肢体不自由者のための職場改善に関する好事例集 ― 平成17年度障害者雇用職場改善好事例募集の入賞事例から ― 共に働く喜びがさらなる創造へとつながっていく 平成18年3月発 行 独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構 〒105-0022 東京都港区海岸1-11-1 ニューピア竹芝ノースタワー内 TEL.03(5400)1625 FAX.03(5400)1608 URL.https://www.jeed.go.jp/ 企画・制作 株式会社太平社 p.1 はじめに  独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構では、各事業所において障害者の雇用及び職場定着を進めるための雇用管理や職場環境の整備等創意工夫して取り組まれた事例を全国の事業主の皆様から募集し、職場改善好事例集として広く周知、普及させることを目的として、平成3年度から障害者雇用職場改善好事例募集を行っております。  平成17年度におきましては、「肢体不自由者にとって働きやすい職場にするための創意工夫を図った好事例」をテーマに募集しましたところ、全国の事業主の皆様から多数のご応募をいただき、審査員の方々による厳正なる審査の結果、12事業所の入賞を決定いたしました。ご応募いただきました事業主の皆様、そして、ご支援いただいた関係機関・団体等の皆様方には改めて感謝申し上げます。  このたび、これらの入賞事業所等の事例を「肢体不自由者のための職場改善に関する好事例集−平成17年度障害者雇用職場改善好事例募集の入賞事例から−」としてとりまとめましたので、肢体不自由者の雇用の促進及び職域拡大のためにご活用いただければ幸いです。  平成18年3月 独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構 p.2-3 目 次 肢体不自由者のための職場改善に関する好事例集 ― 平成17年度障害者雇用職場改善好事例募集の入賞事例から ― ●はじめに 1 ●入賞事例  最優秀賞    株式会社沖ワークウェル −全国の在宅障害者の才能を結集、IT関連ビジネスに新分野を拓く− 4  優秀賞    情報共同作業所アイ・コラボレーション −物理的バリアのないIT関連業務を選択して仲間と社会につながる−14   株式会社かんでんエルハート −スポーツやレクリエーションを通じ体力と就労意欲を向上− 20   YKK六甲株式会社 −構築した制作ネットワークを活用、業務の効率化、人材確保、在宅勤務を軌道に乗せる− 26   ソニー・太陽株式会社 −徹底した自律で障害者に最適な環境を整え、世界のトップランナーを目指す− 32   オムロン太陽株式会社 −安全で快適な職場づくりをテーマに世界レベルのユニバーサル工場を目指す− 38  奨励賞   特定非営利活動法人 ボランティア杜の家 −障がい者と健常者がともに働きやすいユニバーサルな環境を構築−44   株式会社ダイキンサンライズ摂津 −責任のある職場環境でハードからソフトまでの問題点を絶えず改善− 50   特定非営利活動法人 アス・ライフサポート −障害者がもっと普通の生活を送れる環境を障害者自身の手で実現する− 56   株式会社T-NET vigla −「生き生きとした活発な仲間たちの集い:vigla」。その実現のため、グループ内外の業務受託に挑戦−62   希望の里ホンダ株式会社 −ノーマライゼーション工場として、健常者と同一の仕事を行う− 68 ●その他の応募事業所 80 ●応募事業所の概要 108 ●応募要項 109 ●関係機関一覧 111 p.4 最優秀賞  全国の在宅障害者の才能を結集、IT関連ビジネスに新分野を拓く 株式会社沖ワークウェル  企業プロフォール  株式会社沖ワークウェル  代表者:取締役社長 木村良二  〒108-8551 東京都港区芝浦4-11-17(2号館) TEL 03-5445-6805 FAX 03-3798-7085  ◆業種および主な事業内容 ホームページ制作、プログラム制作、ポスター制作、名刺制作など  ◆従業員数 36名(平成18年1月現在)うち障害者数29名    <内訳> 肢体不自由者23名(うち重度23名、在宅22名)、内部障害者2名(うち重度2名、在宅1名)、視覚障害者1名(うち重度1名)、知的障害者3名  ◆事業所の概要と障害者雇用の経緯   平成8年、沖電気らしい社会貢献活動を強化する目的で、社会貢献推進室を創設、障害者雇用の問題を本格的に検討しはじめた。通勤できない障害者の活用にはコンピュータネットワークを活用した在宅ワークが有効な手段であり、障害者の在宅雇用こそ沖電気らしい社会貢献活動であると確信する。   障害者の在宅雇用管理は極めて困難であるが、多くの問題点を克服、平成10年に3名の重度障害者を初めて在宅勤務で採用した。その後、独特の在宅勤務制度が軌道に乗り、次第に在宅雇用者を増加させ、平成16年に13名の在宅雇用者が在籍する特例子会社として独立。現在では23名の在宅雇用者以外に、通勤の視覚障害者1名や知的障害者3名などを雇用して、障害者の特性を生かしたユニバーサルデザインやアクセシビリティのコンサルタントとしての受注など、新たな事業展開を図っている。 p.5-6 社内ベンチャーとして、障害者の在宅チームが誕生 外部のユニークな人材との出会いが新しい可能性を生む  平成10年6月、沖電気工業株式会社は3名の通勤が困難な重度障害者を初めて在宅勤務で採用した。このような障害者の在宅勤務がスタートするきっかけは、その2年前の社会貢献推進室の発足とともに、初代室長に木村良二現・沖ワークウェル社長が就任したことに始まる。  「沖電気らしい企業特性を生かした社会貢献活動を」という命題だけを与えられた木村室長は、どのように活動を展開すべきか、思い悩む日々を送っていた。当時の各企業の障害者対象の社会貢献活動といえば、保護の観点から社員のボランティアを募っての活動などが主なもので、それなりの意義は認めながらも、企業特性を生かした活動としては、いささか物足りなく感じていたからである。  具体的な結論を見いだすことができないまま、インターネットを眺めるうちに、社会福祉法人プロップステーションのホームページに思わず引き寄せられたのである。その中で、竹中ナミ理事長は、「チャレンジド(障害者)を納税者にできる日本」を目指すという独特な考え方を展開し、「働く意欲を持つ人が社会参画や納税という形で支える側となり、……ケアの必要なときには適切なケアを、働く意欲があるときには就労のチャンスが得られる社会システムが必要」と主張していた。  さらに木村室長が、「目から鱗」の新鮮なショックを受けたのは、就労のチャンスを与えるのに「コンピュータネットワークを活用した在宅ワーク」が有効な手段であり、すでに実践していると述べていることであった。コンピュータネットワークといえば、まさに沖電気のビジネス分野である。これこそ、企業特性を生かした社会貢献ではないか。竹中理事長の発言から大きな刺激を受け、発想を転換するきっかけとなった。 東京コロニーと障害者の小川忠さんにホームページの制作を依頼  沖電気の社会貢献活動がスタートするときに社内啓蒙用ポスターに社会福祉法人東京コロニー障害者アートバンク(現アートビリティ)の作者の絵を使ったことから、東京コロニー職能開発室の堀込真理子さんと知り合う。IT技術者在宅養成講座(東京都重度身体障害者在宅パソコン講習)の講師でもある堀込さんから、「2年間の講座で経済産業省情報処理技術者試験に合格するほどの技術力を身につけても、在宅で雇用してくれるような企業がない」と、技術力のある優秀な障害者がいても、通勤が困難なため、雇用されない実情を聞かされた。  これは沖電気で在宅雇用をしてほしいという依頼でもあったが、まずは実際に仕事をしてもらうべく、東京コロニー経由で小川忠さん(現・沖ワークウェル社員、頚髄損傷による四肢体幹機能障害1級)に仕事を依頼した。その内容は沖電気で受注していたキオスク端末の商品説明画面を、続いて社会貢献推進室のホームページ制作を依頼した。平成9年のことであった。  特に、ホームページの制作では木村室長自身が発注担当者であったこともあり、小川さんの仕事ぶりを実際に確認することになった。小川さんは、頚髄損傷で首から上しか動かず、菜ばしを口にくわえてパソコンを操作するのだ。速さは普通の健常者でもとても及ばないほどで、その仕事ぶりに感動を覚えると同時に、重度の障害者へのイメージを一新することになった。 在宅障害者に1人分の仕事量をコンスタントに確保するのが最大の問題  しかし、小川さん1人を在宅雇用すると思っても、現実にはさまざまな問題があった。まず、在宅で働く1人分の仕事量をコンスタントに発注してくれる社内の部門を探す必要があった。さらに問題は、IT関連の仕事は、受注があるときは残業や徹夜が当たり前であると同時に、受注がないときは1カ月も仕事がないという状況であり、そのまま障害者雇用に当てはめるには適しておらず、当面断念せざる得ないことが分かってきた。  それではどうするか。かえって1人だけの雇用を考えるのではなく、複数の在宅障害者を雇用し、複数の発注者からの仕事を基本にすれば、誰かが適切に管理することで仕事量が平準化し、労働時間に制約がある障害者でも仕事が可能だと考えた。幸い、沖電気は、業務上ソフトウェア外注会社と仕事をすることは多いので、場所の離れた技術者の管理に慣れている者は多数存在した。  ただ、複数の仕事と複数の在宅障害者を確保するとしても、一体誰が在宅障害者に適切な指示をするのか、複数の重度障害者と仕事をしたことがある者は誰も全くおらず、引き受け手がいなかった。 願ってもいない救世主登場  そんなときに現れたのが、津田貴現取締役である。ソフトウェア開発部門の技術者の津田さんが各部門から在宅障害者に適した仕事を取りまとめ、複数の在宅障害者と複数の発注者の間を取りもつ仕事(コーディネーター)をしたいと申し出たのである。  実は、津田さんは平成9年に社内の行事で左足を骨折、約1カ月半にわたりギブスと松葉杖の生活を強いられていた。この間、数回通勤を試みるも危険が伴うため、結局ほとんど自宅療養していた。このような経験から障害者の社会参加の後押しをするような仕事にかかわりたいと考えるようになっていた。  そのような背景があり、津田さんは大学の先輩でもある木村社会貢献推進室長を訪ねて相談するうちに、通勤困難な障害者のために在宅勤務による雇用の仕組みを一緒に作ることになったのである。その結果、社内ベンチャービジネスとして「重度障害者在宅雇用制度の提案書」を作成、平成10年に会社に提出した。 障害者在宅チーム「OKI ネットワーカーズ」のスタート  この提案書には障害者雇用率の向上に向けての在宅雇用制度の意義はもちろん、ユニバーサルデザインを障害者に学び沖電気製品やコミュニティビジネスに生かすというベンチャービジネスとしての意義が強調されていた。同年7月から障害者の法定雇用率が1.6%から1.8%に改定されることも追い風となり、この提案書は直ちに採用され、社内ベンチャー「OKI ネットワーカーズ」という名の障害者在宅チームが発足した。  その後、「OKI ネットワーカーズ」は、着実に沖電気やグループ各社のホームページやプログラムの仕事をこなしつつ、その技術力や誠実な対応が認められ、次第に仕事量も増え、沖ワークウェルが設立される平成16年には、メンバーも13名を数えるほどになっていた。それは、障害のある複数の優れた在宅技術者集団に営業、SE、納期・品質管理のできる有能なコーディネーターを巧みに配置することで、発注者が安心して仕事を依頼できる独特の仕組みが十分機能することを証明したことでもあった。 特例子会社「沖ワークウェル」の誕生  「OKI ネットワーカーズ」が沖電気グループ内に定着し一定の評価を得るようになるに伴い、平成16年4月に次のような目的を掲げ、特例子会社の株式会社沖ワークウェルが設立された。  1. 企業理念『チャレンジドとともに「e 社会」創造』  2. 沖電気グループのCSR(企業の社会的責任)、コンプライアンス(法令遵守)の促進  3. 沖電気グループの障害者法定雇用率達成と維持  4. 在宅勤務者ばかりでなく地域の通勤できる障害者の雇用の促進  5. 雇用障害者の処遇や労働条件の改善  冒頭に「e 社会」の創造を掲げたのは、親会社である沖電気が企業ビジョンに、ネットワークを基盤に制約や国・地域・文化などの違いを超えて、あらゆる社会活動が「個」を中心に公平・安全・確実に行われる社会を「e 社会」として、その創造を掲げているからである。これをチャレンジド(障害者)とともに創造しようとするのが沖ワークウェルである。  また沖ワークウェル設立の目的には、沖電気グループ全体のCSRやコンプライアンスの促進および障害者の法定雇用率達成・維持の中心的な役割を担うと同時に、この機会に在宅ばかりでなく通勤できる障害者の雇用や障害者の労働条件の改善も図ろうという同社のねらいが明確に示されている。 p.7 問題点と対応策 1 通勤が困難な肢体不自由の障害者の能力をどのようにして活用するのか。   >> ネットワークを活用した在宅雇用制度を実施、通勤が困難な障害者を全国から雇用している。  詳細は9Pでクローズアップ 2 在宅障害者に発注する仕事はあるが、障害者向けに無理なくコンスタントに仕事を確保するのは困難である。   >> 複数のクライアントからの仕事を複数の障害者が調整して受注する形で平準化すれば、無理なくコンスタントに仕事をすることが可能である。ただし、クライアントと在宅勤務者との調整をしながら業務・納期管理するコーディネーターの存在が不可欠である。 3 さまざまな障害のある在宅勤務者の勤務時間はどのように設定し、どのように管理するのか。   >> 在宅勤務者は契約社員とし、個人の事情に合わせながら、原則として勤務時間は午前10時から午後5時まで(6時間)で個々に契約する。残業は原則として禁止。出退勤の報告については、挨拶メールを交換する形をとっている。 4 日常的な業務のコミュニケーションはどのようして図るのか。   >> クライアントと在宅勤務者間のコミュニケーションは、コーディネーターが介在して、電話、FAX、e-mail、イントラネット、グループウェア、テレビ電話など最新の連絡手段を通じて行っている。このコミュニケーションを円滑にするため、近年は在宅勤務者のリーダーがディレクターとして活躍している。 5 集合教育が困難な在宅勤務者の社員教育はどのように行っているのか。   >> コーディネーターが個別に面接し、個々人に合ったスキルアップのテーマを設定し、そのために必要な教材や講習を紹介してきたが、それ以外に沖電気のe-ラーニング教育システム受講者には費用を年間10万円補助している。 6 在宅勤務者の健康や安全衛生管理はどのように行っているのか。   >> 在宅勤務者の体調・健康については、毎日の日報で報告させ、安全衛生管理などの職場環境については月1回勤務表にチェックして報告させ、コーディネーターが管理する仕組みとなっているが、最も重要視している点は日ごろのコミュニケーションとそれを支える信頼関係である。 7 パソコンなどの設備や作業環境についてどのような基準を設けるべきか。   >> 本人専有のパソコンがあること、個室があることを最も基本的な条件としている。そのほか、ADSL以上のブロードバンド回線使用を義務づけ、パソコン使用料、電話代を含む通信費、電気代などを定額で支給している。 p.8 ここが聞きたい! 「在宅雇用制度」成功のポイント Webを中心としたITビジネス分野だから障害者の在宅雇用が可能となり、発展性があるのではないだろうか 木村良二取締役社長  IT技術の進歩とWebの発展があったからこそ、長年の課題であった、通勤困難な重度の障害者の在宅勤務が可能になったと思います。IT技術の進歩は障害者の方でもパソコン操作を可能とし、出来上がった成果物をブロードバンド回線を使用し、インターネットでどこからでもすばやく送ることができるようになりました。また、高齢者や障害者を含めたWeb利用者の増大により、誰でも利用しやすいユニバーサルデザインの需要が高まっています。そのため、ホームページ制作でのアクセシビリティ配慮の必要性が高まり、障害者の観点からの提言が不可欠になってきました。障害者がIT技術を活用して在宅で働くのも、高齢者や障害者のアクセシビリティを配慮したサービスを提供するのも、沖電気の提唱する「e社会」創造の一環なのです。  なぜ沖電気で在宅雇用が可能になったのかについては、沖電気のソフトウェア分野では場所の離れたソフトウェア外注会社に仕事を依頼し、それを指導管理するノウハウがあったからです。IT関連製品は年々、ユニバーサルデザインが重要なファクターのひとつになり、沖電気社員は在宅で障害者が働くことに誇りを持ち、そのIT技術力を高く評価してクライアントになってくれています。  私たちは沖電気グループやコミュニティに対して、障害者の経験・特性・感性をフルに生かしたユニバーサルデザインを積極的に提案していきます。 在宅雇用制度では何といってもコミュニケーションが最重要点 津田貴取締役事業部長  在宅勤務者とわれわれの間では、一応、健康や安全衛生、残業などの勤務時間を管理する仕組みがあり、在宅勤務者はきちんと報告し、コーディネーターがこれをチェックすることになっています。しかし、この仕組みがきちんと守られ機能していくためには、日常的なコミュニケーションが十分にできることが必要です。  例えば、仕事の進行が遅れ気味で、残業しなくてはならない状況が分かってきた場合、早めに報告してもらい、要員を補充するなどの処置を講じます。それでも不十分なときには、一定の残業をしてもらうことにもなりますが、早めに決めるようにしています。  日ごろのコミュニケーションを成り立たせていくためには相互の信頼関係が大切です。障害者在宅勤務制度がうまく機能するかどうかは、コミュニケーションとそれを支える相互の信頼関係が確立されているかどうかにかかっていると思います。 p.9 クローズアップ 1 ネットワークを活用した在宅雇用のため、通勤が困難な障害者を全国から雇用  沖ワークウェルの障害者雇用の取組の最大の貢献は、通勤が困難なため社会参画に制限の大きかった障害者にも雇用を実現させたことである。障害者にとっては、一度、通勤という大きな壁を乗り越えネットワークを通じた仕事を遂行する仕組みが可能になると、勤務者の地域という壁も意味がなくなる。そのため、優秀な人材であれば、たとえ在宅の形であっても、居住地に関係なく働くことができるようになる。実際に、同社の場合、鹿児島、宮崎、静岡など地方に住む者も在宅勤務者として活躍している。  近年、重度の肢体不自由者にも雇用の機会が広がってきた。会社側による通勤手段の提供や、障害者にも運転しやすい自動車の開発がその要因の一部として挙げられるが、それでも交通事情がよくなければ、通勤することは不可能である。しかも、通勤可能な範囲に採用してくれる企業が存在しなければ、現実には重度の肢体不自由者の就職は厳しい。  その意味で、沖ワークウェルが実施しているような障害者の在宅雇用制度がもっと普及すれば、通勤が困難な障害者にも雇用の機会が増えるはずである。しかし、現在障害者の在宅雇用を実施している企業は、一部のNPO法人や株式会社アンウィーブ(平成16年度障害者雇用改善好事例で優秀賞受賞)のような例があるにせよごく少数である。しかも、小規模ながら在宅雇用を実施している企業は、いずれもネットワークを通じた技術的な分野である。  同社が23名の規模で在宅雇用制度を運営して一定の成果を上げている要因として、沖電気というIT関連ビジネスを通じた企業グループを背景にしている点が挙げられる。この分野では、ソフトウェア外注会社と仕事をすることが多く、場所の離れた技術者を管理するノウハウが蓄積されている。また、沖ワークウェルが目指しているコミュニティビジネスの分野では、障害の有無や年齢などにかかわらず誰でもコンピュータにアクセスできる点など障害者の特性をビジネスに生かす機会が多々ある。  このような企業の環境があったからこそ、同社の障害者の在宅雇用制度の成功に結びついたのである。しかしながら、沖電気グループと同様のビジネスの世界でも、障害者の在宅雇用独特の困難を乗り越えて、障害者の在宅雇用をこれほど組織的に行っている企業は見あたらない。  だからこそ、沖ワークウェルがどのような困難・問題を乗り越えて、現在の重度障害者の在宅雇用制度を生み出してきたのか、そして、具体的にどのように機能させているのか、大いに注目されるところである。 p.10-13 2 コーディネーターによって的確な業務・納期管理が可能に  沖電気グループ内の各部門はどこでもソフトウェア外注会社を抱えており、それなりの仕事を見つけ出すことは容易なことであった。ただ、前にも述べたようにIT関係の仕事は、まとまった量はあっても短期間で仕上げることが多く、どうしても時間外労働が求められる一方で、1カ月間のコンスタントな仕事量を確保するのが困難という問題があった。  このため、複数の発注者(クライアント)の仕事を複数の在宅の障害者の間で調整しながら受注する形態にして、特定の時期に極力ピークがこないように平準化する必要がある。そうすれば、コンスタントに仕事をこなすことが可能になるはずである。  ソフトウェア外注会社の場合も、進行や納期を管理する内勤のプロジェクトマネージャーが必要だが、特にこうした形で複数の在宅の障害者と複数の発注者の間で調整しながら業務の管理を進めていく場合、プロジェクトマネージャーを経験したコーディネーターの存在が不可欠である。コーディネーターの主な仕事は、発注者との打ち合わせ、在宅勤務者への作業の割り振り、品質・納期チェック、納品作業などのプロジェクト全体の管理である。  その点、沖ワークウェルでは、もともと場所の離れた技術者を管理することに慣れた業態であったこと、津田さんという障害者の立場を理解する願ってもない人材が登場したことなどから、比較的容易にコーディネーターの人材を確保できた。当初、1人でスタートしたコーディネーターも仕事量や在宅勤務者の増加に伴い、現在3人となり、よりきめの細かな対応が可能となっている。  しかも、近年は、在宅勤務者(OKI ネットワーカーズ)の中からリーダー的な存在が現れ、ディレクターとして在宅勤務者間の調整を積極的に行える体制が整ってきている。現在4人のディレクターがいるが、これにより相互のコミュニケーションはさらに円滑になってきた。 3 個人の事情に合わせながら、原則勤務時間は10時から5時まで  沖ワークウェルの在宅勤務者の労働条件はどのようになっているのか。まず、雇用形態は1年を期限とした契約社員だが、問題がなければ契約更新をしており、勤務時間も原則午前10時から午後5時までの1日6時間としている。ただし、一人ひとりの障害や介護の状況を考慮し、生活サイクルに合わせて各自自由に契約書で設定した。そのうえ、通院や体調不良時などには無給扱いで気兼ねなく休めるように配慮している。  勤務時間の管理については、タイムカードは使わず、毎回の出退勤時には挨拶メールを本社に送らせるだけでなく、一緒に作業している仲間にも送らせるようにしている。この挨拶メールには用件だけでなく雑談なども一言加え、コミュニケーションを促進するように指導している。  また、残業は原則的には行わせないが、どうしても必要な場合にはあらかじめ体調などを考慮し本人と相談して決めている。ただ、本人が勝手に残業することは固く禁じている。  給与は時給制で賞与もあり、それらの評価はコーディネーターが行うことになっている。 4 最新の連絡手段を駆使して良好なコミュニケーションを図る  障害者の在宅勤務が外注会社などと決定的に違う点は、定期的な連絡会議を全く行わない点である。年2〜3回全員が集合することはあるが、それは業務とは無関係な親睦のためだけの集まりである。業務のための会議を設けないという点では、通勤が困難な障害者のためという基本原則は、きっちり守られている。  コーディネーターなどによる在宅勤務者宅の訪問も以前は定期的に行われていたが、現在はほとんど行われていない。したがって、日常的な業務連絡は、別図のように、クライアント(発注者)、コーディネーター、クリエーター(在宅勤務者)の3者間の日常的なコミュニケーションを、それぞれの頭文字を取って3Cコミュニケーションと呼んで、電話、FAX、E-mail、イントラネット、グループウェア、テレビ電話など最新の連絡手段を駆使して行っている。また、現在、移動体通信を使いテレビ会議ができるノートパソコンを準備中である。これが軌道に乗れば、コーディネーターがクライアントとの打ち合わせ時にノートパソコンを持ち込むことにより、在宅勤務者も遠隔で会議に参加できるようになるはずだ。  これらの手段ではカバーしきれない、在宅勤務者間やコーディネーターとのコミュニケーションについては、全員が顔を合わせる年2〜3回の懇親会が相互の絆を深めるうえで大きな力となっている。  しかし、特にクライアントとの折衝は、9割ほどはコーディネーターが行っているが、在宅勤務者によってはコーディネーター経由のコミュニケーションだけでなく、直接クライアントのニュアンスを聞きたいという場合もある。そのような場合には、なるべく本人の意向を尊重するようにしている。こうして、在宅勤務者の中からクライアントとの折衝や在宅勤務者間の調整も買って出るリーダー役のディレクターが自然発生的に出てきた。 5 沖電気のe-ラーニング教育システム受講者には年間10万円の補助  仕事柄、社員教育は不可欠だが、業務関係の会議を行わないのと同じ理由で集合教育も行っていない。その点は、コーディネーターが個人面接を行い、プログラミング、ホームページ制作、デザインなど個人の特性を生かしながら、スキルアップのテーマを設定、そのテーマにふさわしい講習や学習用のテキストを紹介するようにしている。  また、日常業務に密接な問題については、インターネット上にグループウェアを構築して、技術のノウハウ、スケジュールの情報およびファイルの共有を進めている。グループウェアの情報共有は技術力を高いレベルに維持するうえで有効だが、教育上も大きな力となっている。  最近、沖電気の教育部門がWebで学習できるe-ラーニングシステムの提供を始めたが、その利用を積極的に勧めるとともに、年間10万円まで費用を会社が負担している。 6 月1度の勤務表と毎日の報告書で安全衛生と健康の管理を行う  障害のある在宅勤務者の健康管理はもとより安全衛生面での管理は、健常者以上に神経を使わなくてならない。特に、本社から目の届きにくい自宅で働く在宅勤務者の状況をどう把握するのかが、大きな問題である。  沖ワークウェルは、在宅勤務者の職場の安全確保のため、月に1度勤務表を必ず提出させている。この勤務表には業務上の報告だけでなく、配線が乱れていないか、照明は十分か、棚から本が落ちてこないかなど、自宅という職場の危険度をチェックする項目が列挙されており、確認の意味で必ずチェックして報告させるようにしている。さらに、体調については、毎日報告させるように義務づけている。  コーディネーターがこれらの報告書に目を通すことによって、在宅勤務者の健康と安全衛生管理を行う仕組みになっている。 7 パソコンなどの設備や環境について満たすべき条件  採用にあたって、通勤困難な肢体障害者であることや、ホームページ制作、プログラミング、デザインなどの能力を重視していることは当然だが、それ以外に職場となるべき個室があること、本人がパソコンを専有していることが重要な条件となっている。  個室があることは、安全衛生面はもとより情報管理上からも譲れない条件だが、パソコンについては会社支給にすべきとの意見もあった。技術レベルの統一という意味では、会社支給にすべきかもしれない。ただ、各自これまで使い慣れたパソコンを持っており、もう1台会社が支給した場合、必ずしも広くない部屋で使い勝手が悪くなるなどの問題もあり、一律に会社支給のパソコンを使わせるべきではないとの結論に達した。  そこで、会社が本人所有のパソコンを借り上げる形にして、時給に50円上乗せすることにした。また、ADSL以上のブロードバンド回線を使用することを義務づけるとともに、電話代を含めて通信費月額4,000円、さらに電気代として月額3,000円を支給することにしている。  そのほか、プロジェクトによって特有の設備が必要な場合には、その都度会社から貸与することにしている。 「内勤の障害者との連携」  沖ワークウェルには、通勤している視覚障害者や知的障害者がいるが、在宅勤務者とは次のような連携が機能している。  ●視覚障害者=在宅勤務者が制作したホームページを、視覚障害者が音声化ソフトを使った読み上げによってアクセシビリティのチェックを行い、視覚障害者の観点から成果物の品質向上につなげている。  ●知的障害者=在宅勤務者がパソコンで名刺画面の作成を行い、事務所に送られた名刺画面を知的障害者が印刷し、さらに名刺のカッティング作業および配送を行っている。 肢体不自由者からみた「働きやすい職場」とは OKI ネットワーカーズ・ディレクターの武田昌利さん(平成14年入社) ◆ 多彩な障害者在宅技術者集団としての強みを発揮し、より優れた仕事をしていきたい  平成8年に事故で四肢マヒになるまでは、音楽の仕事(ギターリスト)をしていました。退院してからはコンピュータ関係の友人からサーバーの保守やプログラムの仕事をウインドウズを使って受注していました。その後、東京コロニーからOKI ネットワーカーズの紹介があり、すぐに入社することになりました。入社後はより仕事が広範囲になっただけでなく、アクセシビリティなど質的にも高度なものを要求されるようになり、やりがいを感じています。障害者の在宅技術者集団としての強味を意識して、より優れた仕事をやっていきたいと考えています。その点、自治体や企業ユーザーなど沖電気グループ以外の仕事も増えていますので、社会的な責任感を強く実感するようになりました。  現在のプロジェクトでは、鹿児島、宮崎、静岡、東京・葛飾区、東京・八王子の5人のメンバーと組んでホームページの制作をしています。今後は同じホームページでも、これまでの経験を生かし、美しい音楽や映像が流れるような、より質の高い、マルチメディアの要素を加味した仕事をしたいと願っています。 p.14 優秀賞 物理的バリアのないIT関連業務を選択して仲間と社会につながる 情報共同作業所アイ・コラボレーション 企業プロフィール  情報共同作業所アイ・コラボレーション  代表者:代表 岡本幸助  〒525-0034 滋賀県草津市草津3-14-40 TEL077-569-4777 FAX077-569-4791  http://www.i-collabo.com/  ◆業種および主な事業内容 福祉・地域情報を収集し、インターネット・出版物・DVDなどで発信。ほかホームページの作成、パソコン教室、インターネットカフェ運営などのIT関連業務  ◆従業員数 76名(平成18年2月1日現在)うち障害者数58名   <内訳>  肢体不自由者55名(うち重度39名、重複2名)、精神障害者3名  ◆事業所の概要と障害者雇用の経緯   「ITというサイバースペースであれば、健常者と大差なく仕事ができるのではないか」と考え、現代表を含む有志が平成12年4月に設立。8月から草津を拠点に本格的な活動を始め、翌平成13年には滋賀県独自の制度である「事業所型共同作業所」となり、平成14年には従業員のほとんどと雇用契約を結んで給与を支払うことができるようになった。   好調な運営が求人を増加させ、平成15年ごろからは続々と事業所を設立。現在は滋賀県を中心に、5つの事業所での運営が行われている。 p.15 障害のないサイバースペースで楽しみ、喜ばれ、収入を得る作業所に 障害者のためになる場であり一般企業にも負けない仕事をこなす  そもそも設立にかかわったメンバー全員が、障害を抱えている人たちだった。従来型作業所への限界を感じ、有志で創設。  平成12年4月に設立して6月には作業所を構え、研修を開始。ホームページ作成を行い、設備を整え出した10月に従来型の共同作業所として行政の助成を受けるようになった。翌年3月には最低賃金を保障した時給制で給料が支払えるようになり、4月に事業所型共同作業所としての新たなスタートを切った。  その後も順調に業務を受注し、職域を広げ、従業員や作業所数を増やしながら、現在に至っている。  アイ・コラボレーションとは、information(情報)、internet(インターネット)、interactive(双方向性)、independent(独立)、individual(個性)の頭文字(i=アイ)、すなわち「愛」を示すものに、共同作業所を意味するコラボレーションをつないだ名称。障害者の「働く場」「能力開発の場」「社会参加の場」「社会貢献の場」になるとの目標を掲げ、一般企業にも負けない仕事をこなせるようプロ意識をもって仕事に精進している。「サイバースペースにバリアはない」と考え、IT業を選択。当初は助成金制度を知らず、参加者が出資する形で活動する時期もあったほどだが、熱意が通じて軌道に乗るまでに成長した。 行政の後押しを受けて業務内容のさらなる拡充を図る  滋賀県の平成13年度の予算からは「在宅障害者のIT(情報技術)活用モデル事業」、平成14年度の予算からは「在宅障害者IT活用支援事業」の委託を受けるようになり、SOHO※勤務・支援の整備を進めてきている。アイ・コラボレーションが向かうところの目標と合致する支援事業であり、行政がアイ・コラボレーションの姿勢を後押しした形だ。  さらに平成13年10月には滋賀県・社会福祉事業団・(社)社会就労事業振興センターの3機関とで「NPO法人オンデマンド福祉情報ネットワーク協議会」を発足。