不自由者……………3名 ・内部障害者………………1名 雇用の背景 支援者と手を携えることで、企業としてできることが見つかりました。 専務取締役 福田久美子さん 行政・支援者・働く場の出会いがきっかけ  障害者雇用については、CSR(企業の社会的責任)における社会的投資という見方もありますが、当社での導入は難しいと考えていました。障害者に対する認識を欠いたままでは、雇用はうまくいかない不安があったからです。当社が本格的に障害者雇用を決めたのは、主に重度の知的障害者を対象とした職業訓練をするエル・チャレンジとの出会いでした。この組織は、大阪府と大阪市の手をつなぐ親の会、堺市で障害者雇用に取り組む関係団体、西成区でまちづくりを行っている企業、精神障害者社会復帰促進協会を組合員としています。この支援者の協力を得ることで、当初の不安も解消され障害者雇用を決定しました。また、大阪府では平成11年より「行政の福祉化」を施策に盛り込んでおり、当時最も遅れていたのが知的障害者の雇用の分野でした。製造業と清掃業は知的障害者の職域として取り組みやすく、「行政のバックアップ」「エル・チャレンジの就労支援」「当社の働く場」がまさにリンクした瞬間でした。 就労と生活。お互いを認めることからスタート  障害者雇用の支援者を得たといえ、はじめは戸惑うことばかり。現場任せにせず、本社スタッフが視察・指導しながら障害者の雇用定着を図りました。公園の巡回清掃では4人1組で班を編成し、その中に1〜2人の障害者を入れました。家族や趣味のこと、仕事の愚痴などもお互いに話し合い、認め合うことで、就労面だけではなく生活面での支援体制も強化しました。今では知的障害者の社員からメールで相談が来ることもあります。  一人ひとりの障害特性が分かれば、職場の手順や配置等を柔軟に変えることもできます。たとえば、数えることが苦手な知的障害者にゴミ袋の集計を任せたのでは、時間のロスが大きすぎます。数える努力を教えることも大切ですが、それをストレスに感じるのなら、別の役割を本人に与える方が効果的だと思います。 障害者雇用が会社全体のモチベーションアップに!  障害者雇用をきっかけに、社員一人ひとりが互いに関心を持つようになり、仕事に取り組む姿勢が変わりました。健常者、障害者を問わず、自分たちの仕事ぶりを社会でもっとアピールしたいという思いは、社のロゴ入りTシャツの着用、トートバックや植木鉢などのオリジナルアイテムの制作、環境イベントへの参加、園芸福祉活動の実施といった活動へと広がりました。  現在、大阪市庁舎の清掃業務を総合評価一般競争入札制度(価格・技術・福祉・環境の4項目を加点方式で評価)で受託できたのも、障害者雇用によって会社全体が一つにまとまり、業績が上がったことが評価された結果だと思います。障害者雇用のノウハウを生かし、平成15年からはホームレス雇用にも取り組んでいます。これらの活動が評価され、大阪府のハートフル企業顕彰制度によりハートフル企業貢献賞(H16)、ハートフル企業大賞(H17)を受賞することができました。 改善策紹介 『人と環境とのつながりを大切にした社会づくり』の実現に向けて ここがPOINT ケース会議で特性をチェック〜障害者の持てる力を十分に引き出す工夫 ケース会議とは、当社現場専任者とエル・チャレンジ(支援者)、清掃作業先の施設担当者などが参加する会議のこと。月に1回程度開き、本人の特性(技能面、社会適応力など)を総合的に判断している。これにより雇用の定着、生活の支援体制を強化し、柔軟な職場づくりをかなえた。  職場で働く障害者のできることとできないことを熟慮した上、作業場所、タイムテーブルなどの組み合わせを決める必要がある。当社では、障害者一人ひとりの能力を最大限に活かすことを目的に『ケース会議』を開き、作業量や作業レベルを作業日誌、清掃作業手順書などから判断。配置後、作業内容等が本人の特性とうまくマッチングしない場合は、エル・チャレンジ担当者と現場専任者の見解をすり合わせ、本人の意向も確認しながら、障害者本人が心から満足できる職場体制を支援者とともにつくり上げている。 改善策1 職場に現場専任者を配置〜安心して働ける支援体制の強化 職場に現場専任者(健常者)を養成することで、よりきめ細やかな支援が可能。障害者と一般社員との連携や調整も取りやすく、問題が大きくなる前にその場で対応することができるようになった。  当社では、エル・チャレンジ及び大阪障害者職業センターよりジョブコーチの支援を依頼し、現場配置後2週間以上の支援体制をとり、知的障害者の安定した作業及びレベル向上をめざしている。本社では障害者職業生活相談員(現場管理)を8名配置し、障害者の勤務する班には現場専任者(業務指導など)を配置し、サポート体制の強化に努めている。 用語解説 「ジョブコーチの制度と役割」  ジョブコーチによる支援は、国の制度として独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構が運営する地域障害者職業センターが実施するもの及び障害者雇用納付金制度における職場適応援助者助成金の支給を受けて、法人や事業主が行うもののほかに、県や市町村など地方自治体の事業として行っているもの、民間の社会福祉法人などが独自に行っているものなどさまざま。いずれも「障害のある方の就職や職場定着のための支援」という点では一致しているが、それれ違う制度で運営されているため、ジョブコーチの仕事の範囲、処遇、研修などはそれぞれ相違点がある。 効果  現場専任者が障害者の清掃作業を意識しながら指導することで、職場環境や障害特性に合わせた指導ができるようになった。現場専任者を中心とした職場コミュニケーションを確立できた。 効果  現場責任者が障害者の清掃作業を意識しながら指導することで、職場環境や障害特性に合わせた指導ができるようになった。現場責任者を中心とした職場コミュニケーションを確立できた。 改善策2 個々の適性に応じた職務分析〜個々の適性と作業工程のマッチング 一日の作業工程と個別の作業を細分化し、障害者本人の得意・不得意を明確に把握。さらに現場専任者やジョブコーチなどの意見をすり合わせることで、一人ひとりの職務をマッチングすることができた。  個々の適性に応じた職務分析を図るため、当社では一日の作業工程を掃除機がけ、トイレ清掃、フロア清掃、階段清掃、手すりや備品の拭き掃除などに細分化し、一つの工程をさらに清掃箇所ごとに細分化している。たとえばトイレ清掃の場合、便器の清掃、トイレットペーパーの補充、衛生金物(レバー・蛇口等)の拭き掃除など10〜15の作業工程があり、職場では各自が分担して作業を行っている。  エル・チャレンジの訓練生雇用に際しては、エル・チャレンジ担当者と現場専任者により職場の視察及び検証を行い、雇用後2週間以上はジョブコーチによる指導方法の支援を受け、本人の緊張を和らげながら現場専任者との関係を築き、作業指導を行っている。はじめは作業手順書に従い、時間が掛かってもすべての作業を行うようにしているが、本人の特性によってできない工程については、本人の得意な作業を見つけだし、ケース会議で再度本人の能力を検証しながら作業効率アップにつなげている。 効果  清掃箇所を細分化することで、本人の能力を最大限に発揮できる職場環境を整えることができた。副次的な効果として業務全体の効率化を図ることができた。 改善策3 清掃機器を使いやすく改良〜キャリアアップのために 同じ清掃業務でも「日常清掃」と「定期清掃」とでは全く異なる作業が必要とされる。キャリアアップのために、道具の改良、作業手順の整備、清掃機器の取り扱い講習会などを行っている。  障害者の採用後、日が経つにつれ作業ができるようになるため、その変化や状況に応じて最も適した職務を考えることがキャリアアップのカギとなる。新しい職域を広げるための工夫としては、清掃機器の改良や作業手順にも目を向けている。たとえば、自動床洗浄機・洗剤や清掃器具を入れるダストカートといった機器は、UD(ユニバーサルデザイン)に配慮したものを選び、なおかつ知的障害者にも見やすいようにカラーテープを貼ったり、滑り止めを付けるなどの工夫をしている。建物清掃については、清掃の手順や心構えなどが解説されている独自の清掃技能テキスト(発行/エル・チャレンジ)を配布し、作業クオリティの均一化を図っている。 効果  作業の正しい手順や安全への配慮・工夫は必須。図解による指導や道具の色分けなどで作業効率がアップした。 改善策4 身分証明書で通勤も安心〜日常生活面でのサポートの充実 職場や現場専任者の連絡先、本社連絡先などが書かれた「身分証明書」を通勤時に身につけることで、緊急時にも迅速に対応可能。安心して職場への通勤ができるようになった。  障害者が日々安心して通勤できる体制を整えることは、業務支援と並ぶ大きな柱の一つと言える。以前、知的障害者がキャッチセールスに巻き込まれたことがあったが、ふだんの生活にも気を配っていた現場専任者らの迅速な対応によりクーリングオフすることができた。  当社では、通勤の不安やストレスを少しでも軽減できるように、ジョブコーチの指導・協力を仰ぐとともに、通勤時に乗る電車の時間、駅から就労場所までの経路等を書き入れた身分証明書や入庁証を携帯するよう指導している。また、社内ボウリング大会や親睦会、業務先・発注元との対抗ソフトボール大会などのレクリエーションを通して親睦を深めている。 効果  障害者の日常生活面での不安をできるだけ軽減することで、勤労意欲の向上や遅刻率の低下など社員のモチベーションアップを図ることができた。 改善策5 園芸福祉活動で地域の中へ〜植物でつなぐ笑顔の輪 ビルメンテナンス業のスキルを地域活動に生かすために園芸福祉活動を実施。植物とふれあう中で「みんなで幸せになろう」という気持ちを参加者たちに広く伝えている。  障害者雇用やホームレス雇用で得た“人とのつながり”を社会の中でさらに深めていきたいとの思いから、園芸福祉活動を手法とした環境福祉サービスを展開している。園芸福祉活動とは、地域のさまざまな場所で営まれる植物の種子〜発芽〜生長〜開花〜結実〜収穫というプロセスに幅広い年代の方々が参加し、植物と接する活動を通して福祉的・療法的効用をねらったもので、環境保全やまちづくり、情操教育や生涯教育、障害者・高齢者福祉まで幅広い分野での活用が期待されている。  平成17年末に指名により総合福祉施設の清掃管理業務を受託。当社では、NPO法人たかつきと協働するかたちで、特別養護老人ホーム及び知的障害者デイサービスの利用者15名を対象とした園芸福祉活動を本格的にプログラムとしてスタートさせた。毎週火曜日の園芸福祉活動をサービスとして行う中で、清掃業者として働く当社の知的障害者と施設利用者の方々の間に温かい交流が生まれ、ふだんの仕事とは異なる人の役に立つことの喜びが育まれている。  この活動と並行し、平成18年から府営公園住吉公園の指定管理者として運営管理を行い、エル・チャレンジに業務委託して同公園を訓練現場として提供し、住吉公園からの技術提供によりエル・チャレンジと協働で職域開拓事業を行っている。エル・チャレンジの知的障害者の就労訓練では、植物の植え付けを企画したが、苗木を踏みつぶしてしまうなど植物への愛情をうまく引き出すことができず試行錯誤を繰り返した。改善策として、手始めに小玉スイカを栽培、収穫して食べる喜びを感じてもらった。次のステップとして、目に見えない土の中で成長していくジャガイモ栽培にチャレンジしてもらい、自分たちが世話をしなければ枯れてしまうということを感じてもらえるまでになった。今では、知的障害者の訓練生だけで、デザインやテーマを決めて花壇を作れるほどに成長し、園芸福祉の効用を実感することができた。  これらの住吉公園での園芸福祉活動の様子は、NHK放送の関西ニュース「とっておき一番」でも放送(平成19年6月6日)されて大きな反響を呼んだ。今後も活動を継続していきたい。 ●植物と接することでもたらされる効果 福祉的効用「つながり」 療法的効用「エンパワーメント」 効果  清掃業とは異なるアプローチで社会とつながることができた。また、地域の多彩な人々とふれあうことで知的障害者の特性をよりよく理解することができた。 小さなきっかけやアドバイスで職場環境は大きく変わります。 現場専任者 武田健二さん(右) 社員 三山智弘さん(左)  大阪市庁舎の清掃作業の現場専任者(主任)を務める武田健二さんは、フロアの作業者13名(知的障害者6名・身体障害者[体幹の機能障害5級]・健常者6名)一人ひとりの仕事の進捗状況を確認する役目を担っています。「毎日大勢の人が行き交う所ですから、清掃のチェック項目は多いですね。床のモップがけや案内板のふき取りなど、丁寧な作業を心掛けることはもちろんのこと、通行人の方とぶつからないようにするなど、清掃以外にも配慮すべきポイントがあります」と武田さん。同じ班のメンバーとして勤務する三山智弘さん(知的障害者)にもお話を聞きました。  「市庁舎の清掃作業は今年で3年目。以前は見えにくいドアの隙間や、モップ掛けが難しいフロアの隅など、細かいところまで心配りができなかったのですが、武田主任さんのおかげで今ではできるようになりました。これからは洗い場の下の隙間を余裕をもって清掃したいです!」とかなり意欲的です。  「みんな問題意識をもって仕事に臨んでいます。三山くんは細心の注意を払って作業を進めるので、頭の中でうまくやろうと思っていても、実際にできないとストレスをため込んでしまうタイプ。知的障害者の方の中にはパニックなどでその場で泣き出してしまう人 もいます。そんな時は無理に立て直そうと考えずに、待ってあげることも必要です。一人ひとりの障害特性を理解するのは難しくて、いまだに発見も多いですね」とのことですが、より精度の高い清掃作業をメンバーに求めることもあるため、敢えて厳しい言葉をかけるときもあるのだとか。  「一番励みになるのは、最近この辺きれいになったねと、通行人の方に声をかけてもらえること。知的障害者の方は何をすれば誉められるのか理解できない部分もあるので、“こういうことをやれば人から評価してもらえるよ"という部分を上手にアドバイスしたいですね」と武田さん。  アットホームな職場で、情熱的に仕事に打ち込んでいく。いつもの職場には自信に満ちた笑顔がきらきらと輝いています。 優秀賞 有限会社九州ヘラルド(大分県大分市) 障害者がより使いやすい「便利」で「優しい」システムを開発 文字表現が苦手な障害者のために、タッチパネルによる検査・管理システムを導入 改善の経緯 絨毯・カーペットなどのクリーニング事業を手がける当社では、昭和60年頃から、障害者の雇用をはじめ、現在、7名の知的障害者が働いています。工場内の諸作業のほとんどを障害者が行っていますが、数年前から、クリーニング預り品の「事前チェック」の際、手書き伝票の作成に時間がかかりすぎる、表記内容が判別しにくいという問題が発生していました。そこで当社では、手書き伝票から、コンピュータ入力への移行を決意。大分県が独自に行っている平成18年度障害者自立就業支援事業にコンピュータによる検査・管理システム案を応募し、採択されました。その後、県から開発支援費を得て、タッチパネル方式によるコンピュータシステムが完成。平成19年4月より、自社費用で開発したバーコードによる商品・管理システムとリンクさせ、現場へ導入しています。 企業プロフィール 有限会社九州ヘラルド ■代表者:代表取締役社長 高橋正則 〒879-7764 大分県大分市大字上戸次3831番地 TEL097-597-0531 FAX097-597-0538 業種及び主な事業内容  絨毯・イス・ブラインドなどのクリーニング業務、業務用絨毯の出張クリーニング業務 障害者雇用状況 従業員数9名のうち障害者7名(平成19年6月1日現在) (内訳) ・知的障害者7名(うち重度2名) 雇用の背景 簡単なチェック伝票でしたが、読み書きが苦手な障害者には、大きな作業負担だったのです。 代表取締役会長 高橋泰夫さん 手書伝票は、文字が判別できず、表記内容にばらつきがあり不正確でした  当社は「障害者にとって働きやすい環境とは」を常に考え、障害者の仕事効率アップのために、機械の自社開発や運搬方法の改善を重ねてきました。その結果、洗浄・乾燥・運搬など、クリーニングにおける様々な諸作業が、すべて障害者の手によりスムーズに行われる職場環境が実現しました。しかし、クリーニング作業に入る前に行われる預り品の「事前チェック」の段階で、どうしても解決しなくてはいけない大きな問題を抱えていたのです。  「事前チェック」とは、工場に入荷されてきた絨毯やカーペットなどに損傷・破損・シミなどがないかを確認する作業を指します。クリーニング前に、不良箇所を発見した場合、正確・迅速に得意先(契約しているクリーニング店)へ通知することで、クリーニングの際に起こったトラブルではないことが証明される重要な確認作業です。当社では5年前より「事前チェック」を行なっていましたが、すべて障害者の手書きによる伝票で実施していました。  文字表現を苦手とする知的障害者による手書きの伝票作成は、多くの問題を抱えることになりました。当社では、3年前にバーコードと数字による商品管理システムを開発していたのですが、手書きの伝票には、数字の書き間違いや、判別に迷う筆跡が数多く見られました。また損傷の度合いや破損箇所などの表記にも、障害者により、かなりのばらつきや意味が分かりにくい報告内容がありました。 作業を完全に中断しての伝票記入 1枚あたり10分を費やしていました 当社では、担当指導員が「ほつれ」「破れ」など、不良状態の表記の仕方をアドバイスしたり、絨毯を意味する四角形を伝票に印刷し、不良箇所に印をつけるフォーマットに改良するなど、不良状態の判断や表記方法にためらいをみせる障害者に対して、細やかなサポートを続けました。それでも、1枚の伝票を作成するには10分を要し、不良箇所のチェックも不正確のため、現品と伝票との照合が何度も必要でした。1枚の手書き伝票の不備が、得意先への不良通知の大幅な遅れを引き起こしていたのです。 単純な記入方式であるにも関わらず、なぜトラブルが多発するのか。読み書きの苦手な障害者が全員、迅速に正確な伝票を作成できる方法はないのか。そんな想いを抱いていた私たちは、文字を“書く"という行為が障害者にとって、とても大変な作業であることから、これまでの手書き伝票をやめて、コンピュータによる検査・管理システムを導入することを決意したのです。また、商品項目や作業完了枚数などを手書きで記入していた作業日報にも誤りが多かったことから、併せてコンピュータ入力に変更することにしました。ただし、キーボードによるタイピングでは、書くことと同じ負担を障害者に強いることになるので、あるアイデアを取り入れることにしました。 改善策紹介 「分かりやすい」、「使いやすい」を念頭に障害者が「主役」になれるシステムを創造 改善策1 タッチパネルシステムを開発〜障害者が一番操作しやすい方法を模索 障害者にとって、文字を書くことも大変だが、パソコンのキーボードを正確にタイピングすることも、かなりの訓練が必要である。そこで、カーナビにヒントを得た、シンプルなタッチパネル方式のコンピュータシステムの開発が進められた。 当社では、これまで年間2,000〜2,500点ものクリーニング預り品を手書き伝票でチェックしていた。今回のコンピュータシステムの開発にあたり、まずは、障害者が苦手な文字表現を視覚判断へと変換する作業が進められた。プログラム開発業者の協力により、手書き伝票に障害者が記入した600以上の不良箇所の表記をデータベース化。その中から「ほつれ」「破れ」など、代表的な不良状態の種類を選定していった。不良箇所の選択項目は細分類化すれば少なくとも100以上のパターンが考えられたが、種類が多すぎることで、障害者が現品とのすり合わせ(不良箇所の選択)に時間を費やしたり、判断基準があいまいになることを考慮。最終的には20パターンにまで絞り込み、不良状態を撮影した写真をもとに絵文字化した。さらにチェック画面に絨毯と同じ四角形を表示し、不良状態を絵文字の中から選択した後、現品の不良箇所と同じ部分を画面上でタッチすれば、自動的にコンピュータに保存されるシステムが完成した。  また、障害者がパソコン作業をスムーズにこなせるようにキーボード、マウスは使わずに、画面を直接、指で触れるタッチパネル操作を採用。コンピュータの導入が障害者にとって、これまで以上の作業ストレスを生まないように、誰もがマスターできる取り扱いマニュアルを工夫した。コンピュータによる作業効率・正確性の向上を目的としながらも、効率至上主義に走るのではなく、真にやるべきことは最新のシステムを利用した「人材育成」だと考えたからである。 コンピュータシステムによる絨毯検査の流れ @バーコードで作業者、商品を登録後、絨毯の不良箇所を確認 Aパソコンに移動し、検査内容を登録。画面から、不良状態の絵文字を選択 Bパソコン画面にある絨毯の四角形で不良箇所の位置を選択 登録された不良箇所のデータはオンラインで事務担当者のパソコンへ保存・データ管理されます。 改善策1-1 判別しやすい絵文字を採用〜シンプルな表示画面へ改良 障害者にとって多くの情報を取り入れ、すばやく理解することは難しい。写真ではなくイラスト、カラーではなくモノクロに選択画面を改良することで、情報の簡素化を図った。 プログラム開発業者が作成した写真画面は、障害者にとって複雑な部分もあったため、分かりやすい絵文字へと変更した。当初、タッチパネルの不良箇所の表記画面は写真を使用していたが、「絨毯の色や模様などが入っている写真では、多くの情報に障害者が混乱し、見るべきはずの不良箇所への注意力が低下するのではないか」とのジョブコーチのアドバイスで、モノクロのシンプルな絵文字を考案。様々なイラスト案を提案してくれたプログラム開発業者の全面協力のもと、最良の絵文字を選択画面に採用した。 絵文字は、障害者が迷わず選択できる絵柄にするため、パソコン作業の時間や諸動作を細かくリサーチし、何度も改良を加えた。最初は絵柄のある・なしで表と裏を表現していた絨毯の画面も、最終的には、画面中央部にひらがなで「おもて」「うら」と大きく表記したものへと変更した。その結果、一律ではない、より障害者が使いやすい画面となり、コンピュータが障害者の判断能力の補助として有効に機能するようになった。 効果 現品の状況と絵文字をすり合わせる作業に戸惑いがなくなり、障害者の不良箇所の選択スピードが短縮された。 ここがPOINT 体験型の操作指導〜理屈ではなく、体で覚える 障害者が、新しい作業やシステムにスムーズになじめるかどうかが、導入時の大きなポイントだった。取り扱いマニュアルを説明するのではなく、まずは「見ること」、「触れる」ことに重点を置いた。 「今までは既存のソフトを障害者でも使用できるように指導していたので、初めから障害者のために開発されたソフトはすごく親切で、障害者への指導もスムーズでした」とジョブコーチが語るように、障害者がより使いやすいように改善された検査・管理システムは、現場で働く障害者にほとんど抵抗を感じさせなかった。導入指導においては、手順を説明するマニュアルも作成したが、見なくても行えるよう、障害者自身が、見ること、触ることを繰り返しながら、体で覚えるという方針で臨んだ。 その結果、短期間で20代〜50代にわたる障害者全員が基本的な流れを身につけることができた。特にテレビゲームや携帯電話などと日常的に接している若い世代は、初めからパソコンに興味を持ち、積極的に学んでゆく姿勢が見られた。 また、指導の際は、タッチパネルの操作だけでなく、検査全体の流れを丁寧にアドバイスした。チェックする絨毯をどのように広げて、自分がどの位置からチェックを行なうのかも具体的に説明。絨毯のセッティングや検査者の立ち位置があいまいでは、パソコンの絨毯画面にチェックする際、左右上下の位置が反対になるトラブルが起こるからである。解決策として、検査者の立ち位置を固定するために、床に足形マークを描いた。これにより、所定の位置から見て、左右上下のどこに不良箇所があるかをコンピュータの表示画面に正確に反映できるようになった。 改善策2 バーコードシステムの活用〜作業情報を正確に保存・管理 タッチパネル方式による検査・管理システムの導入に合わせ、商品識別のために3年前に開発した商品管理バーコードシステムとのリンクを図った。さらに読取端末機を使い作業者をコンピュータに登録することで作業データの個人識別が可能となった。 3年前から預り品にバーコードカードを添付することで、200店以上の得意先(クリーニング店)や商品カテゴリーなどを管理していたが、今回の検査・管理システムとのリンクを機に、「事前チェック」やクリーニング作業を行う障害者にも、作業前に必ず自身のバーコードを読取端末機に通すことを義務づけた。これにより、誰が、いつ、どの商品を取り扱ったのかが、データとしてコンピュータに自動保存されるようになった。バーコード検索をすれば、預り品がクリーニング工程においてどの作業段階にあるのかをすぐに確認することができるため、得意先からの問い合わせや損傷確認にも迅速に対応。預り品の状況をより正確に管理できるようになったことで、得意先からの信頼が確かなものとなった。 また、一連の作業工程において、作業に就いた障害者を個人識別することが可能になり、各々の作業情報の完全収集が実現した。現在、蓄積された障害者一人ひとりの作業データから、本人の癖や得意・不得意分野・クレーム率などを分析。障害者に対して、大まかな指示ではなく、ピンポイントでアドバイスや技術指導ができるため、個々の技術レベルが確実に向上。工場全体の作業クオリティが高まった。 改善策2-1 手書きの作業日報を廃止〜作業軽減と障害者の就労意識が向上 伝票と同じく、これまで手書きで記入していた作業日報もコンピュータ入力に変更。障害者にとって、“枚数を数える"“書く"という手間がなくなり、作業報告の表記・内容も統一化が図れた。 作業日報には、絨毯・イス・ブラインドなどの商品項目、配置人員数や作業完了枚数などを記入していたが、記入者により、数字のカウントが不正確で、現品と表記された枚数に大きな誤差が生じていた。また、クリーニング終了から数日後に行う最終検品において再洗いの判断が下されても、担当者名を表記していないため、誰が作業にあたったのかが判らないケースが多く、再洗いの原因の把握や対策に取り組めない状況が続いていた。そこで、手押しのカウント計器による枚数測定、手書きの作業日報を廃止し、バーコードシステムへと完全移行した。作業者の名前、枚数などの必要データを自動的にパソコンへ登録することにより報告数字と実際の作業枚数のカウントは誤差のない正確なものとなった。 効果 バーコードにより作業者が識別されたことで、障害者に責任感や向上心が芽生え、再洗い率が低下してきた。 ここがPOINT 障害者の「声」がベストなシステムをつくる〜今後の課題 当初はシステムの慣れや操作スピードに若干の差があったものの、導入から半年近くが経ち、コンピュータによる検査・管理システムは工場で働く障害者全員に有効活用されている。今後は、現場で作業する障害者の「声」がシステムをよりよいものへと進化させていくだろう。 コンピュータシステム導入時に懸念されていた障害者のパソコンへの抵抗感はほとんどなく、操作ミス、絵文字判別の迷いなども、障害者の近くで指導員が質問に答えながら指導を重ねることで、解決・克服している。「現在、20パターンある不良箇所の絵文字を半分まで絞り込んでほしい」、「タッチパネルの指でふれる画面を大きくしてほしい」など、現場で作業する障害者からも提案が寄せられはじめているので、今後は、導入指導にあたったジョブコーチとともに、さらにシンプルで能率アップにつながるシステムへとマイナーチェンジを繰り返していきたい。将来的には、現在、手書きで行われている最終的な検品作業(再洗いチェック)もコンピュータによるシステム化を目指している。これにより、非常に真面目で高い集中力を作業中に発揮する障害者の職域がさらに広がることを期待している。 ダー的な役割を担う人材を育てることも当社の大きな目標です。 パソコンの前で作業する障害者の姿は、どこか誇らしげで、カッコイイですよ 担当指導員 小野聖子さん(中央) 社員 吉野亮二さん(右) 社員 小野修平さん 高橋会長とともに、長年にわたり障害者の指導に取り組んでいる小野聖子さん。「障害者の成長をゆっくり、じっくり見守ることが大切」と語る?橋会長の考えを現場で活かしながら、人材育成をサポートしています。身近に障害者と接している小野さんにとって、今回のコンピュータによる検査・管理システムの導入は大きな賭けでした。同社には、若手からベテランまで幅広い世代の障害者が働いていることを考慮しながら、職場のみんながしっかりと使えるコンピュータシステムをスタッフ、ジョブコーチとともに考案したそうです。作業長の吉野亮二さんは、導入当初、不慣れなコンピュータ作業には消極的でしたが、「手書きの伝票よりも簡単にできるから、その他の作業に集中できる」と、今では自分からパソコンに向かうようになりました。いろんな機械に触るのが大好きな小野修平さんは、コンピュータゲームを楽しむ感覚で、タッチパネルをマスターしていきました。「不良箇所を選ぶアイコンの数がさらに少なくなると、もっとスムーズに作業ができると思います」と、現場ならではの「声」を聞かせてくれました。「みんなの働きぶりを見ていると、バーコードリーダーを扱ったり、パソコンの前で作業するときに、どこか誇らしげなんです。カッコイイと感じてもらえてるんじゃないかな」と小野さん。 大分障害者職業センターのジョブコーチ制度を活用し、障害者を採用している同社。障害者の半数以上は、工場の近くにあるグループホームから通勤しています。「職場の関係者だけでは、障害者の精神面の支援はできません。ジョブコーチの専門的な支援やグループホームとの意見交流会を行ない、みんなで障害者にとって働きやすい環境をつくり出すことが大切ではないでしょうか」と小野さん。 コンピュータシステムのみを開発するのではなく、そのシステムを活かした職場が、障害者にとって自身の能力を100%発揮できる場所であること。さまざまな支援機関とともに、障害者が「主役」の職場づくりを進める同社は、何よりも「人」と「人」とのつながりを大切にしています。今後は、より障害者を支援する社内システムを確立するために、支援者となる従業員1名と障害者2〜3名のチーム体制を検討しているそうです。 優秀賞 株式会社富士電機フロンティア(神奈川県川崎市) 自立したい意欲を引き出す社員教育とキャリアアップモデルの構築 業務目標制度の導入で意欲を引き出しリーダー制度の導入で自立を促進 改善の経緯 当社は富士電機グループ13社の特例子会社として平成6年に設立しました。主な業務は、グループ内の構内清掃、メール配送、製本印刷、部品組立等です。川崎事業所の他に、平成13年に東京事業所、平成17年に三重事業所、平成19年2月に大崎分室、平成19年4月に吹上事業所を設立、障害者の雇用拡大につとめています。 設立から14年目を迎えた川崎事業所では、10年以上のベテラン社員が大半となり、マンネリ化によるモチベーション低下の問題を抱えていました。そこで、グループ内の一般社員と同様に「業務目標制度」を導入し、達成感を得ながら成長できる環境をつくりました。この目標には、仕事だけではなく、従来から行ってきた体力づくりや、知力維持のための計算問題等の取り組みにも連動させています。また、各業務ごとにリーダーを任命し、グループのとりまとめをまかせたところ、新たな可能性と能力を引き出すことができました。 企業プロフィール 株式会社富士電機フロンティア ■代表者:代表取締役社長 林傳一 〒210-9530 神奈川県川崎市川崎区田辺新田1-1富士電機システムズ(株)川崎工場内 TEL044-329-2380 FAX044-329-2381 URL http://www.fujielectric.co.jp/frontier 業種及び主な事業内容 サービス業(製本・印刷、ダイレクトメール封書詰め、現地事務所用備品・装器具類配送、メール集配、清掃、タービンブレード研磨、工具センター、資料・カタログ管理、パソコン入力、リサイクルセンター、複写資料集配、自動販売機用部品組立) 障害者雇用状況 従業員数61名うち障害者46名(平成19年7月1日現在) (内訳) ・知的障害者……………43名(うち重度14名) ・聴覚障害者…………… 1名 ・肢体不自由者………… 1名 ・内部障害者…………… 1名 雇用の背景 本人の「働き、自立したい」意欲を活かし 企業の発展と雇用継続をめざしています。 取締役業務部長 西村平和さん 新規採用を行うときは「本人の意欲」を重視する 特例子会社立ち上げのきっかけは、労働組合の働きかけでした。社員のお子さんにダウン症の方がいて「働く場所がなく困っている」という現状を訴えていたこと、また労組の委員長が電機連合神奈川地方協議会の障害福祉委員会を常任理事として担当していたことから、富士電機グループに特例子会社を作れないかという声があがりました。障害者の働く場を創出することがグループ全体の方針に合致し、ちょうど法定雇用率に知的障害者がカウントされるようになったタイミングでもあり、1年の準備期間を経て当社の設立に至りました。 初年度に13人を採用しましたが、その中で残っている社員は現在3名だけです。当時は特例子会社の先例も少なく、障害者に接した経験や知識がほとんどない中で、試行錯誤をしながらの運営でした。 どんなに学校やハローワークで推薦しても、本人に「働き、自立したい」という意欲がなければ仕事は続きません。意欲のある人に適切な方法で仕事を教えることができれば、どんどん吸収していきます。その点を面接や実習の際に見極めて採用するようになってから、定着率はあがっていきました。 マンネリ化を防ぐために、目標を作ってチャレンジ 特例子会社といえど企業の発展があって雇用の継続が可能となります。また、それを可能にしてくれるのは社員の成長なくしてはありえません。したがって、社員の成長を促す施策と、成長に合わせて新しい仕事・課題を与え続ける仕組みをもたないと、マンネリ化が発生することになります。これは、一般の企業も同じことであり、成長を続けるには目標を設定することが基本になり、当社でも決して例外ではありません。 成果は指導員が評価し、順位付けも行い、賞与に反映させています。障害の程度はそれぞれに違いますから、順位付けすることに対して批判的な意見もあります。しかし評価の過程において、本人はもとより、各指導員の観察眼や育成方法にも言及する事になり、指導員のレベルアップにも重要な役割を果たしています。 世の中に貢献することができる「自立した人」に厳しく育てる 職業人としての能力を高め、自立につなげることは「人として尊重する」という側面があります。そして、働く喜びを通じて物事を前向きにとらえる心を育成することにつながります。常々、社員には「利益を出して税金を納めることが、世の中に貢献するということなんだよ」と話しています。 事業拡大により新規採用が増え、新人の指導などの場面で先輩社員が活躍し、職場が活性化してきました。リーダーとしての責任を与えることで、社員の能力が高くなり、可能性を伸ばすことができます。一人ひとりの成長があってこそ、社員と会社の自立は可能になるのだと思います。 改善策紹介 自立に向けた各種「教育」を実施し、努力と成長に見合った「評価」をする ここがPOINT 業務目標制度を導入〜各社員の能力に応じた目標に向けて努力 仕事だけでなく、健康、協調性などについてウィークポイントを明確にし、半年後に達成する目標を社員一人ひとりが設定した。毎月1回、月別評価シートを見ながら指導員がフォローして評価し、その結果を家族などに見せてサインをもらっている。 管理職が一方的に目標を与えるのではなく、お互いに話し合い、納得した上で実現可能な目標を設定し、個人の自主的な管理をベースにして目標達成を目指す目標管理の制度を組織的に取り入れる企業や事業所が増えている。富士電機グループでは他の社員が同様の「業務目標制度」に取り組んでいたことから、当社の社員も挑戦することになった。 例えば、清掃であれば「作業の中で指差呼称を実行し、汚れが残っていないか確認。指摘件数月2件以内を目指す」、製本であれば「最初から最後まで1人でできるようにする」など、それぞれの業務に即した目標を設定した。さらに「忘れ物をしないように、手帳を朝晩読んで確認」「言葉遣いに注意」「話に割り込まない」など生活面について改善する必要があるものは目標に加えた。 