就業支援ハンドブック
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 このように DSM-Ⅳでは、活動期の特徴的臨床症状、発病後の社会的または職業的機能の減退、および症状の持続期間によって診断され、気分障害やパーソナリティ障害と鑑別されるものであり、上記(イ)~(ホ)の項目のどれか一つでも欠けていれば統合失調症の判断はつかない。精神科医(または病因)が異なっても症状の確認さえ一致していれば、上記診断基準に基づき診断結果が異なることはないことになるが、そのためには精神科医による注意深い症状評価と経過観察が必要である。 幻覚・妄想・思考形式の障害・緊張病症状等の陽性症状は、統合失調症でよく見られるが、それに限定されたものではなく、気分障害、物質関連障害や認知症のような器質性疾患でも少なからず見られる。そのため、幻覚や妄想があれば直ぐに統合失調症と限定的にとらえるのではなく、陽性仕事、対人関係、自己管理などの面で1つ以上の機能が病前に獲得していた水準より著しく低下している(または、小児期や青年期の発症の場合、期待される対人的、学業的、職業的水準にまで達しない)。(ハ )期間:障害の持続的な徴候が少なくとも6か月間存在する。この6か月の期間には、基準(イ)を満たす各症状(すなわち、活動期の症状)は少なくとも1か月(または、治療が成功した場合はより短い)存在しなければならないが、前駆期または残遺期の症状の存在する期間を含んでもよい。これらの前駆期または残遺期の期間では、障害の徴候は陰性症状のみか、もしくは基準(イ)にあげられた症状の2つまたはそれ以上が弱められた形(例:風変わりな信念、異常な知覚体験)で表されることがある。(ニ )失調感情障害と気分障害の除外:失調感情障害と「気分障害、精神病性の特徴を伴うもの」が以下の理由で除外されていること。 ①  活動期の症状と同時に、大うつ病、躁病、または混合性のエピソードが発症していない。 ②  活動期の症状中に気分のエピソードが発症していた場合、その持続期間の合計は、活動期および残遺期の持続期間の合計に比べて短い。(ホ )物質や一般身体疾患の除外:障害は、物質(例:乱用薬物、投薬)または一般身体疾患の直接的な生理学的作用によるものではない。(ヘ )広汎性発達障害との関係:自閉症障害や他の広汎性発達障害の既往歴があれば、統合失調症の追加診断は、顕著な幻覚や妄想が少なくとも1か月(または、治療が成功した場合は、より短い)存在する場合にのみ与えられる。 第1節 障害特性と職業的課題(精神障害) 209

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