表紙 視覚障害者の雇用事例集〜支援機関を活用して職域拡大に取り組む〜 人と職場をつないで夢のハーモニー 独立行政法人 高齢・障害者支援機構 1ページ はじめに   近年の公共職業安定所(ハローワーク)における視覚障害者の職業紹介状況を見ると依然として「あん摩マッサージ指圧・はり・きゅう」への就職が大部分を占めています。一方で、これらの技術を活かし、事業所における「ヘルスキーパー」として就職する事例、また、IT技術や就労支援機器の発達・普及に伴い「事務的職業」に就職する事例もあり、今後も職域の拡大が期待されるところです。 このため、高齢・障害者雇用支援機構においては、平成21年度から2年計画で学識経験者や支援機関の専門家で構成する「視覚障害者の雇用の促進のための条件整備に関する研究委員会」を設置し、視覚障害者雇用事業所や支援機関に対するヒアリング調査を通じて、視覚障害者の雇用促進や職場定着を進める上で効果的な支援のノウハウなどについて検討してまいりました。   この研究の成果として、平成21年度には、ヘルスキーパーや事務的職業等新しい職域の雇用事例を紹介するとともに、最新の支援機器や視覚障害者の誘導法等を解説した「視覚障害者の職場定着推進マニュアル」(改訂版)を作成いたしました。   さらに平成22年度は、ヘルスキーパー等の新しい職域での雇用事例における各種支援機関の支援内容や、視覚障害者の雇用のプロセスと有効な支援等について調査・分析し、今般、事例集としてとりまとめました。本事例集が、先のマニュアルとともにできるだけ多くの事業所等で活用され、視覚障害者の雇用促進、職場定着に役立つものとなれば幸いです。   本事例集の作成にあたり、ご協力いただいた関係者の方々に改めて厚く感謝申し上げます。 平成23年3月 独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構 2ページ 目次 はじめに 1ページ 目次 2ページ T.雇用事例 事例1 専門機関の連携による強力なサポートを受ける 3ページ 株式会社東急エージェンシー/ハローワーク品川/横浜市立盲特別支援学校 事例2 特別支援学校(盲学校)の雇用支援に就労支援機関が応援 7ページ 株式会社ベネッセスタイルケアグランダ中村橋/東京都立文京盲学校/東京障害者職業センター/板橋区障害者就労援助事業団(ハート・ワーク) 事例3 ハローワークと特別支援学校(盲学校)で支援をコーディネート 13ページ 株式会社帝国ホテル/ハローワーク飯田橋/筑波大学附属視覚特別支援学校/東京都立文京盲学校/日本盲人職能開発センター/東京障害者職業センター 事例4 ハローワークと職業能力開発機関による雇用支援 21ページ クラシエ製薬株式会社/ハローワーク品川/国立職業リハビリテーションセンター 事例5 休職者を活かす仕組み作り 25ページ 株式会社サイゼリヤ東京採用センター/東京都盲人福祉協会/日本盲人職能開発センター/杏林大学医学部付属病院眼科(アイセンター) 事例6 障害者職業能力開発校のフォローを受け、事務職で全盲の従業員を雇用 31ページ リコージャパン株式会社 事例7 施設の特性を活かした視覚障害者雇用 33ページ 社会福祉法人埼玉県社会福祉事業団皆光園 U.視覚障害者雇用を進めるために 1.視覚障害者雇用のプロセスと有効な支援 35ページ (1)ヘルスキーパーの雇用 (2)事務職の雇用 (3)復職 2.視覚障害者雇用を進めるために必要なこと 41ページ V.就労支援機器の紹介 就労支援機器の機能と使用事例 43ページ ・拡大読書器、点字ディスプレイ、点図ディスプレイ、画面読み上げソフト、画面拡大ソフト ・就労支援機器の情報・相談・貸出しについて 視覚障害者の雇用の促進のための条件整備に関する研究委員会 48ページ 3ページ T.雇用事例 雇用事例1 専門機関の連携による強力なサポートを受ける 職種 ヘルスキーパー プロフィール 事業所 株式会社東急エージェンシー 所在地/東京都港区 事業概要/各種広告の代理業務、広告宣伝に関する企画・立案・制作等 支援機関  支援1 ハローワーク品川 支援2 横浜市立盲特別支援学校 本人  原 由美さん(女性・31歳、障害の程度:3級) 角膜混濁による先天性の弱視。視力は0.03程度。視野に障害がある。 経緯と雇用状況 雇用の経緯 ヘルスキーパーの導入を検討   2007年9月から2008年2月にかけ、在職していた障害者が複数名退職することとなったため、人事局人事労務厚生担当部長の福王さんは、求人についてハローワーク品川の障害者雇用支援員に相談しました。   その際、ハローワーク品川から新たな視点で障害者雇用を検討するよう勧められたことをきっかけに、同業他社で雇用事例があることや、従業員の疲労やストレスがたまりやすい業種であることを考え、ヘルスキーパー業務を導入することにしました。 ヘルスキーパー業務に関する情報収集と職場実習の受け入れ   ヘルスキーパー業務の導入にあたっては、ハローワーク品川から紹介された横浜市立盲特別支援学校の教員から実際の受け入れに関する情報を収集しました。併せて、同校であん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師の資格取得予定の原さんを、本人及び事業所の従業員がなじめるか確認のため1週間の職場実習の提案を受け入れました。職場実習では、人事をはじめ役員や他部署の従業員、計25名がマッサージを体験し、そのアンケートの結果、本人と事業所の双方が好感触であったため、原さんのヘルスキーパーとしての雇用が決まりました。 マッサージルームの開設   原さんを内定した後、マッサージルームを設置するスペースやベッド等の備品に関する知識を得るため先行事業所を見学したほか、東急エージェンシーの保健師が知っているヘルスキーパーからアドバイスを聞かせてもらいながら、原さんや横浜市立盲特別支援学校の教員との相談によりマッサージルーム開設の準備を進めました。 現在の雇用状況 原 由美さんの雇用状況 雇用形態 嘱託社員(2009年4月〜) 勤務時間 10時〜18時 勤務内容 1回40分・1日6人分のマッサージ及びはりの施術   施術希望者は、各自のパソコンで会社が作成した予約システムから直接予約を行います。このシステムのおかげで原さんは希望者の予約状況をいつでも確認することができます。   予約者は、事前に人事で代金を支払うことで施術を受ける従業員を人事でも確認するようにしています。また、毎朝、厚生担当者がその日の予約状況をイントラネット上で告知しており、導入約2年で稼働率はほぼ100%となっています。 (写真説明)マッサージをする原さん 就労支援機器・支援制度 活用した就労支援機器  画面読み上げソフト・画面拡大ソフト   高齢・障害者雇用支援機構による就労支援機器貸出し制度を活用し、試用ののち購入。予約システムの運用やカルテ管理に使用している。(46ページ「就労支援機器の機能と使用事例」参照) (写真説明)予約システムを活用して予約状況を確認 4ページ 支援の内容1 支援機関 ハローワーク品川 従来とは異なった職務の雇用を提案し障害者雇用の幅を拡大 ヘルスキーパー業務導入の提案と情報提供  事務業務で勤務する肢体不自由者を数多く雇用している東急エージェンシーにおいては、退職した障害者の後任について、同業他社で導入事例があることや、従業員の疲労やストレスがたまりやすい業種特性からヘルスキーパーの導入について検討を行いました。   このことについて、福王さんから相談を受けた障害者雇用支援員の岡田さんは、導入スケジュールや、就労支援機器貸出し制度、障害者雇用納付金に基づく助成金等、ヘルスキーパー業務の導入及び運営にあたっての必要な情報や留意点を詳細に説明しました。   併せて、ヘルスキーパー業務の求人について相談を受けていた横浜市立盲特別支援学校を福王さんに紹介しました。 フォローアップ   原さんが東急エージェンシーに採用された後は、常に厚生担当者と連絡を取り合っています。福王さんとも定期的に状況を確認しており、2年目からは原さんの希望もあり、マッサージに加え鍼灸を加える等、施術内容も充実しています。 ハローワーク品川の支援の内容 ・開設スケジュールの提示 ・ヘルスキーパー設置における費用の説明 ・助成金・就労支援機器の紹介 ・ヘルスキーパーを導入した企業事例の紹介 解説ナビ ハローワークとは?   ハローワーク(公共職業安定所)は、職業紹介、職業指導等の業務を行うため国が設置する機関です。全国約500ヵ所に設置されており、就職を希望する障害者の求職登録を行い、専門職員等が地域の関係機関と連携しながら、障害の種類や程度に応じたきめ細かな職業指導、職業紹介、職場定着支援、事業主支援等を行っています。 (写真説明)事業主相談コーナー 就労支援機器・支援制度 活用した支援制度  障害者雇用納付金制度に基づく助成金(高齢・障害者雇用支援機構) マッサージルーム開設、就労支援機器購入に活用 (写真説明)マッサージルーム 5ページ 支援内容2 支援機関 横浜市立盲特別支援学校 職務と職場のイメージを把握するため職場実習を支援 ヘルスキーパー業務導入に向けたアドバイスと職場実習の提案   ハローワーク品川の岡田支援員からの依頼を受け、2008年5月に鈴木先生、土屋先生、磯先生が福王さんに対し、最初はヘルスキーパー業務の概要について説明しました。その後もヘルスキーパー業務の導入にあたって必要な知識や情報について適宜アドバイスすることで、福王さんもヘルスキーパー業務を導入するメリットや効果、導入に大きな負担がかからないこと、学校からサポートが得られること等を理解して、準備を進めていくことができました。   また、東急エージェンシーへ紹介する求職者については、学校で検討した結果、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師の資格取得に取り組んでいる原さんを紹介することが適切と判断し、東急エージェンシーの求人について情報提供したところ、原さんからも希望がありました。   6月に福王さんが採用に必要な情報を収集するため学校訪問をされた際に、求職者が職場や業務に馴染むことができるか確認するため、夏休み期間に1週間の職場実習を提案しました。 職場実習中の支援   1週間の職場実習は、白衣やシーツ等学校が用意した物品を使って、事業所内に仮のマッサージスペースを設置し、理療の資格を持つ教員の立ち合いのもとで、人事をはじめ役員や他部署の従業員、計25 名に対してマッサージを行いました。   協力いただいた役員や従業員からのアンケートの結果では職場からの感触も良く、原さんの意欲と自信も確認できたため、原さんをヘルスキーパーとして採用いただく筋道ができました。 マッサージルーム開設に向けたアドバイス   勤務開始となる2009年4月までの期間、教員からマッサージルーム開設に必要なスぺースや備品について、開設準備チーム(福王さんや複数の厚生担当者で構成)に数回のアドバイスを行いました。さらに、拡大読書器や画面読み上げソフト、画面拡大ソフトの購入にあたっては、機器の選定のアドバイスや、独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構が行う就労支援機器貸出し制度、障害者雇用納付金制度に基づく助成金を紹介しました。 フォローアップ   フォローアップについては、原さんや福王さんから相談があればハローワーク品川と連携し対応することとしています。現在、原さんははり施術にも取り組んでいますが、施術を開始するにあたっては、消毒設備等必要な備品等についてアドバイスを行いました。 ハローワークとの連携   学校のある横浜にとどまらず、東京都内のハローワークとの関係づくりに努めています。事業所がヘルスキーパー業務を導入することを検討する等の動きを把握した場合は、その情報を管轄のハローワークへ連絡し、またハローワークにヘルスキーパー業務の導入に関する問い合わせがあった場合には、学校を紹介してもらうようにしています。 解説ナビ 横浜市立盲特別支援学校   1888年に鍼治揉按医術講習学校として視覚障害者に対し西洋医学の講義を開始、1950年に横浜市に移管、横浜市立盲学校として小学部、中学部、高等部を設置し現在に至っています。   目が見えにくかったり、見えないために特別な支援を必要とする幼児・児童・生徒に対し、幼児教育・義務教育・高等学校普通教育及び職業教育(あん摩マッサージ指圧、はり、きゅう)を行っています。   高等部専攻科(保健理療科、理療科)は、大学の入学資格を有する視覚障害者が理療・保健理療に関する知識・技能を修得するために設置され、保健理療科はあん摩マッサージ指圧師の国家試験受験資格を、理療科はあん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師の国家試験受験資格を得ることができます。 (写真)(省略) (図)横浜市立盲特別支援学校 (省略) 6ページ インタビュー 適切な助言で、円滑な業務の導入が可能になりました。 人事局人事労務厚生担当担当部長 福王弘道さん   ヘルスキーパー導入にあたり、ハローワーク品川から迅速かつ適正な情報提供と、横浜市立盲特別支援学校という良い学校を紹介していただきました。   その結果、最適な人材をご紹介いただくとともに、開設時に必要な設備等について具体的に細部にいたるまでアドバイスいただき、比較的円滑にヘルスキーパー室を開設することができました。開設後、社内の評判もよく、導入してよかったと思っております。 先生方の丁寧なアドバイスが職場の理解につながりました。 原 由美さん   横浜市立盲特別支援学校に対しては、職場実習の機会を作っていただいたことや、マッサージルームに必要な物のリスト作りにもアドバイス等してもらい、スムーズに職場に説明することができました。   現在、職場で新たにはり施術をはじめました! (図)支援早見表(省略) 支援のポイントと評価 *事業所のヘルスキーパーという新たな要望に対し、ハローワークにおいて迅速かつ適切に情報提供を行ったこと。また導入にあたって特別支援学校(盲学校)と連携し、業務運営や支援制度の活用について具体的なアドバイスを行うことで、事業所の導入に対する不安や負担を軽減することができたこと。 *職場実習により、事業所が求職者の職務や職場環境への適応の見通しを事前に把握することができたこと。また理療の専門知識を持つ教員が実習場面に立ち会うことで、その場で必要な知識や情報、また課題が生じた場合には具体的な対応策が提供できるサポートができたこと。 7ページ 雇用事例2 特別支援学校(盲学校)の雇用支援に就労支援機関が応援 職種 清掃 プロフィール 事業所 株式会社ベネッセスタイルケアグランダ中村橋 所在地/東京都練馬区 事業概要/高齢者介護事業(入居介護サービス、在宅介護サービス)、保育事業 支援機関 支援1 東京都立文京盲学校 支援2 東京障害者職業センター 支援3 板橋区障害者就労援助事業団(ハート・ワーク) 本人 脇田桃子さん(女性・20歳、障害の程度:3級) 未熟児網膜症による弱視。