第5章 関係機関・施設等の概要 第1節 関係施設とサービスの概要 第2節 障害者総合支援法による障害者福祉サービスの概要 第1節 関係施設とサービスの概要 1 ハローワーク(公共職業安定所) (1) 障害者の職業紹介 ハローワークは、職業紹介、職業指導等の業務を行うため国が設置する機関です。ハローワークでの障害者の職業紹介業務については、障害者がハローワークに求職を申し込むことから始まり、求職票に障害情報、技能、知識、適性、身体能力、希望職種等が記載され、この求職票に基づいてケースワーク方式による相談等が行われています。この求職票は、就職後もハローワークに保存されて、就職後の指導まで一貫して利用できるようになっています。 また、就職後のアフターケアとして、ハローワークの職員等が必要な助言・指導を行っています。 (2) 障害者向けチーム支援による個別支援 就職を希望する障害者一人ひとりに対して、ハローワークが中心となって、地域障害者職業センター、障害者就業・生活支援センター、就労支援機関、職業能力開発校、特別支援学校、高等学校、大学、医療機関など地域の支援関係者からなる就労支援のためのチームを設置し、チーム構成員が障害者支援におけるそれぞれの強みを発揮して、支援対象者の就職に向けた準備から職場定着までの一連の支援を行います。 (3) 障害者支援の専門スタッフの配置 @ 手話協力員 聴覚障害、音声又は言語機能障害者といった耳が聞こえない、聞こえにくい求職者に対する職業相談、職業紹介及び職場適応指導については、手話協力員がハローワークの職員等に随伴し、業務に協力します。 A 就職支援ナビゲーター(障害者支援分) 障害の理解、障害者の雇用管理上必要な配慮、障害者の職業リハビリテーションに関する理解等の専門的知識を有する人材を「就職支援ナビゲーター(障害者支援分)」として各労働局の主要なハローワークに配置しています。就職支援ナビゲーター(障害者支援分)は、障害の別なく求職障害者等の個々のニーズに即して次のような業務に当たります。 ・職業相談における求職者の障害状況の把握と、職業紹介を行うために必要な援助の明確化 ・障害者求人開拓についての雇用指導官、求人部門との間の調整 ・求職者の紹介への同行、紹介時や採用後の事業主へのアドバイス等 ・地域障害者職業センター等、必要な職業リハビリテーションサービスの実施機関との間の調整 ・就職後、一定期間が経過した障害者の職場定着状況の確認と、問題となる事態を発見した時の助言 B 精神障害者雇用トータルサポーター及び発達障害者雇用トータルサポーター 精神保健福祉士、臨床心理士等の資格を有し、精神障害や発達障害の専門的知識や支援経験を有する人材を「精神障害者雇用トータルサポーター」及び「発達障害者雇用トータルサポーター」としてハローワークに配置しており、求職者に対して就職準備段階から職場定着までの一貫した支援を行います。 (4) 企業向けチーム支援の実施 障害者雇用ゼロ企業等を対象に、労働局又はハローワークが中心となって就労支援機関等と連携して、企業ごとの状況及びニーズ等を把握するとともに、これに合わせて雇用に向けた準備段階から雇用後の職場定着まで一貫した支援を行います。 2 独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(資料編第7節の(1)参照) (1) 設立経緯及び目的 平成15年10月1日、日本障害者雇用促進協会の業務に国及び(財)高年齢者雇用開発協会の業務の一部を加えて実施する、「独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構」が設立されました。 日本障害者雇用促進協会は、障害者の雇用の促進等を図るためには、事業主等によって構成される障害者雇用促進団体が、行政に協力しつつ自主的活動を行うことが極めて効果的であるとの考えから、昭和52年に、障害者の雇用の促進に関する事業を行う団体として、労働大臣の認可を受けて設立されました。同協会は、その後、納付金関係業務、障害者職業センター設置運営業務など業務の拡充が図られ、障害者の雇用の促進及びその職業の安定に重要な役割を果たしてきました。 