目標が具体的になることで、社員たちの努力し挑戦する意欲が高まっていった。指導員としても目指すものがはっきりすることで指導しやすくなり、家族などとも評価シートのやりとりを通じて連携することから、相互理解が深まるというメリットが生まれた。 目標をもたせる ・行動目標の設定 ・半年後の姿 ・計算問題 達成感を共有する ・月別個人面接 ・グループ評価 評価する ・給与・賞与に反映 成功事例の積み上げ 社員の自立と会社の成長 ・新たな挑戦 改善策1 朝の体力づくり運動〜スクワットで足腰を鍛える ほとんどの仕事が立ち仕事であること、身体の衰えは足腰から始まることから、グループの全社員が行う「富士電機体操」の前に80回のスクワットを行っている。 現在雇用されている知的障害者は若年層のみだが、富士電機グループでは平成18年から65歳選択定年制を採用していることから、長期間の雇用に向けた対策が求められている。特に知的障害者は、働き続けられる年齢の上限が同一職種の健常者よりも低いというデータもあることから、体力づくりを通して健康を維持し、少しでも長く勤めるために、スクワットを取り入れた。 筋肉を鍛えるかなり負荷のあるトレーニングだが、全員がまとまった動きで参加している。現在、病欠は年間通して1〜2名と非常に少ない。30年以上先を見据えた長期的な取り組みである。 改善策2 知力の維持向上〜毎朝礼後に計算問題に取り組む 買い物などの社会生活に役立てるためと、知力の衰えを防止するため、毎朝礼後5分間で小学校4年程度の算数の応用問題を出題している。  各社員のレベルに合わせた3段階の問題を準備し、全員に達成感を持たせる工夫をした。入社時には、時計を読むことができない社員や5分の決まった時間内で問題を解けない社員もいたが「時間を守らなくてはいけない」ことを指導員が根気よく説明し、仕事に支障がでないように配慮した。問題を毎日解くことで、社会生活に必要な計算力が自然に身につき、また脳が鍛えられて知力の低下を防ぐことが期待されている。さらに、正解率の目標を具体的な数値目標として定め、「業務目標制度」と連動させている。 効果  仕事にとりかかる前の習慣として定着した。時間の計算、%の出し方などができるようになり、またお金の計算は、食事会や買い物の時にも役立ち、日常生活上の自立を進めることができた。 社員と家族などの成長を見守る「世の中ノート」 業務課長兼指導員 金田豊子さん  世の中がどう動いているのか、なにが起きているのか…。自閉傾向の強い社員や新人に、他の社員同様に時事問題に関心をもってもらおうと取り組んできたのが「世の中ノート」。家で毎日の気づいたことや新聞の内容等を記入してもらい、それに対して指導員がコメントを記入して返す交換日記です。「最初は1時間かけて書いていた社員もいましたが、少しずつ早く書けるようになり、また、きれいな字を書くようになって、文章を書く能力も上がってきました」と金田さん。  「うまく言葉で表現することができない社員には日々の行動を記入してもらうことで、普段の様子や考えていることを指導員が知ることができますし、家族などとのコミュニケーションにも役立ちます」。家族なども会社での取り組みが分かると安心が生まれ、会話が生まれるのだそうです。  金田さんは、「自立に向けた取り組みは、会社の目線と家庭の目線が合わなければ絶対にできない」と強調します。 入社したばかりの社員の家族などは、これまでの経験から「自分の子どもは何もできない」と過干渉になりがち。ノートで連絡を取り合い、自立を目指すことが本人のためになることを伝えていくことで、社員が一歩、踏み出せることがあるのだそうです。  「成長を実感できれば離れて見守ることができるようになるのですが、それにはだいたい10年くらい必要ですね」と金田さん。会社では、両親が亡くなった後にも自立して社会生活ができるような人材の育成を最終的な目標として、試行錯誤を続けています。 改善策紹介 社員と企業のマンネリ化を防ぐ「リーダー制導入」と「事業拡大」 改善策3 リーダー制の採用〜指導員の職域へ進出 会社の設立当初は、1人の指導員から複数の社員が指示を受けて動くシステムで仕事をしてきたが、さらなる自立を進め、責任感を育てるために、清掃・メール・製本・印刷といった業務ごとにリーダーを任命し、グループの自主的な運営に取り組み始めた。  指導員や関連会社社員から清掃などの仕事のやり方を徹底的に教育され、一人で仕事を進められる社員が増えてきた。そこで各社員ごとの計画時間表をつくり、指導員がいなくても次の仕事に移れる仕組みづくりが進められるようになった。新入社員に先輩社員が仕事を教え、リーダーがグループをとりまとめる。すると、リーダーの責任感が向上し、仕事をする上で発生した問題解決に向けた様々な動きがでてきた。例えば、清掃グループには、清掃した場所にモップや洗剤などの掃除用具を置き忘れてしまうことが多い社員がいた。それを解決するために、リーダー自ら「掃除用具のチェックシート」づくりを指導員に提案し、新たに設けることになった。  仕事の中で起こるちょっとしたトラブルについては、指導員は「どうすれば解決できるか」をまず自分で考えるようにうながしてきたが、一人では解決できない時にはリーダーが中心になり、グループ全体で解決できるようになった。「リーダーは困ったときに頼れる人」という認識がグループ内に広がり、お互いに信頼関係を築くことができた。障害者であっても、部分的に指導員の役割を担う能力をもつ者はおり、リーダーとしての役割を果たし、責任をもって仕事に取り組むようになった。 リーダー養成のプロセス 基本 指導員からの独立(自主運営) 社員の能力を信じ、任せるところは任せる 社員同士で教えあう(先輩から後輩へ) 指導される側する側のものの考え方が醸成される 相互理解のもとに仕事をする 土壌の育成 リーダーとしてもっと品質を高くしなければいけないと思う。 清掃業務グループリーダー 岡田裕也さん  入社12年。清掃グループのリーダーとして5人のスタッフをとりまとめている岡田さんは、リーダーになって「人に仕事を教えることがどんなに大変か分かった」と話します。指導員に「教えたことが相手に伝わらないのは、相手だけではなく、伝える側の方法も悪い」と言われたことをきっかけに、相手の立場になって考える努力を始めました。自分が仕事を覚えたときの経験を踏まえ、教える相手には、必ずメモをとるように伝えることも忘れません。「今の新人の方がずっと優秀。自分が新人の時は指導員に言われたことをやるだけだった。最初から仕事を任される今のやり方は仕事も覚えるし、責任感も生まれていいと思います」  そして、リーダーだからこそ、品質の高い仕事をやらなければならないと考えています。「僕に担当が変わったら品質が落ちたとは言われたくないですから」 改善策4 新しい職場の創出〜ベテラン社員のテナントビルへの出向 新しい仕事を取り入れることで、社員のモチベーションを高めようと、ベテラン社員2人を品川区大崎の高層オフィスビル内にあるグループ会社のメール業務に従事させた。  山手線大崎駅に直結したテナントビルの一角にあるため、当初は他の会社の人との関り合いも多く理解を得られるか不安があった。しかし、今のところは全く問題はない。大崎地区においては、紙コップ式自動販売機の補充業務など、健常者13人が従事している業務を、3年後には全て当社社員にする予定である。  川崎事業所の中でも、ダイレクトメールの封入作業などの新しい業務に、本来の担当業務の枠を越えて横断的に取り組んでいる。 効果  川崎事業所内の新規事業については、全社員が各自の本来業務とは別の作業となるが、職場が活気づき、連帯意識が生まれた。  テナントビルでは、当社社員の元気な挨拶が周囲を明るくしているとの声が聞かれる。 教えて!障害者雇用の実際  Q&A Q.勤務体制と勤務時間について教えてください。 A.チームごとにシフトがあります。 清掃7:45〜16:15、メール8:30〜17:00、製本9:00〜17:30です。一斉に残業する時もあります。 Q.知的障害者だけの特例子会社の設立にあたって、環境設備などに配慮した点はありますか。 A.緊急通報ボタンなど特別な整備は何もしていません。仕事に関しては、当初はメール配布先に動物の絵を貼り、絵合わせで配布できるようにするなどもしていたようです。富士電機グループ会社への説明やアピールは社内報などを通じて度々行い、なにかトラブルがあれば全て当社に連絡がくるようにしています。社員自身が元気に挨拶することで存在をアピールし、いい意味でのムードメーカーになっています。とても可愛がってもらっていて、時々お菓子をもらったり、バレンタインにチョコをもらったりしています。 Q.通勤に関して何か配慮していますか。 A.通勤手当ては全額支給しています。自宅やグループホームなど、生活の場はそれぞれ違います。朝5時起きして1時間半かけて通っている社員もいますが、みんな本当に勤勉です。 Q.障害者雇用にあたって申し込んだ助成金制度などはありますか。 A.川崎事業所に関しては、入社時にハローワークから支給される特定求職者雇用開発助成金のみです。助成金に頼らない基盤づくりをが基本ですが雇用の拡大に向けて、各種制度も有効に活用したいと考えています。 Q.特例子会社として、独自の取り組みはありますか。 A.仕事にいきいき取り組む社員であっても、家では楽しみがなく無為に過ごしてしまうことが少なくありません。そこで、会社で様々な行事を企画し、参加を呼び掛けています。新入社員歓迎会にはじまり、バーべキュー、暑気払い、社員旅行、誕生会などは指導員も一緒に行います。社員の自主性を引き出すために、社員だけの食事会も行っています。 優秀賞 株式会社マルイキットセンター(埼玉県戸田市) 業務開発による新たな特性を発見 加齢に対応した職務の開発 段階的な業務開発が、業務拡大と 新しい目標に取り組む風土づくりを実現 改善の経緯  当社では平成4年7月に開設した「戸田キットデリバリーセンター」を前身に、知的障害者のメンバーがマルイグループ営業店で使用する包装紙、事務用品等用度品のピックアップ・出荷業務を受託してきましたが、36歳以上のメンバーが20%を超え、雇用継続の視点からも加齢対応が課題となっていました。  新規職務開発のためグループ内の関連部署にヒアリングを行った結果、平成18年4月より新たに印刷サービス業務を受注することになり、現在はマルイグループより5つの業務を受託しています。メンバー一人ひとりが目標を持って仕事に取り組むことで、新たなことにチャレンジしていく風土づくりが進んでいます。 企業プロフィール 株式会社マルイキットセンター ■代表者:取締役社長 笹川俊雄 〒335-0032 埼玉県戸田市美女木東2-5-1 丸井戸田物流センター2号館2階 TEL048-421-7351  FAX048-421-7357 業種及び主な事業内容 サービス業(用度品のピックアップ業務、商品の検品業務、及び印刷サービス業務) 障害者雇用状況 従業員44名うち障害者30名(平成19年7月1日現在) (内訳) ・知的障害者19名(うち重度4名)(うち重複1名) ・聴覚障害者8名(うち重度8名) ・肢体不自由者3名 雇用の背景 雇用が定着する一方で、長年働くメンバーの加齢対策が必要と感じてきました。 所長 武居哲郎さん 設立から15年が経過し、運営テーマも変化してきました  マルイグループでは、以前から積極的に障害者の雇用を推進してきました。そんな中、店鋪ごとにメーカーに発注していた用度品を物流センターで集約して発注することで、知的障害者の新たな雇用が生まれないかとプロジェクトが発足し、平成4年に障害者16名(うち知的障害者8名)でスタートしたのが、当社の前身「戸田キットデリバリーセンター」です。  それから15年が過ぎ、設立当初から働くメンバーも多いため、運営テーマも「障害者雇用の推進・定着」から、「長期継続・加齢への対応」へと変化してきました。現在の最年長者は40代後半で、5年後・10年後にはなんらかの加齢対応が必要になると感じていたため、平成16年から新たな業務の開発に取り組むことにしました。  これまで知的障害者のメンバーが行ってきた用度品業務は、力仕事もあるため、年齢が上がるにつれて身体的に負担がかかります。そのため、毎日できて、かつ身体への負担が少ない業務の開発が必要ということになりました。 新しい業務開発を通じて、個々の新たな特性を発見できました  マルイグループ各社にヒアリングを行った結果、新たに5つの業務を受注することができ、平成18年4月から印刷サービス業務としてスタートしました。受注にあたっては、段階的な業務開発で信頼度を高めたことが、グループ内部相互での業務紹介に結びつき、事業の拡大を図ることができました。  現在は用度品業務のメンバー全員がローテーションで携わっていますが、将来的には50代になったメンバーを印刷サービス業務専任としていくことも考えています。また若いメンバーの中でも、用度品業務はあまり得意ではなかったけれど、印刷サービス業務では力を発揮する等、年齢に関わらず新しい特性を見つけることができました。長年働くメンバーは、新しく自分の職場ができたと実感しているようですし、他のメンバーにとっても新たな仕事へのチャレンジ機会が増え、一人ひとりが興味をもって各自の能力開発を進めるきっかけとなりました。 地域ネットワークと連携しながら 障害者のライフステージを支援したい  障害の有無に関わらず、仕事をしていく上で誰にでも苦手なことや不得意なことはあります。その人が分かりやすく、間違えにくいように仕事の方法を変えることや、足りない部分を支えてあげることで、一人ひとりの特性がうまく生かされてきたと思ています。印刷サービス業務はまだ始まったばかりなので、経験を積み、改善を加えながら次のステップを考えていきたいと思っています。  今後は障害者の種別を問わず、ライフステージ別の雇用確保につながる職務の開発と、地域ネットワークにおける行政・福祉等の支援機関との連携強化にも取り組んでいきたいと考えていてます。そして、さらに年齢を重ねた時、新たなステージで障害者が自立して生活できる環境を整えていければと思っています。 改善の効果 ・加齢対応への基礎データの蓄積 ・新たな仕事にチャレンジする風土づくり ・一人ひとりの特性を再発見 改善策紹介 誰にでも見やすく・分かりやすい業務手順書を作成し、OJTによる業務指導と自己チェックでステップアップを図る ここがPOINT ヒアリングを実施し、加齢に対応した新業務を開発〜段階的な受注で、導入もスムーズに 20のグループ各社を有するマルイグループの一員であることを活用し、グループ内の関連部署にヒアリングを実施。既存の用度品業務周辺の軽作業や外注している業務を中心に選定し、平成18年4月から順次受託を開始した。 当初は業務担当スタッフが兼任で取り組み、用度品業務のメンバーに応援を依頼する形で運営したが、同年10月から印刷サービス業務を組織として独立させ、マネジャー・スタッフを配置して常駐体制へ移行し、併せて障害者2名の新規雇用も実施した。 現在受注している仕事 [(株)エポスカード]カードの販促物件の封入。[詳細は右ページ参照] [(株)丸井 ASスクール]  丸井店舗に派遣されるお取引先社員の方が、研修の際に使用する教材の袋詰めを受注。テキストや伝票などをピックアップし、ビニール袋に封入。月間1,000セットを発送。 [マルイグループ福祉会・マルイグループユニオン]  労働組合が支部ごとに発行する「かわらばん」の印刷・発行業務と、グループ福祉会発行の各種講座パンフレット等の原稿を出力・印刷・仕分け・ピックアップして、店別・ショップ別に発送。 [(株)エイムクリエイツ]  マルイグループの商品が掲載される雑誌にしおりを挟み込み、各営業店に発送。 [(株)丸井 提案制度推進委員会]  委員会が発行するマニュアルの改訂版を、仕分けして各営業店に発送。 改善策1 ミスが起きにくい仕組みづくり〜見やすく・分かりやすい作業工程 知的障害者にとって分かりやすく、間違えにくい段取りを工夫。そのための事前準備は健常者スタッフが実施するとともに、作業工程を分割して、一つひとつの業務になるよう設計した。  印刷サービス業務の中核となっている(株)エポスカードの販促物件封入業務では、多い時には1日で6,000部で担当するため、分かりやすく、間違えにくい段取りが必要となった。その対応策として業務の流れを10に分け、を作成する。また、現在はメンバー全員がローテーションそれぞれの工程で作業手順書を作成した。 1)封入するエリアの物件を用意(封筒、封入する物件3種類、段ボール) 2)物件の計量(重さで数を合わせる) 3)物件のセッティング(各100部ずつを箱に入れる) 4)物件のセッティング(6箱または12箱作る) 5)物件の封入(3種類の物件を封筒に入れる。完成したものは5枚ずつ交互に重ね、25枚で1セットを作る) 6)封入の順番(ご優待スポットガイド/ご優待クーポンBOOK/ご利用ガイド) 7)物件の帯掛け(25部を1単位として帯掛けをする) 8)ビニール包装処理(物件に該当するラベルをのせビニール包装をかける) 9)完成品の入庫(ラベルの向きを揃え、用度品の棚に入れる) 10)在庫の確認(業務修理後に実在庫を数え、データ上の数字と照らし合わせる) ミスを防ぐ工夫 カードの種類によってチェック項目を分け、間違いを防ぐ 効果 手順を細分化することにより、一人ひとりの負担が少なくなり、作業に集中できるようになった。 改善策2 個人別の評価表を作成〜次期の参考資料として蓄積 月単位での業務終了後、正確性・スピード・丁寧さ・集中力といった作業要素ごとに、スタッフ2名がメンバー全員について個別の評価を実施した。  今まで以上に一人ひとりの能力や適正等をより深くとらえることができるようになり、加齢対応への基準作りにおける基礎データの収集が図れた。  今後はメンバーの能力考課を実施するとともに、業務やルールの遵守等項目について、自己チェックと上司のチェックの上、OJT計画を個別に作成し、日々の業務の中でステップアップを図っていくプログラムに着手する予定。 効果 年齢や経験にかかわらず、メンバー一人ひとりの仕事上での得意・不得意が見えてきて、これまで気づかなかった新たな特性を発見することができた。 改善策3 設備の改善を実施〜明るく、働きやすい環境の整備 助成金を活用して、新規業務に必要な機器の整備と働きやすい環境を整えた。  受託業務メニューの開発と並行して、2年かけて印刷サービス業務専用設備の改善を実施。専用の作業室を準備し、ドアの改修等環境整備のほか、ビニール包装機・帯掛け機・計量機・紙折り機等、新たな業務に必要な機器の設置、その他備品を整備。改善にかかった357万円は、一部障害者作業施設設置等助成金(P102参照)を利用した。 効果  商品の移動作業での出入りも多いが、入り口にハンガードアを取り付けたことにより、少ない力での開閉が可能になり、移動がスムーズになった。 改善策4 手順書を作成し、業務指導を徹底〜段階的な導入で理解を深める 「仕事・ルールは厳しく、職場は楽しく」をモットーに、明るく・楽しく・活気ある職場づくりを実践している。  平成18年4月の印刷業務スタート時から、段階的に新しい仕事を導入した。業務手順書を作成し、OJTによる業務の習得を半年間実施。その結果、スムーズに仕事を覚えることができ、またミスも少なく発注元に対しての信頼度を高めることができた。 効果 段階的な業務受注を行ったため、一つひとつの業務に対して理解を深めながら仕事を増やしていくことができた。質の高い作業内容に対して発注元の信頼も高まり、新たな業務の紹介にもつながった。 教えて!障害者雇用の実際  Q&A Q.障害者の勤務形態と勤務時間を教えて下さい。 A.就業時間は9:00〜17:40(うち休憩1時間)で、1年更新の契約社員として週5日勤務しています。土日・祝日も営業しているので、休日はローテーションで編成しています。 Q.新規採用の際、どのようなルートで人材を募集していますか。 A.はじめは支援団体などを通じて行い、その後はハローワークを通して募集しています。印刷サービス業務をスタートした時に2名を新規採用しましたが、現在は欠員が出た時に補充しています。 Q.印刷サービス業務の仕事の態勢は、どのようになっていますか。 A.現在は用度品担当のメンバーが、用度品業務と平行して1ヵ月ごとにローテーションで業務にあたっています。マネジャーとスタッフの2名と一緒に、毎回4〜5名が担当して、1ヵ月の間に5つの業務を週単位などで区切って行っています。前日とはまったく違う内容の仕事をする日も出てきますが、手順が細分化されているため、とまどうことはないようです。 Q.家庭との連携についてはどのように行っていますか。 A.年1回家族連絡会を開き情報交換をしているほか、月1回「キットセンター通信」を発行し、会社での様子などを知らせています。  障害に対する基本的な知識や特性を理解してもらうため健常者スタッフは「障害者職業生活相談員」の資格を全員が取得しており、健康管理カードを作成して、日頃の様子を家族と情報交換しています。 Q.各種支援制度はどのように活用していますか。 A.重度障害者を対象としたジョブコーチ支援等で埼玉障害者職業センターと連携し、定着支援をしていただいています。仕事についての悩みなどを一緒に考えていただいているので、非常に助かっています。 用語解説 「障害者職業生活相談員」  障害者を5人以上雇用する事業所において、選任が義務付けられている。障害者の職業生活全般の相談・指導を行い、職場適応の向上を図りながら、能力を最大限に発揮できるよう障害者の特性に十分配慮した雇用管理を行う。 優秀賞 株式会社かんでんエルハート(大阪府大阪市) 第2号職場適応援助者の養成による社内の支援体制の整備 障害者一人ひとりの特性を理解し、適切な支援を実施 改善の経緯  当社は平成5年に関西電力、大阪府、大阪市の共同出資による第三セクター方式で設立した特例子会社です。開業以来、知的障害者・重度身体障害者を多数雇用してきましたが、知的障害者の中には、発達障害を重複しており、日常生活や社会生活上で何らかの課題を抱えている社員も多くなり、これまで蓄積したノウハウに基づく支援だけでは限界があると感じるようになりました。  今までの支援に加え第2号職場適応援助者の配置によって、知的障害者の弱点の把握と支援すべき点を明らかにするための科学的分析を行いました。また、企業内に障害者一人ひとりをよく知るための人的ネットワークを構築できました  その結果、障害者がそれぞれに抱える問題や障害特性が理解できるようになり、これを足がかりに戦略的かつ組織的支援を行えるようになりました。 企業プロフィール 株式会社かんでんエルハート ■代表者:代表取締役社長 井狩雅文 〒559-0023 大阪府大阪市住之江区泉1丁目1番110-58号 TEL06-6686-6874  FAX06-6684-2132 URL http://www.klh.co.jp/ 業種及び主な事業 園芸、貸農園事業、印刷、商事、社内文書の発・受信サービス、産業マッサージなど。 障害者雇用状況 従業員数143名うち障害者100名(平成19年10月1日現在) (内訳) ・知的障害者48名(うち重度8名) ・視覚障害者11名(うち重度11名) ・聴覚障害者…8名(うち重度7名) ・肢体不自由者23名(うち重度21名) ・内部障害者…5名(うち重度5名) ・精神障害者…5名 整備の背景 第2号職場適応援助者を養成、配置することで的を射た支援策を導き出せるようになりました。 代表取締役 中井志郎さん 多様な障害特性にこれまでの支援の限界を感じる  当社では143名の社員のうち、48名が知的障害者です。中には「環境変化に弱く、感情のコントロールができずに職場でトラブルが絶えない」といった社員もいました。  彼らの多くは、日常生活や社会生活上で何らかの課題を抱えており、企業内ではその支援の限界に、手をこまねいていました。またADHD(注意欠陥多動性障害)や自閉症など広汎性発達障害の重複や、精神的不安定要素を抱えている方も多く、知的障害者の指導に経験豊富な指導者でもその支援の難しさを感じていました。 第2号職場適応援助者の養成と企業内支援ネットワークの構築  そこで、より専門的で戦略的な支援を実施するため、本来業務に精通して、かつ知的障害者の指導に経験豊富な社員を第2号職場適応援助者として養成し、障害特性に関する知識と職業リハビリテーションに関するスキルを習得させることとしました。  また日常生活や健康面に関する情報収集は、企業内だけでは限界があり、ご家族やグループホームの世話人などの支援者とも連携を図っています。さらに職業リハビリテーションに関して洗練された知識と技術を持った障害者職業センターの障害者職業カウンセラーにもアドバイスをいただける関係を築いています。 科学的分析による戦略的支援の実施  知的障害者48名全員の課題を把握し、支援すべき項目を明らかにするため、「就労準備性ピラミッド」(P38図1)の5項目ごとに6段階評価を行いました。これにより個々人の個性・特性を把握しやすくなり、個人に合った的確な支援策を立てることができるようになりました。  また職場不適応の知的障害者については、月に一度、第2号職場適応援助者を中心に職場の上司、家族、グループホームの世話人、障害者職業カウンセラーらで構成するケース会議を実施し、特性要因図による現状の把握・分析や対策系統図による支援策の検討を行います。策定した支援策は対象障害者が所属する部署の役職者や障害者職業生活相談員らに説明会を実施し、同時に障害特性に関する知識付与など必要な教育を行っています。 企業内に支援のネットワークを構築し、的を射た支援策を導き出す  第2号職場適応援助者を配置することで、企業内に障害者職業カウンセラーやその他職業リハビリテーション分野の方との人的ネットワークが構築できるようになり、障害者就業・生活支援センターやグループホームなど生活支援者との連携もしやすくなりました。企業内にネットワークが構築できたことで、これまで把握しにくかった日常生活の様子もわかるようになり、さらには対象障害者に関する障害特性や、職場不適応の要因となっている背景などが正確に把握・分析できるようになったのです。  発達障害を重複していたり、精神的不安定要素を抱える知的障害者は、ただやみくもに支援を行っても状況が良くなることはありませんでしたが、人的ネットワークの構築で得た情報が手がかりとなり的を射た支援策を導き出せるようになりました。 改善の手がかり 一人ひとりの個性・障害特性の把握・分析〜支援するための気づき 障害者には一人ひとり異なる個性や障害特性があるため、就労準備性ピラミッドの5項目をもとに独自の6段階評価をすることで、客観的かつ総合的に分析・把握することにした。  図1は、障害の有無に関わらず人が就業する上で必要とされる事柄をその優先順位で並べたピラミッドである。知的障害者の場合、対人関係や環境変化に適切に対応できない者が多く、ピラミッド中部の「・基本的労働習慣」「・社会生活能力・対人技能」「・日常生活管理・基本的な生活のリズム」に対するきめ細かなサポートが必要になると感じている。そこで、知的障害のある社員48名一人ひとりの支援すべき項目を明らかにするため、ピラミッドの5項目ごとに「特に問題ない」「若干物足りなさがある」「一部で支援が必要」「常に特別な支援が必要」「適当な支援策が見つからず手をこまねいている」「就業できる状態ではない」といった6段階評価を行うことにした。  これらピラミッドの5項目は、@からCまでをヒューマンスキル、Dをテクニカルスキルとして考えており、各スキルをX・Y軸とし、48名の評価を散布図にしたものが図2である。これによって、一人ひとりの特徴を把握し、支援の必要性を具体的に理解することができた。 散布図による支援の必要性の把握 A群 ヒューマンスキル・テクニカルスキルが共に高く戦力となっている状態。 B群 テクニカルスキルが低く、特別な作業支援を必要としている状態。 C群 仕事はできるが、ヒューマンスキルの課題が問題行動として現れている状態。 D群 ヒューマンスキル・テクニカルスキルが共に低く、多様な支援が必要な状態。 E群 就業のスタートラインに立てていない状態 用語解説「ヒューマンスキル」  業務遂行能力・業績・成果に大きく影響を与える背景となる「生きる力」に関するスキル。就労以前に教育機関や従業支援機関を通じて身につけておくべきもの 用語解説「テクニカルスキル」  業務遂行能力・業績・成果に直接結びつくスキル。職場の上司や先輩社員からの教育・指導を受けて獲得していくもの 改善策紹介 科学的な分析で障害特性を理解し業務環境を改善 ここがPOINT 第2号職場適応援助者の配置と支援体制の整備 第2号職場適応援助者を養成・配置することで、企業内に支援ネットワークの構築ができた。これにより障害特性や職場不適応の要因が把握でき、的確な支援が可能になった。またサポートする社員の間で障害特性に関する情報を共有化することで、支援の意識も高まり、職場内の支援力が向上した。  第2号職場適応援助者を養成・配置し、彼らを中心として企業内に支援のネットワークを構築したことより、これまで把握しにくかった対象障害者の日常生活も分かるようになった。また対象障害者に関する障害特性や、職場不適応の要因となっている背景などが把握・分析できるようになり、個人にあった支援策を見つけることができた。  さらに、サポートする社員が“何とか直さなければ”と考えていた対象障害者の『問題行動』を、第2号職場適応援助者が理解を促すことで、変えることのできない『障害特性』だと認識できるようになった。  これらによって対象障害者に接する能力や意欲が高まり、職場内の支援力が向上した。 用語解説「第2号職場適応援助者」(第2号職場適応援助者助成金)  職場適応援助者による援助を受けなければ、事業主による雇入れまたは雇用の継続が困難と認められる障害者に対して、職場に適応することを容易にするため職場適応援助者を配置し援助を実施する事業主を対象として、その費用の一部を助成しています(詳しくは巻末及び機構HPhttp://www.jeed.or.jp/index.html)。 改善策1 一人ひとりの課題を把握・分析〜ケース会議の効果的活用 従来の企業内支援だけでは解決できない障害の問題に対して、本人の周辺から徹底したヒアリングを実施。様々な角度から見た客観的な分析をもとに、一人ひとりに合った支援策を見つけていった。  当社では、先の散布図C・D群のうち、緊急度の高い者から支援することとしている。  そこで、まず職場の同僚や家族、グループホームの世話人など、本人周辺から徹底したヒアリングを行い、本人の特性や職場環境、生活環境、職場での人間関係など様々な角度から把握・分析することにした。そうして集まった断片的な情報をもとに、何が職場不適応の要因なのか、その背景には何があるのかといった因果関係を明らかにするために、第2号職場適応援助者を中心に職場の上司、家族、グループホームの世話人、障害者職業カウンセラーらで構成するケース会議を実施。一人ひとりにあった支援策や改善点を発見する大きな足がかりとした。 効果 ケース会議を実施し、『特性要因図』を作成することで、支援すべき問題を洗い出すことができた。 改善策2 支援計画に基づく適切な支援の実施〜PDCAサイクルの活用 特性要因図から抽出された課題の内「最も重要と思われる要因はどれか」を明らかにし、そのうち「変えられるもの」と「変えられないもの」を整理した。その情報をもとに対策を打つべき項目を絞り込み、具体的な支援策を検討し「Plan」・「Do」・「Check」・「Action」の流れで支援策を導き出した。 Plan 支援計画の策定 Do 支援の実施 Check 支援内容の確認・見直し Action 見直し・改善された支援の実施  特性要因図から抽出された課題のうち、「最も重要な要因」を明らかにし、「変えられるもの」「変えられないもの」に分け、対策を打つべき項目を絞り込んだ。項目ごとに具体的な支援策を検討し、対策系統図に変換。多数考えられる支援策の中から効果と実現性を勘案し、すぐに実施するもの(第1支援)と、第1支援での効果が十分でなかった場合に実施するもの(第2支援)を整理し、支援計画を策定した。  そこから支援の対象障害者の所属の役職者・障害者職業生活相談員とサポートする社員に、第2号職場適応援助者より支援計画の説明と、その障害者の障害特性についての教育を行い、計画に基づいた支援を実施した。  支援実施1ヶ月後に再び行われるケース会議で、「対象障害者の個性・特性に適した支援になっているか」「支援を行う社員が無理なくサポートできる支援か」「課題は解決したが他に問題が発生していないか」といった、支援計画の評価・見直しを行った。  その結果、課題が解消されていない場合、計画の修正を検討するなど、次の支援への手がかりとした。 効果  的を射た支援計画を策定することで、実現性の高い支援を効果的に実施できた。その後もPDCAサイクルにより支援計画の見直しを実施することによって、さらに質の高い計画的支援の継続ができている。 改善策3 サポートする指導者の“脱ストレス”への環境整備〜企業内の人的ネットワークの活用 指導的立場にある社員がかかえる「指導効果が表れない」というストレスを解消するため、第2号職場適応援助者による適確な指導を実施。障害特性に関する情報の共有化で社員の理解を得ていった。  これまで、サポートする立場にあった社員は「わがまま」「言うことをきかない」「性格のゆがみ」といったことを“何とか直さなければいけない『問題行動』”と考えていた。  そのような悩みに対して第2号職場適応援助者が、専門知識をもとに、それらの行動は「注意の問題」「ワーキングメモリーの問題」などといった、変えることのできない『障害特性』であると理解を促した。その結果、支援に対する取り組み方、対象障害者との接し方に大きな影響が現われ、社員間にも協力的なムードが生まれ職場の雰囲気も変わっていった。 効果  第2号職場適応援助者を活用することによって、サポートする立場にある社員に対する支援力が高まり、支援のストレスを軽減するとともに障害者との接し方に効果的な影響が現れた。   障害特性をよく理解することが、支援への近道でした。 ビジネスアシストセンター副主任 黒田恭子さん(第2号職場適応援助者)(右) メールサービス 倉永歩美さん(左)  会社設立当初からの社員である倉永歩美さんは、以前は商事課で商品包装の業務に就いていましたが、現在はメールサービスでリーダー的役割を担っています。ビジネスアシストセンター副主任の黒田恭子さんは、第2号職場適応援助者として倉永さんの日々の業務を見つめ、良き理解者の一人として彼女に接しています。  「メールサービスに配属されて5年、今では誰もが匠の腕前だと認める倉永さん。仕事面では順調に成長していますが、以前は生活面での感情の起伏も激しく、職場でパニックになることもありました」と黒田さん。障害特性による精神の不安定さに加えて、言葉でのコミュニケーションも苦手ということから、視覚的に理解しやすいイラストや文字を使った指導方針に切り替え、作業内容の変更は作業スケジュール帳に自ら変更内容を書き込むようにとアドバイスしたところ、大きなパニックはなくなりました。倉永さんは「配属された頃会社を休みがちだったのは、気持ちの整理がつかなかったから」と少し照れながら話してくれましたが、作業スケジュール帳に自分の気持ちを書き込む行動がストレス管理につながったのではと、黒田さんはその有効性を分析しています。  メールサービスは郵便局や運送会社の集配時間に追われることも多く、予定外の作業が入ることもしばしば。当初、倉永さんだけに渡していた作業スケジュール帳でしたが、同じような障害特性を持つ社員も多く、メールサービス所員全員を対象に配布するとともに、他の部署の知的障害者にはそれぞれの職種ごとに作業指示ができる作業指示ノートを作成しました。  第2号職場適応援助者を中心とした職場不適応への取り組みについて黒田さんは、「自閉症の特性の一つに、何かがきっかけで周囲の人の行動が気になってしまうことがあります。倉永さんの場合も同様で、誰かが上司から注意を受けている、社員同士で言い争いをしている場面に出くわすと不安定になる傾向がありました。指導的立場にある私たちは、こうした知的障害者一人ひとりの特性をよく把握する必要があります。頭ごなしに注意しても効果は期待できないし、こちらもストレスをためるだけです」と指導していくことの難しさを話してくれました。