就業支援ハンドブック
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200 第4章 就業支援に必要な知識2)職業的課題と支援のポイント ① 知的障害の職業的課題 知的機能の制限に伴い、職場における作業遂行力やコミュニケーションなどの面で職業的課題が生じる。職場の中での課題としては、次のような事項が挙げられる。しかし、知的障害の特性は一人ひとりによって異なり、また、職業的課題は社会的・環境的条件や支援・配慮の有無・程度との相互関係の中で変わりうるものであることに充分留意しなければならない。 ② 支援のポイント 就業支援を行う場合、どのような配慮があれば職場において能力を発揮できたり、適応がスムーズになるかという環境調整のアプローチが求められる。上記の知的障害の職業的課題に対して、どのような環境調整をするべきかを、認知障害のある人に対する課題遂行や良好な対人関係の構築のための環境調整のポイントを引用して示す。 知的障害を認知機能(情報処理のプロセス)の制限と捉えると、高次脳機能障害や発達障害など、認知機能の低下やゆがみがある場合(認知障害)に対応する支援技法と共通する部分も多い。知的障害の様相は多様であり、また、環境との相互作用により課題の現れ方が異なることを考慮すると、【知的障害の職業的課題】○具体的なことに比べ、抽象的なことを理解する力が弱い。○読み書きや言葉の理解、計算の能力に制限がある。○作業手順を覚えたり、課題の処理に時間がかかる。○一度に複数の指示を出されると指示が抜ける。○空間的な理解・判断が苦手である。○段取りや手順を考えたり、工夫することが難しい。○同じことを場面を変えて応用することが難しい。○ 過去の経験や知識を組み立てて推理したり、問題解決法を考えることが難しい。○同じ失敗を繰り返すことがある。○ 周りの状況に気付かず、周囲に配慮することが難しい、あるいは、その幅の広さに制限がある。

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