右目はほとんど見えず、左目は0.07程度。 経緯と雇用状況 雇用の経緯 視覚障害者雇用の検討と受け入れの準備   これまで主に高齢者入居介護サービス施設での環境整備に知的障害者を雇用してきましたが、2008年に東京都立文京盲学校から視覚障害のある脇田さんの雇用について相談を受け、視覚障害者の職場実習を検討することとなりました。   人財開発育成部の野沢さんが進路指導の教員と相談した結果、脇田さんの障害状況を考慮し、高齢者入居介護サービス施設であるグランダ中村橋を実習場所に選び、入居者の居室の水周り(トイレ、洗面台)を清掃してもらうことにしました。   グランダ中村橋で実習を受け入れるにあたっては、ホーム長の芹沢さん(当時)は、清掃用具に文字を拡大したシールを貼るほか、用途によって色を変える、館内の配置図を拡大する、スタッフに脇田さんの特性や配慮を説明するといった準備を行いました。 職場実習の実施   職場実習では、脇田さんはトイレや洗面台の清掃の手順を徐々に覚えることができました。洗面台の仕上がりが確認できるかが課題となりましたが、「スポンジで洗面ボウル全体を丁寧に洗う」、「洗面ボウルの周辺や角は手首を返してきちんと洗う」といった目でチェックしなくても確実に清掃できる方法を脇田さんに伝えることで、グランダ中村橋が求める水準がクリアされるようになりました。職場実習の最終日に、野沢さんや芹沢ホーム長から脇田さんに評価の言葉がかけられ就職の意思について尋ねたところ、「是非お願いします」との回答があり、学校卒業後に雇用することを決定しました。 ジョブコーチ支援を利用しスピードアップ   脇田さんの採用にあたり、文京盲学校、ハート・ワーク、東京障害者職業センターとの打合せにより脇田さんが職場に定着できるための支援体制を整えてもらいました。   なお、脇田さんがより正確で効率的な作業ができるようになるために、雇用と同時に東京障害者職業センターによるジョブコーチ支援を利用することとしました。ジョブコーチ支援を通じて効率的で汚れの残らない清掃ができるようになりました。 現在の雇用状況 脇田桃子さんの雇用状況 勤務形態 パート社員(2009年4月〜) 勤務時間 9時30分〜16時30分 勤務内容 清掃、食事メニューのイラスト作成   現在、脇田さんは居室の水周り清掃の作業スピードが上がり清掃時間が短縮されたので、共有のトイレや洗面所の清掃、入居者の食事メニューのイラスト描き等も担当しています。仕事に対する自信がついてきたためか、入居者とのやりとりも大きな声で対応できるようになっています。 (写真説明)居室洗面台の鏡を拭く脇田さん 就労支援機器・支援制度 活用した支援制度  特定求職者雇用開発助成金(ハローワーク)・トライアル雇用(ハローワーク)期間:3ヵ月間 ・ジョブコーチ支援(東京障害者職業センター)トライアル雇用時 8ページ 支援内容1 支援機関 東京都立文京盲学校 職場実習で作業手順と問題点を確認、障害者職業センターに支援を要請 脇田さんの希望職種や特性に配慮した求人開拓   在校生の脇田さんの就職先を考える際、進路指導部主任の大野先生は、本人が現在持っている能力が活かせる職種を検討しました。まず本人の希望した「食品関係の職種」ということで、デザート類製造の工場で職場実習を行いました。そこでは視力の関係で作業面の制限が多く、本人の意欲を就労に結びつけるまでには至りませんでした。その後、職種を事務系に広げつつ、本人のやりたい仕事と可能な仕事を整理するため、3社の特例子会社(事務補助)の職場見学を行い、面接を受けました。   その結果、脇田さんからはオフィスワークではなく身体を動かしながら、かつ人と接する仕事への希望があったので、脇田さんが対応できる仕事を検討し、高齢者介護の周辺業務を提案したところ、「見学してみたい」と回答がありました。   ベネッセスタイルケア人財開発育成部の野沢さんに、清掃業務で職場実習を受け入れていただくよう相談したところ、将来的には職域を拡大することも想定され、グランダ中村橋での居室の水周りの清掃を用意していただきました。   職場実習にあたって、大野先生からは、作業手順については問題ないものの、目でチェックすることへの課題が生じることが推測されるため、チェック方法を確認することが必要であること、文字の拡大や色分けによって判別が可能であること等について芹沢ホーム長に助言しました。 (写真説明)トイレの清掃をする脇田さん 解説ナビ 東京都立文京盲学校   1908年に設立した視覚障害者のための高等部の学校で、全ての視覚障害者の生徒に対し、後期中等教育を通じて障害による困難を克服する態度や習慣を養うとともに、必要な知識・技能を習得させることを目的としています。普通科(高等学校普通教育課程)、専攻科保健理療科(あん摩マッサージ指圧師免許取得のための職業教育課程)、専攻科理療科(あん摩マッサージ指圧師免許、はり師免許、きゅう師免許取得のための職業教育課程)の3科が設けられています。 (写真説明)東京都立文京盲学校 (図)東京都立文京盲学校 (省略) 9ページ 職場実習による作業手順の把握   2009年2月に2週間行った職場実習では、芹沢ホーム長からの依頼により大野先生と担任の先生が付き添いし、文字を拡大したり用途によって色分けされたシールや、拡大した館内の配置図を脇田さんが効果的に使用しているか確認を行いました。   脇田さんは作業手順はスムーズに覚えることができ、より確実に作業できるよう細かな手順を加えて指導した結果、事業所から高い評価をいただきました。先生の現場での指導時間も初日は終日でしたが、2日目は半日、3日目からは定期的な訪問で十分な状況となりました。  しかし一方で、実習を通じて「勤務時間中に全ての居室の水周りを清掃することができるか」、「細かな汚れを確認することができるか」、「入居者から声をかけられるととまどうこともある脇田さんが入居者にしっかり挨拶や返事を行い、入居者からの要望等を適切にスタッフに伝えることができるか」といった課題も確認されました。   脇田さんの採用にあたって、野沢さんから、ホームのスタッフ指導・支援と併せて、課題解決のために手厚いサポートが必要であることからジョブコーチ支援の利用について提案があり、脇田さんがしっかりと職場に定着できるよう、東京障害者職業センターに支援を依頼しました。   一方で、脇田さんのジョブコーチ支援終了後も引き続きフォローアップを行うことや、長い目で見ると生活面の支援をしていくことが必要と判断し、ハート・ワークに職場のフォローアップと生活支援について依頼しました。 職場実習を行った際の課題点 @勤務時間中の作業終了 A細かな汚れの確認 B入居者の要望の報告及び挨拶 フォローアップ   脇田さんの勤務状況は良好なので、半年に1回程度、ハート・ワークの戸倉さんと共に職場訪問しており、2010年4月に芹沢ホーム長から現在の井上ホーム長に替わられた際にも訪問しています。   なお、特別支援学校における卒業生のフォローアップ期間は3年間程度が基本とされていることから、脇田さんのフォローアップは徐々にハート・ワークに移行する予定です。 (写真説明) 拡大した館内配置図 (写真説明) スタッフから指示を受ける (写真説明) 大野先生 10ページ 支援内容2 支援機関 東京障害者職業センター ジョブコーチ支援で作業の質・効率が向上し、トライアル雇用終了後も継続雇用が決定 ジョブコーチ支援開始に向けた打合せ   文京盲学校の大野先生からジョブコーチ支援の依頼を受け、採用前に脇田さん、保護者、大野先生、戸倉さんに集まっていただき、今後の支援について打合せを行いました。   担当の障害者職業カウンセラーから、脇田さんに職場実習での様子やジョブコーチに依頼したいことを確認したところ、スタッフが付かないので不安であること、入居者とのコミュニケーションの取り方や臨機応変な対応、汚れの見落としがあった時にどのようにすれば良いかについて支援して欲しいといった要望がありました。   また支援開始前に障害者職業カウンセラーと担当ジョブコーチが職場を訪問し野沢さん、芹沢ホーム長と打合せを行い、施設や脇田さんが担当する作業、また脇田さんの職場実習の状況について説明を聞きました。なお、芹沢ホーム長から全室分のトイレと洗面台の清掃が対応できるスピードと正確さが身に付くよう支援の要請がありました。   ジョブコーチ支援期間は4月〜6月の3ヵ月間でトライアル雇用と併せて実施しました。 ジョブコーチ支援を開始   ジョブコーチは週2回程度支援に入りました。初回は終日確認と支援を行いましたが、2回目以降は、午前のみあるいは午後のみの時間で支援しました。   初日の脇田さんの清掃については、作業工程は覚えていましたが、入室の際の声かけが小さいことや、動作がゆっくりしている等の課題が見られました。脇田さんが気づきにくい鏡、特に鏡の下部については回数を多く拭くようアドバイスしたほか、通勤路とタイムカードの使用方法について確認しました。   鏡拭きについては、特に脇田さんが汚れに気付きにくい作業だったので、芹沢ホーム長と相談し、できるだけ汚れが残らない清掃方法を考えました。当初はアクリルタワシに水を付けて拭き、仕上げにペーパーを使用する方法で行いましたが、その後、脇田さんが拭きやすいようスタッフと相談し、直接鏡にクリーナーを吹き付けタオルで拭く方法に変更しました。   4月中旬には、脇田さんは作業スピードが速くなり全室対応できるようになったので、残りの時間は新聞折り、夕食のメニュー書き、食堂の机をアルコールで拭く作業を行うこととしました。   ジョブコーチ支援終了後、7月末に脇田さん、保護者、芹沢ホーム長、大野先生、戸倉さんに参集いただき打合せを行いました。勤務状況については問題なく、無遅刻無欠勤です。芹沢ホーム長からは脇田さんの報告、連絡、相談や真面目な態度を高く評価していることについて回答がありました。また、スタッフからだけではなく入居者からも温かい声かけがある等職場内で脇田さんへの理解が随所に見られることから、脇田さんの仕事に対する意欲が高まっていることについても話していただき、引き続きグランダ中村橋で雇用していただくこととなりました。フォローアップについては、文京盲学校とハート・ワークに依頼しました。 作業手順の変更 変更前 @手袋を着用する。 A便器に洗剤をまく。 Bクリーナーをペーパーに吹きつけて洗面台の鏡をふく。 C洗面台の周りと中をふく。 D蛇口をふく。 E乾いたタオルで仕上げる。 F便器内をトイレブラシでこする。 Gぬれたタオルで手すりをふく。 H便座、床をふく。 Iトイレットペーパーをチェックし交換する。 変更後 @トイレットペーパーを三角に折る。 A手袋を着用する。 B便器に洗剤をまく。 C鏡にクリーナーを吹き付ける。 D布タオルで鏡をふき取る。(鏡の下の部分(約1/3)は丁寧にふく) E洗面台の品物を移動し、クリーナーを吹き付けたペーパーで奥から手前にふく。 F蛇口をふく。 G洗剤をつけたスポンジで洗面台の中を洗う。 Hペーパーで蛇口・洗面台の中の水滴をふき取る。 I便器内をトイレブラシでこする。 Jクリーナーシートで手すり⇒洗浄ボタン⇒ペーパーホルダー⇒タンクの上⇒便器のふた(内側〜外側)⇒便器の上・下⇒便器の下回りの順にふく。 解説ナビ 地域障害者職業センターとは?   独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構が運営する都道府県における職業リハビリテーションの中核として、関係機関と緊密な連携を図り、障害者に対して専門的な職業リハビリテーションサービスを行うとともに、事業主に対して雇用管理に関する相談・援助を行っています。また地域の関係機関に対し職業リハビリテーションに関する助言・援助を行っています。 (写真説明)東京障害者職業センター 11ページ 支援内容3 支援機関 板橋区障害者就労援助事業団(ハート・ワーク) 仕事の状況だけでなく生活面についてもきめ細やかにフォローアップ   2009年3月に、脇田さんと大野先生が来所した時、精神保健福祉士の戸倉さんが対応しました。本人から職場実習を通じて職場から高い評価を得られ就職が決まったことや現在の家庭状況等を話してもらいました。   勤務初日に東京障害者職業センター、文京盲学校とともに職場を訪問し、ハート・ワークはジョブコーチ支援が終了した後のフォローアップを担当することとしました。   支援の内容は、文京盲学校とともに定期的に職場を訪問し現状について確認するとともに、本人や保護者と家庭での状況について確認や相談を行っています。現在は職場、家庭とも特に問題は無いようです。   直近のフォローアップにおいては、脇田さんは清掃業務にじっくり取り組むようになり、全ての作業が短い勤務時間内で対応することが難しくなっているため、新たな支援方法について、井上ホーム長との相談を行いました。 (写真説明) 精神保健福祉士・戸倉さん (写真説明) 井上ホーム長から状況を確認する大野先生、戸倉さん 解説ナビ ハート・ワーク   1995年7月に開所。板橋区に住む障害者が、職業に就き社会参加できるよう就労支援事業を行うほか、障害者雇用を進める事業所に対し、職務内容にあった求職者を紹介しています。 1.相談 障害者が就職活動を円滑に行えるよう、ハローワーク等と協力し就労や職業生活に関する相談を行います。 2.指導・訓練 知的障害者親の会(ティールーム)に委託し、就労を希望する知的障害者に対する準備訓練(就労前訓練)や福祉作業所・特別支援学校等から体験実習生を受け入れています。 3.無料職業紹介 4.職場適応援助員(ジョブコーチ)派遣 5.定着指導 6.その他、機関誌「ハート・ワークだより」発行、余暇活動交流会「ひまわり」を開催 (写真説明)板橋区障害者就労援助事業団(ハート・ワーク) インタビュー 支援機関の連携がよい形で職場定着に繋がっています。 人財開発育成部障がい者雇用採用担当 野沢悠介さん   今回の脇田さんの採用・定着支援では多くの関係機関にご協力をいただいています。   文京盲学校からは、脇田さんの性格や障害特性等、受け入れにあたって必要な情報を教えていただくことで、事前に疑問点や対応・配慮が必要な部分を把握することができました。また、脇田さんにとってよく知っている先生が採用後も関わってくれることが安心感に繋がっているのではないかと思います。ご家族との窓口になっていただいたことで、受け入れのための準備がスムーズに進みました。   東京障害者職業センターからは、視覚障害者の受け入れノウハウが決して十分とは言えない中で、技術面や指導方法について具体的なアドバイスをいただきました。導入段階のジョブコーチ支援により現場スタッフの受け入れ時の負荷を軽減することができました。   