方法論や実践論はあくまで手段の一つ。それ以上に知的障害者本人との心の交流が大事なのだと、二人の笑顔が教えてくれました。 奨励賞 日本通運株式会社宇都宮支店(栃木県宇都宮市) 適性を考慮した職務づくりと、「本人のやる気」を受け留めた職務 定型的な業務を集約し職務を開発、ソフト改良でPC作業の希望も実現 改善の経緯  当支店では、平成17年6月時点で重度内部障害者1名のみの雇用で障害者雇用率を達成しておらず、雇用率の達成は支店として大きな課題となっていました。そこで社内で情報収集を行ったところ、社員の知り合いに障害者がいることが分かり、その関係から知的障害者1名を雇用しました。初の知的障害者採用ということもあり、十分な雇用管理ノウハウを持っていなかったことから、地域障害者職業センターのジョブコーチ支援を活用し、受け入れを進めました。採用当初は経理部門に配属し、様々な職務を体験させましたが、職務水準に達していないことが判明。そのため総務部門に配置換えを行い、内容や方法に様々な工夫をこらすことによって、本人の希望を反映した職務を作り出しました。 企業プロフィール 日本通運株式会社宇都宮支店 ■代表者:宇都宮支店長 笠原純 〒321-0964 栃木県宇都宮市駅前通1-2-5 TEL028-621-0616  FAX028-625-5897 URL http://www.nittsu.co.jp 業種及び主な事業 内容引越、宅配便、鉄道コンテナ輸送、自動車輸送、倉庫重量品輸送、美術品輸送などあらゆる物流業務を行う総合物流業 障害者雇用状況 従業員数226名うち障害者2名(平成19年6月1日現在) (内訳) ・知的障害者………………1名 ・内部障害者1名(うち重度1名) 雇用の背景 本人の希望と職場の求める水準 両者にはすれ違いがありました。 総務課長 御友孝宏さん 当社では初の知的障害者雇用 何もかもが手探りの状態でした  障害者雇用率(P45参照)達成のため、軽度の知的障害をもつ斎藤さんを採用しましたが、知的障害者雇用経験のない私たちには何もかもが全く分からない状態でした。そこで、様々な手続きを行う際にお世話になっていたハローワークに相談したところ、栃木障害者職業センターを紹介され、雇用と同時にジョブコーチを活用することになりました。  全く手探り状態の中、わらにもすがる思いでお願いしたジョブコーチ支援でしたが、彼の障害やその特性を踏まえた上での彼との関わり方など、ジョブコーチは分かりやすく丁寧に教えてくれました。また、実際に仕事をしている斎藤さんに付き添いながら様々な助言をしてくれました。 日常の業務の中で「できる」仕事の分野を開拓  斎藤さんの採用面接の際には、「一般的な会話は何の問題もなく、パソコン作業も可能」とのことだったので、経理部門に配属しようと考えました。そこで書類の整理やファイリング、請求書の仕分けなど、まずは彼の能力を見極めるためにも様々な仕事をしてもらいました。しかし、これらの判断を必要とする仕事は彼には難しく、なかなかうまくいきません。ただ、そんな中でも書類の封入作業など、得意とする仕事があることも分かってきました。そこで、より広範囲な仕事内容を確保できる総務部門に配置転換し、適性を考慮した仕事を探しました。さらに社内でアンケートをとるなど、全社員が協力して彼の仕事を探し出し、組み立てられた1日の職務スケジュールができたのは、雇用から3ヵ月ほどたった頃でした。 一緒に働く仲間になったのだから彼の好きな仕事をさせてあげたい  当初は斎藤さんの適性に合った仕事を与えることに力点を置いていましたが、普段の会話から彼がみんなと同じような仕事をした時に喜びを感じることが分かってきました。私たちとしても「彼が意欲を示す仕事をさせたい」という思いがあり、パソコン作業がしたいという彼の希望をなんとかかなえたいと思っていました。  ちょうどその頃、業務統計のパソコン入力作業を見たところ複雑な業務内容ではなかったので、この仕事を任せられるのではないか考えました。当時はジョブコーチ支援は終わり、社員のみで方策を工夫することとなりましたが、すでにその頃はお互いに気心も知れ、ある程度苦手な部分をカバーする方法も分かっていましたので、そのノウハウを活用し、彼が入力できる体制を整えました。  現在は斎藤さんのスキルも上がり、仕事のスピードも速くなっているため、仕事内容のさらなる充実化と彼自身のスキルアップが課題です。現段階では、彼の仕事そのものに対する生産性は考慮していませんが、彼が仕事を行うことで他の社員の負担が減り、彼らの業務の効率が上がれば、会社全体としての利益につながると考え、全社員で彼をサポートをしています。 改善策紹介 ジョブコーチと二人三脚で企業・本人がともに満足できる職務開発へ ここがPOINT ジョブコーチ支援を活用〜関係づくりから職務の開発まで障害者雇用を大きくサポート 地域障害者職業センターのジョブコーチ支援を活用。外部の専門家が実際に社内で障害者と仕事をともにすることで、気づいた課題や改善点を企業に助言。これにより企業と本人との関係づくりが進み、企業側の負担軽減につながった。  ジョブコーチの支援を通して、知的障害とはどんな障害か、どのように関わったら良いのか、どのような対応がより良いのか…といった疑問を解決。障害に対する理解を深めた。また、ジョブコーチが障害者と毎日の仕事を共にすることで見つけた本人の得手・不得手のアドバイスに従って、職務の設定や改善を行った。また、あいさつ・礼儀といった社会人としての常識を教え、仕事や人間関係に対する助言を行うなど、ジョブコーチが障害者社員の人間的成長もサポート。これらの支援のおかげで企業としても障害者との関係構築がしやすかった。 連絡票の活用  ●連絡票を活用し、事業所・ジョブコーチ・家庭のコミュニケーションを密にした。連絡票はジョブコーチ支援期間終了後も活用し、本人の1日の反省と家庭との連絡に使用している。 改善策1 本人向けの職務づくり〜適性を考慮した仕事の集約と仕組みづくり 配置部署を経理部門から総務部門に変更。今まで社員が交代で行っていた、清掃・郵便物の仕分けなどの作業を集約し、本人が担当した。  所内でアンケートをとり、社内の意見を集約。経理部門での仕事状況などを踏まえ、職務を構成した。また、一見難しく思えるものも作業をやりやすくするための作業マニュアルを作成したり、「指示は具体的に」、「初めての仕事は、言葉で説明するだけでなく実際にやってみせる」等、指示の仕方を工夫したりすることで、できる仕事の幅が広がった。   斎藤さんの仕事 ・事務所のブラインドあけ ・開店前の事務所前の清掃 ・観葉植物への水やり ・各事業所への連絡便の仕分け ・事務所内の清掃 ・不要書類のシュレッダーなど 作業マニュアルの作成 ●本人単独で行えるように1日のスケジュールを固定し、仕事一覧表を作成 ●ミス防止のため、配布先一覧や仕分け表を作成 ●本人が読みやすいよう文字は大きめに。漢字にはふりがなをつける ●仕事が終わったら一覧表にチェック 効果 適性に考慮した日常業務を開発することで、継続雇用が可能となった。 改善策2 パソコン入力法を開発〜フォーマットを本人向けにカスタマイズ 本人のパソコン作業をしたいという希望をかなえるため、パソコンの入力法を簡略化し、さらにデータ誤入力を防止するための改良を加えた宅配便の業務統計フォーマットを開発した。  宅配便の業務統計の作成作業は、今まで他の社員が行っていたが、単純な入力作業であることから本人にも行うことができると判断。ただ、エクセルで作られている統計表は他のセルやシートと連動しているため、誤入力によって他のデータも損なわれてしまう恐れがあった。そのため、入力部分以外にデータを入れ込むことができないようにロックをかけるなど、ソフト面の改良を行った。また、漢字が苦手な障害者社員が入力しやすいよう、漢字で表記されている資料を数字に置き換えるなど、入力作業がスムーズに行えるような工夫を行った。  これらのソフト改良などを事前に行った後、実際に入力作業を指示。初めはたびたび間違えることもあったが、現在は誤入力はほとんどなく、入力のスピードも上がっている。 効果  本人の希望に添った仕事を可能にすることで、やりがいを持って仕事に取り組むようになった。 ちょっとした一言に笑ってしまうこともしばしば。みんなが息抜きできる場の雰囲気を作ってくれます。 総務課長 御友孝宏さん(右)   社員 斎藤拓也さん(左)  「斎藤さんは、みんなが思いもつかないようなことをポロッと言ったりするんですよ。普段は叱り役に徹している私ですが、思わず吹き出してしまうこともあるんです」と雇用当初から親身になって斎藤さんの指導をしてきた御友さんは言います。人と話すことが好きな斎藤さんは、誰に対してもフレンドリー。みんなの息抜き的存在だそうです。「ただ仕事ですからきっちり線を引かなければいけませんよね。周りの女性社員が優しくする分、私は怖い存在でいようと決めてるんです」。そんな御友さんの横でインタビューに答えてくれた斎藤さん。「仕事は楽しいです。入力実績表をやるのが好きですが、間違ってはいけない仕事なので大変です」と幾分緊張しながら答えてくれました。「彼の場合は、常にやろうという気持ちで仕事に接してくれるのがいいですね。楽しいというのも本当で、『勤務時間が終わらなければいいのに』という声をよく聞きます。会社が好きで、あんまり早く出社するので、彼だけ出勤時間を早めにした程なんです」と御友さん。集中力が続かないこともありますが、仕事に対する姿勢は真摯で「時間通りに終わらないときはくやしい」と言います。  「常に目配りをしていく必要がありますから、障害者雇用は正直大変な面もあります。でも、社会に対する見方が変わるというか、新しい目線が生まれますよ」と御友さん。「障害者雇用をすると決めたら最後まで面倒を見る覚悟が必要ですね。職務が合わなかったとか、想定外の問題は必ず出てきます。でもそれに何らかの工夫をこらして乗り越えていくことが必要だと思うんです。せっかく縁があって職場の仲間となったのですから、最後まで良かったと言える関係でありたいですね」と雇用に関する思いを話してくれました。 用語解説「障害者雇用率制度」  常用労働者の数に対する一定割合(これを障害者雇用率という)の身体障害者または知的障害者を雇用する義務を事業主に課す制度。常用労働者数56人以上の一般民間の事業主の場合は、その常用労働者数の1.8%以上の障害者を雇用しなければならない。 奨励賞 株式会社マルキュウ(埼玉県越谷市) 単純作業から重機を使った新しい職域開発への取り組み 本人の「やる気」が大きなチカラに 難しいと思われた作業に成功 改善の経緯  当社の創業時、先代の社長がある飲料メーカーの支店で空き飲料容器の回収作業を行っている際に、近隣の障害者施設の知的障害者の方々と知り合い、回収した容器を資源ごとに選別する作業のお手伝いをしていただくようになりました。その方達は遠方に住んでいたため雇用にはつながらなかったのですが、これを機に近隣に住む知的障害者の雇用を考えるようになりました。平成2年から正社員として雇用を始め、徐々に人数を増やし、現在は従業員の約半数を知的障害者が占めています。最初は1種類のものを選別してもらいましたが、人によっては、慣れるに従って複数種類のものを選別できるようになる等、ステップアップを図ることができました。そこで、選別以外の仕事もできるのではないかと考えるようになりました。重機に興味があり、手先が器用な障害者の1人に重機免許の取得を勧めたところ、本人の意欲が旺盛だったこともあり、見事取得。多能工となったことで、自信と誇りが高まりました。これを手本に一層熱心に仕事に取り組む障害者が増え、全体的なレベルアップにつながりました。 企業プロフィール 株式会社マルキュウ ■代表者:代表取締役 九ノ里裕之 〒343-0045 埼玉県越谷市下間久里104番地 TEL048-978-0939  FAX048-975-7285 URL http://www.marukyu-09.co.jp/ 業種及び主な事業内容  飲料容器リサイクル加工、各種リサイクル加工、非鉄金属スクラップの売買、鉄スクラップの売買、産業廃棄物の収集運搬・中間処分、事業系一般廃棄物処理(越谷市許可)、廃棄物再生事業 障害者雇用状況 従業員数17名うち障害者9名(平成19年6月30日現在) 障害者雇用状況 従業員数 17名うち障害者9名(平成19年6月30日現在) (内訳) ・知的障害者9名(うち重度7名) 雇用の背景 一つの仕事だけを行うのではなく、能力とやる気を活かした作業ができないか考えました。 代表取締役 九ノ里裕之さん 職場実習を行ったうえで雇用。今では会社にとって欠かせない存在  当社は飲料メーカーより発生する空き飲料容器(自動販売機の横に設置された空き缶入れの中の容器)を大型トラックで回収、それらを当社構内にて選別し、プレス機で圧縮して再資源化を行っています。大量の容器を選別ラインへ供給する(流す)、また再資源物の移動・保管など、これらの作業には重機を使用しています。  障害者社員の仕事は主に、回収した容器を選別ライン上でアルミ缶、スチール缶、ペットボトル、ビンなど資源ごとに手で選別すること。採用は、養護学校(現在は「特別支援学校」という)高等部または、中学校を経由して行ってきました。職場実習を何回か行い、適正があるかどうか見極めます。職場実習は、1回につき2週間、1週目は先生がついて一緒に選別の仕事を行いますが、2週目には1人でやってもらいます。 能力を見極めながら職域拡大へ挑戦  正社員として雇用した障害者の指導には、今は亡き先代社長が中心となってあたりました。2人の先輩の間に新しく入った障害者が立ち、3人で同じ種類のものを選別してもらうことから始めます。このようにすれば、新しく入った障害者は、両隣にいる先輩を見ながら、仕事を覚えることができます。さらに、もう1人健常者の指導者をつける形をとります。20?30分経つとある程度作業に慣れ、さらに数日経つと、1人で作業を行えるようになります。  「アルミ缶の選別」と決まったら、それだけしかできない人もいれば、慣れるに従って、「アルミ缶とビンの選別」というように、複数の資源の選別ができるようになる人もいます。このように、人によってできる範囲が異なることがわかり、その人なりにできることを考え、担当してもらうようにしています。そんな中で、選別以外の作業にも職域開発を図れるのではないかと考えるようになりました。 障害者の重機作業で効率アップ。本人・会社ともに大きく飛躍  平成2年に当社が初めて雇用した知的障害者の1人、小山さんは、始めはやはり選別作業に従事していました。その作業に慣れた2年後、先代社長が重機を操作する姿を興味深そうに見ていた小山さんに、重機免許の試験を受けてみるよう勧めました。本人はやる気に満ちあふれていました。  他の従業員が出社する前の1時間を利用し、ほぼ毎日、先代社長がマンツーマンで、重機の操作方法、加えて重機の危険性などを教えました。機械構造などの学科は、自宅で父親と市販の教材を使って勉強しました。本人が機械に興味を持っていたので覚えも早かったです。  約1年間にわたり、マンツーマンの指導を続けました。その努力の甲斐があって、平成5年5月に埼玉労働基準局長指定の教習機関で技能講習を受け、講習後の資格試験に合格し、重機免許を取得。今は障害者の中で唯一の重機オペレーターとして、大変活躍しています。ショベルによる容器の運搬、電磁石でスチールを引きつける重機でスチール缶の選別など、様々な重機を操作しこなします。操作の腕は健常者と全く変わりません。もしかしたら小山さんの方が上手かもしれませんね。欠勤も一度もありませんし、“自分が重機を動かすんだ”という責任感があるのだと思います。  また、小山さんの重機を操作する姿を見て、重機に興味を持つ障害者が他にも出てきました。お互いに切磋琢磨し、作業効率もアップできると思いますので、本人の能力とやる気などを判断しながら、2人、3人…とチャレンジさせたいです。 改善策紹介 一人ひとりの希望とやる気が新たな職場開発のカギ ここがPOINT 能力と希望を考慮しながら作業拡大〜一人ひとりに応じた職域開発 能力と希望に沿って、可能な限り、ステップアップできることを考えた。  最初は、新しく入った人の両隣に2人の先輩がついて、3人で同じ仕事を行い、さらに指導者がつく等、仕事を覚えやすい体制をつくるよう配慮。慣れるに従い、1人で仕事を行ってもらった。  次第に能力や個性がはっきりしてくるため、それを見極めながら、その人なりのステップを図ることを考えてきた。   利用した助成金制度 ●障害者介助等助成金(業務遂行援助者の配置助成金) 改善策1 新しい仕事に積極的にチャレンジ〜意欲を引き出し作業効率アップ 温かく見守りながらも叱咤激励し、技術的成長のサポートを心がけた。  障害者社員は最初、アルミ缶、ペットボトル、ビンというように、決められた1種類の空き飲料容器の選別はできるが、複数の容器を選別することはできなかった。  そこで、アルミ缶の選別から始め、作業を滞りなく行うことができると判断した障害者社員に対して、ビン、ペットボトルなどの選別もできるように月単位、年単位でローテーションを組み、徐々に職域を広げた。  このように、興味を持って続けることができるようにサポートした結果、作業にも慣れ、効率アップにつながった。  周囲の従業員は、障害者の社員に対し、温かく見守りながらも特別扱いせず、時には叱咤激励する中で、障害者社員ができる仕事・やりたいと思っている仕事を一緒に探すことを心がけた。 効果  空き容器類の数が年々増加する中、複数業務をこなせるようになったことで作業効率がアップした。最近では1日に平均10トンの容器を選別・再資源化している。 改善策2 重機免許の取得を目指す〜さらなる職域開発  操作方法だけでなく、安全について、徹底的に指導した。  選別作業に習熟した1人の障害者が、次第に重機に興味を示してきた。そこで、本人と話し、重機の免許取得を目指すこととした。  重機免許取得に重要な点として、@重機が好きであることA器用さと集中力があることB「安全」という言葉の意味を理解し常に意識できること、などが挙げられる。当社では、Aと?を見極めることとし、先代の社長が指導に当たった。始業前の1時間を利用し、ほぼ毎日、丁寧に、本人の理解の度合いを見ながら指導することを心がけ、重機の基本や操作方法、安全面についてマンツーマンで教えていった。特に安全については徹底的に指導。周りに人がいないか、建物や設備にぶつからないか、十分に注意するよう繰り返し言い聞かせ、「もし事故(構内での器物破損)を起こしたら二度と乗せない」という約束のもと重機を任せた。そこには、本人の「重機に乗りたい」という強い思いを確実に職域の拡大に結びつけたいという狙いがあった。  学科の勉強は、自宅で父親と一緒に行った。指導を始めてから約1年後、免許を取得。「乗りたい」という思い、そして根気強いマンツーマン指導、この2つがあったからこそ、現在まで無事故で作業を続けることができている。 効果  重機免許を取得したことで多能工となり、今まで以上に仕事に対する意欲が湧いた。重機を上手に乗りこなし、生き生きと仕事をしてる。その姿が他の障害者の意欲向上につながった。 重機の操作がとても楽しい。ずっとこの仕事を続けたい 重機オペレーター 小山鉄也さん  平成2年に入社し、今年で17年目となる小山さん。障害者の中では最も長い勤続年数を誇るベテランです。さらに重機免許を持っていることから、みんなから頼りにされるリーダーでもあります。仕事のどんなところが楽しいか尋ねると、「重機を動かせるところ」とニコニコしながらの返答。重機を操作するのは難しそうに思えますが…?「難しくないです」。迷いなく答えが返ってきました。代表取締役の九ノ里裕之さんは「小山さんは恥ずかしがり屋ですが、職場ではいつも冷静。だから、これまで無事故でやってこれたんだと思います。安心して任せられます」と、小山さんをとても信頼しているようです。  重機免許の試験に関しては、「実技の練習のときは、先代社長が横に乗って教えてくれました。学科は父と勉強して、一緒に受験しました」とのこと。九ノ里さんは「車の免許もきっととれると思います。ただ対人関係がちょっと苦手なので、もらい事故が起きた時などが不安です。でも機会があれば、チャレンジしてほしい」と話してくれました。  毎年、夏は特に忙しい時期なので、重機をフル稼働させています。頑張った分、お給料に色がつくそうで…。「ゲーム機を買いました。DVDもよくレンタルをしに行きます。“ロッキー”とか、何でも見ます」。仕事が終わったあとや休日も、楽しい時間を過ごしているようです。でもやはり一番は…「重機を操作するのが本当に楽しい。この仕事が好きだから、ずっと続けたいです」。笑顔でそう話す小山さんからは、仕事に対する情熱がひしひしと感じられました。 奨励賞 人共生シンフォニー(滋賀県大津市) 障害特性を考慮しながら新たな職域拡大を図る 障害の特性を踏まえた配置転換、周囲の理解と協力で直販を実現 改善の経緯  当社では、平成7年に正式に障害者雇用を開始し、販売事業を中心に事業展開を行っています。平成9年には菓子製造部門を新設して知的障害者と精神障害者の雇用を進めてきました。この頃から多くなってきたADHD(注意欠陥多動性障害)を伴う知的障害者の入社希望に応えるべく、知的障害者の販売員という職種を発案。常時同じ場所にいることを苦手とした本人に対応した直販部門の販売員として雇用しました。  計算ができず現金のやりとりが難しい、人件費がかかりすぎるという問題がありましたが、現金のやりとりはお客様の理解と協力により解決。コスト面の問題は、販売だけでなく商品陳列も仕事とすることで解決しました。  平成18年4月には知的障害者を喫茶サービス職として雇用し、喫茶店舗を新規開店しました。 企業プロフィール 社会福祉法人共生シンフォニー ■代表者:理事長 太田好信 〒520-2144 滋賀県大津市大萱5-6-8 TEL077-543-2766  FAX077-543-2651 URL http://www.gambatta.net/index2.htm 業種及び主な事業内容 菓子製造・販売業、喫茶業 障害者雇用状況 従業員数45名うち障害者23名(平成19年7月2日現在) (内訳) ・知的障害者………………15名(うち重度8名)(うち重複2名) ・肢体不自由者5名(うち重度3名) ・精神障害者………………3名 雇用の背景 それぞれの障害特性を把握して適材適所の配置に結びつけました。 障害者雇用担当 水野武さん 障害特性を理解した接し方を教育、パターンや思考にあった仕事に配置転換  がんばカンパニー事業部製造課に栗山さんを採用したのですが、集中力が続きにくい障害により、工場内でのルーチンワークを継続できない、落ち着きがなく、作業の変更が難しいためラインに乗れない、気持ちが仕事に向かわず遊びばかりに気を取られてしまう、製造の現場に要求される清潔な服装ができないなどの問題がありました。  そこで入社前の実習の頃から、営業課で他の知的障害者社員と共に直販を行うことにしました。直販とは、会社などを2人1組で毎日20件程度まわり、セットした菓子をお客様にお見せし、その場で現金をやり取りするというものです。直販を行うにあたっての言葉遣いは、日々気が付いた時に注意することにし、朝礼の際は挨拶の練習もするようにしました。また、より仕事に集中できるようにするため、休憩時間を長めに設定しました。  同時に栗山さんをはじめとする自閉傾向やADHD(P53参照)のある3名の障害者全員が理解できるように営業の心得を作成したり、現場での指導責任者を配置したりなど社内体制の改善も行いました。職員に対しては、職員研修により障害特性を理解させ、障害者への支援方法を教えることで、障害者個々人に応じた仕事を指示できるようにしました。  毎日いろいろな得意先をまわることや様々な工夫により、ADHDを伴う知的障害者である栗山さんは徐々に落ち着き、仕事に集中できるようになりました。訪問する先で、栗山さん自身の顧客もできて自信につながり、自分の給与分は出せるだけの収益を上げられるようになっています。 言葉遣いと身だしなみは要注意。間違いはその都度注意し続けました  あんふぁんカフェ事業部フロア係の宮西さんは、ハローワークからの紹介で面接を行い、平成18年4月のカフェのオープンに合わせて採用しました。決め手は、明るさ、人柄のよさ。一般の企業に勤めていた経験を持つためか、接客業に要求される言葉遣いも問題ありませんでした。  開店前に給仕の訓練を行い、オープンにこぎ着けました。子育て支援センタービルの中にあるという場所柄、子どもと若い主婦が多いため、言葉遣いと身だしなみには特に注意し、お客様への対応の訓練を重点的に行いました。  宮西さんの場合は、落ち着いて一つのことをするのが苦手で、慌てて注文の間違いを起こすことも多かったため、その都度ゆっくり注文をとるよう促しました。半年程でお客様の対応を待つことができるようになり、様子を見ながら行動できるようになりました。次第に自信をつけていく姿は周りで見ていても非常にうれしいものでした。近隣の市役所の施設からも評価を受けており、常連のお客様も足繁く通っておられます。 改善策紹介 雇用の場という理念を持ち障害特性に合わせ、力を発揮できる仕事を ここがPOINT 雇用の場、再雇用の場という理念〜利益を生み出すための指導の徹底 企業として利潤追求を図るために、まずは一人ひとりが利潤を生むために何をしなくてはならないかということを常に念頭に置かせる指導を行った。  ハローワーク、滋賀障害者職業センター、滋賀県障害者雇用支援センター、就業・生活支援センター、滋賀テクノカレッジや授産施設などと連携を図りながら、一人ひとりの障害者のよりよい雇用の形を探っている。雇用レベルに達していない障害者の実習を受け入れ、その後実習で学んだことが定着するように引き続き関係機関でも指導を受けられる体制を作るなど、障害者のタイプに合わせた柔軟な雇用ができるようにしている。  障害者の出勤日は週4日程度から始まり、3年ぐらいかけて本人に最適な働き方を模索する。家の事情、障害の状況などを考慮に入れ、休みを取りやすくしており、本人の負担にならず長く働けるようにしている。雇用している障害者には、働くことで給与が出ていることを意識させ、業務効率をあげるようにしている。そのため給与は時間給だが、仕事の難易度に応じて時間給が上がっていくようになっており、働きがいを感じさせている。  各部門には責任者を配置、指導の核となって改善に当たっている。職員のスキルアップのために、パートも含め滋賀県社会福祉協議会等で行われる研修にも頻繁に参加し、障害理解に努めている。 改善策1 本人にあった仕事に配置換え〜周囲の協力により接客業務を可能に 配属先を製造課から営業課に変更。お客様の理解と協力により現金のやりとりをできるようにした。人件費コストの問題は、菓子陳列を仕事内容に含めることで解決し、収益を上げることを可能にした。  障害特性を考慮した配置換えにより、一日中いろいろな場所に移動して販売を行うことで、多数の人たちとの関わりを持つことができ、飽きがこないばかりでなく社会性も身についた。  現金のやりとりは、電卓を訓練し活用することによってある程度できるようにはなったが、数が増えてくると分からなくなるため、お客様の理解と協力を得ることで解決した。  人件費コストを考え、商品陳列を販売前の準備として行うことになったが、本人が分かるように図式化、なおかつ数が分かるように番号もつけるなどの工夫を行った。 栗山さんの仕事 ・商品の陳列 ・菓子の直販 商品セット図の活用 ●一目見て分かるように色分けしたり、図中の商品数と実際の商品の数が合うようにしたりした。これによって通常の商品セットは自分たちで出来るようになった。 効果  仕事を継続する中で、本人自身の顧客ができたことで働く喜びを感じ、意欲的に働けるようになった。 改善策2 OJTによる継続的な指導〜現場で指導を継続、本人の状況を確認しながら雇用時間延長 忙しい時に慌てて注文を取り違えた、お客様への対応に不備があったなど、問題が起きたらその都度注意し、継続的な指導を行った。  本人の前向きな意欲もあり、継続的な指導が実り、臨機応変な対応ができるようになった。カフェは子育て支援センター内にあるという場所柄、子どものお客様が多く、その対応が不安だったが問題ないまでになった。  雇用している障害者は、知的障害者3名、身体障害者2名の計5名だが、障害者同士互いに助けあいながら仕事にあたっているため、開店以来大きな問題もなく順調に営業を続けている。就労時間は当初は4時間から始まったが、体力的にも問題がなかった本人の状態を受け、今では6時間で就業している。業績は好調で、前年度末にはボーナスを支給することができ、本人もやりがいを感じている。 宮西さんの仕事 ・お客様のオーダーをとる ・飲食物の配膳 ・テーブルの後片付け 店舗マニュアルの活用 ●飲食業に必要とされる事柄を写真なども交えながら、分かりやすくまとめた。大事なところには二重線を引くなどして自然に目が行くようにした。 効果  お客様に喜んでいただけることで労働意欲が増し、充実した職業生活を送れるようになった。 用語解説「自閉症」  社会性(対人関係)、コミュニケーション、想像力(活動や興味の範囲の著しい制限・変化への抵抗など)の3つの症状を持つ障害。発達期に様々な原因によって中枢神経系が障害されて生じるといわれている。自閉症は、知的障害を伴うもの(療育手帳の対象)と知的障害を伴わないものがある。 用語解説「ADHD(注意欠陥多動性障害)」  落ち着きがない(多動)、気が散りやすい(不注意)、思いつくと後先考えず行動する(衝動性)などが特徴。自閉症などと同じく中枢神経系の障害である。診断基準には知的障害の合併の有無は明記されておらず、療育手帳の対象とならないことがある。  ※自閉症、ADHD、アスペルガー症候群、学習障害などの障害を発達障害といいます。障害特性や本人の状況などを総合的に捉え、職場環境を調整することで、職場の戦力として働くことができます。支援機関と連携することも、スムーズな職場適応を図るひとつの方法といえます。 教えて!障害者雇用の実際  Q&A Q.障害者の勤務態勢と勤務時間を教えてください。 A.営業部門は月曜から金曜の10時から18時。休憩1〜2時間を含みます。喫茶部門は火曜から日曜の内5日勤務、9時から18時の内シフト制の6時間勤務となっていますが、営業部門、喫茶部門ともに本人の状態に合わせて4〜8時間勤務をあてています。 Q.部署はどのように決めているのですか? A.がんばカンパニー事業部は最初は全員が製造部門に配置されます。製造でうまくいかない場合に営業販売部門に配置換えという流れになっています。あんふぁんカフェ事業部は独自に採用を行っています。カフェの仕事は基本的に調理補助、接客、レジ、セッティングの4つに分かれていて適材適所を心掛けています。障害特性を考慮し、今後も事務補助など様々な職域を拡大する予定です。 奨励賞 株式会社沖縄教育出版(沖縄県那覇市) 障害者の限界という先入観を捨てた人間尊重の経営 障害者の限界や先入観を捨てて同じ目線でともに働く環境づくり 改善の経緯  「地域づくりは雇用づくり。一人ひとりが輝く職場づくり」をテーマに、障害を持った人達が安心して自立できる会社や、地域づくりを目指して、2001年に梱包スタッフとして障害者雇用をスタートしました。雇用拡大に向けて、考え方の柱となったのは、「誰もが対等に同じ目線で仕事ができる“全員主役の経営"」。障害者も一戦力として捉え、彼らが働きやすい環境づくりと、スキルアップにつながる部署移動を常に行ってきました。その結果、平成16年には1.4%だった障害者の割合が、平成19年には6.0%までに高まりました。  現在では、障害者をまとめるリーダー職に就く障害のある社員もいて、新しい仕事の開拓や職務の創造に確実につながっています。 企業プロフィール 株式会社沖縄教育出版 ■代表者:代表取締役 川畑保夫 〒900-0013 沖縄県那覇市牧志1-2-24 TEL098-866-4779 FAX098-867-6677 URL http://www.cha-genki.com/ 業種及び主な事業内容 健康食品・自然派化粧品などの通信販売 障害者雇用状況 従業員数133名うち障害者8名(平成19年10月2日現在) (内訳) ・知的障害者………………7名 ・聴覚障害者1名(うち重度1名) 雇用の背景 障害を問題と捉えていませんでした。仕事の習得具合は千差万別ですから。 障害者雇用担当 秋山淳一さん できることから少しずつ なかには健常者より早い人もいます  初めての障害者雇用は養護学校からの3名です。それぞれ自閉症・知的障害(軽度と重度)を持っていました。当時はジョブコーチ制度もない頃だったので、障害に対しての知識や経験がないために、いろいろな場面で初めて出くわすケースに驚くこともありました。しかし、何かが起こった時は養護学校の先生に問い合わせたり、インターネットで調べたり、医師に相談するなどしながら障害の特徴を把握していきました。  仕事において当社が一番重要視しているのはコミュニケーションです。当社では「障害者」とか「弱者」という考え方はせず、お互いが教えられ、ともに育ち、ともに生きるという発想で業務に取り組んでいます。彼らのために新たに設置した設備や施設などは特にありません。誰でもできるような仕事の流れや仕組みを作りますし、仕事を担当させる場合もミスが起こらないようなコミュニケーションをとります。彼らが仕事をできるようになるということは結果的にミスが減ることにもつながります。戦力として雇用しているのであって、決して手を差し伸べているという発想ではないんですね。 「この人はこれをできない」という先入観を捨てること  彼らはたまたま障害を持っているがために制限されることもありますが、「それならまた別の仕事を」といった感じで、できることから少しずつ取り組んでもらいます。例えば資料のセッティングや商品の製造から除々に電話応対や接客など経験してもらいます。お客様が戸惑われたりすることも勿論ありますので、そういった場合はきちんと説明をします。障害者雇用に関する当社の考え方や、これが彼らのためになる事、会社の経営理念として大切にしている事をお伝えする事も仕事の流れのひとつです。彼らの素直さや、優しさ、正直さといった人柄を皆良く見ていますね。場を和ませるムードメーカーのような存在ですから、他のメンバーに比べて生産性が低いのであれば自分がプラスαで頑張ろうと意欲的です。彼らのおかげで気づいたのは「この人はこれをできない」と決めているのは僕らだったということです。先入観を捨てて任せてみると、きちんと仕事をこなしてくれるし、任せた彼以外の障害を持ったスタッフに任せても同じようにできると、経験を通じて知りました。「入社歴が浅いからできないだろう」「障害を持っているからできないだろう」ということではないんです。 失敗があったときも「ありがとう」と言うのがルール  失敗したり、ミスをした時の注意は「すみません」「申し訳ありません」と言うのが通常ですが、当社では「ありがとう」と言うのがルールです。言った方も言われた方も良かったなと思いますよね。  毎年、作業所や養護学校などのインターンシップも多く受け入れていますが、1〜2週間程の短期間で笑わない子が笑うようになったり、挨拶をするようになったり、周りの環境がそうさせるのだと実感しています。 改善策紹介 マニュアルを自分達でつくることで、ともに学びともに育つ ここがPOINT 先輩社員が指導教育に挑戦〜能力開発による利益貢献  ジョブコーチではなく、先輩社員が指導・教育に挑戦することにより、スタッフ間の連結、さらには先輩社員自身の能力開発にもつながっている。  梱包に携わる仕事では、TPM(定置配置)を推進し、誰でも覚えられるよう全機械に名前を付け、道具類は常に定位置に整理収集するよう徹底した。障害者が働きやすい環境を作り出す取り組みは、社員全員の仕事のやりやすさにつながり、さらには新しいアイデアを生む原動力にもなる効果をもたらした。彼らは製品の梱包、印刷物の機械操作、デザイン物の作成、総務での事務処理、接客など、様々な職種を体験している。本人の希望や適性を考慮しながら、1〜2年周期でスキルアップし次の配属先で新しい仕事に取り組ませるようにした。ジョブコーチではなく、先輩社員が指導・教育に挑戦することによって、教える先輩社員の能力開発が促進。