また、(財)高年齢者雇用開発協会は、高齢者の雇用の安定等に関する業務を行う財団法人として昭和53年に設立され、その後昭和61年には労働大臣により中央高年齢者等雇用安定センターに指定されるなど、定年の引上げ・65歳までの継続雇用制度の導入に関する相談援助業務をはじめ、少子高齢化が急速に進展する中での高齢者の雇用という課題に対応した重要な業務を実施してきました。 「独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構」は、高齢者と障害者は、その雇用促進のために事業主の取組みを促す強力な政策支援が不可欠であるという共通性・類似性を有することにかんがみ、これら二つの法人が担ってきた高齢者及び障害者の雇用支援を一体的に実施する組織として、独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構法(平成14年法律第165号。同年12月13日公布)に基づき設立されたものです。 なお、独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構は、独立行政法人雇用・能力開発機構を廃止する法律(平成23年法律第26号。同年4月27日公布)が施行される平成23年10月1日に、独立行政法人雇用・能力開発機構から職業能力開発業務等の移管を受け、「独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構」に法人名を変更しました。 (2) 障害者雇用支援関係業務の内容 @ 障害者職業センターの設置運営業務 障害者職業センターとして、障害者職業総合センター、広域障害者職業センター(中央広域障害者職業センター及び吉備高原広域障害者職業センター)及び地域障害者職業センター(47都道府県)の3種類のセンターを設置し、障害者職業総合センターを中核として、障害者に対する職業評価、職業指導、事業主に対する障害者雇用の支援、関係機関に対する助言・援助等を実施しています。 A 障害者職業能力開発校の運営業務 障害者職業能力開発校(中央障害者職業能力開発校及び吉備高原障害者職業能力開発校)を中央広域障害者職業センター、吉備高原広域障害者職業センターに併設し、それぞれ国立職業リハビリテーションセンター、国立吉備高原職業リハビリテーションセンターとして、精神障害者や発達障害者を含む職業訓練上特別な支援を要する障害者に対する先導的な職業訓練を重点的に実施するとともに、その成果に基づき開発した職業訓練内容、指導技法等を他の障害者職業能力開発校及び一般の職業能力開発校等に提供しています。 B 障害者雇用納付金関係業務 ア 障害者雇用納付金制度に基づく障害者雇用納付金の徴収並びに障害者雇用調整金、報奨金、特例給付金及び各種助成金の支給をしています。 イ 障害者を5人以上雇用する事業所に選任が義務づけられている障害者の職業生活全般にわたる相談・指導を行う障害者職業生活相談員の資格認定講習を実施しています。 ウ 障害者が日ごろ培った技能を互いに競い合うことにより、その職業能力の向上を図るとともに、企業や社会一般の人々が障害者に対する理解と認識を深め、その雇用の促進と地位の向上を図るため、障害者技能競技大会(アビリンピック)を開催しています。 エ 定期刊行誌及びマスメディアを通じた障害者雇用に関する啓発広報活動並びに障害者の就労支援機器の無料貸出し等を行っています。 (3) 障害者職業センター 障害者の就職の促進と職場定着を図るため、障害者職業総合センターによる指導・支援のもと、広域障害者職業センター及び地域障害者職業センターにおいて、障害者・事業主等の多様なニーズに対応した職業リハビリテーションサービスを提供しています。 @ 障害者職業総合センター 職業リハビリテーションサービスの基盤整備と質的向上を図るため、職業リハビリテーションサービスに関する研究、技法の開発・普及及び専門職員の養成・研修、広域障害者職業センター、地域障害者職業センター等への指導・支援等を行っています。 研究部門では、研究成果をとおして障害者の職業リハビリテーションに関する施策の充実や、地域障害者職業センターをはじめ障害者就業・生活支援センター等の就労支援機関における支援技術の向上を図るため、障害者を取り巻く状況や障害者施策の動向等を踏まえて、発達障害、精神障害、高次脳機能障害及び難病患者等の職業リハビリテーションに関する先駆的な研究、職業リハビリテーション業務を行う地域障害者職業センター等の現場の課題解決に資するための研究、地域の就労支援機関向けの有効な支援ツール等の開発のための研究、国の政策立案に資する研究を行っています。 