板橋区障害者就労援助事業団(ハート・ワーク)は、採用後も定期的な支援の窓口となっていただくことで、課題発生時に相談やサポートをいただけるという安心感を持つことができます。   障害をお持ちの方を受け入れる私たち企業側としては、今回のケースのように様々な支援機関の方々が協力し、より緊密に連携しながら取り組む体制を作ることができれば、非常にありがたく感じますし、より多くの雇用に結びつくのではと考えています。 12ページ (図)支援早見表(省略) 支援のポイントと評価 *特別支援学校(盲学校)において知的障害者の雇用経験のある事業所に対し、清掃作業に弱視の視覚障害者雇用について提案するとともに、障害特性を補う作業手順等について助言できたこと。 *職場実習を通して課題が生じた場合には具体的な対応策が提供できるサポートができたこと。 *作業遂行力の向上や採用後の職業生活面でのフォローの必要性から、特別支援学校(盲学校)がコーディネートし、ジョブコーチ支援、フォローアップが行われたこと。 13ページ 雇用事例3  ハローワークと特別支援学校(盲学校)で支援をコーディネート 職種 ヘルスキーパー プロフィール 事業所 株式会社帝国ホテル 所在地/東京都千代田区内幸町1-1-1 事業概要/ホテル業 支援機関 支援1 ハローワーク飯田橋 支援2 筑波大学附属視覚特別支援学校 支援3 東京都立文京盲学校 支援4 日本盲人職能開発センター 支援5 東京障害者職業センター 本人 小松宏衣さん(女性・42歳、障害の程度:1級) 視力は光を感じる程度。白杖、点字を使用。 土田晃敬さん(男性、27歳、障害の程度:4級) 視野は外側が見えにくい。白杖や点字は使用していない。 経緯と雇用状況 雇用の経緯 福利厚生の取り組みとしてヘルスキーパー業務の導入を検討   帝国ホテルはこれまで、印刷やリネン、調理、会計等の部署で障害者を雇用してきましたが、2003年の福利厚生の取り組みの一環として、リラクゼーション・ルームを設置し、ヘルスキーパーとして視覚障害者を雇用することにしました。   しかし、帝国ホテルでは視覚障害者の受け入れは初めてでしたので、雇用にあたっては、ハローワーク飯田橋や筑波大学附属視覚特別支援学校と相談を行いました。 ヘルスキーパーを2名雇用   2名のヘルスキーパーの採用にあたっては、筑波大学附属視覚特別支援学校と東京都立文京盲学校からそれぞれ推薦された方と小松さんを採用することとしました。併せてリラクゼーション・ルームの開設にあたっては、室内の具体的なレイアウト、必要な就労支援機器等の設備面や予約方法等の運営方法について文京盲学校から助言を得て準備を進めました。2名については2003年5月上旬に内定、8月採用とし、9月にリラクゼーション・ルームを開設しました。 パソコン技能訓練、ジョブコーチ支援の利用   文京盲学校から推薦のあった小松さんについては、安全な通勤や社内移動のための支援、またカルテ作成に必要なパソコン技能の習得の必要がありました。そこで採用前後に専門機関の支援が利用できるよう文京盲学校に依頼し、採用前に日本盲人職能開発センターによるパソコン技能訓練、採用後に東京障害者職業センターによるジョブコーチ支援等が利用できるように手配していただきました。 勤務面での配慮   小松さんらの負担軽減を図るため、利用者の予約受付業務は17時45分までは厚生サービスセンターが担当することとしました。 職場実習による後任者の採用 筑波大学附属視覚特別支援学校からの推薦で採用した方が退社したので、後任として学校から在校生の土田さんの紹介があり、2005年4月に採用しました。 14ページ 現在の雇用状況 小松宏衣さんと土田晃敬さんの雇用状況 勤務形態 エリア社員(小松さん:2003年8月〜、土田さん:2005年4月) 勤務時間 9時15分〜17時30分、11時〜19時45分(週5日・シフト制) 勤務内容 1回15分・30分・45分・60分、1日7人分のマッサージの施術(2人で分担)   小松さんは、月1回、文京盲学校の卒業生が自主的に行っているあはき(あん摩マッサージ指圧、はり、きゅう)実技研修会に参加し、さらなる技術向上を目指しています。 (写真説明)マッサージをする小松さん 就労支援機器・支援制度 活用した就労支援機器  画面読み上げソフト・音声カルテ管理ソフト・点字ディスプレイ (44ページ「就労支援機器の機能と使用事例」参照) (写真説明)小松さんが使用するパソコンと点字ディスプレイ 活用した支援制度 障害者雇用納付金制度に基づく助成金(高齢・障害者雇用支援機構)  リラクゼーション・ルーム開設や、就労支援機器購入に活用 特定求職者雇用開発助成金(ハローワーク)  障害者2名の雇用 ジョブコーチ支援(東京障害者職業センター) (写真説明) リラクゼーション・ルーム リラクゼーション・ルームの案内板 15ページ 支援内容1 支援機関 ハローワーク飯田橋 支援制度や業務の助言を行うとともに必要な各種支援機関をコーディネート   帝国ホテルのヘルスキーパー業務の導入にあたって、検討段階からリラクゼーション・ルームのレイアウトや一日の利用者数の設定等に関するアドバイスを行いました。また、筑波大学附属視覚特別支援学校等の支援機関の紹介、就労支援機器や障害者雇用納付金制度に基づく助成金、ハローワークが窓口となる特定求職者雇用開発助成金の情報を提供しました。   また、小松さんの内定後は、文京盲学校と相談し、支援機関のコーディネートを行いました。 ハローワーク飯田橋の支援の内容 ・リラクゼーション・ルームのレイアウトの助言 ・勤務内容設定のアドバイス ・支援機関の紹介 ・就労支援機器・支援制度の情報提供 ・支援機関のコーディネート 解説ナビ ハローワークとは?   ハローワークの概要については、4ページを参照ください。 インタビュー 面談によりコミュニケーションの機会を設けています。 人事部労務課労務支配人 竹中 淳さん   現在、筑波大学附属視覚特別支援学校に対しては、年1回研修生に対し2週間、体験の場を提供しています。ヘルスキーパーの2人については、年1回、面談を行い2人の日々の業務に対する姿勢、考えや健康に関わることを聞いております。2人は私と別の部屋で業務を行っているため、日々のコミュニケーションを増やすよう心がけております。 技術研修の実施やジョブコーチの支援が心強かったです。 小松宏衣さん   文京盲学校に対しては、帝国ホテルに適した手技を研修してクセを修正することができて良かったです。ジョブコーチとは、通勤やパソコン操作について一緒に考えて支援してもらったところが良かったです。今後の抱負についてはリラクゼーション・ルームの宣伝活動等をやってみたいと思います。 先生と情報を共有することがスムーズな就職活動につながりました。 土田晃敬さん 筑波大学附属視覚特別支援学校在学時の就職活動については、事業所からヘルスキーパー求人情報が学校に直接来るため、先生と情報をやりとりすることができました。5年間元気に頑張っています。 16ページ 支援内容2 支援機関 筑波大学附属視覚特別支援学校 事業所にヘルスキーパー理解を促すとともに技能を修得した在校生を紹介 ヘルスキーパー業務の導入に向けた支援   帝国ホテルが学校を訪問し、ヘルスキーパー業務の導入について相談されました。これを受けて、専攻科・鍼灸担当の西山先生が帝国ホテルを訪問し、ヘルスキーパーの概要やリラクゼーション・ルームのレイアウト等と併せて、卒業生がヘルスキーパーで就職している事業所の見学を斡旋しました。   男性1名、女性1名のヘルスキーパー職の募集に対しては、同校からは準備段階からヘルスキーパー室の運営方法等参画できる能力を持った方を紹介しました。 在校生(土田さん)の就職支援   前任者が都合で離職するにあたって、帝国ホテルから再び男性1人の募集相談があり、高等部普通科で3年間履修後、鍼灸手技療法科で3年間校内及び職場実習によりマッサージ技能を習得している在校生の土田さんを紹介し、採用となりました。なお採用にあたっては、前任者から引継ぎができるよう雇用期間を重複していただくよう依頼しました。 フォローアップ   土田さんは、帝国ホテルの従業員からマッサージ以外にはり・きゅうを受けたいと相談を受けることがあります。そのような場合は、学校の治療室の利用※について学校に相談します。学校はその相談を受けるとともに、そのような機会を利用し土田さんの現状の確認を行っています。帝国ホテルや土田さんから相談がない限り、職場訪問は行っていません。 ※学校の治療室は、地域住民の疾病予防や健康増進のため、また生徒の臨床実習や教員の研究を目的として設置されています。 解説ナビ 筑波大学附属視覚特別支援学校   筑波大学附属の視覚特別支援学校として1875年に設立、視覚に障害のある幼児・児童及び生徒に対して、幼稚園・小中学校及び高等学校に準ずる普通教育並びに職業的専門教育を行うとともに、大学における幼児・児童及び生徒の教育に関する研究に協力し、かつ大学の計画に従い、学生の教育実習の実施を行っています。   職業的専門教育として、高等部専攻科鍼灸手技療法科・鍼灸手技療法研修科(あん摩マッサージ指圧、はり、きゅうに関する専門技術者を育成)、高等部専攻科理学療法科(医療保健福祉等広域にわたるリハビリテーションの専門技術者〈理学療法士〉を育成)等を設けています。 (写真説明)筑波大学附属視覚特別支援学校 (図)筑波大学附属視覚特別支援学校 (省略) 17ページ 支援内容3 支援機関 東京都立文京盲学校 関係機関と連携して施術の技能研修を実施 リラクゼーション・ルーム開設に向け助言   ヘルスキーパー業務の導入を進める帝国ホテルから、2003年3月にリラクゼーション・ルームの開設に向けた相談があり、理療科の田中先生からリラクゼーション・ルーム内の具体的なレイアウト、診察ベッド、遠赤外線灯等の医療機器や就労支援機器等の設備面や予約方法等の運営方法といったヘルスキーパー業務の導入を実際に進めていく際のノウハウを提供しました。なお、参考資料として、事業所と求職者との考え方のすれ違いを減らし、お互いに共通の考え方がもてるよう作成したヘルスキーパー業務の導入方法や先行事業所の事例等を取りまとめた事業所説明用の冊子を提供しました。この冊子は、文京盲学校がヘルスキーパー業務の導入を検討する事業所に対する支援ツールとして求人開拓時等で活用しています。 (写真説明) ヘルスキーパー業務に関する事業所説明用のパンフレット (写真説明) 田中先生 小松さんの再就職支援 @再就職先の検討、再就職活動に必要な書類作成について指導   同校の専攻科保健理療科を卒業、「あん摩マッサージ指圧師免許」を取得しヘルスキーパーとして就職していましたが、2003年3月に事業所都合により離職した小松さんから、再就職に向けた相談を受けました。   帝国ホテルからの女性1名のヘルスキーパー職の求人募集に対して、小松さんのこれまでの仕事の状況などについて本人から詳しく説明してもらい検討した結果、帝国ホテルへの就職活動を進めていくこととしました。そして、パソコンを使用した履歴書・職務経歴書の作成について指導を行いました。 A各支援機関への支援依頼   ハローワーク飯田橋と協力し、帝国ホテルと小松さんに対する支援について各支援機関に依頼しました。 [パソコン技能訓練(日本盲人職能開発センター)]   パソコンの操作経験のない小松さんに、パソコンによるカルテ作成や予約表のフォーム作成方法等習得していただく必要があったため、日本盲人職能開発センターのパソコン技能訓練を依頼しました。 [安全な通勤や職場内移動に関する支援(東京障害者職業センター)]   駅から帝国ホテルまでの安全な通勤経路を確認するとともに、構造が複雑な職場内をスムーズに移動できるよう、東京障害者職業センターのジョブコーチ支援を依頼しました。 B施術技能研修の実施   5月上旬に内定した後、田中先生は、小松さん、東京障害者職業センターの障害者職業カウンセラーとともに帝国ホテルを訪問しました。その際、以前別の事業所でヘルスキーパー業務を行っていた際についた術式のムラを修正し、帝国ホテルで行うべき術式を組立てそれに基づいて施術できるよう、あらためて研修を受けることが必要とされたため、施術技能研修を行いました。   8月1日採用後、学校の夏季休業期間中に7日間、ヘルスキーパーの施術技能研修を行い、9月のヘルスキーパー業務開始に臨みました。 C採用後のフォローアップ   文京盲学校では、月1回、ヘルスキーパー業務等に従事している卒業生が自主的に参加する実技研修会のために学校を開放しています。小松さんも研修会に参加していますが、田中先生はその機会を利用し、職場での悩みや課題について本人から確認をしています。現在特に問題は確認されておりません。 解説ナビ 東京都立文京盲学校   東京都立文京盲学校の概要については、8ページを参照ください。 18ページ 支援内容4 支援機関 日本盲人職能開発センター パソコン技術研修で音声カルテ管理や予約表の作成を支援   小松さんに対して、音声カルテ管理ソフトへの入力や予約表のフォームを作成する等のパソコン操作技能が必要であったため、雇用前にパソコンの基礎的な知識や操作方法、また画面読み上げソフトに慣れていただくため、以下の指導を行いました。 @講習会で画面読み上げソフトの技能を指導   用前に2日間開催した画面読み上げソフト(スクリーンリーダー)講習会に小松さんに参加してもらい、技能を指導しました。 Aセンター通所によるパソコン技能指導 8月採用後、小松さんに5 日間、業務に必要なパソコン技能を習得してもらうことと、リラクゼーション・ルーム開設に向けての準備を進めるための指導を行いました。   これらの指導を通じて、小松さんには職場で引き続きパソコン技能を高めていくことが必要であることを確認しました。   小松さんは、今後、漢字変換や書式の設定等について助言を得ることができればパソコン技能は向上できる感触を得たようです。 指導内容 ・キーボード操作(キーボードと指の受け持ち、ショートカットキー) ・ウインドウズデスクトップ、マイクロソフトエクスプローラ(階層構造、フォルダ、ファイルのコピー・ペースト、ファイル形式等)、アプリケーションソフトのメニュー、ウインドウズの設定の説明 ・ワープロソフトによるビジネス文書の作成、画面読み上げソフトによる漢字やフォント、書式の確認 ・表計算ソフトによるデータ入力と編集、計算、データ集計、業務上の利用法、画面読み上げソフトによる表計算ソフト読み上げ設定法 ・メール文の作成、送受信方法 解説ナビ 日本盲人職能開発センター   1963年に日本盲人カナタイプ協会として開設、1976年に視覚障害者が一般の人と共に働くことを目指して社会福祉法人として設立し、全国の視覚障害者への職業を中心とする福祉サービスの提供を目的に活動しています。   1994年には事務処理科を開設、就職希望コース、継続雇用コース、新規採用者委託コースの3コースを設け、画面読み上げソフトの操作を中心に指導を行っています。