障害者一人ひとりの生産性は低くても、互いにサポートしあうことで大きな力が生まれ、会社全体の生産性を高め、利益を出している。 改善策1 コミュニケーションに重点を置く〜作業効率化に向けて 朝礼スピーチの実施等によって、人に伝える・教えるといった「コミュニケーション能力」を高め、そこから作業の効率化を図った。  人の話を聴く力、自分の考えを話す力…といったコミュニケーション能力を育むため、朝礼を「全員参加のコミュニケーションの場」として活用。人に伝える・教える「アウトプット」を実施することで、物事の理解度を深め、社員が成長していく足がかりとした。最初は「どういう風に、どれくらい接していいのか分からない」と戸惑っていた社員も、障害特性を理解し、障害者社員から分からないことを「分からない」と素直に伝えてもらうことで、PC入力をはじめとする作業の課題を改善していった。 上原さんの仕事 ・出勤簿の確認 ・出勤状況を閲覧する社内ポータルのPC入力 ・商品の在庫管理 ・業務の担当振り分け ・DMの発送準備効果 効果  コミュニケーションが深まるにつれ、障害者社員も一般社員もお互いに「一緒に働いていて楽しい」という充実感が高まり、作業効率化に相乗効果が生まれてきている。 改善策2 部署異動によりスキルアップ〜段階的に難易度を上げることで能力を高める 所属部署の仕事に慣れてきたら、本人の希望も取り入れ、さらに高い能力を必要とする部署に配置転換した。こうした部署異動をいくつか経験することで、個々の能力が向上した。  所属部署を決定する場合、まずその障害者の障害特性を考慮し、仕事への適性を見極めることが前提であるが、当社では、初めて雇用する障害者には、作業的な内容で比較的取り組みやすい商品製作の部署に配属することが多い。そこで、1〜2年ほど商品の箱詰めや印刷物の封入作業を行った後、配置転換を検討するようにしている。  新しい部署に異動するにあたっては、本人の希望や同僚、上司の意見を反映させ、本人がもう少し頑張ればできるというような、現在より少し高い能力を必要とする部署に配属するようにした。具体的にはコミュニケーション能力やその場に応じた判断能力が求められる総務部などに配置し、社内の出欠確認や郵便物の振り分け、内線の取り次ぎなど、まずは社内の人間を対象としてコミュニケーション能力を育むようにした。それができるようになると、今度は来客への挨拶や応対など外部の人間と関わるような仕事も任せるようにした。  個人差はあるが、ほとんどの社員が4〜5年ほどで接客までできるようになっている。6年で4つの部署を経験し、スキルアップした社員もいるなど、職域の拡大や能力の開発につながっている。 効果  本人の適性や能力を考慮しながら部署異動を行い、仕事の難易度を段階的に上げていくことで、各々のスキルが高まった。また、それにより新たな仕事を任せられるようになり、さらなる職域の拡大につながっている。 彼らがいなかったら、現在の社風は生まれていなかったかも知れません 株式会社沖縄教育出版社長 川畑保夫さん  当社が目指すのは健康で平和に暮らせる社会をつくること。良い社会をつくるために、良い会社をつくっていこうという考えです。たとえ心身に障害があっても、仕事に障害は無いという発想なので、違う能力を持った者同士が支えあって・励まし合って、各々の仕事に取り組んでいます。  大切なのは人の話を聴く力、コミュニケーションです。毎日行われる「日本一長い朝礼」は全国各地の企業の方々が見学に訪れ、一様に驚かれます。1時間とか2時間、長い時には2時間15分の日もありましたが、皆とても楽しそうにしています。朝礼では仕事の話に終始するのではなく、家庭の話があったり寸劇などの芸事も行う、全員参加のコミュニケーションの場なのです。ある自閉症の社員は勤めたばかりの頃は独り言をぶつぶつと言う特徴的な症状がありました。しかし、朝礼で毎朝スピーチをするという練習を繰り返すと、最初は皆の前に立っても30秒も沈黙したままだったり、ちょっと喋れてもすぐに言葉に詰まってしまうような状態だったものが、段々と形を成していきました。人に伝える・教える「アウトプット」という行為は、物事の理解度を深め、自分を成長させる大切な要素なのです。  自ら計画を立て、自ら実行し、評価することを英語でワーク(Work)と言いますね。命令されて行う作業はレイバー(Labor)。計画と評価を上司が行い、命令されて行う作業は自主性を奪います。工夫をしない、成長をしない、成果は上がらないと弊害が続きます。せっかく仕事をするんですから、私たちはワークを心がけています。例えば、自発的に早く出社して、朝早くから地域の掃除をしたり、トイレの掃除を行う人がいます。知的障害を持った社員に国語や算数のドリルを使って毎朝教えたりする場面もありました。勿論業務外ですが、皆それぞれの役割を見つけて行動しているのです。ある人は「ヨーロッパの福祉を超えているね」とおっしゃって下さいました。 奨励賞 株式会社クレール(滋賀県犬上郡) 作業をスムーズに行う様々な工夫とは 機械や道具の工夫で仕事をしやすく 意識と責任を持たせ作業効率アップ 改善の経緯  親会社である参天製薬は、障害者雇用率達成のため、平成9年4月に当社を設立、平成10年8月に特例子会社として知的障害者10名で操業を開始し、親会社からの無菌・防塵作業衣のクリーニング業務を請け負いました。服のたたみ方・数の数え方などの訓練を4ヵ月間行い、業務をスタート。業務上の問題点が見つかる度に工夫を行い、改善していきました。その結果、作業効率がアップし、親会社以外の取引先からも高い評価をいただいています。  現在では、クリーニング業務以外に薬品製造の準備作業や清掃業務も請け負い、雇用を拡大しています。体力測定や勉強会、家族懇談会など、自立支援も積極的に行っており、個人の能力を引き出しています。雇用している知的障害者は17名になり、障害者雇用率も大幅にクリアしました。 企業プロフィール 株式会社クレール ■代表者:取締役社長 長友朗 〒522-0314 滋賀県犬上郡多賀町大字四手字諏訪348-3 TEL0749-48-2234 FAX0749-48-2239 業種及び主な事業内容 無菌・防塵服のクリーニング及び業務請負業 障害者雇用状況 従業員数23名うち障害者17名(平成19年6月1日現在) (内訳) ・知的障害者17名(うち重度1名) 雇用の背景 本人に仕事への意識と責任を持たせて 初めて仕事が出来るようになります。 取締役社長 長友朗さん 機械、道具への工夫と本人の意識を変えることで作業を効率化  入社した小川さんにクリーニング製品の折りたたみを任せることになったのですが、興味のある範囲が限られている、スピードがあまり早くないなどの問題がありました。  そこで滅菌服の入った袋を閉じるシール作業は小川さんの仕事として、責任を持たせるようにしました。また滅菌シール機は作業する際に製品を置くテーブルが無いために不安定な状態でシールしなければならない問題がありました。そこで、滅菌シール機に別注で作成した器具を取り付けました。これによってミスがなくなりましたし、無駄な作業を無くすことができました。  小川さんはクリーンルーム全体の仕事を理解しないままに、目の前の仕事のみに取り組んでおり、朝礼の際に、昨日クリーンルーム全体で終了した作業を尋ねても答えられませんでした。しかし、明日も聞くからと意識させて聞き続けると、メモをして答えられるようになり、今ではメモがなくても大丈夫なまでになりました。 やってみせ、やらせて、間違ったことはその場で指示  工場内清掃担当の川副さんは当初、口頭で説明しても一度では理解が難しい、思い込んでしまうと考えをなかなか変えられないなどの問題がありました。  そこで3ヵ月をかけ清掃の教育を行いました。清掃は単純化・構造化した上、清掃チェックリストを作成し、そのリストに従って実施するようにしました。清掃道具自体も以前使っていたものを見直し、用途に合わせて変更するなど改善しました。やってみせ、やらせて、結果を共有し間違ったことはその場で指示をするようにしました。  川副さんは清掃業務のほかに社内メール便の集配業務を行っています。社内メール便は7ヵ所にある各管理室へ社内便を集配達するものですが、間違いが多く発生していました。そこで各管理室に設置してある配達及び回収ポストボックスと障害を持った社員が持ち回るポストボックスの色と名称を統一してミスを防ぐ工夫をしました。 請負業務開始に合わせて再配置 業務拡張と受注先増加で雇用拡大  クリーニング業務が順調に進みはじめた頃、親会社の原材料管理・製品出荷業務を請け負うことになりました。請負業務を行うには、理解力やコミュニケーション能力、手順通り進める能力や忘れないで記録する力などが必要です。これらを考慮した上でクリーニング業務従事者の中から人選を行い、請負業務に再配置しました。  さらにクリーニング業務については、様々な取り組みにより業務能力が向上したことで、質の高い製品やサービスが行えるようになりました。業務を進める力が付いてくると業務を拡大する余裕が出てきます。同じ工業団地内で精密機械を作っている会社の防塵服のクリーニングを受注したことがきっかけとなり、初めは親会社である3工場から始まった受注が、今では親会社以外に20社の注文を受けるようになりました。  今後も業務や受注先の拡大を検討し、障害者の雇用数や職域を拡大したいと考えています。 改善策紹介 職場での課題を家庭と共有しながら 早期に的確な対応をして解決法を探る ここがPOINT 作業日誌の採用とルール化〜職場と家庭で課題を共有して解決法を探る 知的障害者の雇用定着のために普段の支援活動としての作業日誌をとり入れ、障害者の職場・仕事に対するニーズを掘り起こし、そのニーズに対する会社側の考えと対応をフィードバックする双方向の意思伝達手段として活用した。  作業日誌は、様式を特に定めず、記述の内容は主に、職場での指示の受けとめ方、職場環境・生活環境に関わる自身の所感などを自由に記述している。使用方法は、毎日、作業終了後持ち帰り自宅で記入。翌朝、職場のリーダーに提出、グループ長・工場長、時に社長も閲読、所見を記入した上、従業員にその日に戻すという形をとっており、家族にも見てもらうようにしている。職場生活について会社の考えも含めて課題の共有が図られ、その解決法を探る上で重要な役割を果たしている。 作業日誌の活用 ●記入事項は @今日の作業内容 A職場生活 B健康状況 C家庭生活 それ以外は特に様式を定めず自由に記述する。 改善策1 本人専任の仕事を設定?より作業しやすく機械を工夫 クリーンルーム内での作業の中でも滅菌服のシール作業を本人の専任とし、責任を持たせるようにした。さらに滅菌シール機に作業台を取り付け、シール作業を効率的にできるようにした。  それまでクリーンルーム内での製品の折りたたみを行っていたが、滅菌服のシール作業を本人の専任とした。同時に滅菌シール機に別注した斜めのテーブルを取り付けた。テーブルの作成費用は9,660円、これでシール作業が安定して出来るようになりミスがなくなった。それまでは出来上がった製品を一旦横に置いてからコンテナに入れ直しするという作業を行っていたが、この工程を省くことができ、シールし終わった製品をコンテナの中にすべり落とすようにすることができるようになった。 また、脱気シール機には袋の中に入れて空気を抜けるノズルがついているが、空気を抜くのに時間がかかっていた。補助作業として手で押さえて空気を抜くと中のクリーニング品が乱れることがあった。そこで空気抜きの補助用具(45cm×40cmのアクリル板)を作成、全体を押し空気を抜くようにした。 小川さんの仕事 ・クリーンルーム内での製品の折りたたみ ・クリーンルーム内でのシール作業 効果  仕事への意識が高まり責任感が芽生え、担当の仕事を着実に行えるようになった。 改善策2 清掃手順書及びチェックリストを作成?メール便のボックスを色分け 清掃業務は単純化・構造化した上、曜日別・作業内容別に工場内清掃の手順書及びチェックリストを作成した。各管理室に設置してあるメール便ボックスと社員が持ち回る配達・回収ボックスの色を統一した。  清掃は初めての業務だったため、まず用具を見直した。廊下は大型のモップを使用し、1往復で清掃が可能になるようにし、階段は持ち運びの少ない小型のモップにするなど、モップの種類を用途にあわせて変更した。また曜日別に手順書を1枚ずつホルダーに入れて、持参するようにしてもらい、書かれた順番や内容通りに進めば一日の作業が完了するようにした。作業ごとにチェック欄を設け、記録簿の補助資料とした。現在はこれらの清掃業務を習熟し、無駄のない業務を行っている。  17,800uの工場内7ヵ所の管理室を社員が持ち回る社内メール便は、書かれた宛名だけで整理・配達していたため、間違いが多く発生していた。そこで各管理室にある配達及び回収用ポストボックスと社員が持ち回るポストボックスの色と名称を統一。配達及び回収ポストボックスに入りきらない荷物については、色の付いた名札クリップを取り付けるようにした。このことで配達・回収ミスがなくなり回収時間の短縮ができた。 川副さんの仕事 ・工場内清掃 ・社内便の集配業務 効果  仕事を的確に行うことができるようになり、自信が生まれやりがいを持てるようになった。 改善策3 職域の拡大と受注の増加?新たな職務に挑戦、従来の業務の質を高める 請負業務の開始に合わせて、求められる能力を考慮した上でクリーニング業務従事者の中から人選を行い、請負業務に再配置。一方、クリーニング業務については品質やサービスの向上で業務を拡大した。  クリーニング業務従事者の中から何人かを請負業務へ配置転換することを考え、その人選を行った。請負業務は主に、製造準備、清掃、社内メール便集配を行っており、高度な理解力やコミュニケーション能力などが必要となる。クリーニング業務は正確にできても請負業務になると、その一部しかできないという社員もいたが、それは本人の特徴ととらえて、その能力を考慮し、配置転換を進めた。  クリーニング業務も9年目に入り、大幅に拡大している。一つのきっかけになったのは、同じ工業団地内で精密機械を作っている会社の防塵服のクリーニングを受注したことだ。このことにより製品の質の高さ、サービス力、工場内の衛生環境や最新鋭の設備が口コミで広がり、現在では親会社以外に20社の受注先ができた。20社の占めるクリーング売上高は30パーセントにまで達している。今後も受注先や請負業務を拡大することを検討している。 効果  能力を考慮し、配置転換を行うことで障害者社員の職域が広がった。また、従来からある業務の品質を高めることで受注が増加し、雇用の拡大につながった。 その他の応募事業所  平成19年度は知的障害者を取り上げ、職務の創出やキャリアアップ等により新たな職域の拡大を図った職務改善事例をテーマに募集いたしましたところ、全国75の事業所からのご応募をいただきました。  残念ながら入賞に至らなかった64事業所の職場改善の取り組みにも、今後の知的障害者雇用の参考になる事例が多く見られます。そこで、各事業所の改善・取り組みの概要をまとめてみました。 ・株式会社進幸(北海道) ・株式会社大東(北海道) ・株式会社共同システムサービス(宮城県) ・秋田指月株式会社(秋田県) ・小玉醸造株式会社(秋田県) ・常磐パッケージ株式会社(福島県) ・医療法人社団協栄会グループホーム・デイサービスセンターしゃらく(茨城県) ・医療法人 光風会回春荘病院(茨城県) ・社会福祉法人 長寿栄光会特別養護老人ホーム「宮の里」(栃木県) ・社会福祉法人 ふれあいコープ(栃木県) ・あけぼの123株式会社(埼玉県) ・京成ハーモニー株式会社(千葉県) ・SMBCグリーンサービス株式会社(千葉県) ・NECフレンドリースタフ株式会社(東京都) ・株式会社沖ワークウェル(東京都) ・身体障害者雇用促進研究所株式会社(東京都) ・株式会社JALサンライト(東京都) ・株式会社ベネッセビジネスメイト(東京都) ・明治学院大学(東京都) ・ロイヤルホールディングス株式会社(東京都) ・株式会社リクルートオフィスサポート(東京都) ・株式会社京急ウィズ(神奈川県) ・ジョブサポートパワー株式会社(神奈川県) ・株式会社富士通ゼネラルハートウェア(神奈川県) ・富士ソフト企画株式会社(神奈川県) ・特定・特別医療法人 慈泉会相澤病院(長野県) ・有限会社あいだ(新潟県) ・有限会社斉藤商店おやべ(富山県) ・ニッコー株式会社(石川県) ・特定・非営利活動法人鯖江市民活動交流センターここるcafe´&lunch(福井県) ・木村メタル産業株式会社 関エコテクノロジーセンター(岐阜県) ・アリエ株式会社富士宮工場(静岡県) ・有限会社フジ化学(静岡県) ・株式会社ミクロ富士見(静岡県) ・株式会社丸八真綿(静岡県) ・中電ウイング株式会社(愛知県) ・株式会社グリーンホテルシステムズ(三重県) ・マックスバリュ中部株式会社(三重県) ・カルビー湖南株式会社(滋賀県) ・オムロン京都太陽株式会社(京都府) ・医療法人社団淀さんせん会金井病院(京都府) ・社会福祉法人貝塚誠心園特別養護老人ホーム貝塚誠心園(大阪府) ・株式会社ダイキンサンライズ摂津(大阪府) ・株式会社エスコアハーツ(兵庫県) ・株式会社マルハチ(兵庫県) ・SMIハートフルサービス株式会社(和歌山県) ・済生会有田病院(和歌山県) ・日本赤十字社和歌山医療センター(和歌山県) ・桝谷精工株式会社(和歌山県) ・トスク株式会社(鳥取県) ・広島愛パック株式会社(広島県) ・広島精研工業株式会社(広島県) ・下関水陸物産株式会社(山口県) ・ヤマト運輸株式会社山口主管支店(山口県) ・有限会社リベルタス興産(山口県) ・株式会社トーカイ(香川県) ・株式会社T-NET vigla(香川県) ・シンセイフードサービス株式会社(愛媛県) ・高知大学農学部(高知県) ・四国医療サービス株式会社(高知県) ・株式会社サンテック(福岡県) ・特定非営利活動法人 たすけあい佐賀(佐賀県) ・九州住電装株式会社(大分県) ・有限会社上伸ミート(鹿児島県) 株式会社 進幸 ■代表者:代表取締役 渡邊典子 〒060-0063 北海道札幌市中央区南三条西2-1-1H&Bプラザ TEL011-219-2146 FAX011-219-2147 ●業種及び主な事業内容 社会福祉事業、高齢者・障害者の介護事業 ●従業員数49名(平成19年4月1日現在)うち障害者10名 内訳:知的障害者5名、視覚障害者1名(うち重度1名)、肢体不自由者1名(うち重度1名)、精神障害者3名 事業所の概要と障害者雇用の経過 昭和55年設立、不動産管理業を営む。平成12年、介護事業部を設立し、高齢者の訪問介護事業を開始。平成14年、障害者の居宅介護事業に参入し、障害者の生活支援に関わるようになる。平成15年、認知症対応型グループホーム・高齢者及び障害者デイサービスの開設を機に、知的障害者の職務試行を開始し、平成16年よりトライアル雇用を開始する。ハローワークとの連携、北海道障害者職業センターとの連携のもと、障害者雇用に積極的に取り組み、平成19年には障害者の就労移行支援事業、就労継続支援事業にも参入した。 改善テーマ 知的障害者の職務適性とステップアップについて 改善・取り組みのポイント グループホームの開設にあたって、入居者・スタッフともに、高齢者・障害者・健常者にかかわらず、普通に働き暮らすことができる地域社会を実践しようと取り組んできた。雇用開始から3年を経過し、調理補助や介護業務にも従事できるほど業務内容も幅が広くなっていたが、人員が増えたこともあり、嫌いなことは人がやるのを待ったり、なにもせずにいたり、入居者とのコミュニケーションも笑顔が少なくなっていた。拡大した業務に対応できなくなっている可能性があるため、業務内容を見直し、できていること・できないことを明確化させた。またスタッフが何度でもくり返し指示するようにした。障害について理解できていない部分も多く、どうすればよりスムーズによいケアを行っていけるかを、本人・スタッフ全員で率直に話し合う場として、月に3回程度のミーティングや飲み会で確認しあう。スタッフ全員の業務も含め、お互いに話し合える雰囲気・環境作りに力を入れた。 株式会社 大東 ■代表者:代表取締役 森井警一 〒046-0001 北海道余一郡余市町栄町46 TEL0135-23-6080 FAX0135-23-3065 ●業種及び主な事業内容 木製品製造販売 ●従業員数27名(平成19年7月1日現在)うち障害者9名 内訳:知的障害者8名、聴覚障害者1名(うち重度1名) 事業所の概要と障害者雇用の経過 昭和4年創業。有限会社を経て、昭和52年に株式会社大東を設立、本格的に木箱製造を開始。機械化による生産増加により、道内一円、東北方面に販路を拡大している。障害者雇用に関しては、昭和60年、障害者施設「共働の家」より雇用を打診され、余市町初の知的障害者雇用に踏み切る。施設と連携を図り積極的に雇用し、現在は全従業員の約3分の1にあたる雇用率となっている。 改善テーマ 知的障害者雇用のための作業工程の抜本的見直し 改善・取り組みのポイント ワイン木箱・日本酒木箱・海産物用木箱等を製造しているが、昨今のリサイクル法や焼却の問題から、釘を使用しないボンドによる接着木箱の需要が増えている。ボンド接着の木箱製造工程では、障害者の不得手とする作業があり、スムーズに行うためには他の社員でその準備作業を行わなければならず、負担が大きかった。そこで、高周波木箱接着機械や高周波木箱底付け接着機械、高周波差込木箱接着機械を導入することとした。さらに、安全性を考慮し、操作盤の改良・スイッチ部分の改良・高周波発信装置のシールド改良などを加え、危険やケガを防止できるようにした。機械の導入により、手作業による失敗が原因となる中断時間もなくなり、作業効率もよくなった。また、不良品率は熟練者とほぼ同じに軽減された。不良品率が低く、これまで以上に綺麗な木箱を作れることは、自分が従事している作業に自信が持て、機械を使いこなしていく意欲に変化し、作業を続けていく上で大きな励みとなっている。 株式会社 共同システムサービス ■代表者:代表取締役 伊藤善治 〒989-6106 宮城県大崎市古川幸町1-8-11 TEL0229-21-1881 FAX0229-21-1882 ●業種及び主な事業内容 労働者派遣事業、精密測定事業、木工工作事業 ●従業員数355名(平成19年6月1日現在)うち障害者7名 内訳:知的障害者5名(うち重度4名)、内部障害者2名(うち重度1名) 事業所の概要と障害者雇用の経過 平成15年、従業員数が300人近くになり障害者雇用を検討。人材派遣業が事業の中心であることから、職域をどのように確保するかが課題であった。ハローワーク、障害者支援センターのアドバイスを受け、障害者のできる仕事の確保や担当部署等の検討を重ねて、平成15年10月に『障害者わくわく作業所』を社内に開設し、知的障害者による簡単な電機部品の組立作業をスタートさせた。 改善テーマ 障害者の作業範囲(できる仕事の種類)の拡大をめざし、作業指導や品質管理を強化するため経験者の管理者を1名増員した。 改善・取り組みのポイント 作業範囲の拡大、育成(作業指導)と仕事の点検(品質管理)の打開・改善策として次のようなことに取り組んだ。まず、部品組立・検査の経験があるベテラン(知的障害を持つ子の親でもある)を障害者指導の専任パート職員として採用し、これまでの管理者と共に作業指導や作業の仕方の改善、作業終了後の点検を今まで以上に細かく実施した。経験者が指導・管理に加わったことにより、3種類程度しかできなかった仕事の範囲が6種類ほどに増え、作業不良も軽減している。作業手順を細分化して進めるようにしており、的確な分化・改善が図られている。何か問題が発生した場合でも、管理者が増員されたことにより、深い検討ができるようになり、これまで以上の対応・対策が可能になっている。 秋田指月株式会社 ■代表者:代表取締役社長 梶川泰彦 〒012-1115 秋田県羽後町足田字南田35-2 TEL0183-62-1116 FAX0183-62-4593 ●業種及び主な事業内容 製造業、電子部品製造 ●従業員数290名(平成19年6月25日現在)うち障害者5名 内訳:知的障害者3名(うち重度1名)、肢体不自由者2名 事業所の概要と障害者雇用の経過 株式会社指月電機製作所(本社兵庫県西宮市)が、昭和43年に秋田県羽後町の誘致企業第1号として現在地に進出し、現地法人を取得した。主にコンデンサの生産拠点として稼働するほか、研究・開発の拠点でもあり、新分野の拡大・開発に着手している。障害者雇用については、指月グループの方針により積極的に受け入れている。障害者も健常者も意識させない職場作りと、地域への貢献を謳い、親会社では特例子会社も有している。 改善テーマ 雇用管理等の改善・工夫?知的障害者雇用に関する部署以外の従業員への啓発? 改善・取り組みのポイント  親会社の特例子会社において知的障害者の自立を支援しており、知的障害者の優れた力を引き出すことは他の社員の刺激にもなるものと考え、平成18年より積極的に雇用している。入社式、歓迎会等を行い、障害を意識しない環境作りに加え、昼休み等の休憩時には、会話の輪に入りやすいような雰囲気を作り上げ、社員旅行などの会社行事への参加も積極的に促すようにした。作業については、受け入れ先の部門長が責任者となり、専属の指導者の下、一人作業からライン作業と多岐に渡り業務指導を行い、独り立ちできるまで何度も繰り返して実践に取り組んだ。作業終了時には、部署を超えた整理整頓の声かけで清掃を行うことにより、社員間のコミュニケーションが円滑になると同時に作業効率も高まった。職場内での障害者という意識が薄れ、当人も積極的に対応することができるようになると、仲間意識も芽生える。また、知的障害者で求職活動を行っている方の状況把握のため、ハローワークや特別支援学校(養護学校)、障害者支援施設等で情報を収集し、各種助成制度や支援策の活用について指導も受け、全社員の福利厚生の充実を図る。 小玉醸造株式会社 ■代表者:代表取締役 小玉真一郎 〒018-1504 秋田県潟上市飯田川飯塚字飯塚34-1 TEL018-877-5772 FAX018-877-2104 ●業種及び主な事業内容 清酒、味噌、醤油の製造販売 ●従業員数67名(平成19年6月30日現在)うち障害者1名  内訳:知的障害者1名 事業所の概要と障害者雇用の経過  明治12年創業。味噌醤油の醸造から始め、大正2年より清酒の醸造も開始。昭和8年、日本で初めて冷用酒を発売して注目された。障害者雇用については、平成18年に初めて知的障害者を雇用した。担当者、社員ともども大きな不安を持っていたが、養護学校やジョブコーチの指導を基に、作業手順や日常の決まりなどを習得させることができた。障害者であっても「特別な気遣いをしない」方針で、大きくスキルアップを図っている。 改善テーマ  「スキルアップ」を図り、他の従業員の作業レベルまでアップを 改善・取り組みのポイント  従来の単純労働(容器にラベルを貼る作業のみ)の繰り返しをやめて、「他の従業員と同じに」の方針に指導方法を変え、作業の応援のために、複数の職場へ派遣するようにした。毎日違う職場や異なる作業に従事することになるが、様子を観察しながら「仕事の量の調整」「一連の作業の途中で別の仕事をし、また元の作業に戻る」「慣れてきたらさらに別の仕事を追加する」など、他の従業員と同じように扱った。朝礼時におけるの社訓唱和の音頭取りと、3分間スピーチも、ローテーションに加えた。決められた仕事以外のことや、決められた時間以外の作業(残業)については、受け入れる側が大変だが、突然の残業が生じた場合には要請するようにもしている。総務部の所属になっており、他の総務部員が順番で果たしている仕事(朝礼の進行・朝の警備セットの解除・トイレ清掃・日報の記入等)も担当してもらう。 常磐パッケージ株式会社 〒973-8405 福島県いわき市内郷白水町浜井場23-1 TEL0246-45-0300 FAX0246-45-0307 ●業種及び主な事業内容 段ボール箱製造・販売 ●従業員数116名(平成19年3月31日現在)うち障害者6名 内訳:知的障害者4名、聴覚障害者1名(うち重度1名)、肢体不自由者1名(うち重度1名) 事業所の概要と障害者雇用の経過 昭和34年に常磐紙業株式会社として設立、昭和50年に常磐興産株式会社と合併。平成14年、包装事業部門を継承する新設分割により、常磐パッケージ株式会社として発足した。工業包装(自動車部品、機械部品、住宅設備機器など)、段ボール箱製造を中心としたトータルパッケージングの製造販売を行っている。障害者に対しては、特別扱いをせずに従事させている。 改善テーマ 1.職務創出 2.職務範囲拡大 改善・取り組みのポイント 段ボール箱製造工程においては、チームで行う作業と単独で行う作業が、1日のうちに交互に発生する。チーム作業の場合は、障害者と健常者がペアを組み従事するが、単独の場合は障害者であっても一作業者としての仕事を任せなければならず、安全面・品質面での指導教育及びルールづくりを徹底させなければならない。手作業に頼っていた自動搬送ラインのレール清掃であったが、安全面・衛生面に配慮して特殊なハサミを導入し、障害者にも一人で作業を任せられるようにした。段ボールパットへの荷札取り付けも、何をどれに貼付するのか戸惑うことが多く任せていなかったが、従業員が品名を書いた荷札をそれぞれの箱に直接置くようにすることで解決。それまで一般従業員の負担となっていた作業が軽減され、他の作業効率のアップにつながっている。また、段ボール箱のシュレッダー投入、製品のパレットへの積み付け、製品の仕上げ作業など危険が伴う作業については、危険を回避できるようなカバーを取り付けたり、基本ルールや基本ポイントを繰り返し説明し習得させることにより本人の自覚と責任感が向上し、一人作業も可能になった。 医療法人 社団協栄会 グループホーム・デイサービスセンターしゃらく ■代表者:理事長 大久保照義 〒311-4146 茨城県水戸市中丸町604-1 TEL029-257-2565 FAX029-254-6755 ●業種及び主な事業内容 介護保険事業 ●従業員数30名(平成19年6月1日現在)うち障害者1名  内訳:知的障害者1名 事業所の概要と障害者雇用の経過  認知症の高齢者9名を1ユニットとして、家庭的な雰囲気の下、「できること」を継続して生活することができるように、職員と共に調理・洗濯・掃除・買い物・散歩などの日常行為を行いながら共同生活をする施設。デイサービスセンターも併設している。現在18名のお年寄りが生活している。「社会福祉施設出身者でも一緒に利用者の支援ができたら」と考え、障害者を正職員として採用した。 改善テーマ ご利用者との関係を深め、ご利用者の生活支援にかかわっていく 改善・取り組みのポイント  デイサービスは毎日利用者が異なるため、不特定多数の人との関係づくりが難しく、また、共に働く職員の理解力不足などから、強い就労意識を持って働く環境ができていなかった。そこで、「利用者が固定されているグループホームで、ジョブコーチの支援を受けながら、本人の得意な分野を活かしていく」方針を取り配置転換を行うことにした。その際、管理者と現場職員で話し合いを行い、それまで従事していたデイサービスでの勤務状況や本人の得意なこと及び難しいことについて、情報共有と本人の特性についての意識統一を図った。忙しかったり余裕がなかったりすると忘れがちな挨拶、利用者との会話、新しい作業となる清掃業務が問題点であったため、職員の働きかけやジョブコーチの支援を受けながら対応した。新しい業務については、一連の作業をタイムスケジュール表にして渡すなどの工夫を行った。業務上の悩みや疑問点は、ジョブコーチが集約して管理者に伝えてもらうこととし、その都度管理者と介護主任で検討する。その内容は、月1回のフロアミーティングで職員に周知した。 医療法人 光風会 回春荘病院 ■代表者:理事長 佐藤勲子 〒319-1221 茨城県日立市大みか町6-17-1 TEL0294-52-3115 FAX0294-52-6296 ●業種及び主な事業内容 医療業 ●従業員数206名(平成19年6月20日現在)うち障害者3名 内訳:知的障害者2名、肢体不自由者1名 事業所の概要と障害者雇用の経過 昭和39年、医療法人光風会回春荘病院設立。現在、精神科病棟300床、医療型療養病棟85床、介護老人保健施設(平成3年開設)「日立南ヘルシーセンター」100床を持つ。知的障害者雇用については、茨城県立高等養護学校の就労支援部の依頼により、平成15年に当院近くに居住する女子生徒の実習を引き受けたことがきっかけである。実習後、療養病棟の看護補助者として雇用し、平成18年には男子生徒を採用、現在に至る。改善テーマ疾病や身体に障害のある高齢な患者様の大切な命を護り、スタッフと共に連携し「看護、介護の介助、そして支援」業務を共有化するために業務内容を改善しつつ、夜勤勤務を導入し2交替制業務実施可能へ 改善・取り組みのポイント 患者の大事な命を預かる医療機関において、知的障害者が「本当に患者の命を大切に護り、援助活動ができるのだろうか」「生から死まで看取るため、冷静に受け止めて自分自身のコントロールができるのだろうか」「よい人間関係を維持できるだろうか」など多大な不安や疑問、悩みが生じる。養護学校の先生に相談し、アドバイスをもらいながらひとつひとつ解決の道を探ることで、チームの一員として受け入れることができるようになった。特に高齢者の介護は、患者とのコミュニケーションが一番のポイントであるが、ヘルパーとして不適切な言動も確認されることも多い状況であり、接遇についてのプログラムを策定し、厳しく指導にあたった。本人が必要性を感じ、理解するまで根気よく指導を続けた。特別扱いをせず他のスタッフ同様に接し、共に話し合いを継続したことが、積極的に意欲を持ったヘルパーとしての自覚につながった。ヘルパーとしての役割を果たせるよう今後も成長を見守る。 社会福祉法人長寿栄光会 特別養護老人ホーム 宮の里 ■代表者:理事長 鈴木直子 〒321-0344 栃木県宇都宮市田野町666-2 TEL028-652-8122 FAX028-652-6560 ●業種及び主な事業内容  介護老人福祉施設 ●従業員数80名(平成19年6月1日現在)うち障害者2名  内訳:知的障害者1名、聴覚障害者1名 事業所の概要と障害者雇用の経過  特別養護老人ホーム宮の里は、社会福祉法人長寿栄光会が運営している8つの事業の中のひとつであり、「地域に住む高齢者の生活を支え、生きがいを高めるサービスの提供」「人間の存在と生命の尊厳を踏まえ、一人ひとりの状態に合わせたサービスの提供」「一人ひとりの考えや気持ち、選択や決定を最大限に尊重し、総合的なサービスの提供」を基本としている。平成16年に知的障害者雇用を開始した。 改善テーマ  知的障害者向け職務の開発 改善・取り組みのポイント ヘルパー3級を取得しながらも、介護職としての職務遂行は十分にできない状況であったことから、本人の希望を叶えられるよう職務の見直しを行った。従来介護スタッフが交代で行っていた「利用者の衣服の洗濯・たたみ・仕分け・居室への配達」を専任の職務とすることにした。この作業は、一日のスケジュールや作業手順がルーチン化されており、時間をかけて指導すれば習得できると判断した。介護職に対して高い関心を示しているため、前向きな気持ちに配慮し、昼食の配膳・下膳なども組み込んでいくことにした。利用者とコミュニケーションを図ることにつながり、今後の業務にもプラスになると考える。また、栃木障害者職業センターにジョブコーチ支援を依頼し、一緒に働くスタッフに対して、指導や雇用管理の方法について指導をお願いした。これにより、作業工程のマニュアル作り・掲示等の作業ミスを防ぐための工夫を行ったことで、作業する本人が混乱することなく、仕事の手順を習得することができた。 社会福祉法人 ふれあいコープ ■代表者:理事長 竹内明子 〒321-0107 栃木県宇都宮市江曽島2-11-21 TEL028-659-5577 FAX028-659-1192 ●業種及び主な事業内容 デイサービスを中心とした在宅福祉事業 ●従業員数122名(平成19年7月6日現在)うち障害者3名 内訳:知的障害者2名(うち重度1名)聴覚障害者1名 事業所の概要と障害者雇用の経過 平成12年より『とちぎコープ』の福祉事業として宇都宮事務所を開設し、デイサービスを中心とした在宅福祉事業をスタート。