就業支援ハンドブック
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166 第3章 就業支援に必要な考え方5)指導員の確保と育成 職場における障害者への指導・管理に専任者を配置できればいいが、どこの企業も人員的にそれほどの余裕はない。各職場に個別に配置する場合には配属先の上司・先輩が負うところとなり、複数人を一緒に配置する場合には定年後再雇用者を活用したりして専任者を配置するケースが多い。一方、雇用する障害者は精神障害者や発達障害者が増えてきており、指導の仕方は従前にも増して個別性や柔軟性が求められるようになってきた。そうなると、専門的資格(精神保健福祉士、臨床心理士など)・経験を持った指導員の配置を考えたいところだが、その採用は容易ではない。こういった指導員の処遇が、企業本体の正社員と比べて総じて見劣りすることも影響しているように思われる。 中小企業において障害者雇用を促進するとなると、より指導員の存在が大きいウェイトを持つ。ほとんど障害者と接したことのない人が指導員を務めることによる負担増、それによる生産性のダウンは企業規模が小さい程影響が大きい。これが障害者雇用に踏み出せない理由の一つである。企業としてニーズに合った指導員をどう採用するか、自前の職員をいかに指導者として育成していくかも大きな課題である。 各支援機関においても限られた陣容と資源の中で、障害者雇用の促進・定着に努力されているところではあるが、いま以上に企業の障害者雇用の促進に資する支援となるよう、企業ニーズがどこにあるのか、何を期待しているのかを理解しておきたい。それを踏まえて企業とベクトルを合わせて取り組むことが良い結果につながるものと考える。1)就職前に備えて欲しいこと まず第一に、「働くことへの動機付け」をしっかり行うことが望ましい。「働くということはどういうことなのか」、「労働の対価として給与があり、給与に見合う仕事をするのが職業人である」ということをいろいろな機会の中で繰り返し確認していくことが大切である。当然、入社後に企業でも行われるものだが、入社前から認識できている人とそうでない人とでは、第7項 支援機関に求められる意識と行動

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