2009年3月までには70人の利用者が新規就職、45人が現職復帰しています。   その他、視覚障害・就労支援者講習会や、日本商工会議所PC検定試験、ガイドブックの作成と配布、福祉教育ビデオの制作・貸出し、全国ロービジョンセミナーの開催、就職や進路についての相談や視覚障害に関する種々の相談(総合相談)に対応しています。   また、1980年に開設された身体障害者通所授産施設「東京ワークショップ」においては、1989年〜1998年の間に27人の利用者が録音ワープロ速記技術を中心に習得し、新規就職や現職復帰をしています。 (写真説明)日本盲人職能開発センター 19〜20ページ 支援内容5 支援機関 東京障害者職業センター ジョブコーチが通勤や移動、リラクゼーション・ルーム運営にアドバイス   ジョブコーチ支援計画の策定 小松さんが通勤の際に、安全に駅から職場まで移動することができるか不安があったこと、また、帝国ホテルは建物の構造により通路が複雑なため小松さんが所属する人事部労務課(地下1階)、リラクゼーション・ルーム(地下2階)、手洗いや更衣室にそれぞれスムーズかつ安全に移動できること、またビュッフェ形式の社員食堂の利用ができること、またリラクゼーション・ルームの運営についても支援する必要があることから、支援計画に基づきジョブコーチ支援を行うこととしました。 ジョブコーチ支援を実施   8月は集中支援期として、9時〜17時の時間で以下の支援を行いました。 @出退勤の支援   小松さんが最も安全で利用しやすい通勤経路や、給与が振り込まれるATMの位置を確認しました。また、出退勤時に最も移動しやすい社員通路の確定について警備室の担当に依頼しました。   なお、横断歩道の渡り方や駅までの行き方について自信をつけてもらうよう、8月中は小松さんを介添しながら支援しました。 A職場内移動等の支援   通用口、リラクゼーション・ルーム、福利厚生センター、食堂、トイレ間がスムーズかつ安全に移動できるよう支援を行いました。先ず介添により練習し留意点等を確認した後、2回目からは小松さんが単独で行うようにしました。  なお食堂では、テーブルの位置や支払いに使用するIDカードの使用場所を確認するとともに、自動販売機の点字リストを作成しました。 B点字シールの貼付   労務課からの了解を得て、従業員スペースのエレベータや階段の手すりの必要な場所に点字シールを貼付し、現在自分が何階にいるか把握できるようにしました。   また、診察ベッド、遠赤外線灯、空気圧等医療機器の搬入に伴い、実際に動作し使用方法を確認するとともに、タイマーによる時間設定ができるよう、必要箇所に点字シールを貼付しました。その他必要な物品の置き場所を決め、必要な箇所に点字シールを貼付しました。 C予約受付方法の確認   小松さんらの負担を軽減するため、予約受付については、17時45分までは厚生サービスセンターが行うようにしていただきました。なお、17時45分以降のリラクゼーション・ルームでの予約受付に必要なホワイトボードを用意していただき点字シールを貼付しました。 Dその他   1ヵ月が経過した時点では、予約受付の方法等リラクゼーション・ルームの運営準備は概ね整っている状況でした。パソコン操作についてもカルテや予約表のフォーム等ができあがり概ね準備が整いました。   9月は午後のみ以下の支援を行いました @効率的な入力方法について助言   リラクゼーション・ルームの利用が盛況で、音声カルテ管理ソフトの入力が間に合わない状況のため、入力時間を短縮できるよう、使用頻度の高い文章をパソコンに登録するようにしました。 Aカルテ入力項目を確認   音声カルテ管理ソフトの入力の簡素化を図るとともに、同僚のヘルスキーパーとの入力内容を統一するための項目リストを作成することとし、その内容について確認しました。   2ヵ月間の支援を通じて、通勤や職場内移動には支障が無くなりました。職場内では従業員のフォローも受けています。   リラクゼーション・ルームの運営は、厚生サービスセンターの従業員からの支援を受けながら行っています。パソコン入力は速度が上がり、音声カルテ管理ソフトの使用にも支障はありません。リラクゼーション・ルームの開所当初は稼働率が非常に高く、オーバーワーク気味でしたが、現在は安定して業務に取り組めています。 (写真説明)パソコン操作についてジョブコーチから支援を受けた小松さん 解説ナビ 地域障害者職業センターとは?   地域障害者職業センターの概要については、10ページを参照ください。 (図)支援早見表(省略) 支援のポイントと評価 *事業所のヘルスキーパー業務導入のニーズに対して、ハローワークや特別支援学校(盲学校)が迅速かつ的確なアドバイスを行うことができたこと。 *求職者が職場に定着できるよう、ハローワークと特別支援学校(盲学校)の協力により、通勤支援や施術技能研修、パソコン技能指導等について各々担当する支援機関に依頼し、円滑な支援が行えたこと。 21ページ 雇用事例4 ハローワークと職業能力開発機関による雇用支援 職種 事務業務(総務・人事グループ) プロフィール 事業所 クラシエ製薬株式会社 所在地/東京都港区 事業概要/漢方薬を中心とした医療用・一般用医薬品の製造販売、医薬品や医薬部外品等の病医院・診療所及び薬局・薬店への販売 支援機関 支援1 ハローワーク品川 支援2 国立職業リハビリテーションセンター 本人 尼野次郎さん(男性・35歳、障害の程度:1級) 視力は光を感じる程度。白杖や点字を使用。 経緯と雇用状況 雇用の経緯 障害者就職面接会へ参加   障害者雇用を進めるために、総務・人事グループ課長の柳岡さんは、事務職での求人をハローワーク品川に出したところ、担当官から2007年10月にハローワークが主催する障害者就職面接会の紹介があり、参加することとなりました。弱視の視覚障害者の雇用経験はありましたが、面接で尼野さんからパソコン操作のデモンストレーションを見せてもらい、その能力や人柄を評価し、2007年11月に初めての全盲の視覚障害者雇用として尼野さんを内定しました。 国立職業リハビリテーションセンターを見学   尼野さんを内定後、どのような仕事を担当してもらうか具体的に検討するため、柳岡課長は尼野さんが技能訓練で利用していた国立職業リハビリテーションセンターを訪問し、尼野さんのパソコン操作の実演を見学しました。その際に同センターの障害者職業カウンセラーから事務に必要な就労支援機器の内容や独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構が行う就労支援機器貸出し制度について説明を受け、尼野さん、障害者職業カウンセラーと共に同機構の就労支援機器展示コーナーを訪問し、使用する機器を検討しました。 職場訪問による採用前の調整   入社前には、障害者職業カウンセラーの同行により尼野さんに来社してもらい、座席を入口に最も近い場所に設定するほか、社内の必要箇所に点字シールを貼付しました。 助成金を活用し職場介助者を配置   尼野さんがパソコンを使用した事務業務を行う際に、入力した内容のチェックや資料を渡す際の読み上げ、事務機器の操作の補助等を行う介助者を配置しました。 現在の雇用状況 尼野次郎さんの雇用状況 勤務形態 正社員(2008年1月〜) 勤務時間 9時〜17時40分 勤務内容 表計算ソフトによる給与データの集計、朝礼の司会、電話対応等   尼野さんは本社、全国8拠点、工場2ヵ所の計800人ほどの従業員の給与データを電子メールで受信し、作業用に作成した集計表により手当や勤怠関係等を個別に集計した後、最終的に1つの様式で集計しています。また集計後は各拠点や工場あての給与明細の発送作業(ラベル貼り)等を行います。   その他、2ヵ月に1度の割合で新入社員が入社してくるため、研修の準備として、受講者への案内や座席表を作成したりテキストのファイリングを行ったりしています。また、従業員の残業データの集計や定期券のデータベース登録(検索ソフトを使用した通勤経路の確認)、週1回の朝礼の案内及び司会、電話対応(担当部署への取り次ぎ)、荷受け等も担当しています。 (写真説明)データ集計する尼野さん 22ページ 支援内容1 支援機関 ハローワーク品川 障害者求人を提出した事業所に対し就職面接会を案内   クラシエ製薬から出された事務職の求人に対し、専門援助第2部門の担当者から障害者就職面接会への参加を勧めました。 就労支援機器・支援制度 活用した就労支援機器 画面読み上げソフト・点字ディスプレイ・点図ディスプレイ   高齢・障害者雇用支援機構による就労支援機器貸出し制度を活用し、試用ののち購入。 (44ページ・45ページ・46ページ「就労支援機器の機能と使用事例」参照) (写真説明) 点字ディスプレイ・点図ディスプレイ 活用した支援制度 障害者雇用納付金制度に基づく助成金(高齢・障害者雇用支援機構)  介助者の配置・就労支援機器購入に活用 解説ナビ ハローワークとは?   ハローワークの概要については、4ページを参照ください。 インタビュー 各種制度を最大限活用し、必要な機器を効率よく整備できました。 総務・人事グループ課長 柳岡祐紀さん   国立職業リハビリテーションセンターに対しては、事前に訓練の様子等を見学させていただいたり、担当者の話を伺うことで尼野さんが従事する仕事の可能性が広がりました。また職場まで足を運んでもらったことがありがたかったです。障害のことだけではなく尼野さんの性格等いろいろと教えていただきました。   ハローワーク品川に対しては、採用面接会に参加し多くの障害者と会うことで、障害者雇用への勉強になりました。   就労支援機器の貸出し制度に対しては、1年間利用することでいろいろな機器やソフトを試すことができました。結果として不要と判断した機器もあり、無駄に揃える必要がありませんでした。また機器購入の際には助成金を活用することで、職場の理解も得て十分機器を揃えることができました。   支援機関への要望としては、採用後も本人に対する研修の場があれば良いと思うことや、視覚障害者を雇用している他社との交流を希望しているので、紹介していただけるとありがたいです。また、尼野さんも採用後2年半が経過するにあたって、次へのステップアップが大きな課題となっているので、どのように考えていけばよいか相談したいと思います。 人権研修を通し、障害者に対する理解を広めていきたいと思います。 尼野次郎さん   国立職業リハビリテーションセンターに対しては、就職活動のきっかけをつかむことができたことやパソコン技能の習得、ビジネスマナーや面接等の練習はとても役に立ちましたし、訓練期間中に多くの事業所に訓練の様子を見ていただくことについては、採用の可能性を見いだすきっかけになります。集団面接会への参加については、視覚障害があってもスムーズに面接を行うことができました。   採用が決まってからは、通勤ルートの確認や職場の方との相談をしてもらえたことが良かったです。   就労支援機器の貸出し制度は、就職後、仕事をどのように進めていくか、何の機器が必要かはある程度時間が経たないと分からないので、大変助かります。特に視覚障害者用の機器は高額なものが多いので、選定する時間が必要だと思います。   入社してから新たに増えた仕事もありますし、また少し前には職場の人権研修会の場で自分が仕事をどのように行っているか紹介する機会があり、音声パソコンで作業するデモを行いました。人権研修を通して障害者に対する理解を広げる試みであると思います。今後もこのような機会が職場の内外で増えていけば良いと思っています。 23〜24ページ 支援内容2 支援機関 国立職業リハビリテーションセンター 技能訓練から就職活動、採用後の環境整備まで一貫してサポート パソコン技能習得のための職業訓練実施   大学卒業後、4年間の勤務経験があり、事務業務での就職を希望する尼野さんを、2006年9月〜2007年9月の1年間、視覚障害者アクセスコース(現:視覚障害者情報アクセスコース)で受け入れ、画面読み上げソフト、点字ディスプレイ、点図ディスプレイを用いたワープロソフト、表計算ソフト、データベースソフトの技能訓練を行いました。またパソコン技能に加えて簿記の基礎や電話対応の仕方等事務業務に求められる知識の習得を図りました。   尼野さんは自宅で画面読み上げソフトを用いてパソコンを使用しており、点字ディスプレイの使用経験もあったことから、スムーズに訓練カリキュラムを進めることができたようです。 就職活動における支援   訓練後半の2007年3月から尼野さんは求職活動を開始しました。単独での活動に制限があることに加え、就職活動が未経験で分かりやすく障害特性を伝えることに不安があったため、障害者職業カウンセラーが必要なアドバイスを行い面接にも同席しました。面接していただいた各社とも採用部署の検討が難しく不調が続きました。  なお、この時期から尼野さんはプレゼンテーション力を高めるため、求人募集のためセンターに来所されたほぼ全ての事業所に対して自身をアピールする機会を活用し、プレゼンテーション力を向上させていきました。  10月に開催されたハローワーク品川による障害者就職面接会でのクラシエ製薬との面接は尼野さん1人で臨みました。一次、二次面接を単独で突破し、最終面接で障害者職業カウンセラーが同席し、障害特性に関する配慮事項等について説明しました。 (写真説明)障害者職業カウンセラーが面接に同行 採用に向けて事業所・本人へ支援   尼野さんの内定後、柳岡課長に同センターを来所していただき、尼野さんのパソコン操作の実演を通してどのような作業ができるのかを見ていただきました。その際、就労支援機器の貸出し制度について障害者職業カウンセラーが説明しました。   また障害者職業カウンセラーは尼野さんと共に職場訪問し、職場環境を確認しました。 入社までの期間、実際の通勤時刻で経路の確認を4〜5回行い、手洗いや休憩室等への動線、尼野さんが対応できる事務機器についての確認を行いました。   また入社直前には、廊下やエレベーター、階段等必要箇所への点字シールの貼付に協力するとともに、事務所内で机や事務機器、また手洗いを実際に使用してもらい使用に支障がないか確認しました。 (写真説明)職リハ見学者に対するプレゼンテーションの様子 フォローアップ   採用3ヵ月後に障害者職業カウンセラーが職場訪問し尼野さんの勤務状況を確認したところ、柳岡課長から、見えないことで効率が悪いと思われても、できそうな仕事を声かけしながら取り組んでもらっているとの回答をいただきました。 事業所を対象とした講座に講師として招聘   クラシエ製薬就職後、2010年1月には、柳岡課長と尼野さんを同センターが障害者の受け入れを検討している事業所や障害者を雇用している事業所を対象とした「受け入れ準備講座」の講師として招聘しています。その時尼野さんは、「周囲の方々に助けてもらいながら仕事をしている」と話されています。 