就業支援ハンドブック
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152 第3章 就業支援に必要な考え方 民間企業における障害者雇用数は19年連続で過去最高を更新し、2022年6月1日時点における障害者雇用状況の報告では61.3万人(実雇用率算定上の人数)を超えるに至った(図1参照)。このような着実な進展を支えてきたのは、行政指導の強化、障害者雇用取組好事例の蓄積、就業支援機関・支援制度の充実、特例子会社の増加などの取組みを挙げることができる。そしてその取組みを可能とした裏には、「社会的責任」に応えよう、法令を遵守しよう、「ダイバーシティ」の実現に取り組もうとする企業の真摯な努力があったことをまず認識しておきたい。 しかし一方で、企業を取り巻く経済環境は近年一段と厳しさを増している。「障害者雇用」の主体である企業がこの激変を乗り越えて社会的責任を果たし続けていくことは決して容易ではない。現状を踏まえ、今後どのように障害者雇用に取り組んでいくべきかを考察したい。 企業とは利潤を求める集団である。利益をあげてこそ存在意義があるし、利益のあがらない企業は存続することそのものが難しくなる。企業が永く存続するためには、以下の要素が不可欠である。●収益の確保→再投資(人件費含む)→従業員満足度向上●顧客満足度向上→売上増加→収益の確保● 従業員満足度向上→生産効率(モチベーション)のアップ→生産コストの引下げ この要素がどれか一つ欠けただけでも、正の循環に目詰まりを起こし負の循環に陥ってしまう。そうならないためにも、企業は常に優れた人材の確保を心掛けている。企業が優れた人材を求めるのは、社員の働きが会社の業績に直結しているからである。過剰な採用競争の実態を厳しく指摘するむきもあるが、企業が新規採用活動に必死になるのもこれ故である。ちはじめに第1項 企業経営とは第2節 企業の視点の理解

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