3 ろう者の文化と手話言語語・日本の手話言語のそれぞれに歴史と文化があります。コミュニケーションの行き違いがあっても、お互いに、相手の思考や行動の理由を決めつけることなく、その解決法やお互いに妥協できる範囲を一緒に話し合い、職場全体で共有していくことが重要です。考パターンや生活・行動様式まで直ちに理解が及ぶわけではありません。これと同じように、きこえる人が手話を身につけたとしても、きこえない人の考えていることを真に理解できていないことがあります。その逆も同様です。職場においてはきこえない人が少数派になりがちであるため、こうしたコミュニケーションの行き違いは、きこえない人における日本語の知識不足や職場マナーの理解不足であると評価されてしまいやすいといえますが、日本音声言語の日本語の背景に、きこえる人が大切にしてきた文化があるように、日本の手話言語にもきこえない人が長い歴史の中で受け継いできた誇れる文化があります。日本語を第一言語とするきこえる人が、第二言語として例えば英語を習得しても、英語を第一言語とする人の思第1章「きこえない・きこえにくい」とは 事例社員が多数働いていました。そのため、手話講習会を開催するなど、聴覚障害者を理解しようと取り組んでいましたが、聴覚障害者とほかの社員との関係にぎくしゃくしたところがありました。そのような中で、ある講演会に参加した社員が「ろう文化」について知ったことをきっかけに、会社として「ろう文化」への理解を深め、新たな取組を行いました。 それまでは、手話を「たくさん」「早く」習得することに力点をおいていましたが、まず「ろう文化」についての社員教育を実施した上で、障害特性などに関する理解を進める機会や、手話講習会を設定しました。こうした取組により、聴覚障害についての社内の理解が進み、聴覚障害者とほかの社員の関係がよくなり、社員全体の意欲の向上につながりました。 当事者の背景を理解する 当社では特例子会社ということで、聴覚障害者の(A社)21
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