解説ナビ 国立職業リハビリテーションセンター   障害者の雇用の促進等に関する法律に基づく「中央広域障害者職業センター」と職業能力開発促進法に基づく「中央障害者職業能力開発校」から成る職業リハビリテーション機関です。厚生労働省により1979年に設置され、独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構が運営しています。 隣接する国立障害者リハビリテーションセンターとの密接な連携のもとに、障害者及び事業所のニーズに合った職業訓練や、障害者の職業指導・就職支援と事業主への支援を実施しています。 視覚障害者情報アクセスコースについて   ビジネス情報系の訓練コースとして、視覚障害者用アクセス機器(拡大読書器・点字ディスプレイ)及びアクセスソフト(画面読み上げソフト・画面拡大ソフト等)を活用して、パソコンによるビジネスソフトの利用を中心とした事務処理に必要な知識技能の習得を図っています。   訓練期間は通常1年または6ヵ月です。 職業指導・就職支援と事業主への支援について 1.職業訓練と並行して、訓練生が職業人として自立するための種々の指導・助言を行います。 2.事業所の障害者採用計画、雇用管理等への助言を行います。 3.訓練生対象として事業所による会社説明会を行います。 4.企業連携職業訓練や就職内定事業所のニーズに応じた訓練など事業所で従事する職務に合わせた訓練も行います。 5.採用後は地域障害者職業センター等と連携しフォローアップを行います。 (写真説明)国立職業リハビリテーションセンター (図)支援早見表(省略) 支援のポイントと評価 *国立職業リハビリテーションセンターにおいては、障害者職業能力開発校と障害者職業センターの機能を活かし、事務業務に必要な職業訓練と併せてハローワークと連携した面接の同行や通勤経路の確認を行ったこと。 *事業所に対しては来所相談または職場訪問による相談により、対応できる職務や支援ツールの確認、配慮事項の説明等事業所が円滑に重度の視覚障害者の雇用に取り組めるための支援を行っていること。 25ページ 雇用事例5  休職者を活かす仕組み作り 職種 事務業務(採用担当) プロフィール 事業所 株式会社サイゼリヤ 東京採用センター ■所在地/東京都中央区 ■事業概要/イタリア料理店をチェーン展開するフードサービス業 支援機関 支援1 東京都盲人福祉協会 支援2 日本盲人職能開発センター 支援3 杏林大学医学部付属病院眼科(アイセンター) 本人 相馬久弥さん(男性・29歳、障害の程度:4級) 視神経炎により突然目が見えなくなったが、治療により視力が回復。現在視力は0.04 程度。視野に欠損があり特に中心部分は見えない。 経緯と雇用状況 復職の経緯 職務を変更しての復職検討 レストランの店長を目指し接客を担当していた相馬さんは2006年1月に高熱により視覚障害者となりました。退院後に復職の相談を受けた人事担当である組織開発室長(当時)の織戸さんは、最初復職は困難と思いましたが、相馬さんのサイゼリヤへの復帰の熱意を感じ、復職の条件として「1人で通勤できること」「パソコンスキルを身に付けること」を提示しました。   3ヵ月後、織戸室長は相馬さんから連絡を受け、パソコン技能を受講している日本盲人職能開発センターを見学しました。そこで相馬さんが1人で通所していることや、未経験であったパソコンの基礎的なスキルを習得したこととその努力を高く評価し、また画面読み上げソフトを使用することで仕事ができる可能性を知り、事務業務で復職を受け入れることを判断しました。 復職に向けての調整   織戸室長は、相馬さんの復職に向け、復職時期と受け入れ態勢を考慮して、勤務部署を人材開発部での採用担当とし、従来の仕事の内容を一部組み替え、定型的な職務を確保しました。   なお、仕事の内容は、日本盲人職能開発センターによるパソコン訓練による技能習得状況を把握しながら検討を進めました。 現在の雇用状況 相馬久弥さんの雇用状況 勤務形態 正社員(2006年12月〜復職) 勤務時間 9時〜18時 勤務内容 採用受付、会社説明会の準備、資料作成、データ管理、店舗との調整等   相馬さんは2006年12月から人材開発部に復職しました。復職当初は通勤の負担を考慮して勤務時間を遅らせたり、短時間勤務から始めて段階的に勤務時間を延ばしていく取り組みを行ったり、パソコンスキルの定着を図るため、週1度、日本盲人職能開発センターに通いました。   仕事の内容については、現在、採用応募者からのメールや電話による受付、会社説明会の準備、資料作成、データ管理、店舗との調整等、採用に関わるあらゆる業務を担っています。 (写真説明)採用関係の資料を確認する相馬さん 就労支援機器・支援制度 活用した就労支援機器 拡大読書器・画面読み上げソフト・画面拡大ソフト   高齢・障害者雇用支援機構による就労支援機器貸出し制度を活用し、試用ののち購入 (43ページ・46ページ「就労支援機器の機能と使用事例」参照) (写真説明)画面読み上げソフトがインストールされているパソコン(左)と拡大読書器(右) 活用した支援制度 障害者雇用納付金制度に基づく助成金(高齢・障害者雇用支援機構)   就労支援機器購入に活用 26ページ 支援内容1 支援機関 東京都盲人福祉協会 通勤・移動に必要な歩行訓練を支援   相馬さんは、復職の条件として織戸室長から提示された「1人で通勤ができる」よう、区の福祉課に相談したところ、東京都盲人福祉協会を紹介され、2006年7月に訪問し相談を行いました。   相馬さんから歩行に係る指導の希望を受けた中途失明者緊急生活訓練指導員の早苗さんは、週1回2〜3時間で、相馬さんの自宅を訪問し、白杖の操作方法を中心に、階段昇降、信号の判断、電車乗降に関する指導を行いました。なお、支援期間中に9月から日本盲人職能開発センターでのパソコン研修受講が決まった時には、同センターへの通所の練習も行いました。3ヵ月間で併せて10回程度の指導を行い、白杖を利用して1人で歩行する技術の習得を図りました。 その後、12月の復職にあたって勤務部署の所在地が変更となったため、駅から新たな職場までの通勤ルートを太ペンを使用して図示しながら歩行訓練を数回行いました。 (写真説明)中途失明緊急生活訓練指導員、早苗さん (写真説明)歩行訓練の場面(写真は本人と別人です) 解説ナビ 東京都盲人福祉協会   盲人生活擁護と失明というハンディを持つ者同士が団結して問題解決に当たることを目的に、1903年に結成された当事者団体。   在宅視覚障害者福祉サービス事業のひとつとして、東京都から補助を受け中途失明者を対象に家庭を訪問し、更生相談、生活、歩行、点字等の指導を行っています(中途失明者緊急生活訓練)。特に就職希望者や在職者に対しては、歩行面において、白杖の使用や信号の判断、電車の乗降が適切にできるような基本的な指導から、安全な通勤ルートの選定、社内の通路や環境の説明といった実際の通勤や職場生活に即した指導まで行っています。   年間120名ほどの歩行訓練を行っていますが、うち25名弱が通勤関連の歩行訓練を希望しています。その中には、視覚障害となり初めての就職、また転職、事業所が移転といったことが要因となっている人もいます。   なお、パソコンの技能向上や就職活動支援のニーズに対しては、その目的に応じた専門機関を情報提供し紹介しています。   また、本人からのニーズに応じて、職場の方々に障害特性を把握していただくために、事業所を訪問し、雇用上の留意事項の説明も行っています。 (写真説明)東京都盲人福祉協会 27ページ 支援内容2 支援機関 日本盲人職能開発センター パソコン訓練を通し、休職中・復職後の技能修得をサポート 休職期間中のパソコン技能訓練   東京都盲人福祉協会での歩行訓練と並行し、相馬さんからパソコン技能等事務業務に必要な訓練について相談を受け、2006年10月から11月の2ヵ月間で週1回、1日3〜4時間、訓練を実施することとしました。   継続雇用コースにおいて職能開発訓練部主任職業訓練指導員の廣川さんが、画面読み上げソフトやキーボードにおけるショートカットキーを活用したワープロソフト、表計算ソフトの操作技能(特にデータ集計や、DM用の宛名ラベル作成)のほか、ビジネスマナーや社会保険制度等事務に必要な一般事項について指導を行いました。   なお、訓練期間中、織戸室長が様子を見に来所された際に、就労支援機器(拡大読書器〈卓上型・携帯型〉、画面読み上げソフト、画面拡大ソフト)の貸出し及び助成金制度について情報提供しました。   訓練の結果、相馬さんは画面読み上げソフトの操作技能をひととおり習得することができました。 復職後のパソコン技能訓練   相馬さんに対しては復職した後も平日の休日に、通所による表計算ソフト技能訓練(関数を使用したデータ処理等)を週1回(半日程度)4ヵ月間指導し、技能向上を図りました。   またフォローアップについては、訓練時間を利用し相馬さんから直接状況を確認してきました。特に問題は確認されませんでした。 継続雇用コースの内容 ・画面読み上げソフトを用いたパソコン操作  (文書? 宛名ラベル作成・表計算など) ・ビジネスマナーの習得 ・事務技能(社会保険制度等)の学習 (写真説明) 拡大読書機(携帯型) (写真説明) 杉江施設長 (写真説明) 廣川主任職業訓練指導員 解説ナビ 日本盲人職能開発センター   日本盲人職能開発センターの概要については、18ページを参照ください。 28ページ 支援内容3 支援機関 杏林大学医学部付属病院眼科(アイセンター) ロービジョンケアに基づいて就労支援機器の使用や選定を助言   日本ロービジョン学会による市民公開講座に参加した相馬さんは、そこでロービジョンケアの存在を知り、主治医からの紹介により、10月に杏林大学医学部付属病院眼科にて初回問診を受けました。   診察と主治医からの紹介状により、相馬さんの現状を確認しケアのプランニングを立てるため、視能訓練士の新井さんは、QOL 評価、ニーズ聴取、視機能評価を行いました。その結果、相馬さんのニーズである復職にあたって職場で使用する拡大読書器や職場でインストール可能な画面読み上げソフトの選定及び機器の配置の仕方について、復職した12月に6回、歩行訓練士の尾形さんにより就労支援機器に関するアドバイスを行いました。職場への説明は相馬さんが行っています。  その他、職場でのパソコン操作や、復職後も障害年金の受給や趣味といった仕事以外の内容についても相談を受け対応しています。 支援の流れ 問診→QOL評価、ニーズ聴取、視機能評価→拡大読書機・画面読み上げソフトの選定・配置の助言 (写真説明)(左から)新井視能訓練士、相馬さん、尾形歩行訓練士 インタビュー 職場の整理整頓でサービスの低下を防いでいます。 エンジニアリング部企画担当課長 久保聡志さん(当時の上司)   相馬さんに対して特別な配慮はしていませんが、強いて言えば物を探すことに時間を費やすことで本人にストレスが生じたり、効率やサービスが低下しないよう整理整頓には気をつけています。   支援機関に望みたいのは、視覚障害者の雇用管理で課題が生じた場合、制度を十分理解していない事業所に対して、支援機関の役割やサービスの内容をわかりやすく確実に周知していただきたいと思います。 考えるより行動すること。発想を転換してとにかく行動しましょう! 相馬久弥さん   東京都盲人福祉協会からは家庭訪問によるマンツーマンの歩行訓練、日本盲人職能開発センターからは仕事を行うために必要な知識、杏林大学医学部付属病院からは生活に関する様々な情報を提供してもらいました。自分の場合は自ら行動することで提供してもらいたい支援を担当している機関が把握できましたが、それが困難な人に対しては、支援機関同士が利用者のニーズを共有し手を差しのべてもらえれば、より利用しやすくなると思います。   最後に視覚障害のある人たちに対して、できないことはない、やればできます。ファミリーレストランだから視覚障害者の雇用が無理ということではありません。何もやらずに考えこむのではなく行動することが重要です。困難なこともありますが、発想を転換して行動して欲しいと思います。また周囲の人たちへの感謝の気持ちを日々覚えています。 29ページ 解説ナビ 杏林大学医学部付属病院眼科(アイセンター)   従来眼科のなかで視能訓練士が随時ケアしていたものを、1999年の改築と同時に眼科をアイセンターとし、ロービジョンルームをその一部分として位置づけました。   年間のべ800名程が利用しており、ロービジョンケア(注)の内容は個々の状態やニーズによって設定しています。利用者の半数以上が60歳以上の退職者ですが、就労に関する件で30〜40代の利用も2割程度あります。 注)ロービジョンケアとは?   視覚障害があっても、多くの場合は視機能(視力や視野、色覚、物を見るための働き等)が少し保持されていることが多いようです。その保持されている視機能を最大限に活用し、できるだけ快適な生活を送れるように支援する眼科医療や福祉のことを「ロービジョンケア」といいます。 杏林大学医学部付属病院眼科(アイセンター)の概要 外来診療日  月〜金(各日4名)、土曜日午前(2名) ※外来診療は予約制 スタッフ  視覚障害及びそのリハビリ・ロービジョンケアの専門教育を受けた視能訓練士・歩行訓練士3名(うち1名は非常勤職員)・主治医 ロービジョンルームで提供するケアとして、視機能の低下が日常生活に与える影響についての自己評価を確認するためのQOL評価、ケアについてのニーズ聴取、視機能の低下が読書や移動に及ぼす影響を確認するため、視機能評価や行動評価といった客観的評価を行い、これらをもとに、患者が最も優先するケアのニーズを整理し、患者とともにケア内容を決定しています。   ニーズは読み書きに関する補助具等の選定、歩行や移動に関する内容が最も多いですが、選定した補助具の貸出しや必要に応じその使用についてトレーニングを行ったり、歩行や移動については、歩行訓練士による初期指導を行っています。その他、日常生活、歩行や移動、福祉制度、就労等に関する情報提供も行っています。なお長期の訓練や入所による訓練が必要な場合には専門の支援機関を紹介しています。 (写真説明)杏林大学医学部付属病院眼科(アイセンター) (写真説明)ロービジョンルーム (写真説明)ロービジョンルーム ロービジョンケアの流れ ニーズ聴取→客観的評価(QOL評価、視機能評価、行動評価)→ケア内容の決定→ロービジョンケア(補助具・支援機器の選定、トレーニング、情報の提供、支援機関の紹介) ・ロービジョンケア実施医療施設 社団法人日本眼科医会 ホームページアドレス http://www.gankaikai.or.jp/lowvision/ ・日本ロービジョン学会 ホームページアドレス http://www.jslrr.org/sisetu1.html ・視覚障害リソースネットワーク ホームページアドレス http://www.cis.twcu.ac.jp/?k-oda/VIRN/inst/LVclinic.htm 30ページ (図)支援早見表(省略) 支援のポイントと評価 *医療、福祉、訓練の各専門機関が、事業所や本人のニーズに適切に対応し支援することで、職務変更による復職を可能としたこと。 *復職後も継続してフォローアップを行い、職場定着を図ったこと。 31ページ 雇用事例6  障害者職業能力開発校のフォローを受け、事務職で全盲の従業員を雇用 職種 事務職(人事採用担当) プロフィール 事業所 リコージャパン株式会社 所在地/東京都中央区 事業概要/デジタル複合機・プリンター・ネットワーク関連商品・消耗品の販売及び機器保守、アフターフォロー等 支援機関  神奈川障害者職業能力開発校 本人  都筑夕貴さん(女性・24歳、障害の程度:1級) 先天性の未熟児網膜症により、左眼は物があるのがぼんやりわかる程度、右眼は全く見えない。外出時には白杖を使用している。 就職までの経緯 全盲の視覚障害者が事務職として活躍している例が少ないので、都筑さんは事務職にチャレンジしてみたいという強い希望を持っていました。その思いから、東京都立文京盲学校の高等部普通科を卒業後、神奈川障害者職業能力開発校のオフィスインフォメーションコースに入校。事務職に就くためのワープロ、表計算等のパソコン操作や電話応対の基本的スキルを1年間学びながら、就職活動を行い、約100社の面接を受けました。   リコージャパン(当時リコー販売株式会社)には、リコーグループの面接会にてエントリーし、2006年4月に入社しました。 就労支援機器・支援制度 活用した就労支援機器 画面読み上げソフト・ICレコーダー(電話対応時のメモ代わりに使用) 画面読み上げソフトは、高齢・障害者雇用支援機構による就労支援機器貸出し制度を利用。 経緯と雇用状況 雇用の経緯 面接会を開催し都筑さんを雇用   リコーグループでは障害者雇用を推し進めるため、ハローワークの協力のもと、面接会を開催。当時の採用担当者は、都筑さんの明るさ、前向きな姿勢に将来性を見出し、雇用実績のない全盲の視覚障害者を雇用することに踏み切ったと当時を振り返っています。   なお、リコージャパンでは、現在でも障害者雇用については通年で募集しており、事務職を中心に身体障害者と精神障害者を140名程度雇用しています。 支援機関の助言を得ながら受け入れ体制を整備   都筑さんの入社にあたっては、全盲の人の受け入れが初めてであったため、彼女にどのように接すれば良いか、また会社としてどのような準備をすれば良いか全く分からない状況でした。そこで、仕事だけでなく日常生活にいたるまで、一つ一つ都筑さんと相談しながら進めていきました。通勤に関しては、神奈川障害者職業能力開発校の先生に指導していただき、途中一回の乗り換えがある通勤経路を、問題なく単独通勤できるようになりました。また、事務所内での移動に慣れるための指導も開発校に依頼し、2日間ほどで単独移動できるようになりました。 雇用にあたって取り組んだ内容 1.都筑さんの社内移動がスムーズに行えるよう、ビル管理会社と相談し、エレベータや給茶器、ゴミ箱等必要な部分に点字シールを貼付した。 2.複合機を単独で操作できるように、操作部のタッチパネルに凹凸のあるシールを貼付した。 3.従業員に対して、通路に椅子や物を出しっぱなしにしないことを伝えた。 4.都筑さんがスムーズに電話を取次げるよう、部内メンバーに、席を離れる時と戻った時には、都度、都筑さんに声かけをすることを伝えた。 5.部内メンバーの一日、一週間のスケジュールをメールや口頭で伝達するとともに、パソコン上でもメンバーのスケジュールを確認できるようにしている。 6.必要とするサポートを都筑さんが部内メンバーに積極的にはたらきかけることにより、自然とサポートする雰囲気が醸成されてきた。それを見習い、他部署の従業員も同じように接している。 32ページ 現在の雇用状況 都筑夕貴さんの雇用状況 勤務形態 嘱託社員 勤務時間 9時〜17時30分(週5日フルタイム・残業なし) 勤務内容 電話応対、社内便回収、会社説明会配布資料準備、社内への情報発信等人事採用部門のサポート業務   都筑さんは、社内外からの電話での問い合わせ対応、部内社内便の回収、会社説明会配布資料の準備、所属部署管理の会議室貸出し受付、面接室の清掃、月次の障害者雇用率算出、障害者リストの更新等各種採用業務のサポートを担っています。併せて、社内への情報提供のためのレポートを作成、配信。「つづちゃんレポート」として好評を博しており、現在98号まで発行しています。学生の動向や内定者フォロー等採用に関わるテーマから、風邪の予防方法といった季節に応じたテーマ、視覚障害者との接し方等自発的に考えたテーマをレポートにまとめて、周囲の人に役立つ情報を提供しています。このレポートは、内定者に対してもブログ等を通じて発信しています。   また、社内外への障害者に対しても、母校で後輩への講話を行ったり、東京都教育委員会からの依頼を受けDVDに出演する等、積極的にPR活動を行っています。   業務を行うにあたって、手順を何度か教えてもらった後は、必要に応じて独自マニュアルを作成しています。 (写真説明)パソコンを使用したデータ管理 (写真説明)電話応対 (写真説明)社内便の回収 (写真説明)必要なサポートは部内メンバーに積極的にはたらきかける インタビュー 都筑さんと仕事をしていく中で、障害者に対する理解が深まりました。 経営管理本部ビジネスマネジメントセンター採用センター 後藤定夫さん   都筑さんのような全盲の人の雇用は初めてだったので、雇用前はどのように接したら良いのか分からず、仕事や通勤のことだけでなく、日常生活の些細なことまで全てが手探り状態だったと前任者から聞いております。   都筑さんの職場での様子や仕事ぶりを見て、眼が見えないハンデはありますが、少しの工夫で、自分たちと同じように仕事ができることがわかりました。工夫一つで、都筑さんの担当業務が増え、入社以来、着実に活躍の場が広がってきました。これからも、その智恵を出し合っていくのが楽しみです。 マイペースでこつこつと仕事をするのが私の基本スタイルです。 都筑夕貴さん   仕事で分からないことがあった場合は、その都度、周りの人に相談しながら進めています。勤務しているビルは、特別、障害者に配慮した設備はありませんが、問題なく勤務しています。事務所内も、最初に自席やロッカー、コート掛けの場所を教えてもらった後は一人で移動しています。   私の書いたレポートを読んでくださった方から、「ためになりました」「参考になりました」といった感想をいただくと、とても嬉しくなり、テーマの選定や文書をまとめる苦労も吹き飛び、次はもっとクオリティの高いレポートを書けるように頑張ろうという気持ちになります。また、今までできなかった仕事ができるようになり、仕事の幅が広がったときは、自分の成長を実感でき、達成感を味わうことができます。採用の仕事をしていますので、内定された学生が入社してくる4月は、頑張って良かったなと1年間を振り返る瞬間となります。 33ページ 雇用事例7  施設の特性を活かした視覚障害者雇用 職種 機能訓練指導員 プロフィール 事業所 社会福祉法人埼玉県社会福祉事業団 皆光園 所在地/埼玉県深谷市 事業概要/身体障害者療護施設、障害者歯科診療所、聴能訓練、デイサービス 本人  笠原 功さん(男性、53歳、障害の程度:2級) 30歳頃から視力が低下し、網膜色素変性症の診断を受ける。視力は右眼0.01、左眼0.03程度。まぶしさや暗闇の中では見えない。視野は両眼とも10度以内。白杖を使用している。 就職までの経緯   笠原さんは、看護師や臨床工学技士として病院勤務をしてきましたが、視力低下により2005年に退職することになりました。   その後再就職に向け、埼玉県立特別支援学校塙保己一学園(埼玉県立盲学校)に2005年〜2008年の3年間通い、あん摩・マッサージ・指圧師の資格を取得しました。   なお、在学中に校外実習先の身体障害者施設から皆光園の情報を聞き、学校の教員からのはたらきかけにより、2008年4月から皆光園で勤務をしています。 経緯と雇用状況 雇用の経緯 法人の新体系移行に先駆け機能訓練指導員を雇用   皆光園の視覚障害者雇用の取り組みについては、全盲のマッサージ師が長年勤務しています(現在は定年退職後、再雇用制度により嘱託職員として雇用しています)。   笠原さんの採用については、障害者自立支援法による支援費制度の施設訓練等サービスが2010年4月から新体系に移行する予定であり、法人として機能訓練指導員を設置する必要があることから、移行に先駆けて、笠原さんを2008年4月に契約職員として採用、2009年4月から正規職員として採用しました。 施設の特性を活かした配慮   皆光園は身体障害者療護施設であることから、設備についてはバリアフリー化されており、特に視覚障害者に対しては、通路等の点字ブロックや機能訓練室におけるマットの敷き方や器具の配置等利用しやすい環境に整備されています。そのため、笠原さんの雇用にあたって特に整備する必要はありませんでした。   しかし皆光園の大きな特徴は周囲のスタッフのサポート体制であると言えます。業務上は上司がサポートしますが、スタッフは皆、笠原さんに対して自然にサポートしています。これは、全盲のスタッフが長年勤務していることや、視覚障害のある利用者もいることから、施設としては特別なことではありません。   具体的なサポートとしては、研修等の際に文字を拡大した資料の準備等をしています。 (写真説明) 整備された機能訓練室 34ページ 就労支援機器・支援制度 活用した就労支援機器 画面読み上げソフト・画面拡大ソフト (写真説明)画面拡大ソフト 現在の雇用状況 笠原 功さんの雇用状況 勤務形態 正規職員 勤務時間 8時30分〜17時15分 勤務内容 利用者の機能訓練とカルテ管理   笠原さんの通勤は徒歩で30分程度。悪天候の時等は家族が送迎しています。   機能訓練については、寮長とスタッフ間で立てられた機能訓練計画に沿って、希望する利用者に対し週2回、1人当たり30分、1日に午前4コマ、午後7コマ行っています。   カルテ管理については画面読み上げソフトと画面拡大ソフトをインストールしたパソコンを使用しています。   その他、これまでのキャリアを活かし、スタッフ研修やヘルパー講座等の講師も担っており、その準備のために新たな知識や情報を収集しています。 (写真説明)機能訓練を行う笠原さん インタビュー 笠原さんとスタッフとの意思疎通がサービス向上につながっています。 副園長 荒木秀隆さん   笠原さんに対して、支援ソフト以外では、意識しての特別な対応はしていません。   笠原さんは看護師の経験もあるので、他のスタッフとのディスカッションが深まりサービスの向上につながっています。   今後は本人が希望する就労支援機器の整備について検討していきたいと思っています。 スタッフが自然にサポートしてくれるから安心して仕事ができています。 笠原 功さん   機能訓練指導員を行っていて、利用者から喜びの声や機能が維持していることに対して訓練を評価していただいた時は満足感があります。   仕事をする上で、スタッフや利用者とコミュニケーションを密にすることを心がけています。   視覚障害者が勤務するにあたっては、ハードの整備も大事ですが、本当に大切なのは人だと思います。皆光園はスタッフが皆、自然に受け入れてくれてサポートしてくれますし、利用者の方も「そこ危ないよ」等声をかけてくれます。   今後、利用者の高齢化にあたって、少しでも機能を維持するためにはどのような訓練が良いのか考えていきたいと思います。 35〜36ページ U.視覚障害者雇用を進めるために 1.視覚障害者雇用のプロセスと有効な支援 本事例集で紹介した事例から、特にヘルスキーパーや事務職での雇用と在職視覚障害者の継続雇用について、それぞれ事業所が取り組むプロセスと有効な支援内容についてまとめてみました。 ※ヘルスキーパー導入にあたっては、福利厚生に特化した「リラクゼーション」としての成果を期待するか、健康管理室や産業医との連携や運営を含めた事業所全体の「健康管理の取り組み」を期待していくかについてコンセプトを定め、そのために求められるヘルスキーパーの資質や人物像を描いていく必要があります。 (1)ヘルスキーパーの雇用 <ヘルスキーパー雇用のプロセス> @導入の検討・社内ニーズの高まり @に対する有効な支援 啓発とはたらきかけ→ハローワーク、盲学校、あはき技能訓練機関、地域障害者職業センター ・視覚障害者雇用の啓発 ・視覚障害特性の説明 ・視覚障害者雇用のための職域拡大に関するはたらきかけ ・ヘルスキーパー業務に関する情報提供 Aヘルスキーパー導入のコンセプト設定、ヘルスキーパーに期待すること、期待される人物像の設定(※) B情報収集 C導入の経営判断(施術スペースの確保等) D社内への理解促進 E導入スケジュールの策定 F社内制度の整備(担当部署/雇用人数/勤務時間、賃金等労働条件/業務管理の方法/服務の取扱い) 有効な支援 ABFに対する有効な支援 紹介・助言・情報提供等→ハローワーク、盲学校、あはき技能訓練機関、地域障害者職業センター ・ヘルスキーパー業務に関する助言 ・先行事業所や事例の紹介 ・助成金等援護制度の情報提供 ・就労支援機器の情報提供 ・ジョブコーチ支援の情報提供 ・助言・支援が可能な専門機関の紹介 G求人票の提出(労働条件の提示 /面接/内定) Gに対する有効な支援 支援機関の連携によるサポート →ハローワーク  ・職業紹介(マッチングの検討) →盲学校、あはき技能訓練機関 ・ハローワークと連携した求職者の検討・推薦 ・職場実習の説明 ・職場実習時の支援 ・求職者の了解に基づく障害特性や配慮事項の説明 →高齢・障害者雇用支援機構 ・就労支援機器の貸出し H雇用 Hに対する有効な支援 勤務に向けた諸準備(本人) →【雇用前後】 OA技能訓練(視覚障害者対応)機関 ・事務処理に必要なパソコン訓練 →盲人福祉協会等 ・通勤訓練 →ハローワーク、地域障害者職業センター ・ジョブコーチ支援 Iヘルスキーパー業務開始に向けての調整 (就労支援機器の検討/社内のバリアフリー化の検討/勤務に必要な訓練の確認(通勤訓練、OA技能訓練等)) J設備の準備(マッサージルームのレイアウト(治療用ベッド、受付等)/必要備品(治療機器、受付・カルテ作成用パソコン等)/社内環境の整備(通路の安全確保等)) K業務内容の整理(1人当たりの治療時間 /1日当たりの治療人数 /受付方法/カルテ管理/衛生管理) Lマッサージルーム開設 有効な支援 I〜Lに対する有効な支援 勤務に向けた諸準備(事業所) →ハローワーク、地域障害者職業センター、盲学校、あはき技能訓練機関 ・ヘルスキーパー業務運営に関する助言 ・先行事業所の情報提供 ・事業所、本人、支援機関による必要準備の確認 ・必要な支援実施に向けての役割分担 →高齢・障害者雇用支援機構 ・助成金申請受付 M導入後の課題点の把握 N課題点の対応、職場定着 Nに対する有効な支援 