就業支援ハンドブック
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 また、ストレスの少ない働きやすい職場とは、社員が自分の職務能力に応じた役割と責任を持ち、「自分は必要とされている」と実感でき、職場の一員として他の職員とのつながりを感じ、帰属意識を持てる職場である。その環境を整えるために、個人目標の設定、朝礼による訓示、連絡帳のやり取り、他部署との交流会の実施など様々な取組みを組み合わせ、意欲の向上やコミュニケーションの促進を図っている企業もある。 一方、身体の不調や人間関係の悩み、余暇の過ごし方などの生活面、健康面、心理面などで生じうるストレスや課題は、本人や企業、職場だけでは解決が難しい場合もある。働きやすい職場環境を整えるためには、支援機関や家庭が協力し、職場外から支える体制があることも重要となる。安心できる職業生活を維持するために、必要に応じてジョブコーチなど人的支援を活用したり、職業生活を支える家庭や地域の関係機関の連携体制を整備しておくことが求められる。 知的障害者は、従前からの製造業での就業に加え、サービス業や卸売・小売業、医療・福祉業など多様な職域で活躍するようになっている。今後も就業の場を地域において更に広げていくためには、本人、そして企業に対するこうした環境調整の支援が必要となる。 なお、知的障害者の中には、発達過程において様々な経験が制約されることなどにより、職業生活を支える日常生活・社会生活面の能力(健康管理、生活リズムの確立、対人技能、移動技能等)や職業生活を維持するために必要な態度や基本的労働習慣(仕事に対する意欲、一定時間労働に耐える体力、規則の遵守など)といった職業準備性に課題が生じる場合がある。知的障害者に対する支援に当たっては、環境調整と併せて、本人の職業準備性の向上等を支援するアプローチも重要である。 第1節 障害特性と職業的課題(知的障害) 205

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