就業支援ハンドブック
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  1980年に「国際障害分類(ICIDH)」を提示した世界保健機関(WHO)は、その後の論議を重ねながら、2001年に「国際生活機能分類(ICF)」を採択した。そこでは、図に示すように、人間の健康な生活全体の機能を包括的に把握して、その否定的な側面を「障害」と見なした。 この概念モデルでは、「健康状態」は「心身機能・構造」「活動」「参加」のそれぞれで異なる視点があり、その違いは、「個人因子」や「環境因子」などの背景因子の影響下にあることを強調している。障害は「機能・構造の変調」「活動の制約」「参加の制限」として現われ、「個人因子」や「環境因子」の条件によって異なるとされる。 特徴的なことは、「能力障害」や「社会的不利」の代わりに「活動」と「参加」の語を用いることで、個人の主体性を強調し、また、個人因子と環境因子などの背景因子が「活動」や「参加」を制限することを明確にしたことである。さらに、①心身機能・構造、②活動と参加、③環境因子、④個人因子の4つの側面を32の大分類から構成される体系的なコード化を提唱した。 こうした視点は、就業支援のアプローチに大きな影響を及ぼしており、①施設中心から地域参加型の支援への転換、②自立生活モデルを踏まえた援助付き雇用への転換、③発達的な人生段階の重視、などに発展してきた。 特に障害を、環境との相互作用によって生じることと強調したことで、就業支援の実際的な技術は、個別の課題解決を目指すよりも、生物・心理・社会的な障害のある個人と、そうした個人を取り巻く種々の環境要件との相互関係の在り方をどのように改善するかに焦点が当てられることになった。 第1節 就業支援とは 149生活機能・障害・健康の国際分類(ICF)の障害概念◇障害構造の理解◇●さらなる理解のために 

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