就業支援ハンドブック
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ケーション能力など>、適応の基礎的技能<自己の理解、情緒的あるいは社会的な対人関係など>、地域社会への適応行動<日常生活技能、家事の能力、健康の管理、消費者としての技能、地域社会の理解など>)、そして、最下段の「疾病・障害の管理」は服薬管理などで疾病を自己管理して健康の維持に配慮した生活をする能力(清潔の自己管理、健康の自己管理、服薬の遵守など)を示す。 能力特性をこうした階層構造としてみると、職場や企業が最も必要とするのは生産性に直結する最上層であることは明らかだろう。そのため、企業は企業内訓練(OJT=on the job training)などを通して、従業員の職業能力開発に力を入れる。ところが、障害のある人の場合には、むしろ第2層以下の「職業生活の遂行」「日常生活の遂行」「疾病・障害の管理」に関わる諸能力が、企業の求める水準として不充分であったり不安定であったりすることが多い。このため、障害者を企業に就職させるために福祉・教育分野の関係者が行う教育・訓練は、職業生活や社会生活の準備性の向上を目指すべきものといえる。学校の進路指導もこうした準備性を高めることに焦点を当てたカリキュラムを実施するべきだろう。 また、これら3層の諸能力が不充分なままに、あるいは不安定なままに就職した知的・精神・発達障害者に対しては、福祉・教育分野の支援者が企業の担う「職務の遂行」の更なる能力開発と協働して、これら3層に関わる諸能力の維持や向上に向けた支援を担うことが望ましい。言い換えると、福祉・教育分野の支援者と企業が連携ネットワークを結び、生活支援と就業支援を並行して継続的に支援することが必要なのである。 3)キャリア発達の視点を踏まえた支援 図2の第2層以下に示す諸能力は、幼少期からの様々な経験や学習の過程を経て段階的に獲得される内容である。特に知的障害を含む発達障害の児童・生徒の場合には、発達過程での様々な経験が制約されがちになり、また、失敗の繰返しにより、自己否定的あるいは貧弱な自己概念を形成したり、非現実的な職業指向や意思決定を行う傾向が見られる。つまり、図の第2層以下の職業生活や社会生活の準備性に関わる諸能力が、発達過程で停滞しがちになる。就業支援に当たっては、キャリア発達の視点から仕 第1節 就業支援とは 141

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