職業センターでは、障害の重度化・多様化によりこれまでの支援技法では効果が現れにくい発達障害、精神障害、高次脳機能障害等の障害者に対する支援技法の開発・改良を行っています。これらの人に対する実際の支援を通じて開発した効果的な支援技法は「実践報告書」、「支援マニュアル」等にとりまとめて、地域障害者職業センターをはじめ就労支援機関等に提供するとともに支援技法を普及するための講習等を実施しています。 そのほか障害者職業総合センターでは、職業リハビリテーション業務に関する企画・指導を行うとともに、障害者職業カウンセラー等の養成・研修や、医療・福祉等の分野における障害者の就業支援を担当する人等を対象とした職業リハビリテーションに関する知識や就業支援に必要な技術の習得、資質の向上を図る研修を実施しています。 A 広域障害者職業センター/障害者職業能力開発校 障害者職業カウンセラー、職業訓練指導員が配置され、医療リハビリテーションとの連携を図りながら、職業評価、職業指導、職業訓練等の職業リハビリテーションサービスを提供しています。国立職業リハビリテーションセンター及び国立吉備高原職業リハビリテーションセンターでは、全国の広範な地域から、精神障害者、発達障害者、高次脳機能障害者等を含む職業訓練上特別な支援を要する障害者を積極的に受入れ、先導的な職業訓練を実施しています。また、その成果をもとに、職業訓練上特別な支援を要する障害者に対する職業訓練の内容、指導技法等をマニュアル等に取りまとめ、障害者職業訓練推進交流プラザ等を通じて、他の障害者職業能力開発校等へ提供するとともに、職業訓練上特別な支援を要する障害者等向け訓練コースの設置・運営の支援に取り組むことにより、障害者職業訓練全般の水準向上に寄与しています。 ア 国立職業リハビリテーションセンター(埼玉県所沢市) 職業評価、職業指導、職業訓練、職業適応指導を実施しています。 イ  国立吉備高原職業リハビリテーションセンター(岡山県加賀郡吉備中央町) 職業評価、職業指導、職業訓練、職業適応指導、生活指導を実施しています。 B 地域障害者職業センター 障害者職業カウンセラーが配置され、ハローワーク、障害者就業・生活支援センター、病院、特別支援学校等の関係機関との密接な連携の下、各都道府県における中核的な職業リハビリテーション機関として、地域に密着した職業リハビリテーションサービスを提供しています。 ・障害者に対するサービス 職業評価・職業指導・職業リハビリテーション計画の策定、職業準備支援、知的障害者判定・重度知的障害者判定を実施しています。 ・事業主に対するサービス 障害者の新規雇い入れ、在職者の職場適応やキャリアアップ、休職者の職場復帰等、障害者雇用に係る様々な支援を実施しています。障害者雇用の相談や情報提供を行うほか、障害者の雇用に関する事業主のニーズや雇用管理上の課題を分析し、必要に応じ、事業主支援計画を作成して、専門的な支援を体系的に行います。 ・障害者及び事業主に対するサービス 職場適応援助者(ジョブコーチ)による支援、職場復帰、雇用促進及び雇用継続のそれぞれの雇用の段階において専門的な支援を行う精神障害者総合雇用支援を実施しています。 ・ 地域の関係機関に対する職業リハビリテーションに関する助言・援助等 障害者就業・生活支援センター、就労移行支援事業所等関係機関に対して、支援計画の策定や支援の実施方法等の職業リハビリテーションに関する専門的・技術的な助言・援助を行っています。 また、これらの関係機関での就業支援を担当する人を対象に「就業支援基礎研修」及び「就業支援実践研修」を実施し、効果的な職業リハビリテーションを実施するために必要な知識・技術等の向上を図っています。 (4) 都道府県支部 高齢・障害者業務課及び高齢・障害者窓口サービス課 高齢・障害者業務課(東京、大阪にあっては高齢・障害者業務課及び高齢・障害者窓口サービス課)においては、高年齢者雇用に関する相談・援助、高年齢者等の雇用に関する啓発活動、各種給付金の支給申請の受付等の高年齢者雇用支援業務及び次のような障害者雇用支援業務を実施しています。 ・ 障害者雇用納付金等の申告・申請受付 障害者雇用納付金、障害者雇用調整金、報奨金及び特例給付金等について、事業主が提出する申告書・申請書の受付等を行っています。 ・ 各種助成金の申請受付 障害者を新たに雇い入れたり障害者の雇用を継続するために職場環境を改善する、または雇用している障害者の職場への適応を図る場合の助成金について、事業主が提出する申請書の受付等を行っています。 ・ 障害者雇用に関する講習・啓発活動等 障害のある労働者への職業生活に関する相談・指導を行う従業員のための障害者職業生活相談員資格認定講習を開催するとともに、事業主や事業主団体に対し、障害者の雇入れに当たっての工夫・改善策や障害者が能力を発揮して活躍するための手法を取りまとめた実践的なマニュアル・好事例集の提供等を行っています。また、より専門的な支援を必要とする場合には、適切な支援機関を紹介します。さらに、事業主のみならず広く障害者雇用の理解と認識を深めることができるよう、障害者雇用優良事業所の表彰を行っています。 ・ 地方アビリンピックの開催 障害者の職業能力に対する社会の理解と認識を高め、その雇用の促進と地位の向上を図るとともに、障害者が社会に参加する自信と誇りを持つことができる機会を提供することを目的として地方アビリンピック(障害者技能競技大会)を開催しています。 (5) 中央障害者雇用情報センター 中央障害者雇用情報センター(東京都墨田区)においては、企業の規模や業種の特性に応じた雇用管理に関する相談・援助、就労支援機器の貸出しと活用に関する相談等を行っています。また、障害者の雇用管理に係る専門的な支援を必要とする事業所に「障害者雇用管理サポーター」を推薦・派遣しています。 3 障害者就業・生活支援センター(資料編第7節の(2)参照) 障害者就業・生活支援センターは、障害者の職業生活における自立を図るため、雇用、保健、福祉、教育等の関係機関との連携の下、障害者の身近な地域において就業面及び生活面における一体的な支援を行っています。本事業は、都道府県知事が指定する社会福祉法人や特定非営利活動法人(NPO)等が運営しており、主な事業内容は、次のとおりとなっています。 (1) 障害者から就業及びこれに伴う日常生活上の問題に関する相談に応じ、必要な指導及び助言その他の援助を行うこと (2) 地域障害者職業センター又は事業主等により行われる職業準備訓練及び職場実習のあっせんを行うこと (3) 就職後の障害者に対する必要な助言、事業主に対して障害者の就職後の雇用管理や職場定着に資する助言等を行うこと (4) ハローワーク、地域障害者職業センター、社会福祉施設、保健医療施設、特別支援学校、当事者団体等の関係機関との連携・連絡調整を行うこと 4 障害者職業能力開発校(資料編第7節の(3)参照) 障害者職業能力開発校は一般の公共職業能力開発施設において職業訓練を受けることが困難な障害者に対して、その障害特性に配慮した職業訓練を実施する施設で、就職又は雇用継続に必要な技能・知識を習得し、障害者の就職の促進又は雇用継続を図ることを目的としています。 (1) 国が設置し、都道府県が運営している障害者職業能力開発校 11校 (2) 国が設置し、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構が運営している障害者職業能力開発校 2校 (3) 府県が設置・運営している障害者職業能力開発校 6校 5 発達障害者支援センター(資料編第7節の(4)参照) 発達障害者支援センターは、都道府県等が設置する機関で、発達障害者やその家族等に対し、専門的に相談に応ずるとともに、発達支援や就労支援を行っています。また、発達障害に関して、医療、保健、福祉、教育、労働等に関する業務を行う関係機関や民間団体等に対する情報の提供及び研修、それらの関係機関や民間団体等との連絡調整などを行い、地域における発達障害者支援の中核となり、体制整備をすることとなっています。 6 難病相談支援センター(資料編第7節の(5)参照) 難病相談支援センターは難病の患者及び家族等の相談に応じ、必要な情報提供及び助言等を行い、患者の療養生活における質の維持向上を支援することを目的とする施設です。事業内容としては、@電話や面談等の各種相談支援、A地域交流会等の活動に対する支援、B就労支援、C講演、研究会等の開催などがあり、難病患者等の様々なニーズに対応するため、各種関係機関と連携を図りながら支援を行っています。