フォローアップ →ハローワーク、盲学校、就労支援機関等 ・生活相談、精神面のフォローアップについて協力 →OA技能訓練(視覚障害者対応)機関、あはき技能訓練機関 ・教育研修に関する情報提供及び技能向上に関する研修の実施 →ハローワーク、地域障害者職業センター ・ジョブコーチ支援 →眼科医(ロービジョンケア実施機関) ・ロービジョンケア 37〜38ページ (2)事務職の雇用 事務職雇用のプロセス @雇用の検討 @に対する有効な支援 啓発とはたらきかけ →ハローワーク、地域障害者職業センター ・視覚障害者雇用の啓発 ・視覚障害特性の説明 ・視覚障害者雇用のための職域拡大に関するはたらきかけ 事務職雇用のプロセス A情報収集 B具体的な職務の選定 C労働条件の設定(勤務時間等) D社内への理解促進 E社内制度の整備(担当部署/雇用人数/勤務時間、賃金等労働条件/業務管理の方法/服務の取扱い/所属部署等のサポート体制の構築(障害者職業生活相談員、職場介助者の配置)) F設備の準備(必要備品/就労支援機器等/社内環境の整備(通路の安全確保等)) ABEFに対する有効な支援 紹介・助言・情報提供等 →ハローワーク、地域障害者職業センター ・事務職に関する雇用管理や職務設定に関する助言 ・先行事業所、事例の紹介 ・就労支援機器、助成金等援護制度、ジョブコーチ支援等の情報提供 →OA技能訓練(視覚障害者対応)機関 ・訓練場面見学会の実施 ・職場実習の説明、職場実習時の支援 ・筆記試験に係る点訳、試験時間延長の配慮、拡大読書器等の準備 →盲人福祉協会等 ・通勤訓練及び通勤に関する助言 G求人票の提出(労働条件の提示/面接/内定) Gに対する有効な支援 支援機関の連携によるサポート →ハローワーク ・職業紹介(マッチングの検討) ・就職面接会の案内 →OA技能訓練(視覚障害者対応)機関等 ・ハローワークと連携した求職者の検討、推薦 ・求職者の了解に基づく障害特性や配慮事項の説明 →高齢・障害者雇用支援機構 ・就労支援機器の貸出し H雇用 Hに対する有効な支援 勤務に向けた諸準備 【雇用前後】 →ハローワーク、OA技能訓練(視覚障害者対応)機関、地域障害者職業センター ・システム責任者の支援協力依頼 ・机の配置、照明、点字表示に関する助言 →OA技能訓練(視覚障害者対応)機関 ・職務内容に応じた技能訓練の実施(業務類似データを教材とする) →盲人福祉協会等 ・通勤訓練 →地域障害者職業センター ・ジョブコーチ支援 【雇用後】 →高齢・障害者雇用支援機構 ・助成金申請受付 I雇用後の課題点の把握 J課題点の対応、職場定着 Jに対する有効な支援 フォローアップ →ハローワーク、就労支援機関等 ・生活相談、精神面のフォローアップについて協力 →OA技能訓練(視覚障害者対応)機関 ・教育研修に関する情報提供及び技能向上に関する研修の実施 →地域障害者職業センター ・ジョブコーチ支援 →眼科医(ロービジョンケア実施機関) ・ロービジョンケア(見えにくさの改善) 39〜40ページ (3)復職 ※継続雇用には@休職してリハビリテーションを受け「復職」する方法、A休職せずにリハビリテーションを受け働き続ける方法があります。 復職のプロセス 本人 @研修、休職期間等を利用した技能習得の検討と実施社内への理解促進 @に対する有効な支援 勤務に向けた諸準備(本人) →各種技能訓練機関(視覚障害者対応) ・職務内容に応じた技能訓練の実施 →盲人福祉協会等 ・通勤訓練 事業所 A産業医・医師からの復職可否に係る診断(勤務上の留意点等)/在職、復職に関する本人との相談/通勤面の確認 B現職での復職の検討(勤務上の配慮等)/現職以外での復職の検討(具体的な職務内容) C復職受入体制の整備(担当部署/勤務時間、賃金等労働条件/業務管理の方法/服務の取扱い/障害者職業生活相談員、職場介助者の配置) D設備の準備(必要備品/就労支援機器等/社内環境の整備(通路の安全確保等)) ACDに対する有効な支援 現状把握と環境整備 →眼科医(ロービジョンケア実施機関) ・障害状況及びロービジョンケアの説明(産業医への伝達・協議) →ハローワーク、地域障害者職業センター ・雇用管理や職務設定に関する助言 ・視覚障害者雇用のための職域拡大に関するはたらきかけ ・視覚障害者の技能訓練機関の紹介 ・在職者訓練の情報提供 ・就労支援機器の情報提供 ・助成金等援護制度の情報提供 ・ジョブコーチ支援の情報提供 →盲人福祉協会等 ・通勤訓練及び通勤に関する助言 E復職 F復職後の課題点の把握 Eに対する有効な支援 勤務に向けた諸準備(事業所) 【復職前後】 →ハローワーク、地域障害者職業センター ・ジョブコーチ支援 →高齢・障害者雇用支援機構 ・就労支援機器の貸出し 【復職後】 →高齢・障害者雇用支援機構 ・助成金申請受付 G課題点の対応、職場定着 Gに対する有効な支援 フォローアップ →就労支援機関等 ・生活相談、精神面のフォローアップについて協力 →各種技能訓練機関 ・教育研修に関する情報提供及び技能向上に関する研修の実施 →ハローワーク、地域障害者職業センター ・ジョブコーチ支援 41〜42ページ 2.視覚障害者雇用を進めるために必要なこと 視覚障害者を支援する立場から 視覚障害者就労生涯学習支援センター代表 井上英子 1.はじめに   現在、多くの事業所で視覚障害者の雇用のための取り組みが行われていますが、本事例集は、最新の就労支援機器、支援制度、支援機関、雇用事例に関する情報やノウハウを知っていただくことにより、事業主と地域の支援機関が具体的な「働く視覚障害者」のイメージを共有して雇用の促進及び職場定着のための課題解決に役立てていただくことを目的としています。   そのために、職域拡大が期待される分野で雇用されている視覚障害者の事例をご紹介するとともに、雇用管理の上で配慮が必要な事項についても分かりやすく説明しています。   わたし達は、「すべての事業主は、社会全体の理念に基づき障害者雇用に関して共同の責任を負う」という法的な定めの範囲を超えて、地域生活や職業生活を障害者とともに行うことから得られる新しい価値観や利益を作り出そうとしています。   これまで障害者との交流がなく「共に働くイメージ」が持てない場合には戸惑いや不安がつのり、障害者との『協働』の実現は遠いもののように感じられますが、事業主の理念や行動は時代に合わせて変わっていきます。   事業主は視覚障害者の見え方や不便さが分らない、事務処理能力があるか、組織に溶け込めるかといった漠然とした不安や、障害のない人の雇用に比べて職務とのマッチングが難しいのではないかといった疑念もあります。そのような不安や疑念をクリアするために、障害のある求職者や従業員、職務、教育、就労支援機器、支援制度、リスク管理等の情報を本事例集の中から読み取っていただければと思います。 2.視覚障害者の職業 これまで、これから先は…   従来、視覚障害者の仕事はあん摩マッサージ指圧、はり・きゅう、電話交換手というイメージがありましたが、眼の見える人の理療分野への進出やダイアルインの普及により、多くの視覚障害者が従事できる分野ではなくなりました。   他方、1980年代からパソコンの画面情報を拡大表示、音声化、点字化する等の支援技術が進み、全く見えない人でもオフィスソフトやネットワークを駆使して業務に必要なパソコン操作ができるようになりました。さらに、近年、「目が見えない」ことを欠格事由とする医師法第3 条等の見直しによって、従来はあきらめざるを得なかった医師や栄養士等の資格取得が可能となり、職域の拡大がますます高まっています。   事務職、教育職、研究職、弁護士等の専門職は文書作成やデータの集計や分析、情報検索を、ヘルスキーパーはカルテや顧客の管理を、さらにすべての職域で、ネットワークによって他の従業員との間でデータや情報を共有できる体制が可能になっています。清掃は汚れを確認することが難しいかもしれませんが、丁重な作業をすることにより可能です。このように視覚障害者の雇用は、就労支援機器の準備、ジョブコーチ支援、さらに周囲の自然な心配りがあれば、視覚障害者の能力、体力、経験、専門性に合わせて、事務職、専門職、音楽家、清掃等の軽作業まで、様々な職域で可能になっています。   さらに継続雇用や復職の際には、異なる業務への配置転換やそれまでの経験を活かした特命事項の業務分担といったその人の能力に合った多様な職務・職域への移行事例も見られるようになっています。 3.視覚障害者の雇用 成果や満足を高めるために   1999年のILO総会で、21世紀の中心的な目標は「人々に働く価値のある仕事を確保すること」と定められました。これを基にこれからの視覚障害者が業務、職務権限、作業条件、給与、地位、人間関係等に満足を感じられるようにしていく努力が大切になります。   視覚障害者は視力や視野の状況、障害を受けた時期等多様ですが、雇用事例で挙げられている視覚障害者は一般の従業員と変わらない人事的な評価を得ています。それらの人々は、「技術」や「知識」が高いばかりでなく、組織の中で必要な「特性」、「(明確な)自己像」、「役割分担」、「目的意識」等を持っていることが分かります。   事業所の中で視覚障害者が十分な量の仕事を与えられて戦力としての成果を上げるためには、日ごろ、本人が持っている様々な能力を磨くことばかりでなく、事業所全体が作業上の心配りや工夫をしながらコミュニケーションを高めて『協働』の価値観を高めることも大きな要素になります。 4.事業所が視覚障害者を受け入れるときは   視覚障害は、視力、視野、羞明(まぶしさ)、受障時期(先天性・中途失明)、失明原因(緑内障、糖尿病性網膜症、網膜色素変性症、視神経委縮、網脈絡膜委縮等)により多様です。病気から生ずる視覚障害では身体的なケア、通院・服薬、休憩等の就労スタイルへの配慮が必要となります。視覚障害があるということは機能を失うだけでなく、多くの場合、生活や職業(就職の機会)を失う不安、社会の障害に対する無理解への葛藤も抱えることになります。   事業所では、情報セキュリティ管理上、パソコンの画面拡大ソフトや画面読み上げ(スクリーンリーダー)ソフトのインストールが難しいとされたり、データの保護やマクロによりデータの音声化やポータルサイトのアクセシビリティが十分でないといったことがありますが、視覚障害者を戦力とするためにシステム責任者の取り組みが是非とも必要です。   さらにパソコンのトラブルで音声が出なくなったときの上司・同僚によるサポートや最終的な原稿のチェック、通路にものを置かない配慮、情報のやり取りは電子媒体を活用する等、部門内の生活環境や作業を標準化していくことが、視覚障害者が戦力として『協働』するために重要です。   もちろん、視覚障害者も就労場面で、例えば、「アイコンタクトは取れませんので、声を出して呼びかけて下さい」等と障害から生じる様々な課題やその解決案を提示したり、インターネット等を活用した情報収集やイメージスキャナを利用した配布書類・資料のデータ化、さらに他の従業員と同様に会議資料の作成等の努力をしなければなりません。 5.支援機関の活用 @職業訓練機関による支援   視覚障害のある求職者に対して宮城障害者職業能力開発校、国立職業リハビリテーションセンター、(社福)日本盲人職能開発センター、視覚障害者就労生涯学習支援センター、神奈川障害者職業能力開発校、大阪障害者職業能力開発校、(社福)日本ライトハウス、国立吉備高原職業リハビリテーションセンター、福岡障害者職業能力開発校等で3ヶ月から1年のOS、文書作成、データ処理、ネットワーク、ビジネスマナー等の職業訓練が行われており、各地域で充実した業務技能を提供できる職業訓練機関が増えつつあります。   休職中の視覚障害者は職業訓練が、また、在職中の視覚障害者(休職者を除く)は在職者訓練の受講が可能です。受講によって復職や雇用継続に必要な、パソコンの画面拡大ソフトや読み上げソフト、またマウスに頼らないキーによる操作を習得します。さらにスキルアップや資格試験受験対策のための短期講習(キャリアアップ講習)や職業訓練機関への通所が困難な重度の障害者に対してはインターネットを活用したe-ラーニングもあります。これらは地域における職業訓練機関とハローワークや地域障害者職業センター等の協力と、新規雇用・継続就労・復職のためのニーズの高まりによるものです。 A医療的ケアから雇用に至る包括的な支援機関のネットワーク  わたし達が眼の病気になったとき、医療的なケアや福祉的なサービス情報の提供を受け、生活や歩行訓練により社会生活や学習ができるようにします。さらに職業訓練を受けて就労へと繋げて行きます。誰でもこのすべての時期に一貫したサポートを得ることが必要です。   そこで、視覚障害者の求人のマーケティング、新規雇用、継続雇用、復職等の様々なニーズに対応するためには専門の支援機関(眼科医とロービジョンケア実施機関、産業医、生活リハビリテーションセンター、障害者職業能力開発校、OA 技能訓練機関、特別支援学校、視覚障害者高等教育機関、高齢・障害者雇用支援機構と障害者職業センター、地域就労支援センター、障害者IT地域センター、ハローワーク、盲人福祉協会、患者会、点字・録音図書情報サービス等)のネットワーク化とコーディネートが鍵となります。本事例集の「視覚障害者雇用のプロセスと有効な支援」(35ページ〜40ページ)で示されている支援機関同士が密な連絡を取り合うことでネットワークが動き出します。   ネットワークを構成する機関は、求人事業所に対しては、視覚障害者の業務に関する情報、職場環境、雇用形態、通勤方法、就労支援機器貸出し、ジョブコーチ等による支援やフォローアップ等を行い事業所の不安を取り除いて行きます。   医療的ケアから雇用に至る包括的なネットワークがあること、その存在を知ることは、安定した雇用を作り出すと言っても過言ではありません。 Bジョブコーチ支援…現場における支援   ジョブコーチ支援は、事業所や障害者のニーズに沿って、現場で支援を行う効果的な制度で、地域障害者職業センターが策定した支援計画に基づき、視覚障害の状況、そこから生じる困難、必要な就労支援機器等を見極めながら、職場の上司や人事部、産業医と連携を取りながら支援を行います。   ジョブコーチは、新規雇用した視覚障害者に対して環境適応・業務理解等について具体的な困難や不安を軽減するために、採用時に必要な書類の読み上げや通勤ルート、オフィス内のオリエンテーションの確認や、電話機、タイムカード、コピー、ファックス等の使い方を、また業務で求められるスキルの向上について支援します。   事業所に対しては、視覚障害者のガイド方法、画面読み上げソフトの機能の説明、音声パソコンを使用した事務業務での雇用事例の紹介、就労支援機器貸出し制度や助成金制度の情報提供等を行います。さらに、支援の中で視覚障害者が取得したスキルや工夫をお伝えする等、業務の拡大のヒントを提供します。 