聴覚障害者の雇用支援マニュアル
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きこえにくいことで生ずる「バリア」の解消2 就労場面での「バリア」     1 きこえない・ いものでもあります。解消に向けては、バリアフリーの視点が重要です。バリアフリーは、バリアを除去する(環境を整備する)ことにより、個人の活動を実現しようとするものです。情報不足に陥らないよう、雇用管理などの担当者や、職場の上司・同僚からの情報提供などの配慮と積極的支援が、きこえない・きこえにくい人の能力発揮の鍵を握っているといっても過言ではありません。ることになります。そのため、語いが少なかったり、漢字の読み方を間違えて覚えてしまったりすることがあります。情報の不足や偏りは、コミュニケーションが円滑でなくなることにとどまらず、ときに対人関係や社会参加に消極的になるなど心理的な課題につながる場合もあります。情報が不足した職場で働くことの難しさは、きこえる人も経験することですが、情報不足はきこえない・きこえにくい人にとっては日常的な現象であり、能力発揮の阻害要因となっています。きこえない・きこえにくい人は、自分の職場において今どういう方向で業務が進められているかという状況を把握しきれないまま、とまどいながら業務に当たっていることが少なくありません。情報障害から生ずる様々なバリア、課題は、きこえない・きこえにくい人自身の注意や努力だけでは解決できなきこえる人の場合には、生活や仕事に関する情報の多くを、視覚により認識する文字・画像情報と、聴覚により認識する音声情報として取得しています。しかし、聴覚障害がある場合、きこえない、あるいはきこえにくいということだけでなく、情報を受け入れるチャンネルがない、あるいは狭いため、取得した情報に不足や偏りが生じやすくなります。このため、聴覚障害は「情報障害」ともいうことができます。きこえない・きこえにくい人は、情報障害により、様々な「バリア(障壁)」に直面することがあります。22ページの「骨が折れる」はその一例です。きこえる人は幼い頃から様々な場面(日常生活や学校教育など)で、耳で聞くことにより日本語(語いや文法の習得など)が自然に発達しますが、音声言語を獲得する前から聴覚障害があると、教育を中心に日本語の習得を図One PointOne PointColumnているが、だんだん声が大きくなる。• 聞き直すことで、気まずい雰囲気になることがある。 • 聞き直すことが重なると、相手の負担になり心苦しい。聞き直すと、「もういい」といわれることもある。• 相手の負担を考え、分からないことがあっても質問を遠慮するときがある。• 所属部署全体の業務内容や進行状況などが分からないまま、同僚の雰囲気に合わせて仕事をしている。• 補聴器を付けていると、発声でき、聞こえるように思われてしまう。ライラすることがある。• 指示を出し確認を取ったにもかかわらず、失敗されたことがある。• 説明していても、本当に分かっているかどうかが分からない。不安などを感じることがある。• 中途失聴の方など、手話を習得していない人もいることを知らなかった。きこえる社員との間のギャップの例 (当事者の声から)「聴覚障害」を取り扱った映画作品など 「聴覚障害」について、職場の皆さんの関心を高めるのに、例えば「聴覚障害」をテーマにした映画を鑑賞することも考えられます。 以下は動画配信サービスなどで、比較的利用しやすい作品です。• 愛は静けさの中に(1986年)• 聲の形(2016年)• ケイコ 目を澄ませて(2022年)• 息子(1991年)• コーダ あいのうた(2021年)• LOVE LIFE(2022年) そのほかにも、きこえない・きこえにくい人たちによる劇団公演や手話による狂言・能・落語・漫才などを観劇することで、身近に感じることができるかもしれません。◉ きこえない・きこえにくい社員• 指示や会話を聞き取れないことがあると、聞き直し◉ きこえる社員• 忙しいときや時間がないときに聞き返されると、イ24

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