21世紀の福祉情報ネットワーク化を目指し、障害者の一層の社会進出が実現するよう、福祉に関するさまざまな情報を供与するシステムづくりを構築している。携帯電話などの端末から、必要なときにいつでも情報を取り出せるオンデマンド形式で、外出先で利用できるバリアフリーのトイレの情報や施設のバリアフリーの状況などを確認できるようになっている。  「好きなことをして、喜ばれ、役に立ち、そして収入を得る」との思いの具現化を目指し、今日でもサイバースペースの可能性を模索中。職場環境・コミュニケーション環境・学習環境の3つを配慮しながら、アイ・コラボレーションという場を通じた社会参加・社会貢献をこれからも目指していく。  ※SOHO … Small Office/Home Officeの略。自宅や小さな事務所と会社をコンピュータネットワークで結んで、そこを新たな仕事場にすること。 p.16 問題点と対応策  1 肢体不自由者にとって、行える業務に制限があると感じていた。   >> IT関連業であれば、一般企業と遜色ない業務を行うことができた。  2 従来型の作業所では給与も少なく、生活が困難だった。   >> 県指導の事業所型共同作業所となり、ほとんどの肢体不自由者と雇用関係を結んだ。  3 通勤困難なメンバーがいたり、入所希望者の増加でキャパシティーを超え出した。   >> 作業所の数を拡大。また在宅でも作業を行えるようSOHOのシステムを導入した。      詳細は18Pでクローズアップ  4 一層の収入安定のため、業務拡大が必要だった。   >> 個人の特性や希望を生かし、ホームページ作成から出版、映像制作なども行うようになった。  5 業務に必要なスキルを持たない者もいた。   >> 研修会を積極的に行い、相互にスキルを高め合う環境を整えた。  6 健常者からの厳しい意見に、肢体不自由者が落ち込むことがあった。   >> 介助者と肢体不自由者の立場を対等にし、それぞれにリーダーを置いた。 ここが聞きたい! ITの可能性と作業所運営の現実 岡本幸助代表  「福祉情報のデパート」という夢をインターネットを通じて実現させる  重度障害者でも働ける業種であることと、設立までに車椅子の福祉団体で地域情報を集めていたので、それを展開する方法としてITに注目しました。  当初からの目標ですが、福祉情報のデパートをこしらえたいと考えているんです。目の前の仕事をこなすのに精一杯でなかなか実現できませんが、インターネットを通じて、さまざまな障害者のためになる情報を配信していきたいと考えておりますし、ITを駆使すればそれが可能になると考えています。  事業所型共同作業所ということで、ほとんどの方と雇用契約を結んでいますが、どうやって給料を捻出しようかとの悩みは日々あります。一般企業と同じですね。福祉的な観点からの作業所でもありますが、やはり経営を続けていくには仕事をしてもらわないとなりませんので、厳しいことも言いますし、その点のむずかしさもあります。しかし積極的な従業員も多く、スキルを高めていけば、一層仕事を引き受けていけるものだと考えています。これからも障害者雇用のパイオニアとして邁進していきたいと思っています。 p.17 1 ITならば一般企業とも肩を並べられる  車椅子使用者にとっては、どうしても物理的な障害に壁を感じてしまうこともある。職場環境はもとより、職種によっても仕事をこなすために大幅な便宜を図らなくてはならないケースが多い。  しかし、机上のパソコンだけでほとんどの業務を完結させることのできるIT関連業であれば、物理的な障害はなく、質量ともに一般企業と同じ業務をこなすことができるはずだ。  設立メンバー全員が素人であり、道は長かったものの、研修や実務を重ねることでノウハウを構築。設立当初はインターネットがようやく普及に差し掛かった時期。今日では当たり前だが、当時は各施設の申請書や情報ソースなどを電子データベースで用意している所は少なかった。熱意をもとに電子データ化を促進してもらい、サイバースペースで業務を遂行できるような環境を整えていった。  障害者用のトイレの設置場所やバリアフリーの施設情報など、これまで培っていた障害者関連情報を得意分野として、ホームページ制作や出版物の刊行などを行っている。 2 事業所型共同作業所となり最低賃金を確保  滋賀県独自の制度として4種類の作業所が展開されているが、平成13年4月より事業所型共同作業所の認定を受けた。これは福祉的な配慮のもとで障害者を雇用し、経済活動のなかで収益を上げることで従業員に対し一般事業所並みの労働条件を実現するという制度である。全従業員の半数以上と雇用契約を結ぶこと、雇用契約者には法が定める最低賃金以上の給与を支払わなくてはならないことなどがあり、ミニ福祉工場とも呼ばれている。  アイ・コラボレーションは法律的にどうしても雇用関係を結べない高齢の障害者や重度障害者などを除き、ほぼ全員と雇用関係を締結。事業所運営自体に余裕があるわけではないものの、従来型作業所時代と比べて収入が数倍に上がったという。同時に自由経済の中で就労する意欲が向上し、社会的自立の促進にも貢献している。 肢体不自由者からみた「働きやすい職場」とは 鈴木一茂さん  ◆ ホームページ更新から経理まで幅広い職務に従事させてもらっている   もともとDTP・軽印刷を行う会社にいたのですが、発病したことでそこでの職務が困難になってしまいました。こちらには2年ほど前に採用されお世話になっています。   現在は、滋賀県障害者福祉協会の機関紙データをインターネット上に更新する作業や経理の仕事などを行っています。ほかにも画像のトレースなども行っていて、本当にいろいろな仕事をやっていますね。それだけに仕事の内容が幅広い分、これからはもっと深いところまで勉強していけたらなと思います。いつかは大手企業のホームページのような、カッコいいサイトも作ってみたいですね。  ◆ 熱意ある環境が働く意欲を向上させる   経理は以前の職場でも少し携わっていたのですが、IT系は初めてのことばかりです。それでも研修などで勉強して、少しずつ仕事を覚えていきました。どうしてこんなに積極的に学べるかというと、仕事への熱意を感じさせる職場環境であるという点も大きいでしょうね。とても明るい雰囲気なんですよ。前の職場はとても静かでした。ここはみんな仕事仲間であり、切磋琢磨して技術を磨き合っている感じがすごくありますね。   サポートの方には車の乗り降りの介助などよくしてもらって、助かっています。   最近成立した障害者自立支援法にはとても関心があります。施行後も作業所で安心して働くことができるように願っています。このアイ・コラボレーションで自分のスキルを磨いて、社会貢献していければと考えています。 p.18 クローズアップ 3 SOHO体制の整備と作業所の増加で働く場所の障害も解決  ◆ 作業所間や個人宅間をインターネット回線で結ぶ   従業員の中には作業所までの移動に困難な者もいる。また作業所が多岐にわたっており、同一プロジェクトでも遠方のメンバーと協力しながら遂行させる必要性もあった。業務にITを選んだ理由である物理的バリアからの解放を真に目指すためには、こうした勤務体制の改善も求められた。   そこで最大限に活用したのが、インターネット回線。   ブロードバンドなどのインターネット回線を利用した動画通話システムを導入・整備し、異なる作業所間の連絡が密にできるようにした。電話やFAX、メールだけでは汲み取れない雰囲気や表情をより的確に伝えられ、進行状況の把握やコミュニケーションの向上を図ることができる。もちろん成果物などはFTPやメールで送信し合い、モニター画面を通して同じ資料を読み合うことが可能だ。   また同様のシステムを、勤務が困難な従業員の自宅にも整備。平成13〜16年には在宅障害者IT活用支援事業の委託を受け、SOHO勤務の体制に磨きがかかった。   こうしてインフラが整った現在、職務遂行以外の活用も模索。昨年からは従業員のスキルアップに欠かせない研修会も、その模様をビデオでのストリーミング配信※を行うようになった。資料などは事前に配布するかダウンロードできるように設置し、遠方でも積極的に参加できるようになった。またその様子はデータベースに蓄積され、学びたいときに閲覧が可能なオンデマンドでアクセスできるようになっている。  ◆ 作業所増加で増加する求人に対応インターネットでネットワークを結んでSOHOを築き、移動への障害があっても仕事への意欲を継続させるよう計らったが、それでも皆と顔を合わせて一緒に仕事したいと望む者も多い。人工呼吸器とストレッチャーが不可欠な重度障害者でも、調子がよければほぼ毎日のように作業所へ通勤してくるという。そのため、やはり作業所の設置も必要であり、本拠地の草津の場合、より広い空間を探して計3回ほど引っ越しもした。   現在草津を中心に全5カ所を設立。約9割が作業所に勤務し、約1割がSOHOとなっている。   こうして、本人の調子ややる気に合わせ、在宅・作業所どちらでも同じように仕事ができる環境が整った。   ※ストリーミング配信 … 映像や音楽などをインターネットを通じて配信する際によく行われる再生形式。データを受信しながら同時に再生できるため、低速な回線でも視聴が容易になる。 p.19 4 個人の特性やスキルを生かして職域を拡大しつづける   ITを駆使した仕事を目指して、当初はホームページの作成や出版物の刊行などからスタート。ITを取り巻く環境の変化や、従業員スキルの向上、従業員数の増加などにより、できることが増えていった。   福祉関連のホームページの作成・保守などから、資料のHTML化。ページを彩るイラストも、従業員のセンスを生かしている。従業員スキル向上のために行っていた研修会のノウハウを基に、外部へのパソコン教室の実施も始めた。また長らく作業設備として親しんだパソコンの知識から、自作によるパソコンの組み立て方を教える教室も開いた。パソコン機材の充実とネットワークに関する知識を基にインターネットカフェも創設した。   印刷・出版分野も拡充し、名刺・ポスター・パンフレットなどの作成も受注。写真の加工やDTP技術もかなりのレベルにある。また興味のあるものを筆頭に、スチールやムービーでの撮影も行うようになり、現在ではDVDの作品について最終パッケージの段階まで携わるようになっている。   取扱内容としては、設立前から創設メンバーたちが有していた、障害者に関するさまざまな情報が現在でも主軸となっている。県や福祉団体などを主たる顧客に持ち、そこで培った情報を基にさまざまな業務を営んでいる。   今後は、福祉という部分で受注している仕事だけでなく、よりスキルを高めて安定した収益を確保するため、営業・投資・アイデアをふんだんに創出していけるよう心がけているという。 5 年間20回以上の内部講習で最先端のITスキルを習得   IT技術に関しては、その進歩は著しく、常時、最先端の技術に追いつくことやさらなるスキルアップが求められる領域といえる。また新たに加わる従業員も、もちろんすべてがパソコン経験者というわけではない。   そのため研修会を定期的に実施している。従業員や一般受講者を対象とし、パソコンの分野ごとに区分けした上で、基礎から高度なレベルまで設定。特に本人が学んでみたいという項目を最優先して指導している。ある程度経験を積んだ生徒は、サブ講師として勉強中のメンバーも教える側に回ることもあり、教えるという行為をすることで、講義内容の理解をさらに深めたり、コミュニケーション力を高めることにも一役買っている。   昨年は計22回執り行われ、今後も引き続き開催される予定。さらに前述したとおりインターネットを通じたビデオ講習もあり、さらなる拡充が図られている。 6 障害者・健常者のそれぞれでリーダーを設置   アイ・コラボレーションの場合、介助役の健常者はあくまで障害者と対等の立場にある。車の乗り降りや物の出し入れなどサポートすることもあるが、健常者に厚く庇護してもらっているという雰囲気はない。   しかし、健常者からの厳しい意見を言葉以上に重く受け止める障害者が皆無というわけでもない。そのため、障害者・健常者それぞれのリーダーを各作業所に置き、作業系統をほどよく分けている。またリーダー級で定期的に会議を行い、人間関係でのトラブルなどがあれば相談し合い、迅速に解決するようにしている。 p.20 優秀賞 スポーツやレクリエーションを通じ体力と就労意欲を向上 株式会社かんでんエルハート 企業プロフィール  株式会社かんでんエルハート  代表者:代表取締役 中井志郎  〒559-0023 大阪府大阪市住之江区泉1-1-110-58 TEL06-6686-6874 FAX06-6684-2132  ◆業種および主な事業内容   デザイン印刷・製本、電話受付サービス、データ入力・編集加工などの処理、園芸、ノベルティ商品などの商事、社内文書の発・受信サービス、メールサービス、産業マッサージ・セルフケア講習会など  ◆従業員数  136名(平成18年2月1日現在)うち障害者数94名   <内訳>   肢体不自由者22名(うち重度19名)、視覚障害者9名(うち重度9名)、聴覚障害者8名(うち重度7名)、内部障害者4名(うち重度4名)、知的障害者49名(うち重度7名、重複2名)、精神障害者2名  ◆事業所の概要と障害者雇用の経緯    平成5年12月9日の障害者の日に会社設立。開業は平成7年4月より。就労の進んでいない知的障害者や重度身体障害者の雇用を一層促進するため、関西電力、大阪府、大阪市の共同出資による第三セクター方式で設立した特例子会社。肢体不自由者をはじめ、さまざまな障害者の雇用を図っている。    電気事業の職種枠を超えて多彩な職域を開拓し、障害者の可能性を最大限生かすようにしているのが特徴。障害者同士の交流の場でもあり、見学会や講習会の依頼を積極的に受け入れて、障害者理解・障害者雇用を伝える発信基地としての役割も担っている。開業以降の見学者は4万5,000人を超え、注目のほどがうかがえる。 p.21 電気事業の周辺事業を再構築し、多彩な職域を用意 健常者の割合を多くしてきめ細かいサポートを実施  かんでんエルハートの設立以前からも、親会社である関西電力は障害者雇用の促進を図っていた。「電気」は、見えない・触れられない・貯蔵できない商品である。こうした商品を取り扱う業務の特性上、特に、重度障害者のために職務創出を行うことは難しいと予想された。しかし関西電力は「地域との共生、地球環境との共生」を経営理念としていることもあり、地域で重度障害者の雇用を促進し、障害者の自立と社会参加に寄与する会社の設立を計画。知的障害や重度の身体障害など、なかなか雇用の進まない障害者を積極的に雇用するため、かんでんエルハートの設立を決定するに至った。  障害者雇用の促進を狙う大阪府と大阪市の協力を得て、第三セクター方式の特例子会社としてスタートを切った。  当初の従業員数は43名で、うち障害者数は28名。そして創業5年で倍以上の104名、うち障害者数65名にまで急成長。その後も順調に障害者雇用を続け、創業10年目となる昨年には136人にまでなった。  障害者と健常者の割合は、設立以来約2:1で推移している。特例子会社の中でも健常者の割合が多いが、これは知的障害者にきめ細かいサポートを行うために必要な対応と考えているためだ。 職域の拡大と新事業所の完成でトータル的なビジネスアシストを実現  業務内容は、本業である電気事業ではなく、周辺業務の再構築によって創出された業務である。具体的には、福利厚生に関する電話受付、郵便物の配布、社内文書の印刷のほかイベント用ノベルティグッズ・お中元やお歳暮の贈答品の企画から包装まで行う商事や、事務所を彩る花壇やプランターの花卉栽培・メンテナンスを行う園芸と、その職域も年々拡大しており、現在までに大きく分けて7種類の業務を行っている。  開業当初2年間は赤字決算であったが、平成9年には累積赤字も解消。以後、黒字経営が続いている。  平成17年1月には新設された関西電力本店ビルの18階にビジネスアシストセンターをオープン。住之江本社や旧関西電力ビルの各階に分かれていた業務窓口を統合し、オフィスワークをトータル的にアシストできるよう生まれ変わった。  今後、除外率(法定雇用障害者数の算定基礎となる常用労働者数の計算に当たって、全常用労働者数から除外される一定の割合を示した数値)が撤廃される可能性を考慮して、今後も積極的に障害者雇用を促進させる予定である。 p.22 問題点と対応策 1 肢体不自由者が働きやすい職場環境を整えなければならなかった。   >> フロア全体にユニバーサルデザインの考え方を盛り込んだ。 2 体力のない者や会社以外に所属する場を持たず社会的視野の狭い者が多かった。   >> スポーツ・レクリエーション活動を推進し、健康増進やコミュニケーション促進が図れた。      詳細は24Pでクローズアップ 3 個人の特性やスキルをうまく生かしたかった。   >> 職域を増やして業務の選択肢を広げた。 4 障害者の自立を促進したかった。   >> クラブ活動を主導させて独創性を高め、障害者同士の連携も促進した。 ここが聞きたい! 積極的な社外活動による効果 中井志郎代表取締役  同じ目標を設定することで社内の士気も高める   スポーツやレクリエーション活動を推進した理由は、やはり体力のない従業員をなんとかしたいと思ったのがきっかけでした。障害者と一緒に過ごす機会がそれまでなかったものですから、最初のうちは手探り状態でしたね。近くの公園にいくことから始めたり……。   積極的に社外活動を推進した結果、従業員の印象がガラッと変わりました。引っ込み思案で大人しくて、根気が続かなかった人が、バリバリのキャリアウーマンになっていたり。たまにこちらがびっくりするくらい気も強くなりましたね(笑)。会社としてはきっかけを与えただけで、すでに自分たちで趣味を満喫していますが、雪山の急斜面を猛スピードで滑ったり、海外旅行に行ったり、ダイビングで海に潜ったりを自分たちでできるわけですから、大きな自信につながったのだろうと思います。   花見やクリスマス会などのイベントもたくさんあって、みんなでわいわいやって楽しんでいます。私もぬいぐるみを着て踊ったりしているんですよ。知的障害の方も多いですし、仕事だけではストレスがたまりますから。   仕事そのものはOJTで教えていくわけですが、士気を高めるといった人づくりは、みんなで同じ目標に向かって進むことが有効です。これは障害者だからというだけでなく、どこの企業でも同じことですね。昔は多くの会社でも行われていたことだと思います。社外活動の中では、仕事中では見られないような個性を発見することができて、仕事に生かせることも多いんですよ。   また仕事だけでなく、生活の質を高めることも重要です。企業人でもあり市民でもあるというバランスが大切で、彼ら・彼女らが人生を謳歌できる手伝いをできたなら幸いですね。 p.23 1 ユニバーサルデザインの考え方をフロア全体に取り込む   昨年に完成したばかりのビジネスアシストセンターでは、広々とした空間にバリアフリー設備やユニバーサルデザインが施され、最先端の作業空間となっている。   通路は車椅子でも余裕を持って通れるほどゆったりとした幅を確保。主要通路は行き違えるよう2m以上、進路変更が必要な場所は回転できるよう1.5m以上、その他でも1m以上の幅にしている。さらに空調機を床下に配置しており、特に冬場に寒暖の差が出にくいように配慮されている。   また、基本的に段差のない造りで、扉もすべて床にレールを造らない吊り戸を採用。効率よく収納できる電動式移動ラックも、利用しやすいようレールを床に埋める処理を施した。   ユニバーサルデザインの考えとしては、手に麻痺があったり握力のない人でも、真ん中の書類が取り出しやすい3枚引戸のキャビネットを採用したり、あらゆる機械の操作ボタンを車椅子使用者でも確認・操作しやすい場所に設置。演台や作業デスクも、用途に合わせて高さを昇降できる電動式になっている。   お金をかけて特注したというロッカーは、車椅子使用者が扱いやすいデザイン。正面を向いても前輪がぶつからないよう床下50cmまで空間を設け、ハンガーラックは電動で昇降するようになっている。   なお、このオフィスでは肢体不自由者をはじめ、あらゆる障害者が作業を行っているため、車椅子使用時の利便性だけ追求すればよいわけではない。聴覚障害者のために印刷機の作業状況を知らせるパトライトを設置したり、視覚障害者のためには点字ブロックの代わりに前を通ると声で知らせるボイスサインを各所に取り付けている。このほか、障害者が働くための工夫は枚挙にいとまがない。   かんでんエルハートの場合、特例子会社として障害者雇用促進の象徴でもあることから、まさしく第一線の職場環境モデルといえそうな設備で充実している。 p.24 クローズアップ 2 スポーツ・レクリエーション活動を推進し健康増進やコミュニケーション促進が図れた  ◆ 体力のなさを感じて手探りの状態から活動を開始   かんでんエルハートが開業して間もなく、経営者サイドに懸念材料が持ち上がった。肢体不自由者には体力の弱い者が多く、終業時にはぐったりしていたことだった。また仕事がないときは自宅にこもり、趣味がなく、人間関係が希薄だったり社会的視野が狭かったりしているように感じられた。   このままでは業務に支障をきたすことが予想され、また肢体不自由者の生活の質の向上を図ることが困難になる。   そこで考えたのが、スポーツやレクリエーション活動の推進であった。   当初はどこまでできるか、どこまで付いてきてくれるかがわからなかったため、近くの公園で散策するレベルからスタートした。   徐々に肢体不自由者たちの可能性を感じ、より積極的な活動を促進していくようになる。もちろん本人たちからの戸惑いはあった。肢体不自由者でも楽しめるチェアスキーを誘ったが、当人にはまったくの想定外であり、できるできない以前のことのように感じられたという。しかしその楽しみを理解してからは、自ら積極的に参加するようになっていった。  ◆ 体力向上、精神的強さも身に付け仕事や趣味に楽しみを見出す   こうしてこれまでに数多くの活動を行っている。スポーツでは車椅子バスケット、車椅子テニス、電動車椅子サッカー、チェアスキー、登山、スキューバダイビング、市民マラソン。レクリエーションでは隠し芸やコンサートを行う納涼祭、車椅子ダンス、チンチン電車を貸り切っての同期会など……。きっかけが与えられたことで、彼・彼女らは自分たちの可能性に気づき、同時にこれまで体験しなかったような楽しみを感じていった。   これらの活動を通じて体力も向上し、以前のように1日の業務でぐったりする者はいなくなった。またいくつかのレクリエーションでは親会社や旅行先のボランティアセンターなどからボランティアを募集してサポートをお願いするが、社外の人との付き合いで社会的接点を築き、社交性も高まった。また趣味や目標を見つけたことで精神的な強さも身に付け、ストレスへの耐性も養えた。 p.25 3 選択肢を広げ適職を見つけるチャンスを与える   親会社の周辺事業を担っているかんでんエルハートは、さまざまな業務の開発を続けている。   開業当初、住之江ワークセンターで業務・園芸・印刷・商事を、中之島ワークセンターでメールサービス・ヘルスケアを行っていたが、平成12年には高槻フラワーセンターをオープンする。昨年には中之島ワークセンターがビジネスアシストセンターとなり、社内印刷や厚生サービスなどの内容が充実。情報の電子化などにより業務内容が拡充し、携わる職域は実に広い。   常に職域を広げようとしているのは、スポーツ・レクリエーション活動と同じく、個人の特性やスキルを生かすにはさまざまなチャンスに遭遇できる環境や、幅広い選択肢が必要だという考えがあるからだ。メールサービスではどうしてもうまくいかなかった知的障害者が、昨年導入した資源ごみの分別回収業務では打って変わったような働きぶりになった事例もある。   まだまだ実現まで程遠いが、野菜工場や通信販売など、可能性を模索していく方向である。 4 活動企画・運営クラブの幹事に任命し独創性を養成   現在ではさまざまなスポーツやレクリエーション活動を行っているが、きっかけ作りは主導したものの、実際のイベントの企画のほとんどは、社員組織「YIYI(わいわい)クラブ」が行っている。   このクラブの運営は、障害の有無に関係なく各所属から担当者を1名出して構成する幹事会で行われる。任期1〜2年のうちにさまざまな体育活動・文化活動の企画・運営を担当している。   この幹事には、日常業務では比較的創造的部分の少ない職種を担当する従業員が当たるようにしており、クラブ活動によって独創性を発揮できるよう取り計らっている。   またこのクラブの存在により、自ら行動する姿勢が身につき、従業員間のコミュニケーションも盛んになって作業効率の向上などにもつながっている。 肢体不自由者からみた「働きやすい職場」とは ◆ 慰安旅行で知った海外旅行の楽しさ  山崎智津代さん    開業当時から働いていますが、新しい事業所はまったく凹凸のない造りで、非常に動きやすいですね。そして何より明るくて楽しい職場です。   私は四肢体幹麻痺の障害があって体重は27kgで握力はゼロ。当初は体力もなかったのですが、どうしても働きたくて周囲の反対を押し切って仕事を始めました。   会社の慰安旅行を経験して旅行の楽しさを学び、グアム、イタリア、中国、オーストラリアなどいろいろな国に行ってきました。   体力が付いたからか休むこともなくなり、仕事も楽しくなりました。ここにはいろいろな障害を抱えた人がいますが、みんなと一緒にこれからもがんばっていきたいと思います。 ◆ 公私ともに楽しみを与えてくれた職場環境  角(★異体字)倉寛子さん    私は現在印刷業務を行っています。学ぶことが多く、これからも勉強を続けていきたいと思っていますし、それができる環境にあることが幸せだと思っています。   バリアフリーに関しては、重いドアがなかったり狭い通路がなかったりして、活動しやすいですね。環境に不満はありません。   またチェアスキーと出会ってからは、シーズン中は毎週のように雪山に行くようになりました。それまで雪を見たことがなくて感動でしたね。こんなに楽しい趣味を見つけるきっかけをつくってくれた会社に、とても感謝しています。 p.26 優秀賞 構築した制作ネットワークを活用、業務の効率化、人材確保、在宅勤務を軌道に乗せる YKK六甲株式会社 企業プロフィール  YKK六甲株式会社  代表者:代表取締役社長 江口敬一  〒658-0033 兵庫県神戸市東灘区向洋町西4-2 TEL 078-857-3050 FAX 078-857-3054  ◆業種および主な事業内容 社内報、広報誌、取扱説明書、商品カタログなどの印刷(製版・印刷・製本加工)  ◆従業員数 16名(平成18年3月現在)うち障害者14名   <内訳> 肢体不自由者5名(うち重度4名)、聴覚障害者7名(うち重度7名)、知的障害者2名(うち重度1名)  ◆事業所の概要と障害者雇用の経緯    ファスナーとアルミサッシのメーカーで知られるYKK株式会社は、富山県黒部市に主力工場を置いているが、製造ラインの巨大化・自動化による職場環境の変化や車椅子使用者に対する受け入れ体制の未整備などから平成8年ごろから障害者の法定雇用率の達成が困難になっていた。しかも、平成10年から障害者の法定雇用率が1.6%から1.8%にアップすることもあり、抜本的な対策が急務となっていた。この打開策として本業にこだわらず障害者に適した業務を行う特例子会社の設立が検討され、当時年間30億円余り外部発注していたYKKグループの印刷物の一部を受注する事業化が決定した。    平成11年4月、YKK六甲株式会社は、YKKの特例子会社として肢体不自由者2名を含む10名の重度障害者を採用し、神戸市で操業を開始した(神戸市の特例子会社第1号)。    その結果、YKKはYKK六甲と合算して法定雇用率1.8%を達成した。 p.27 障害者が主役の事業運営を推進 操業開始5年目に営業収支黒字を達成、第二段階に向けて大きく前進  印刷業務の特例子会社を始めるにあたっては、関西にある他業種の先行企業にいろいろアドバイスを受けて、当初は単色でボリュームのある取扱説明書から始めた。そして、次第にカラーで技術的にも難易度の高い定期刊行物の社内報や広報誌というように、社員の技術の向上に合わせて、新たな挑戦を重ねてきた。その結果、平成15年には売上高3億円となり、営業収支黒字化を達成し、さらに売り上げを伸ばしている。  一方、ITの活用をベースに、@障害者が主役の事業運営、A障害者雇用と企業運営の両立、を経営方針に掲げて取り組んだ結果、平成16年には社員の中から課長職が、続いて3名のリーダーが誕生した。さらに一層の業務の効率化によって、真に障害者が主役となる会社への第二段階に向けて大きく前進しようとしている。 プリプレス部門を重点に、IT活用による業務の効率化と人材育成を図る  創業以来、YKK六甲では、制作、デザイン、編集、製版などのプリプレスから製本加工などのポストプレスまで一連の印刷を行っているが、なかでもプリプレス工程に重点を置いて人材の確保と設備の拡充を図り、IT活用による業務の効率化や人材育成など、さまざまな問題の解決に努めている。プリプレス工程はパソコンを中心とする職場で、そこでは、肢体不自由者5名(うち車椅子使用者3名)が活躍している。 ここが聞きたい! 障害者が主役の経営 代表取締役社長 江口敬一  在宅勤務の可能性を追求し、第二ステージを目指す  現在、当社には16名が勤務しているが、私と派遣社員の経理担当を除けば、全員が何らかの障害のあるです。当社は「障害のある社員が主役の事業運営」を経営方針に掲げていますが、人員構成からいってもまさに障害者主役の経営なのです。  それだけでなく、平成17年には、待望の課長職に、続いて3名のリーダーが誕生し、真に障害者主役の経営が実現しつつあります。  同時に、当初の予定どおり5年目には営業収支黒字を達成でき、障害者雇用と企業経営の両立も図っています。  また、業務の効率化と人材確保の必要性から、苦労の末、軌道に乗り出した高速通信回線網、制作ネットワーク、オンラインビデオ会議などから職業能力開発校との連携が強化され、YKK六甲をキーステーション(中核)に障害者の能力開発や在宅勤務の可能性が広がってきました。  その意味ではYKK六甲は、第二ステージに向けて大きく羽ばたこうとしています。 p.28 問題点と対応策 1 遠距離の発注者との打ち合わせ、色校などはどのように処理するのか。納期は大丈夫か。   >> 高速通信回線網(GTRAX)を通じて瞬時に遠距離の発注者と画面上での打ち合わせを可能にしたことにより、納期の短縮にも貢献している。      詳細は29Pでクローズアップ 2 プリプレス部門の人材確保が非常に困難であった。   >> 制作ネットワーク構築による職業能力開発校との連携強化により、実践的な教育訓練による人材育成の可能性が生まれる。 3 DTP業務を中心にしたプリプレス部門の人材確保と、この分野の人材の職域拡大を図るために在宅勤務が可能かを模索した。   >> 職業能力開発校の連携強化の結果生まれた実践的な制作ネットワークによる試行的な在宅勤務システムが、人材育成だけでなく在宅勤務の可能性を高めている。 4 障害者のためのバリアフリーは徹底しているが、車椅子使用者から自分たちで戸締まりやセキュリティの管理ができないと、残業が必要になったときに不便であると問題が提起された。   >> 車椅子からのリモートコントロールとセキュリティ管理を可能にし、建物外部まで含め完全バリアフリー化が実現する。 ここが聞きたい! 今後の在宅勤務制度 松岡弘印刷課課長  仕事量と勤務者の数を確保し、確実にスタートさせたい   これまで少人数のプリプレス部門をどう運営していくかに一番頭を悩ませてきました。   具体的には、発注者とのコミュニケーションをどう円滑にするかであり、非常に困難であった人材確保をどう実現するかでした。対策として、高速通信回線網や制作ネットワークが構築され、職業能力開発校との実践的な訓練プログラムが生まれました。   その結果、まだ小規模ながらようやく仕事を発注できるようになってきました。   今後は、発注できる仕事量を増やすとともに、仕事を受ける人員を確保しつつ、時間をかけ確実に在宅勤務制度を軌道に乗せたいと考えています。   そうなれば、能力はあっても通勤が困難なため働けない人たちにも、就労のチャンスを与えることになると思っています。 p.29 クローズアップ 1 高速通信回線網(GTRAX)を通じて瞬時に遠距離の発注者と画面上で打ち合わせ  YKK六甲の場合、印刷物の発注者であるYKK東京本社が500km以上の遠隔地にあるため、制作会議や編集校正、色校正などの打ち合わせに営業社員を必要に応じて参加させることができないという問題点や、納期は守れるか心配であるという問題点があった。当初は、発注者側の担当者に校正のためYKK六甲に来てもらったり、YKK六甲側から制作会議に出張したりして対応していたが、遠隔地間のやり取りが大きな制限であることに変わりはなかった。なかでも色校正は技術的に解決が難しく、納期遅れの原因となり、不信感や受注減少を招くことにもなっていた。  この最大の弱点を解決した方法は、高速通信回線網(GTRAX)を採用し、プリプレス工程の色校正をリモートプルーフによりパソコン画面上で作業できる環境にしたことである。  具体的には、次のような改善を行った。すなわち、発注者(東京本社)と受注者(YKK六甲)を高速回線で接続し、その回線上に共有サーバーを構築した。そして、@発注者側の制作会社で完成させたデータを共有サーバーにアップロードし、A共有サーバーに保管されたデータを校正段階でダウンロードして、色校作業を行うことを可能にした。それにより、発注者側の色校正機で最終稿をプリントアウトして確認願うことも可能になった。  