就業支援ハンドブック
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3)障害者の採用の激化 法定雇用率の上昇や企業における法令遵守意識の浸透、社会貢献意欲の高まりもあって、障害者の採用市場が逼迫傾向にある。特に、大都市圏をはじめ一部の企業集中地域においては売り手市場といってよい。それに伴い、雇用可能な条件のハードルが上がるという現象が発生している。具体的には、正社員求人でないと応募がない、事務系の仕事でないと人が集まらない、給与を他社比較される、といった声をよく耳にするようになった。障害者にとっては良いことのように思えるが、必ずしもそうともばかりは言えない。 保護者や支援者から見てスマートな職種を選択する傾向にあるが、それが果たして障害者本人の希望・適性と合致しているのであろうか。条件が高くなったことにより企業が求める能力レベルも高くなったとしたら、果たしてそれに応えることが可能なのだろうか。また、売り手市場であることから、まだ職業準備性が十分ではない障害者を雇用したことで、職場にうまく適応できずに双方ともに疲弊してしまい、本人にも職場にもトラウマを残す結果となった事例も見受けられる。これは障害者、企業双方にとって不幸なことである。4)障害者雇用の質的向上にどう応えるか 図3(165ページ)のように、常用雇用労働者数が1,000人以上の大手企可能性があろうことは想像に難くない。一つの業務に多数の障害者を集団配置している大手企業およびその特例子会社においては、それに見合う新たな仕事を準備しなければならなくなる。既存業務の中から新しい業務の切り出しを探し出すことはもちろん、AI・ロボットを導入することによって、逆にその周辺で新たな仕事の創出や構築ができないかを検討、準備することが求められている。RPAに伴う業務の変化は動き出したらあっという間である。その時期は思う以上に間近に迫っている可能性がある。(※2)RPA:ロボットによる業務自動化の取組みを表す総称Robotic Process Automation第2節 企業の視点の理解 163

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