就業支援ハンドブック
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144 第3章 就業支援に必要な考え方4)移行支援の重要性 キャリア発達の視点を踏まえると、職業的な自立に向けた支援やサービスは、「移行」の時期に最も手厚くすることが必要となる。移行は、学校から職場、あるいは職場内での職務や地位の移動などのように、それまでと異なる社会環境に参入することで、未経験の新たな役割を担うことが求められるからである。障害者の場合には、未知の新しい役割に応えるのに必要な知識や技能、あるいは行動や態度などを新たに習得するのに時間を要することから、この時期を上手く乗り越えるための支援やサービスが重要となる。 職業生活を中心とした社会的な自立への流れの中で生じる「移行」は、少なくとも、①仕事に就くための準備期間や実際の就職活動、②就職直後のごく短い時期における職場適応、③就職後の職業生活の持続、の3つの時期に区分される。このそれぞれの移行時期に応じて実施すべき支援のポイントがある。 最初の「①就業への準備段階」では、a)仕事役割を果たすだけの準備が整っているか、限られた期間でどこまでその可能性が高められるか、などの評価基準を明確にし、b)福祉・教育・医療分野の視点ではなくて、仕事役割を果たすのに必要な要件が備わっているかという見方が必要である。次の「②就業場面への参入段階」では、a)多様な働き方や働く条件を整備して、障害特性に配慮した雇用管理や雇用形態の在り方を明らかにし、b)入職後の時間経過とともに労働負荷を微増させながら支援を漸減させ、c)訓練や行動上の問題に対応する支援技術を開発することなどが必要となる。最後の「③就業の継続に向けた段階」では、職場で働くことと地域生活そのものに対する支援を一体的に継続して提供するために、a)地域生活を維持するための支援、b)職務に適応するための支援、c)企業への対応と地域ネットワークの育成などが必要である。5)ネットワークの構築 このように、「移行」の課題は広い範囲に及び、また、人生の過程で様々な移行の課題に直面する。そうした移行の課題を円滑に乗り越えるには、各種の支援機関の支援者ばかりでなく、家族、地域の友人や隣人、職場の

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