就業支援ハンドブック
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156 第3章 就業支援に必要な考え方 ② 労働時間法制の見直し 国際的にみても日本の長時間労働は深刻で社会問題化しているが、労働生産性と長時間労働の常態化には密接な関係がある。労働生産性の低い企業がその低さを労働時間でカバーしようとすると、長時間労働で残業代などの人件費が増大することになり、そうなると、それは労働生産性の低下に直結してしまうという状況に陥る。 今回の法制度の見直しでは、長時間労働をなくし、年次有給休暇を取得しやすくすることなどによって、個々の事情にあった多様なワーク・ライフ・バランスの実現を目指すとともに、働き過ぎを防いで健康を守るようにした上で、専門的な職業の方が自立的で創造的な働き方を選択できるようにすることを目的としている。 ③ 「同一労働同一賃金」の徹底 「同一労働同一賃金」という大原則は今回の働き方改革の目玉の一つである。2020年4月からは同一労働同一賃金を含む法改正が施行(ただし、中小企業は2021年4月からの適用)され、企業は対応を強く求められることになる。例えば、経験やスキルもあり仕事ができる障害者社員の賃金が、同僚の健常者社員に比べ格段に安く、不合理なものである場合などは是正対象となる。 同一企業内における正社員(無期雇用フルタイム労働者)と非正規社員構造的な人口問題、イノベーションの不足による生産性向上の低迷、革新的技術への投資不足が指摘されており、経済再生のためには、投資やイノベーションによる生産性向上とともに、就業機会の拡大や意欲・能力を存分に発揮できる環境を作ることが重要な課題とされたところにある。 この課題の解決のために、労働者の置かれた個々の事情に応じ、多様な働き方を選択できる社会を実現できるように検討されてきたのが「働き方改革」である。主なポイントは、「労働時間法制の見直し」(長時間労働の是正)と「雇用形態に関わらない公正な待遇の確保」(いわゆる同一労働同一賃金に係る法整備)の2点となり、それらにより「多様で柔軟な働き方」を選択できるようにすることを目指している。

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