連携先の一例には、就労支援等機関(ハローワーク、地域障害者職業センター、障害者就業・生活支援センター等)があり、各ハローワークに配置される難病患者就職サポーターは、相互の連携により、きめ細やかな就労支援につなげています。 7 労災病院 独立行政法人労働者健康安全機構が設置運営している病院で、被災労働者に対して適切かつ迅速な診断・治療を行い、被災労働者が1日も早く労働能力を回復し、速やかな社会復帰を図ることを主たる目的としています。また、職業性疾病の予防、早期発見、治療から健康の保持・増進に至るまで勤労者の職業生活を医療の面からサポートしています。 8 福祉事務所等 福祉事務所は、都道府県、指定都市、特別区及び市等が設置する機関で、生活保護者、老人、障害者等特別の配慮を必要とする者の援護、育成又は更生の業務を行っています。障害者に関しては、この福祉事務所に社会福祉主事、身体障害者福祉司、知的障害者福祉司という専門職員が配置され、障害者への専門的相談指導を行ったり、福祉事務所員への技術的指導を行っています。そのほか市町村が地域住民の有識者を身体障害者相談員、知的障害者相談員として委嘱して地域住民の相談に応じています。 9 身体障害者更生相談所(資料編第7節の(6)参照) 身体障害者更生相談所は、都道府県等が設置する機関で、18歳以上の身体障害者の医学的、心理学的及び職能的判定を行うとともに、必要に応じ市町村が障害者総合支援法による介護給付費、自立支援医療費、補装具費等の支給決定を行う際に技術的事項についての協力を行うこととなっています。なお、18歳未満の身体障害児については、保健所又は児童相談所がこれらの業務を行っています。また、身体障害者更生相談所は、必要に応じ巡回してその業務を行うことができることとなっています。 10 知的障害者更生相談所(資料編第7節の(7)参照) 知的障害者更生相談所は、都道府県等が設置する機関で、知的障害者に対する問題について、家庭その他からの相談に応ずるとともに、18歳以上の知的障害者の医学的、心理学的及び職能的判定とこれに付随して必要な指導を行っています。また、市町村が障害者総合支援法による介護給付費等の支給決定を行う際に技術的事項についての協力を行うこととなっています。なお、18歳未満の知的障害児については、児童相談所がこれらの業務を行っています。また、知的障害者更生相談所は、必要に応じ巡回してその業務を行うことができることとなっています。 11 精神保健福祉センター(資料編第7節の(8)参照) 精神保健福祉センターは、都道府県等が設置する機関で、精神保健福祉に関する知識の普及を図り、調査・研究を行い、相談指導のうち複雑困難なものを行っているほか、精神医療審査会の事務局の役割、精神障害者保健福祉手帳の交付の際の判定、通院医療費の公費負担の判定を行っています。なお精神保健福祉センターは、精神保健福祉に関する総合的技術センターとして位置づけられ、地域精神保健活動の中心的機関である保健所、市町村及び関係機関に対して技術指導や援助なども実施しています。また、市町村が障害者総合支援法による介護給付費等の支給決定を行う際に技術的事項についての協力を行うこととなっています。 12 特別支援学校・特別支援学級等 障害のある子供については、その能力や可能性を最大限に伸ばし、自立し社会参加するために必要な力を培うため、一人ひとりの障害の状態などに応じ、特別な配慮の下で適切な指導を行うとともに、必要な支援を行う必要があります。現在、特別支援学校や小・中学校の特別支援学級、通級による指導@においては、特別の教育課程や少人数の学級編制の下、特別な配慮により作成された教材、障害特性に配慮した設備等を活用し、専門的な知識や経験を有する教職員により指導が行われています。 義務教育段階の全児童生徒数が減少傾向にある一方で、特別支援教育の対象となる児童生徒数は増加傾向にあります。令和4年5月1日現在、義務教育段階で特別支援学校に在籍している児童生徒と、特別支援学級及び通級による指導を受けている児童生徒の総数は約59万9千人Aで、これは同じ年齢段階にある児童生徒全体の約6.3%に当たります。また、通常の学級においても、発達障害のある児童生徒が在籍しており、学校生活における早期からの支援に対する要望が高まっています。 