就業支援ハンドブック
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2)求められる資質 就業支援は基本的には対人サービスであることから、それに従事するには以下の資質が求められよう。 第1に、信頼関係が形成できることである。サービスの直接対象となる障害者ばかりでなく、企業や関係機関の担当者を始めとした支援に関わるフォーマル/インフォーマルな人たちと信頼関係を築けることが必要である。そのためには、利用者の立場に添うとともに、プライバシーを保護して人権を尊重する配慮が不可欠である。 第2に、面接の技術を習得することである。利用者を一人の生活者として理解し、充分な意思疎通を図りながら協働してニーズを明らかにしていくためには、利用者の感情表現を敏感に受けとめ、価値観を受容しながら、自己決定を促すような専門的な面接ができなければならない。 第3に、的確なアセスメントができることである。利用者と協働して利用者自身のニーズを明確にし、さらにその背景要因も分析することが必要である。そのためには、利用者の将来的な展望についての仮説を立てつつ、その仮説を確認するための情報を集め、関連する機関と連携し、対策を提示することが大切である。 第4に、サービスに関する知識を習得することである。実際に提供できるサービスを知り、それを利用者に適切に結び付けて総合的かつ継続的に提供をすることが必要である。そのためには、地域の公的サービスやインフォーマルな支援の所在、サービス内容、そして利用方法に精通しておくことが大切である。 第5は、チームアプローチを展開することである。就業支援の過程は様々な関係者との協働が必要となる。そのため、福祉・教育・医療分野の専門家と協同して活動するためのチームワークが大切である。 これらに加えて、就業支援を担う専門職としての倫理を尊重することが必要であろう。例えば、公益社団法人日本社会福祉士会の倫理綱領では「価値と原則」として、①人間の尊厳、②社会正義、③貢献、④誠実、⑤専門的力量、が掲げられ、公益社団法人日本精神保健福祉士協会倫理綱領では「倫理原則」として、①クライアントに対する責務、②専門職としての責務、③機関に対する責務、④社会に対する責務、が掲げられており、さらに両 第1節 就業支援とは 147

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