就業支援ハンドブック
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1)機能不全と修復 上記のように、就業支援ネットワークを重層的に構築するには、実務担当者同士が連携する場合と、その所属する組織同士の連携という2つの構築の手順を併行させることが望ましい。だが他方で、せっかく作り上げたネットワークが機能しなかったり継続しないこともある3)。 その理由として、以下のことがある。①ネットワーク構築の目的が明確になっていないために、機関や実務担当者の間で交わされる情報の質や内容に行き違いを生じ、次第に、期待する情報に出会わなくなってしまう場合がある。②ネットワークに参加する個人や機関の基本的な姿勢として、自組織への有利や不利といった利害関係に固執すると、組織防衛的な発想が前面に出やすくなって、創造的な問題解決の場にならない。③参加する各機関が、ネットワーク構築の前から独自の活動領域を確立していると、その維持に重点が置かれて新規のネットワーク構築に向かおうとしない。 こうした理由のほかにも、例えば、ネットワーク自体が小さい規模であったり、組織のネットワークに対する方針が不明確であったり、専門職に対する理解や認識の低さがあると、構築されたネットワークは維持されなくなってしまう傾向にある。 こうした原因で機能不全に陥ってしまったネットワークに対しては、次して、的確な準備を整えて、障害者や企業を確実に引き継ぐ必要がある。また、その機関での支援サービスの経過状況を把握して必要に応じて対応するとともに、サービスに不調な状況が生じた場合には代替の機関の準備を行わなければならない。 第4段階は「相互利用の強化」である。支援サービスについて、お互いに利用しあったり補完のできるような体制を構築することを志向するべきである。それは、担当者の個人的関係から組織間の機能的な連携関係へ移行させることである。相手機関の属する他のネットワークの情報を応用的に活用できたり、情報の効力や責任範囲を理解して情報の提供が許されるような信頼関係を構築することが必要である。  第3節 就業支援と支援ネットワーク 177第4項 ネットワークの維持

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