就業支援ハンドブック
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202 第4章 就業支援に必要な知識で適切な課題遂行のためには、当初は「入力の制限」を念頭に置いて接することが必要である。次のような配慮や支援を行うことにより、入力の制限を図ることができる。 小川浩氏はジョブコーチの支援技法を解説した「ジョブコーチ入門」3)の中で、分かりやすい教え方を実践するための考え方と技法を整理して示している。重要なポイントは、「言語指示(言葉で教える)」、「ジェスチャー(身ぶりや指さしでヒントを与える)」、「見本の提示(やってみせる)」、「手添え(手取り・足取り教える)」といった階層別の指示の手段を駆使して仕事を教えること、そして、常に最も介入度の少ない指示・手がかりで教えることによって、最短期間で訓練を終了するよう心掛けることである。さらに、言葉でやり方を教える場合は、必要最小限で具体的指示に限定すること、そして、基本となる手順を固定し、あらかじめポイントを絞って段階的に指導することである。 また、耳で聞くだけでなく、テキストやマニュアルなど視覚的資料があるほうが、情報が確実に伝達されやすい。ポイントが整理されることに加え、一度に部分と全体の関係を確認できたり、また、その場で消えてしまう聴覚的情報と異なり、後から復習が可能ということもある。 多くの知的障害者を雇用するあるビルメンテナンス会社では、入社初日には、図1のようなマニュアルを準備している。図2は、清掃現場に行く前に準備すべき道具の一覧を写真にしてロッカーの扉の裏に貼りつけてい【入力を制限するための方法】○ 言葉がけは必要最小限の具体的なものに限定するよう心掛けること。落ち着いた声でゆっくりと話した方が情報量が減る。○目標は段階的に設定すること。○手順は固定し、いつも同じ伝え方をすること。○情報は整理してから提示すること。○口で話して聞かせるよりも、視覚的に目で見せること。○ 支援者が目立たないようにするなど、支援の進行に従い、立ち位置に留意すること。

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