聴覚障害者の雇用支援マニュアル
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職場定着を図るために定期的に振り返りを行う、②指示を出すときは、なるべく口頭のみでなくメモやメールなどに残し、内容が理解できたかどうか確認する、③業務上の変更点は、「今までの(書式は)…、新しい(書式は)…。」のように、新旧を比較するなど分かりやすく伝えるなどが挙げられます。「1.職場でのコミュニケーション」の表1では、「定期的な相談」や「業務遂行の支援や助言者の配置」も、きこえない・きこえにくい人が必要とする傾向が強い配慮項目となっています。次ページからの二つの事例は、それらが職場定着のカギとなることや職場定着のための社内の体制づくりの様子を描いています。職場定着のポイントは、コミック部分のページの中で各エピソードの最後にまとめていますので参考にしてください。「1.職場でのコミュニケーション」の(1)では、小泉さん(きこえる人)が急ぎの要件であるにもかかわらず、木村さん(きこえにくい人)に口頭のみの指示を行い、伝わったかどうかの確認ができていませんでした。また、木村さんも小泉さんの指示が十分理解できないままであったものの、確認を後回しにしてしまい、期日までの資料作成ができませんでした。(2)では、書類の書式変更や業務外の連絡について、きこえる人たちと木村さんとの間で、十分に情報共有がなされていませんでした。きこえる人の間では、明示的に話題として取り上げなくても了知されていることが、きこえない・きこえにくい人には伝わりにくいことがあります。(3)では、網島さん(きこえる人)が木村さんとどのようにコミュニケーションを取ったらよいか分からず、配慮をしているつもりが逆に驚かせたり、印象を悪くしてしまっています。木村さんのほうは自身の発語がスムーズなため、実際よりもよく聞こえると思われがちであると分かっていても、実際の聞こえの状態や希望するコミュニケーション方法を周囲に十分伝えられず、配慮してもらえないことに悩んでいました。このように、きこえない・きこえにくい人ときこえる人との間でコミュニケーションの行き違いが生じると、きこえない・きこえにくい人が疎外感を抱き離職に至るケースもあります。これらの事例に対する職場の対策としては、①受入れ時に「聞こえ」の状態や希望するコミュニケーション方法を確認し、本人の了解のもと職場の社員の理解を図る、また、時間の経過とともに、本人に対する配慮について、社員の意識が薄れることのないよう、7822

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