通常、最短でも2日の日数が必要だった工程が、これにより最短5〜8時間で可能になった。 p.30 2 制作ネットワークの構築により職業能力開発校との連携を強化  プリプレス工程のなかでもDTP制作業務での人員不足を補うために募集活動を続けてきたが、現実にはYKK六甲の要件にかなう習熟した人材を確保することが非常に困難なことが分かってきた。そこで、訓練生の実習や指導員の研修など、さまざまな交流があった大阪市職業リハビリテーションセンターとの連携を強化して、中難易度の業務を発注するとともに、人材育成にもなる適切な方策がないかを検討することになった。  その結果、始まったことが、同センターとの間で制作ネットワーク(VPN)を構築し、制作物を同センターに発注し、実践的なプログラムを訓練生に提供することで職業能力の開発・向上を図る取り組みであった。  具体的には、両者の間を高速回線で接続し、その回線上に共有サーバーを構築して、制作の進行状況を確認できる工程管理ソフトを導入した。これまでの紙ベースによる校正を行う代わりに、YKK六甲と同センターがオンラインで同時参加して編集・校正を迅速に行えるローカルネットワーク同様の環境が実現した。  制作ネットワーク構築によってオンライン制作工程管理が可能になっただけでなく、オンラインによるビデオ会議が可能になり、制作の打ち合わせや実践的な技術指導が的確・迅速に行えるようになった。そのため、就職後に企業で求められる技術とのギャップが解消され、企業にとって即戦力となる人材の育成につながっている。 3 人材確保と職域拡大を目的とした在宅勤務の推進  同センターとの制作ネットワークを構築し、オンラインによるビデオ会議を活用した実践的な訓練プログラムが軌道に乗った結果、一通りの実習を終えた訓練生の在宅勤務への道が開かれてきた。現在、YKK六甲ではこれらの訓練生6名のグループ(同センター分室バーチャル工房)に月額160万円ぐらいの中難易度の業務を発注して、さらなる能力の開発・向上をバックアップしている。  それにより、実践的な人材開発と在宅雇用制度の可能性を追求している。このことは、また、現在通勤している社員についても、将来障害の進行などにより通勤が困難になった場合、在宅による勤務継続を可能にするシステムでもある。  今後、この在宅勤務システムの活用が進んでいけば、同社を核とした障害者の人材育成と在宅勤務への職域拡大の輪がさらに拡大していくことが期待できる。 p.31 4 リモートコントロール方式の導入による、施設のさらなる改善  YKK六甲の本社ビルは、重い障害のある人に安全で快適な職場を提供したいとの思いから、徹底したバリアフリーを設計の基本コンセプトにして、機能性、安全性、快適さ、デザインを追求している。  その結果、すべての段差を解消し、ゆとりあるスペースを確保して、誰もが働きやすい職場環境となっており、平成12年には障害のある人が安心して生き生きと生活できる魅力ある街づくりに貢献しているとして、兵庫県から「第1回人間サイズの街づくり賞」を受賞している。  このように、建物内部のバリアフリー化は徹底しているものの、玄関や門扉の開閉とセキュリティシステムの操作は手動式で行われていた。そのため、玄関や門扉の開閉については、健常者や車椅子使用者以外の障害者が行っていた。ところが、クリエイティブな職場であるプリプレス部門では、ときには残業が必要であり、車椅子使用者にとって玄関や門扉の開閉が問題になっていた。  そこで、車椅子使用者から自分たちにも戸締まりとセキュリティの管理をさせてほしいとの要望があり、従来の手動式からキーホルダーでリモートコントロールできるスイッチに変更し、音声による確認の方法も採用した。その結果、建物内部だけでなく、外部も含めた完全なバリアフリー化が達成された。 肢体不自由者からみた「働きやすい職場」とは ◆ まだサポートが必要な在宅メンバーの成長に期待する  プリプレス部門の宮崎達郎さん(平成11年入社)   高校3年のときに事故で下肢障害となり、入院後、兵庫県障害者技術専門学院で1年間CAD製図の勉強をしました。印刷製版の知識がないうえにマッキントッシュを扱ったことがなかったので、最初は大変でした。スタートしたばかりの会社ですから、業務上の先輩は誰もいないわけです。経験のある松岡課長に教わることはありましたが、現実には全員新人でゼロからの出発でした。   現在は、製版の業務分担・外部発注から印刷・製本までの工程管理を行っています。   外部発注先でも長年の付き合いのあるところは心配ありませんが、職業能力開発校関係はまだ熟練していませんので、難易度が低く納期に余裕のあるものを発注するようにしています。もう少し熟練し、人数が増えてくれば、きっと頼りになる存在になるでしょう。 ◆ もっと手話を活用し聴覚障害者とのコミュニケーションを図りたい  プリプレス部門の九門香織さん(平成11年入社)    短大卒業後、普通のOLをしていたのですが、体調が悪くなって下肢障害になりました。   OL時代もパソコンを扱っていましたが、職業能力開発校で印刷製版の勉強をして入社しました。   現在は受発注管理の仕事をしています。見積作業だけでも年間4,000件もありますので、毎日かなり手一杯ですが、今後は手話を活用して、聴覚障害者の印刷加工メンバーとのチームワークをもっとよくしていきたいと考えています。 p.32 優秀賞 徹底した自律で障害者に最適な環境を整え、世界のトップランナーを目指す ソニー・太陽株式会社 企業プロフィール  ソニー・太陽株式会社  代表者:代表取締役社長 長田博行  879-1504 大分県速見郡日出町大字大神字寒水1402-14 TEL 0977-72-9131 FAX 0977-72-9133  ◆業種および主な事業内容   電子電気機械器具の製造・サービス(マイクロフォン、メモリースティック、デジタル・スティル・カメラ・ステーションの製造・サービス)  ◆従業員数 172名(平成18年1月現在)うち障害者数107名   <内訳> 肢体不自由者73名(うち重度42名)、聴覚障害者27名、内部障害者7名(うち重度6名)、その他の障害者1名  ◆事業所の概要と障害者雇用の経緯   「世に心身障害者はあっても仕事に障害はあり得ない」という太陽の家の基本理念(創設者の故中村裕博士の言葉)に、常々「障がい者だからという特権なしの厳しさで健丈者の仕事よりも優れたものを」と考えていたソニーの創始者井深大氏が深く共鳴。昭和53年にソニー株式会社と社会福祉法人太陽の家が共同出資して、ソニー・太陽株式会社が誕生した。そして、昭和56年にはソニー株式会社の障害者雇用を支える特例子会社として認定される。   当初は音響機器の製造を担当していたが、平成2年にはデバイスから最終製品まで一貫生産する国内唯一のソニー・マイクロフォン製造所として位置づけられるようになる。さらに、平成17年からメモリースティックなどのソニーのデジタル製品分野にも進出、新展開を図りつつある。 p.33 障害者が自律運営するものづくり会社 創始者の遺伝子を受け継いだ会社理念  「障がい(害)者だからといって特別視せず、健丈(常)者よりも優れた製品をつくる」というソニー創始者・井深大氏の言葉の遺伝子を、ソニー・太陽はそのまま受け継ぎ、今日に至っている。  会社理念にも、「障害者が自律運営するものづくり会社として、いきいきとした職場づくりを推進する働く障害者のトップランナーとしてモデル工場を目指す」ことを掲げており、障害者の自律に向けてのさまざまな活動が全従業員の目標になっている。 生産革新[日々の改善]活動が中心テーマ  「障害者の自律運営」を掲げるソニー・太陽のこれまでの歩みを振り返ると、それはまさに企業としての自律・自立化の歩みでもあった。  まず、創業から10年間、太陽の家の別府本部敷地内に工場があったが、昭和63年に現在地に工場を新設し、法人として太陽の家からの自立化を図った。さらに、平成3年には工場の増設をきっかけに、ソニーグループ内から供給されていた部品の自給化を促進し、売上を倍増させている。  バブル崩壊以降は、経営は厳しい状況となり、一時期は売上も低迷するとともに従業員数も168人から150人に減少した。このころから、製造現場でのワンマンセル化(自律化)と間接部門の効率化を中心とした生産革新[日々の改善]活動が始まり、本格化する平成11年ごろから、売上も着実に増加している。さらに、平成17年から聴覚障害者を中心にしたデジタル分野への進出を図るとともに、売上を28億円から43億円へ一挙に54%増加させることに成功している。  同社の創業以来の歩みを振り返ると、これらの障害者や企業の自律化に向けてのさまざまな活動こそ、同社の最大テーマであることが明白である。  そして、今や生産革新[日々の改善]活動こそ障害者の自律化を目指した今回の職場改善の中心テーマであることも分かってきた。 p.33 問題点と対応策 1 障害者による工場を自律化させるといっても具体的にどう進めたらよいのか。   >> ワンマンセル化など、さまざまな分野での自律化を中心に生産革新[日々の改善]を展開。      詳細は35Pでクローズアップ 2 さまざまな障害をもつ従業員がものづくりのあらゆる分野で仕事をするには多くの困難があった。   >> 設計段階から、障害者のものづくりにより適した環境を同時進行で考えることで高いレベルの自律を目指す。 3 障害者を多く抱えた職場で、生産性の高い、自律レベルの高い工場をどのようにして実現するのか。   >> ものづくりのあらゆるフィールドで障害者が中心的な役割を担うことにより、障害者に適した環境がより整備され、より高いレベルの自律した工場が実現する。 4 生産革新活動を実践するにあたって、健常者と障害者、特に聴覚障害者とのコミュニケーションをどうするかが問題となった。   >> 社内コミュニケーションを円滑にし、さまざまな問題を解決するうえで、社内ホームページ「誠実に答えます」が大きな力を発揮。 5 真の自律化を実現するには、仕事を通じた実践だけでは不十分であり、従業員一人ひとりに問題意識と高い目標を持たせる必要があった。   >> 新人教育からリーダー(管理者)あるいはマイスター(専門職)まで、充実した社員教育で対応する。 ここが聞きたい! 教育・能力開発にあたっての考え方 人事総務部 宮崎誠部長(左) 人づくり推進室 国森紳義マネージャー(右)  障害者に合わせたものづくりの最適環境を整えることが最大の問題  ソニー・太陽の最大の特徴は、与えられた仕事を単に生産するのではなく、設計に始まって試作、QA(品質保証)評価、デバイスの生産準備から製品完成までの一貫生産ができることにあると思います。普通の障害者工場(創業時の当社もそうでした)では、部品を含めて必要なものを提供され、製品を組み立てるだけの所がほとんどで製品に合わせて設備や作り方を考えますが、当社は一貫生産によって障害者に適した環境を考慮し、作る側の障害者の立場に立って物を作ることができます。  それは、生産革新活動やコンカレント(同時進行型)の考え方が従業員の間に定着し、創業以来の方針である自律化がより高度に発揮されるようになった結果、初めて可能になったものです。また、一貫生産が進むことにより、さらに自律化が促進され、より高度で生産性の高い一貫生産が可能となり、好循環が生まれてきています。  今後は、世界中の働く障害者の工場のトップランナーとの自覚をもって、社会のために貢献してきたいと考えています。 p.35 クローズアップ 1 生産革新[日々の改善]活動を展開し障害者にとって働きやすい職場を実現  ソニー・太陽では、障害者が生き生きとした生活ができるように、創業以来、自律・自立を促進する活動を進めてきた。しかし、この活動のベースとなる生産革新[日々の改善]活動が始まった時期は、バブル崩壊以降の平成7年ごろからで、本格的に展開した時期は平成11年からである。  従業員一人ひとりが日々改善の意欲をもって行動しつづけ、生産革新活動を文化として育むようになれば、きっと素晴らしい成果が得られるはずだ。この壮大ともいえる最終目標を信じて、地道な活動が日々開始されたのである。  その結果、簡易溶着ホッチキスなどの冶工具の改善、車椅子ワンマンセル※化、昇降機付き作業机の改善などが次々と実現、障害に合わせて能力を最大に発揮するために最適の冶工具や設備が開発されてきた。今や高度な製品をすべて一人でつくるワンマンセル化が可能となり、その数も日々増加している。  具体的には、毎週水曜日に生産革新実践会が開かれて、職場ごとに成果を確認、月末には全社で大実践会を開催、成果を発表するとともに、総括をすることにしている。  この間の具体的成果は明らかで、平成11年4月に具体的な活動がスタートして以来、5年後の平成16年3月には人を生かす「活人面」で31人分の仕事を減少させ、その分新しい仕事を可能にすることに成功した。これは生産効率では42%のアップということになる。同時にスペースを生かす「活スペース面」では無駄な机を短くするなどの積み重ねで1,749uのスペースを生み出すことに成功している。  これらの地道な努力の結果、この間、150人から12人ほどの増員により、売上を16.3億円から28億円へ70%以上増加させる成果に結びついている。  ※ワンマンセル…1人で製品を完成する方式 p.36 2 コンカレント(同時進行型)の考え方に立ち、最適な環境を整備  現在、ソニー・太陽では本社との共同設計をはじめ、ものづくりに必要な多くの機能を自社で賄うことができるようになった。  創業当初は、部品提供はもとより、商品企画から設計、試作、QA(品質保証)評価に至るまでソニーグループの各社が担当して、自社では生産準備と生産を行っているだけであった。これでは自律とは名ばかりと、自律化への努力を積み重ねた結果、グループ各社とのコンカレントな考え方に立って、設計から試作やQA評価までは一貫して行う体制が整ってきた。  そのため、製品の設計段階から障害者のものづくりに最適な環境を整えることが可能となり、より生産効率の高い工場運営が現実的になってきた。現在のところ、商品企画は本社に任せているが、この分野での共同化も近い将来実現するはずである。 3 ものづくりのあらゆるフィールドで障害者が中心的な役割を担う  コンカレントな考え方が徹底されるようになり、障害者により適した環境が整った結果、現在ではほぼあらゆる職場で障害者が中心的な役割を果たすようになってきている。  例えば、部品購買では車椅子の女性、部品検査では車椅子の男性、製造技術では歩行困難な男性、生産技術では聴覚障害の男性、製造のグループリーダー(係長)は車椅子の男性、組立作業では車椅子の男女、クリーンルームのデバイスや実装機では聴覚障害の男性、品質保証では車椅子の男性、サービスやシステム管理では肢体障害の男性というように、ほとんどの職場で障害者が大活躍している。  この結果、コンカレントな考え方が各職場の隅々まで行きわたり、障害者に適した環境がより整備されるとともに、より高いレベルの自律した工場へと前進することが可能となった。現在のところ障害者がいない部署は経理部門だけであるが、来年度には障害者が入社する予定である。 p.37 4 社内ホームページ「誠実に答えます」がさまざまな問題解決に大活躍  ソニー・太陽の社内ホームページには、「私のアイデア使ってください」「誠実に答えます」というページがあり、改善への提案等を含め広く意見を求め、作業者一人ひとりの声に全員が注目、お互いに誠実に答えるという習慣がすっかり定着している。これにより、生産革新[日々の改善]活動の面で有効なのは当然だが、何よりも社内コミュニケーションを促進する点で重要な意味をもっているようだ。  そもそも、情報面で孤立しがちな聴覚障害者から現状では生産革新活動に積極的に参画しにくいとの指摘から考え出された「誠実に答えます」だが、障害者と健常者、中でも聴覚障害者とのコミュニケーションでは大きな力を発揮している。このホームページでの表現力の面では誰でも対等であり、健常者の悩みに障害者が的確に答えるなどは日常的であり、特に聴覚障害者の活躍ぶりが目立つという。 5 充実した社員教育で管理者や専門職を育成  仕事を通じて障害者の自律を促すには、人材育成・教育は不可欠である。ソニー・太陽では、「人づくり推進室」を設け、各自の各段階でのモチベーションのアップに力を注いでいる。  まず、新人については、必要な技能はもとより、社会性、思考方法、情報収集の仕方に至るまで指導している。特に入社後3カ月は新人一人ひとりと指導者が「コミュニケーションノート」を通して毎日情報交換するほどきめの細かい教育を行っている。  そして、新人のときから将来の進むべき道を示して自己研鑽できるようにしている。作業者の進むべき道として、管理者(総合職)の道とマイスター(専門職)への道の選択肢を設けているが、特にマイスターについては技術・技能・人格などあらゆる面で尊敬される人材と定義している。また、マイスターになるには、独自のマイスター制度のもと、さまざまな技量を身につけ、指定の認定試験に合格する必要がある。  これとは別にソニーグループ全体でものづくりマスター制度があり、現在、同社には2名のものづくりマスターが存在する。  これを補完する教育としては通信教育制度があり、人づくり推進室が科目の選定から解説まで適宜サポートしながら、積極的に支援している。費用についても受講修了後、半額を支給することになっている。その結果、年々受講者が増え、全従業員の約38%が受講するほど成果を上げている。 肢体不自由者からみた「働きやすい職場」とは ものづくりマスターの姫野富幸さん(S63年入社) ◆ 今後は「自律したものづくり」を育てるべく、後輩の指導に経験を生かす  これまで録音専用マイクロフォンC38Bやスタジオ録音用マイクロフォンC800Gを作ってきましたが、平成16年から高品質のヘッドフォンQUAULIA010を1人で作っています。品質から納期までワンマンでコントロール(自律)できていることからマイスターに認定され、ソニーグループ全体のモノづくりマスターにもなりました。  職場改善で私ができることは、後輩たちが一人でも多く、自律したよりレベルの高いものづくりになるように、これまでに得てきたものを少しでも多く伝えるようにしていきたいと考えています。 p.38 優秀賞 安全で快適な職場づくりをテーマに世界レベルのユニバーサル工場を目指す オムロン太陽株式会社 企業プロフィール  太陽の家の建物の3階にオムロン太陽がある  オムロン太陽株式会社  代表者:代表取締役社長 江藤秀信  〒874-0011 別府市大字内竈字中無田1407-2 TEL 0977-66-4447 FAX 0977-67-5112  ◆業種および主な事業内容  電気機械器具(リレーソケット・スイッチなど)の製造  ◆従業員数 49名(平成18年1月現在)うち障がい者数26名   <内訳> 肢体不自由者26名(うち重度24名)  ◆事業所の概要と障がい者雇用の経緯   障がい者を自立した労働者として育成するためにオムロン株式会社と社会福祉法人太陽の家が共同出資してオムロン太陽株式会社が創業したのは昭和47年のこと。「保護より機会を」をモットーに障がい者の自立した働く場づくりをすすめる太陽の家の理念に、企業の公器性(社会貢献)を重視する社憲をもつオムロン株式会社の立石一真創業者が共鳴、福祉施設・身障者・民間企業の協力による、わが国初の福祉工場としてスタートした。その後、昭和52年にオムロンの特例子会社としての承認を受けるとともに、より職能的な重度障がい者を雇用するために第2工場を増設する。   バブル崩壊以降、障がい者雇用の面でも一時低迷した時期があったが、国際規格のISO9001(品質)、ISO14001(環境)、OHSAS18001(労働安全衛生)の認証を得るとともに、障がい者雇用の職場づくりのあり方を見直し、平成16年(2004年)に2010年までのグランドデザイン(GD2010)を制定。現在、障がい者工場としてのハンディを克服しつつ、オムロングループの中で自律と自立を目指した企業活動を展開中である。 p.39 一般工場との格差を限りなくゼロに 「人と機械のベストマッチング」を図る  オムロン太陽は、創業以来、障がい者が労働者として自立できる職場づくりを目指してきた。そのため、オムロングループの他の工場と同様に、利益を追求し、従業員に対しては成果に応じて給与を支給するシステムを採用している。  しかし、オムロングループの他の工場並みの生産性や利益を追求するには、障がい者に適した治工具の改善はもとより、健常者に比べて、よりリスクが大きくなる労働災害の徹底した防止を図ることで、可能な限り格差をゼロに近づけなくてはならない。  オムロン太陽が、職場改善事例として最も優れているのは、安全で快適な職場づくりを目指す極めて地味で緻密な努力の積み重ねによって一般工場との格差を限りなくゼロに近づけたことにある。具体的には、障がい者の残存機能を見極めて、あらゆる職場で「人と機械のベストマッチング」を図ることで生産性を向上させ自立を目指すとともに、一人ひとりの生産機能を拡大して自己完結型のマネジメントを進めることで自律を目指そうとしている。既に、製造だけでなく計画から調達、流通(納品)まで行っているが、将来的には技術開発からQA(品質保証)まで行う、主管工場になることも視野に入れている。  一方、いくら生産性の向上を目指しても、他の工場と全く同一の生産性・利益を達成することは現実にはなかなか困難である。しかし、障がい者雇用の積極的な活用によって健常者並みの生産性を実現することこそ、オムロングループの社会的な公器としての企業価値を高めるうえで大きく貢献していると、グループ内では評価されている。 p.40 問題点と対応策 1 多くの障がい者を雇用する工場として、労働災害から障がい者の残存機能を守る責任がある。その理由として、災害が発生した場合、通常の工場に比べ、リスクの可能性が大きいことが挙げられる。   >> OHSAS18001(労働安全衛生マネジメントシステム)の導入で労働災害から残存機能を守ることで、リスクの小さいユニバーサル工場を目指している。 2 生産工場の製造工程ごとの潜在的な危険有害要因を見付けだすのは難しい。そのうえ、障がい者による工場の危険な有害要因を正確に把握するには、障がい者特有のリスクを加味しなくては不可能である。   >> 障がい者特有のリスクに対応した独自のリスクアセスメントの実施により、危険有害要因を駆逐した。 3 リスクアセスメントだけでは解決できない軽度の「赤チン災害」がしばしば発生。   >>「赤チン災害」も障がい者にはリスクが大きく、この撲滅なくして自律したユニバーサル工場の実現は困難である。    「赤チン災害」撲滅のために独自の「ヒヤリ・ハット運動」を展開した。      詳細は42Pでクローズアップ 4 危険がどこにあるのか、どうすれば安全な作業が実現するかを真に理解するには、より高度な教育が不可欠である。 >> 社員教育を強化することで安全・快適な職場づくりをバックアップした。 5 リスクアセスメントや「ヒヤリ・ハット運動」だけでは、労働災害は撲滅できず、高品質のユニバーサル工場はなかなか実現しなかった。   >>「整理・整頓・清掃・清潔・躾」(5S)の遵守により、労働災害をなくし、高品質の生産を行った。 ここが聞きたい! 緻密なシステムを地道に実行して効果を上げるには? 江藤秀信 代表取締役社長  やる気と能力を引き出すために社内外で多彩な教育を実施  私たちが最初に国際規格のISO9001を導入した平成8年頃には、障がい者の工場でそこまでレベルの高い目標を持つのは、わが国ではまだ例がありませんでした。その後、ISO14001、OHSAS18001と、次々と国際規格を取得、これで品質、環境、労働安全衛生の3本柱が整ったことになります。これを中心に据えて、従業員一人ひとりを巻き込んで実行するシステム、すなわち@独自に改善したリスクアセスメントだけでは防ぎ切れない小さな「赤チン災害」を撲滅する、A「ヒヤリ・ハット運動」を別の角度から補う、B5S(整理・整頓・清掃・清潔・躾)運動、の3つの緻密な実行システムが網の目のように張り巡らされています。  これらを日常的に地道に実行して有効に機能させるには、職場の従業員一人ひとりの意識と能力が不可欠です。このやる気と能力を引き出す効果を発揮しているのは、社内外で実施している多彩な教育(問題点と対応策C参照)だと理解しています。 p.41 1 OHSAS18001の導入で労働災害から残存機能を守る  障がい者が働く工場として、オムロン太陽が最も注意した点は、残された機能まで労働災害から奪われることがないようにという点であった。これは、障がい者に労働災害が及ぶと、健常者よりもリスクが大きくなる可能性が高いためである。  そこで、他の工場並みの生産性を達成する大前提として、小規模事業所でありながら、OHSAS18001(労働安全衛生マネジメントシステム)を導入することで、労働災害の防止を徹底した。そのことにより、生産性の高い自律と自立を目指しつつ、他の工場並みのユニバーサル工場を実現することにしている。 2 独自のリスクアセスメントの実施で危険有害要因を駆逐  OHSAS18001の導入に合わせて、労働安全衛生委員会の設置と運営を開始するともに、このシステムの最大の特徴であるリスクアセスメントを実施、社内から危険有害要因を排除する運動を推し進めてきた。リスクアセスメントを実施するに当たっては、「リスクアセスメント手順」のように製造工程ごとに潜在的な危険有害要因を洗い出して、どの程度の被害を及ぼすかを見積もり、その大きさなどからランク付け、是正優先度を付けて高い順に改善していく。  実際の実施に当たっては、厚生労働省監修のアセスメントに準拠しながらも、歩行時、休憩時などにも目を向けること、車椅子、補助具使用の事故の割合評価を取り入れる、同じリスクでも障がい者にとってより重くなる場合にはランクを高くするなど、同社に適した評価ができるように工夫・改善したリスクアセスメントを導入している。 ●リスクアセスメントの手順  @範囲の決定  A観 察  B危険有害要因の調査(設備、溶剤、手段、移動など)  C危険有害要因洗い出し(発生までの現象を分析)  D洗い出し後、ハンディを考慮した見積もりを実施  E全体を評価してランク決定をする(ランクの高い順に是正する)  その結果、下表のように死亡事故に結びつくようなランクXのリスクは、実施を開始した平成13年から存在しなかったが、リスクの高いVやWは相当数発見することができた。その後、危険有害要因の駆逐ための活動を続けたことにより、年々ランクの高いものから減り続け、大きな成果を上げている。  成果はそれだけではない。危険有害要因の駆逐のための運動は、労働災害撲滅にも結びつき、平成13年1月9日以来現在まで無災害日数を更新し続けている。 ●リスクアセスメントの具体的成果   平成13年  14年 15年 16年 T 768 586 636 256 U 1225 1157 1289 220 V 389 267 197 1 W 30 0 0 1 X 0 0 0 0 p.42 クローズアップ 3 「赤チン災害」撲滅のために独自の「ヒヤリ・ハット運動」を展開  リスクアセスメントを積極的に展開してきたことにより、確かに労働災害がなくなり、危険要因は大幅に減少してきた。しかし、赤チンをつける程度で済むことから名付けられた「赤チン災害」までを完全に撲滅することはなかなか困難であった。健常者の場合には、無視してもよいと思われる「赤チン災害」でも、障がい者の場合には大きな労働災害に結びつく可能性もある。  そこで、過去に発生した「赤チン災害」を分析すると、日常的でない作業や社員の思わぬ行動がその原因となっており、リスクアセスメントや安全衛生委員会のパトロールでも発見されにくいことが分かってきた。それはまた、他人から見れば危険な行為なのに本人が気づいていなかったり、作業の途中でその危険性に気づくような行為であったりして、これらを正面から受け止めて分析すると、危険源が相当数にのぼることも判明した。  オムロン太陽では、これらの行為を「ヒヤリ」としたり「ハット」したりする危険=「ヒヤリ・ハット」として、全員がこれらの危険に目を向けて気づくように、正面から取り組み、「ヒヤリ・ハット運動」として展開することにした。  具体的には、年間1人1件の「ヒヤリ・ハット」の提出を義務づけ、「どこで、どんなとき、どうなった(どうなる)」という危険を指摘すると同時に、その改善案まで書かせることにしている。そして、この改善提案を「ヒヤリ・ハット・シート」として、掲示板に掲示することで、職場全体に啓蒙・普及し、「赤チン災害」の撲滅を図っている。  平成17年4月〜12月までの9カ月ですでに目標を大きく上回り、1人1件の達成率は121.9%に達している。 ◆ 車椅子の接触・転倒防止のステッカーを貼るように提案 機械のメンテナンス作業を担当している後藤孝正さん(平成4年入社)  日頃、特に気を配っているのは、車椅子での接触・転倒の防止についてです。ヒヤリ・ハット・シートでも提案して、その一つがエレベーターのドアに「おりる人優先」のステッカーを貼ることで生かされています。今後とも安全についての意識をしっかり持ち続けて、具体的な提案をしていくようにして、職場でも積極的な役割を果たしていくようにしたいと思っています。 p.43 4 社員教育の強化で安全・快適な職場づくり  「知識がなければ法の遵守も安全な作業も望めない」ということから、作業リスクに密接に関係のある衛生管理者免許や有機溶剤取扱主任などの資格はもちろん、KYT(危険・予知・トレーニング)研修にも計画的に参加させることで、危険源がどこにあるのか、安全作業の進め方について積極的に学ばせている。  ・資格取得  プレス作業主任、第1種衛生管理者、有機溶剤取扱主任者、第2種酸素欠乏危険作業主任、乙種(第4類)危険物取扱者、甲種防火管理者、安全管理者  ・外部研修  フォークリフト、KYT(危険・予知・トレーニング) 5 「整理・整頓・清掃・清潔・躾」(5S)で労働災害ゼロを目指す  オムロン太陽では、前述したようにISO9001(品質)、ISO14001(環境)、OHSAS18001(労働安全衛生)の3つを柱に障がい者中心の工場運営に努めている。現実に5Sの行き届かないところでは転倒などの労働災害が多く、生産効率が良く高品質の生産は望めないことから、5Sを特に重視。具体的な活動としては、きっちりとしたルールの展開・維持を図るため、月1回パトロールを実施している。そして、その結果を点数に置き換えて、総合点が100点満点で95点以上になるよう、目標を定めて活動している。  この5S運動も「ヒヤリ・ハット運動」と連動することで、その改善提案も具体的で積極的になり、事故の減少にも成果を上げるようになった。その結果、オムロングループの5Sコンクールで3年連続で最優秀賞を受賞している。 肢体不自由者からみた「働きやすい職場」とは 製品の外観検査を担当している折林香代子さん(平成5年入社) ◆ 心のケアにも気を配り、小さな危険にも気がつく職場にしたい  日常的な作業の中から小さなことでもケガの可能性がないか、危険を予測するようにして、ヒヤリ・ハット・シートに反映するように心がけています。  具体的には作業者に合わせて作業台の高さを調整できるように提案して採用されました。今後の希望としては、心のケアにも気を配り、より明るく楽しい職場にするようにしてほしいと思います。そうすれば、きっと小さな危険にも気がつくようになり、安全面でもプラスになるはずです。 p.44 奨励賞 障がい者と健常者がともに働きやすいユニバーサルな環境を構築 特定非営利活動法人 ボランティア杜の家 企業プロフィール  特定非営利活動法人 ボランティア杜の家  代表者:理事長 保木本茂雄  〒004-0846 北海道札幌市清田区清田六条3-1-1 TEL 011-888-6670FAX 011-888-6678  ◆業種および主な事業内容 社会保険・社会福祉・介護事業、訪問介護事業  ◆従業員数 65名(平成17年6月1日現在)うち障がい者数2名   <内訳> 肢体不自由者2名  ◆事業所の概要と障がい者雇用の経緯   平成10年6月、保木本理事長が自宅を拠点にして一人で始めたガイドヘルプ(移動介助)のボランティアが活動の出発点。平成13年10月には北海道知事から特定非営利活動法人に認証され、本格的に介護サービス事業を開始した。   平成15年7月、支援費事業所中央センターの開設に際し、理事長と知的障がいのある子供の家族で組織する「ぴっぷる」代表者との出会いを契機に、障がい者との交流が始まり障がい者雇用の呼び水になる。平成16年6月には、ハローワーク札幌東の紹介で、介護支援専門員資格取得者の重度身体障害者(両下肢まひ2級の車椅子使用者)を雇用することになった。 p.45 「社会に恩返しをしたい」との思いで介護サービス事業をスタート 障がい者になって見えてきた世界  「中村さんと成澤さんには本当に頑張ってもらっています」。保木本茂雄理事長は満足そうにこう語る。  建設業を営んでいた保木本理事長は、48歳のときに心臓を患い、内部障害一級の身体障害者になった。仕事への復帰も難しく、第二の人生を考えた末にたどり着いた新しい仕事が、ボランティアと福祉だった。  保木本理事長は、「自分自身が障がい者になってみると、それまで考えたこともなかった世界が見えてきたし、障がい者の方の気持ちがほんとうによく分かるようになりました。そこで、社会に恩返しをするつもりでこの世界に飛び込んだ」という。  北海道の諮問機関、障がい者会議の公募委員を務めたのがきっかけとなり、以後ガイドヘルプボランティアで経験を積んだ。平成12年4月には、介護保険制度施行に合わせて在宅系サービスも立ち上げ、札幌市の介護基準該当事業所の認定を受けた。 