就業支援ハンドブック
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ミスを犯しやすいなどの問題を引き起こすこともあるので、職務内容、周囲の者の協力等職場の環境の配慮が必要である。   ニ.注意障害(脳外傷者に多くみられる症状) 前述した半側空間無視は方向性の注意障害で、空間の半側に偏った注意障害であるのに対し、全般的な注意障害(前頭葉損傷で起こりやすい)が生じることがある。意識ははっきりしているのに、集中が困難で外部刺激の影響を受けやすい、多くの刺激の中から必要な刺激を選択できない、いくつかの刺激に注意を適切に配分できないなどの障害に分けられる。全般性注意障害が軽度の場合は、日常生活にはそれほど支障がないが、高度で複雑な情報処理能力が要求される職業場面では、ミスを犯しやすい、作業に時間がかかる等作業能力の低下により障害が露呈するので、職務内容等の配慮が必要である。 注意機能検査として、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構が開発した「パソコン版 空間性注意検査・軽度注意検査」があり、簡便に注意障害の客観的・定量的評価ができる。検査結果が即時にフィードバック可能であるため、障害自覚を促すことにも役立つ(資料271ページ以降参照)。   ホ.記憶障害(脳外傷者に多くみられる症状) 記憶とは経験を貯蔵し、必要に応じてそれを取り出す操作である。その過程は記銘・保持・再生に分類される。この過程のどこかに問題がある場合を記憶障害という。記銘障害は、意識障害や注意障害、知能低下でも生じる。記銘は正常だが、保持・再生の段階に問題がある場合を健忘症という。脳外傷者には、遠い過去の出来事は思い出せても、新しく経験したことを覚え込むのが難しいという前向性健忘が多くみられる。新たな学習が困難となることが就業に当たっての大きな課題となるため、メモの活用等により覚えなくても確認できるようにすることが重要である。 第1節 障害特性と職業的課題(身体障害) 195

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