現在、宇都宮市及び栃木市で計5つの事業所において、デイサービス、訪問介護、在宅介護支援、小規模多機能型居宅介護、福祉用具レンタル・販売の業務を行っている。平成20年には特別養護老人ホームの開所を予定している。障害者雇用については、平成13年の知的障害者の職 場実習の受け入れを機に、ノーマライゼイションや企業の社会的責任の観点から前向きに取り組んでいる。現在、聴覚障害者のケアマネージャーも雇用している。 改善テーマ 知的障害者の雇用と職域の拡大 改善・取り組みのポイント 介護職種が中心の職場であることから、受け入れが難しいと思われたため、まず知的障害者雇用の実績作りとして、厨房での食器洗浄やホールの清掃を担当するクリーンスタッフとして受け入れることから始めた。指導にあたり経験豊富な年輩の職員を配置した。加えて、定期的に近隣の社会福祉法人せせらぎ会の職員より、本人に対する指導や同僚へのアドバイスを受ける。ホームヘルパー3級の資格を持つ知的障害者を採用する際、すぐに介護職に従事させずに介護現場に徐々に慣れることからスタートさせた。ヘルパー3級の資格では身体介護業務に従事できないため、職域拡大を図るために在籍したままヘルパー2級の資格を取得させ、取得後、職場に慣れた時点でデイサービス利用者の出迎え補助、利用者の誘導、トイレ介助等の仕事に従事させた。マンツーマンでの指導を行い、本人のペースに合わせた技術習得を図ったが、デイサービスの介護業務に求められるスピードがそのレベルに達しないため、比較的ゆっくりしたペースでも介護可能な小規模多機能型居宅介護事業所へ転属させたところ、介護スタッフとして安定した勤務が可能となった。 あけぼの123株式会社 ■代表者:代表取締役社長 齋藤光司 〒348-0052 埼玉県羽生市東5-4-71 TEL048-560-1231 FAX048-560-2855 ●業種及び主な事業内容  清掃業 ●従業員数18名(平成19年7月1日現在)うち障害者15名  内訳:知的障害者15名(うち重度9名) 事業所の概要と障害者雇用の経過  平成15年、曙ブレーキ工業株式会社が企業としての社会的責任を果たすことを目的にグループ会社『あけぼの123株式会社』を設立。平成16年、埼玉県の製造業としては初めて特例子会社の認定を、また平成17年には、関係会社特例認定を受けている。主に、本社ビル及び工場内のトイレ・会議室・通路・更衣室・浴場等の清掃業務を行う。障害者雇用率は、平成18年度は1.92%となっている。 改善テーマ  確立された用具置場を目指しての工夫改善 改善・取り組みのポイント  清掃作業において、用具管理は危険防止にもつながる。数種類の用具を準備し状況に応じて使用するため、使わない用具は壁に立てかけておく。作業中に用具が倒れ、ケガをする場合もあることから、立てかけた時に倒れないよう、モップや箒の柄の先端にスポンジをつけるなどの工夫を行った。また、用具の置き位置を決めて、用具と床にシールを貼り、わかりやすくした。シールは作業者本人に選んでもらい、より親しみやすい置き位置を確保した。使用する順番に用具を並べ置き、取り出しやすいようにした。定位置に用具を置くことを楽しみながらできるようになり、用具を探して混乱することもなく、取り出しやすさはスムーズな作業性につながっている。 京成ハーモニー株式会社 ■代表者:代表取締役社長 斎藤貢 〒285-0906 千葉県印旛郡酒々井町柏木字桐ノ木12-8 TEL043-496-5490 FAX043-496-5490 ●業種及び主な事業内容 グループ企業の関連施設の清掃及び名刺作成業務 ●従業員数10名(平成19年6月30日現在)うち障害者6名 内訳:知的障害者6名(うち重度3名) 事業所の概要と障害者雇用の経過 平成17年、京成電鉄株式会社が企業の社会的責任(CSR)の一環として、障害を持つ方々の経済的な自立を支援し、地域社会の福祉向上に寄与することを目的に設立。障害の特性に応じた雇用機会の創出と職域拡大に努め、企業の事業活動と障害を持っている方々との共生を目指している。京成グループ全体の障害者雇用の中核を担うべく、今後の事業展開を進めている。 改善テーマ  作業品質の向上 改善・取り組みのポイント 雇用後、主に清掃業務に従事してもらっているが、トイレの清掃の際に一枚の雑巾で全ての作業を行うなど、衛生面への配慮ができない。そのため、清掃に伴う作業を視覚化・選別化を行った。便器用の雑巾・洗剤・便器本体に緑色のシールを、洗面台・鏡用の雑巾・洗剤・洗面所各カ所に赤と青のシールを、ドアノブや直接お客様が触れる洗浄フック部には白のシールを貼るという準備を整えた上で、指導員による訓練を行った。トイレ清掃を行う全10カ所で指導法、作業法を統一した。利用するお客様がシールの意味を理解してくださり、衛生面においても安心してご利用いただくことができるようになっている。指導員による繰り返し指導により、作業に慣れる時間も早くなり、正確さが向上している。清掃用具の視覚化・選別化と同時に作業手順を統一したことにより、指導員間における指導方法のバラツキを解消することにもつながっている。 SMBCグリーンサービス株式会社東京本社 ■代表者:代表取締役社長 丸者正直 〒275-0016 千葉県習志野市津田沼4-9-16 TEL047-454-5751 FAX047-454-3320 ●業種及び主な事業内容 銀行事務の受託 ●従業員数41名(平成19年7月1日現在)うち障害者33名 内訳:知的障害者4名(うち重度2名)、聴覚障害者9名(うち重度8名)、肢体不自由者17名(うち重度11名)、内部障害者3名(うち重度2名) 事業所の概要と障害者雇用の経過 平成2年、旧住友銀行が経営目標の一つとして掲げた「企業と社会の調和」を図る具体策として、「働く意志と能力を持ちながら、障害のために適職に就くことに恵まれない方々に安定した雇用の場を提供する」目的で設立された特例子会社。当時の都市銀行では初のことであった。三井住友銀行の事務受託を主な事業内容としており、事務集中センター的な役割を担っている。平成3年4月の東京本社を皮切りに、11月大阪本社、平成5年4月多摩営業所と、3拠点体制で業務を運営し、障害者社員は全体で117名(うち知的障害者は13名)に達している。 改善テーマ 知的障害者一人一人の持てる能力を引き出し、雇用の拡大を図る。 改善・取り組みのポイント 「銀行の契約書のマイクロフィルム撮影とその契約書の検索データ入力」の受託により、月間2万件の事務量が発生した。今後も増嵩が見込まれるため、パソコンのスキルを持つ知的障害者を雇用することにした。会社見学、実習を経て採用し、仕事の基本や職場の心得等の研修を行い、さらに3ヵ月間は指導員が仕事面はもちろん職場生活の指導も併せて担当することにした。一日の終了時に書く日誌は、コミュニケーションの円滑化に有効であるばかりか、自分の意見や考えを表現する訓練にもなり、就労の定着にも役立っている。事務系の仕事は、成果や成長度合いがわかりにくいため、「スキル習得状況管理表」を作成。この管理表は、各業務を工程にブレイクダウンしてスキル毎に習得レベルの目標を定め、その後の習得状況を本人が視覚的に理解できるもので、意欲向上に役立つ。1項目でも達成すれば仕事への自信につながり、周囲からの期待に応えようと一層努力する姿が見られる。その意欲を新しい仕事へも向けるように、この管理表を活用した能力の開発を進めている。 NECフレンドリースタフ株式会社 代表者:代表取締役社長 溝辺隆之 〒183-8501 東京都府中市日新町1-10 TEL042-333-1939 FAX042-333-1930 ●業種及び主な事業内容 NEC府中事業所内周辺業務(構内清掃/緑化作業など) ●従業員数22名(平成19年7月1日現在)うち障害者18名 内訳:知的障害者18名(うち重度3名)(うち重複1名) 事業所の概要と障害者雇用の経過 就労への意欲のある人たちを対象に、雇用機会の提供と社会参加を目的に、平成15年4月に7名の社員を迎えて設立したNECの特例子会社。時代の変革期を迎え、業務のOA化・IT化やものづくりの現場が海外に移るなど、障害者の職域の確保が難しくなったため、親会社のNECでは、従来の身体障害者中心の採用から知的障害者の採用を検討。障害者に配慮した雇用管理、職域の確保が容易であるとの判断から、特例子会社設立となった。 改善テーマ 知的障害者の就労の定着化と職域の拡大 改善・取り組みのポイント 平成15年より知的障害者雇用を開始し、職域の開拓に努めてきたが、新たに発生する作業は事業所内に点在しており、作業管理の難しさが顕在化していた。平成17年に山口県で開かれた第28回全国障害者技能競技大会(アビリンピック)において、障害者用のビジネスモデルとして園芸事業の紹介をみて、当社でも取り組みを検討し導入することにした。問題点の解決も含め、「グループで行動ができるように、用土作り・種まき・育苗などの工程を単純化する」「種に数、株の数などを、1工程2?3時間で行えるボリュームにする」「できるだけ屋内で作業できるように工夫する」など、作業の見直しを行った。また、自分の蒔いた種が花を咲かせるまで、一貫して世話(管理)をしていくことにより、責任感の育成と同時に達成感を味わえるように、全てを手がけるようにさせた。作業にあたっては、作業工程や作業場所に応じて、作業棚の組み直しを行い、その際既製品ではなく、作業者に合わせて組み直す配慮をした。やり直しのきかない作業が多いことから、必ず指導員(作業援助者)をつけてきめ細やかな指導を行っている。 株式会社 沖ワークウェル ■代表者:取締役社長 木村良二 〒108-8551 東京都港区芝浦4-11-17 TEL03-5445-6805 FAX03-3798-7085 ●業種及び主な事業内容 Web制作、名刺制作、その他パソコン作業 ●従業員数41名(平成19年6月1日現在)うち障害者33名 内訳:知的障害者3名(うち重度2名)、視覚障害者1名(うち重度1名)、肢体不自由27名(うち重度27名)、内部障害者2名(うち重度2名) 事業所の概要と障害者雇用の経過 沖電気工業株式会社の社会貢献推進室内に設置された在宅勤務チーム「OKIネットワーカーズ」として発足。平成16年4月に、OKIの特例子会社として『沖ワークウェル』を設立。「チャレンジドと共にe社会の創造」を企業理念とし、通勤が可能な知的障害者、脳性まひ障害者の雇用も開始した。主な事業はホームページ制作、プログラミング、名刺制作、デザイン等である。障害者の経験、特性、感性を活かし、誰もが笑顔で暮らせるIT活用社会を作ろうと業務を遂行している。障害者間及び健常者のコラボレーションにより、付加価値の高いものの生産を目指す。 改善テーマ 知的障害者のパソコンによる名刺制作 改善・取り組みのポイント 何とか重度知的障害者にパソコンを使った仕事を提供したいと考え、名刺制作における工程を細分化し、知的障害者向けのマニュアルや定規を作成、作業特性により担当を決定した。在宅勤務障害者には、注文受付・内容確認、依頼内容の名刺ソフトでの作成を、通勤している身体障害者には、作成された名刺原稿の仮プリントアウト作業を、知的障害者には、仮プリントアウトされたものと依頼内容の読み合わせ、印刷・裁断・品質確認・箱詰め・発送などの業務をそれぞれ担当してもらうようにした。細分化した作業工程ごとに品質チェックが行えるので、安定した品質の名刺作成が可能になった。さらに、仕事に対するモチベーションや集中力を持続させる対策として、朝礼・終礼の実施、月間合言葉の呼称、体操のリーダーの輪番制などを行った。また、港区NPOエブリのメンバーに交代でサポートしてもらい、社員が忙しい時にもすぐに話を聞ける状態にし、仕事以外のことであってもすぐに相談に応じられる体制を整えた。 身体障害者雇用促進研究所株式会社 ■代表者:代表取締役社長 篠原欣子 〒164-0013 東京都中野区弥生町2-3-13川本ビル2F よこはま夢工房 TEL045-232-7631 FAX045-231-8970 ●業種及び主な事業内容 その他サービス業、封入・梱包・発送業務、データ入力業務、名刺作成、クッキー製造、清掃・シュレッダー業務、保険代理店業務等 ●従業員数176名(平成19年7月1日現在)うち障害者161名 内訳:知的障害者84名(うち重度18名)(うち重複1名)、視覚障害者6名(うち重度4名)、聴覚障害者15名(うち重度4名)、肢体不自由者32名(うち重度3名)(うち重複3名)、内部障害者22名(うち重度19名)、精神障害者2名 事業所の概要と障害者雇用の経過 創業以来、「雇用の創造」「人々の成長」「社会貢献」を企業理念に掲げ、実践してきた人材派遣会社『テンプスタッフ株式会社』の特例子会社として、主にテンプスタッフ株式会社及びグループ各社からの業務を受注している。身体上の障害を持つ者に比べ、知的障害者は職に就くことが難しい現実を踏まえ、知的障害を持つ方を対象とした職場の開発を検討した。平成18年5月に横浜市と提携し、クッキー製造を行う『よこはま夢工房』を設立し、知的障害を持つ者を中心に57名の雇用を実現した。 改善テーマ 知的障害を持つ方の大幅な雇用を目的とした、クッキー工場の設立 改善・取り組みのポイント 知的障害を有していると、仕事のルールを守り継続業務を行うことが苦手であるため、継続を途切れ納期に遅れが生じる等のアクシデントが発生する。業務に支障が出ることにより、残業が増加すると、作業能力が限界になり低下。引いては会社への貢献度も落ち、業務打ち切り等のマイナス面が多発していく。障害者には、仕事の仕組み・進め方・注意点を計画的に教育指導し、理解度の低い障害者には、それらを日々指導していく方法を工夫した。理解度の高い障害者の技術が一定レベルに達した時点で、理解度の低い障害者とコンビを組ませて業務にあたる。さらに、理解度の高い障害者が一人での判断が可能になったところで、2?3名程度のチームを編成し、そのリーダー格としての業務を与える。指導に当たる責任者は、個々の能力の向上に努めるとともに、段階を踏んだリーダー育成が進められるよう努力した。他に、知的障害者と難聴者のコミュニケーションを図るために、週1回ほど時間を決めて手話教室を開催し、コミュニケーションの増加と、円滑な業務推進を図っている。 株式会社 JALサンライト ■代表者:代表取締役社長 林隆生 〒140-0002 東京都品川区東品川2-4-11 TEL03-5460-6871 FAX03-5460-6872 ●業種及び主な事業内容 その他事務サービス業 ●従業員数137名(平成19年6月1日現在)うち障害者63名 内訳:知的障害者10名(うち重度3名)、視覚障害者7名(うち重度5名)、聴覚障害者16名(うち重度9名)、肢体不自由者22名(うち重度7名)、内部障害者8名(うち重度5名) 事業所の概要と障害者雇用の経過 平成7年11月、障害者雇用の促進等に関する法律に定める日本航空(現日本航空インターナショナル)の特例子会社として設立。日本航空では、プライオリティ・ゲスト(身体の障がい等で優先的配慮を必要とするお客様)を対象とした様々なサービスを提供してきたが、雇用の面においても更に推進したいとの全社的な思いから当社が誕生した。総務事務、社内文書の集配送、制服事務等の事務代行、名刺IDカード作成等の印刷業務の他、マッサージルームの運営にもあたっている。 改善テーマ どの企業も障害者の職域の確保に苦労をしている。そうしたなか職域拡大のため従来アウトソースしていた業務を見直し、業務の内製化を通して知的障害者の職域を確保する。職域確保に当たっては、業務を単純化することで知的障害者でも対応できる手順の確立に留意し、知的障害者の安定雇用機会とする。 改善・取り組みのポイント 国内におけるバブル崩壊後、コストダウンのためにアウトソーシング化が進み、障害者が分担しやすい職域が極端に減少していた。業務の内製化というトレンドと知的障害者の特性に配慮し、また他の特例子会社の職域拡大の先行事例を参考にしながら、事業主である株式会社日本航空インターナショナルの日常業務のサポートとして印刷業務(マニュアル印刷)に注目した。知的障害者が安全に、正確に、確実に作業を進められ、また作業ミスや間違いを発生させないような仕様を整えることを優先。発注者の要求する商品を提供するために、ページ欠損防止、印刷量、操作の単純化、製本等の条件を満たす印刷機材の調達を行った。作業機器や作業手順を工夫することで、ヒューマンエラーが極小化され、提供する商品の品質確保も可能となる。このような職域は、メンバー全員で生産活動に参加することを要求されるため、相互協力や目標管理意識の向上につながった。 株式会社 ベネッセビジネスメイト ■代表者:代表取締役副社長 島田聡 〒206-0033 東京都多摩市落合1-34 TEL042-355-3536 FAX042-355-3537 ●業種及び主な事業内容 サービス業、清掃、メール集配、総務事務代行、印刷デザイン制作他 ●従業員数102名(平成19年6月28日現在)うち障害者68名 内訳:知的障害者40名(うち重度10名)、視覚障害者5名(うち重度2名)、聴覚障害者6名(うち重度4名)、肢体不自由者4名(うち重度1名)、内部障害者3名(うち重度1名)、精神障害者2名、その他の障害者8名 事業所の概要と障害者雇用の経過 ベネッセグループのCSRの観点から、障害者の法定雇用率を安定的・継続的に達成していく体制づくりを経営課題と捉え、平成16年より本格的に特例子会社設立準備プロジェクトを立ち上げ、平成17年に設立。同時に、グループ会社の潟xネッセコーポレーション、潟eレマーケティングジャパン、潟xネッセスタイルケア、潟pーソンズ、潟xネッセビジネスメイトの5社にてグループ適用認可。平成19年6月時点では、グループ適用雇用率は2.29%に達している。 改善テーマ  受託事業における知的障害者の職域拡大と一人ひとりのレベルアップを目指した育成システムの構築  〜個人情報保護法や環境保護の取り組みなど企業が担う新しいテーマへの対応や、顧客ニーズの掘り起こし、キャリアアップにより新しい職務を創出。さらに、企業としてのサービス力強化を目的に、一人ひとりのレベルアップを目指した実践方式の育成システムを構築〜 改善・取り組みのポイント  特例子会社設立にあたり、継続的・安定的な経営を可能にするために、親会社である潟xネッセコーポレーションの総務・事務代行の他、外注委託していた業務の中からメールサービス・清掃業務を移管し、ベネッセビジネスメイトのメイン業務として事業を開始。コミュニケーションや対人接触の伴う場面での対応が苦手な知的障害者でも対応できるよう、具体的な受け取り応対の場面をイメージして、復唱の仕方や受領サインをもらうときの話し方などをマニュアル化し、事前研修やトライアル雇用によって訓練を行い、実践に少しずつ近づけていった。清掃業務については、クリーンサービスという名称にして、単なる清掃に絞らず職場環境をきれいに保つ、整えることを含めた業務フローを作ることができた。 明治学院大学 ■代表者:学長 大塩武 〒108-8636 東京都港区白金台1-2-37 TEL03-5421-5406 FAX03-5421-5697 ●業種及び主な事業内容 教育 ●従業員数521名(平成19年6月1日現在)うち障害者4名 内訳:知的障害者1名、肢体不自由者1名、内部障害者2名 事業所の概要と障害者雇用の経過 東京都港区と神奈川県横浜市にキャンパスを持ち、文・経済・社会・法・国際・心理学部の6学部13学科に約12,000人が学ぶ文化系総合大学。明治16年の創設以来、キリスト教主義教育に基づく人格教育を築き続け、教育理念として「DoforOthers」を掲げている。社会学部の教育プロジェクト「都市部における地域社会の活性化への取組?共生社会実現への教育支援と障害者雇用?」が、文部科学省の「現代的教育ニーズ取組支援プログラム」に採択され、プロジェクトが始動したことが契機となり、大学で知的障害者の雇用を進めていくこととなった。 改善テーマ 〜共生社会実現への『学生参加型障害者雇用』〜 大学における障害者雇用は、単に「雇用」として進めていくのではなく、「人材育成」「共生社会の醸成」の視点からも包括的に進めていくことが望ましいと考えられる。本学では学生への共生社会の理解を育むという「教育」の一環に、「障害者雇用」の取組みを位置づけて、知的障害のある人の雇用を進めている。 改善・取り組みのポイント 雇用開始にあたり、仕事の切り出しや雇用プロセスを検討する会議(コア会議)を大学事務局と社会学部が定期的に行い、障害者雇用アドバイザーの助言を受けた。単一の部署での障害者雇用も検討されたが、「ルーチン作業を組むことが困難」「複数部署で仕事をしてもらうことにより、障害者雇用への理解を大学全体に浸透させることができる」と、図書館・総務部・管財部において仕事の切り出しを行い、業務をリスト化、一日のタイムスケジュールを作成した。また、学生を参加させて第三者の視点を取り入れることとし、その「ジョブコーチ協力学生」が業務マニュアルに必要な写真を撮影し、分かりやすく、作業中いつでも使えるようなハンディタイプのマニュアルを作成した。さらに、週に一度、振り返りのための面談も実施した。 ロイヤルホールディングス株式会社 ■代表者:代表取締役社長 今井明夫 〒154-0011 東京都世田谷区桜新町1-34-6 TEL03-5707-8804 FAX03-5707-8801 ●業種及び主な事業内容 飲食業 ●従業員数4,015名(平成19年6月1日現在)うち障害者88名 内訳:知的障害者60名(うち重度13名)、視覚障害者1名(うち重度1名)、聴覚障害者12名(うち重度7名)(うち重複1名)、肢体不自由者8名(うち重度2名)、内部障害者6名(うち重度5名)(うち重複1名)、精神障害者1名 事業所の概要と障害者雇用の経過 昭和25年にロイヤル株式会社として設立、平成17年に持株制に移行し、社名をロイヤルホールディングス株式会社に変更した。チェーンレストラン、空港・高速道路サービスエリア内のレストラン、カフェテリアや専門レストランの経営、航空機内食の調整・搭載、洋菓子・パン・アイスクリームの製造販売、業務用食品製造卸事業、病院等の給食、ホテル事業を展開している。弊社行動基準に則り、ロイヤルグループ障害者雇用趣旨を策定。障害者の特性に配慮した適切な雇用の場を積極的に確保することが、企業における社会責任のひとつと考えている。 改善テーマ グループ職場定着推進チームの設置と、知的障害者の集合研修によるキャリアアップと定着 改善・取り組みのポイント 各店舗において複数名の採用が困難な現状の中、能力に見合った仕事が少ないこと、同じ職場で働くパート社員らの認識不足によるコミュニケーション不足などから、障害者本人の抱える孤独感が大きく、離職したい旨を訴える障害者が複数出ていた。まず、職場定着推進チームの設立と相談員を養成するため、各社からメンバーを選出し障害者雇用理念の基本チームを作った。さらに、職業生活相談員の増員も図った。障害者本人には、同じ仕事をする仲間がいることを知ることによる孤独感からの開放、現状の仕事の見直しや職域の拡大を目的として、各店舗で働く知的障害者の集合研修を行った。できないと思われていた仕事についても、補助ツール(ゲーム感覚で覚えられるカード、挨拶や身支度から包丁の使い方までの基本をDVD化、解説テキスト等)を作成することにより、知的障害があっても調理人になれることを確認させた。また、お互いが持つ偏見や誤解が解消するように、障害者同士の交流だけでなく、家族や職場の健常者にも参加を呼びかけ、相互理解に努めた。 株式会社 リクルートオフィスサポート ■代表者:代表取締役社長 佐川恵一 〒104-0054 東京都中央区勝どき3-13-1FOREFRONT TOWER2 TEL03-5560-2151 FAX03-5560-2181 ●業種及び主な事業内容 リクルートおよびリクルートグループに対する事務サービスの提供 ●従業員数198名(平成19年4月1日現在)うち障害者124名 内訳:知的障害者7名(うち重度4名)、視覚障害者6名(うち重度6名)、聴覚障害者12名(うち重度7名)、肢体不自由者74名(うち重度45名)、内部障害者24名(うち重度14名)、その他の障害者1名 事業所の概要と障害者雇用の経過 平成2年、株式会社リクルートの特例子会社として『株式会社リクルートプラシス』を設立。平成18年に社名変更。障害の有無に関わらず、従業員全員が経営に参加して“次なる事業”の創造に取り組む。「あらゆる人が、能力・意欲の発揮できる機会を創造し、成果を高めることにより、豊かで人に優しい社会の実現をめざします」を企業理念に掲げ、リクルートグループ独自の強みを最大限に活かしつつ、事業を通して社会貢献を果たすことを目指している。 改善テーマ 第三次産業における知的障害のある方の職域開拓?雇用継続の実践例? 改善・取り組みのポイント 工場の生産ラインや店舗のバックヤード業務などの「定型的作業領域」を持たないサービス業において、知的障害のある方を受け入れ、継続的に雇用していくための条件は、「業務再設計による提携業務の抽出」「受け入れ環境の整備」「バックアップ体制の確立」という3点に集約される。これらの観点から職域創出には、「現状のやり方を変えたくないという抵抗感のある現場に、どう理解・協力してもらうか」「会社としての生産性を担保したうえで、どれだけ業務フローを変えられるか」が問題となる。職場管理者を含めた会社としての積極的な方針のバックアップが不可欠である。また、受け入れ環境の未整備によるスピンアウトを防ぐために、同僚となる人へのマインドセット、作業フローの設計、さらに業務指導だけでなく日常業務に目配りできる環境を整えることが必要である。職場内部の合意形成は職場配属前から徐々に行い、配属後は継続して図っていくことが大切である。継続した就労には、複数の関係者で支援することを基本スタンスとして、いざという時の相談先があることを明確にする。課題を共有して解決することが望ましい。 株式会社 京急ウィズ ■代表者:取締役社長 熊谷孝次 〒249-0006 神奈川県逗子市逗子5-10-25 TEL046-874-0350 FAX048-872-3104 ●業種及び主な事業内容 清掃、駐輪場管理、各種印刷、布団乾燥、グループ会社の業務、クリーニング、食料品製造販売 ●従業員数72名(平成19年7月9日現在)うち障害者35名 内訳:知的障害者30名、肢体不自由者3名、精神障害者2名 事業所の概要と障害者雇用の経過 平成15年、京浜急行電鉄株式会社(本社東京都港区)が鉄道業界初の特例子会社「株式会社京急ウィズ」を設立。沿線地域の発展、社会貢献を目的に京急グループでの障害者雇用促進に努めている。親会社の京浜急行電鉄だけでなく、京急グループ全体の中から障害者や高齢者が対応可能な業務を集約することで、より働きやすい環境を提供する一方、雇用の一元管理など業務の効率化を図っている。 改善テーマ 「障害者の新規採用から雇用の安定と職域の拡大に向けて」 1.障害者の雇用促進で社会貢献することは企業としての使命 2.適正な雇用管理と安全作業の実践で雇用の安定を図る 改善・取り組みのポイント  「障害者の雇用促進を図り、社会へ貢献する」をコンセプトに、「地域社会に貢献することは、京急グループのイメージや信頼度をアップする」「障害者雇用率を京急グループに波及させることができ、また雇用の一元管理をすることによってグループ全体の雇用率が向上する」「各種の助成金制度を有効活用し、定着に伴う業務の効率化が図れる」「特例子会社として、ハローワークや就労支援機関等の支援のもとに障害者の能力を十分に引き出せる」等の内容を説明し、特例子会社の設立について理解を求め、鉄道業界初めての特例子会社を設立できた。採用後のフォローアップについては、ハローワークはもとより地域の就労支援機関、日本経済団体連合会の障害者雇用相談室、他多数の関係機関や会社等のネットワークを活用し、障害者雇用と職域の拡大を集中的に行い、清掃業務・クリーニング・ベーカリーなどの職域を確保した。また、それぞれの職場における安全作業面での配慮や治具の改善を図り、適切な雇用管理を徹底することで、障害者雇用の就労と定着化を図る。 ジョブサポートパワー株式会社 ■代表者:代表取締役 尾野博 〒220-8130 神奈川県横浜市西区みなとみらい2-2-1横浜ランドマークタワー36F TEL045-227-4417 FAX045-227-4753 ●業種及び主な事業内容 親会社からの事務請負サービス事業 ●従業員数130名(平成19年6月1日現在)うち障害者121名 内訳:知的障害者2名、視覚障害者21名(うち重度13名)(うち重複1名)、聴覚障害者7名(うち重度4名)(うち重複1名)、肢体不自由者4名(うち重度3名)、内部障害者6名、精神障害者6名、その他の障害者75名 事業所の概要と障害者雇用の経過  平成13年、マンパワー・ジャパン株式会社が全額出資して東京都港区新橋に設立。平成15年、特例子会社として認定を受ける。内外郵便業務など、親会社からの事務処理業務を主に担当している。東京都港区赤坂への本社移転に伴い、次第に雇用を増加、立川市・川崎市・大阪市などに事業所を設置している。平成15年11月より、知的障害者雇用を開始。東京障害者職業センターからジョブコーチを招き、指導を受ける。平成17年より、専任のサポーターを雇用。サポーター自身も障害者である。 改善テーマ 知的障害者の能力を最大限に発揮してもらうための適合業務の開発、ジョブコーチの支援および専任担当者の配置によるサポート体制、職場にスムーズに定着するための作業環境の整備、家庭との毎日の連絡による安全・健康への配慮 改善・取り組みのポイント まず職務を遂行するための整備として、職務の開発、ジョブコーチ、家庭との連絡がある。1日の仕事量として適切な職務を関係者で検討し、関係箇所と具体的な実施策について意見交換を行った。ジョブコーチには、毎日の仕事のスケジュール表の作成、本人のチェック方法、仕事の詳細なマニュアル作成などの指導を受けた。毎日家庭と連絡を取り合うために、連絡表の作成も行う。次に職場環境の整備として、社内支援体制作り、安全面の配慮を行った。支援体制整備は、最初の3ヵ月にジョブコーチの派遣を決め、毎日の半日をつきっきりで指導いただくこととし、マナーの指導もお願いした。残り半日は、管理職がつきっきりで支援することにした。外出の際、初めて訪れる場合には、目的地に到着するまで不安があるため、家族に通勤時の付き添いを依頼した。 株式会社 富士通ゼネラルハートウェア ■代表者:代表取締役社長 島野康寿 〒213-8502 神奈川県川崎市高津区末長1116 TEL044-861-9741 FAX044-861-9786 ●業種及び主な事業内容 サービス業(清掃・社内メール取扱、販促物管理、部品梱包等) ●従業員数28名(平成19年7月1日現在)うち障害者21名 内訳:知的障害者19名(うち重度1名)(うち重複2名)、聴覚障害者2名(うち重度2名) 事業所の概要と障害者雇用の経過 平成16年1月、株式会社富士通ゼネラルの障害者雇用に関する特例子会社として設立(行政認可は平成16年8月)。富士通ゼネラルグループ企業による障害者雇用率の達成に向けた取り組みを目的としている。障害者は主に知的障害者であり、親会社から転籍した者、新規雇用した者とが混在しているのが特徴である。「障害者一人ひとりが、社会人として生き甲斐を持って働き、健常者と障害者が共に社会に貢献する喜びを創造する」を会社理念に掲げている。 改善テーマ 「目(絵柄)で見て分かるカタログのピッキング手法の構築」 従来の製品カタログ・POP類ピッキング・梱包等は棚卸方式であったが、簡単でかつ確実に作業を行うために、目で見て分かる絵柄検索方式に変えた。 改善・取り組みのポイント 親会社では、製品カタログやPOP類の取扱いを外注していたが、全面的に社内で管理することにした。新しい発想を取り入れ、誰にでも簡単にできる作業改善をテーマに、指導員によるワーキンググループを編成して「目で見て(絵柄)分かるカタログのピッキング手法の構築」を進めた。具体的には、注文書の内容と同じカタログ・POP類は製品別テーマパークで括り、支店やサービス等の発送先は乗り物分類に区分し、絵柄表示に置き換える方法である。エアコンのカタログやPOPは動物園、映像機器は水族館、情報機器は植物園・昆虫館、発送先は全て乗り物に分類し、棚BOXのカタログ・POP類に絵柄を表示することにした。登録された絵柄は、カタログ・POP類で500種類、発送先は45種類になった。暗く味気なかった倉庫内が、各テーマ毎に表示される絵柄によりカラフルになり明るさが倍増し、作業者が興味を持って従事できる効果も出て、間違いの軽減や作業効率向上にもつながっている。 富士ソフト企画株式会社 ■代表者:代表取締役社長 城田文晴 〒247-0072 神奈川県鎌倉市岡本2-13-18 TEL0467-47-5944 FAX0467-44-6117 ●業種及び主な事業内容 情報サービス業、保険代理店業、ビル寮社宅管理業 ●従業員数144名(平成19年7月1日現在)うち障害者116名 内訳:知的障害者20名(うち重度1名)、視覚障害者3名(うち重度3名)、聴覚障害者13名(うち重度7名)、肢体不自由者33名(うち重度19名)、内部障害者3名(うち重度2名)、精神障害者44名 事業所の概要と障害者雇用の経過 平成3年、有限会社ケイアール企画として発足、平成12年に社名を富士ソフト企画株式会社と改名。富士ソフト株式会社の100%出資の子会社として堅実に社業を推進。平成12年9月に特例子会社として認定され、障害者雇用に積極的に取り組んでいる。「障害者雇用を推進し、安価で高品質なサービスを提供し続ける特例子会社として、社会に、お客様に、そして社員に貢献する」を理念とし、IT関連特例子会社として、ホ?ムペ?ジの作成、データ入力、名刺他各種印刷物の製作等、パソコン作業を中心とした業務で事業を拡大している。 改善テーマ ?知的障害者で行うWEBディレクション? 「ホームページを作る仕事をしたい」というWEB初心者の知的障害者を、WEBディレクターとして育成する。 改善・取り組みのポイント 知的障害者とWEBディレクションする上での問題点を、人的側面と技術的側面から捉えて改善を図る。人的側面では、「ビジネスマナーとコミュニケーション」「ビジネスマナー研修」「お客様と1対1の打ちあわせ実践」を展開し、業務に必要なコミュニケーションが取れるようにする。一般的な言葉や敬語をしっかりと使い、伝えたい内容を相手にわかるように伝える訓練が必要である。また、お客様の要望を聞き取ることは、非常に理解力を要するが、実践を重ねる中で苦い経験を体験することが意識改革につながり、プロ意識を持って取り組むようになった。技術的側面では、「WEB言語の習得」と「デザインセンス」の向上を図った。ツールを使いながらのHP作成実践は、予想以上の吸収で作業効率化と開発力を身につけた。サンプルデザインを充実させ、それを利用したデザイントレーニングを行うことで、洗練されたデザインができるようにもなった。必要な情報をきれいにレイアウトすることも実現できるようになり、企業のホームページを作成できる実力を身につけている。 特定・特別医療法人 慈泉会 相澤病院 ■代表者:理事長・院長 相澤孝夫 〒390-8510 長野県松本市本庄2-5-1 TEL0263-33-8600 FAX0263-32-6763 ●業種及び主な事業内容 医療業(一般病院) ●従業員数1,347名(平成19年6月1日現在)うち障害者7名 内訳:知的障害者3名(うち重度2名)、肢体不自由者4名(うち重度1名) 事業所の概要と障害者雇用の経過 医の本質としての救急医療と、医の心としての全人的医療を病院医療の原点と考え、その実践に意を注いでいる。また、急性期医療を担う地域の中核的病院として、新しく良質な医療を行うために、機能的で活力のあるチーム医療を常に心がけ、地域の皆さまから信頼される病院づくりに取り組んでいる。業種の性格上、障害者雇用は身体障害者を主体として考えてきたが、知的障害者の新たな活躍の場をもっと提供できるよう、そして医療とともに地域社会に貢献できるよう努力している。 改善テーマ “ゆっくりで良い、大きく育て!”  ?新規に雇用した二人の知的障害者を、所属の管理者中心にじっくりと能力アップに取り組んでいる病院の事例? 改善・取り組みのポイント 知的障害者の特性や接し方を考慮し、持っている能力をうまく活かして認められるようにするには、完結型の作業が望ましく、充実感や満足感も大きいものが得られると考える。