「それからの半年間ぐらいは、他のNPOなどのお手伝いをしていましたが、自分たちもNPOという社会的に認知された存在として仕事をしたかったので、翌年の10月にNPOの認証取得を受けたのです」  そして現在では、道内に5事業所と65名のスタッフを擁する団体にまで成長させている。 「これまでの介護保険事業だけでなく、今では障がい者や児童の居宅事業のほか、通院移動の介助やガイドヘルプなど幅広く事業を展開しています」と保木本理事長は胸を張る。こうしたエネルギッシュな活動の原点は「社会へ恩返しをしたい」という気持ちにあることは言うまでもない。 建設業の経験を生かして理事長自らが設備を改修  しかし、ここに至るまでの道のりは決して平坦ではなかった。 「平成10年に始めた当初は、自分の家でやっていたんですよ。子供もまだ小さかったので、事務所なのか自宅なのか分からないような状態でした。そうこうしているうちに、ヘルパーさんの出入りも多くなり、駐車場も確保しなければならなくなったので、札幌市清田区の1DKの小さなアパートの一室に移ったのです」  その後、平成15年7月、介護支援費事業の認可を受け、中央区に中央センターを設置した。それから1年ほどした平成16年6月、重度身体障害者の介護支援専門員である中村貴子さんが応募してきた。  中央センターとはいっても、居宅介護支援事業所として使用していたのは、築後50年の老朽化した木造アパートだった。両下肢まひ2級で車椅子を使用している中村さんが勤務するには、数々の改善が必要であった。  玄関先には30センチの段差があったので、かつて建設業を営んでいた保木本理事長自らが車両専用段差解消ステップを仮設した。トイレも和式で、中村さんが利用できるものではなかったので、風呂場を簡易トイレに改造して急場をしのいだ。 「理想のバリアフリー環境からは程遠い状況でしたが、本人は本当によく頑張って勤務をしてくれました」と保木本理事長は当時を振り返る。  しかし、今後も中村さんに継続的に勤務してもらうためには、そのままの状態を続けるわけにはいかない。また、介護支援専門員の資格を持っているとはいえ、車椅子の中村さんにはどうしても業務上の限界がある。これらの問題を保木本理事長は素晴らしいアイデアと熱意で解決していった。 p.46 問題点と対応策 1 介護支援専門員の業務が円滑にすすめられるか不安があった。   >> 健常者の介護支援専門員とペアを組んで仕事をすることで、業務が効率よく行われるようになった。 2 雇用した際、利用者側からの偏見と誤解を危惧していた。   >> 心遣いの行き届いたサービスを提案することができる資質を兼ね備えていたうえ、ペアで担当する仕組みも評価され、利用者から偏見なく受け入れられた。 3 その後、事業を集約した厚別事業所でも車椅子では勤務しづらい点が多々あった。   >> 賃貸物件の所有者の理解と厚意のもと、作業施設工事と福祉施設工事を計画し、施設の改造を行った。      詳細は48Pでクローズアップ 4 施設の改造に当たって、経済面の負担が心配された。   >> 第1種作業施設設置等助成金と障害者福祉施設設置等助成金を活用した。 ここが聞きたい! 雇用の場はもっと広がる! 保木本茂雄理事長  障がい者には大きな可能性がある  雇用するに当たっては、自分も障がい者ということもあり、まったく違和感がありません。それに、障がい者が言いたくても言えない部分や我慢している部分などよく分かる。私はそういった部分を取り除いてあげるようにしています。  しかし、それは私だけが取り除いてあげたんじゃ駄目で、私が感じたことを健常者の従業員に伝えて、教育するということもあります。障がい者に対しても、「臆することはないんだよ」といつも言ってあげているので、職場では何にも遠慮はありません。好きなこと、勝手なことを言ってますよ(笑)。  成澤さんはNPOの紹介でウチに来てもらっているのですが、ハローワークの紹介だったら給与の何分の1かは助成金が出ますけど、彼女の場合は出ない。そうした点が改善されれば、雇用の場も広がるのではないでしょうか。  障がい者の方にはもっともっと社会に参加してもらいたいですね。目が不自由だとマッサージ師など職種が制限されるということは哀しい。視覚障がい者と目の見える聴覚障がい者が二人一組になれば、お互いができない部分を補いあって寿司屋ができる。みんなには「起業もできるんですよ!」ということを教えていきたい。今後、厚別ヘルパーステーションに、そば打ちのブースやにぎり寿司のブースなどをつくって職業訓練のようなことをしていければと考えています。そうすれば、雇用の幅もきっと広がるはずです。 p.47 1 健常者とペアを組むことで業務を効率よく分担  平成16年6月、両下肢まひ2級で車椅子を利用している中村さんを雇用したとき、中村さんはすでに介護支援専門員の資格を取得していた。  介護支援専門員とは、介護を必要としている人に合った総合的なケアプラン(介護サービスの利用計画)作りをする人のこと。利用者や家族の希望を聞きながら、サービス事業者との連絡や調整を本人に代わって行うだけに、利用者にとってもサービス事業者にとっても、なくてはならない存在だ。中村さんの担う役割は重要で、当然それなりのスキルがなければ務まらない。  介護支援専門員になれるのは、「保健・医療・福祉の各分野で5年(または10年)以上の実務経験があり、筆記試験に合格後、実務研修を終了した人」とされており、健常者でも根気強く勉強しなければならない。中村さんはこの難関を突破してきたわけで、「事務能力ばかりでなく企画や提案力もあり、さすがと思わせる」(保木本理事長)ところがあるという。  しかし、介護支援専門員はその仕事の性格上、利用者の居宅を訪問して、どんな状況で生活しているのかを的確に把握しなければならない。この点、車椅子の中村さんには明らかにハンディがあった。  そこで、保木本理事長が考え出した方法が、「中村さんと他の健常者の介護支援専門員がペアを組んで2名の介護保険利用者を共有し、業務分担しながら担当する」という方法であった。  業務分担の具体的方法は、健常者の介護支援専門員が利用者訪問のための外勤業務を中心とした高齢者介護型の役割を担当し、中村さんは内勤業務を中心とする事務担当型の役割を担当するというもの。  この結果、車椅子使用の中村さんは専ら内勤業務に従事することが可能になり、事務担当型の介護支援専門員として、最大限の職業能力を発揮することができるようになった。そして、利用者にはより満足度の高い良質のサービスの提供が可能となった。  また、「杜の家」では、事務所の1階でデイサービス事業を行っているが、介護支援専門員にとってはデイサービス事業に通ってくる利用者を見守りながら状況観察し、今後のケアプランに反映させることが重要な業務になるので、その業務が円滑に遂行されるように、中村さんを含む2名の介護支援専門員を1階に優先して配置することにした。 2 体の不自由な状態や気持ちを理解してくれる介護支援専門員  「介護支援専門員が重度身体障害者だと知ったら、介護保険を利用する本人や家族から、人を替えてくれと言われたり、能力を疑われたりするのではないかと、中村さんを雇用した当初は心配もありました」  しかし、保木本理事長たちの心配は取り越し苦労にすぎなかった。中村さんが非常に明るい性格で、何事にも積極的に取り組み、常に細部にわたる心遣いの行き届いたサービスを提供できる資質を備えていたことが幸いしたのだ。中村さんは、利用者やその家族にうまく溶け込むことができ、誰からも愛される介護支援専門員となった。  もちろん、中村さんと健常者の介護支援専門員がペアを組んでいることで、より質の高いサービスが提供できたことが評価されたという点もある。 「思うように体が動かなくなってきたお年寄りからみると、車椅子を使用している介護支援専門員は、むしろ自分たちの不自由な状態や気持ちをわかってくれるということで、信頼感が増したようです」と保木本理事長。当初の危惧が杞憂に終わり、重度の身体障がい者と健常者が一体となった事業活動を展開できたことに大いに満足しているという。  そして、中村さんが一生懸命に仕事をする姿に心を動かされ、全従業員の総意のもと、平成17年4月には両下肢機能障害2級の成澤利津子さんを事務職として新たに雇用することにもつながった。 p.48 クローズアップ 3 雇用環境改善プロジェクトチームを組んで車椅子でも働きやすい職場づくりを推進  平成16年11月、札幌市厚別区に厚別ヘルパーステーション事業とデイサービス事業を開設し、同時に、前述の居宅介護支援事業所も同地に移転させ、事業を厚別事業所に集約し効率化を図った。移転先も賃貸物件だったが、幸い所有者の理解と厚意により、限られた間取りの中にあって、中村さんの快適な職場環境を確保するための作業施設工事(玄関スロープおよびトイレ工事)、福祉施設工事(階段昇降機およびドア拡張工事)を計画することになった。  さらに、住環境コーディネーター、建築工事請負業者、理事長、総務管理者、デイサービス事業責任者に、中村さんを加えた6名を構成員とするプロジェクトチームを設置し、雇用環境改善のための工事の計画を策定した。  改善のための工事としては、玄関スロープの設置、玄関ドアの拡張、1階介護支援専門員事務室の設置に伴う車椅子使用者に対応したトイレの設置、2階休憩室の設置に伴う階段昇降機の設置、ドアの取り替え・引き戸とドア幅の拡張を行った。  建築技術面のうち、特に打ち合わせに時間を費やした点は、玄関スロープの設置工事計画だった。車椅子使用者の自力走行を可能にするには、傾斜こう配について1/12を確保することが必要だったが、実際には直線10メートルのスロープ設置は困難なので、5メートルで折り返す方式を採用した。 p.49 4 助成金制度の活用  ハローワーク札幌東から障害者雇用納付金制度に基づく助成金の情報提供を受け、平成16年8月、社団法人北海道障害者雇用促進協会を訪問し、雇用管理面および建築技術面について指導を仰いだ。 「杜の家」では、重度の身体障がい者の雇用継続を図るために、出社から退社までの職業生活全般を見直した結果、雇用環境を総体的に改善する必要があったので、第1種作業施設設置等助成金※1と障害者福祉施設設置等助成金※2を活用している。「2種類の助成金を活用させていただきましたが、今後は、作業施設と福祉施設の区別なく、職業生活全般について総合的に助成される助成金メニューが追加されることを念願しています」(保木本理事長)という。  なお、助成金申請から工事竣工までの経過は次のとおり。  ・平成16年9月22日 障害者雇用納付金制度に基づく助成金の受給資格に関する認定の申請受理  ・平成16年11月18日 助成金受給資格認定決定   助成金の種類:第1種作業施設設置等助成金および障害者福祉施設設置等助成金   認定額合計:500万円  ・平成16年11月21日 工事請負契約締結および工事            着工  ・平成16年12月28日 竣工    中村さんを1階に優先して配置するため施行した職場改善であるが、玄関スロープの設置および玄関ドアの拡張等改善工事を行ったことにより、中村さんは、内勤業務にとどまらず利用者宅の訪問等、積極的に外勤業務も行うようになった。    ※1 第1種作業施設設置等助成金・・・障害者を常用労働者として雇い入れるか継続して雇用している事業主が、その障害者が障害を克服し作業を容易に行うことができるよう配慮された作業施設または改造等がなされた作業設備の整備等を行う場合に、その費用の一部を助成する障害者作業施設設置等助成金のうち、作業施設等の設置または整備を行う場合に支給されるもの。  ※2 障害者福祉施設設置等助成金・・・障害者を常時労働者として雇い入れるか継続して雇用している事業主またはその事業主が加入している事業主団体が、障害者である労働者の福祉の増進を図るため、障害者が利用できるよう配慮された保健施設、給食施設、教養文化施設等の福利厚生施設の整備等を行う場合に、その費用の一部を助成するもの。 肢体不自由者からみた「働きやすい職場」とは ◆ 障がい者を決して甘やかさないことが「働きやすい職場」です  成澤利津子さん    平成17年の4月から「杜の家」で働いていますが、周りの人たちとは仕事に限らずいろんな話をしたりして、毎日がとても楽しいですね。   主な仕事は領収書と出勤簿の整理で、領収書のデータは整理した後、パソコンに入力しています。領収書は糊付けしたりするので、少し時間がかかりますが、結構楽しんでやっています。周りの人たちはとても優しい人たちばかりです。厳しいときもありますけどね(笑)。   一般の会社に初めて勤めさせていただいているわけですけど、障がい者だからといって甘やかせるんじゃなくて、みんな同じだという感じで仕事をさせてもらえているのがうれしい。設備も十分に整っていますから、充実した時間を過ごしています。 ◆ 仕事を任せてもらえることが大切  中村貴子さん    何をするにも普通の人の2倍、3倍くらいの時間がかかりますが、仕事を任せてもらえることにやりがいを感じます。自分にも自信が持てるようになって、何事にも挑戦するようになりました。精神的に強くなったと思います。   また、仕事に少しは役に立てていると思うことで、自己満足かもしれませんが、職場を通じて社会の一員になれた気がしています。職場の人たちは、私を障がい者として扱うのではなく1人の人間として扱ってくれています。こうした人間関係は、障がい者が働くうえで重要なことではないでしょうか。 p.50 奨励賞 責任のある職場環境でハードからソフトまでの問題点を絶えず改善 株式会社ダイキンサンライズ摂津 企業プロフィール 株式会社ダイキンサンライズ摂津 代表者:代表取締役社長 應武善郎 〒566-0042 大阪府摂津市東別府4-4-9 TEL06-6349-3173 FAX06-6349-4083 ◆業種および主な事業内容  建設機械の自動潤滑システム、ポンプ・分配弁の組立および加工、空調機部品組立、化学品製造などを行う一般機械器具製造業 ◆従業員数  52名(平成17年4月1日現在)うち障害者数48名  <内訳> 肢体不自由者24名(うち重度22名)、聴覚障害者14名(うち重度14名)、知的障害者10名(うち重度7名) ◆事業所の概要と障害者雇用の経緯  平成5年に創業。大阪府と「障害者福祉都市宣言」をした摂津市、ダイキン工業が出資する第三セクター方式の特例子会社。府内で2番目、全国で23番目の会社となる。重度障害者多数雇用事業所であり、ダイキン工業の社会的貢献、大阪府・摂津市の施策に対する協力、障害者法定雇用率の達成が理由にあった。  業務内容は、グリース潤滑装置用部品機械加工組立、電気電子部品組立、包装・袋入れ・完成仕上げ、機械部品組立、化学品製造、空調機用輸入部品仕分けおよび納品、廃却エアコン・フロンガス回収分別など幅広い。仕事の100%をダイキン工業および関連会社から受注しており、現在の売上高は約15億円(平成16年度)に上る。  健常者数はわずか4名のみで、従業員の約92%が障害者という高い割合となっているのも特徴のひとつ。  これまで朝日新聞社会貢献・障害者雇用賞、職場改善コンテスト最優秀賞(労働大臣賞)など数多くの賞を受賞している。 p.51 特例子会社であれ、あくまで企業らしさを追求 独自採算を図るために完成品製造を業務とする  大阪府・摂津市・ダイキン工業の出資により誕生したダイキンサンライズ摂津。従来からダイキン工業は積極的に障害者雇用を行ってきていたが、障害者を主体とする株式会社は初めてのこと。採算が成り立つ経営をしていくにあたり、生産性が高くて付加価値があり、従業員にやりがいをもって働いてもらえるような仕事が望まれた。  その結果、簡単な部品よりも完成品をつくるほうがよいと判断し、建設機械の関節部などに使う自動給油装置「ルブマックス」の製造を決意。油機事業部で生産技術の仕事をしていたメンバーを中心に工場の設計に取りかかった。重度下肢障害者を主とする肢体不自由者の雇用を対象にしていたため、車椅子での作業を前提にし、設備の仕様を決めていった。  最新式の機械加工設備や量産ラインを整える一方で採用活動も行い、順調に進行。  平成6年5月に竣工式・入社式を迎え、6月に開業の運びとなった。 業務内容の方向転換を図り不況からいち早く脱却  しかし、開業してからの2年間は大赤字に陥っていた。工場開設による設備投資ももちろんあるが、バブル経済の時期が終了して建設大不況時代が到来し、製品の売上が減ったことと、予定していた製造コストで製品ができなかったことが大きな要因であった。このままではまずいと危機感を感じた社長は、単一製品の製造工場というスタイルを打ち崩し、ダイキン工業にどんな仕事があり、何か受注できないかと各事業所、各部門に働きかけていった。その結果スポット的な仕事が入り、操業2年目の平成7年度決算からは単年度黒字化を達成するようになった。  平成10年からは職域拡大のために聴覚障害者を受け入れ、これまで困難だった搬送作業や化学品製造などが可能に。平成13年には環境ISO14001の認証を取得し、職場環境に対する取り組みを一層高めている。 p.52 問題点と対応策 1 福祉的な就労から脱却したかった。 >> 責任を与え、障害者のモチベーションを高めるようにした。 2 仕事への意識を高めたかった。 >> 健常者の割合を減らし、障害者が主役の体制にした。 3 業務拡大に向け、職域を広げたかった。 >> 資格取得を促進し、職域拡大につなげた。 4 ライン変更などにより、作業効率を向上しづらかった。 >> その都度、最良の工程になるよう見直したり、足りない部分は自作するなどしてフォローした。    詳細は54Pでクローズアップ 5 効率化のために継続的な作業の改善を進めたかった。 >> 意見提出を奨励する制度を始めた。 6 業務規模が拡大するにつれ、生産・納期・在庫の管理が追いつかなくなってきた。 >> システムを刷新し、肢体不自由者の負担を軽減するよう配慮した。 7 職場環境に一部不満があった。 >> トイレや休憩所での設備を充実させた。 ここが聞きたい! 障害者をメインに据えた業務遂行 應武善郎代表取締役社長  同一作業だけでは立ち行かなくなったことが逆に従業員の就労意欲を高めた  ただ福祉的に就労するのではなく、一人前の従業員として成長してもらって、それに見合った報酬を支払うという考えが当初から根底にあります。自分で努力してもらう。普通の会社を目指したんです。  当初、特定の製品を製造して利益を上げるという計画がうまくいかずに売上が上がらなかったのですが、逆にそれがよかったのではないかなと思っています。何でもできるように努力しよう、  チャレンジしていこうという姿勢が身につきました。資格を取ったり訓練研修をしたりするようにもなりました。同じ作業だけをこなす単純作業であれば、やがて機械に置き換えられてしまうものです。人でないとできない部分を、これからもやっていきたいと考えています。 p.53 1 職制や作業体制の変更で仕事への意識を向上  採算が成り立つ経営を行わなければならなかったダイキンサンライズ摂津は、もとより障害者が主役となる会社のイメージを持っていた。  そのため、納期・品質・コストなどに関しては、毎朝のように厳しいことをいう。当然、納期どおりに部品が入らないと、工場長からの叱責が待っている。仕事をやらされているのではなく、自分たちの仕事ぶりが会社の業績を左右するという実感を得ることで、携わっている仕事の重大さを確認し、責任感へとつながっていく。  平成10年からは新たにリーダーという職制をつくり、後輩指導や各ラインの管理を担当させている。もちろんこのリーダー職に障害者も健常者もない。やればやるだけ結果がついてくるという、ある種の実力主義の体制を取り入れることで、従業員のモチベーションを高めている。  また、以前は工場の警備システムや事務所の電灯のスイッチは健常者のみが扱っており、障害者による作業が夜遅くなると健常者が一緒に残っていた。これらの操作盤位置を移設し、車椅子使用者でも操作できるようにすると同時に、戸締りや警報器のセットという大切な作業を障害者にお願いして、従業員への信頼を形や行為でも見せている。 2 健常者は最低人数に抑え主役は障害者であることを徹底  障害者雇用を促進するためにも、あくまで仕事の主役は障害者とした。そのため、健常者の人数は障害者では困難な部分をサポートするだけの最低限に抑えている。  職域拡大のためにさまざまな障害者を雇用しており、従業員同士が仕事やレクリエーション活動などを通じて意思疎通を図り、自らの力で作業の効率化を図るようにしている。  自らの力で職場環境を整えるということは、半面、自分が動かないと職場環境は改善されず、働きにくい職場になる可能性がある。真の意味で自立させることで、従業員個人の心構えとしても、企業としてもプラスになっている。 3 あらゆる仕事に対応するため資格取得を奨励  ちょっとした仕事でも受注へつなげる必要があったため、資格を必要とする仕事は逆にチャンスともなった。そのため、職域拡大と個人のキャリアアップの意味から資格取得にも積極的に注力。  聴覚障害者などの場合、講義内容を確認しづらかったり、複雑な単語そのものの意味が理解しづらいなどの問題点もあるが、従業員同士がお互いに協力し合うことで解決してきた。  今では廃却エアコンからフロンガスをとるための冷媒回収資格、ハンダ作業や洗浄作業に用いる有機溶剤の作業主任者資格、産業廃棄物を管理するために必要な特別産業廃棄物管理責任者の資格などを多数取得し、日々の仕事に生かされている。  なお、障害者が5名以上在籍している会社では障害者職業生活相談員を置く必要があり、大抵の場合は健常者がその資格を有しているが、ダイキンサンライズ摂津では障害者がその資格を取っているのも特徴的だ。 p.54 クローズアップ 4 作業の効率化を高めるために常にあらゆる部分での改善を図る ◆ 細かい改善を次々に実施  ダイキンサンライズ摂津では、設立した当初から、肢体不自由者の雇用を主に考えていたため、工場設備はすべて車椅子での使用を考慮した配置になっている。しかし単一な製品のみを製造しているわけでなく、受注内容の一部が変更されたり、まったく新しい仕事が舞い込むと、ラインの変更を余儀なくされることになる。進行の邪魔になって作業効率が落ち、安全性も脅かされるようになった。  細かい改善を、これまで数多く行ってきている。追加された耐圧検査のため通路にはみ出てしまった耐圧検査装置をテーブル上に移設したり、部品組立の受注数が増えたため生産が追いつかなくなったラインでは、ピストンのサイズを選別しやすくしたり、ラインを一直線にしたり。200種類以上の機種のある組立ラインでは、専用のトレーを作成して分別したりとその実例は数え切れない。 ◆ 製造業という業種を生かし便利な用具を自ら製作する  また特筆すべき点は、そうした改善策のほとんどをコストをかけずに行っている点だ。  仕分けのためのトレーや、車椅子使用者でも見やすいトレー配置、運搬用台車なども、既存の製品に手を加えて製作している。ファイルが棚の奥にいき取り出しにくくなるのをストッパーを置いて防いだり、移動式ファイルキャビネットを使いやすくしたのも、ちょっとしたアイデアによるものだ。空気が残ったままだと産業廃棄物としてコストがかかっていたエアパックも、専用のローラーを製作してつぶすことで、有価物として引き取ってもらえるようになった。  これらは、製造業という業務の特性を生かした創意工夫といえる。 p.55 5 業務改善案の提出を奨励する体制を構築  作業効率を高めるために、工場長など上の者が見回り、作業しづらそうな部分を改善することもあるが、基本的には自ら改善策を考えるような体制を取っている。定期的に改善案を紙に記入して提出してもらい、工場長やリーダーが吟味。よいと判断したものは積極的に採用する。  少額ではあるが、採用案には賞金も出し、年間最も提案した者や最優秀の提案を表彰し、激励するようにしている。 6 大規模なシステム導入でよりスムーズな業務遂行を実現  業務拡大に伴い、製品と購入品の種類と数量が増加するようになった。一方で納期は短縮化され、製品の変更も多く、部品在庫データの管理も複雑化した。  そのためサーバーなどを一新し、より高度な処理も短時間で行えるシステムをダイキングループ全体で導入。よりスムーズに的確に業務対応できるようになった。同時に部品検収のバーコード化も始まり、手入力よりも簡素化、作業のやりやすさが向上した。  また部品受入作業は健常者が行い、部品で廊下がふさがれるほどあふれていたが、これを組織化して整理。車椅子使用者でも作業ができるようにし、よりスピーディーな処理ができるようになった。 7 トイレ設備や休憩所などの設備を充実  トイレ設備などは開業当時最新のものであったが、上肢の力の弱い者でも楽に開閉できるよう、非接触スイッチの自動扉に取り替えた。  湯沸かし器は従来電熱方式のため、やけどの危険性があったが、電磁方式に変更。  また肢体不自由者は水分補給が必要なことが多く、ペットボトルを常時持ち歩く者もいるが、衛生的によいとはいえない。いつでも供給できる給茶機を設置することで対処した。  福利厚生施設が充実していることは、仕事への意欲や作業効率につながるもの。積極的に意見を取り入れて充実を図っている。 肢体不自由者からみた「働きやすい職場」とは ◆ やりたいようにやらせてもらえて不満はまったくない  松本淳治さん    この会社では9年間勤務してきました。現在は職場長という各リーダーをまとめる立場で仕事しています。   入社する以前から、この会社は全体的に年齢層が若く、溶け込みやすそうな雰囲気を感じていました。   実際働き出してからも、仲間と楽しく仕事ができているんじゃないかと思っています。現場のやりたいようにやらせてもらっているので、不満な点はまったくありません。   また車椅子での作業を十二分に考慮されたつくりの上、現在では知的、聴覚障害者も雇用して職場環境も一層改善され、実に働きやすい職場になってきていると感じています。 ◆ やった結果がついてくる実力主義の職場がよかった  菅居宏之さん    会社全体の部品の受け入れと品質管理の仕事をするリーダーをやっています。勤務して丸8年ほどです。   18歳で障害を持ち、友人に会いに行ったときに偶然、應武社長とお話しする機会がありました。車椅子でも何でもできる、仕事をしっかりやれば昇進に結びつくと聞いたときに、やりたいと感じたんです。それが入社のきっかけです。  実際に実力主義的な部分もあり、向上心のある人に向いている職場だと思います。個人的にはとても働きやすく感じています。また親会社に出向くことも多いのですが、障害者相手という視線がまったくなく、対等に同じ目線で仕事の話ができるのは幸せですね。 p.56 奨励賞 障害者がもっと普通の生活を送れる環境を障害者自身の手で実現する 特定非営利活動法人 アス・ライフサポート 企業プロフィール  特定非営利活動法人 アス・ライフサポート  代表者:理事長 藤田英二  〒753-0033 山口県山口市大市町3-12 TEL 083-934-1294 FAX 083-934-1294  ◆業種および主な事業内容  福祉事業(デイサービスセンターおよびヘルパーステーション)  ◆従業員数 38名(平成18年2月現在)うち障害者4名  <内訳>  肢体不自由者4名(うち重度3名)  ◆事業所の概要と障害者雇用の経緯   サラリーマンで車椅子マラソンの選手だった藤田英二理事長が10名の賛同者とともに、チャレンジド(障害者)自らが希望するような支援体制づくりを実現したいとの思いから平成15年10月に設立した法人が特定非営利法人アス・ライフサポート。   「アス」とは、英語の「US(私たち)」と、明日(あした)の2つの意味が込められ、つまり、「私たちの未来の明るい生活支援活動」をしていきたいとの願いから出発している。障害があっても、積極的に地域社会に出ていくことがチャレンジドの自立のために必要不可欠である。   チャレンジドの自立をチャレンジド自らが支援するために企画・運営する団体として誕生したアス・ライフサポートは、平成16年8月に山口市の中心街に障害者・高齢者デイサービスセンターと訪問介護事業を開業した。   障害者デイサービスセンターの運営にあたり、運営する側が同じ目線で見ることができるように障害者雇用を開始し、利用者の立場に立ったサービスの向上に努め、大きな支持を得ている。 p.57 障害のある職員が対応することで利用者の信頼を獲得 サラリーマンとパラリンピックの選手の経験を生かし、障害者の自立支援を始める  藤田理事長は、ポリオ(小児マヒ)のため小学校低学年から下肢が不自由になり、リハビリによって歩装具を付ければ歩行できるまでになったが、普段は車椅子を使用している。学校卒業後はカーディーラーに就職するが、32歳ごろから車椅子マラソンに凝り出す。そして、38歳のころには日本記録を持つほどの実力選手になり、2000年シドニーで開かれたパラリンピックには、日本代表として800mと5,000mの長距離レース、1,600mリレーに出場した経験がある。  障害のあるサラリーマンであるとともにスポーツマンであった藤田さんは、同時に長年にわたってボランティアとして重度の障害者の外出を支援する活動を続けてきた。しかし、このボランティアとしての活動に次第に限界を感じ始めていた。  ちょうどそのころ、勤めていた会社が営業権を譲渡するような事態となる。これを、本来やりたいことをやるために背中を押されたと理解した藤田さんは、この機会に退職を決意する。 ショッピングや自然散策を楽しめる中心商店街にデイサービスセンターをオープン  そして、平成15年10月に10名の賛同者とともに設立したのが特定非営利活動法人アス・ライフサポートである。アス・ライフサポートは、チャレンジド(障害者)や高齢者が地域の中で普通の生き生きとした暮らしをするための生活環境をつくること、スポーツや芸術などの活動を通じてチャレンジドの持つ隠された力・価値が発現するような場を提供することを目的としている。  その後、平成16年8月に山口市の中心商店街に障害者・高齢者デイサービスセンターと訪問介護事業を開業する。中心街で開業した理由は、障害者がもっと気楽にショッピングや散策を楽しめるように、自然に地域社会との接点が生まれる環境を作りたかったためである。  1階には、絵画や創作活動作品などの展示を行うギャラリーと浴室、2階には、ボッチャ※、デジタルシューティング、卓球などの設備を備えた機能訓練室(60.9m2)、日常生活訓練室および社会適応訓練室、ならびに3階には、ゆったりとくつろげる身障者デイルームおよび高齢者デイルームが設置されている。 同じ目線で手助けできる障害者を職員に雇用  このデイサービスセンターでは、管理者の木村重美さんをはじめ職員として4名の障害者を雇用している。木村さんは以前はデイサービスセンターの利用者だったこともあり、その経験を生かして、利用者と同じ目線でデイサービスの企画・運営に当たっている。  こうした障害のある職員が対応することによって、何よりも利用者が安心して利用してくれるはずである。経営戦略的な観点から出発した障害者の雇用であるが、実際に利用者の信頼を得て、利用者獲得の面でも大いに貢献しているという。  しかしながら、木村重美さんは小児マヒによる両上下肢機能障害のため電動車椅子を使用、野稲光美さんは脊髄損傷による両下肢機能全廃のため車椅子を使用しており、職員としての能力を十分に発揮してもらうには、施設を大幅に改善する必要があった。  以下、問題点ごとに対応策について具体的に記述する。 p.58 問題点と対応策 1 木村さんはエントランスホールや2階事務室出入口のドアを自力で開けることができなかった。   >> それぞれのドアを自力で開けられるように引き戸に改造した。 2 エレベーターがないため、木村さんも野稲さんも職員の手助けなしで2階や3階に移動できなかった。   >> エレベーターを設置することで移動が容易になり、仕事の能率も利用者の利便性も向上した。      詳細は60Pでクローズアップ 3 木村さんは通常の車椅子対応のトイレでは自力で使用できなかった。   >> 2階のトイレを、床の高さと便座の高さを同じにすることで、自力で使用できるようにした。 4 野稲さんは、障害のためトイレの使用時間が1時間もかかり、利用者にとっても不都合があった。   >> 3階に車椅子対応のトイレを増設した。 充実した設備を備えた機能訓練室やデイルームで楽しみながらくつろぐ利用者たち  2階の機能訓練室でスポーツやカラオケを楽しむのもよし、3階のデイルームでパソコンやゲーム、楽器を楽しみながら、のんびりくつろぐのもよし。利用者たちはそれぞれ同じ目線で手助けする職員たちと、デイサービスセンターで1日を過ごします。 p.59 1 ドアを引き戸に改造電動車椅子での移動を可能に  木村さんは、エントランスホール出入口と2階事務室出入口のドアを電動車椅子に乗ったまま自力で開けることができず、他の職員の力を借りなくてはならなかった。  これを現在の引き戸に改造したことにより、自分で開閉し、移動することが可能になった。このため、木村さんだけでなく、手を貸す職員を含め仕事の効率がアップした。 ここが聞きたい! 雇用の場はもっと広がる! 藤田英二理事長  障害者でもやればできるんだとの実感を味わってほしい  私自身小さいときから障害がありましたが、ビジネスマンやスポーツマンとして自分なりに努力することで、やればできるんだとの実感を味わうことができました。そんな実感を重度の障害者の方にもぜひ味わってほしいとの思いから、アス・ライフサポートを設立することにしました。  福祉の世界はともすると、上から支援するという形になりがちです。