CIT・ヘルスキーパー業務に関する支援   ITに関する支援については、障害者職業能力開発校、OA技能訓練機関、就労支援機器開発・販売会社あるいは専門的知識を持つジョブコーチ等により、社員研修において就業規則や福利厚生情報等のデータやグループウェアのメール、アドレス帳、掲示板、データベース、スケジュール管理、勤怠予定・実績管理、業務報告、各種e-ラーニング、出張費の精算等における申請・承認のワークフローといった内容を、画面読み上げソフトとキー操作によって活用できるための支援を行います。さらに雇用後もOJTへの支援や、就労支援機器のメンテナンスや操作に支障が生じないよう、フォローアップを行います。   なお、中途失明者の場合は、その継続雇用のために、操作をマウスから画面読み上げソフトとキー操作に換えてIT事務処理能力を回復させる支援を行います。   ヘルスキーパーとして雇用する場合は、ジョブコーチや特別支援学校、あはき技能訓練機関、さらにOA技能訓練機関、就労支援機器開発・販売会社等が連携し、施術用の設備からパソコンによるカルテの管理方法等まで幅広いアドバイスを行うことができます。 6.まとめ   事業主の皆様には、本事例集を参考資料として視覚障害者雇用に取り組む際に必要な考え方や、障害者の能力を発揮させる環境整備の必要性と働いている視覚障害者の実績をご理解いただき、更なるキャリアアップに向け取り組んでいただきたいと考えます。また、視覚障害者の方々には、社会の最前線で仕事をしてきた先人の就労事例を参考にして、パソコン等の技能や業務に必要な知識を身に付けてご自身の職務・職域の開拓をしてほしいと考えます。   今後、視覚障害者雇用の促進のために、職域を拡大するための雇用条件の整備や、ハローワーク等の支援機関による効果的な支援のノウハウが普及して行くことを望んでいます。 平成23年3月 43ページ V.就労支援機器の紹介 就労支援機器の機能と使用事例   視覚障害者が職場で主に使用している就労支援機器には、拡大読書器や点字ディスプレイ等があり、またソフトウェアでは、画面読み上げソフトや画面拡大ソフト等があります。これらの機器やソフトが職場でどのように使用されているかを紹介します。 1.機器 拡大読書器 機能   印刷物や写真等を拡大したり背景と文字色のコントラストを高くすることで対象物を見やすくするための支援機器が拡大読書器です。   卓上に設置する卓上型では、オートフォーカスでのピント調整機能、白黒反転機能、ネガポジ反転機能が主流となっています。さらに、ライン機能やマスク機能を持っている機種もあり、より便利な機能を有しているものもあります。また、パソコンモニタに接続するタイプもあります。   小型でモニタと一体となっている携帯型は、持ち運びに便利で、バッテリー式で約2 時間程度の使用が可能です。市販のテレビに接続できる機器もあります。出張や会議の多い人や複数の場所で仕事をする場合に便利です。 使用事例 (事務業務:弱視) 卓上型   株式会社サイゼリヤの東京採用センターで勤務している相馬久弥さんは、各店舗から送られてくる採用関係の手書きの資料をデータ入力する作業のほか、採用業務に役立ちそうな情報(会社情報や書籍等)の確認、備品管理業務においてメールにより送られてきたPDFファイル等を印刷しチェックする際にも拡大読書器を使用しています。拡大した文字をパソコンに入力するため、主にパソコンとセットで使用しています。   拡大読書器の使用については、誤字脱字を確認する場合は文字拡大していますが、資料全体のレイアウトを確認する場合は1文字20〜22ポイント程度に拡大をとどめています。   なお相馬さんは受付机にて作業しているため見栄えの良いものを選んだそうです。 (写真説明)拡大読書器で拡大した文字をデータ入力する 携帯型   相馬さんは、採用活動により出張する機会もありますが、その時には携帯電話とほぼ同じサイズの拡大読書器を携行しています。拡大読書器がない事務室や出張先で急いで紙データの文字を確認しなければならないときに使用しています。もっぱらルーペ代わりにズーム機能を使用しています。 (写真説明)出張先等で紙データを確認する際に役立つ 相馬さんの障害状況(事例5・25ページ参照) 障害の程度は4級。視力は0.04程度。視野に欠損があり特に中心部分は見えない。 44ページ 点字ディスプレイ 機能   点字ディスプレイは、パソコンの文字情報を点字に変換し表示するために使用する機器です。   なかには点字での入力が可能な機種もあります。また、データを記憶させることができる機種もあり、単体で電子手帳のように使用することもできます。 使用事例 事務業務(全盲)   クラシエ製薬株式会社の総務・人事グループで勤務している尼野次郎さんは、電話応対において取り次ぎの際、相手の名前や電話番号をメモするために使用するほか、自分のスケジュール管理に点字ディスプレイを使用しています。メモ紙と異なり、入力した内容の編集や削除も容易に行っています。特に電話応対の際にはメモ取りのスピードが格段に速く役立っています。 (写真説明)電話応対時のメモ取り等に使用 尼野さんの障害状況(事例4・21ページ参照) 障害の程度は1級。視力は光を感じる程度。白杖や点字を使用。 使用事例 ヘルスキーパー(全盲)   株式会社帝国ホテルで勤務している小松宏衣さんは、音声カルテ管理ソフトによりカルテ入力をする際に使用しています。また、携帯型の点字ディスプレイをメモ機能として活用しています。 (写真説明)カルテ入力に使用 (写真説明)携帯型の点字ディスプレイ 小松さんの障害状況(事例3・13ページ参照) 障害の程度は1級。視力は光を感じる程度。白杖や点字を使用。 45ページ 点図ディスプレイ 機能   ウインドウズの画面情報を点図の形でリアルタイムに表示するのが点図ディスプレイです。   文書のレイアウトや図表等点字や音声の情報だけでは難しかった図形情報がピンディスプレイに表示されるので、触ることで情報を得ることができます。 使用事例 (事務業務:全盲)   クラシエ製薬株式会社の総務・人事グループで勤務している尼野次郎さんは、残業データを表計算ソフトで集計しグラフ化する際に、シートのレイアウト(折れ線グラフの表記や数値が挿入されているか等)を確認するために使用しています。   シートのレイアウト等は聴覚情報だけでは把握しにくく、他者の確認が必要となりがちでしたが、点図ディスプレイを使用し触覚により把握することができるため、他の従業員の手間を取らせることなく作業を進めることができるようになっています。 (写真説明)突出したピンをなぞることで図形等が把握できる (写真説明)尼野さんが職業リハビリテーションセンターにて点図ディスプレイによるレイアウトを使用し作成した表とグラフのシート(クラシエ製薬でも同じようなシートを作成している) 2.ソフト 画面読み上げソフト   ウインドウズの画面情報だけでなくワープロや表計算等オフィスで使用されるアプリケーションソフトの画面情報も音声で読み上げるソフトウェアです。   文書のレイアウトや図表等点字や音声の情報だけでは難しかった図形情報がピンディスプレイに表示されるので、触ることで情報を得ることができます。 46ページ 使用事例 事務業務(全盲)   クラシエ製薬株式会社の総務・人事グループで勤務している尼野次郎さんは、常時画面読み上げソフトを起動させています。   特に本店、全国9支店、工場2か所からメール送信されてくる、表計算ソフトによる従業員の給与データの読み取りや集計作業に使用するほか、ワープロソフトによる新入社員に対する研修案内文の作成等に使用しています。   なお、尼野さんはメール受信用と表計算・ワープロ用の2 種類の画面読み上げソフトを使用しています。   また、読み上げ音声が他の従業員の迷惑にならないようヘッドフォンを着用して作業していますが、従業員からの呼びかけへの対応や長時間使用による耳の負担を軽減するため、市販の骨伝導式のヘッドフォンを使用しています。 (写真説明)ヘッドフォン併用で画面読み上げソフトを使用(尼野さん) 使用事例 事務業務(弱視)   株式会社サイゼリヤの東京採用センターで勤務している相馬久弥さんは、画面読み上げソフトをノートパソコンで常時起動させており、事務所内での通常業務と出張時にて、事務所内または出張先でメールを受けた際の内容確認や資料作成に活用しています。   なお、表計算ソフトによる名簿や統計等の表作成や、ワープロソフトによる採用者等への案内文の作成において、ウインドウズ7の文字拡大機能と併用しています。 (写真説明)画面拡大機能と併用で画面読み上げソフトを使用(相馬さん) 使用事例 ヘルスキーパー(弱視)   株式会社東急エージェンシーで勤務している原 由美さんは、イントラネット上に作成された予約システムによりパソコン上で予約状況を確認する時や、カルテを入力する時に、拡大読書器と併用しながら活用しています。 (写真説明)拡大読書器と併用で予約状況の確認やカルテ入力を行う(原さん) 原さんの障害状況(事例1・3ページ参照) 障害の程度は3級。視力は0.03程度。視野に障害がある。 画面拡大ソフト   パソコンの画面を拡大して表示したり、画面色を反転させて表示する等の機能を持つソフトウェアです。   市販のパソコンモニタでは見えづらい場合に使用します。   マウスポインタやカーソルの強調表示ができるのでマウスやカーソルを見つけやすくすることができます。   動画ページのキャプションで表示される説明の文章と動画の映像をテキストと静止画で読むことができる機能や、複数の拡大方法の中から見やすい方法を選べ、また拡大された部分のサイズや位置をマウスやキーボードで調整する機能がついたソフトがあります。 使用事例 (事務業務)   株式会社サイゼリヤの東京採用センターで勤務している相馬久弥さんは、受信メールの内容確認や資料の作成と確認に、画面読み上げソフトと併せて使用しています。   なお、現在使用しているノートパソコンでは、画面拡大ソフトと同等の機能を持っているウインドウズ7の画面拡大機能を使用しているとのことです。 47ページ 就労支援機器の情報・相談・貸出しについて   就労支援機器の情報については、独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構のホームページで紹介していますのでご参照ください。(ホームページアドレス http://www.kiki.jeed.or.jp/)   また、作業の内容や環境(パソコンや使用するアプリケーションソフトの種類やバージョン等)に最も適した機器等、機器の内容についてのご相談については中央障害者雇用情報センターまでご連絡ください。   なお、中央障害者雇用情報センターでは事業主に対する就労支援機器の展示や無料貸出しも行っていますので、ご利用ください。 ・中央障害者雇用情報センターで貸出している視覚障害用就労支援機器一覧 (データは平成23年1月現在のものです) 画面読み上げソフト  概要:パソコンの画面情報を音声で確認できます。 画面拡大ソフト パソコンの画面を拡大して表示します。 活字音訳・拡大読書ソフト 概要:印刷物をスキャナで読み取り、テキスト化して読み上げたり、拡大表示します。 視覚障害者向けワープロソフト  概要:画面読み上げソフトに対応したワープロソフトです。 視覚障害者向け宛名書き住所録ソフト 画面読み上げソフトに対応した宛名書き住所録ソフトです。 点字ディスプレイ  概要:点字をピンディスプレイで表示します。 点図ディスプレイ  概要:パソコンの図形や画像などの情報をピンディスプレイで表示します。 卓上型カラー拡大読書器  概要:印刷文字をカメラで映し拡大します。据え置き型です。 携帯型カラー拡大読書器  概要:印刷文字をカメラで映し拡大します。携帯できます。 パソコン接続型カラー拡大読書器  概要:パソコンのモニタを拡大する画面として使用できます。 活字文書読み上げ装置  概要:SPコードに変換した活字文書を音声で読み上げる装置です。 音声・拡大読書器  概要:印刷物を音声で読み上げたり、拡大読書器として使用できます。操作は音声でガイドします。 カルテ管理ソフト  概要:画面読み上げソフトに対応したカルテ管理ソフトです。 受付業務支援ソフト  概要:視覚障害者の受付業務を支援するソフトウェアです。 名刺管理ソフト  概要:名刺を小型専用スキャナで読み取り、データベース化してデータを活用できるソフトウェアです。宛名書きソフトにも対応しています。画面読み上げソフトと一緒に使用することによって、操作を音声で読み上げます。 お問い合わせ 独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構中央障害者雇用情報センター ・機器の内容についてのご相談  電話03-5400-1632 ・機器の貸出しについてのご相談  電話03-5400-1626 所在地  東京都港区海岸1-11-1ニューピア竹芝ノースタワー13F ご利用時間  平日9時15分〜17時30分 (写真説明)就労支援機器展示コーナー 48ページ 視覚障害者の雇用の促進のための条件整備に関する研究委員会 研究委員 氏名/所属/役職名 井上英子/視覚障害者就労生涯学習支援センター/代表 上田英典/国立職業リハビリテーションセンター/職業指導部長 大野哲也/東京都立文京盲学校/進路指導部主任 坂田敦子/東京労働局職業安定部職業対策課/障害者雇用対策係長 佐藤珠己/厚生労働省職業安定局高齢・障害者雇用対策部障害者雇用対策課/主任障害者雇用専門官 杉江勝憲/社会福祉法人日本盲人職能開発センター/施設長・理事 (座長)寺島 彰/浦和大学こども学部/教授 (五十音順、敬称略、所属・役職は平成22年12月現在) 開催状況 開催回数 第1回  開催日 平成21年7月15日  検討内容 研究計画、事例収集、職域拡大マニュアルの作成(改訂) 開催回数 第2回  開催日 平成21年9月14日  検討内容 収集事例、ヒアリングにおける調査項目、就労支援の取り組み報告(横浜市立盲特別支援学校) 開催回数 第3回  開催日 平成21年12月11日  検討内容 ヒアリングの実施状況、職域拡大マニュアル(案)、職域マニュアルの普及 開催回数 第4回  開催日 平成22年5月18日  検討内容 ヒアリングの実施状況、事例集の作成 開催回数 第5回  開催日 平成22年9月15日  検討内容 支援機関に対するヒアリングの実施状況、事例集の構成 開催回数 第6回  開催日 平成22年12月10日 検討内容 事例集の作成、事例集の普及 裏表紙 誰もが職業をとおして社会参加できる共生社会を目指しています。 企画/発行 独立行政法人 高齢・障害者雇用支援機構雇用開発推進部 郵便番号105-0022  東京都港区海岸1-11-1 ニューピア竹芝ノースタワー内 電話 03-5400-1626 ファクス 03-5400-1608 ホームページアドレス http://www.jeed.or.jp 平成23年3月発行