スキルアップとキャリアアップ障害者雇用が進む中で、雇用の質の確保も重要になっています。令和4年の法改正では、事業主が障害者の職業能力の開発・向上のための措置を講ずる責務が明記されました。障害者が意欲とやりがいをもって働き続けるためには、障害者自身のスキルアップ・キャリアアップへの取組とともに、それについての事業所の環境整備が必要です。スキルアップ・キャリアアップを図るため、社員への研修を行う場合には、きこえない・きこえにくい社員にもきこえる社員と同様の研修の機会を提供することが必要です。また、機会はあっても、その研修に情報保障がなければ、きこえない・きこえにくい社員はその希望と能力にもかかわらず、きこえる社員と同様に学ぶことができず、その結果、きこえる社員に比べてスキルアップが難しくなってしまいます。社外の講習なども第5章定着支援、スキルアップとキャリアアップ同様であり、講習主催者に対し手話通訳などの情報保障の有無を確認することが重要です。きこえる社員と同等の機会及び情報量で研修を受けられることによって初めて、全ての社員が同じスタートラインに立てるといえます。キャリアアップをして管理職になった場合、部下への指示や会議での交渉など、周囲とコミュニケーションを図る機会が多くなります。コミュニケーション上の配慮を行うことによって、きこえない・きこえにくい社員も管理職の業務を行うことが可能です。キャリアを活かし、かつモチベーションを維持・向上するために、本人と話し合いの上、チームの中でリーダー的な役割を担ってもらう、専門技術を評価した、管理職相当のポジションに登用するといった取組を行う企業もあります。きこえない・きこえにくい社員が研修や会議に出席する場合の情報保障のポイントは、101ページに掲載しています。ただし、コミュニケーション方法の希望は一人ひとり異なるため、事前に本人に確認しておく必要があります。次ページからのコミック部分では、研修や会議で情報保障に取り組む様子を紹介するほか、モチベーション向上のための工夫についてまとめています。事例 当社では障害の有無に関係なく、キャリアアップのために資格取得や研修受講ができるよう、社内体制を整備しています。研修プログラムはビジネススキル、プレゼンテーション、課題解決、表計算ソフトの使い方など、多岐にわたっています。聴覚障害者への合理的配慮としては、スライドに字幕をつける、手話通訳者・要約筆記者を配置する、音声認識ソフトの入ったタブレットを貸与するなどを行っています。社内イントラネットのホームページに就労支援機器の借り方・使い方なども掲載しています。また、障害者雇用に関しては、管理職向けの研修やe-ラーニングを実施するほか、全国の各事業所の人事担当者を参集し、オンラインでグループワークを行うなどして、障害の理解・配慮の促進を図っています。 (H社)社内研修体制の整備9533
元のページ ../index.html#97