その点、木村重美さんや野稲光美さんのような重度の障害者を雇用し、必要な戦力として活用することによって、同じ障害者同士として手助けするようなサービスができるようになっていると思います。  スポーツの世界でも同じ競技をやってきた者同士だけが分かり合える気持ちがあるように、障害のある者同士だけが通じ合える、微妙なニュアンスがあると思うのです。  障害のある人が管理者や一般職員としてデイサービスの企画・運営に携わっているからこそできるサービスもあるし、悩みや気になることも訴えやすいということもあるでしょう。職員の採用にあたっては、障害のあるなしにかかわらず、一人一芸を持っていることを条件にしていますが、その点でも職員はそれぞれ個性があり、利用者からも皆評判がよいですよ。  今後重点を置いてやっていきたいのは、かなり重度の障害者でもできるボッチャという競技を普及させることです。やっと山口県ボッチャ協会を立ち上げたところですが、講習会や競技会を県内各地で開催し、ボッチャの普及を通じて障害者の自立をサポートする活動を展開していきたいと考えています。 p.60 クローズアップ 2 2階事務室や3階のデイルーム(作業室)などへの移動のため、エレベーターを設置  当初、木村さんも野稲さんも事務室や機能訓練室がある2階、さらにデイルーム(作業室)がある3階に移動するには、その都度職員に抱えてもらって階段を上がらなくてはならなかった。  健常者の職員に気兼ねなく対等な立場で仕事をするには、自力で移動できるエレベーターが必要不可欠であった。また、障害者や高齢者の利用者がスムーズに移動するためにも必要な設備であった。  エレベーターの設置により、障害のある職員ばかりでなく一般の職員の仕事の効率も大幅に向上し、さらに利用者の利便性も高まることにつながった。 3 便座と床の高さを同じにし、重度の障害者も使いやすいトイレに  木村さんは通常の車椅子対応のトイレでは、職員の手を借りなくては便座に移ることができなかった。そこで、洋式トイレの便座の高さと床の高さを同じにすることで、電動車椅子から便座の高さの床に乗り移り、そのまま移動して便座に移れるようにすることで、1人でトイレを使用できるようになった。  これにより、木村さん同様の重度の肢体不自由者にとっても便利で使いやすいトイレになった。 p.61 4 3階に車椅子対応のトイレを増設  野稲さんは脊髄損傷の影響によりトイレの使用時間が1時間ほど必要である。1階にはオストメイト(人工肛門)対応の利用者用トイレが設置されているが、これを長時間使用すると、利用者に不都合なため、3階に車椅子対応のトイレを増設した。  これにより、気兼ねなく野稲さんがトイレを使用できるようになっただけでなく、利用者の利便性も向上した。 肢体不自由者からみた「働きやすい職場」とは 管理者の木村重美さん(平成16年入社) ◆ 障害者としての経験を生かして、若い障害者にアドバイスをしたくて、この仕事に就きました  小児マヒのため幼いときから手足がずっと不自由でした。これまで通常勤務での仕事に就いたことはありませんが、20年ほど前から絵の勉強をしてきました。山口県の美術団体に所属して、公募展などにも応募するなどの活動をしてきました。  障害者として1人で生活して20年ほどになり、40歳も超えましたので、何かこの経験を生かして社会のために役に立つことをしたかったのです。施設から出たいと希望している障害者の方も多いと思うのですが、できればそんな若い障害者のアドバイザー的な仕事がしたいと考えていました。  そんなとき、ハローワークからデイサービスセンターを開業しようとしているアス・ライフサポートを紹介されました。非常にタイミングがよかったと思いますね。障害者のためにアドバイスする仕事といっても、それほどありませんからね。  エレベーターや2階の特殊なトイレなど、私のために働きやすい環境を整備してもらい、本当に感謝しています。この仕事に就いてよかった思う点は多々あります。例えば、言語障害がある利用者さんから新しい車椅子に替えたいなどと相談を受けたときには、実際に長年使っている立場からアドバイスするだけでなく、代わって車椅子の業者さんと交渉することもあります。口は達者なほうですので、そのようなときには感謝されますね。  今後は、商店街を中心にもっと外部にも出かけていって、障害者が気軽に立ち寄れるような環境づくりをしていくためのお手伝いをしたいと考えています。 p.62 奨励賞 「生き生きとした活発な仲間たちの集い:vigla」。その実現のため、グループ内外の業務受託に挑戦 株式会社T-NET vigla 企業プロフィール  株式会社T-NET vigla  代表者:代表取締役社長 相良定男  〒761-8081 高知県高松市成合町930-10 TEL 087-886-8150 FAX 087-886-8102  ◆業種および主な事業内容   経理事務、総務事務、福利厚生関連事務、機械設計(CAD製図)、施設管理、   名刺制作などティーネットグループの各種業務の受託および損害保険代理業務  ◆従業員数 14名(平成18年3月現在)うち障害者10名  <内訳>  肢体不自由者5名(うち重度4名)、視覚障害者1名、聴覚障害者3名(うち重度3名)、知的障害者1名  ◆事業所の概要と障害者雇用の経緯   親会社のティーネットジャパンは、昭和51年に土木・建築のコンサルタントや施工管理を行う企業として四国を中心に業務を開始、現在では全国規模の土木・建設工事や自動車産業のエンジニアリング企業などに管理技術者を派遣する総合エンジニアリング業として大きく変身を遂げている。この間、障害者雇用に努力しつつも従業員数の増加に伴い、法定雇用率を維持することが課題となっていた。   このような状況に対応し、積極的に障害者雇用を前進させる目的で、社団法人高知県雇用開発協会やハローワークなどの助言を得て、特例子会社設立を決定、平成17年2月に新規採用の障害者と親会社からの出向者によって、ティーネットグループの事務部門の業務を受託する企業としてスタートした(認定は同年7月)。 p.63 障害の有無に関係なく個々の長所を活かす 生き生きと働ける会社を目指す  社名のviglaとは、エスペラント語(国際共通補助言語)で、「生き生きとした活発な仲間たちの集い」という意味だが、ティーネットグループの一員として、障害の有無に関係なく個々の長所を活かして、生き生きと働ける会社を目指すことをテーマに掲げている。  当初は健常者の従業員の中に障害者の社会参画に協力したいという意識がないわけではなかった。しかし、実際に一緒に仕事をしてみてわずかしか時間が経っていないが、「人にはそれぞれ長所と短所があり、それをお互いに補完しあいながら仕事を進めていくことに健常者も障害者もない」ということが社内全体で理解されるようになってきた。  そして、これまで得意な点を生かしたくてもできなかった夢を仕事を通じて実現する場を少しでも拡大していきたいという意気込みが全員の中に高まってきている。そして、ハンディを克服、健常者と対等にその長所を活用できるよう、肢体不自由者には設備改善、聴覚障害者にはコミュニケーション方法の改善など、職場環境の整備に取り組むことにしている。  現在はティーネットグループの受託業務中心だが、その夢をさらに実現するために、今後はより自立した企業として外部の仕事も意欲的に受注していくことにしている。 ここが聞きたい! チームワークでハンディを克服 相良定男代表取締役社長  働ける喜びを感じている仲間とともに夢の実現のために努力したい  T-NET viglaの仕事を障害者の仲間たちと一緒に仕事をしてみて、彼らのエネルギーを肌で感じています。これまでやりたくてもできなかったことが今実現しようとしている喜びを感じながら力を発揮しようとしている仲間たちと、さらなる可能性に挑戦したいと思う毎日です。  会社のチームワークは、バラ寿司のようなもので、それぞれが持っている良さを発揮し合うことで、チームとしての妙味が生まれるものではないでしょうか。肢体不自由者と聴覚障害者を組み合わせるなど、チームワークによって、ハンディを克服して長所を発揮する仕事の受注方法がいくらでもあると考えています。  このような発想の中で例えば指定管理者制度というものに挑戦をしたりしていますが、グループの営業の力を活用しながら、新たな外部の業務を受託していきたいと考えています。 p.64 問題点と対応策 1 事業開始に当たっての既存の建物の構造をどう改善したのか。   >> 駐車場からエントランスへのアプローチ、入口の引き戸、事務所から手洗いへも通路を設けて、車椅子用のトイレを新たにつくるなどの改善を行った。      詳細は65Pでクローズアップ 2 作業開始までの事務所内をどう改善したのか。   >> 事務机をすべて壁際に配置、中央にミーティング用の大机、配線はすべて机下など車椅子の走行には最大限に配慮した。そのほか、室内照度も低い視野からも明るさが保てるようにした。 3 未経験な新人の障害者を迎え、どのように業務の知識を教育するのか。   >> 親会社からの出向社員によるジョブコーチ制により、基礎知識の習得から始まり、当面業務の知識の習得に力を入れている。 4 自立した企業として業務の確保をどうするのか。   >> 当面ティーネットグループからの受注を重点に、積極的に受注可能な業務を洗い出す。同時に、グループの営業の力を活用、官民を問わず外部の受注にも力を入れている。 ここが聞きたい! 明るく生き生きとした職場づくり 角森芳樹取締役マネージャー  一番気を配っているのは相互のコミュニケーションを円滑にすること  肢体不自由者に対しては、施設や職場環境のユニバーサルデザイン化を徹底することで、車椅子使用者でも自由に行動できるように配慮してきました。  それだけでなく、明るく生き生きとした職場づくりをするためにはコミュニケーションが円滑になるように最大の配慮をしています。特に聴覚障害者に対しては、会議などですぐ隣りに手話のできる人間を配置して、会議の内容が遅滞なく伝わるように注意するとともに、聴覚障害者の意見を努めて聞くようにもしています。  こうした配慮が全員に伝わり、健常者、肢体不自由者、聴覚障害者など、相互のコミュニケーションもよくなり、明るい活発な雰囲気ができてきたのだと思っています。 p.65 クローズアップ 1 事業開始にあたって駐車場やトイレなどの施設を大改善  viglaの設立にあたり、事務所は本社ビルの1階部分を賃借することになり、ユニバーサルデザインの専門家のアドバイスを受け、下肢障害者向けにバリアフリーを目指して施設を大改造した。  具体的には、駐車場・スロープについては、原状を生かしながら、勾配の取り方、幅の確保を工夫することで対応した。エントランスドアについては引き戸に改造。また、ドア1枚を撤去、出口を取り替えることで、事務所から通路を経て、手洗いに行けるように改造。トイレについては、既存のトイレを1カ所標準的な車椅子仕様にすると同時に、新たに1カ所車椅子仕様のものを設置した。 p.66 2 室内照度を工夫するなど事務所内をさまざまに改善  事務所の内部については、各人の事務机はすべて高さ70cmで壁面に作り付け式にしており、中央には大机を配置、ミーティングや作業指示用に使用している。また、配線はすべて机下にして、床上のケーブル管は皆無である。そのため、車椅子の移動スペースが確保され、走行も自由にできるように配慮した。  また、机や棚を壁面に新たに設置し、壁紙を撤去することになったため、車椅子の低い視野からでも照度が保てるように明るい壁紙を選定するなど、室内照度についても工夫している。 3 オペレーション開始に当たっての社員教育に注力  新規採用者5名のほとんどが業務未経験者だったため、ティーネットジャパンから出向させた障害のある社員3名を含む6名のプロパー社員による社内ジョブコーチ制を採用して、通常の新入社員研修と同様に、基礎知識の習得およびOA機器の操作技術の向上から開始した。  さらに、当初はティーネットグループの事務部門の業務の受託からスタートしたため、出向社員を総務人事チームと経理チームに分け、それぞれシニアチーフを任命し責任を持たせるようにした。そのうえで、新人5名はスタッフとして月間スケジュールに沿って、月初に経理事務から始め、終われば給与計算に移るというように、グループワーク方式を採用している。今後は、習熟の度合いに合わせて、一人で最初から最後までを行う方式を導入することにしている。  また、定期的に理解度確認テストを行って的確に業務知識が把握されているか確認のうえ、適切な指導を行うようにしている。 p.67 4 自立した企業としての業務の確保  これまでティーネットグループの業務の受託を中心に運営してきたが、今後もさらに業務を洗い出して移管可能なものは積極的に受託して、そのために必要な人材は新規採用を図っていく方針である。  同時に、「障害の有無に関係なく生き生きと働ける会社を目指す」というvigla創業の夢を実現するためは、親会社の営業の力も借りながら、官民を問わずグループ以外の業務を積極的に受託することで、より自立した企業として成長することを目指している。  T-NET viglaでは、今後とも多くの方々の理解を得て、協力関係を結ぶ中で、さまざまな業務の受託に挑戦していくことにしている。 肢体不自由者からみた「働きやすい職場」とは ◆ 明るい職場には満足、もっとスキルアップしたい  経理チームの植村雅司さん(平成17年入社)    4年半前に歯科技工の事務員を辞めてからは、在宅で就労し、ホームページの制作などを行っていました。現在は経理部門の仕事を主に行っており、勘定明細のチェックやリース資産や固定資産の管理の仕事をしています。   前の会社では聴覚障害者の人たちとうまくコミュニケーションが取れないなど、問題が多かったのですが、その点、viglaではコミュニケーションもよく取れており、雰囲気は明るいですね。バリアフリーなど職場環境にも満足しています。   現在の仕事についてはまだまだ勉強の日々で、もっとスキルアップしてからいろいろ提案したいとも考えています。 ◆ もっと勉強して、ホームページ制作などもやってみたい  総務人事チームの池田貴昭さん(平成17年入社)   10年前に事故で肢体不自由になってからは、仕事をしたことはありませんでした。これまで、岡山の国立吉備高原職業リハビリテーションセンターで、1年間パソコンを使ったデザインやホームページ制作、ポスター制作などの勉強をしました。   現在の仕事は、共済会や持株会など総務や人事関係の事務的な仕事です。まだ、仕事に慣れていないので、偉そうなことは言えませんが、できればホームページの制作などの仕事をやってみたいですね。 p.68 奨励賞 ノーマライゼーション工場として、健常者と同一の仕事を行う 希望の里ホンダ株式会社 企業プロフィール  希望の里ホンダ株式会社  代表者:取締役社長 安田宏正  〒869-0524 熊本県宇城市松橋町豊福2832 TEL 0964-33-2681 FAX 0964-33-2682  ◆業種および主な事業内容   Hondaの二輪・四輪および汎用製品の部品製造  ◆従業員数 62名(平成18年1月現在)うち障害者数24名  <内訳>  肢体不自由者16名(うち重度16名)、聴覚障害者8名(うち重度8名)  ◆事業所の概要と障害者雇用の経緯   希望の里ホンダ株式会社が誕生した昭和60年当時、重度障害者の雇用拡大を図るため、国は「重度障害者多数雇用事業所」の配置を推進していた。一方、熊本県はさまざまな障害者福祉施設が集合する「障害者福祉村『希望の里』構想」を独自に計画していた。この二つの計画がドッキングし、第3セクター方式による新会社設立構想が生まれることになる。   新会社の設立に当たり、民間企業の合弁相手として、@県内の有力企業である、A裾の広い基幹産業である、B多数の重度障害者の雇用実績とノウハウを持っているなどの条件から、本田技研工業株式会社に協力が要請される。その結果、昭和60年8月に熊本県44%、宇城市(当時の松橋町)5%、本田技研工業51%の出資比率による資本金5,000万円の希望の里ホンダ株式会社が誕生することになった。   このような経緯から誕生したため、同社が敷地とする希望の里には豊かな自然環境の中に養護学校、地域の老人福祉センター、障害者のためのスポーツセンター、障害の早期発見・治療を目的とした子ども総合病院センターなど、障害者福祉関係の各種施設が揃っている。 p.69 パートナーシップを発揮し、働きがいのある工場を実現 ほぼ同数の健常者と障害者が同時に同じ作業ラインを担当  希望の里ホンダは、ノーマライゼーション工場として障害者と健常者が同じ仕事ができるように、障害者のハンディをカバーするためのさまざまな工夫を積み重ねた職場環境を整えている。そこまでは、障害者が多い工場での障害のある作業員に対する通常の配慮である。  希望の里ホンダの場合はそれだけでなく、さらにお互いに生き生きとパートナーシップを発揮し、働きがいのある工場となることを特に重要視している。同社の現場作業では、健常者と障害者がほぼ同数で、同時に同じ作業ラインを担当しているケースがかなり多い。そのため、健常者と障害者のチームワークが何よりも大切である。 各人の自主性を重視し、従業員の各種委員会をバックアップ  希望の里ホンダでは、健常者と障害者のチームワークの前提として、各人の自主性が重要と考え、従業員が各種委員会をつくってさまざまな活動にチャレンジするのを積極的にバックアップしている。  具体的には、QCサークル委員会※や職場内のちょっとした問題の改善・発見委員会、安全衛生自治委員会など、仕事に直接関係するものから、聴覚障害者とのコミュニケーションを深めるための手話講習、各種資格取得のための訓練促進委員会、さらに親睦を深めるイベントを企画する遊望会など、7つの委員会が自主的かつ多彩に活動を展開している。 p.70 問題点と対応策 1 立ち作業をする健常者と車椅子使用者とはラインの高さが違い、一緒の作業ができなかった。そのため、障害者の作業範囲が狭くなり、健常者とのコミュニケーション上もマイナスであった。   >> 昇降機を設置することで、健常者と障害者が同じラインで作業することが可能となった。      詳細は71Pでクローズアップ 2 ピストンリング小組の作業は移動作業量の多さから健常者が立ち作業で行い、車椅子使用者には困難な分野であった。   >> 障害者にも作業が可能にするため、車椅子専用のピストンリング自動小組機を開発・設置した。 3 ラジオペンチによるクリップの取り付け作業は、作業効率が悪く、特に手の不自由な人には不可能であった。   >> チューブクリップ取付治具を考案することでラジオペンチによる取付を止め、手に障害のある人でも可能で効率的な作業となった。 4 健常者用のロッカーは車椅子を使用する人にとってはキーやフックの位置が高すぎたり、手が届きにくいなど使いにくかった。   >> 車椅子使用者専用のロッカーを設置することで使いやすくなった。 ここが聞きたい! 教育・能力開発にあたっての考え方 本田和男事業管理課長  Hondaの部品を作る工場として品質・生産性でどこにも負けない  創業以来、重度の障害者の雇用拡大を図りながら、ホンダのノーマライゼーション工場として、健常者と障害者が対等に同一の作業を行いながら、しかも品質や生産性などの点で他のグループの工場に負けない工場を目指してきました。  そのために、治具の改善や設備の新設などの面でさまざまな努力を重ねてきたのは「問題点と対応策」で説明したとおりです。  以来20数年を経過して、従業員の平均年齢が41歳以上となり、今後は作業能率の面で高齢化の問題も考慮に入れながら、健常者・障害者の区別なく作業交換を検討するなど、よりよい適正な仕事の追求を進めていきたいと考えています。 p.71 クローズアップ 1 昇降機の設置で健常者と障害者が同じラインでの作業が可能に  健常者用につくられているラインの高さは、効率性から健常者が立ち作業しているため、そもそも車椅子使用者には高すぎて一緒に作業ができなかった。そのため、健常者のラインと車椅子使用者のラインを分離して、作業も区分せざるを得なかった。これにより障害者の作業の範囲が限定されるだけでなく、健常者と障害者とのコミュニケーションを図るうえでマイナス要因となりがちであった。そこで、健常者と車椅子使用者が共同の作業ができる方法を考える必要があった。  この解決法として、現状のライン(コンベア)をそのまま使用して車椅子使用者を配置できるように、車椅子の下に昇降機を3カ所設置することにした。  この結果、健常者と車椅子使用者が3カ所で同じラインで作業することが可能となり、まず障害者の作業の幅を拡大することができるようになった。それだけでなく、何よりも健常者と障害者のコミュニケーションが図れるようになり、両者が対等な立場でパートナーシップを促進するうえで大きな前進となった。 p.72-73 2 専用のピストンリング自動小組機の開発・設置で障害者にも作業が可能に  これまでピストンリング小組の作業は移動動作が多いことから健常者が立ち作業用作業台で行っていた。作業台の高さや移動作業量の多さから障害者が参加するといってもかなり制約を強いられていた。  新部品の受注を機会に、車椅子作業者専用の設備をつくることで障害者の仕事量の確保を図ることになった。設備の新設に当たっては、当事者である車椅子障害者の意見・要望を聞きながら、設備のあるべき姿を検討することになった。  その意見・要望は、次の3点であった。  @設備操作などは健常者に頼ることなくできること  A車椅子の状態で操作が可能で移動操作が発生しないこと  B部品供給・払出しが容易に行えること  これらの意見・要望に基づき、車椅子作業者専用ピストンリング自動小組の新設に当たり、具体的な検討を進めた。  その結果、@については、健常者に頼らない設備操作などのすべての作業が車椅子で可能となり、誇るべきノーマライゼーション工場が実現することになった。Aについても、機種切替時の部品投入・治具交換などを移動することなく容易にできるようになったため、作業者の負担が軽減した。Bについても、部品供給・払出し装置を作業者が移動しなくてもよい位置に設置したため、無駄な作業がなくなり、作業効率がアップした。  そのほか、車椅子使用者の動作分析を徹底して行うことにより、設備のコンパクト化をはじめ、スペースの縮小、投資額の削減、設備のあり方など、大きな成果が得られた。  具体的には、3台の設備を導入することになり、この作業において3名の車椅子使用者の作業を確保することが可能となった。 3 手に障害のある人のために新しい取付治具を考案  従来、クリップのチューブへの取付はラジオペンチを使って行っていたが、ラジオペンチでクリップをつかみチューブに取り付ける作業は、手の不自由な人には困難であり、クリップをつかむときにクリップを誤って飛ばすことがあった。  そのうえ、取付位置基準に合わせるのが面倒で不良が発生する割合が高く、細かい作業のため目が疲れるなど作業者から嫌われる作業であった。  新しい取付治具を考案したことによりテーブル上のクリップを治具でつかみ、テーブル上をスライドさせて穴に入れ、押し込むことで、誰でも簡単にできる作業となった。 4 車椅子の障害者にも使いやすいようにロッカーを改善  普通のロッカーは、次のような点で車椅子の障害者には不便であった。  @キーの位置が高いこと  Aフックの位置が高いこと  B車椅子の先がロッカーにあたり、手が届きにくいこと  そのため、ロッカーの使用を敬遠する車椅子障害者が多かった。そこで、車椅子の障害者の意見を聞き、実際の車椅子に合わせてベニヤ板で試作品を作り十分なテストを行った後、車椅子使用者専用のロッカーを製作することになった。  こうして、ロッカーが車椅子用に改善されたため、車椅子使用者は不便なく気楽に利用できるようになった。 肢体不自由者からみた「働きやすい職場」とは ピストンリング自動小組の松永光清さん(昭和60年入社) ◆ ピストンリングの経験を他の作業に活かすよう提案していきたい  6年ほど前からピストンリングの小組の作業をするようになりましたが、当初はまだ部分的にしか自動化されておらず、手作業との組み合わせでした。その後、こちらの要望など積極的に提案した結果、現在のような完全に1人でできる自動化システムが完成しました。  これにより高品質な製品ができるようになっただけでなく、生産量も1.5倍と作業の能率も著しく向上しました。  今の職場は、現場からの声・要望・提案などに耳を傾け、設備の改善や新設などを前向きに検討してくれる環境なので、私たちも提案のしがいがあります。  これまでの経験を生かしながら、他の分野での作業の能率向上についても機会があれば積極的に発言していきたいと思っています。 p.80 その他の応募事業所  平成17年度は「肢体不自由者にとって働きやすい職場」をテーマに、肢体不自由者を雇用する企業の職場改善 好事例を募集いたしましたところ、全国66の事業所からご応募をいただきました。  残念ながら入賞に至らなかった54事業所の職場改善の取り組みにも、今後の肢体不自由者雇用の参考になる事 例が多々、見られます。そこで、各事業所の改善・取り組みのポイントをまとめてみました。 p.81 応募事業所 有限会社 修清 代表者:代表取締役 工藤修逸 〒037-0305 青森県北津軽郡中泊町大字中里字宝森291-3 TEL・FAX 0173-69-1195 業種および主な事業内容  介護支援サービス 従業員数 42名(平成17年7月1日現在)うち障害者数2名 <内訳> 肢体不自由者1名(うち重度1名)、知的障害者1名 事業所の概要と障害者雇用の経緯  平成12年10月、指定痴呆対応型共同生活介護「グループホーム宝森」を設立。平成13年9月に重度身体障害者(1種1級)を1年間職業訓練生として受け入れ、翌14年10月より正職員として採用した。また、16年にも軽度知 的障害者を3カ月間のトライアル雇用の後に正社員として採用した。 改善テーマ「普通の職場作りを目指して・・・」 改善・取り組みのポイント  他の従業員と共に働くことで互いを思いやり支え合いながら成長できるのではないかと考え、同じ職場に配置 した。  受け入れに当たり、スロープの設置、段差の解消、前庭の遊歩道作りなど施設の改善を行った。  肢体不自由者の高いパソコン操作能力に着目し、職業指導に当たった。一般事務のほか、グループホーム入居 者の安否確認のために導入している位置情報検索作業などの介護事務にも従事させることで、地域福祉への貢 献も図っている。 社会福祉法人 カナンの園 代表者:理事長 久保木 〒028-5134 岩手県二戸郡一戸町奥中山字西田子1027-8 TEL 0195-35-2583 FAX 0195-35-3145 業種および主な事業内容  食品加工業 従業員数 45名(平成17年4月1日現在)うち障害者30名 <内訳> 知的障害者30名(うち重度23名)(うち重複3名) 事業所の概要と障害者雇用の経緯  社会福祉法人カナンの園が設置運営する、定員30名の知的障害者福祉工場。主に岩手県内の流通小売店に食パ ン類を製造卸。一部直販も行う。有限会社カナン牧場から製造部門の委譲を受けて平成10年に開設。企業就労 が困難な施設在住者への職場提供を目的としている。 改善テーマ  下半身に重複障害のある従業員の身体的負担を軽減すべく作業環境の改善を図る。  改善・取り組みのポイント下半身に小児麻痺の後遺症があり、BMI値が高い従業員について、特に脚部各所の 負担を軽減する必要があった。専門医を受診し補装具を装着したが根本的な改善に至らなかったため、突起の ある発泡ウレタンシートを立ち作業を行う場所に設置し、下半身の筋肉にかかる負担を軽減した。  BMI値については本人に目標体重を提示し、毎日昼食前の体重測定および月1回の脂肪値の測定を実施。さらに 、職場の栄養士および嘱託医による食事と医療の両面からの指導を導入した。 p.82 社会福祉法人 平成会 知的障害者授産施設ブナの木園 代表者:理事長 佐藤正春 〒021-0902 岩手県一関市萩荘字駒下1-19 TEL 0191-24-4340 FAX 0191-24-4360 業種および主な事業内容  社会福祉施設における知的障害者を対象にした通所授産活動 従業員数 27名(平成17年5月31日現在)うち障害者数4名 <内訳> 聴覚障害者1名、肢体不自由者3名(うち重度1名) 事業所の概要と障害者雇用の経緯  平成2年に開設。知的障害者が自活に必要な生活訓練を行うとともに、地域活動への参加、社会活動に必要な 環境整備や支援を目的としている。  平成13年に知的障害者にITを習得させ、雇用の多様化に対応しようとするための事業を立ち上げる際に、意欲 のあった肢体不自由者を指導員として一人採用した。 改善テーマ  重度障害者が中心となり、ITを授産活動に導入。知的障害者のスキルアップと支援事業の収入増に挑戦する。 改善・取り組みのポイント  開設当時からスロープの設置、段差の解消および身障者トイレの設置をしており、車椅子にも対応できる施設 だった。  重度障害者は車で1時間かけて通勤しているが、冬季は雪も多く危険なため、自宅に同じパソコン環境を事業 所が用意し、サテライト勤務にしている。  これまでに施設向けのソフトを数本制作しており、各施設で使用している。施設の利用者は休み時間などを利 用してインターネットやゲームなどを楽しんでいるが、その際のサポートにもあたっている。  障害者が自ら、障害者の仲間を支援していくという目標達成のため、施設としてバックアップしていく。 株式会社小山商会 代表者:代表取締役 小山喜雄 〒981-3521 宮城県黒川郡大郷町中村屋敷前145-1 TEL 022-359-4831 FAX 022-359-5166 業種および主な事業内容  物品賃貸業 従業員数 731名(平成17年3月31日現在)うち障害者数16名 <内訳> 肢体不自由者2名、知的障害者14名(うち重度2名) 事業所の概要と障害者雇用の経緯  大正3年、京都市伏見で布団および装飾類の総合貸物業として創業。昭和33年に現在の社名に改称し、業務の 拡大に努めている。平成16年にはリネンサプライ、病院寝具リース、洗濯業業務においてISO9001の認証を取 得した。近隣の養護学校教師のすすめで障害者雇用を開始し、以降多くの障害者を雇用し、養護学校の生徒を 実習生として受け入れている。 改善テーマ 「雇用に関する改善・工夫」@仕事時間以外の交流活動等の工夫−食事懇談 会の開催A雇用管理等の改善・工夫−安全管理の取り組み 改善テーマ@について  健康面だけでなく精神的な面での向上を目的に、3カ月に1回「食事懇談会」を昼休みに開催している。会社 のトップも出席する対話重視の会で、回を重ねるうちに障害者が少しずつ心を開いて語りかけてくれるように なり、今では将来の目標や希望、仕事の取り組みについても話してくれるようになった。 改善・取り組みのポイント 改善テーマAについて  手首に麻痺がある障害者が作業できるよう、スイッチの操作だけで作業ができる業務に配置した。そのうえで安全管理のための取り組みとして専任の主任を置き、危険箇所をチェックして不用意に近づかないようアドバイスしている。さらに仕事場をビニールで仕切って障害物が入り込まないようにするなどの工夫も行っている。 p.83 株式会社ジェーシーアイ 代表者:代表取締役 佐藤隆雄 〒983-0034 宮城県仙台市宮城野区扇町5-3-38 TEL 022-344-3759 FAX 022-344-3221 業種および主な事業内容  オーダーメイド車椅子の製造 従業員数 128名(平成17年6月20日現在)うち障害者数6名 <内訳> 肢体不自由者5名、知的障害者1名(うち重度1名) 事業所の概要と障害者雇用の経緯  佐藤代表取締役が指導員として勤務していた重度の身体障害者授産施設で、身体に障害のある人々が持ってい た「社会の中で当たり前に仕事をしたい、当たり前に結婚したい、当たり前に自分たちの家に住んでみたい」 という強い願望をかなえるため、「障害のある人々の働く場を拡げる」という理念のもとに障害のある人々の 自立のために欠かせない福祉用具の製作、販売、レンタルの会社を昭和51年に起業した。オーダーメイド車椅 子の工場を開設し、その後4つの支店を持つ。現在では営業部門、事務部門を問わず、障害のある社員が重要 な役割を担っている。 改善テーマ  肢体不自由者の雇用に関する従業員への啓発 改善・取り組みのポイント  社屋にはもともとバリアフリーの考え方を取り入れているため、環境整備がなされ障害者が働いていることが 当たり前になっている。「どんな思いで起業したのか」「障害のある人々がどのような願望をもっているのか 」「障害のある人たちの能力について」ということを体験を通して考える必要があると考え、社団法人日本筋 ジストロフィー協会宮城県支部とタイアップし、療育キャンプにボランティアとしても参加している。  その結果、雨や雪の日に社員が自然にサポートしたり、災害のことを想定して社員が自主的に担当者を決めて 肢体不自由者の避難方法を考えて訓練したり、障害者が働くということに意義を見出して知的障害者の授産施 設から授産品の花を定期的に購入するなどの効果がみられている。  また、養護学校生徒の職場実習受け入れや、車椅子ツインバスケットボールへの支援なども行っている。 特定非営利活動法人 地域生活オウエン団♪せんだい 代表者:理事長 杉山裕信 〒982-0032 宮城県仙台市太白区富沢1-7-10 TEL・FAX 022-743-8487 業種および主な事業内容  在宅介護支援 従業員数 9名(平成17年4月1日現在)うち障害者数2名 <内訳> 肢体不自由者2名(うち重度2名) 事業所の概要と障害者雇用の経緯  元々は障害者が地域で生活するための生活支援に関わる事業を行っていた任意団体があり、在宅介護支援のた めに事業所を立ち上げた。