聴覚障害者の雇用支援マニュアル
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1 安全衛生教育と体制整備2 環境整備も考えられます。例えば、工場内では、緊急時にブザーと併せて点灯する回転警告灯(パトランプ)や、指示が表示される電光掲示板の設置を行っている企業もあります。搬送装置やフォークリフトが行き交う職場では、搬送装置にライトをつけ、バック時のフォークリフトを改修することで進行方向に矢印が投影されるようにして、きこえない・きこえにくい人もこれらの動きを認知しやすくした事例もあります。また、緊急事態を伝達するために、大音量に加え、強い振動・フラッシュを発する機器を支給した事例もあります。AEDの設置にあたり、本体の液晶画面に操作法などが表示されるタイプを導入する、停電により暗くなった工場内でも物品や動線が分かるように蓄光テープを貼るなどを行った事例もあります。そのほかにも、工場内で全員が同じ作業着を着ていても、緊急時に障害者の避難誘導を担当する者が誰か、すぐに分かるよう、担当者が腕章を着けるようにした事例もあります。障害の有無にかかわらず、全ての社員にとって安全・安心な職場を実現することは重要です。最近では、自然災害リスクへの対策に関する意識も高まってきています。JEEDでは企業の取組などをまとめた「障害者の労働安全衛生対策ケースブック」を作成しています。本章では、同ケースブックなども参考に、きこえない・きこえにくい人の安全・安心な職場づくりについて紹介します。労働災害の防止については関係法令で定められているとともに、各企業でもルールや対処方法が定められています。こうしたルールなどは分かりやすい資料にして社員に渡す、研修の際には手話通訳者を手配する、内容を字幕で表示するといった配慮が望まれます。当事者本人の理解を図ることだけでなく、災害を防止するために周囲がどのような配慮を行うことが必要かを予め検討・確認しておくことも大切です。また、障害のある方でないと気がつかないこともあるので、仕組みとして当事者の声を聞く機会を設ける取組なども重要です。例えば、障害のある社員を安全衛生委員会のメンバーにする、障害のある社員にアンケートを行うといった取組が挙げられます。ある企業では、きこえない・きこえにくい社員にアンケートをとったところ、「見通しが悪い階段や廊下では、足音に気づかず、ぶつかりそうになることがある」との声があり、ミラーを設置することでヒヤリ・ハットを解消しました。安全・安心な職場づくりのために守るべきこと・大切なことは繰り返し社員に伝え、常に意識してもらう必要がありますが、安全上のルールやスローガンを見やすい場所に掲示することにより、視覚的な周知と注意喚起を図ることも考えられます。加えて、聴覚障害への対応として、以下のような取組      社内に設置したミラー108

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