就業支援ハンドブック
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190 第4章 就業支援に必要な知識 ③ 聴覚・言語障害 聴覚・言語障害者は、小さな音が聞こえないだけの人から、大きな音でもわずかに響きを感じるだけの人(難聴者)、全く聞こえない人(ろう者)まで大きな差がある。また、聴力の損失が生じた年齢、障害原因の性質・程度、受けた教育などの違いによって、聞き取る力だけでなく、話す言葉の明瞭さや、言語能力にも大きな違いがある。個人差はあるが、音声言語の基本的概念を獲得する以前に失聴した人は、言語理解面で困難を伴う。ただし、現在、教育方法や補聴器の進歩によって、失った聴力の程度と言語能力の程度は必ずしも直結しなくなっている。 ろう者はコミュニケーション手段として聴覚を利用できないので、身ぶり、口話(読唇+発語)、手話、筆談等の手段が必要となる。難聴者の場合は、補聴器を用いるなどで、1対1の会話はこなせる場合もあるが、集団場面(集会や会議)や電話での対応には不自由がある。 また、聴覚を利用できないとは、単に聞こえないだけでなく、健常者が普段何気なく取り入れている情報が入らないという「情報障害」が生じてニケーションへの考慮が必要となる。 通勤については、全盲者の場合でも、盲学校や視覚障害者リハビリテーション施設で歩行訓練を受け、白杖を使っての安全確実な歩行技能を身につけているので、最初の数回、同行して歩行情報を伝えれば、その後は単独で通勤可能となる。職場内の移動についても、最初に職場内を同僚が一緒に回り、位置や経路を確認しておけば何ら問題はない。ただし、通常利用する通路には物を置かないようにするなどの注意が必要である。 コミュニケーションについては、回覧文書による情報伝達は、要点を口頭で伝えることが必要である。直接対面で伝達できない場合は、ボイスレコーダーを利用する。コンピューターを使い、データとして文書を登録し、Eメール等を活用すれば、合成音声で読み上げさせたり、点字に変換して出力させたり、文字を拡大表示したりができる。また、会議や懇親会などでは、同席者の名前や位置を知らせる配慮が重要である。さらに、物の指示は、指示代名詞(そこ、あれ)でなく、具体的に何がどこにあるかを示す等の配慮が大切である。

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