「障害者のことは、当事者自身が一番分かっている」という考え方のもと、障害の ある当事者自身が運営し、同じく障害のある者の生活支援をしている。事業所立ち上げ当時から2名の相談対 応スタッフとして障害者を雇用している。 改善テーマ  車椅子を使用している方にも使いやすいように、出入り口やトイレ等の設備の改善を行う 改善・取り組みのポイント  @出入り口の段差解消のため、スロープを設置したスロープを正面に向けてしまうと傾斜がきつくなってしま うため、横向きに設置してゆるやかにした。横に向けたことによって、正面にあった駐車スペースをそのまま 使用することができた。 Aトイレ等の改造   トイレのスペースは、車椅子で入れるだけでなく同時に介助者が入れるスペースを確保している。また、便 座の位置を中央に向けることで使用が楽なように工夫した。以前の事務所ではトイレ等のたびに駅などに行っ て対応することもあったので、事務所の中で対応できることで、とても楽になった。 p.84 株式会社 日立東日本ソリューションズ 代表者:代表取締役社長 茅根修 〒980-0014 宮城県仙台市青葉区本町2-16-10 TEL 022-266-2181 FAX 022-227-1411 業種および主な事業内容  ソフトウェアの作成と販売、システムエンジニアリング 従業員数 711名(平成17年5月31日現在)うち障害者数6名 <内訳> 聴覚障害者2名、肢体不自由者1名、その他の障害者3名 事業所の概要と障害者雇用の経緯  昭和59年に設立。学生就職センターの紹介で受験した肢体不自由者を、卒業後採用した。その後、現在に至る まで7年間継続勤務している。他の障害を持つ社員も同様に継続して勤務しており、障害を持つ社員の退職は 創業21年でゼロ件である。 改善テーマ  勤労意欲を高める労働条件の提供による定着率の向上 改善・取り組みのポイント  内定を出した肢体不自由者の、自宅から会社までの距離が40kmあり、通勤の困難が予想された。そこで会社近 くにアパートを借り上げ、寮として提供。本人からの使用料と重度障害者等通勤対策助成金を財源とし、差額 は会社で負担することとした。  男女共同参画社会の理念に基づき、女性が働きやすい環境づくりのため、法定を上回る育児休職制度、育児勤 務制度を整えている。  肢体不自由者は入社後に結婚したが、迷うことなく仕事を継続している。 山崎ダイカスト株式会社秋田工場 代表者:代表取締役社長 山崎博次 〒019-1521 秋田県仙北郡美郷町中野字川原59 TEL 0187-85-3200 FAX 0187-87-6001 業種および主な事業内容  亜鉛合金、アルミニウム合金およびマグネシウム合金のダイカスト製品の製造 従業員数 352名(平成17年6月30日現在)うち障害者数5名 <内訳> 肢体不自由者4名(うち重度2名)、知的障害者1名 事業所の概要と障害者雇用の経緯  昭和40年、横浜市に設立。本社は管理・営業部門の要として秋田工場、入間工場ならびにロード電子工業株式 会社、ユニテック株式会社の関連2社を統括している。秋田工場は昭和46年に製造部門の拠点工場として設立 した。  障害者の雇用は平成4年に肢体不自由者を雇用したのが初めてで、ハローワークを通じて求人を行い、勧めら れて雇用したのがきっかけである。以後すべてハローワークを通じて雇用し、現在5名の障害者が働いている 。 改善テーマ  「地域への貢献から、誰でも働ける職場づくりを目指して」環境の改善と整備による、障害者雇用の促進を図 る。 改善・取り組みのポイント  地域へ貢献するという考え方から、どのような人でも働ける職場にするため、将来的に車椅子の障害者の雇用 も視野に入れながら、思い切った職場の改善を実施することとした。  現在の問題点を解消するにはどのような改善をすべきか、また、車椅子の人を雇用した場合にどのようにすべ きかを、建築家の意見を参考に、社長を中心としたスタッフで詳細に検討した。  その結果、2階建ての工場事務所を全面的に改築する方向で進めることになった。 改築のポイント  ・玄関にスロープを、入口にエレベーターを設置  ・入口のすぐ近くに下肢障害者専用の駐車場を確保  ・雨天時は玄関横に屋根付きの専用駐車場を設置  ・洋式トイレ、車椅子用のトイレを新設  ・1、2階ともバリアフリー構造に改築 p.85 有限会社 アシスト 代表者:代表取締役 角田裕一 〒991-0021 山形県寒河江市中央1-14-15 TEL 0237-83-5525 FAX 0237-85-5454 業種および主な事業内容  その他小売業(福祉機器・介護用品の販売・レンタル) 従業員数 6名(平成17年6月15日現在)うち障害者数1名 <内訳> 肢体不自由者1名(うち重度1名) 事業所の概要と障害者雇用の経緯  介護保険サービス事業所指定を受けている会社。開店準備の段階から、車椅子の障害者をチーフとして採用。 実生活に即した、障害者が納得ができる使いやすい商品を準備して相談にも対応している。福祉機器・介護用 品の販売・レンタルのほか、スロープやトイレ等住宅のバリアフリー・リフォームも請け負う。  開店5年目を迎え、障害者自らが品揃えをし、ピアカウンセリング等も行っていることが評判となった。利用 者の増加に、従業員数を充実させて対応している。 改善テーマ  重度四肢機能障害者が、総括責任者として事業所・営業全体をリードできる職場環境の整備 改善・取り組みのポイント  総括責任者として業務を円滑に進めるには、フリーで動き回る事務所環境とトイレの整備、外部への移動手段 の問題を解決する必要性があった。  そこで、職場介助者を配置し、トイレ、食事、運転、カタログ・商品呈示、内部事務等、すべてにわたって介 助している。また、開店までにバリアフリーの事務所を賃借して、トイレスペースの改造、ミニスロープによ る段差の解消を行った。また、頸椎を損傷し体温調節が難しい状態にあるため、エアコンを設置して環境の維 持に努めた。 NPO法人 いわき自立生活センター 代表者:理事長 長谷川秀雄 〒970-8026 福島県いわき市平研町1 TEL 0246-35-2288 FAX 0246-21-6779 業種および主な事業内容 福祉サービス 従業員数 70名(平成17年6月24日現在)うち障害者数3名 <内訳> 肢体不自由者3名 事業所の概要と障害者雇用の経緯  障害者の地域生活に関する各種サービスを提供。平成9年に団体として発足した後、平成13年4月に法人設立。 同9月に介護保険居宅介護事業指定を受け、平成15年3月には支援費事業にも指定された。  発足当初から相談員として障害者を雇用してきた。 改善テーマ  重度身体障害者が働きやすい職場環境の整備と、管理職業務のサポート 改善・取り組みのポイント  頚椎損傷という重度の身体障害を有する従業員の入社にあたり、トイレの改造やスロープ、エアコンの設置を 行うなどバリアフリー化を図った。そのほか、事務用机を車椅子のまま使用できるように改造し、パソコンの マウスも利用しやすいものに取り替えた。職場は小規模なため、重度障害者を雇用することは容易ではなかっ たが、障害者作業施設設置等助成金が支給されたことによって組織全体の理解が得られた。  さらに、この従業員は管理職候補であったため、重度障害者介助等助成金を申請し、勤務時間中に介助者を配 置させて、外出が必要な際にサポートできる体制を取った。現在は経営の一角を担っているこの従業員のケー スは、経験を積む機会と本人の強い意志があれば、重度の障害を抱えていてもスキルアップを図ることが可能 であることを示している。 p.86 東洋製罐株式会社 石岡工場 代表者:工場長 大西保行 〒315-8585 茨城県石岡市大字柏原8-2 TEL 0299-24-2711 FAX 0299-24-1823 業種および主な事業内容  飲料用および生活用品容器製造業 従業員数 335名(平成17年4月1日現在)うち障害者数3名 <内訳> 肢体不自由者2名(うち重度2名)、内部障害者1名 事業所の概要と障害者雇用の経緯  昭和52年4月にDI缶・イージーオープン缶の生産工場として設立。その後の設備増強により、現在は世界でも 類のない最新鋭の設備を誇る近代工場となった。  平成11年に社員が両下肢機能障害を持ったことを契機に、継続的な障害者雇用が始まった。 改善テーマ  肢体障害者が就業しやすいように施設を改善 改善・取り組みのポイント  交通事故で両下肢機能障害となった社員のため、雨天でも利用可能な専用駐車場を設置し自家用車通勤に対応 。従業員出入口を車椅子専用に変更し、自動ドアのリモコン化やトイレの改修などバリアフリー化を行い、職 場復帰を図れるように環境の整備を行った。施設の改善と併せ、業務内容もパソコン操作業務に変更。周囲の サポートもあり、後にもう一名の肢体不自由者を雇用した際にはこのときの改善と経験が活かされた。  肢体障害者に合わせた各施設の改善を行ったことにより、障害を持っていても健常者の介助なしで職場に出入 りできるようになった。 日本メクトロン株式会社 鹿島工場 代表者:代表取締役専務 鈴木明男 〒314-0255 茨城県鹿島郡波崎町砂山2626-19 TEL 0479-46-2231 FAX 0479-46-2293 業種および主な事業内容  電子部品製造 従業員数 478名(平成17年5月15日現在)うち障害者数6名 <内訳> 聴覚障害者2名(うち重度1名)、肢体不自由者2名(うち重度1名)、内部障害者1名、知的障害者1名 事業所の概要と障害者雇用の経緯  主に携帯電話に採用されている多層FPC基板の設計・開発・生産を行う。  障害者雇用については積極的に推進中で、現在就労中の障害を持つ従業員が今後も継続して就労できるように 、会社として取り組んでいきたいと考えている。 改善テーマ  肢体不自由者用階段昇降機の更新 改善・取り組みのポイント  1階の作業場から食堂など2階の施設を利用する際に、肢体不自由者の従業員が使用する階段昇降機は老朽化に よる故障が頻発し、安全性が確保しづらくなってきたため、更新を行った。  更新にあたって作業員と職場上長を交えて念入りに検討を行い、改善点として「回転しやすさ・高さ調整など 座席を工夫して補助車から昇降機、昇降機から補助車へ移動しやすくする」「階段の角を移動する際のスムー ズな動作で安全性を高める」ことをポイントとして推進。  設置後は、上記改善によって操作が非常に楽になり、安心して利用できるようになった。 p.87 株式会社東武宇都宮百貨店 代表者:取締役社長 根津公一 〒320-8560 栃木県宇都宮市宮園町5-4 TEL 028-651-5840 FAX 028-651-5858 業種および主な事業内容  百貨店業 従業員数 583名(平成17年6月1日現在)うち障害者数6名 <内訳> 肢体不自由者5名(うち重度5名)、内部障害者1名(うち重度1名 事業所の概要と障害者雇用の経緯  「東武グループ」初の百貨店として昭和34年に営業を開始。会社で取り組む「親切一番店運動」の一環として 、社内での「手話講習会」を10数年前から開催。また、従業員対象の「ハンディキャップ理解セミナー」を年 1回実施するなど、障害者への理解を深めている。 改善テーマ  助成金制度を活用した快適な職場環境の実現 改善・取り組みのポイント  鹿沼市の物流センターでは増改築工事の際、スロープと車椅子利用が可能なトイレを整備。しかし作業環境点 検の中で、雨天時の障害者用駐車スペースと、1カ所のみである障害者用トイレが利用しにくいということが 判明。  利用する障害者の従業員からも意見を募り、具体策として、駐車スペースとスロープの両方に屋根を設置する こと、またトイレのレイアウト変更による障害者用トイレの増設の2案を決定。助成金制度を活用し、2案とも に実現させた。  改善により、利用者からは喜びの声を聞くことができた。障害者が従業員として長く仕事をしていくうえでは 、従業員全体の理解と設備環境の整備が大切であると考えている。今後も引き続き、障害者のための快適な職 場環境作りに取り組んでいけるよう努力をしている。 株式会社エスアールエル 代表者:代表取締役社長 田澤裕光 〒190-8567 東京都立川市曙町2-41-19 TEL 042-526-7112 FAX 042-526-7180 業種および主な事業内容  滅菌業務受託、医薬品の開発支援、診療所の開設など臨床検査事業を中心とした医療関連サービス事業 従業員数 3,262名(平成17年6月1日現在)うち障害者数22名 <内訳> 視覚障害者1名(うち重度1名)、肢体不自由者8名(うち重度2名)、内部障害者2名、その他の障害者11名 事業所の概要と障害者雇用の経緯  健康で豊かな社会づくりに貢献する企業理念のもとで、臨床検査事業を中心に生理機能検査以外の医療関連サ ービス事業に取り組んでいる。  養護学校から実習生を受け入れ、研修を経てから雇用を行っている。 改善テーマ  安全を確保し仲間意識を向上させることで、当社グループの一員として働く喜びを実感しながら社会貢献を目 指す 改善・取り組みのポイント  配属先を、冊子の発送、パソコン入力、メール配布、職員の勤務管理など管理部門に充て、安全で働きやすい 職場にするため工夫・改善を試みた。  職場内通行の安全確保のため、シューズは規定のものではなく障害者本人が歩き慣れているものを使用できる ようにし、通路の幅も広く取り障害物を置かないようにした。事務用品は身体への負担の少ないものを採用。 また出退社時間の変更などで通勤時の負担の軽減を図った。勤務中の声かけの励行や、定型業務を設定するこ とによって、仕事の配分を自分で考えつつ周囲にも協力できる職場環境作りに成功した。 p.88 株式会社キユーピーあい 代表者:代表取締役社長 湯田正樹 〒194-0215 東京都町田市小山ヶ丘4-3-3 TEL 042-775-6626 FAX 042-770-6440 業種および主な事業内容  ホームページ作成、名刺作成、各種経理請負業務、伝票照合、売店運営、リラクゼーションルーム運営など 従業員数 24名(平成17年6月1日現在)うち障害者数17名 <内訳> 視覚障害者1名(うち重度1名)、聴覚障害者5名(うち重度3名)、肢体不自由者8名(うち重度8名)、知的障 害者3名 事業所の概要と障害者雇用の経緯  平成14年10月にキユーピー株式会社の特例子会社プロジェクトを発足し、翌15年12月に特例子会社認可、事業 開始。  「障害によって人を区別しない」という理念のもと、障害者全員が同じ条件下で作業が行えるように、また障 害が業務上のハンディにならないように現場の意見を取り入れ、設立当初から熟慮を重ねている。 改善テーマ  社員全員にとってのバリアフリー 改善・取り組みのポイント  障害の克服と業務の円滑化を図るため、スロープの設置や段差の解消で安全を確保。通常より広めの障害者従 業員用駐車スペースを設置し、オフィス内部は配線や段差をなくした完全なバリアフリーに改善。通信機器な どの操作パネルはユニバーサルタイプを、また机や椅子は調整可能なものを採用。事務所に通じる廊下には手 すりを設け、男女別の車椅子対応トイレにはエアータオルや非常ボタンも設置した。オフィスの一角には、車 椅子の人でも利用しやすい高さに作った畳の休憩スペースを配置し休憩の充実を考えた。頻繁に利用するドア をすべて自動化し、引き戸はスライド式ドアに改修。ほかにも車椅子対応型のエレベータや、ハンズフリー電 話の設置、流し台や自動販売機のバリアフリー化などを推進。社員全員が働きやすい職場環境を作ることに成 功した。また応募者からは、バリアフリー設備があるということで精神的に安心したという声を聞くことがで きた。 株式会社リクルートプラシス 代表者:代表取締役社長 島宏一 〒104-0054 東京都中央区勝どき2-11-9 TEL 03-5560-2151 FAX 03-5560-2181 業種および主な事業内容  リクルートグループ各社のオフィス事務系のビジネスサポート 従業員数 119名(平成17年4月1日現在)うち障害者数74名 <内訳> 視覚障害者2名(うち重度1名)、聴覚障害者8名(うち重度6名)、肢体不自由者51名(うち重度31名)、内部 障害者8名(うち重度6名)、知的障害者5名(うち重度4名) 事業所の概要と障害者雇用の経緯  株式会社リクルートの特例子会社として平成2年2月に設立。障害者に対する誤解や偏見が、本来得られるはず の成長と自己実現ややりがいを奪っていると考え、設備の工夫に加え理解の促進に力を入れて、障害者の能力 発揮の機会を最大限にすることをねらう。 改善テーマ  「もの、しくみ、こころのバリアフリー」の徹底による障害の軽減と、障害者の真の社会参加と自立を目指す 改善・取り組みのポイント  設備改善が円滑に行えるよう、ビルの選定時からバリアフリー改修を視野に入れた。駐車場の配置の工夫や車 椅子利用者専用休憩スペースの確保、非常ボタンが備え付けられた男女別の障害者用トイレのほか、重度障害 者でも利用できるトイレを設置。オフィス内通路は幅広く取り、配線や障害物をなくして安全を確保。通信機 器の操作パネルやフロアの各種スイッチは車椅子でも利用しやすい高さに改善。机は高さの調整が可能なもの や特注品で対応し、各フロアのドアはすべて引き戸に変更。ユニバーサルタイプの自動販売機の採用や頻繁に 利用する棚をロータイプにするなど、障害の有無にかかわらず誰もが働きやすい職場環境を整えた。  さらに取り組みの経験を実践知識として、社内見学や講演などをとおして社会に提供。企業経営者や人事担当 者、学校関係者など毎年多数の見学者が訪れる。 p.89 富士ソフト企画株式会社 代表者:代表取締役社長 早津宗彦 〒247-0072 神奈川県鎌倉市岡本2-13-1 TEL 0467-47-5944 FAX 0467-44-6117 業種および主な事業内容  名刺作成、データエントリ、ホームページ作成、サーバー管理、ダイレクトメール発送、生命保険・損害保険 代理店業務、ビル管理、寮社宅管理業務 従業員数 135名(平成17年6月1日現在)うち障害者数87名 <内訳> 視覚障害者2名(うち重度1名)、聴覚障害者15名(うち重度8名)(うち重複2名)、肢体不自由者38名(うち 重度21名)、内部障害者2名(うち重度1名)、知的障害者19名(うち重度1名)、精神障害者11名 事業所の概要と障害者雇用の経緯  平成3年1月発足、平成12年9月に富士ソフトABC株式会社の特例子会社認定。認定にあたり障害者雇用について の積極的な検討を始め、雇用形態などは近隣の特例子会社を訪問し参考にした。現在は親会社から安定した受 注があり、平成13年からは知的障害者の雇用も開始した。 改善テーマ  肢体不自由者が不便を感じることのない職場環境作り 改善・取り組みのポイント  特例子会社認定時に不十分だった肢体不自由者に対する会社設備や環境の整備を実施した。  設備面ではドアを引き戸式に変更し、エレベータを設置。トイレをすべて洋式に改修し、さらに車椅子対応ト イレも設置した。肢体不自由者の通勤時の安全を確保するため、会社と最寄駅の間を車で送迎。通勤が不便な 従業員には住宅の貸借に関する制度も活用している。整備によって、車椅子利用者や重度の肢体不自由者でも 安心して勤務できる職場になった。改善・改修に当たっては、助成金制度を利用した。  精神面でのサポートとして、職業コンサルタントを配置して労働面・生活面の不安の解消を図っている。 株式会社高儀 代表者:代表取締役 高橋秀夫 〒955-8655 新潟県三条市塚野目2341-1 TEL 0256-38-1010 FAX 0256-38-1121 業種および主な事業内容  金属製品製造業、金物(鋏鋸)製造卸業 従業員数 327名(平成17年5月31日現在)うち障害者数4名 <内訳> 肢体不自由者2名(うち重度1名)(うち重複1名)、内部障害者2名(うち重度2名) 事業所の概要と障害者雇用の経緯  慶応2年創業、昭和15年に設立。建築用・家庭用各種工具、DIY用品、ガーデニング用品などの企画・製造およ び販売業務を行う。  障害者雇用に当たって公共職業安定所から紹介があり、施設・設備など受け入れ態勢を整えた後に平成11年3 月から採用を開始した。 改善テーマ  障害者に合わせた施設・設備の改善および介助の実施 改善・取り組みのポイント  車椅子利用の上下肢の肢体不自由者を採用するに当たって作業環境の改善ならびに介助措置対策を実施し、作 業能率と生産性の向上を図った。  車椅子対策として、出退社口に専用上下リフトを設置した。駐車場と建物入口、事務室までの通路の段差を 解消、さらに通行時の安全を確保するために職場内の整理整頓を推進した。また頻繁に利用するドアは半自動 閉式の引き戸に変更し、駐車スペースには風雪雨除けの屋根や側壁を設置。車椅子利用が可能なトイレも整備 した。  職場内ではハンズフリー機能付きの電話を導入し、作業上困難な車椅子の車への出し入れや業務開始・終了 時、飲食時の準備・片付けなどの際には介助員を配置してサポートしている。  取り組みによって、社内では障害者受け入れの気運が高まり、フォローの態勢が構築され、人間関係の改善が 図られた。 p.90 株式会社北陸製版センター 代表者:代表取締役会長 中村浩治 〒934-0037 富山県新湊市片口久々錦799-42 TEL 0766-86-2266 FAX 0766-86-2220 業種および主な事業内容 フレキソ印刷事業、オンデマンド印刷事業、スタンプ事業 従業員数 49名(平成16年6月1日現在)うち障害者数13名 <内訳> 聴覚障害者2名(うち重度2名)、肢体不自由者11名(うち重度6名) 事業所の概要と障害者雇用の経緯  昭和30年創業後、昭和60年に法人化。富山市の能勢金城堂株式会社と提携し現在の社名に改める。  障害者雇用については創業当初から積極的で、新湊工場設立にあたってはバリアフリーを考慮し、自身も車椅 子利用者である会長を筆頭に独自の社風を構築している。 改善テーマ  設備改善による障害の克服と、障害者に対する継続雇用の実現 改善・取り組みのポイント  障害者に対する社会の理解が得られにくかった設立当初の社会風潮に対し、法人化を契機に継続的な障害者雇 用と障害者の自己実現のサポートを実現させるための会社方針を確立した。  車椅子勤務の安全を確保するため、エレベータやトイレの整備のほか、滑りにくい床材の採用と配線の格納を 行うことで、開放的なレイアウトに設計した。  また自立を促し通勤時の負担を軽減するため、障害者の従業員に会社負担で車の免許を取得させた。  こうした取り組みは障害者自身の自立心や積極性の向上にも効果があり、本人の自信につながっている。会社 と障害者双方の取り組みへの姿勢は健常者を含め周囲に好影響を与え、生産性も向上した。  現在、富山県中小企業家同好会のバリアフリー部会に所属し、障害者雇用について積極的に活動している。 大同工業株式会社 代表者:取締役社長 新家康三 〒922-8686 石川県加賀市熊坂町イ197 TEL 0761-72-6023 FAX 0761-72-6458 業種および主な事業内容  各種ローラチェーン、リム・ホイール、スイングアーム、福祉機器の製造・販売 従業員数 864名(平成17年6月1日現在)うち障害者数10名 <内訳> 聴覚障害者1名(うち重度1名)、肢体不自由者4名(うち重度1名)、内部障害者5名(うち重度2名) 事業所の概要と障害者雇用の経緯  昭和8年に自転車チェーン製造会社「国益チェーン」として誕生。昭和13年、現社名に改称した。昭和63年に は「いす式階段昇降機」を創業。就業している従業員が病気や事故により障害者になったケースが多く、はじ めから障害者を雇用したケースは、2例ほどであった。しかし、「いす式階段昇降機」の設計・制作に障害者 の意見を反映する必要があり、新規の採用に至った。 改善テーマ  障害者の視点から福祉機器作りを目指した、初めての「車椅子」使用者の雇用 改善・取り組みのポイント  車椅子使用者M君に内定を出した日から、配属予定の福祉機器設計・製造現場の部長、課長と打ち合わせを行 い、改善箇所の検討を始めた。また、石川県障害者雇用促進協会、石川県リハビリテーションセンター、石川 障害者職業センターの皆様にもご協力いただき、M君を交え職場での改善箇所のチェックを行った。  当初から改善を考えていた部分(フロアーや扉付近の段差)は、M君から現状で大丈夫と言われ、むしろまっ たく気付かなかったコピー機やFAXの高さや外履きで入れる範囲についての指摘を受けて、設備ばかりを気に していたことを知らされた。  今回の雇用で学んだのは、まず本人とよく話し合うことが大事であるということである。 p.91 真柄建設株式会社 代表者:取締役社長 真柄宏司 〒920-8728 石川県金沢市彦三町1-13-43 TEL 076-231-1266 FAX 076-231-1265 業種および主な事業内容  総合建設業 従業員数 678名(平成17年6月30日現在)うち障害者数8名 <内訳> 聴覚障害者1名(うち重度1名)、肢体不自由者2名(うち重度1名)、内部障害者3名 事業所の概要と障害者雇用の経緯  明治40年の創業以来、約100年間にわたり建設を通じて社会の発展に貢献してきた。  一方、障害者雇用については、ここ数年、法定雇用率を下回っていたため、社会的責任を考慮し、障害者雇用 を開始した。 改善テーマ  車椅子使用者に対しての就労可能な環境作り 改善・取り組みのポイント  これまで車椅子を使用する社員を雇用した経験がなかったが、昨年採用することになり、就労可能な環境の整 備が必要になった。  改善のポイントは、  1.社員通用口のスロープ化とドア(引き戸)の取り換え  2.エレベータ内の鏡と手すりの設置  3.勤務する事務室のドアの引き戸への取り換え  4.トイレ内の手すりの設置  5.車椅子からでも手が届くプリンタ台の購入  6.車椅子が納まるスペースのある事務用デスクの購入  改善と取り組みをとおして、車椅子使用者の視点に立つことの重要性を認識した。また、健常者の普段の何  気ない行為の一つひとつも、車椅子使用者にとっては当たり前のことではないことが理解できた。費用の387 万円は、第1種作業施設設置等助成金の適用を受けた。 越前竹人形協同組合 代表者:代表理事 師田黎明 〒910-0331 福井県坂井郡丸岡町上久米田63-1 TEL 0776-66-5666 FAX 0776-66-4828 業種および主な事業内容  竹細工製品の製造販売 従業員数 41名(平成17年7月15日現在)うち障害者数5名 <内訳> 聴覚障害者1名(うち重度1名)、肢体不自由者2名、知的障害者2名(うち重度1名) 事業所の概要と障害者雇用の経緯  昭和61年の「越前竹人形の里」オープン時に、試みとして県内各地の病院で、リハビリを兼ねて竹人形の製作 を依頼した。製作は手仕事が中心で、手先が器用なら下肢障害者でも一人前の匠として育成できることがきっ かけで、雇用に至っている。 改善テーマ  障害者の継続雇用の促進と職場の安全対策 改善・取り組みのポイント  @下肢障害者を雇用する職場のあり方として、1階作業場に座っての竹人形製作のため、材料等の運搬をどのようにするか、 A健常者とのコミュニケーションのとり方、 B仕事の教え方、を全員の取り組みとして分け隔 てなく就業させ、作業等で劣っているところは全員で焦らずに伝授しあってきた。現在では、一人前の匠の技 を持った人材が育っている。  具体例としては、@職場内の障害者用トイレおよび職場内の移動のためのスロープ等を設置、A下肢障害者の ロッカー等を1階に設置、B聴覚障害の見学者に対する聴覚障害を持った従業員による対応などがある。 p.92 飯田信用金庫 代表者:土屋章尋 〒395-8602 長野県飯田市通り町1-6-2 TEL 0265-22-4321 FAX 0265-53-6625 業種および主な事業内容 金融業、協同組織金融金融機関 従業員数 325名(平成17年7月8日現在)うち障害者数3名 <内訳> 肢体不自由者3名(うち重度1名) 事業所の概要と障害者雇用の経緯  狭域高密度経営を堅持し、地域に密着した独自の金融サービスを充実させている。地域の皆様に「頼りがいの ある金融機関」と言われるよう努力し、「真に存在感のある信用金庫」であり続けたいと思っている。雇用は 、@支援や改善策は各方面からの有効な協力が期待できる、A若い人材の雇用を目指す、B障害が重くても仕 事ができる方がいれば雇用しよう、という点に基づいて行われた。 改善テーマ  重度障害者の雇用と社内体制の整備 改善・取り組みのポイント  改善点としては、主に以下の6点が挙げられる。  1.玄関周りの改造  2.エレベーターの改造  3.食堂の改造  4.2階事務室の改造  5.2階トイレの改造  6.車椅子への乗り換え用ベンチ  また、社内の支援・指導体制づくりとしては、障害者職業生活相談員を養成する一方、ジョブコーチととも  に、作業の確定・調整・職場の生活指導等の指導体制を作り実施した。  担当者がインストラクターとなった社内研修では、@5日間の新入社員教育(新入社員としての職場のルール やマナー、金融業に携わる職員としての心得など)、A職場内の勉強会(「受け入れにあたって予想される問 題点と対策」をテーマにした、雇用管理上のノウハウや障害特性・指導上の疑問等の研修)を行い、理解や受 け入れ制の整備を進めた。 日の丸自動車株式会社 代表者:代表取締役社長 川上善之 〒500-8833 岐阜県岐阜市神田町4-10 TEL 058-240-3121 FAX 058-240-4151 業種および主な事業内容  一般乗用旅客自動車運送業・一般貸切旅客自動車運送業ほか 従業員数 425名(平成17年6月1日現在)うち障害者数23名 <内訳> 肢体不自由者14名(うち重度3名)、内部障害者9名(うち重度1名) 事業所の概要と障害者雇用の経緯  昭和12年6月に設立(認可保有台数354台)。岐阜市とその周辺市部に10拠点を置く、タクシーを中心とした旅 客自動車運送業を営業。乗務員数357名のうち障害者のタクシー乗務員数は20名。 改善テーマ  労務管理等の充実(特に、安全・衛生を中心とした教育の充実) 改善・取り組みのポイント  人材の育成とりわけ障害者雇用については、公共性のある運送業として健常者と分け隔てない雇用の促進を率 先して行う方針としている。雇用に当たっては、ハローワーク等を利用した求人をはじめ、社員からも情報収 集を行い、採用後はタクシー乗務も含め、他の業務への配置も検討するなど、適性を考慮した職場配置に努め ている。  また、勤務体制では、変形労働時間制を取ることにより、勤務地や勤務パターンでは、できる限り本人の希望 に沿うようにしている。  指導体制・方法の工夫としては、採用時1〜4名単位で社長による1日6時間の教育訓練を行い、採用後はフォロ ーアップのため、定期的に個別もしくは少人数のグループごとにフォロー教育を実施している。  新車の購入にあたっては、AT車両への切り替えを行うとともに、法規制範囲内での改造をし、使用目的ごと の車両に乗務できるよう配慮した。 p.93 株式会社TENPAKU・R 代表者:代表取締役社長 千葉スイ子 〒440-0832 愛知県名古屋市天白区笹原町1009 TEL 052-891-8142 FAX 052-891-5979 業種および主な事業内容  合成樹脂の成形加工および販売、合成樹脂による加工商品のデザイン設計 従業員数 30名(平成17年6月1日現在)うち障害者数1名 <内訳> 肢体不自由者1名(うち重度1名) 事業所の概要と障害者雇用の経緯  昭和63年11月に会社創立。合成樹脂の成形加工および販売からスタートし、設計コンサルタント業などに事業 を拡大してきた。  障害者の雇用は、設計業務の技術者の募集に当たり、健常者の応募とともに当人が応募してきたことがきっか けである。面接の結果、総合的に判断し採用することに決定したが、事務所をバリアフリー化しなければなら ないため、6カ月待ってもらう条件で採用することにした。 改善テーマ  施設の抜本的な改善・改造による快適な職業生活と健康管理を踏まえた環境作り 改善・取り組みのポイント  作業施設の改善・整備に係る助成金等は、愛知県障害者雇用促進協会が扱っていることを知り、同協会に相談 した。相談を通して障害者雇用に関する助成措置を知り、障害者雇用納付金制度に基づく助成金を申請し、活 用するに至った。  作業施設の改造として、簡易エレベーターと自動ドアの設置、段差の解消と車椅子用トイレの設置などを行っ た。機器の整備による職域拡大のために、既存のCADシステムとは異なるCATIA(キャティアシステム)ソフト を導入した。  これにより、移動が難しい障害者にとって、取引先や社内現場との注文仕様、設計変更等指示、連絡等のやり 取りが、人を介さず設計部門の障害者の席でほとんど可能になった。  雇用した障害者には、将来、設計部門の取りまとめを行うリーダーとして活躍してくれることを望んでいる。 株式会社 三重データクラフト 代表者:代表取締役社長 境克敏 〒514-0301 三重県津市雲出鋼管町1 TEL 059-246-3700 FAX 059-246-3701 業種および主な事業内容  CADによる図面作成、システム開発、各種データ処理・文書作成、地図情報システム、HP作成、OAサポート等 従業員数 55名(平成17年6月1日現在)うち障害者数20名 <内訳> 聴覚障害者1名、肢体不自由者16名(うち重度14名)、内部障害者3名(うち重度2名) 事業所の概要と障害者雇用の経緯  当社は三重県、津市およびJFEエンジニアリング株式会社の出資による第3セクター方式の重度障害者多数雇用 事業所。