障害のある生徒の就労については、令和4年5月1日現在、特別支援学校高等部卒業者の進路を見ると、福祉施設等入所者の割合が約61.1%に達する一方で、就職者の割合は約20.5%となっています。就労の促進に当たっては、教育、福祉、医療、労働などの関係機関が一体となり、キャリア教育・就労支援をより一層充実させることが重要です。 @ 通級による指導:小・中学校及び高等学校において,学習障害,注意欠陥多動性障害,自閉症等のある児童生徒を対象として,通常の学級に在籍し,主として各教科などの指導を通常の学級で行いながら,障害に基づく学習上又は生活上の困難の改善・克服に必要な特別の指導を特別の場で行う教育形態である。 A 通級による指導を受けている児童生徒数は、令和2年度通年の数値。 13 その他 障害者の問題としては、その他医療、結婚生活の問題等も避けては通れないものであり、各地方自治体では、福祉事務所以外に特別な機関を設けて相談窓口を開設している場合もあります。 また、令和3年9月に施行された「医療的ケア児及びその家族に対する支援に関する法律」では、都道府県は、「医療的ケア児支援センター」の設置等を行い、医療的ケア児及びその家族の相談に応じ、情報提供や助言その他の支援を行うことができることとされています。 第2節 障害者総合支援法による障害者福祉サービスの概要 障害者自立支援法(平成17年法律第123号)により、これまで身体障害者更生援護施設(身体障害者授産施設、身体障害者福祉工場等)、知的障害者援護施設(知的障害者授産施設、知的障害者福祉工場等)、精神障害者社会復帰施設(精神障害者授産施設、精神障害者福祉工場等)など、障害種別ごとに複雑に分かれていた施設・事業体系が、障害の種別(身体障害、知的障害、精神障害)にかかわらず、障害がある人々が必要とするサービスを利用できる事業体系に再編されるとともに、「就労支援のための事業」や「地域生活支援の事業」等が創設されました。 これらのうち、「就労支援のための事業」としては、一般企業等への就労に向けて一定期間必要な訓練を行う「就労移行支援」、一般企業等での就労が困難な人に働く場を提供するとともに必要な訓練を行う「就労継続支援(A型、B型)」が設けられ、雇用施策と連携して事業を実施することとされています(第6章参照)。また、同法は、障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律(障害者総合支援法)に改正され、平成25年4月1日より、難病患者等も障害福祉サービス等による支援の対象となりました。 平成28年の法改正により、一般就労に伴う環境の変化によって生じる、生活面・就業面での課題に対応できるよう、事業所・医療機関・家族等と連絡調整をして必要な支援を行う「就労定着支援」が創設されました。(平成30年4月1日施行) 図1 障害者総合支援法による障害者福祉サービスの新体系 サービス@は、個々の障害のある人々の必要とされる支援の度合や勘案すべき事項(社会活動や介護者、居住等の状況)をふまえ、個別に支給決定が行われる「障害福祉サービス」と、市町村の創意工夫により、利用者の方々の状況に応じて柔軟に実施できる「地域生活支援事業」に大別されます。 「障害福祉サービス」は、介護の支援を受ける場合には「介護給付」、訓練等の支援を受ける場合は「訓練等給付」に位置付けられ、それぞれ利用の際のプロセスが異なります。 @ サービスには期限のあるものと、期限のないものがありますが、有期限であっても、必要に応じて支給決定の更新(延長)は一定程度可能となります。 ■福祉サービスに係る自立支援給付等の体系 (注)次から、身体障害者は「身体」、知的障害者は「知的」、精神障害者は「精神」と表す。 <これまでのサービス> @居宅サービス ホームヘルプ(身体・知的・障害児・精神)、デイサービス(身体・知的・障害児・精神)、ショートステイ(身体・知的・障害児・精神)、グループホーム(知的・精神) A施設サービス 重症心身障害児施設(障害児)、療護施設(身体)、更生施設(身体・知的)、授産施設(身体・知的・精神)、福祉工場(身体・知的・精神)、通勤寮(知的)、福祉ホーム(身体・知的・精神)、生活訓練施設(精神) <新サービス> @介護給付 ・居宅介護(ホームヘルプ) 自宅で、入浴、排せつ、食事の介護等を行います ・重度訪問介護 