そこで、リネン業務のうち、各病棟からの回収及び各病棟への配達を担当させることとした。受け入れに際し、協働して作業にあたる職員にも教育が必要である。障害者雇用支援センターの指導員との打ち合わせや情報交換会を実施し、日常指導のノウハウを学び、受け入れ側の環境づくりを進めた。また、障害者民間委託訓練を活用して実際の作業実習を行い、指導上の見通しをつかむようにした。知的障害を持ち、しかも初めて就職した者に対して、仕事だけでなく社会教育の一つとして職場生活や対人関係、病院外の生活も含めた心得などを教え、指導していく。その中で「自分の意志や考えをはっきり表現すること」を意識させ、実行させることにより、自ら学び取る力を伸ばしていく。職員には、繰り返し教えることや長い目で育てること等を助言していった。 有限会社 あいだ ■代表者:代表取締役 間一彰 〒956-0834 新潟県新潟市秋葉区小口1208-1 TEL0250-23-0072 FAX0250-25-1961 ●業種及び主な事業内容 事業所向け弁当、製造・販売 ●従業員数22名(平成19年6月30日現在)うち障害者8名 内訳:知的障害者8名(うち重度6名) 事業所の概要と障害者雇用の経過  事業所向けの弁当を主として、24年前に創業。現在は事業所弁当を中心に、独居老人の配食サービス、カロリー・塩分・糖分等が計算された健向食(健康に向かう食)等の事業を行っている。障害者雇用のきっかけは14年前、福祉事務所からの紹介により知的障害者を採用したことであり、その社員の熱心な仕事ぶりに次々と障害者を採用してきた。 改善テーマ  「障害を持っていても、何でもやれる、出来る」をモットーにいろんなことにチャレンジ。例えばコンベアーに入ってお弁当の蓋閉め、おかずの盛込み、従業員の味噌汁作りなど、健常者と同じ事を行う。 改善・取り組みのポイント  「同じ屋根の下で作業する」という計画の下に、本社工場の全面改装を実施した。改装に伴い、休憩室・食堂・トイレ・ロッカー室も拡張した。最新式の機械の導入、障害者にも使いやすい機種への変更を行った。レベルの高い作業に従事できるようになり、本人のやる気が倍増している。地域の方々にも受け入れてもらえるよう、道路沿いの空き缶拾いや草取り等も毎日行っている。業務遂行援助者のみならず、従業員全員参加で障害者に関わり、共に歩む会社へと進化させることを目指す。 有限会社 斉藤商店おやべ ■代表者:斉藤寛明 〒932-0136 富山県小矢部市平田3118 TEL0766-69-8181 FAX0766-69-8181 ●業種及び主な事業内容 食品製造業(がんもどき・油揚・巾着・豆腐等)卸販売 ●従業員数8名(平成19年6月25日現在)うち障害者6名 内訳:知的障害者5名(うち重度3名)、肢体不自由者1名 事業所の概要と障害者雇用の経過 平成3年、小矢部市平田にて巾着作りの仕事をするための工場と住宅を建築。平成5年、知的障害者2名を雇用。平成7年、揚げ物工場を増築し、洗浄機・ボイラー・フライヤーを導入。肢体不自由者1名と知的障害者1名を雇用。平成8年、知的障害者1名雇用。平成17年、豆腐製造の機械を導入。平成19年、知的障害者2名を雇用。小型フライヤー・洗浄機を導入。 改善テーマ 障害者も国の宝。その個性・能力を眠らせておくのはもったいないこと。時間をかけて一人一人を生かすことが、自立への道となる。 改善・取り組みのポイント ひとつの仕事ができるようになるまで、知的障害者は3年ほどを要する。仕事ができるようになるために、何度も同じことを言葉掛けしたり、実際にやってみせて指導し続けることで、成長していく。知的障害者それぞれの可能性を信じて、できるようになるまで根気強く言い続け、やらせ続けることがポイントである。3年経過後、基礎ができると、次の仕事の目標を明確にして、また周囲の者はそれをサポートする。ニンジンを包丁で上手に切ることができるようになるまで7年かかった者は、数え切れないくらい指を切って血を流したが、今では達人と呼べるほど上達している。周囲があきらめずに、できるようになるまで指導訓練していくと、仕事に対する能力を発揮できるようになり、その力は健常者を超えることもある。月に一度「笑顔満載」という通信を発行し、成長度合いを掲載している。また、エアロビクスに行ったり、野菜作りを楽しんだりしながら、仲間意識を育てている。 ニッコー株式会社 ■代表者:代表取締役社長 吉田誠 〒924-8686 石川県白山市相木町383 TEL076-276-2121 FAX076-276-3309 ●業種及び主な事業内容 製造業 ●従業員数1,067名(平成19年6月20日現在)うち障害者11名 内訳:知的障害者4名、聴覚障害者2名(うち重度2名)、肢体不自由者5名 事業所の概要と障害者雇用の経過 明治41年創業、陶磁器及び食器メーカーとして業務展開。昭和36年、FRP製浴槽・浄化槽製造に着手、昭和56年よりセラミック製電子部品分野にも進出。平成元年、名古屋証券取引所第2部上場を果たす。 改善テーマ 職場適応能力の向上 改善・取り組みのポイント 勤続10年を越える知的障害者の社員について、入社当時は障害特性により業務に支障があることもあったが、社内教育により、製品の仕分け作業に長年従事している。また、ハンガーコンベアから流れてくる絵付け完了後の半製品を、絵柄別に積み重ねる作業に10年間従事し、11年目より半製品の工程間の運搬作業、2次焼成投入・準備作業など多岐にわたる作業をこなす者もいた。授産施設から当社に就労し、グループホームと連携して規則正しい生活を送っていた。 特定非営利活動法人 さばえNPOサポートここる cafe'&lunch ■代表者:理事長 鈴木外治 〒916-0024 福井県鯖江市長泉寺町1-9-20 TEL0778-54-7055 FAX0778-54-0553 ●業種及び主な事業内容 飲食業 ●従業員数4名(平成19年6月29日現在)うち障害者2名 内訳:知的障害者2名(うち重度1名) 事業所の概要と障害者雇用の経過 平成17年3月オープン。「地産地消・食育の実践の場」「障害者・高齢者・女性の雇用と社会参加の促進の場」「さまざまな市民団体の連携・交流の場」として、市のパイロット事業の指定を受け、市施設である嚮陽会館内で喫茶室の運営を行っている。支援学校の郊外活動との連携もあり、雇用の安定と職場定着に向けて、トータルサポート支援により、接客サービス業での職域での活躍が期待される。 改善テーマ トータルサポートで支えあう熱い支援の輪、ともに輝く明日へ向かって?接客サービス職種での雇用と職域の開発? 改善・取り組みのポイント 知的障害者の接客サービス職種での新たな雇用拡大のため、就労業務・終了時間・職場環境の改善や人的支援として、問題点を洗い出して検討した。 ○家庭と職場が連携して、職場での人間関係やコミュニケーションづくりを行う。 ○接客サービスでの服装や身だしなみについて、サポートスタッフが毎日指導する。 ○お客様来店時の挨拶、注文受け、伝票記入、サービスの仕方、後かたづけに関することは、サポートスタッフによるOJTを実施。 ○就労時間帯は、OJTの実施によりレベルアップを図れるようにサポートし、できる人の配置を考える。また繁忙時を避ける等の工夫をする。 ○間違いを予防する注文伝票の改善。 ○支援学校の生徒の作品展示コーナーを設置し、先生・在校生・本人の絆を深め、仕事への意欲と向上心を引き出す。 ○一連の業務についての反復指導の実施。 ○「チャレンジド部会」スタッフによるサポート体制でのOJT実施。 木村メタル産業株式会社 関エコテクノロジーセンター ■代表者:代表取締役 木村光彦 〒501-3219 岐阜県関市のぞみヶ丘10 TEL0575-21-6288 FAX0575-21-6290 ●業種及び主な事業内容 非鉄金属類の回収、加工、販売。OA機器の解体処理及びリユース。 ●従業員数37名(平成19年7月5日現在)うち障害者17名 内訳:知的障害者14名(うち重度11名)、肢体不自由者3名(うち重度2名) 事業所の概要と障害者雇用の経過 昭和57年創業。平成9年、木村メタル有限会社を経て、平成13年木村産業株式会社設立。愛知県小牧市に本社を設置し、リユース事業部を立ち上げた。平成18年、岐阜県軒業誘致を受け、関市に関エコテクノロジーセンター・マテリアル事業部を立ち上げた。OA機器等のリユース、マテリアルを一貫した業態で再使用・再生利用・素材還元を行っている。障害者雇用は、循環型社会形成推進基本法を契機に、社会貢献・地域社会との共存共栄、ハート雇用・ハート調達の指針により、平成17年に知的障害者の雇用を開始、今後も拡大する方針である。 改善テーマ 障害者雇用と環境ビジネスで地域社会に貢献する 改善・取り組みのポイント  @障害者に配慮した設備、A解体作業の安全性、Bわかりやすい教育と訓練、C信頼しあえる人間関係について改善を図る。@については、助成金を活用して、工場新設の際に、自動ドア、引き戸、幅広の廊下、段差のない床、障害者用トイレ、専用静養室などの設備を充実させた。Aについては、本人はもちろん周囲の障害者にも安全を配慮したマニュアルを作成した。また、新人向けの安全作業マニュアルも別に作成した。Bについては、ジョブトレーナーを配置し、手順や工具の取扱等を繰り返し教え、写真を使った見やすくわかりやすい表示を掲げてミスを防止するようにした。Cについては、機関誌を発行したり、バーベキュー大会や親子日帰り旅行等の行事を開催し、障害者とその家族、従業員等の対話の機会を持つようにし、家族と会社の関係づくりも大事にしている。働く意欲にもつながり、信頼関係を築けるようになっている。 アリエ株式会社 富士宮工場 ■代表者:工場長 鈴木登 〒418-0007 静岡県富士宮市外神東町62 TEL0544-58-5900 FAX0544-58-5467 ●業種及び主な事業内容 その他の製造業、各種化粧品の受託製造OEM ●従業員数246名(平成19年6月18日現在)うち障害者12名 内訳:知的障害者11名(うち重度2名)、肢体不自由者1名 事業所の概要と障害者雇用の経過 化粧品及び医薬部外品製造メーカーとして、受託製造OEMを行っている。地域、会社と自然との調和、豊かな未来社会の創造を目指す。障害者雇用の取り組みは平成9年に始まる。取引会社で生き生きと働いている障害者の姿を目のあたりにした社長から、「障害者雇用に反対する者は辞めさせる」という強いリーダーシップにより、最初の知的障害者雇用が開始された。 改善テーマ 「障害者と健常者が共に働ける職場」を目指しての取り組み 改善・取り組みのポイント 仕事が遅い、間違いが多いという担当部署の苦情に対し、「とにかく先輩の作業をよく見ていなさい」と指導し、自ら進んで作業に従事することを見守る。自分の意志で仕事に取り組むことは、休まず終了できる結果にもつながる。出荷に際し段ボールを積み上げる作業が発生するが、箱の大きさが異なることや方向が一定でないため、健常者でもうまくできないことが多い。この作業については、段ボール箱にシールを貼り、そのシールに合わせて積み上げる工夫をすることで、荷崩れを防止できる積み上げ方を習得させ、シールなしでも作業可能な状態になれば貴重な戦力となり得る。自閉症の場合、その特性を見極めて対応することの必要性を感じる。就労によって自分が興味を持っていることに費やす時間がなくなると休んでしまう。それは、本人にとっても悩みであるため、就労時間を短縮し両立を図るようにした。また、一般従業員との交換日記を続け、コミュニケーションを形成することで、相互理解を深めた。いずれの部署にもチェック者をおき品質管理を徹底させ、また各人の作業チェックリストを作成し作業習熟度を判別することで、管理者への指導に役立てている。 有限会社 フジ化学 ■代表者:代表取締役 遠藤一秀 〒418-0022 静岡県富士宮市小泉444-1 TEL0544-22-4441 FAX0544-22-7771 ●業種及び主な事業内容 電気メッキ業 ●従業員数39名(平成19年7月1日現在)うち障害者26名 内訳:知的障害者24名(うち重度16名)、視覚障害者1名、肢体不自由者1名 事業所の概要と障害者雇用の経過 工場生産の一翼を担う金属表面処理である亜鉛鍍金を主に、昭和41年に静岡県富士市天間にて創業。顧客の要求である安定品質と短納期・ローコストを満足させるべく、全自動静止亜鉛鍍金装置を導入し、順調に受注を増やしてきた。平成15年には富士宮市に新工場を設立し、品質及び環境ISOを同時認証取得。環境に配慮した体制を確立した。創業時より障害者雇用を始めていたが、他社における知的障害者雇用の様子を見学したことが転機となり、新規受注拡大や新生産システムに対応する人員補充を目的として多数の知的障害者雇用が始まった。 改善テーマ チームプレイを必要とするライン作業において、知的障害者が自分の配置意識ある責任を果たすチームワーク作り 改善・取り組みのポイント 昭和63年に導入した全自動静止亜鉛鍍金装置の老朽化により、故障やトラブルが頻発し、作動停止状態が生じることは従事者全員に通常作業以外の負担を強いていた。また、作業スペースが狭く、共に働く健常者は常に障害者の安全を気遣わなければならなかったため、新工場設立及び最新機器の導入に踏み切った。新工場への移転は、障害者作業員の混乱を避けるために、慣れ具合を考慮しながら旧工場での操業を並行して徐々に実施した。新設備においては、生産工程のほとんどがライン内で自動的に実施され、障害者作業員はひとつの作業に専念できる。また、十分な作業スペースが確保できたので、作業者の動線を直線になるようにし、安全に作業できるような環境作りを考慮した。汚染の予防や作業の効率化と同時に、作業環境の快適化を図るため、ISO認証取得を目指し、5S(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)の意識付けを徹底して行った。その結果、顧客ニーズにも十分に対応できる体制が整い、鍍金ライン管理の良さが高品質を生み受注拡大につながった。売上げ向上は、障害者作業員の雇用の増員にも反映されている。 株式会社 ミクロ富士見 ■代表者:代表取締役 加藤昌弘 〒422-8654 静岡県静岡市駿河区中吉田20-10 TEL054-263-1712 FAX054-263-1589 ●業種及び主な事業内容 親会社の総務・人事関係の業務受託事業 ●従業員数43名(平成19年6月30日現在)うち障害者12名 内訳:知的障害者11名(うち重度8名)、肢体不自由者1名 事業所の概要と障害者雇用の経過 精密機器用パーツ等の製造会社であるスター精密株式会社の特例子会社として、平成17年1月に認証を受ける。従来より知的障害者を中心に採用しており、親会社の業務受託を中心に職域拡大を図っている。 改善テーマ 知的障害者社員の職域拡大 改善・取り組みのポイント 障害の程度が軽い社員に対して、職域拡大の一環として部品の計数業務に従事させたいと考えるが、業務に習熟する必要があるため、まず周辺業務から担当してもらう。具体的には、シュレッダーくずを利用した梱包用緩衝材の作成、郵便物と社内定期便の取扱い、六角ナットのケース入れ作業等である。シュレッダーは、一人でも安全に使えるように注意事項をまとめ、緩衝材の作り方をマニュアルにまとめた。郵便物等の集配業務については、封筒の外観だけでは社外へ出す物と社内定期便との区別がつけにくいため、一般社員が集配所に持ってくる時点で、郵便物用のビニール袋と社内定期便用の箱に入れ分ける協力体制をとった。六角ナットのケース入れ作業は、健常者でもかなり根気を必要とする。加えてチリやホコリを付着させないような配慮も欠かせないため、作業する机の上にビニールのフードを設置、上にはファンをつけて外からの風を送り込み、作業場周辺にチリやホコリが付着しないよう工夫した。 株式会社 丸八真綿 ■代表者:代表取締役 岡本典之 〒432-8508 静岡県浜松市南区小沢渡町1533 TEL053-448-1108 FAX053-448-5881 ●業種及び主な事業内容  寝具製造(一部運送業) ●従業員数731名(平成19年6月1日現在)うち障害者12名  内訳:知的障害者7名(うち重度5名)、視覚障害者2名(うち重度1名)、肢体不自由者1名、内部障害者2名(うち重度2名) 事業所の概要と障害者雇用の経過  昭和37年、株式会社丸八織物寝具部として会社を創立。昭和44年、現社名に変更。寝装寝具企画、製造、販売、クリーニング、ファイナンス、寝装品、家具、その他生活雑貨の通信販売を展開している。障害者雇用は、昭和62年に浜松養護学校高等部の職場実習を受け入れ、その後知的障害者雇用を開始した。本人・経営者・会社同僚・学校・家庭が意識を統一していくこと(5位一体)が重要であり、さらに、家庭と会社・学校の先生とコミュニケーションを図り、情報交換をしつつ、問題解決に向かうことを意識して取り組んでいる。 改善テーマ  社会人としての自立と職場適応力 改善・取り組みのポイント  従事する仕事(検品後のふとんの袋詰めの手順、7種類の袋を選ぶ方法)をどのように覚えさせるかを検討した。具体例には、袋詰めの手順を一工程ごとに写真に撮り、作業台の上に貼付し、いつでも手順が確認でき、安心して作業が進められるようにしたこと、ふとんの長さがわかるように、それぞれの長さ(3種類)の赤いテープを作業台に貼付したこと、ふとん袋の直径が確認しやすような方法を何度も模索したこと等がある。また、ふとん袋の口を絞る作業は安定せず、不揃いになることが多かったが、袋の口を絞る回数を決めることにより安定してきれいにでき、品質の安定にもつながった。雇用後1年ごとに新しい作業を1つずつ増やすようにし、袋の補充・リネン品のたたみ・梱包品の出荷口ラックへの移動仕分け・ゴミの片づけ・指定場所への移動などの仕事にも従事できるようになった。仕事が増えるという刺激が、仕事に対する意欲を引き出す手助けとなる。毎日記入する日誌により、本人・保護者・職場が連絡を取り合い、コミュニケーションを図っており、本人の体調や話題についても聞きやすい状況である。 中電ウイング株式会社 ■代表者:代表取締役社長 冨田秀隆 〒457-0077 愛知県名古屋市南区立脇町1-13-1 TEL052-819-0621 FAX052-819-0705 ●業種及び主な事業内容 デザイン・印刷・製本、ノベルティ商品の販売・箱詰・包装、花栽培・販売・花壇管理等 ●従業員数47名(平成19年7月1日現在)うち障害者33名 内訳:知的障害者18名(うち重度3名)、聴覚障害者4名(うち重度3名)、肢体不自由者10名(うち重度7名)、内部障害者1名(うち重度1名) 改善テーマ キャリアアップの支援「戦力として働く」 1.働きたい!という意欲を継続する 2.先をみて自ら考えて行動する 改善・取り組みのポイント 社会貢献とビジネスの両立を目指す中では、一人ひとりの能力を最大限に発揮してもらうことが大切である。障害を特性と捉えて各人に関わろうと努めている。良い点を見て、そのことを最大限に活かすことができるサポートと、未知の良い点を引き出して自信を持たせることを心がけている。さらに、働きたいという意欲を継続させるために、「目標カードの活用」「固定した人に仕事の一部を任せる」「チャレンジシートの活用」「業務日誌の活用」「お客さまへの仕事内容説明」「販売会」などを取り入れた。また、先を見て自ら考えて行動できるようにするために、2年程度の経験を積んだ者の中から選抜して現場図面を持たせるようにしたり、ホワイトボードに予定を記入し、当番表を張り出し、目で確認することで各自が状況把握できるようにした。「見える化」を推進することによって、自分の役割を確認し、その日の作業内容に合わせた服装や必要機材を用意したりできるようになってきている。 株式会社 グリーンズホテルシステムズ ■代表者:代表取締役社長 村木敏雄 〒510-0067 三重県四日市市浜田町5−3 TEL059-351-3416 FAX059-354-1355 ●業種及び主な事業内容 ホテル・レストラン・コンベンション・不動産管理事業・ホテル経営に関するコンサルティング ●従業員数491名(平成19年6月1日現在)うち障害者3名 内訳:知的障害者1名(うち重度1名)(うち重複1名)、内部障害者2名 事業所の概要と障害者雇用の経過 昭和32年創業、全国に55店舗を持つホテルチェーン。宿泊サービス事業、レストランサービス事業、バンケットサービス事業を展開。地域に密着しながら、リーズナブルな値段で付加価値の高く、お客様満足度の高いバンケットおよびケータリングを提供している。初めての知的障害者をトライアル雇用を利用して雇用。部署横断的に洗い出した事務補助業務(ラミネート作業、伝票整理等)をルーチンワーク化し、職場定着を図っている。 改善テーマ 1.障害者にも良い職場環境づくり 2.仕事量の確保(各課より簡単な事務作業の収集、シュレッダー業務の創出) 3.作業をこなすだけでなく、やりがいを感じることができる仕事にする工夫 改善・取り組みのポイント スムーズなコミュニケーションが困難であり、仕事以前に職場に慣れることができるかどうかという問題があったため、同世代・同性の多い部署に席を配置し、本人が自然体でいられるよう環境を選択した。重要度の高いものから1日1つと決めて段階的に教え、手本や具体的状況を踏まえながら付き添って伝えるようにした。定期的に担当者による面談を実施、ジョブコーチの訪問や面接、地域障害者職業センターとの定期会議によるフォローも行っている。仕事を頼むときには、依頼者と当人間の認識の違いをなくすために依頼方法について工夫。一つの作業が終わったら必ず報告することとし、同時に複数を依頼することは避けた。細分化できる場合は分割して頼み、仕事を増やすようにする。仕事に対するやりがいも重要と考え、終了報告時には必ず感謝の意を伝えるようにしている。 マックスバリュ中部株式会社 ■代表者:代表取締役社長 中西進 〒515-8501 三重県松坂市大口町255-1 TEL0598-51-3101 FAX0598-51-3103 ●業種及び主な事業内容 小売業 ●従業員数1,405名(平成19年3月31日現在)うち障害者35名 内訳:知的障害者17名(うち重度6名)、視覚障害者2名(うち重度1名)、聴覚障害者2名(うち重度1名)、肢体不自由者8名(うち重度4名)、内部障害者4名(うち重度4名)、精神障害者2名 事業所の概要と障害者雇用の経過 昭和22年創業、昭和58年にフレックス株式会社となり、平成11年に中部ウエルマート株式会社及び株式会社アコレと合併し、フレックスアコレ株式会社に商号変更。平成12年に現在の商号に変更したものである。三重県最大のスーパーマーケットであり、東海地方(三重県・愛知県・岐阜県・滋賀県)において65店舗を展開している。フレックス株式会社当時より障害者雇用をしており、合併後もその流れを変えることなく引き継ぎ、平成19年3月時点の障害者雇用率は2.49%に至っている。 改善テーマ 「働く仲間のお役に立つ」企業を目指して 改善・取り組みのポイント 配属された部門の一員であることを自覚してもらうためには、特別扱いをしないことである。同じく給料を貰って働く従業員として、間違ったことは注意し、働くことの厳しさを知ってもらうことが重要である。ただし、職場での挨拶や言葉遣い等の基本的な部分の指導については、できるだけ簡潔に単語を伝えるよう短く話すことを徹底。作業指示に関しては、事前に指示書を作成し、それを見せながら実際に援助者が手本を見せて指導にあたるようにした。間違いがあれば正しい方法を説明し、必ずその作業を一緒にやり直すという、障害者と援助者が同じ立場で仕事をするという姿勢を続けた。意欲向上の取り組みとして、業務達成の喜びを味わってもらうために、作業の目標タイムを設定しスキルアップを図ったり、自分が加工した商品が実際に陳列され売れていく場面を見せたり工夫を現場で実施した。また心のケアを重視し、「作業をよく見ながらよいところを褒める」「作業の合間に日常的な会話を挟み楽しく仕事ができる環境を作る」「分からないことや気になることをいつでも質問できる環境を作る」などに、部門従業員全員で積極的に取り組んだ。 カルビー湖南株式会社 ■代表者:代表取締役社長 山際邦昭 〒520-3233 滋賀県湖南市柑子袋558 TEL0748-72-2481 FAX0748-72-2484 ●業種及び主な事業内容 食品製造業(ポテトチップス・じゃがりこ等の製造販売) ●従業員数222名(平成19年6月30日現在)うち障害者8名 内訳:知的障害者4名、視覚障害者1名、聴覚障害者1名、肢体不自由者1名、内部障害者1名(うち重度1名) 事業所の概要と障害者雇用の経過 平成17年、カルビー株式会社滋賀工場から分割分社された会社であり、ポテトチップスやじゃがりこを主に近畿地区に供給している。分社の目的には、地域の多様なお客様ニーズに対応すること、独自のネットワークで地域に貢献する企業になることがあげられる。湖南・甲賀地域は、多様な障害者施策に積極的に取り組んでいる地域であり、そのひとつの取り組みとして、障害者雇用を通じ自立支援に貢献したいと考える。以前より身体障害者(聴覚・肢体)雇用を行っており、近隣養護学校や福祉施設の知的障害者による職場体験実習も受け入れてきた。 事業所の概要と障害者雇用の経過 新規業務(外注品を内製化)を、障害者雇用の職場として立ち上げることにより就労の場を創出 改善・取り組みのポイント 近年、雇用を前提とした職場実習のニーズが高まってきていることから、知的障害者にとっての働きやすい職場づくり、雇用に結びつけることが必要となってきた。当社は交代勤務のため、自己管理が難しいという理由で日勤を希望する知的障害者との間で、人員配置のバランスがとれない状況であった。平成18年、外注していた包装工程を内製化し製造3グループを立ち上げ、勤務は全員を日勤とすることで、既存の職場では受け入れられなかった時間帯に配置が可能となった。製品製造ラインの理解と協力を得て業務を製造3グループへ移管し、作業にあたっては、旧工場事務所の改造、専任の責任者及び作業者(マネジャー・サブマネジャー各1名、パート5名)を配置したきめ細やかな支援体制、写真入りで細かく分解した作業標準書(ワンポイントレッスン)の作成、計算しなくてもすむような早見表作成、重量検査時に判断しやすい機器の制作などを行った。また、滋賀障害者職業センターよりジョブコーチを派遣してもらい、知的障害者に対する指導や教育の経験不足を補うとともに、支援方法について学ぶ機会を設けた。 オムロン京都太陽株式会社 ■代表者:北村満 〒601-8155 京都府京都市南区上鳥羽塔ノ森上河原87 TEL075-672-0911 FAX075-681-4700 ●業種及び主な事業内容 電子機器(ソケット・センサ・電源装置)の生産・販売 ●従業員数157名(平成19年7月1日現在)うち障害者117名 内訳:知的障害者3名、聴覚障害者5名(うち重度4名)(うち重複1名)、肢体不自由者94名(うち重度65名)(うち重複5名)、内部障害者1名(うち重度1名)、その他障害者14名 事業所の概要と障害者雇用の経過 オムロンの企業理念は「企業は社会の公器である」としている。この理念実践の場として、昭和47年に世界初の試みである福祉工場として別府市にオムロン太陽を設立した。当社は、オムロン株式会社の2番目の特例子会社として、昭和61年に社会福祉法人太陽の家京都事業本部とともに創業を開始した。当社従業員は、主に生産管理、生産技術、商品技術、品質管理などの業務を、社会福祉法人太陽の家の福祉工場及び授産所が生産を担当している。創業以来「障害者が働きやすい環境づくり」を目指した事業運営を展開している。 改善テーマ 知的障害者新規採用の取り組みと職場環境改善 改善・取り組みのポイント 創業より身体障害者雇用の場として運営しており、障害者雇用機会の拡大を目的として知的障害者の雇用を推進する。従事する主な業務は、納品された部品を移動車に載せて運搬し、各生産ラインの指定された棚に部品を収納する内容とした。作業の実施においては、業務内容の流れを細かく分析し、「たまにミスをする」「ミスが多い作業」について対応策を検討、実施した。また、受け入れ担当者が仕事のできばえ、課題を抽出し、より業務が行いやすい改善及び仕組みづくりに取り組んだ。毎日その日の結果について、本人自身がうまくできたこと、できなかったことなどの振り返りを行い、担当者との話し合いによってその都度改善策を実施していく。家族には、職場を見学してもらい業務内容を理解した上で、帰宅後の本人の様子を連絡してもらうような連携を図った。職場はもちろん、受け入れ担当者・家族・障害者関係機関が一体となって計画を進め、また従来より実施していた「徹底3S活動」によりきめ細やかに表示、標識、整理、整頓などを行ったことが、作業効率のアップにつながっている。 社会福祉法人貝塚誠心園特別養護老人ホーム貝塚誠心園 ■代表者:理事長 横井清 〒597-0044 大阪府貝塚市森1103-2 TEL072-446-8022 FAX072-446-5616 ●業種及び主な事業内容 介護老人福祉施設 ●従業員数120名うち障害者3名(平成19年4月1日現在) 内訳:知的障害者1名、精神障害者1名、その他の障害者1名 事業所の概要と障害者雇用の経過 「特別養護老人ホーム貝塚誠心園」「貝塚誠心園ショートステイ」「貝塚誠心園デイサービスセンター」「貝塚誠心園ケアプランセンター」「在宅介護支援センター貝塚誠心園」等を展開している。平成18年、ヘルパー2級の資格をもつ知的障害者を雇用することになった。 改善テーマ 「継続は力なり」。経験を重ねながらハンディキャップを克服し、自立した業務ができるように環境づくりをする。具体的には、介護の現場で職員・利用者・家族などの人間関係を通して経験を重ねながらハンディキャップを克服し、自立した業務ができるよう環境づくりをする。 改善・取り組みのポイント 介護の現場で、人間関係を通した経験を重ねながら自立した業務ができるような環境づくりをしなければならない。身体介護の作業は一人では難しいため、清掃や食事の片づけ、シーツ交換、オムツ交換等を他の職員とペアになって行っている。勤務時間は日勤のみで、朝礼に参加し、その後は利用者と共に体操、各居室の清掃を行うのが日課となっている。他に、入浴介助やシーツ交換が加わる。レクリエーションにも参加し、コミュニケーションが図れるようになっている。小さなことでも事故につながらないように、ヒヤリハット報告を毎日記入し、危険・事故防止に注意して見守り協力できる体制をとるように心がけている。本人の意見を考慮しながら、できる仕事は自分で、できないところは他の職員と連携をとって仕事が進められるよう支援している。 株式会社ダイキンサンライズ摂津 ■代表者:代表取締役社長 應武善郎 〒566-0042 大阪府摂津市東別府4-9-9 TEL06-6349-3173 FAX06-6349-4083 ●業種及び主な事業内容 一般機械器具製造業(油圧潤滑装置の分配弁・ポンプの加工・組立、空調機部品組立、化学品製造) ●従業員数59名うち障害者54名(平成19年7月1日現在) 内訳:知的障害者12名(うち重度8名)、視覚障害者1名、聴覚障害者15名(うち重度15名)、肢体不自由者24名(うち重度21名)、精神障害者2名 事業所の概要と障害者雇用の経過 空調・冷凍機、各種油機、誘導弾用弾頭や航空機部品等の特機、フッ素樹脂や化成品等の化学部門を展開するダイキン工業株式会社が、社会的貢献、大阪府及び摂津市の施策に対する協力と障害者法定雇用率の達成を目的として、第3セクター方式による特例子会社として設立。当初は、身体障害者16名の採用からスタートし、平成10年に聴覚・言語障害者を、平成12年に知的障害者を採用した。また、平成18年に精神障害者を採用、現在では合計54名の障害者が働いている。健常社員は役員を含めて5名であり、日常業務は障害者が主体となっている。 改善テーマ ・デムナムグリースの作業指示の改善 ・空調機の技術ガイドの配送要領の改善 ・Oリング挿入作業の部品図番表示と治具の管理改善 改善・取り組みのポイント 聴覚障害を持つリーダーからの知的障害者への伝達教育に作成したビジュアル的な指示書で指導の内容がよく伝わり、繰り返し見直して確認ができるようになった。さらに知的障害者のみならず社員や実習生の職域を拡大する手段として活用できるものとなり、外の製品の製造ラインでも適用するようになった。空調機技術ガイドの配送について、あて先の誤記入等が発生していた。そのため、標準の書式を作成し、伝票の記入漏れや間違いがなくなり、ピッキング作業が知的障害者でもスムーズに行えるようになった。また、作業指示書に現物のコピーを用いる事例が外の作業現場にも適用されるようになり、作業指示書作成の標準化につながった。Oリング挿入作業では、生産指示のたびにサンプル袋を探したり、使用治具が所定の場所になく、作業の段取りに手間がかかっていた。それをよく見えるように表示して管理することで、種類の多いOリングの表示を見てもらい、知的障害者への伝達教育が容易になり、間違いがなくなった。具体的な現場・現物の管理をする手法が定着してきた。 株式会社エスコアハーツ ■代表者:代表取締役社長 清田和男 〒674-0082 兵庫県明石市魚住町中尾337 TEL078-946-5802 FAX078-946-5512 ●業種及び主な事業内容 部品組立、印刷、発送、ピッキング、清掃 ●従業員数33名うち障害者13名(平成19年6月1日現在) 内訳:知的障害者13名(うち重度3名) 事業所の概要と障害者雇用の経過 平成18年、「障がいのある人が障がいのない人と同じ条件で生活できる成熟した社会に改善していく」というノーマライゼーション理念に基づき、株式会社ノーリツの特例子会社として設立。きっかけは、高齢者の経験と能力を生かした障害者とのコラボレーション「高齢者・障害者雇用促進事業」という社内ベンチャー制度への応募だった。ノーリツの社員有志の声かけで、障害者や高齢者雇用を主体に取り組んでいる。指導者については、ノーリツグループで社内公募を行った。 改善テーマ 障がい者の「自立」を目指す会社でありたい 改善・取り組みのポイント 大切にしている言葉は、「自立」である。ハンディをもつ人が、両親と別れても一人で生きていける。そういった社会にしていきたいと願い、仕事を通してひとつのことを全員で達成するという目標を持ち、少しずつ自分達で考え、自分たちで判断して行動する、たとえ失敗しても最後までやるぞ!という意識を育てていくことが大切だと考える。自分たちで使う作業台、治具は、自分たちで考えて健常者と共に作成する。また、個別指導を避けチーム単位で指導を行った。休憩等の時間に、共通の話題を持つことができる効果ももたらしている。さらに、目標達成の醸成を目的に、畑づくりなども行った。指導者には、50代半ば?60代前半の中高年を採用し、高齢者雇用にも取り組んでいる。法定雇用率を達成することを目標とするのではなく、ハンディをもつ人がいかに自立できるかを優先した考え方で取り組んでいるため、全社員が収支へのこだわりを持っている。 株式会社マルハチ ■代表者:代表取締役 栗花正雄 〒657-0831 兵庫県神戸市灘区水道筋2-6 TEL078-861-3451 FAX078-861-3405 ●業種及び主な事業内容 飲食食品小売業 ●従業員数342名うち障害者9名(平成19年6月1日現在) 内訳:知的障害者9名(うち重度2名) 事業所の概要と障害者雇用の経過 昭和21年、神戸市灘区(現水道筋店)にて、家庭用品小売店として創業。昭和42年、株式会社マルハチに組織変更。昭和47年の立花店オープン以後順次店舗をオープンさせ、現在14店舗を展開。スーパーマーケット経営(生鮮食料品・一般食品・日用雑貨などの販売)の事業を行っている。平成16年より知的障害者雇用を本格的に開始し、地域型スーパーを活かし、雇用の面でそれぞれの店舗が立地する地域社会への貢献を図っている。 改善テーマ 知的障害者の方を採用しているが、同じ知的障害者といってもそれぞれ特性があり、初期はそれに対する理解不足から職場定着率が悪かった。これを当社が用意できる職場環境にそれぞれ向いた適正を初期導入の見極め時に判断する基準を作り、育成室を作って指導することによって改善を図る。 