当社が常に志向するのは、設立目的である「1人でも多くの障害者が社会的、経済的に自立する雇用 の場を創るとともに、安定した事業運営により地域社会の発展に貢献しつつ、社会的責任を果たしていくこと 」。そのため、設立時から、17名(うち障害者11名)でスタートした。 改善テーマ  独身寮設備のバリアフリー化 ―通勤困難な遠隔地からの障害者受け入れに対応― 改善・取り組みのポイント  通勤のハードルをクリアーし、適材をより広域に求めたいとの考えから、当社から車で約15分の所にある久居 独身寮設備のバリアフリー化に踏み切った。バリアフリー化に際しての設備改造・改善のポイントは、@駐車 場・玄関通路への屋根の設置、A玄関のドアの改良、B食堂の半自動ドア設置、C専用トイレ・浴場・洗面所 の設置、D個室改造(3部屋)等。改造に当たっては、実際に障害者に改造現場を見せて、使う人の視点から アドバイスをもらい、設計に取り入れた。  浴槽の縁の高さを低くしたり、シャワーの位置や洗面台の高さを車椅子に合わせた高さにしたりするなど、随 所にアドバイスが反映されている。親会社の全面的な資金協力のもとに、平成16年の初めに完成した。 p.94 株式会社 王将フードサービス 代表者:代表取締役 大東隆行 〒607-8307 京都府京都市山科区西野山射庭ノ上町294-1 TEL 075-595-4486 FAX 075-595-6741 業種および主な事業内容  飲食業 従業員数 1,873名(平成17年6月1日現在)うち障害者数26名 <内訳> 聴覚障害者6名(うち重度4名)、肢体不自由者13名、内部障害者4名(うち重度3名)、知的障害者3名 事業所の概要と障害者雇用の経緯  昭和42年に創業し、昭和49年に会社設立。「より美味しく、より安く、よりスピーディーに」をモットーに、 餃子を中心とした中華料理チェーンとして全国に280店舗を展開している。  ハローワークを通じて障害者雇用率向上に取り組み、平成15年度に法定雇用率を達成。現在26名が勤務し、う ち13名の肢体障害者が本社・工場・店舗の現場で活躍している。 改善テーマ   障害者のための職場環境改善 改善・取り組みのポイント   建物が古く、トイレが和式のままであるなど、肢体障害者に配慮した設備が整っていなかった。また、事務所 が2、3階にあるため、事務職の者は毎日階段の上り下りが必要であるなど、肢体障害者にとっては不便な環境 であった。  その後、障害者の採用時や事務所の改装時に徐々に施設の改善を行っている。  @ある肢体障害者の採用時に、トイレを洋式にした。さらに、トイレ内に手すりを設置するなど、障害者に  使いやすく改装を行った。   A事務所の1階部分の改装時に、玄関へのスロープの設置や階段の手すりの増設を行った。さらに、1階に事務 室が設置され多くの肢体障害者が1階で仕事をすることになり、毎日の階段の上り下りがなくなった。 オムロン パーソネル株式会社 京田辺オフィス 代表者:代表取締役社長 岡田義一 〒610-0331 京都府京田辺市田辺中央1-1-5 ビットダイエービル4階 TEL 075-344-0901 FAX 075-344-0902 業種および主な事業内容  人材派遣業 従業員数 130名(平成17年6月21日現在)うち障害者数11名 <内訳> 聴覚障害者1名(うち重度1名)、肢体不自由者10名(うち重度8名) 事業所の概要と障害者雇用の経緯   平成4年設立のオムロン株式会社100%出資の人材サービス会社。派遣社員も常用雇用者となることから、法定 雇用率達成が大きな課題だった。そこで、アイ・コラボレーション京都(身体障害者共同作業所)と連携し、 スキルを十分に生かせる業務の開拓などのために、京田辺市に新しいオフィスを設置した。平成17年6月には 、法定雇用率を達成している。改善テーマ重度障害者が生き生きと働ける職場環境の構築と快適な職場空間の提供改善・取り組みのポイント  メンバーの主たる業務は、ホームページ制作とマーケティング調査。オフィスには8名の重度障害者が勤務し ていて、個人の体調に合わせて出社日と在宅勤務日を設定している。うち4名については、パソコンを使用し て当社のオフィシャルホームページ制作や社員専用ホームページの更新作業を行っている。また、他の4名に は、マーケティング調査を担当してもらい、当社のコアとなる事業の戦略・立案につながっている。  雇用に際しては、派遣先・派遣元双方で連携を図りながら、現在は雇用元としての責任を果たすべく、障害者 雇用を促進している。職場の主な改善点として、@車椅子専用ユニットトイレの配置、A介助者を常時1名配 置、B車椅子がスムーズに入るように昇降式デスクの設置、C専用パソコン(1人1台)の設置、Dパソコン操 作を容易にするための専用機器のローラーボールの設置、などが挙げられる。 p.95 京都中央信用金庫 代表者:理事長 布垣豊 〒600-8009 京都府京都市下京区四条通室町東入函谷鉾町91 TEL075-223-8294FAX 075-252-2226 業種および主な事業内容  信用金庫業務 従業員数 2,869名(パート含む、平成17年6月30日現在)うち障害者数30名 <内訳> 視覚障害者1名、聴覚障害者9名(うち重度6名)、肢体不自由者18名(うち重度6名)(うち重複1名)、内部 障害者2名 事業所の概要と障害者雇用の経緯  昭和15年6月18日創立。出資金1,238億円、預金残高は3兆2,408億円で、店舗数は124店。 障害者の雇用につ いては、肢体不自由者をはじめ聴覚障害者、内部障害者等、法定雇用率に達するよう努めてきた。採用後は、それぞれの障害者が能力を発揮できる部署に配属し、現在は30名の障害者を雇用している。 改善テーマ 肢体 不自由者雇用に関する職場改善 改善・取り組みのポイント 現在、当金庫は18名の肢体不自由者を雇用しているが、車椅子利用の肢体不自由者が勤務する事務センターでは、休憩室、事務室、トイレのドアが手前への引き 戸になっていたことから、介添えが必要であった。さらにトイレ内に手すりがないことから、大変不便な状態だったため、平成11年にドアを自動に改修し、手すり取り付け工事を行った。  また、肢体不自由者が5名勤務している本店では、肢体不自由者にとって和式トイレが大変苦痛であるにもかかわらず、事務室があるフロアーのトイレには洋式トイレがなかった。そこで、平成15年に洋式トイレへの改 造を行った。 これらの対策によって、障害者の精神的負担や苦痛を取り除くことができた。また、障害者自身が自分を受け 入れてもらえる職場として安心感を持ち、より積極的に仕事に取り組むことができるような職場環境に改善できた。 栄光時計株式会社 代表者:代表取締役社長 小谷年司 〒541-0059 大阪府大阪市中央区博労町3-3-1 TEL 092-713-0121 FAX 092-713-7740 業種および主な事業内容  時計・宝飾品の卸売業 従業員数 626名(平成17年5月31日現在)うち障害者数8名 <内訳> 肢体不自由者6名(うち重度1名)(うち重複2名)、内部障害者2名(うち重度2名) 事業所の概要と障害者雇用の経緯  昭和21年創業の後、全国16拠点に支店・営業所を設置。平成16年に中途障害者となった従業員の職場復帰ならびに今後の障害者雇用のため、改修を行った。 改善テーマ  施設・設備の改善と福利厚生の充実で障害者雇用環境を整備 改善・取り組みのポイント  改善に当たっては障害者本人と家族、障害者の作業療法士、会社上長、施工事業者などで検証を行い、主に車椅子利用上の不便の解消を図った。  検証の結果判明した駐車場の段差はスロープの設置で解消させ、通用口のドアは障害者が自力で開閉できるよう、片引きのワンタッチ自動開閉式に変更した。また十分なスペースを確保した障害者用の洋式トイレを新たに設け、エレベータには鏡や手すりのほか副操作盤を設置。そのほか車椅子勤務に支障が出ないよう、車椅子対応型の机や専用ロッカーの購入のほか、食堂のドアならびにテーブルの改善を図った。  各設備の改修は現在進行中だが、取り組みによって障害者の雇用促進に貢献できること、障害の有無にかかわらず、働きやすい職場環境を整えることの大切さを実感できた。 p.96 障害者ワークセンター新生会印刷所 代表者:代表 小川美知子 〒662-0911 兵庫県西宮市池田町2-10 TEL 0798-35-5304 FAX0798-35-6095 業種および主な事業内容  印刷事業および福祉事業 従業員数 10名(平成17年4月1日現在)うち障害者数6名 <内訳> 肢体不自由者5名(うち重度5名)、内部障害者1名(うち重度1名) 事業所の概要と障害者雇用の経緯  昭和45年に創業。昭和61年に社会福祉法人を設立し、印刷事業ならびに小規模作業所運営を行う。また授産施設向けの技術指導や仕事の提供、作業所の継続的就労訓練の受け皿的な役割も担っている。 改善テーマ  配置転換によって障害者の働く環境を改善 改善・取り組みのポイント  車椅子を利用している肢体不自由者の継続雇用のため、配置を転換し負担を軽減させることを目指した。  職業コンサルタントを中心に現場スタッフとの検討を重ね、配置先を事務部門に決定。ペア態勢をとり、進捗を常に確認しながら少しずつ業務を任せていった。また助成金を活用することにより、パソコンを設置し、配置先事業所近辺に駐車場も確保した。  取り組みによって障害者本人の達成感やモチベーションが高まり、段階的に業務量を増やすことができた。  また、障害者本人が自身の経験を生かした介護体験実習など、福祉部門への受け入れ担当業務に積極的に取り組んでおり、今後とも活躍が期待されている。 橿原電機株式会社 代表者:竹中邦夫 〒634-0012 奈良県橿原市膳夫町477-11 TEL 0744-22-3409 FAX 0744-22-8941 業種および主な事業内容 電気機械器具製造 従業員数 81名(平成17年5月1日現在)うち障害者数12名 <内訳> 聴覚障害者1名(うち重度1名)、肢体不自由者2名(うち重度2名)、知的障害者9名 事業所の概要と障害者雇用の経緯  昭和35年より障害者を継続雇用し職場定着に努力してきたが、障害者の方々が作業するには最適の工場とはいえないため、平成6年第一種重度障害者施設設置等助成金を受給し、新工場を完成させ、肢体不自由者にも応募してもらえるように設備を完成した。 改善テーマ  達成感のある職場環境づくり(車椅子を使用する肢体不自由者の職場改善事例) 改善・取り組みのポイント  組み立てから出荷までの複数の工程において、健常者と障害者の双方の作業効率を高める。また安全面においても機械設備の配置を見直し、作業スペースを確保するよう改善した。なお、今回の取り組みは、主に車椅子を使用する肢体不自由者の職場改善内容である。  設備面 (1)類似設備の集合による作業負荷の平準化、作業移動の短縮 (2)工具使用度の軽減 (3)品物の固定方 法の改善  能率面 (1)ミニセル生産方式による工程数削減。作業台の高さが変更でき、運搬操作位置等を変えられる。   (2)計測器のコードレス化による手元計測  安全面 (1)床面の電気配線を廃止し、天井配線に改善 (2)設備棚高さを上下自在に調整できるよう改善 p.97 松下哲也登記測量事務所 代表者:松下哲也 〒646-0005 和歌山県田辺市秋津町205-9 TEL 0739-24-5423 FAX 0739-24-7690 業種および主な事業内容 司法書士、土地家屋調査士、行政書士業 従業員数 19名(平成17年6月30日現在)うち障害者数3名 <内訳> 肢体不自由者3名(うち重度2名) 事業所の概要と障害者雇用の経緯 昭和58年に土地家屋調査士に登録し、個人事業として開業した。その後行政書士、土地改良換地士、海事代理士、司法書士に登録し、事業を拡大してきた。平成4年に初めて障害者を雇い入れ、これまでに4人を雇用。そのうち3名が今も勤務し、最も長い者で13年働いている。 改善テーマ 障害者にも、健常者にもやさしく使いやすい設備。仕事を円滑に行える職場環境。 改善・取り組みのポイント 新事務所の建設に伴い、エレベーター、障害者用トイレ、空調設備、手すり、自動ドア、専用駐車場を設置した。 廊下や階段等には感知センサ付電気を導入し、スイッチもすべてタッチパネルにした。電源もすべて天井供給型に変更した。書庫や車庫の電話は低い位置に設置するよう改善した。 また、新事務所と旧事務所をつなぐ接続部分にスロープを設置したほか、開き戸から引き戸への改善、十分な通路幅を確保できるよう移動棚の設置を実現した。 従来は、障害者・健常者が共に不便を感じ、仕事にも支障を来していたが、今回の取り組みによって働きやすい職場へと改善することができた。 千代三洋工業株式会社 代表者:代表取締役社長 森本信行 〒680-0904 鳥取県鳥取市晩稲54-1 TEL 0857-28-8477 FAX 0857-28-8933 業種および主な事業内容 電子部品(受光素子、レーザーダイオード、LED応用商品)等の検査組立製造販売 従業員数 97名(平成17年6月1日現在)うち障害者数24名 <内訳> 聴覚障害者10名(うち重度8名)(うち重複2名)、肢体不自由者11名(うち重度8名)(うち重複2名)、内部障害者2名(うち重度2名)(うち重複1名)、知的障害者1名 事業所の概要と障害者雇用の経緯 「働くことを希望する重度の障害のある人々に安定した雇用の場を創出すること」を設立の目的として、平成5年10月に操業開始。鳥取三洋電機株式会社、鳥取県、鳥取市の共同出資による第三セクター方式の重度障害者多数雇用事業所で、障害者雇用促進法に基づく鳥取三洋電機株式会社の特例子会社。受光素子や半導体レーザー、LED発光ダイオード応用商品の検査、組立、製造を行う。 改善テーマ 雇用管理および雇用環境の改善・工夫 改善・取り組みのポイント 障害の有無にかかわらず「人材」として成長してもらうために「チャレンジ55」活動を発足し、5年計画に基づく運動を展開している。 1.雇用管理等の改善・工夫   @個人面談による意識の改革   Aパソコン・メールを利用した情報交換・意思疎通   Bスキルアップ、多能工化の推進 2.雇用環境等の改善・工夫   C「心のバリア」の撤廃 3.その他   D小学校・養護学校など地域社会への貢献 これらの取り組みによって、全員の認識がひとつになり、業務に対する前向きな意欲が生まれ、健全な競争意識のもとで喜びや達成感を得るようになった。また、全員がメールを送受信できるようになった。 p.98 鳥取いなば農業協同組合 代表者:代表理事 組合長 中島建 〒680-0942 鳥取県鳥取市湖山町東5-261 TEL 0857-32-1134 FAX 0857-32-1130 業種および主な事業内容 営農指導、金融、共済、購買、販売事業ほか 従業員数 886名(平成17年6月1日現在)うち障害者数13名 <内訳> 聴覚障害者1名、肢体不自由者7名(うち重度3名)(うち重複1名)、内部障害者2名(うち重度1名)、知的障害者3名 事業所の概要と障害者雇用の経緯 農業協同組合:正・准3万人の組合員組織。ハローワークから「法定雇用率未達成事業所」であるとの指摘を受け、平成13年に障害者雇用4年計画を作成し、ハローワークや鳥取障害者職業センターへ相談するとともに、障害者雇用のセミナー等に積極的に参加し、本格的に障害者雇用の取り組みを始めた。 改善テーマ 障害者の視点に立った職場環境へ 改善・取り組みのポイント 障害者の継続雇用を目指すうえで、新規学卒者の採用を重点に考える採用方針にし、平成15年より養護学校の実習受け入れを開始した。その際、当組合施設に障害者用トイレがなかったことを受けて、障害がある職員、またはお客様にとって不便と思われる箇所の点検を、人事課を中心としたプロジェクトチームを組んで行った。 そして、平成16年4月に採用を決定した車椅子を使用する障害者の受け入れにあたり、事務所内を移動しやすいようレイアウトを変更し、また障害者用トイレの設置、正面玄関へのスロープ・手すりの改修および点字ブロックの改修設置を行った。 平成17年4月には、車椅子の職員にとって不便であった開き戸を引き戸に取り換えた。 株式会社 イーオン・イースト・ジャパン 代表者:代表取締役 安藝清 〒700-0985 岡山県岡山市厚生町2-3-23 TEL 086-224-1200 FAX 086-224-0300 業種および主な事業内容 全国展開の英会話学校を統括する本部 従業員数 1,552名(平成17年6月1日現在)うち障害者数12名 <内訳> 聴覚障害者3名(うち重度3名)、肢体不自由者7名(うち重度6名)、内部不自由者2名(うち重度1名) 事業所の概要と障害者雇用の経緯 「英会話のイーオン」グループの一社。当社は3本部で構成され、その下に地域の英会話学校を擁している。これらの本部を統括する部門が岡山本社にあり、各本部の各部署に大半の障害者が勤務している。平成14年3月から外国人労働者の雇用保険の適用が拡大され、常用労働者が急増したことを契機として、本格的に障害者の雇用を検討することとなった。 改善テーマ @雇用者の創出と確保を図るため、現行業務の見直しと新たな仕事の創造。 A障害者の職場への定着と心のバリアフリー。 改善・取り組みのポイント 柔軟な発想で事業全体を見直したところ、障害者の積極活用が可能な業務を創出できた。 例えば、ホームページ等のデジタルコンテンツの作成、教材の倉庫管理や配送業務、経理等の帳票チェックやデータ入力などである。助成金を利用し、マークシートリーダーや半自動梱包機等の機材を導入することで、これらの部門に障害者の雇用を創出することができた。 また、新たに印刷センターを立ち上げた。全国の各学校で使用するチラシや名刺、ポスター等を一手に取り扱っており、全社的な経費削減にも大きく貢献している。 さらに、障害者用トイレ、スロープ、手すりの設置など、設備面でのサポートにも取り組んでいる。 p.99 JFEアップル西日本株式会社 代表者:代表取締役社長 深見正毅 〒720-0931 広島県福山市鋼管町1 TEL 084-945-3962 FAX 084-945-3966 業種および主な事業内容 パソコン入力、計器検査等その他の事業サービス業 従業員数 73名(平成17年6月1日現在)うち障害者数46名 <内訳> 聴覚障害者1名(うち重度1名)、肢体不自由者29名(うち重度18名)(うち重複1名)、内部障害者5名(うち重度4名)、知的障害者1名、その他の障害者10名 事業所の概要と障害者雇用の経緯 平成4年4月、NKKの特例子会社として設立。同年10月より営業を開始し、事業と雇用の拡大を図ってきた。平成16年4月、現社名へと変更してさらなる雇用拡大を図り、同年8月に倉敷事業所を設立した。平成4年4月当時の障害者雇用数は10名程度だったが、平成17年6月時点では46名まで増えている。 改善テーマ 万能投影機の高さ調整で特定作業を介助 改善・取り組みのポイント 計器検査職場では、定盤(高さ750mm)上に設置されている万能投影機を使用して各種の計量器を検査している。ところが、万能投影機の投影画面が床上1,800mmの位置にあるため、車椅子使用者は精密検査ができないという問題があった。 そこで、車椅子使用者も、車椅子以外の下肢障害者や健常者も検査・測定ができるよう改善を図ることとした。具体的には、車椅子使用者の目線が、万能投影機画面の真正面になるように架台(300mm)を作成し、万能投影機を移設した(制作費20,000円)。 この改善により、車椅子使用者による検査が可能になったほか、腰痛の防止、長時間検査での疲労軽減、作業効率の向上等の成果を得られた。 株式会社福屋 代表者:代表取締役社長 大下龍介 〒730-8548 広島県広島市中区胡町6-26 TEL 082-246-6040 FAX 082-246-6698 業種および主な事業内容 百貨店 従業員数 1,200名(平成17年6月1日現在)うち障害者数10名 <内訳> 視覚障害者1名、聴覚障害者3名(うち重度2名)、肢体不自由者5名(うち重度2名)(うち重複3名)、内部障害者1名(うち重度1名) 事業所の概要と障害者雇用の経緯 広島唯一の地元百貨店として、昭和4年の創業以来愛されてきた。百貨店の営業活動の大半は、売り場におけるお客様との対面販売業務である。しかし、接客においては障害者雇用がなかなか進まないのが実情。一方、営業活動のサポート部門や事務部門においては、比較的順調に職場適応が進んでいる。 改善テーマ 1.下肢機能障害者の職場開発 2.定着へのソフト(コミュニケーション)・ハード(職場環境)両面のケア 改善・取り組みのポイント 当店の商品券発送業務等を行う作業センター拡充に当たり、障害者の職場環境改善に取り組んだ。当センターでは、車椅子使用の下肢障害者1名がPCへの入力作業や包装作業等に従事している。具体的な改善内容は以下のとおり。 @通路や作業スペースを広くとり、車椅子でもスムーズに移動ができるようにした。 A1階荷捌き場に、通勤用自動車の専用駐車スペースとエレベーターまでの車椅子専用レーンをラインで確保し、安全と利便性向上を図った。 B7階付帯施設に身障者トイレを設置。女子用の既存のトイレ2台のうち1台をウォシュレット付身障者用トイレに改修した。 p.100 赤坂印刷株式会社 代表者:代表取締役 赤坂善通 〒745-0861 山口県周南市馬神松川854-1 TEL 0834-66-0001 FAX 0834-66-0007 業種および主な事業内容 印刷業 従業員数 137名(平成17年6月30日現在)うち障害者数1名 <内訳> 肢体不自由者1名(うち重度1名) 事業所の概要と障害者雇用の経緯 昭和28年の創業以来、多様化する時代のニーズに合わせ、積極的に設備投資を行い生産性を向上させ、高品質・短納期・コストダウンの実現を図ってきた。西日本屈指の実績を持つ事務用印刷を中心に各種印刷物の提案力を向上させ、顧客要望にこたえている。写植等の業務で障害者雇用を行い、現在に至っている。 改善テーマ 新しい職場配置へのチャレンジ(職場改善の実施) 改善・取り組みのポイント 平成元年の入社当時は、障害に関係なく働ける写植業務を行っていたが、印刷方式のコンピュータ化により他の職場への変更を余儀なくされた。 異動したのは、フォーム部の印刷機械への紙出し業務。しかし、これは重量物である原反の在庫管理から配送までを行う業務で、職場環境の改善が必要となった。 具体的な改善内容は以下のとおり。 @紙出し業務用にエレベーターを設置し、障害者でも無理なく行えるよう環境を整備した。 A本人の意欲と努力により、フォークリフトの運転免許証を取得できた。 B趣味の写真を生かし、社内報の編集長として積極的にコミュニケーションを図った。 本人の前向きなチャレンジ精神によって、ハンディを乗り越えて、17年間にわたり勤務し続けている。 株式会社岡本鉄工所 代表者:代表取締役 岡本仁志 〒750-0093 山口県下関市彦島塩浜1-1-9 TEL 0832-66-7155 FAX 0832-66-7157 業種および主な事業内容 輸送用機器製造業(船舶艤装品) 従業員数 35名(平成17年6月30日現在)うち障害者数6名 <内訳> 聴覚障害者5名(うち重度4名)、肢体不自由者1名(うち重度1名) 事業所の概要と障害者雇用の経緯 昭和28年10月輸送機器製造業として創業。平成7年海外品輸入業者(中国)を開始。平成14年「中小企業経営革新支援法に基づく経営革新」「ISO9001:2000」を取得し、「機動通風機」「舷梯」の静から動への新規事業進出を行った。船舶部品は重量物のため運搬操作は身体への負担が大きく、職場環境を改善し、負担軽減に取り組んできた。 改善テーマ 両下肢機能障害者(2級)の負担軽減のための職場環境の改善 改善・取り組みのポイント 両下肢機能の障害者は立位での長時間作業や重量物の持ち運びは不可能である。しかし、船舶部品は鉄製やステンレス製の重量物が多く、また、製品の種類によって高さや大きさがさまざまであるため、作業中に座ったままでの移動も不可能である。このため、製品を吊り上げ垂直に移動させるホイストレーンの操作にも時間がかかるうえ、かなりの作業負担がかかる。安全かつ本人の技能を活かし、仕事の定着と継続を図るため、ハンドリングロボットの導入を行った。ハンドリングロボットの導入にあたっては、つぎの機能改善を行うことで、本人への身体負担の軽減と安全かつ大幅な作業能率の向上を図ることができた。 ・リフティングネットの取り付け ・バランサーマシンの形式変更によるアームの補強 ・広範囲な製品移動のため外径寸法の変更 p.101 冨士高圧フレキシブルホース株式会社 代表者:代表取締役 藤井勝 〒743-8691 山口県光市島田6-2-20 TEL 0833-71-1550 FAX 0833-71-1585 業種および主な事業内容 自動車用の燃料管・ブレーキホースの製造販売 従業員数 143名(平成17年4月1日現在)うち障害者数3名 <内訳> 肢体不自由者3名(うち重度2名) 事業所の概要と障害者雇用の経緯 昭和22年設立。自動車用の燃料管(ヒューエルホース)・ブレーキホースの製造販売を開始。昭和46年新工場建設、スティールパイプ製品の生産ともに新技術の開発と生産設備を増強。平成8年海外企業と技術供与など事業の部分的海外展開を図る。 昭和58年から障害者の雇用を始め、以降単数人の障害者雇用を推進。現在技術系2名、事務系1名が正規社員として就業。 改善テーマ バリアフリーを目指す職場環境の改善および働きやすい職場環境を目指して 改善・取り組みのポイント (バリアフリーを目指す職場環境の改善) 本人の視点で通勤用自動車の駐車場〜更衣室〜職場〜トイレ洗面〜食堂など段差・階段の現状把握を行い、具体的な改善に取り組んだ。来客用の構内駐車場に通勤車輌の乗降用スペースを確保し、移動歩行距離の短縮化を図った。事務室などの出入り口の段差を3cm以下にし、またトイレ・階段の手摺りなど歩行補助施設を設置、シャワー式などトイレ手洗いを改良した。仕事服での通勤を認め、着替え(特にズボン)の負荷を軽減した。 (働きやすい職場環境を目指して) 平成13年の職務能力制度の採用により、障害者も組み立て作業をすることとなり、安全で安心できる職場が不可欠となった。部品組み立をすべて片方の手で行える簡易の機械設備を導入し、健常者と同様の生産性を可能にした。また、本体部品を片方の手で1回持ったら全部完成させられる機械設備を導入し、歩行移動の安全通路を確保した。さらに、全自動組み立ての機械設備の調整スイッチをトグル式にして調整順番のミスや調整工程の忘れ防止を図った。 ヤマト運輸株式会社 山口支店 代表者:主管支店長 長尾裕 〒747-1221 山口県山口市大字鋳銭司字鋳銭司団地北447-45 TEL 083-986-3805 FAX 03-986-3568 業種および主な事業内容 貨物自動車運送事業 従業員数 329名(平成17年6月16日現在)うち障害者8名 <内訳> 肢体不自由者4名(うち重度3名)(うち重複1名)、知的障害者4名 事業所の概要と障害者雇用の経緯 平成8年に山口支店を開設した当初から、将来の身障者の雇用を見越してエレベータ・スロープ・バリアフリーの付帯設備を設置した。 平成14年に障害者1名を雇用し、翌15年には障害者(車椅子)男女1名ずつ採用した。平成15年からは養護学校卒業の知的障害者を継続的に採用。障害者の中途採用も積極的に推進するとともに、自立に向けての支援体制・定着管理にも重点を置いている。 改善テーマ 障害者用トイレを設置し働きやすい職場環境・定着管理を目指して 改善・取り組みのポイント トイレの改善に当たって3名の障害者から安全かつスムーズに利用するための意見を聴取し反映した。 1.車椅子での入・退室をスムーズにするため、トイレ入口の衝立の撤去・間口の拡大およびトイレ個室のドアを押戸式に変換した。 2.トイレ個室内の移動性を高めるため、男性用小便器1基を撤去し、個室の広いスペースを確保した。 3.女性用トイレ個室に手摺りを新設した。 4.その他の職場環境の改善として、一般従業員用とは別にできるだけ職場に近い場所に幅3.4mの広い障害者用駐車場3台分を確保した。 p.102 有限会社リベルタス興産 代表者:代表取締役 有田信二郎 〒755-0009 山口県宇部市東初見町525-110 TEL 0836-35-7878 FAX 0836-35-7646 業種および主な事業内容 印刷、デジタル業務、清掃業務 従業員数 35名(平成17年6月30日現在)うち障害者23名 <内訳> 聴覚障害者6名(うち重度6名)、肢体不自由者10名(うち重度7名)、内部障害者1名(うち重度1名)、知的障害者6名(うち重度4名) 事業所の概要と障害者雇用の経緯 平成3年4月障害者雇用を目的とする宇部興産株式会社の特例子会社として設立(資本金5,000万円)。同年8月宇部市東初見町に障害者の雇用の促進等に関する法律に基づく重度障害者多数雇用事業所の建設に着工、同年12月営業開始。平成4年1月宇部興産株式会社特例子会社の認定を受ける。平成15年9月清掃事業を開始。 改善テーマ 重度肢体不自由者の就労を可能にするハード・ソフト、そして心のバリアフリーを目指して 改善・取り組みのポイント リベルタス興産の「リベルタス」とはラテン語で「解放」を意味し、自由な発想の企業を目指している。 1.職場定着推進会議等の開催 障害者が参加して円滑に仕事をできる方法を提案・検討。その結果、聴覚障害者と肢体不自由者がペアを組んでお互いの障害を補う作業体制を採用。また、カウンセラーによる月2回のメンタルへルスケアを実施している。 2.社内をバリアフリーに 廊下の出会い頭の事故を防ぐためカーブミラーを設置。車椅子用駐車場から出入口スロープに雨でも濡れないよう屋根を付けた。廊下は車椅子がすれ違える2m幅にし、手摺りを付けた。吊り下げドアにして床の段差をなくした。 3.使いやすい事務用機器 「らくらくマウス」「足で操作しやすいトラックボール」「音声入力ソフト」などパソコン操作の補助装置がある。車椅子使用者が使いやすい机や車椅子のまま使用できる高さを抑えたコピー機を設置した。 大塚製薬株式会社 徳島工場 代表者:常務執行役員 真鍋義曄 〒771-0192 徳島県徳島市川内町加賀須野463-10 TEL 088-665-2126 FAX 088-665-5662 業種および主な事業内容 医薬品の製造 従業員数 1,995名(平成17年6月20日現在)うち障害者18名 <内訳> 聴覚障害者6名(うち重度3名)、肢体不自由者8名(うち重度4名)、内部障害者4名(うち重度2名) 事業所の概要と障害者雇用の経緯 人々の病気の治癒に寄与する医薬品事業、日々の健康をサポートする消費者商品事業を行う企業として昭和39年に設立。その目的から自ら創りだした製品が病気の治癒と健康に役立つことを願い、地域社会や自然環境との調和を図りながら「グローバル価値創造企業」を目指している。企業の社会的責任として障害者雇用に継続的に取り組んでいる。高齢化社会に鑑み高齢者の受入れにも注力したい。 改善テーマ 加齢による障害の進行に対応した職場環境の整備 ―継続雇用のための職場改善― 改善・取り組みのポイント @勤務場所の変更  2階の事務室での移動の困難さを軽減するため、1階の事務室に移動した。 A雇用管理サポートの活用と電動車椅子の導入  障害者職業センターの雇用管理サポートの情報を基に、協力整形外科医から、移動時の安全確保から電動車椅子の利用の提案を受けた。障害者作業施設設置等助成金を活用して電動車椅子の導入を図った。 B施設改善  電動車椅子の導入に当たって、施設内で整備すべき個所について検討し、(ア)入口のスロープ、柵の設置、(イ)業務室入口のドアを引戸にする、(ウ)トイレドアを軽量化し、電灯の点灯・消灯を自動化し、緊急時のベルを設置、(エ)エレベータを障害者用に改修。寮の施設改善も行い、バリアフリーの浴室・トイレを設置。 p.103 有限会社ファクトリー 代表者:代表取締役 上田善道 〒780-0822 高知県高知市北本町3-10-4 TEL 088-883-6636 FAX 088-883-2231 業種および主な事業内容 障害者支援制度に基づく居宅・通所介護事業、高齢者福祉事業、その他の社会福祉事業、デザイン業 従業員数 29名(平成17年6月30日現在)うち障害者1名 <内訳> 肢体不自由者1名(うち重度1名) 事業所の概要と障害者雇用の経緯 平成2年デザイン会社として設立。介護保険や支援費制度の開始とともに企画・デザイン・コンピュータ情報制作、障害者ワークショップ等の事業を拡大し、介護サービスのみならず生活コーディネイトの観点から積極的に業務展開を図っている。 障害者雇用はこれらサービスを提供する「はぴまちステーション・はりまや楽舎」事務部門で介護保険や支援費、県独自事業等の請求事務を行うために、車椅子利用者を平成15年秋に採用。 改善テーマ 障害者が当たり前の生活を当たり前として過ごすための職場環境の改善 改善・取り組みのポイント 1.物理的環境の改善  @玄関前には数段の階段があるため昇降用リフトを設置、Aグループホームが2階のためエレベータを設置、B複数箇所の床の段差を解消するともに、障害者用トイレを設置、C通勤用自動車の駐車場を2台分借り上げた、D車椅子のまま印刷物が取れるようプリンターの設置位置を変更。 2.サポート体制の整備  @雨天時には事務所前に車寄せし、駐車場へは同僚が移動する協力体制を確保、A交通渋滞による通勤負担を軽減するため勤務時間を9:30からに設定。余裕のある日は早退を認めるとともに、月1回の通院日も確保している、Bヘルパーステーションの支援費や介護保険の請求事務の関係上、市役所・保健所、国民健康保険連合会の窓口まで書類を持参することがある。