重度肢体不自由者又は重度の知的障害若しくは精神障害により、行動上著しい困難を有する人で常に介護を必要とする人に、自宅で入浴、排せつ、食事の介護、外出時における移動支援などを総合的に行います ・同行援護 視覚障害により、移動に著しい困難を有する人に、移動に必要な情報の提供(代筆代読を含む)、移動の援護等の外出支援を行います ・行動援護 自己判断能力が制限されている人が行動するときに、危険を回避するために必要な支援や外出支援を行います ・重度障害者等包括支援 介護の必要性がとても高い人に、居宅介護等複数のサービスを包括的に行います ・短期入所(ショートステイ) 自宅で介護する人が病気の場合などに、短期間、夜間も含め施設で、入浴、排せつ、食事の介護等を行います ・療養介護 医療と常時介護を必要とする人に、医療機関で機能訓練、療養上の管理、看護、介護及び日常生活の世話を行います ・生活介護 常に介護を必要とする人に、昼間、入浴、排せつ、食事の介護等を行うとともに、創作的活動又は生産活動の機会を提供します ・障害者支援施設での夜間ケア等(施設入所支援) 施設に入所する人に、夜間や休日、入浴、排せつ、食事の介護等を行います A訓練等給付 ・自立訓練(機能訓練・生活訓練) 自立した日常生活又は社会生活ができるよう、一定期間、身体機能又は生活能力の向上のために必要な訓練を行います ・就労移行支援 一般企業等への就労を希望する人に、一定期間、就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓練を行います ・就労継続支援(A型=雇用型、B型=非雇用型) 一般企業等での就労が困難な人に、働く場を提供するとともに、知識及び能力の向上のために必要な訓練を行います ・就労定着支援 一般就労に移行した人に、就労に伴う生活面の課題に対応するための支援を行います ・自立生活援助 一人暮らしに必要な理解力・生活力等を補うため、定期的な居宅訪問や臨時の対応により必要な支援を行います ・共同生活援助(グループホーム) 夜間や休日、共同生活を行う住居で、相談、入浴、排せつ、食事の介護、その他の日常生活上の援助を行います B地域生活支援事業 ・移動支援 円滑に外出できるよう、移動を支援します ・地域活動支援センター 創作的活動又は生産活動の機会の提供、社会との交流等を行う施設です ・福祉ホーム 住居を必要としている人に、低額な料金で、居室等を提供するとともに、日常生活に必要な支援を行います  ■日中活動と住まいの場の組み合わせ 入所施設のサービスを、昼のサービス(日中活動事業)と夜のサービス(居住支援事業)に分けることにより、サービスの組み合わせを選択できます。 事業を利用する際には、利用者一人ひとりの個別支援計画が作成され、利用目的にかなったサービスが提供されます。 例えば、常時介護が必要な方は、日中活動事業の生活介護事業と、居住支援事業の施設入所支援を組み合わせて利用することができます。地域生活に移行した場合でも、日中は生活介護事業を利用し続けることが可能です。 〇見直し後 ・日中活動の場(以下から1ないし複数の事業を選択) 療養介護(医療機関への入院とあわせて実施)、生活介護、自立訓練(機能訓練・生活訓練)、就労移行支援、就労継続支援(A型=雇用型、B型=非雇用型)、地域活動支援センター(地域生活支援事業) プラス ・住まいの場 障害者支援施設の施設入所支援又は居住支援(グループホーム、福祉ホームの機能) 図2 障害者総合支援法による総合的な自立支援システムの全体像 1 市町村による障害者・児への自立支援給付 @訓練等給付:自立訓練、就労移行支援、就労継続支援、就労定着支援、自立生活援助、共同生活援助(グループホーム) A自立支援医療:更生医療、育成医療、精神通院医療(実施主体は都道府県等) B補装具:義肢、装具、車椅子等 C介護給付:居宅介護(ホームヘルプ)、重度訪問介護、同行援護、行動援護、重度障害者等包括支援、短期入所(ショートステイ)、療養介護、生活介護、施設入所支援 D相談支援:基本相談支援、地域相談支援(地域移行支援・地域定着支援)、計画相談支援(サービス利用相談、継続サービス利用支援) 2 市町村による地域生活支援事業 ・相談支援、移動支援、意思疎通支援、地域活動支援センター、日常生活用具の給付又は貸与、福祉ホーム等 ・都道府県が専門性の高い相談支援、広域的な対応が必要な事業、人材育成等により支援している。