就業支援ハンドブック
177/300

1)就業支援におけるネットワークの重要性 障害者の就業支援では、支援ネットワークの構築とケースマネジメントの技術は不可分の関係にある。なぜなら、ケースマネジメントの質は地域ネットワークによる「地域力」に応じて異なるからである。就業支援におけるケースマネジメントとは、「その従事者が、既存のあるいは新規に組み合わせて創り出した社会資源を利用しながら、当事者の“働きたい”ニーズを満たすのに必要なエンパワーメントを高めて、その実現に向けた自己決定を支援していくための手がかりを見つけ出す手法」、または「その従事者が、就業支援に係る既存のフォーマルな社会資源を知るとともに、インフォーマルな社会資源を組み合わせることで、地域の中にニーズを支え合う仕組みを作り出すための手法」と定義される1)。雇用・福祉・教育・医療等の各分野の連携による役割分担の下での長期的な支援を総合的に行うネットワークがあってこそ、このケースマネジメントが有効に機能するのである。そのため、厚生労働省でも、各分野の連携体制構築のための通知を発出している2)。 就業支援のための地域ネットワークは、支援を受ける当事者と支援者の双方に様々な利益をもたらす。 第1に、就業支援を担っている各分野の実務担当者の間で「就業支援」に対するイメージを共有化できる。それによって、ネットワークを通して福祉・教育・医療の各分野の担当者が自分たちの支援の強みや弱みを知って効果的に役割分担をするようになろう。また、能力評価に対する共通基準を認識できることで、障害者の就業に関するイメージのギャップを埋めることができよう。 第2に、ライフステージに沿った支援を継続的につなげることが可能となる。障害のある当事者は支援の分断に対する不安から、自分のなじんだ福祉・教育・医療の分野に留まりがちで、雇用への移行に二の足を踏むことも多い。ネットワークを構築してライフステージに応じた切れ目のない 第3節 就業支援と支援ネットワーク 169第1項 ネットワークの意義第3節 就業支援と支援ネットワーク

元のページ  ../index.html#177

このブックを見る