就業支援ハンドブック
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208 第4章 就業支援に必要な知識度に問題があることが分かり、この問題を解消するために、特定の症状がいくつそろうかによって各々の疾患を診断する操作的診断基準を取り入れた診断分類が作成され、その代表が上記に述べたICDとDSMである。※ DSMは、1994年にDSM-Ⅳ、2000年にその改訂版DSM-Ⅳ-TRが米国精神医学会から出され、また、2013年5月にDSM-5が出され、その邦訳が2014年6月に出版された。DSM-5では、①従来の操作的診断基準による診断分類(カテゴリー方式)に加え、精神疾患を呈する要素を数量化して分類するディメンション方式~連続的で明瞭な境界線を持たない臨床的特徴の記述が可能である方式~を導入しており、さらに診断基準については、②神経発達障害に係る診断基準を新設している。 この項では、従来のDSM-Ⅳ-TRの基準を主に紹介する。※ ICDは、2018年に第11版(ICD-11)が公表されているが、令和3年11月時点では、国内適用されていないため、本稿ではICD-10の内容にて記載している。 操作的診断基準の特徴は、①診断のための症状を列記し、診断に必要な症状(エピソード)数を決める、②症状の最低限度の持続期間を決める、③他の疾患との区別を明示する、ということにある。 統合失調症の診断基準を DSM-Ⅳの診断基準から見てみると次のようになる。(イ )特徴的症状:以下のうち2つ(またはそれ以上)、おのおのは、1か月の期間(治療が成功した場合はより短い)ほとんどいつも存在: ① 妄想 ② 幻覚 ③ 解体した会話(例:頻繁な脱線または滅裂) ④ ひどく解体したまたは緊張病性の行動 ⑤ 陰性症状、すなわち感情の平板化、思考の貧困、または意欲の欠如注: 妄想が奇異なものであったり、幻聴がその者の行動や思考を逐一説明するか、または2つ以上の声が互いに会話しているものであるときには、基準(イ)の症状を1つ満たすだけでよい。(ロ )社会的または職業的機能の低下:障害の始まり以降の期間の大部分で、

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