就業支援ハンドブック
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  リハビリテーションカウンセリングは、わが国では、その領域や内容について幅広く認知されているとは言い難い。心理療法としてのカウンセリングや産業カウンセリングとも異なり、リハビリテーションカウンセリングの独自性は、生物・心理・社会的な障害の影響を最小限に留めて、それが社会的不利に及ぼす影響をできるだけ阻止することによって、社会参加を促すための様々な活動を展開するための支援技術にある。実際の活動は、次に示すように、支援や介入の対象を誰に(あるいは何に)向けるかによって異なる。 第1に、障害者本人を対象とする場合には、障害によって否定的になった自己像を現実の場面に即して肯定的に再統合化したり、達成が困難となった将来目標を現実に即して達成可能な目標として再構築するための「カウンセリング」が必要である。また、障害によって機能低下した職務遂行の技能や能力を回復・復旧させたり、代替の技能を再学習して仕事や職場の求める諸能力と調整するための「コーディネート」も求められている。 第2に、家族、学校、同僚、地域生活、仕事、文化・政治・経済的状況などの様々な集団や環境を対象とする場合では、対象者本人の現有する諸能力でも対応できるように環境要件そのものを再構造化する「コンサルテーション」が必要である。 第3に、支援を提供する専門家やその他の人たちを対象とする場合には、提供される支援の内容が対象者本人のニーズに応え得るように調整する「ケースマネジメント」が必要となろう。就業支援における実践技術では、これらの支援や介入の方法を広範に取り込むことが必要である。 第1節 就業支援とは 151◇リハビリテーションカウンセリング◇

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