多くの場所がバリアフリーになっているが、駐車場が満車と予想されるときはスタッフが同行支援している。 九州ダンボール株式会社 代表者:代表取締役 社長 山村茂雄 〒833-0005 福岡県筑後市大字長浜1958 TEL 0942-52-1185 FAX 0942-52-4185 業種および主な事業内容 段ボール製造・販売 従業員数 69名(平成17年6月24日現在)うち障害者2名 <内訳> 肢体不自由者2名 事業所の概要と障害者雇用の経緯 昭和28年久留米市に設立、平成3年に本社工場を筑後市に移設。環境に配慮し、地域とともに発展することを目標に努力している。 障害者はこれまで合計4名を採用、うち現在2名が勤務中である。昭和49年4月に勤続15年・58歳が糖尿病、慢性筋萎縮のため退職、平成17年6月に勤続32年・64歳が糖尿病による歩行困難により任意退職となった。 改善テーマ 雇用環境等の改善・工夫および施設設備の改善 改善・取り組みのポイント 重量物の運搬が多い業種のため、上腕部切断の障害者を段ボール製造過程で使用する糊製造に配置換えすることとしたが、約20kgの添加物の搬送と両手で操作するボタン式パネル操作業務の改良が必要となった。このため、重量物搬送のためにターンテーブル付き台車を特注し、1階と2階に配置。1階から2階への搬送波は、特注の籠型電動リフトにより持ち上げることとした。ボタン式パネルは各種内部機器・回路を変更することによって片手のタッチで処理できるように改修を行った。 雇用環境の改善・工夫および施設・設備の改善は、社員の会社に対する信頼感と安全操業に対する意識の向上、さらに社員の団結に大いによい影響を及ぼした。 p.104 株式会社佐賀電算センター 代表者:代表取締役 宮地大治 〒849-0915 佐賀県佐賀市兵庫町大字藤木1427-7 TEL 0952-34-1500 FAX 0952-34-1541 業種および主な事業内容 情報通信業、コンピュータによる受託計算等 従業員数 173名(平成17年6月1日現在)うち障害者2名 <内訳> 聴覚障害者1名(うち重度1名)、肢体不自由者1名(うち重度1名) 事業所の概要と障害者雇用の経緯 昭和50年に佐賀県内の有力企業140社の共同出資による総合情報処理サービス企業として設立。 SEプログラマー等のうち内勤の技術者については積極的に障害者の雇用を考えており、今回身体障害者ソフトウェア開発訓練センターの修了者を採用。今後も同程度の技術レベルの障害者の雇用を継続したい。将来は障害者の在宅勤務体制を整備したい。 改善テーマ 本人が職場で抱える不安の解消(社屋内の移動に関する不安、ソフト開発技術者としての業務に関する不安) 改善・取り組みのポイント 社屋内の階段には手摺りが片側にしかないため、出勤・退社等の混み合うときはもちろん、通常業務の上でもフロアー間の移動を容易にする必要があった。 このため、1階から3階までの階段の左右両サイドに手摺りを設置し、階段を降りる際の不安を解消した。また近隣のフロアーの移動は運動をかねて安心して利用できるようになった。 ソフト開発技術者の育成に当たっては、複数名のチーム体制を組み、極力残業しなくて済むように全体でカバーすることとした。その中で、ソフト開発のノウハウの習得等多様な経験を積む機会を提供したことが業務に対する不安を払拭し、達成感に変えていくことができた。現在は、業務量も向上し一人前のソフト開発技術者として貢献できている。 佐銀コンピュータサービス株式会社 代表者:代表取締役社長 川原博明 〒840-0812 佐賀県佐賀市愛敬町7-17 TEL 0952-22-0552 FAX 0952-29-3424 業種および主な事業内容 サービス業(情報処理受託・IDCサービス・資金決済に関わるシステム開発) 従業員数 88名(平成17年4月1日現在)うち障害者1名 <内訳> 肢体不自由者1名(うち重度1名) 事業所の概要と障害者雇用の経緯 昭和59年7月株式会社佐賀銀行グループの一員として設立。設立主旨は、コンピュータを利用したサービスで広く地域社会に貢献すること。 障害者雇用は、設立主旨に鑑み会社としての社会的責任の一端であると考えており、佐賀障害者雇用促進協会からの就職面接会に参加し、採用を決定した。 当初は電算機のオペレータとして、現在は口座振替データの受け付け・返却等の業務を担当している。 改善テーマ 障害者が働きやすい職場環境の整備 改善・取り組みのポイント 佐賀銀行別館は昭和46年建築のため、障害者の職場環境としては対応が遅れていた。障害者本人からは遠慮もあり、積極的に要望が出されない。障害者にとって働きやすい環境作りは雇用者の責任として、雇用者側から具体的改善事項を提示し本人の意向を確認した。当社雇用の障害者は、自力での歩行や両手が少し不自由であるが補助具等は必要としない。 階段はエレベータの利用で負担とならないが、一番困っていることは和式トイレとのことであった。和式便座1基をウォシュレット式の様式便座に替えるとともに手摺りや付帯設備を設置した。 今回の改善により、障害者のみならず定年延長や高齢者雇用に伴う職場環境の改善にもなったと考えている。今後もできることから職場環境の改善に積極的に取り組んでいきたい。 p.105 株式会社旭屋 代表者:取締役社長 吉岡英一 〒851-2101 長崎県西彼杵郡時津町西時津郷1000-200 TEL 095-882-1230 FAX 095-882-8114 業種および主な事業内容 紙器製造・販売 従業員数 104名(平成17年7月15日現在)うち障害者3名 <内訳> 肢体不自由者1名、知的障害者2名(うち重度2名) 事業所の概要と障害者雇用の経緯 ジュエリー用・ギフト用パッケージの専門企業として企画・製造・販売を手掛ける大手企業である。 障害者雇用には、従来から重度知的障害者2名を採用し、今回トムソンプレス機担当者を1名採用した。また毎年養護学校の職場実習生を受け入れるなど障害者とともに働く和気あいあいとした職場であり、障害者雇用率も4.8%となっている。 改善テーマ 中途採用の障害者のための職域拡大による継続雇用 改善・取り組みのポイント 上腕切断の障害者の配置換えのため、職務の変更と作業環境の整備、パソコン研修の実施に取り組んだ。 1.職務転換  製造工職から製造工程管理業務職に職種転換するとともに能力開発に努めた。製造過程を熟知していることや明るい性格で人当たりのよい人柄であることなどから、管理業務で十分にやって行けると判断した。 2.パソコン研修  能力開発の一環として、長崎県産業振興財団の派遣講師によるパソコン研修を受講。 3.指導・教育体制の配慮  対象者を課長と班長の間に配置し、きめ細かな指導・教育ができるように配慮した。 4.専用パソコンの購入  中途障害者作業施設設置等助成金を活用し、多少者専用のパソコンを購入。将来計画中の商品管理システム導入時には責任者とする予定であり、本人も積極的に取り組んでいる。 アメックス熊本株式会社 代表者:代表取締役社長 中川義明 〒862-0913 熊本県熊本市尾ノ上1-3-9 TEL 096-384-6565 FAX 096-384-6594 業種および主な事業内容 福祉用具の販売、レンタル、義肢装具製作販売、福祉用具の修理、製造 従業員数 11名(平成17年6月30日現在)うち障害者数5名 <内訳> 肢体不自由者5名(うち重度4名) 事業所の概要と障害者雇用の経緯 福祉用具の販売・レンタルを中心に、義肢装具、車椅子の修理などを行っている事業所。会社設立当時から障害者を雇用してスタートし、現在も社員13名中6名が障害者である。平成16年10月には厚生労働大臣賞を受賞した。 なお、平成17年6月に役員の改選があり、障害者1名が関連会社である有限会社ニッシン自動車工業熊本に代表取締役として移籍した。 改善テーマ @工業用ミシンの操作を脚レバーから手元スイッチに替えて、下肢障害者でも使えるようにする。 A修理作業中の車椅子を簡易リフトで吊るした状態で移動させ、車椅子使用者でも容易に作業できるようにする。 改善・取り組みのポイント @手でのミシンの操作には、かなりの力が必要なうえ、操作をしている間は片方の手が使えないため、非常にやりにくい。 そこで、昇降レバーにエアシリンダーを取り付け、スナップスイッチで押さえがねを上下できるように改善した。 その結果、仕事の幅が広がり、車椅子のシートなどの修理関係は、ほとんど1人でこなせるようになった。 A電動車椅子のモーターを利用して吊り下げ用のリフトを作り、横の移動なら手動で軽くできるようになった。 これまでは健常者に手伝ってもらっていた重たい修理などの作業がほとんど1人でできるようになり、仕事の効率も上がった。 p.106 株式会社旭化成アビリティ 延岡営業所 代表者:営業所長 堀口雅一 〒882-0847 宮崎県延岡市旭町3-1-1 TEL 0982-22-2770 FAX 0982-22-2672 業種および主な事業内容 印刷製本業 従業員数 75名(平成17年6月1日現在)うち障害者数67名 <内訳> 視覚障害者3名(うち重度3名)、聴覚障害者10名(うち重度7名)、肢体不自由者37名(うち重度14名)(うち重複1名)、内部障害者17名(うち重度13名)、精神障害者1名 事業所の概要と障害者雇用の経緯 昭和60年8月、旭化成工業株式会社の障害者の法定雇用率達成および従業員の子弟のうち障害者の雇用促進を目的に特例子会社株式会社サン・アビリティを設立。その主力営業所として同年12月に障害者10名、出向者1名で延岡営業所が業務を開始した。平成5年に現在の社名に変更し、同年、法定雇用率を達成した。 平成6年に営業所として労働大臣表彰を受賞。平成10年および11年には全国障害者技能競技大会にて各1名が労働大臣表彰を受賞している。 改善テーマ @仕事量(受注量)の拡大…営業力の強化 A駐車場の確保…車椅子、杖歩行の人の駐車場をできるだけ近くに B作業スペースの確保…車椅子、杖歩行の人が無理なく行動できるように C作業環境の改善…疲れにくく安全な椅子への改善 D障害部位の違う人の組み合わせで作業を補い合う E専門性の高い業務に対する長期的な育成 改善・取り組みのポイント @既存業務の受注拡大/設備投資で新規業務を受注 A建屋裏道路の拡張による駐車場の増設/グループ会社より駐車場を賃借 B旭化成株式会社延岡支社に作業スペースと休憩室を借り増し C疲れにくく、容易に高さを調節でき、座っているとき椅子ごと倒れにくいOA用椅子に順次入れ替える D業務の種類ごとにグループを作り、まとめ役としてリーダーを任命/役割分担をして、業務の拡大、雇用の拡大に努める E3〜5年の育成期間を必要とする経理・勤労業務には適正のある2名を育成配置 観光自動車株式会社 代表者:代表取締役社長 林富美 〒890-0068 鹿児島県鹿児島市東郡元町6-31 TEL 099-255-9101 FAX 099-256-1337 業種および主な事業内容 一般旅客運送業 従業員数 103名(平成17年6月1日現在)うち障害者数6名 <内訳> 肢体不自由者5名、内部障害者1名 事業所の概要と障害者雇用の経緯 昭和25年に一般乗用旅客運送業として営業車78台で開業。昭和52年に19台所有の会社を買収し、有限会社第二観光とする。法定雇用率を達成するため、ハローワークの障害者就職面接会に出席し、適任者の選定に当たった。 改善テーマ 障害者採用時および入社後のケア 改善・取り組みのポイント 障害者自身がタクシードライバーという職業に不安を持っているため、面接時に障害のあることが仕事上の障害でないことを説明。入社時教育でも、特に入社当初の悩みが多い時期には、障害者生活相談員への相談を勧めた。また、障害者職場定着推進チーム等で、障害者の雇用に配慮していることを指導した。 p.107 株式会社中礼義肢製作所 代表者:代表取締役 中禮順信 〒892-0846 鹿児島県鹿児島市加治屋町11-3 TEL 099-225-0888 FAX 099-222-4149 業種および主な事業内容 義肢・補装具の製造販売、福祉用品・介護用品の販売・レンタル 従業員数 36名(平成17年6月1日現在)うち障害者数10名 <内訳> 肢体不自由者8名(うち重度1名)(うち重複1名)、内部障害者1名(うち重度1名)、知的障害者1名 事業所の概要と障害者雇用の経緯 昭和25年、鹿児島市で創業。昭和32年に合資会社を設立し、平成11年に株式会社に組織変更し現在に至る。障害者の雇用開始時期については定かでないが、現在記録が残っているのは昭和54年から。ここ数年は7〜8名で推移している。雇用についてはハローワークを経由し、その大半が鹿児島障害者職業能力開発校義肢・装具科の卒業生である。 改善テーマ 共に取り組む雇用環境の改善・工夫および会社が従業員に求めること。 改善・取り組みのポイント 障害者(主に肢体不自由者)のお客様の訪問が多く、従業員の中にも障害者が増えてきたこともあり、平成2年に新しく工場を建設することになった際、これまで作業場で不便を感じていた部分を考慮し、以下の内容を満たすようにした。 @玄関アプローチは、車椅子に対応できるように緩やかなスロープにする A玄関を自動ドアにする Bトイレの一部に手すりを付け、別に車椅子対応のトイレを設置する C社員用に、横になれる休憩所を設置する D作業場での移動がスムーズにでき、車椅子や緊急時にも対応できるように机間を広くする E駐車スペースをできるだけ広く取る  工事終了後、解消されなかった作業場入口の段差については、従業員数名で解消工事を行った。 株式会社エヌ・ティ・ティ・ドゥ 代表者:代表取締役社長 仲本栄章 〒901-2133 沖縄県浦添市城間4-35-1 TEL 098-874-8000 FAX 098-874-8099 業種および主な事業内容 各種電気通信設備に関する業務他 従業員数 1,550名(平成17年6月1日現在)うち障害者数15名 <内訳> 肢体不自由者9名(うち重度5名)、内部障害者6名(うち重度5名) 事業所の概要と障害者雇用の経緯 〔事業内容〕 ・電気通信設備に関わる設備提案、設計、工事、保守、コンサルティングおよび設備品質管理 ・電気設備に関わる各種機器、機材の開発、販売、工事および保守ならびに各種ネットワークの申し込み受付および販売 ・コンピュータのネットワークシステムおよびソフトウェアの企画、設計、保守およびコンサルティング ・各種電気通信機器 ・サービス等の販売および販売代理店業務 〔障害者雇用の経緯〕 障害者の雇用については社会連携の理念に基づく、事業主の共同責務として実施するものである。 改善テーマ 障害者雇用に当たっての職場環境改善について 改善・取り組みのポイント @駐車場の確保とスロープの設置  車椅子使用の障害者はマイカーを利用して通勤するため、雨天時にも支障がないように屋根つきの駐車場を確保した。また、建物入口までのスロープおよび手すりを設置した。 A自動ドアの設置  建物の2カ所の入口を自動ドアに変更。カード式施錠装置も下部へ設置しなおした。 B多目的トイレの設置  車椅子使用者が利用できるトイレを新たに設置し、鏡、手すり、手洗い場を装備した。 C多目的ルームの改修 ミーティング、休憩、食事に利用する多目的ルーム入口の扉を自閉式の引き戸に改修し、入口の段差も解消した。 D作業環境の整備  パソコンによる入力作業を車椅子のままできるよう机を大きめにし、移動する際の通路も広めに確保した。 p.108 応募事業所の概要 1 都道府県別応募数 都道府県 計 北海道 1 青 森 1 岩 手 2 宮 城 4 秋 田 1 山 形 1 福 島 1 茨 城 2 栃 木 1 東 京 4 神奈川 1 新 潟 1 富 山 1 石 川 2 福 井 1 長 野 1 岐 阜 1 愛 知 1 三 重 1 滋 賀 1 京 都 3 大 阪 3 兵 庫 2 奈 良 1 和歌山 1 鳥 取 2 岡 山 1 広 島 2 山 口 6 徳 島 1 香 川 1 高 知 1 福 岡 1 佐 賀 2 長 崎 1 熊 本 2 大 分 2 宮 崎 1 鹿児島 2 沖 縄 2 40都道府県 合 計 66 2 事業所規模別応募数 事業所規模 計 1,000人〜 7 500人〜999人 7 300人〜499人 6 100人〜299人 11 56人〜99人 10 55人以下 25 合 計 66 3 業種別分類 業 種 小計 計 建設業 1   総合工事業 1 製造業 26  食料品製造業 1  木材・木製品製造業(家具を除く) 1  パルプ・紙・紙加工品製造業 2  印刷・同関連業 5  化学工業 2  非鉄金属製造業 2  金属製品製造業 1  一般機械器具製造業 2  電気機械器具製造業 3  電子部品・デバイス製造業 2  輸送用機械器具製造業 4  精密機械器具製造業 1 情報通信業 8  情報サービス業 7  インターネット附随サービス業 1 運輸業 3  道路旅客運送業 2  道路貨物運送業 1 卸売・小売業 5  各種商品小売業 2  家具・じゅう器・機械器具小売業 2  その他の小売業 1 金融・保険業 2   協同組織金融業 2 飲食店,宿泊業 1  一般飲食店 1 医療,福祉 9  医療業 1  社会保険・社会福祉・介護事業 8 教育,学習支援業 1  その他の教育,学習支援業 1 複合サービス業 1  協同組合(他に分類されないもの) 1 サービス業 9  専門サービス業(他に分類されないもの)2  その他の生活関連サービス業 1  物品賃貸業 1  その他の事業サービス業 5 合 計 66 4 特例子会社とそれ以外の事業所の応募数 特例子会社 16 特例子会社以外 50 合 計 66 p.109-110 平成17度障害者雇用職場改善好事例応募要項 1 趣旨  障害者雇用において雇用管理、雇用環境等を改善・工夫し、様々な取り組みを行っている事業所の中から、他の事業所のモデルとなる好事例を募集し、これを広く一般に周知することによって、企業における障害者の雇用と職域の拡大及び職場定着の促進を図るとともに、障害者雇用に関する理解の向上に資することを目的とします。 2 募集テーマ  障害者の雇用就業を取り巻く環境変化(高齢化の進展、在宅就業等雇用形態の多様化、バリアフリーへの対応など)の中で、企業が肢体不自由者にとって働きやすい職場にするための創意工夫を行い、雇用及び職場定着を図った好事例を募集します。 (1)雇用管理等の改善・工夫   @採用及び配置   A従業員としての教育・訓練、人材育成   B指導体制・方法の工夫   C安全衛生   D職業能力の開発、キャリアアップ   E肢体不自由者の雇用に関する従業員への啓発 (2)雇用環境等の改善・工夫   @施設・設備改善   A福利厚生 (3)その他肢体不自由者の雇用に関する改善・工夫   @雇用管理サポート事業やジョブコーチ支援事業等各種援助制度の活用   A仕事時間以外の交流活動等の工夫   Bその他の改善・工夫事項 3 主催  独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構 4 後援  厚生労働省(予定) 5 応募締切日  平成17年6月30日(木) (当日消印有効) 6 応募資格  肢体不自由者を雇用している事業所とします。 7 応募方法 (1)指定の応募用紙に必要事項を記入し、参考資料として図、イラスト、写真、印刷物等事例の内容を具体的に説明するものを添付してください。 (2)応募する事例については、上記2の募集テーマの全部又は一部に該当するものとします。 (3)応募用紙は、下記13の問い合わせ先のほか、厚生労働省・都道府県労働局・公共職業安定所において配布します。また、独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構のホームページからダウンロードしたものも使用できます。 8 賞  優秀な事例には、最優秀賞(厚生労働大臣賞)・優秀賞(独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構理事長表彰)・奨励賞(独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構理事長表彰)を贈ります。 9 審査  独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構に審査員会を設置し、審査します。 10 表彰  上記の最優秀賞・優秀賞の入賞事業所の表彰式は、平成17年9月に東京で開催予定。 11 提出先 独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構(雇用開発推進部職域開発課)  電子メールによる場合   メールアドレス manual@jeed.go.jp   郵送による場合      〒105-0022 東京都港区海岸1-11-1                        ニューピア竹芝ノースタワー 12 その他 (1)応募した文書の著作権及びこれに付随する一切の権利は、独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構に帰属するものとします。 (2)応募書類は、返却しません。 (3)応募事例は、入賞事例集を発行し、広く関係団体・事業所等に配布します。 13 問い合わせ先 独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構 雇用開発推進部職域開発課  〒105-0022 東京都港区海岸1-11-1 ニューピア竹芝ノースタワー          TEL 03-5400-1625 FAX 03-5400-1608          メールアドレス manual@jeed.go.jp   各都道府県障害者雇用促進協会、雇用開発協会及び総合雇用推進協会 【審査員の構成】 審 査 員 名 所  属 役  職 木村 周 東京成徳大学院 客員教授 土屋 喜久 厚生労働省職業安定局 障害者雇用対策課長 道脇 正夫 職業能力開発総合大学校 名誉教授 山添 秀次 国立身体障害者リハビリテーションセンター指導部指導課 指導課長 輪島 忍 社団法人日本経済団体連合会 雇用・労務管理グループ長 江上 節義 独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構 雇用開発推進部・納付金部担当理事 (敬称略、五十音順) p.111-112 関係機関一覧 都道府県障害者雇用促進協会 都道府県協会名 郵便番号 所在地 電話番号 FAX番号 (社)北海道障害者雇用促進協会 001-0024 札幌市北区北二十四条西5-1-1 札幌サンプラザ5F 011-726-8581 011-707-9615 (社)青森県障害者雇用促進協会 030-0801 青森市新町2-2-4 青森新町二丁目ビル9F 017-773-5037 017-722-8043 (社)岩手県障害者雇用促進協会 020-0021 盛岡市中央通1-4-7 岩手県赤十字会館2F 019-652-8080 019-652-7355 (社)宮城県障害者雇用促進協会 980-0021 仙台市青葉区中央3-2-1 青葉通プラザ2F 022-261-3276 022-268-0137 (社)秋田県障害者雇用促進協会 010-0951 秋田市山王3丁目1番7号 東カンビル3F 018-896-1252 018-863-1220 (社)山形県障害者雇用促進協会 990-0023 山形市松波4-5-5 黒井産業ビル2F 023-641-7112 023-625-5887 (社)福島県障害者雇用促進協会 960-8103 福島市舟場町1-20 三井生命ビル6F 024-523-5251 024-524-1057 (社)茨城県雇用開発協会 310-0803 水戸市城南1-1-6 サザン水戸ビル3F 029-221-6698 029-221-6739 (社)栃木県雇用開発協会 320-0033 宇都宮市本町4-15 宇都宮NIビル8F 028-621-2853 028-627-3104 (社)群馬県障害者雇用促進協会 371-0026 前橋市大手町2-6-17 住友生命前橋ビル10F 027-224-5766 027-223-4330 (社)埼玉県雇用開発協会 330-0063 さいたま市浦和区高砂1-1-1 朝日生命浦和ビル7F 048-824-8739 048-822-6481 (社)千葉県雇用開発協会 260-0015 千葉市中央区富士見2-5-15 塚本千葉第三ビル9F 043-225-7930 043-225-7479 (社)東京都障害者雇用促進協会 102-0071 千代田区富士見1-5-8 大新京ビル2F 03-3288-5321 03-3288-5330 (財)神奈川県雇用開発協会 231-0026 横浜市中区寿町1-4 かながわ労働プラザ7F 045-633-5427 045-633-5428 (社)新潟県雇用開発協会 950-0087 新潟市東大通1-1-1 三越・ブラザー共同ビル7F 025-241-3123 025-241-3426 (社)富山県障害者雇用促進協会 930-0004 富山市桜橋通り2-25 富山第一生命ビル1F 076-442-2050 076-442-2177 (社)石川県障害者雇用促進協会 920-8203 金沢市鞍月5-181 AUBE5F 076-239-3691 076-239-3692 (社)福井県障害者雇用促進協会 910-0005 福井市大手2-7-15 明治安田生命福井ビル10F 0776-25-0826 0776-23-6093 (社)山梨県雇用促進協会 400-0031 甲府市丸の内2-7-23 鈴与甲府ビル4F 055-232-8310 055-222-2119 (社)長野県雇用開発協会 380-8506 長野市南県町1040-1 日本生命長野県庁前ビル6F 026-226-4684 026-226-5134 (社)岐阜県障害者雇用促進協会 500-8856 岐阜市橋本町2-20 濃飛ビル5F 058-252-2323 058-252-2325 (社)静岡県障害者雇用促進協会 420-0857 静岡市葵区御幸町11-30 エクセルワード静岡ビル6F 054-255-7139 054-253-7910 (社)愛知県障害者雇用促進協会 450-0002 名古屋市中村区名駅4-5-28 近鉄新名古屋ビル5F 052-566-1863 052-566-1867 (社)三重県雇用開発協会 514-0002 津市島崎町137-122 059-225-7832 059-223-1448 (社)滋賀県障害者雇用促進協会 520-0056 大津市末広町1-1 日本生命大津ビル3F 077-525-8644 077-524-9684 (社)京都府障害者雇用促進協会 604-8171 京都市中京区烏丸通御池下ル虎屋町577-2太陽生命御池ビル3F 075-222-0202 075-222-0225 (社)大阪府障害者雇用促進協会 530-0001 大阪市北区梅田1-12-39 新阪急ビル 06-6346-2286 06-6346-2233 (社)兵庫県障害者雇用促進協会 650-0025 神戸市中央区相生町1-2-1 東成ビルディング3F 078-360-3681 078-360-3684 (社)奈良県障害者雇用促進協会 630-8115 奈良市大宮町6-1-11 新大宮第2ビル3F 0742-34-2227 0742-34-2383 (社)和歌山県障害者雇用促進協会640-8154 和歌山市六番丁24 ニッセイ和歌山ビル7F 073-431-2440 073-424-9613 (社)鳥取県障害者雇用促進協会 680-0835 鳥取市東品治町102 明治安田生命鳥取駅前ビル3F 0857-26-9528 0857-26-9300 (社)島根県障害者雇用促進協会 690-0826 松江市学園南1-2-1 くにびきメッセ6F 0852-26-3030 0852-26-2121 (社)岡山県障害者雇用促進協会 700-0907 岡山市下石井2-1-3 岡山第一生命ビル4F 086-225-1015 086-226-2083 (社)広島県雇用開発協会 730-0013 広島市中区八丁堀16-14 第2広電ビル7F 082-512-1133 082-221-5854 (社)山口県雇用開発協会 753-0051 山口市旭通り二丁目9-19 山口建設(株)ビル3F 083-924-6749 083-924-6697 (社)徳島県障害者雇用促進協会 770-0831 徳島市寺島本町西1-7-1 日通朝日徳島ビル7F 088-623-6980 088-655-7943 (社)香川県障害者雇用促進協会 760-0017 高松市番町1-2-26 トキワ番町ビル3F 087-811-2285 087-811-2286 (社)愛媛高齢・障害者雇用支援協会790-0006 松山市南堀端町5-8 オワセビル4F 089-943-6622 089-932-2181 (社)高知県雇用開発協会 780-0053 高知市駅前町5-5 大同生命高知ビル7F 088-884-1481 088-884-5306 (社)福岡県障害者雇用促進協会 812-0013 福岡市博多区博多駅東1-1-33 はかた近代ビル1F 092-473-7685 092-451-4150 (社)佐賀県障害者雇用促進協会 840-0831 佐賀市松原1-2-35 佐賀商工会館西別館 0952-29-8883 0952-24-7529 (社)長崎県障害者雇用促進協会 850-0862 長崎市出島町1-14 出島朝日生命青木ビル5F 095-822-5359 095-826-1646 (社)熊本県障害者雇用促進協会 860-0844 熊本市水道町8-6 朝日生命熊本ビル3F 096-320-8001 096-328-8807 (財)大分県総合雇用推進協会 870-0026 大分市金池町1-1-1 大交セントラルビル3F 097-532-3180 097-536-7660 (社)宮崎県障害者雇用促進協会 880-0812 宮崎市高千穂通2-1-33 明治安田生命宮崎ビル8F 0985-29-9052 0985-23-0724 (社)鹿児島県障害者雇用促進協会892-0844 鹿児島市山之口町1-10 鹿児島中央ビルディング11F 099-219-2002 099-226-9992 (社)沖縄雇用開発協会 901-0152 那覇市字小禄1831-1 沖縄産業支援センター7F 098-891-8460 098-891-8470 地域障害者職業センター センター・支所 郵便番号 所在地 電話番号 FAX番号 北海道障害者職業センター001-0024 札幌市北区北二十四条西5-1-1 札幌サンプラザ5F 011-747-8231 011-747-8134  旭川支所 070-0034 旭川市四条通8丁目右1号 ツジビル5F 0166-26-8231 0166-26-8232 青森障害者職業センター 030-0845 青森市緑2-17-2 017-774-7123 017-776-2610 岩手障害者職業センター 020-0133 盛岡市青山4-12-30 019-646-4117 019-646-6860 宮城障害者職業センター 983-0836 仙台市宮城野区幸町4-6-1 022-257-5601 022-257-5675 秋田障害者職業センター 010-0944 秋田市川尻若葉町4-48 018-864-3608 018-864-3609 山形障害者職業センター 990-0021 山形市小白川町2-3-68 023-624-2102 023-624-2179 福島障害者職業センター 960-8135 福島市腰浜町23-28 024-522-2230 024-522-2261 茨城障害者職業センター 309-1703 茨城県西茨城郡友部町鯉淵6528-66 0296-77-7373 0296-77-4752 栃木障害者職業センター 320-0865 宇都宮市睦町3-8 028-637-3216 028-637-3190 群馬障害者職業センター 379-2154 前橋市天川大島町130-1 027-290-2540 027-290-2541 埼玉障害者職業センター 338-0825 さいたま市桜区下大久保136-1 048-854-3222 048-854-3260 千葉障害者職業センター 261-0001 千葉市美浜区幸町1-1-3 043-204-2080 043-204-2083 東京障害者職業センター 170-6008 豊島区東池袋3-1-1 サンシャイン60-8F 03-3989-9651 03-3989-9653  多摩支所 190-0012 立川市曙町2-38-5 立川ビジネスセンタービル5F 042-529-3341 042-529-3356 神奈川障害者職業センター228-0815 相模原市桜台13-1 042-745-3131 042-742-5789 新潟障害者職業センター 950-0067 新潟市大山2-13-1 025-271-0333 025-271-9522 富山障害者職業センター 931-8443 富山市下飯野新田70-4 076-438-5285 076-438-5234 石川障害者職業センター 921-8836 石川県石川郡野々市町末松2-244 076-246-2210 076-246-1425 福井障害者職業センター 910-0026 福井市光陽2-3-32 0776-25-3685 0776-25-3694 山梨障害者職業センター 400-0864 甲府市湯田2-17-14 055-232-7069 055-232-7077 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