改善・取り組みのポイント 消費者であるお客様と接点を持つ仕事内容が多く、知的障害者であることをご理解いただけない場面もあり、トラブルが発生したり、それが原因となり離職するケースがある。また、指導担当者の育成力や指導力にばらつきがあり、育成段階で脱落するなど、定着率に大きな問題を抱えていた。「知的障害者の単純な作業性の強い職場の選択」「お客様と接点を持つことなく、自己のペースでできる仕事」「経験を積んだ、育成に適した一人の担当者が、初期導入から育成までを一貫して指導する」という3点にポイントを絞って改善した。職場はミート部門に集中配属とし、指導育成する指導者がいる店舗に育成室を設け、全員が同じ環境で初期の育成教育を受けられるようにした。導入時の能力や適性の見極めについても、技術的基準が明確に判断できるようマニュアル化し、育成担当者が途中で交代した場合でも適性や能力を判断する指針となるようにした。 SMIハートフルサービス株式会社 ■代表者:代表取締役 片鍋和男 〒640-8404 和歌山県和歌山市湊1850 TEL073-451-0577 FAX073-453-0279 ●業種及び主な事業内容 印刷及びクリーニング事業 ●従業員数29名うち障害者7名(平成19年6月1日現在) 内訳:知的障害者7名(うち重度2名) 事業所の概要と障害者雇用の経過 住友金属工業株式会社は、障害者雇用率を高めるために、住金和歌山ゼネラル株式会社が請け負っていた親会社からの業務を障害者に適した業務と判断し、障害者業務の職域拡大としての導入を検討。平成19年4月、住金和歌山ゼネラル株式会社の印刷及びク リーニング事業を継承・分割して、障害者雇用に特段の配慮を行う子会社『SMIハートフルサービス株式会社』を設立した。知的障害者7名とその指導員1名を新規採用。平成19年5月に、特例子会社の認定を取得した。 改善テーマ 1.安全と健康を第一義とする職場づくり 2.障害者及び健常者が共に働きやすい作業環境整備  3.障害者にやさしい職場環境 改善・取り組みのポイント  ハード面では、作業所を統合して本工場に集約し、作業場のレイアウトも改善を図った。また、強力エアコン・換気扇・照明器具を新たにし、作業環境を整備した。トイレ・休憩室・更衣室・温水仕様の手洗い場も新設した。ソフト面では、安全な通勤のための配慮、写真による作業手順マニュアル化、視覚での判別が可能な陳列棚などの整備の他、昼食時間を早めて指導員が引率するなど、働きやすい職場環境を目指している。また、始業前の体操や朝会・夕会への全員参加を進めた。朝会では職場遵守事項を唱和し、夕会では自分の目標が達成できたかどうかを発表したり、本人・家庭・会社を含めた情報の共有化を図るために連絡帳を記入し持ち帰ることとした。個々の作業状況や安全意識、健康状態の記録が次のステップの指針となるよう、指導員は観察記録を毎日作成している。また、ジョブコーチの指導により、障害者への接し方やフォローの仕方を学んだ。他に、新入社員歓迎昼食会、家庭訪問、家族見学会も実施した。 済生会 有田病院 ■代表者:病院長 長崎靖彦 〒643-0007 和歌山県有田郡湯浅町吉川52-6 TEL0737-63-5561 FAX0737-62-3420 ●業種及び主な事業内容 医療業 ●従業員数248名(平成19年7月1日現在)うち障害者4名 内訳:知的障害者2名(うち重度1名)、肢体不自由者1名、その他の障害者1名 事業所の概要と障害者雇用の経過 昭和22年設立。平成17年に改築し、一般病棟104床、療養病棟40床、回復期リハビリテーション病棟40床、計184床の病院となる。関連施設として、老人保健施設、訪問看護ステーション、通所介護事業所、居宅支援事業がある。障害者雇用は、平成17年頃より養護学校から知的障害者雇用の働きかけをきっかけに、社会福祉法人の社会的責任のひとつとして採用することとした。雇用に先立ち、養護学校の先生の薦めにより現場実習を行った。 改善テーマ 1.連携と職場適応に各々が役割を果たす環境作り 2.個別的な関わりと段階的教育の実践と工夫 改善・取り組みのポイント 看護助手の業務内容は多種多様であり、多くの職種や部署との連携が必要である。なにより、患者が相手のため、一つ一つの業務の達成度において、他の看護助手と差が生じてはならない。そこで、看護部の基本方針に則して、成長への期待を基盤に、育った環境や年齢、考え方や理解度、仕事や学習に対する動機付け等を理解した上で、少しずつ難しい仕事や役割が習得できるように支援する。また、比較的簡単で取り組みやすい業務から始め、仕事の種類は限定しない方針とする。指導にあたっては、指導チーム、病棟スタッフ、看護部長が、「職場適応支援」「ジョブコーチや学校との連絡調整」「病棟スタッフと指導チームの調整」「指導方法のチェック」「社会生活がきちんと送れるための見守りと注意」などについて、それぞれに役割を分担して指導する。また、一つの仕事の動きを細分化して専用のマニュアルを作成し、前もって学習しておくことなども指導した。振り返りノート、はげましノート、連絡ノートの作成、ジョブコーチによる指導チームへの指導と情報提供、養護学校教師との連携なども行い、指導の統一を図っている。 日本赤十字社和歌山医療センター ■代表者:院長 小西裕 〒640-8558 和歌山県和歌山市小松原通4-20 TEL073-422-4171戟@FAX073-426-1168 ●業種及び主な事業内容  医療業(病院) ●従業員数1,293名うち障害者12名(平成19年6月1日現在) 内訳:知的障害者1名、肢体不自由者7名(うち重度2名)(うち重複2名)、内部障害者3名(うち重度1名)、精神障害者1名 事業所の概要と障害者雇用の経過 日本赤十字社は、障害者福祉施設を経営していることなどから、障害者雇用に対する取り組みには全社を挙げて取り組んでいる。当センターは明治38年に開設、一般診療、救急診療はもちろんのこと、僻地・巡回診療の実施等、地域に密着した医療活動を行っている。平成7年、医療センターの名称となった。 改善テーマ 看護の補助的な作業を出し合って、新たな業務を創出した。 改善・取り組みのポイント 看護助手業務での知的障害者の雇用がはじめてだったため、看護師長及び直接の指導者が障害の特性を勉強した。病棟内での補助的な作業を選び、一覧化したことで職域の拡大を図った。その一覧表にそって指導担当職員を配置し、本人にチェックをさせながら数ヵ月間に渡って1から指導した。自信が持てないため、誉めることを重視し、できていることを適切に評価することや、できていないことについては、どのようにすればよいかを具体的に指導することにより作業に自信が持てるようになり、確認行為が減った。また、「週間業務を作り、余った時間を利用して他の仕事をする」「言葉使いや会話のタイミング等は、その都度指摘し具体的な言葉使い等を指導する」「ジョブコーチ支援を利用するとともに、ゆっくり話を聞く機会をもち、不安を解消する」などを検討した。さらに、能力や習得状況に応じて業務を細分化した。また、周囲の職員には、障害の特性や指示系統の統一を周知し、特に関わりのある看護助手職員には、雇用管理マニュアルを回覧し関わり方を周知した。 桝谷精工株式会社 ■代表者:代表取締役社長 桝谷壽員 〒649-6312 和歌山県和歌山市川辺416-1 TEL073-462-5011 FAX073-462-5066 ●業種及び主な事業内容 産業用省力機器の設計製作、業務用空調機及び機械部品の製作 ●従業員数67名(平成19年7月1日現在)うち障害者2名 内訳:知的障害者2名 事業所の概要と障害者雇用の経過 昭和42年創業。大手電機メーカー向けの業務用空調機の板金加工・組立及び産業用省力機器の設計製作を行っている。複雑に多様化する社会のニーズに応え、高度化技術の研究開発に積極的に取り組み、社会に奉仕できる企業づくりを目指している。 改善テーマ  「自閉症」という障害を理解していく 改善・取り組みのポイント  一見、健常者との違いがわからない自閉症社員に対し、つい健常者と同じ方法で業務連絡等を行い、理解しているのかどうかが不明で業務に支障をきたす場面があった。また、作業場環境の変化によるストレスからパニックを起こすこともある。受け入れ側が自閉症という障害についての知識が乏しかったため、インターネットを検索したり、地域障害者職業センターの協力によって、症状の特徴や雇用する際の注意点などを学んだ。実際の作業現場においては、毎日使用する部材(ボルトやナット類)の準備という役割を与え、何がどれだけ必要なのかが一目でわかるような表を作成し掲示した。また、作業場レイアウトの固定化、道具の置き場所の色分け、作業を行いやすくするための治具の作成等も行った。割り込み作業が発生した場合には、丁寧な説明や簡単なメモ書きにて指示を出すこととした。パニック症状に対しては、ビデオによる安全教育、専用の掲示板の作成などで対処するようにした。「できないだろう」「難しいだろう」と決めつけず、本人の希望や意志を確認、尊重することで、自分に与えられた役割を把握し、自発的な行動につながった。 トスク株式会社 ■代表者:代表取締役 船越利通 〒680-0824 鳥取県鳥取市行徳1-103 TEL0857-23-1611 FAX0857-23-0425 ●業種及び主な事業内容 スーパーマーケット ●従業員数311名(平成19年7月1日現在)うち障害者2名 内訳:知的障害者2名(うち重度2名) 事業所の概要と障害者雇用の経過 昭和43年、鳥取市にスーパーマーケット、飲食店、クリーニング取次店、不動産の賃貸及び管理に関する業務で、売場面積545坪の「鳥取生活センター」をオープン。平成13年に農協から独立し、15店舗で『トスク株式会社』発足となる。「私たちは『地元とともに、暮らしとともに』をモットーに店舗運営をします」をスローガンとしている。平成8年の店舗増改築時、平成9年の庶務課欠員のため、重度知的障害者を2名雇用し、現在に至る。 改善テーマ お客様と直接接して対応していく 改善・取り組みのポイント 不特定多数の人々と共にいる、スーパーマーケット特有の環境の中で、買い物カゴやカートの回収整理を行っている。お客様の問い合わせ等に対して、うまく答えられないことが見受けられたため、積極的な対応及び売り場案内ができるように指導を図った。雇用に際し、店内混雑時においては、突発的な対応が難しいと予想されるため、駐車場の清掃を主とした対人関係の少ない作業から従事させることとし、3 ヵ月後、買い物カゴやカートの整理職に配置転換となった。お客様への接し方(お客様優先)、買い物カゴの置き方、カートの整理等の指導は、店長はじめ周りの従業員が頻繁に声をかけ合ったり、店長と一緒にお客様と接しながら習得させた。コミュニケーションもとれるようになり、他のスタッフにも仲間意識ができ、障害を意識しなくなった。お客様と頻繁に接しながら、問われたことにも返答ができるようになり、苦情も減少した。自分の仕事に自信を持ち、健常者にも指導できるところまで成長している。 広島愛パック株式会社 ■代表者:代表取締役社長 石田武司 〒733-0833 広島県広島市西区商工センター2-17-39 TEL082-276-1890 FAX082-276-1189 ●業種及び主な事業内容 ・就労継続支援A型(障害者自立支援法に基づく障害者福祉サービス事業) ・ポリエチレンを素材とした容器及び部器等の製造・販売 ●従業員数15名(平成19年7月1日現在)うち障害者11名 内訳:知的障害者11名 事業所の概要と障害者雇用の経過 親会社である株式会社エフピコは、ポリエチレンペーパーおよびその他の合成樹脂製簡易食品容器の製造・販売並びに関連包装資材等の販売を営む企業。すでに3社の特例子会社ダックス(千葉県・高知県・佐賀県)を設立し、障害者雇用促進に取り組み、生産現場での障害者指導のノウハウを有する。平成18年、自立支援法施行に伴い、子会社広島愛パック株式会社を設立し、就労継続支援A型の障害者サービス事業所の指定認可を申請。同年末には、株式会社エフピコの人事部に障害者雇用対策課を新設し、エフピコグループ全体での障害者雇用拡大の体制を整備した。 改善テーマ 〜障害者の自立〜 「自立」をめざして、プロとして働く職場を作る。 改善・取り組みのポイント 11名の知的障害者を雇用しているが、一人ひとり顔が違うように個々の特性・理解度も異なる。作業内容の説明や、作業の習得・効率化のための労働環境の工夫が必要である。研修期間中に共通して苦手と思われた工程は、わかりやすくする手だてとして、「視覚的に違いを理解」「概念理論で数をとらえない手法」を考えた。良品と不良品の違いを目で見て比べながら、その違いを一人ずつ、1個ずつ、手に取り、理解できるまで繰り返し指導したり、作業台を工夫し、検品した商品を決められた数だけ置くとランプが点灯しブザーがなるようにした。また、毎日のミーティングは欠かせないものであるが、単に目標やノルマを伝える時間ではない。一人ひとりが思っていることや考えていることを話す場として「自分が感じていることを伝えること」「自分の取った行動を振り返ること」「まわりと自分を見比べながら、自分をコントロールできるようになること」を重視した。繰り返し行う中で、他の人を思いやるような発言や注意、それを受けて感謝したり、やる気になる姿が見られるようになった。 広島精研工業株式会社 ■代表者:代表取締役社長 山下壽之 〒739-2117 広島県東広島市高屋台1-4-7 TEL082-434-6321 FAX082-434-6360 ●業種及び主な事業内容 自動車部品のプレス加工、溶接、表面処理加工 ●従業員数140名(平成19年7月1日現在)うち障害者7名 内訳:知的障害者6名(うち重度6名)、肢体不自由者1名 事業所の概要と障害者雇用の経過 昭和26年創業、自動車部品のプレス加工・溶接加工・塗装・組み立て・射出成型が主な事業内容である。平成2年、広島市南区から現在の東広島市高屋町の東広島中核工業団地に本社及び工場を移転。平成6年より、地元の福祉施設と協力し、企業の社会的責任を果たすべく、障害者雇用に本格的に取り組んでいる。 改善テーマ 1.知的障害者が工場内で円滑に業務を行うための、作業ツールの開発・改良について 2.コミュニケーション及び相談の環境づくりについて 改善・取り組みのポイント 広い工場内で業務を行わなければならない環境、製品の種類が多い状況の中で、障害者に対する細やかな指導やコミュニケーションが行いにくく、その不安から業務が停滞したり、不良品が生まれたりすることがあった。そのため、製品の形態を識別する製品の写真と名称を記入したパネルを掲示した。さらに、類似した製品の識別ミスを防止するため、商品見本を取り外せるように配置して、製品同士をつき合わせて照合できるようにした。また、作業の順番変更や一時的中断にも指示なく対応できるように、表示板を作成した。文字による表示では作業再開が徹底しなかったため、絵を使った表示板に変更した。雇用当初は、出勤の送迎を他の社員がするなど、コミュニケーションを深めるようにしたり、上司に直接相談できるよう、相談カードを所持してもらい手渡すだけですむようなシステムを作った。特別に支援を必要とする場合には、本人の申し出によりカラーキャップを着用することも可能にした。障害者向けの工夫は、他の社員のミスも軽減させ、全体の品質向上につながった。 下関水陸物産株式会社 ■代表者:代表取締役社長 嶋田達雄 〒750-0014 山口県下関市岬之町10-6 TEL0832-23-7284 FAX0832-23-9100 ●業種及び主な事業内容 食品加工製造販売、印刷業 ●従業員数45名(平成19年6月20日現在)うち障害者5名 内訳:知的障害者4名、肢体不自由者1名(うち重度1名) 事業所の概要と障害者雇用の経過 昭和20年、下関市唐戸において、下関水陸物産商会として開業。昭和25年、社屋の新築移転を機にウニ瓶詰め製造販売を開始し、ウニ専門メーカーとして『下関水陸物産株式会社』を設立した。心臓疾患や難聴者が、派遣社員やルート配送等営業部門で勤務することはあったが、平成12年に創立50周年を迎え、「記念商品の販売」「HACCPシステム導入」「ハンディキャップを持つ方にも門戸を開く(工場勤務)」を決定したことにより、障害者雇用の取り組みを本格的に開始した。 改善テーマ 1.設備の工夫改善で職域開発 2.作業者の安全確保と職域拡大 改善・取り組みのポイント 工場勤務では、約700アイテムの製品にラベルを貼り付けるライン作業に従事する。従来の方法では、タッチパネル操作に無理やミスが発生しやすかった。ラベルマシンに改善工事を行い、操作タッチパネルをひらがな表示(従来は漢字)にする等により、周囲に健常者がいなくても、ミスなくスムーズに仕事がこなせるようになった。また、洗浄ラインについては、職域拡大を目的として、それまで従事していた担当者の退職を契機に知的障害者担当に切り替えを図った。しかし、機械の異常時等の際に、仕事に集中するあまり危害コントロールができにくく、ガラス瓶の破裂等によるケガなど安全対策の確保を必要とした。機械を改善することで防ぐことができるため、時間制御システムをやめて規定の瓶本数が挿入されなければ洗浄ホルダーが回転しないようなシステムで動かすように変更した。助成金の活用による設備の安全対策改善により、障害者の職域拡大につながった。 ヤマト運輸株式会社 山口主管支店 ■代表者:主管支店長 本橋秀己 〒747-1221 山口県山口市大字鋳銭司字鋳銭司団地北 TEL083-986-3805 FAX083-986-3568 ●業種及び主な事業内容 貨物自動車運送事業 ●従業員数369名(平成19年6月15日現在)うち障害者12名 内訳:知的障害者9名、肢体不自由者3名(うち重度2名)(うち重複1名) 事業所の概要と障害者雇用の経過 “クロネコヤマトの宅急便”というキャッチフレーズで馴染みのあるヤマト運輸株式会社。数ある支店の中でも、山口主管支店の障害者雇用率は3.32%(平成17年5月現在)で、全国の支店中トップであり法定雇用率を大きく上回っている。知的障害者の雇用については、数年前に特別支援学校の教師から、生徒の職場実習の依頼があったことがきっかけである。現在も、職域拡大のため、事務系の現場実習を受け入れており、他部署でも受け入れが可能かどうかを検討している。障害者の自立に向けて応援体制をとり、定着管理にも重点を置いている。 改善テーマ 現場実習の職域拡大について 改善・取り組みのポイント 雇用前の学校在学中に、3名について計5回の職務実習を実施し、データ入力に従事。それぞれの特性に合わせて、丁寧な説明を繰り返し、その後実際やってもらうことで理解できたかを確認。また、説明したことはノートに書きとってもらう習慣をつけ、再度不明な点があった場合、自分で見ることにより確認することができるようにした。さらに入力したものについては必ずチェックしてもらうようにし、ミスについてはどうしてミスをしたか考えてもらうこと、分からないことについては、そのままにせず必ず質問してもらうようにした。コミュニケーションについても挨拶と担当者へ話しかけることを促した。担任による巡回が週に2回あったため、実際の様子を見学してもらい、その時点での良い点・悪い点を指摘していただき、随時修正を図ることも行った。その結果、作業能力、コミュニケーション力を最大限引き出すことにつながった。 有限会社 リベルタス興産 ■代表者:代表取締役社長 有田信二郎 〒755-0009 山口県宇部市東見初町525-110 TEL0836-35-7878 FAX0836-35-7646 ●業種及び主な事業内容 印刷・デジタル化業務、清掃業務 ●従業員数40名(平成19年6月1日現在)うち障害者26名 内訳:知的障害者9名(うち重度6名)、聴覚障害者6名(うち重度6名)、肢体不自由者10名、内部障害者1名(うち重度1名) 事業所の概要と障害者雇用の経過 宇部興産株式会社の特例子会社として平成3年に設立、重度障害者多数雇用事業所の認定も取得している。社名の「リベルタス」は、ラテン語で解放の意味であり、障害を持つ者が束縛や固定観念から解放されて自立することを表した。印刷業務からスタートし、デジタル化業務や知的障害者を主体とした清掃業務も開始している。平成18年には、グループ会社での雇用促進に取り組むため、「UBEグループ障がい者ネットワーク」を立ち上げた。ハートフルマークの推奨や地域活動にも積極的に取り組んでいる。 改善テーマ 作業マニュアル化と支援体制の構築による知的障害者の職場定着と知的障害者のデジタル業務支援のための改善 改善・取り組みのポイント 知的障害者雇用拡大にあたり、作業現場に目が届かなくなる不安や、初めて知的障害者と共に働くサブリーダーの不安を取り除くために、分担して行っていた作業を全員で短時間で行い移動する方法に変更し、それをマニュアル化した。また、支援体制の確立に向けて、障害者職業カウンセラーへの相談やジョブコーチを活用し、定期的に会議を開催した。さらに、個別のケースに対応するために、総務や職業コンサルタントで役割を分担した。職場定着には生活面でのサポートも必須と考え、本人の不安を軽減するための相談体制づくり、私生活については就労・生活支援センターにサポートを依頼するなども行った。パソコンを得意とする障害者に対し、デジタル化業務(紙データをスキャナーで取り込みPDFデータにする)を任せるため、この一連の作業についてわかりやすいマニュアルを作成した。また、データ入力業務については、発注者から届くアンケートデータについて、入力しやすく見やすいフォームをアクセス機能を活用して作成し、各項目に範囲チェックを施し入力ミスを防ぐ工夫を取り入れた。 株式会社 トーカイ ■代表者:代表取締役 河野猛 〒760-0061 香川県高松市鶴市町2025-3 TEL087-881-8004 FAX087-881-8073 ●業種及び主な事業内容 リネン・サプライ業 ●従業員数1,106名(平成19年5月31日現在)うち障害者22名 内訳:知的障害者9名(うち重度2名)、視覚障害者1名、聴覚障害者3名(うち重度2名)、肢体不自由者5名(うち重度1名)、内部障害者3名、精神障害者1名 事業所の概要と障害者雇用の経過  昭和37年、東海綿業株式会社四国支社を設立、高松市に工場を建設し営業を開始。創業以来のリネンサプライ事業を始めとし、新しい病院給食のあり方を提案するフードサービス事業、独自のシステムを開発し地域の産業や医療に貢献するエンジニアリング事業等、6つの事業を展開している。昭和59年より、香川県養護学校高等部の卒業生の定期採用をスタート、数年前より障害者雇用率は3%を上回っている。知的障害者の中には、勤続年数26年の従業員もおり、健常者に劣らない仕事ぶりを発揮している。 改善テーマ ジョブコーチ支援事業やトライアル雇用等各種支援制度の活用 改善・取り組みのポイント ある社員は、勤続6年でありながら、その障害の特徴から次第に同僚とのトラブルが多発するなど目が離せず、職場の指導者や同僚の負担が大きくなった。そのため、ジョブコーチや家族と相談し、一旦退職とし、その後は障害者自立支援法に基づき「職場実習受入企業」として当社が受入体勢を作り、授産施設からの他の社員と共に働いてもらうようにした。就労訓練の場として、新しく職場を改装し備品等も揃えて準備を整えた。職場実習の場を提供し自立支援を行うことは、企業の重要な役割と考える。また、自閉症の社員には、その特徴を周知し、当人が混乱しないよう周囲が対応できるように指導。業務遂行援助者も配置し、指導にあたり混乱を防いだ。発達障害を持つ社員については、ジョブコーチや職場長のもとで職場に適応できるような訓練・指導を行い、トライアル雇用を実施。その後、コミュニケーション上の問題が起きないよう配属先に配慮し、ジョブコーチの支援を受けながら継続雇用とした。個々人の障害の特徴に合わせた対応が必要であり、指導者や同僚に対しても研修会を実施し、よりよい職場環境作りを推進する。 株式会社 T-NETvigla ■代表者:代表取締役社長 高橋誠 〒761-8081 香川県高松市成合町930-10 TEL087-886-8150 FAX087-886-8102 ●業種及び主な事業内容 経理会計・人事会計・総務等の事務処理、印刷物の企画・デザイン、ホームページ制作 ●従業員数15名(平成19年7月1日現在)うち障害者12名 内訳:知的障害者1名、視覚障害者1名、聴覚障害者3名(うち重度2名)、肢体不自由者6名(うち重度4名)、内部障害者1名(うち重度1名) 事業所の概要と障害者雇用の経過  平成12年、香川県で第一号の認定を受けた特例子会社。親会社である株式会社ティーネットジャパンは、香川県高松市成合町に本社を置く総合建設コンサルタント会社で、土木施工管理においては業界トップの売上高を誇る。主力業務が、技術支援・技術者派遣であることから、障害者雇用は非常に難しいが、行政等各方面からの指導・支援を得て、ティーネットジャパンの管理本部業務を請け負う形態で設立した。 改善テーマ 就労の形態は、健常者の中へ障害者が入るのが一般的だが、viglaでは障害者が集い、その得意なところを出し合うことにより成果をあげるスタンスで臨んでいる。健常者にも得意苦手はあり、ただ障害者はこの苦手が顕著に表れるところに特徴がある。私達は互いに苦手な部分をカバーしあいながら、得意なところで勝負する展開をめざしている。 改善・取り組みのポイント 知的障害者の場合は、時間をかけて行動分析を行い、得意もしくは苦手なことをより正確に把握することが求められる。苦手な部分については周囲のものが配慮し、得意なところで仕事をさせる工夫をし、うまくできたときには褒め、自信につなげていく。最初は聴覚障害者とペアで清掃にあたっていたが、本人には信頼する人間ができたほか、手話以外でコミュニケーションを取らなかった聴覚障害者は積極的に発声するようになった。その後、郵便仕分け・名刺作成等、業務ごとに他の障害者等とペアを組ませ、信頼関係を構築している。 シンセイフードサービス株式会社 ■代表者:代表取締役 吉永英人 〒791-8016 愛媛県松山市久万の台1194 TEL089-917-6560 FAX089-917-6562 ●業種及び主な事業内容 食品製造販売業 病院給食・施設給食の受託業務、在宅介護食・治療食の宅配業務 ●従業員数624名(平成19年6月1日現在)うち障害者12名 内訳:知的障害者7名(うち重度1名)、聴覚障害者1名(うち重度1名)、肢体不自由者1名、内部障害者1名(うち重度1名)、精神障害者2名 事業所の概要と障害者雇用の経過 平成12年創業、グループ企業には四国医療サービスや国際ホテル松山・宇部・山口がある。病院給食や施設給食の受託業務、在宅介護食及び治療食の宅配業務、弁当総菜の製造販売、チルド・レトルト・フリーズ食材の製造販売を行う事業の一括製造を実施する工場として、創業以来のテーマである『ホスピタリティ(おもてなしの心)を大切に』を忘れることなく、社会にとって存在価値のある魅力ある企業に成長していくことを目標としている。障害者雇用については、愛媛障害者職業センターの仲介により取り組んでいる。 改善テーマ 1.雇用管理等の改善・工夫(既存職務の見直し、キャリアアップの支援、ジョブコーチ支援の活用) 2.職場定着・能力向上による人事異動 改善・取り組みのポイント 重度知的障害者については「容器洗浄室」へ配属した。作業を習得しやすいよう、会社生活の各場面ごとに行動カードを作成し、首にかけて常に自己チェックができるように工夫した。さらに、勤務時間帯を短縮したり、多くの作業パターンを覚えなければならなかった業務内容の見直しなどを、具体的に行いながら経過を観察した。また、習熟度に応じて「野菜前処理室」さらに「真空冷却包装室」への配置転換によりキャリアアップさせている。仕事の難易度の差により配属変更後の業務に戸惑いを感じていた者には、ベテランの作業者とペアを組ませマンツーマンで指導にあたり、ベテラン先輩の下で自信をつけ、成功体験をさせることにより不安を減少できるようにした。会社での状況を家族に対して手紙で知らせ、家庭でのフォローもお願いした。 高知大学 農学部 ■代表者:物部地区事務課長 田村建司 〒783-8502 高知県南国市物部乙200 TEL088-864-5205 FAX088-864-5210 ●業種及び主な事業内容 農林業の生産の教育、研究 ●従業員数11名(平成19年7月1日現在)うち障害者2名 内訳:知的障害者2名(うち重度1名) 事業所の概要と障害者雇用の経過 3つのキャンパスで構成される高知大学。そのひとつ物部キャンパス内の農学部に、実習や研究の支援をしながら、水稲、牧草、野菜、花弁及び果樹の生産や牛の飼育等を行っている暖地フィールドサイエンス教育センター南国フィールドが隣接している。平成18年度に、大学が障害者雇用を進めるという方針を出し、農学部に対して同大学教育学部附属養護学校卒業生の受け入れが提案された。研修後雇用を検討することとし、平成19年職場実習を行い、採用することが決定した。 改善テーマ  1.大学農学部における知的障害者の適性と能力開発  2.知的障害者を戦力として 改善・取り組みのポイント  知的障害者2名には、当初職員2名と共に、ビニールハウス内でトマトの管理作業に従事することとし、作業を分割して覚えてもらった。うち1名は、正確に作業が進まないことから、作業内容を変更した。南国フィールドでは、季節毎に栽培する植物や手のかかる作業が異なるため、作業内容も変動が大きい。その中で、なるべく毎日繰り返し行える作業で本人に適した作業の検討が必要である。環境整備や、季節に影響されない牛舎での作業を中心に予定を組み立て、ジョブコーチとともに作業することで少しずつ仕事が上達していった。作業変更にあたっては、毎日終業時に記入していた作業日誌を活用して、次週の週間予定を記入し、それを自分で見て作業に取りかかるというルールを決めた。また、道具の扱い方や熱中症対策など安全面にも配慮した。職員全員には、思いやりを持って接するように説明し、理解を得た。知的障害や自閉症特有の話し方や行動にも徐々に理解が深まり、作業予定を立てたり指導する経験を積むことで、職員のスケジュール管理や作業指導に対する意識も高まり、よい刺激となっている。 四国医療サービス株式会社 ■代表者:代表取締役 ??永英人 〒780-8017 高知県高知市南竹島35 TEL088-833-3552 FAX088-831-2040 ●業種及び主な事業内容 リネンサプライ ●従業員数498名(平成19年3月25日現在)うち障害者14名 内訳:知的障害者11名(うち重度2名)、肢体不自由者3名(うち重度1名) 事業所の概要と障害者雇用の経過 高知・愛媛の両県において、医療機関や介護老人福祉施設などを対象に、寝具類・白衣制服類・布オムツなどのリース・販売及び洗濯業務、その他紙オムツ・介護用品や医療機器の販売を営む。「障害者雇用は企業の社会的使命である」という創業社長の方針により、障害者を雇用し布オムツのたたみ作業に従事してもらっていたが、紙オムツの普及等により仕事量が減少。職域を寝具洗濯物の仕分け作業等にも拡大し、一定の雇用を維持している。 改善テーマ 生産体制変更による余剰人員の削減計画があるため、障害者の処遇について最大限の配慮をしつつ、障害者雇用を維持する方法を探る。 改善・取り組みのポイント 業務拡大と生産性向上を目的に、愛媛工場を移転し、設備を一新することになった。完成後は、高知工場で生産していた一部が新工場で行われるため、高知工場では生産減少による人員削減が必要となる。余剰人員や退職予定者、また配置転換も含めて推定した結果、7名の障害者が該当することがわかった。しかし、障害者の職域は限られており、配置転換による吸収は極めて難しいと思われた。人員削減直後の生産体制に、最初から障害者を配置することは難しいため、健常者のみで人員配置を計画。ただし、医療・福祉関連企業の社会的使命として障害者雇用を守ることも肝要であるとの思いから、障害者については削減対象外人員とし、寝具洗い場、寝具仕上げ、リネン仕上げに配置することとした。業務を組分けして、各職場で新たに障害者の就業可能な仕事を創り出し、指導訓練していった。 株式会社 サンテック ■代表者:代表取締役 杉山展夫 〒807-1312 福岡県鞍手郡鞍手町大字中山55-3 TEL0949-42-6991 FAX0949-42-8027 ●業種及び主な事業内容 製造業(IC部品製造、金型装置、キャリアテープ) ●従業員数280名(平成19年4月1日現在)うち障害者6名 内訳:知的障害者5名(うち重度1名)、聴覚障害者1名(うち重度1名) 事業所の概要と障害者雇用の経過 精度1/1000mmを可能にする加工技術を基に、半導体部品製造金型及び装置の製造並びに搬送用資材キャリアテープを製造。高精度・高品質の生産設備を提供し続けている。事業拡大に伴う人員増加が必要となる中、障害者雇用については以前から取り組んでおり、面談会を含めた求人活動を行ってきた。福岡県高齢者・障害者雇用支援協会より知的障害者の雇用の検討を勧められ、職場体験を実施し、正式採用することとした。 改善テーマ 知的障害者を活かす職場作り 改善・取り組みのポイント 知的障害者の採用にあたり、ジョブコーチと共に作業内容の流れや業務内容の見直し等を行う。作業工程をわかりやすくし、安心して安全に働くために、必要な資材を一カ所に置くような配慮をし、作業しやすく、かつ工程を早くマスターできるように工夫した。個別に指導者(人生経験豊富な高齢者を活用)を配属し、作業態度や社内ルールを含めた指導を行った。作業に集中できるよう、仕事の手順をマニュアル化して指導者と一緒に作業を行った。また、ジョブコーチの定期的な職場訪問により、障害者のメンタルケア及び作業担当者へのアドバイスを受ける。社内で解決できない課題(障害者との接し方など)について的確なアドバイスを受けることで、同僚社員の不安が解消できる。当人とは、定期的な面談を行い、悩みの相談を聞きアドバイスをしたり、家庭との連絡を密に取ることで職場定着を図る。雰囲気の良い職場環境が保たれ、安心感を持って何事にも取り組んでいる。 特定非営利活動法人 たすけあい佐賀 ■代表者:代表 西田京子 〒840-0853 佐賀県佐賀市長瀬町10-37 TEL0952-23-6950 FAX0952-25-9773 ●業種及び主な事業内容 介護保険事業(通所介護) ●従業員数64名(平成19年6月26日現在)うち障害者5名 内訳:知的障害者4名(うち重度3名)精神障害者1名 事業所の概要と障害者雇用の経過 平成6年、市民参加型の互助組織として法人を設立。子育て支援・高齢者支援・障害者在宅生活支援等を行っている。介護保険制度の開始に伴い、介護保険事業に参入。訪問介護・通所介護・居宅介護支援事業を展開し、現在宅老所7カ所と託児所を運営している。障害者雇用のきっかけは、授産施設「コロニー」から就労の依頼があり、重度知的障害者を雇用したことである。その後、3級ヘルパー講習を受講した知的障害者を雇用し、宅老所内での介護補助として、環境整備や食事作りの手伝い、後片づけ、洗濯等の業務に従事している。 改善テーマ 知的障害者が持っている能力を発揮するためのきめ細かい指導と助言 改善・取り組みのポイント 佐賀障害者職業センターと連携し、何ができるか、できないか等、個人の特性や能力をきちんを見極めて把握することに努力した。それにより、個人をよく知ることができ、周りの人の理解も進み、職場での協調性や信頼関係が芽生えた。仕事(洗たく物干し、食器洗い等)を順序よく説明し、何でも一人でやろうとしなくてよいとアドバイスし、複数の指示もやめて一つの仕事が確実に理解できるように努めた。また、仕事の指示は、一日の流れの中で一連の業務として行うように指導した。本人が自信を持って仕事ができるよう、成功体験を積み重ねるようにし、その後自分で考えてできるように仕事の幅を広げていく。注意や説明は、穏やかに優しい口調を心がけた。私生活面でのバックアップに配慮し、悩みを聞いたり、休みの日の過ごし方を一緒に考えたりしながら、私生活上の不安を取り除くように努め、安心して仕事に集中できるようにしている。福利厚生の充実、助成金の活用、また業務遂行援助者による技能向上を図り、職場定着にも努めている。 九州住電装株式会社 ■代表者:社長 伊藤仁志 〒877-0061 大分県日田市大字石井字中の瀬968-5 TEL0973-22-8500 FAX0973-22-8507 ●業種及び主な事業内容 自動車のワイヤーハーネスの製造 ●従業員数788名(平成19年6月30日現在)うち障害者6名 内訳:知的障害者3名、聴覚障害者2名(うち重度1名)、内部障害者1名(うち重度1名) 事業所の概要と障害者雇用の経過 平成2年、住友電装グループ11社目の企業として設立。