就業支援ハンドブック
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162 第3章 就業支援に必要な考え方 2)RPA(※2)の普及による仕事の変化 第2項(2)で詳述したとおり、技術革新のスピードアップ、生産年齢人口の減少といった社会変革の中にあって、今後の企業経営を考えたとき、AIやロボットの活用は必然の流れであろう。そのとき、各企業で障害者が従事していることが多い簡易・反復作業は、それらに取って代わられる社においては、障害状況に応じて対応可能な職務内容の検討が課題となっている。 また、近年急速にその存在感を増してきているICT、人材関連などの新興企業が障害者雇用にとりわけ苦戦している。法定雇用率が確実に引き上げられる中、これらの企業では常用雇用労働者数が毎年大幅に増加しているため、新規雇用障害者数と法定雇用障害者数の過不足が常に“いたちごっこ”の状況を続けている傾向にあるが、その根底には、障害者に従事してもらう仕事がないという悩みが存在する。これら新興企業は、概ね管理部門が小さく、自前でやる必然性のない業務は外注しているケースが多く、障害者雇用のために外注している業務を取り戻すとした場合、逆にコスト高になることはほぼ間違いない。このように法定雇用率の達成に見合うだけの仕事量を確保するのが難しいため、採用できていないという企業も多い。 一方、前述したように、中小企業では障害者の雇用経験が0人の企業数も依然として多い。一定の経験やスキルがある求職中の身体障害者は減少傾向にあり、求人募集をすれば応募者の過半数が精神障害者保健福祉手帳所持者である状況となっている。初めての障害者雇用できめ細かな雇用管理が必要な場合が多い精神障害者を雇用することは、経営資源が限られる中小企業にとり極めてハードルが高い。まず、経営者層の理解を得ることでつまずく。次に、職場の受け入れ態勢の整備や採用後の指導にあたる人材の確保も課題である。そしてなによりも障害状況に応じた一人分の仕事を作りにくいというところが大きい。公的サービスとして各種支援も用意されているが、中小企業にまで十分に浸透しているとは言えないのが現状であり、中小企業における障害者雇用の推進は、なお一層の重点課題となっている。

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