就業支援ハンドブック
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112 第2章 就業支援の実際(事例) ② 企業での実習の開始 利用開始から半年後、施設内でのプログラムにも前向きに参加され、だいぶ慣れてきた様子であった。Aさんと定期面談をもち、振り返りと就職に向けた計画について話し合いを行う中で、「自分から挨拶ができるようになった」「人の顔を見ることは苦手だったが、顔を見て話せるようがんばりたい」「敬語を上手に使いたい」「自分の苦手なストレスを知り上手く対処したい」という気づきと意欲が示されるようになった。そして次なるステップのひとつとして企業での実習を始めることになった。実習内容は病院内のクリーニング業務で、時間は午前9時~12時の週2日、担当者と一緒にタオル類やおしぼり、衣類のクリーニングを行った。本人も「いろいろな業務を経験したい」と前向きに取り組まれる。実習初日から3回程、スタッフが同行支援し、それ以後は自分で担当者の指示を受けながら仕事を行った。指示されたことや報告などは間違いのないように意識されており、本人の努力がうかがえた。 ③ ハローワークのジョブガイダンス事業への参加 実習が始まってから約3か月後、ハローワークにてジョブガイダンス事業が開催されることになり、Aさんも参加することになった。ジョブガイダンスでは、ハローワークの使い方、求人票の見方、履歴書の書き方、就職面接の受け方など1日2時間、週5日かけて各講座が行われた。Aさんは講義中つい居眠りすることもあったが、どれも積極的に参加されており、就職への動機づけがさらに高まったことがうかがえた。 ④ 精神障害者保健福祉手帳の取得と、障害者就業・生活支援センターへの登録 基本的労働習慣など職業準備性も整ってきたこともあり、Aさんは就職に向け更なる取組みを進めることになった。Aさんの居住地は神戸市に隣接する市にあるため、地元の障害者就業・生活支援センターに利用登録し、就職への支援をお願いすることになった。その際、母親にはAさんの持っている「働きづらさ」と「配慮されれば発揮できる力」について説明し、今後の就職は障害をオープンにして企業に理解を求めながらの就職を勧め

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