国内のメーカー(特に九州の企業)向けのワイヤーハーネス製造を専門に行っている。九州地区におけるワイヤーハーネス製造の活動拠点として、現在大分本社を中心に、熊本・島根に工場を設置。安定した製造で、信頼性の高い製品を作り出している。障害者雇用は、身体障害者を雇用したことがスタート、今回の応募事例を契機に知的障害者の受け入れも始める。 改善テーマ ジョブコーチ支援を活用して職域拡大を図った事例 改善・取り組みのポイント 職務内容(自動車のワイヤーハーネスの組立)の工程が複雑であるため、身体障害者のみを採用対象としてきたが、障害者雇用の門戸を広げ、知的障害者の雇い入れに取り組む。知的障害者採用にあたり、企業内内職としてワイヤーハーネスの仮結束作業を検討、リスクの少ない作業から開始した。また、労務管理上の支援の必要性があったため、同時にジョブコーチ支援を活用した。スタート時は、作業面・コミュニケーションにおいて不安があった。作業工程の理解や能率が不十分であり、「やはりこの作業に従事させるのは難しいのではないか」という空気が社内に流れた。しかし、ジョブコーチに相談すると本人の背景要因を踏まえ、一つひとつ課題を解決することにより改善が見込まれるという見解が出された。助言に基づき、社内でハード・ソフトの両面から環境改善を図った。作業工程の理解については本人が常に質問できる体制づくりをし、作業能率の向上については、部品のレイアウトを変更し、効率的に作業ができるよう工夫・改善をした。このように課題解決が図れ、十分な改善結果が示されたため、企業内内職後ライン作業に従事させることを検討した。現在は、一人のワーカーとして十分な作業高を残している。 有限会社 上伸ミート ■代表者:代表取締役 上永吉稔 〒891-0132 鹿児島県鹿児島市七ツ島1丁目6-1 TEL099-284-6558 FAX099-284-6557 ●業種及び主な事業内容 食肉加工処理、卸売業 ●従業員数51名(平成19年7月2日現在)うち障害者11名 内訳:知的障害者9名、聴覚障害者2名 事業所の概要と障害者雇用の経過 食肉加工処理・卸業として、北海道から沖縄まで国内全域において展開している。当社の社員(部長)が心筋梗塞による心臓バイパス手術を受け、内部障害者でありながらその障害を乗り越え、現在第一線で活躍している。このような経緯から、平成18年の工場新設を機に、障害者雇用に積極的に取り組んでいる。ハローワークや養護学校に雇用紹介を依頼し、現在は主に食肉加工部門で採用、当社に不可欠な戦力となっている。 改善テーマ 安全管理とコミュニケーションで働きやすい、明るい職場環境 改善・取り組みのポイント 経営面で障害者雇用は、作業効率の点で厳しい状況にある。雇用環境設備充実を図るために、鹿児島県雇用支援協会の指導により助成金を活用し、鶏肉用セミオートデータウェイを購入した。工場新設によって通勤に支障が生じたため、雇用継続環境を整えるために、送迎用バスを購入した。また、社内における障害者担当の内部組織が明確でなく、コミュニケーションや意志の疎通がスムーズでなく、障害者にとって心理的負担を追わせることもあったため、経営者側とのパイプ役、健常者と障害者のパイプ役として、職業生活相談員の他に社外から障害者相談担当者と障害者チーフの配置を行った。職業人としての心構えや規則に対する理解度を高めるには、共に働く健常者の理解が重要と判断し、会社の一員であることの理解につながるように社全体で取り組み、挨拶や返事のような基本を時間をかけ繰り返し指導した。健常者に比べ、感じ方や考え方の個人差が大きく、適材適所への配置が難しいため、当人の意見や希望をよく確認し配置する。健常者の理解向上をめざし、テーマを決めたミーティングも行っている。 平成19年度障害者雇用職場改善好事例応募事業所の概要 1.都道府県別応募数 都道府県 計 北海道 2 青森 0 岩手 0 宮城 1 秋田 2 山形 0 福島 1 茨城 2 栃木 3 群馬 0 埼玉 3 千葉 2 東京 9 神奈川 5 山梨 0 長野 1 新潟 1 富山 1 石川 1 福井 1 岐阜 1 静岡 4 愛知 1 三重 2 滋賀 3 京都 2 大阪 4 兵庫 2 奈良 0 和歌山 4 鳥取 1 島根 0 岡山 0 広島 2 山口 3 徳島 0 香川 2 愛媛 1 高知 2 福岡 1 佐賀 1 長崎 0 熊本 0 大分 2 宮崎 0 鹿児島 1 沖縄   1 合計    75 2.事業所規模別応募数   事業所規模    計    1000人?     6   500人?999人    4   300人?499人    6   100人?299人    21    56人?99人    7    55人以下 31 合計 75 3.業種別応募数 業種 計 製造業 22 食料品製造業 8 木材・木製品製造業 1 家具・装備品製造業 1 パルプ・紙・紙加工品製造業 1 印刷・同関連業 1 一般機械器具製造業 2 電気機械器具製造業 2 電子部品・デバイス製造業 2 輸送用機械器具製造業 2 その他の製造業 2 情報通信業 1 映像・音声・文字情報制作業 1 運輸業 2 道路貨物運送業 2 卸売・小売業 4 各種商品小売業 3 飲食料品小売業 1 金融・保険業 1 補助的金融業・金融付帯業 1 飲食店、宿泊業 3 一般飲食店 2 宿泊業 1 医療・福祉業 11 医療業 5 社会保険・社会福祉・介護事業6 教育、学習支援業 2 学校教育 2 サービス業 29 専門サービス業 2 洗濯・理容・美容・浴場業 4 廃棄物処理業     2 その他の事業サービス業   21 合計 75 4.部門別応募数 一般会社 50 特例子会社 25 合計 75 平成19年度障害者雇用職場改善好事例<知的障害者> 「その他の応募事例」の概要  本年度の知的障害者のための障害者雇用職場改善好事例では、職場改善により作業の効率化が可能になったことに加え、これまで一般的に難しいと思われていた職務について、各事業所が積極的に検討していくことで、新たな職域拡大に繋がった事例が数多く挙げられています。  ここでは、詳しいご紹介ができなかった入賞事業所以外の応募事例を10の職務内容に分けて、主な作業内容と主な改善ポイントを取りまとめ、紹介しています。  なお、各職務内容において共通する知的障害者の職場における改善ポイントとしては、職場適応援助者(ジョブコーチ)など支援機関を活用する事例が多く見られています。そのため、下表の主な改善ポイントには、ジョブコーチの活用を除いた内容について掲載しております。 職務内容(事例数) システム系(1事例) 主な作業内容 ・Webディレクター(ホームページの制作など、顧客とのやり取りを含む) 主な改善ポイント ・他の従業員とWebチームを編成し、ミーティングを重ねることで、顧客の要望に対する感受性やビジネスマナーやコミュニケーション能力を高め、能力開発を行う  ・OJTに近い形でホームページ作成を経験することで技術習得を行う 職務内容(事例数) 介護系(9事例) 主な作業内容 ・病院での看護助手 ・老人福祉施設での介護補助(清掃、配膳、洗濯、洗浄等に従事している事例が多いが、中にはヘルパーの資格を有し、利用者の介助に携わっている事例もある) 主な改善ポイント ・多岐に渡る業務を一度に教えるのではなく、ひとつひとつ段階的に教えることでステップアップを図る ・社内で支援を行う従業員が交代勤務のため、複数人で支援体制を組む 職務内容(事例数) 事務系(10事例) 主な作業内容 ・パソコン入力作業 ・庶務的な簡易作業(シュレッダーがけ、ファイリング、社内便の集配、ラベル貼り、会議の準備等) 主な改善ポイント  ・既存の職務を、知的障害者がやりやすいようにアレンジする(作業手順を細分化する、入力画面やソフトを使いやすいものに変える等)庶務的な簡易作業  ・新たに職務を創出する(もともといろいろな部署や個々の従業員が行っていた業務を集約し、1日の仕事内容に組み立てる) 職務内容(事例数) 販売系(1事例) 主な作業内容 ・知的障害者が自ら栽培した花苗や作成した押し花商品の販売 主な改善ポイント ・接客マナーや敬語の使用、身だしなみへの配慮への意識づけを図る 職務内容(事例数)  サービス系?喫茶?(1事例) 主な作業内容  ・喫茶室における接客 主な改善ポイント  ・マンツーマンで指導する  ・注文伝票を使いやすいものに改善する  ・就労時間帯を配慮する(支援する人と同じ勤務時間帯になるようにし、かつ繁忙時間帯を避ける) 職務内容(事例数) サービス系?調理?(1事例)  主な作業内容  ・レストランにおける調理 主な改善ポイント  ・支援機関と連携し、障害者職業生活相談員育成のための研修会を行う  ・各所で働く知的障害者を集めた研修を行う  ・写真、図などを活用した作業マニュアルを作成する  ・知的障害者の従業員を各所で受け入れる実習生のトレーナーという役割を与え、本人のステップアップを図る 職務内容(事例数)  サービス系?クリーニング、リネンサプライ?(5事例) 主な作業内容  ・クリーニングとリネンサプライにおける選別、仕上げ、たたみ等が大半を占める 主な改善ポイント  ・作業しやすいように社内レイアウトを変更する  ・きれいに仕上げるための補助具を作成する  ・安全面等に配慮し機械を改造する  ・人員の配置換えを行う 職務内容(事例数)  生産工程系(22事例) 主な作業内容  ・電子機器の製造、部品組立・加工、板金加工、メッキ加工、食肉製造、パン等製造、印刷、検品、布団袋詰めなど(上司からの指導の元、単独で作業をしている事例、ライン作業・流れ作業を担当している事例と様々な形態がある) 主な改善ポイント  ・他部署で行っている仕事の集約、外注している仕事の内製化、新たな部署を作る等により仕事を創出する  ・治具、作業マニュアルの作成、作業工程の見直し、安全教育の徹底など仕事のやり方を工夫・効率化する  ・知的障害者を後輩の指導者として育成する等のキャリアアップに向けて取り組む 職務内容(事例数)  その他の労務系(13事例) 主な作業内容  ・容器洗浄、倉庫内ピッキング、スーパーのかごやカート回収、部品の加工、食品の加工、植物の栽培、工場内清掃、空箱、部品等の回収・整理・整頓など(その職務を単独で行うよりも、職場での様々な仕事を集約することが多い) 主な改善ポイント  ・知的障害者を指導する管理者を教育する  ・適材適所へ配置するため適性の見極めをマニュアル化する  ・従事職種の絞込、作業や工程の単純化、勤務時間の短縮、失敗のできる部署へ配置する  ・挨拶、集中力、継続出勤などの社会人教育をする 職務内容(事例数)  清掃系(8事例) 主な作業内容  (知的障害者単独ではなく、複数人が一緒に清掃を行っている事例が多い) 主な改善ポイント  ・数人の知的障害者グループに1人健常者の指導者を配置する  ・1日のスケジュールを作業しやすいように組み立てる  ・マニュアル・チェック表・シール等を用いて、目で見て分かりやすい環境を整える 平成19年度障害者雇用職場改善好事例応募要項 1 趣旨  障害者雇用において雇用管理、雇用環境等を改善・工夫し、様々な取り組みを行っている事業所の中から、他の事業所のモデルとなる好事例を募集し、これを広く一般に周知することによって、企業における障害者の雇用促進と職域の拡大及び職場定着の促進を図るとともに、障害者雇用に関する理解の向上に資することを目的とします。   企業の社会的責任が高まる中、新しい職域の拡大が見られる知的障害者を取り上げ、企業が知的障害者(※)にとって働きやすい職場にするための創意工夫を行い、雇用及び職場定着を図った好事例を募集します。  ※知的障害者とは、療育手帳を所持している方及び地域障害者職業センターで知的障害と判定され、判定書を所持している方をいいます。 2 募集テーマ (1)雇用管理等の改善・工夫  @新たな職務の開発、既存の職務の見直し、組織の再編成  A採用方法、配置  B専任者、担当者の配置、障害者職場定着推進チームの設置  Cキャリアアップの支援  D安全衛生、健康管理  E知的障害者雇用に関する担当部署以外の従業員への啓発  F効率化のための取組(指示のマニュアル化、支援方法の統一等) (2)雇用環境等の改善・工夫  @支援機関との連携  A事業主団体、NPO法人などによるネットワークの活用  Bその他の改善・工夫 (3)その他知的障害者の雇用に関する改善・工夫  @ジョブコーチ支援事業やトライアル雇用等各種支援制度の活用  Aキャリアアップモデルの考案  Bその他の改善・工夫 【こんな事例をお寄せください】  @職種において新たな職域拡大を図った事例   ○職業能力開発校などで介護の訓練を行い、介護職で就職した事例   ○販売など対人サービス業において就職した事例  A職務を創出することで新たな職域拡大を図った事例   ○総合病院において新たに知的障害者を雇用するにあたり、看護補助という職務を創出し、職場にスムーズに定着するため、職員への啓発、ジョブコーチ支援などを行い、環境改善に努めている事例   ○知的障害者のために、職場内で清掃やシュレッダーがけの職務を新たに作り出した事例  Bキャリアアップ等により新たな職域拡大を図った事例   ○知的障害者を梱包の職種で雇い入れたが、関係機関に助言を求めながら、検品やピッキングにまで職務の範囲を広げている事例   ○知的障害のある事務従事者が、従来のパソコンによるデータ入力に加えて、さらにネットワーク管理などを行っている事例 3 主催  独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構 4 後援  厚生労働省(予定) 5 応募締切日  平成19年7月9日(月)(必着) 6 応募資格  知的障害者を雇用している事業所とします。 7 応募方法 (1)指定の応募用紙に必要事項を記入し、参考資料として図、イラスト、写真、印刷物等事例の内容を具体的に説明するものを添付してください。 (2)応募する事例については、上記2の募集テーマの全部又は一部に該当するものとします。 (3)応募用紙は、表紙の問い合わせ先のほか、厚生労働省・都道府県労働局・ハローワーク・地域障害者職業センター等で配布します。また、独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構のホームページからダウンロードした用紙も使用できます。 8 賞  優秀な事例には、最優秀賞(厚生労働大臣賞)・優秀賞(独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構理事長表彰)・奨励賞(独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構理事長表彰)を贈ります。なお、優秀賞と奨励賞については、部門(一般部門、特例子会社部門)を設け、各部門ごとに賞を贈ります。表彰式については、平成19年11月に静岡市で開催される『2007年ユニバーサル技能五輪国際大会・第7回国際アビリンピック』のプログラム内で行う予定です。なお、入賞事業所については、表彰式において、表彰内容に関する発表等をお願いすることがあります。 9 審査  独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構に審査員会を設置し、審査します。 10 表彰  最優秀賞、優秀賞の表彰式は、平成19年9月に東京で開催します。 11 その他 (1)応募した文書の著作権及びこれに付随する一切の権利は、独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構に帰属するものとします。 (2)応募書類は、返却しません。 (3)応募事例については好事例集としてまとめ、関係団体、事業所等に配布します。このうち、入賞事例については取材を行い、具体的な事例の内容を好事例集へ掲載するとともに、当機構ホームページにも掲載します。その他の事例については、事業所名及び取組内容の概要を好事例集へ掲載します。 【審査員の構成】  審査員名 所属                     役職  大森八惠子 特定非営利活動法人みなと障がい者福祉事業団 事務局長  田中勉 法政大学人間環境学部             教授  土屋喜久 厚生労働省職業安定局             障害者雇用対策課長  吉光清 九州看護福祉大学看護福祉学部         教授  輪島忍 社団法人日本経済団体連合会        労政第一本部雇用管理グループ長  江上節義 独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構     雇用開発推進・納付金担当理事 (敬称略五十音順・所属、役職は平成19年8月3日現在) 関係機関一覧  地域障害者職業センター センター名 所在地 電話番号 FAX番号 北海道障害者職業センター 〒001-0024札幌市北区北24条西5-1-1札幌サンプラザ5F 011-747-8231 011-747-8134 北海道障害者職業センター旭川支所 〒070-0034旭川市四条通8丁目右1号ツジビル5F 0166-26-8231 0166-26-8232 青森障害者職業センター 〒030-0845青森市緑2-17-2 017-774-7123 017-776-2610 岩手障害者職業センター 〒020-0133盛岡市青山4-12-30 019-646-4117 019-646-6860 宮城障害者職業センター 〒983-0836仙台市宮城野区幸町4-6-1 022-257-5601 022-257-5675 秋田障害者職業センター 〒010-0944秋田市川尻若葉町4-48 018-864-3608 018-864-3609 山形障害者職業センター 〒990-0021山形市小白川町2-3-68 023-624-2102 023-624-2179 福島障害者職業センター 〒960-8135福島市腰浜町23-28 024-522-2230 024-522-2261 茨城障害者職業センター 〒309-1703茨城県笠間市鯉淵6528-66 0296-77-7373 0296-77-4752 栃木障害者職業センター 〒320-0865宇都宮市睦町3-8 028-637-3216 028-637-3190 群馬障害者職業センター 〒379-2154前橋市天川大島町130-1 027-233-1433 027-233-7086 埼玉障害者職業センター 〒338-0825さいたま市桜区下大久保136-1 048-854-3222 048-854-3260 千葉障害者職業センター 〒261-0001千葉市美浜区幸町1-1-3 043-225-7220 043-224-1078 東京障害者職業センター 〒110-0015東京都台東区東上野4-27-3 上野トーセイビル2・3F 03-6673-3938 03-6673-3948 東京障害者職業センター多摩支所 〒190-0012立川市曙町2-38-5立川ビジネスセンタービ5F 042-529-3341 042-529-3356 神奈川障害者職業センター 〒228-0815相模原市桜台13-1 042-745-3131 042-742-5789 新潟障害者職業センター 〒950-0067新潟市東区大山2-13-1 025-271-0333 025-271-9522 富山障害者職業センター 〒931-8443富山市下飯野新田70-4 076-438-5285 076-438-5234 石川障害者職業センター 〒921-8836石川郡野々市町末松2-244 076-246-2210 076-246-1425 福井障害者職業センター 〒910-0026福井市光陽2-3-32 0776-25-3685 0776-25-3694 山梨障害者職業センター 〒400-0864甲府市湯田2-17-14 055-232-7069 055-232-7077 長野障害者職業センター 〒380-0935長野市中御所3-2-4 026-227-9774 026-224-7089 岐阜障害者職業センター 〒502-0933岐阜市日光町6-30 058-231-1222 058-231-1049 静岡障害者職業センター 〒420-0851静岡市葵区黒金町59-6大同生命静岡ビル7F 054-652-3322 054-652-3325 愛知障害者職業センター 〒453-0015名古屋市中村区椿町1-16井門名古屋ビル2F 052-452-3541 052-452-6218 愛知障害者職業センター豊橋支所 〒440-0888豊橋市駅前大通り1-27UFJつばさ証券豊橋ビル6F 0532-56-3861 0532-56-3860 三重障害者職業センター 〒514-0002津市島崎町327-1 059-224-4726 059-224-4707 滋賀障害者職業センター 〒525-0027草津市野村2-20-5 077-564-1641 077-564-1663 京都障害者職業センター 〒600-8235京都市下京区西洞院通塩小路下ル東油小路町803 075-341-2666 075-341-2678 大阪障害者職業センター 〒541-0056大阪市中央区久太郎町2-4-11クラボウアネックスビル4F 06-6261-7005 06-6261-7006 大阪障害者職業センター南大阪支所 〒591-8025堺市長曽根町130-23堺商工会議所5F 0722-58-7137 0722-58-7139 兵庫障害者職業センター 〒657-0833神戸市灘区大内通5-2-2 078-927-3540 078-921-2187 奈良障害者職業センター 〒630-8014奈良市四条大路4-2-4 0742-34-5284 0742-34-1899 和歌山障害者職業センター 〒640-8323和歌山市太田130-3 073-472-3233 073-474-3069 鳥取障害者職業センター 〒680-0842鳥取市吉方189 0857-22-0260 0857-26-1987 島根障害者職業センター 〒690-0877松江市春日町532 0852-21-0900 0852-21-1909 岡山障害者職業センター 〒700-0952岡山市平田407 086-243-6955 086-241-3599 広島障害者職業センター 〒732-0052広島市東区光町2-15-55 082-263-7080 082-263-7319 山口障害者職業センター 〒747-0803防府市岡村町3-1 0835-21-0520 0835-21-0569 徳島障害者職業センター 〒770-0823徳島市出来島本町1-5 088-663-3000 088-663-1063 香川障害者職業センター 〒760-0055高松市観光通2-5-20 087-861-6868 087-861-6880 愛媛障害者職業センター 〒790-0808松山市若草町7-2 089-921-1213 089-921-1214 高知障害者職業センター 〒781-5102高知市大津甲770-3 088-866-2111 088-866-0676 福岡障害者職業センター 〒810-0042福岡市中央区赤坂1-6-19ワークプラザ赤坂5F 092-752-5801 092-752-5751 福岡障害者職業センター北九州支所 〒802-0066北九州市小倉北区萩崎町1-27 093-541-5222 093-541-5231 佐賀障害者職業センター 〒840-0851佐賀市天祐1-8-5 0952-24-8030 0952-24-8035 長崎障害者職業センター 〒852-8104長崎市茂里町3-26 095-844-3431 095-848-1886 熊本障害者職業センター 〒862-0971熊本市大江6-1-38-4F 096-371-8333 096-371-8806 大分障害者職業センター 〒874-0905別府市上野口町3088-170 0977-25-9035 0977-25-9042 宮崎障害者職業センター 〒880-0014宮崎市鶴島2-14-17 0985-26-5226 0985-25-6425 鹿児島障害者職業センター 〒890-0063鹿児島市鴨池2-30-10 099-257-9240 099-257-9281 沖縄障害者職業センター 〒900-0011那覇市おもろまち1-3-25沖縄職業合同庁舎5F 098-861-1254 098-861-1116 関係機関一覧 都道府県協会 センター名 所在地 電話番号 FAX番号 (社)北海道高齢・障害者雇用促進協会 〒060-0004札幌市中央区北4条西4丁目1札幌国際ビル4階 011-223-3688 011-223-3696 (社)青森県高齢・障害者雇用支援協会 〒030-0801青森市新町二丁目2-4新町二丁目ビル7階 017-775-4063 017-734-7483 (社)岩手県雇用開発協会 〒020-0024盛岡市菜園一丁目12番10号日鉄鉱盛岡ビル5階 019-654-2081 019-654-2082 (社)宮城県高齢・障害者雇用支援協会 〒980-0021仙台市青葉区中央三丁目2-1青葉通プラザ2階 022-265-2076 022-265-2078 (社)秋田県雇用開発協会 〒010-0951秋田市山王三丁目1番7号東カンビル3階 018-863-4805 018-863-4929 (社)山形県高齢・障害者雇用支援協会 〒990-0828山形市双葉町1?2?3山形テルサ1階 023-676-8400 023-645-4404 (社)福島県雇用開発協会 〒960-8034福島市置賜町1番29号佐平ビル8階 024-524-2731 024-524-2781 (社)茨城県雇用開発協会 〒310-0803水戸市城南1町目1-6サザン水戸ビル3階 029-221-6698 029-221-6739 (社)栃木県雇用開発協会 〒320-0033宇都宮市本町4番15号宇都宮NIビル8階 028-621-2853 028-627-3104 (社)群馬県雇用開発協会 〒371-0026前橋市大手町2-6-17住友生命前橋ビル10階 027-224-3377 027-224-3556 (社)埼玉県雇用開発協会 〒330-0063さいたま市浦和区高砂1-1-1朝日生命浦和ビル7階 048-824-8739 048-822-6481 (社)千葉県雇用開発協会 〒260-0015千葉市中央区富士見2-5-15塚本千葉第三ビル9階 043-225-7071 043-225-7479 (社)東京都雇用開発協会 〒101-0061千代田区三崎町1丁目3番12号水道橋ビル6階 03-3296-7221 03-3296-7231 (財)神奈川県雇用開発協会 〒231-0026横浜市中区寿町1-4かながわ労働プラザ7階 045-633-6110 045-633-5428 (社)新潟県雇用開発協会 〒950-0087新潟市中央区東大通1-1-1三越・ブラザー共同ビル7階 025-241-3123 025-241-3426 (社)富山県雇用開発協会 〒930-0004富山市桜橋通り2-25富山第一生命ビル1階 076-442-2055 076-442-0224 (社)石川県雇用支援協会 〒920-8203金沢市鞍月5丁目181番地AUBE5階 076-239-0365 076-239-0398 (社)福井県雇用支援協会 〒910-0005福井市大手2丁目7番15号明治安田生命福井ビル10階 0776-24-2392 0776-24-2394 (社)山梨県雇用促進協会 〒400-0031甲府市丸の内2丁目7-23鈴与甲府ビル4階 055-222-2112 055-222-2119 (社)長野県雇用開発協会 〒380-8506長野市南県町1040-1日本生命長野県庁前ビル6階 026-226-4684 026-226-5134 (社)岐阜県雇用支援協会 〒500-8856岐阜市橋本町2-20濃飛ビル5階 058-252-2324 058-252-2325 (社)静岡県障害者雇用促進協会 〒420-0857静岡市葵区御幸町11番地30エクセルワード静岡ビル6階 054-255-7139 054-253-7910 (社)愛知県雇用開発協会 〒460-0008名古屋市中区栄二丁目10番19号名古屋商工会議所ビル9階 052-219-5661 052-209-5855 (社)三重県雇用開発協会 〒514-0002津市島崎町137番地122 059-227-8030 059-227-8131 (社)滋賀県雇用開発協会 〒520-0056大津市末広町1番1号日本生命大津ビル3階 077-526-4853 077-526-0778 (社)京都府高齢・障害者雇用支援協会 〒604-8171京都市中京区烏丸通御池下ル虎屋町577-2太陽生命御池ビル3階 075-222-0202 075-222-0225 (社)大阪府雇用開発協会 〒530-0001大阪市北区梅田1-12-39新阪急ビル10階 06-6346-0122 06-6346-0146 (財)兵庫県雇用開発協会 〒650-0025神戸市中央区相生町1丁目2番1号東成ビル5階 078-362-6588 078-362-6550 (社)奈良県雇用開発協会 〒630-8122奈良市三条本町9番地21号JR奈良伝宝ビル4階 0742-34-7791 0742-34-7722 (社)和歌山県雇用開発協会 〒640-8154和歌山市六番丁24番地ニッセイ和歌山ビル6階 073-425-2770 073-425-4158 (社)鳥取県高齢・障害者雇用促進協会 〒680-0835鳥取市東品治町102明治安田生命鳥取駅前ビル3階 0857-27-6974 0857-27-6975 (社)島根県雇用促進協会 〒690-0826松江市学園南一丁目2?1くにびきメッセ6階 0852-21-8131 0852-25-9267 (社)岡山県雇用開発協会 〒700-0907岡山市下石井2-1-3岡山第一生命ビル4階 086-233-2667 086-223-9583 (社)広島県雇用開発協会 〒730-0013広島市中区八丁堀16-14第2広電ビル7階 082-512-1133 082-221-5854 (社)山口県雇用開発協会 〒753-0051山口市旭通り二丁目9番19号山口建設ビル3階 083-924-6749 083-924-6697 (社)徳島雇用支援協会 〒770-0831徳島市寺島本町西1丁目7番地1日通朝日徳島ビル7階 088-655-1050 088-623-3663 (社)香川県雇用支援協会 〒760-0017高松市番町1-2-26トキワ番町ビル3階 087-811-2285 087-811-2286 (社)愛媛高齢・障害者雇用支援協会 〒790-0006松山市南堀端町5番地8オワセビル4階 089-943-6622 089-932-2181 (社)高知県雇用開発協会 〒780-0053高知市駅前町5番5号大同生命高知ビル7階 088-884-5213 088-884-5306 (財)福岡県高齢者・障害者雇用支援協会 〒812-0011福岡市博多区博多駅前3-25-21博多駅前ビジネスセンター3階 092-473-6300 092-474-1737 (財)佐賀県高齢・障害者雇用支援協会 〒840-0816佐賀市駅南本町5-1住友生命佐賀ビル5階 0952-25-2597 0952-24-6811 (社)長崎県雇用支援協会 〒850-0862長崎市出島町1番14号出島朝日生命青木ビル5階 095-827-6805 095-827-6822 (社)熊本県高齢・障害者雇用支援協会 〒860-0844熊本市水道町8-6朝日生命熊本ビル3階 096-355-1002 096-355-1054 (財)大分県総合雇用推進協会 〒870-0026大分市金池町1丁目1番1号大交セントラルビル3階 097-537-5048 097-538-5465 (社)宮崎県雇用開発協会 〒880-0812宮崎市高千穂通2丁目1-33明治安田生命宮崎ビル8階 0985-29-0500 0985-29-5131 (財)鹿児島県雇用支援協会 〒892-0844鹿児島市山之口町1番10号鹿児島中央ビルディング11階 099-219-2000 099-226-9991 (社)沖縄雇用開発協会 〒901-0152那覇市字小禄1831番地1沖縄産業支援センター7階 098-891-8460 098-891-8470 障害者雇用納付金制度に基づく各種助成金の内容  事業主等が障害者の雇用や定着のために、施設・設備等の改善をしたり、職場環境への適応や作業等の指導を行ったりする場合、その経済的負担の軽減を図ることで、障害者の雇い入れや継続雇用を容易にしようとする制度です。各助成金の詳細及び相談や申請等の受付は、各都道府県協会(P101)へお問い合わせください。 各種助成金(一部)の内容 1 障害者作業施設設置等助成金  障害者を常用労働者として雇い入れるか継続して雇用する事業主で、その障害者が作業を容易に行えるよう、個々の障害に応じ配慮された施設または改造等がなされた設備の設置または整備を行う(賃借による設置を含む)場合に、その費用の一部を助成するものです。 2 障害者福祉施設設置等助成金  障害者を常用労働者として雇い入れるか継続して雇用している事業主または当該事業主の加入している事業主団体が、障害者である労働者の福祉の増進を図るため、保健施設、給食施設、教養文化施設等の福利厚生施設の設置または整備する場合に、その費用の一部を助成するものです。 3 障害者介助等助成金  重度身体障害者、知的障害者、精神障害者または就職が特に困難と認められる身体障害者を常用労働者として雇い入れるか継続して雇用している事業主が、障害の種類や程度に応じた適切な雇用管理のために必要な介助等の措置を実施する場合に、その費用の一部を助成するものです。(業務遂行援助者の配置等) 4 職場適応援助者助成金  職場適応援助者助成金は、以下のいずれかに該当する社会福祉法人等又は事業主に対して費用の一部を助成するものです。(一定の要件を満たすものに限る。)・職場適応援助者(障害者職業総合センター、地域障害者職業センターが行う第1号職場適応援助者養成研修又は厚生労働大臣が定める研修を修了し、援助の実施に関し必要な相当程度の経験及び能力を有すると認められる者をいいます。)による援助の事業を行う社会福祉法人等・障害者である労働者の雇用に伴い必要となる援助を行う職場適応援助者(障害者職業総合センター、地域障害者職業センターが行う第2号職場適応援助者養成研修又は厚生労働大臣が定める研修を修了し、援助の実施に関し必要な相当程度の経験及び能力を有すると認められる者をいいます。)の配置を行う事業主 ※・については、地域障害者職業センター(P100)へお問い合わせ下さい。 5 重度障害者等通勤対策助成金  重度身体障害者、知的障害者、精神障害者または通勤が特に困難と認められる身体障害者を常用労働者として雇い入れるか継続して雇用している事業主、またはこれらの重度障害者等を雇用している事業主が加入している事業主団体が、これらの障害者の通勤を容易にするための措置を行う場合に、その費用の一部を助成するものです。 特定求職者雇用開発助成金  身体障害者、知的障害者又は精神障害者を雇い入れる事業主に対して、その雇い入れに係る者に支払った賃金に相当する額の一定率を雇い入れた日から一定期間支給するもので、具体的な助成率、助成期間が決まっています。受給条件について等、ご質問・ご相談はお近くのハローワーク(公共職業安定所)にお問い合わせ下さい。 ─平成19年度障害者雇用職場改善好事例募集の入賞事例から─  知的障害者のための職場改善に関する好事例集  いきいきと働く障害者を支える職場づくり 平成19年11月 発行 独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構 〒105-0022 東京都港区海岸1-11-1ニューピア竹芝ノースタワー内 TEL 03-5400-1625 FAX 03-5400-1608 URL https://www.jeed.go.jp/