就業支援ハンドブック
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対人関係は苦手意識がある。自分の気持ちや言いたいことが思うように伝えられず、相手から誤解されることがある。思いついた単語を脈絡なくつぶやく、なかなか相手に声をかけられず自問自答しているときもある。会話の時相手の顔を見ることができないことについては、本人も自覚しており、顔を見て話せるよう意識している。利用当初に「他の女性利用者からいろいろと声をかけてもらったことで、早く慣れることができた。彼女のようになりたい。」と話される。SST(社会生活技能訓練)で様々な対人場面の練習を行う。また、相手の顔を見る、適切な声の大きさなど、非言語的コミュニケーションスキルを意識できるよう働きかける。身の回りのことはほぼ自立しているが、家事は母親まかせである。ファッションや身だしなみに関心がなく、母親が購入し用意する衣服を着ている。髪に寝癖がついていても気にしない。身だしなみについては、「女性のマナー講座」のプログラムに参加してもらう。その他ビジネスマナー講座や、日常の声掛けで改善できるよう働きかける。以前精神症状から買い物をしすぎたことがあり、それ以来母親から定期的に小遣いをもらっている。お菓子やゲーム等を購入している。挨拶などはきちんとされるが、社会経験が少ないため、状況に応じた適切なマナーや態度がわからない。ビジネスマナー講座、食事会(テーブルマナー)、一泊旅行、忘年会などのプログラムを通じ、社会経験の場を増やし、状況に応じた行動がとれるよう働きかける。パソコン関連は専門学校で勉強していたこともあり、形式の決まったパソコン入力は得意である。集中力も持続することができる。手先の細かい作業は苦手である。雑な面もあり、よく物を落とす、手順を省略しようとするなど横着な行動も見られる。パソコン入力作業のほかにも、軽作業、印刷作業、発送作業などを行いながら様々な作業に慣れてもらう。また作業効率を上げるためのプログラムで、作業手順や段取り、効率性や注意の焦点づけについて考える機会を作る。どうしたらよいかわからないと考えこんでいることがあるので、「報告」「連絡」「相談」ができるよう働きかけ、SSTでも練習する。以前経理の仕事や、郵便局、スーパーでのアルバイトなどの経験はあるものの、職場での人間関係がうまくいかず離職となっている。「パソコン関連は好きだが、実際に自分がどんな仕事に向いているかわからない。」と話されている。施設内の各プログラムや企業実習に参加してもらいながら、本人に合った勤務条件や環境を一緒に検討する。また、職業準備性の向上と同時に地域障害者職業センターで職業評価を受けることも検討し、多角的な視点で職業適性を見極めていくこととする。母親は本人のことを心配しているが、何が障害なのか把握できていない様子。施設の家族の会には参加されている。父親や兄は仕事にかかりきりで、本人にはほとんど干渉しないようである。コミュニケーション支援内容ADL・生活スキル支援内容金銭管理社会的マナー支援内容作業遂行能力支援内容希望する職種、労働条件等支援内容家族母親には、引き続き家族の会に参加してもらい、施設の活動内容、疾病や障害について理解していただき、施設と連携して本人を支援できるよう、働きかける。支援内容第2節 就労移行支援事業所における支援の実際 111

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