就業支援ハンドブック
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②日常生活管理、③対人技能、④基本的労働習慣、⑤職業適性の5項目(図1)について確認する。各項目の評価に加え、本人と支援者の評価の差を確認し、すり合わせていくことを重視している。職員は2名で実施する。2名で実施することにより、評価の偏りを防ぐと共にアセスメント結果を基にした個別支援計画策定時に、今後の支援の方向性について協議できる環境を担保する。 Aさんに対しては、アセスメント初日は、来所後1時間30分程度で「チェックリスト」と「MSFAS」の記入と聞き取りを実施した。聞き取り終了後、60分作業1種目、昼休みを挟んで、午後も60分作業2種目を実施した。2日目、3日目は、体調や疲労度を確認し、午前に60分作業2種目、午後に60分作業2種目と振り返りを行い、欠勤、遅刻や早退についても確認した。 3日間のアセスメントを通じて、①健康管理は概ねできており、「作業スピードや指示の理解が他の人よりゆっくりだと思う」と自身の障害を簡単に説明できる状況であった。②日常生活管理も概ねできていた。しかし、髭のそり残しや汗の臭いがあり、身だしなみについて助言や支援が必要であることがわかった。③対人技能では、印象の良い挨拶や場に応じた言葉遣いができ、感情も安定していた。しかし、人から頼まれると断れず相談もできない等、困ったときの相談や意思表示が苦手で相手に合わせてしまう傾向にあり、意思の伝え方について訓練、助言や支援が必要であると判断された。④基本的労働習慣では、就労意欲は高く、体力・集中力・持続力、ルールの遵守はこれまでの就労経験により概ね身についていた。しかし、返事・報告・連絡・相談については、作業を十分に理解できていなくても質問をしない、わかりましたと答えてしまうといった様子が確認された。本人は「できる」、支援者は「あまりできない」と本人評価と支援者評価に大きな差があった。この評価の差は在職時にも生じていた可能性が高く、離職原因に繋がっていると考えられた。そのため、この評価の差を縮めるための訓練や助言、支援が必要であると考えられた。⑤職業適性では、指示理解・確認の項目で、本人は、一度の作業指示や複数指示で理解ができないことから「あまりできていない」と評価、支援者は、理解できない際の確認ができないことから「あまりできていない」と評価していた。同一項目で同一評価であっても評価内容が違っていた。環境変化への対処については、本人評価が支援者評価より高かった。作業手順や支援者の変更があった際に、変化に対応することに時間を要していたが、本人は「だいたいできている」との評価であった。本人の自覚は薄いが、環境変化への対処には困難があったと推測された。 第1節 障害者就業・生活支援センターにおける支援の実際 97

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