イントロダクション障害者の就労意欲の高まり、企業の障害者雇用への積極的な取組、障害者雇用促進施策の拡充、就労支援機器やICT(情報通信技術)の進展などにより、雇用される障害者数は増え、その職域も拡がっています。また、近年では、在宅勤務や短時間勤務など、多様な働き方も拡がりつつあります。きこえない・きこえにくい人についても、就業している業種や職域が拡大するとともに、働き方も多様化しています。障害者が職場に定着し、スキルアップ・キャリアアップを実現していくためには、雇用する企業が障害特性を理解し、本人の意欲や能力が発揮できるよう、必要な配慮を提供することが不可欠です。特に、「情報障害」ともい拡大する雇用と職域職業能力を左右する職場のコミュニケーション合理的配慮の提供義務について拡大する雇用とコミュニケーションの重要性6 一方で、きこえない・きこえにくい社員と、きこえる社員が手話などを通して自然にコミュニケーションがとれている企業では、きこえない・きこえにくい社員が能力を発揮するとともに、良好な人間関係を築き、長期的に勤務している場合が少なくありません。こうした企業では、分かりやすい作業手順書の作成など、業務遂行に必要な情報の的確な伝達や円滑なコミュニケーションに関する工夫、手話習得などの上司や同僚の努力、配属前からの環境整備など、きめ細かい配慮と支援が行われています。コミュニケーションや人間関係における課題の解決のためには、雇用主や障害者雇用の担当者、職場の作業指示者(上司を含む)や同僚が聴覚障害について正しく理解することが前提となります。受入れ時のチェックポイントの確認、職場環境の整備など、雇用管われる聴覚障害の場合には、職場でのコミュニケーションの確保や情報保障が重要です。きこえない・きこえにくい人を雇用している企業の方から、就労支援機関に「きこえない・きこえにくい人の職業能力は、ほかの社員と変わらないが、コミュニケーションにすれ違いが起こるなど、人間関係でうまくいかないことがあり、悩んでいる」といった相談があります。 日々の現場や教育訓練の場面などで、周囲の障害への理解や対応に不足があったことによるものかもしれません。すれ違い自体はささいなことかもしれませんが、積み重なると深刻な事態へと発展する可能性があります。 理面での対応が適切であれば、きこえない・きこえにくい人の職場定着につながるだけでなく、職場全体のモチベーションが上がることが示されています。きこえない・きこえにくい人をはじめ、障害のある社員が働きやすい職場は、全ての社員にとっても働きやすい職場でもあります。「きこえない・きこえにくい人だから、コミュニケーションが難しいのではないか」、「抽象的な概念が理解しにくいのではないか」などと画一的に考えることは適切ではありません。障害者雇用では、一人ひとりの障害特性や適性・能力などが異なることを理解して対応することが基本です。雇用の分野における合理的配慮につ
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