就業支援ハンドブック
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210 第4章 就業支援に必要な知識 ② 精神障害の特性 精神障害のうち、統合失調症、気分障害、非定型精神病、中毒精神病、器質精神病、その他の精神疾患(神経症、パニック障害、外傷後ストレス障害)について説明する。  (1)統合失調症   イ.概念 発症危険率は約0.8%で、おおよそ120人に1人弱の人が罹患する疾患である。発生率に対して有病率が高く、慢性に経過する場合が多いといえる。統合失調症の発生率に明らかな男女差は見られない。発症年齢は15~35歳が大半を占める。発症は男性の方がやや早く、ピークは男性で15~24歳、女性で25~34歳、平均発症年齢は男性で21歳、女性で27歳とされる。症状の内容の詳細、陽性症状の経過、その他の症状の有無と内容、発症のきっかけ、それまでのパーソナリティなどの多くの情報を聞き取り、診断、予後予測、治療の方針が立てられることに注意を要する。 精神疾患を判断する場合、どのような診断分類によろうと診断名とその特徴とする症状さえ把握できれば、理解できたといえる訳ではない。さらに診断分類に典型的に当てはまる精神疾患の者ばかりではない。むしろ中間的な疾患を持つ者が多く、「特定不能の」という修飾語のつく診断名や複数の診断名を折衷したような診断名(統合失調感情障害)のつく者もいる。的確な治療方針や予後予測、有効な支援策を立てるには、精神疾患を有する者の個人に固有の特徴を評価する必要がある。固有の特徴には、遺伝負因・気質・性格・認知スタイル・対処行動・社会的不利・ストレッサーの存在等の生物学的・心理学的・社会学的要因が含まれている。これら多数の要因を丹念に詳細に確認し、体系立てて記述することが適切で有効な支援策を立てる基礎になり、精神障害を理解することにつながるといえる。 支援の対象者としての精神障害者を理解するには、上記に述べたように単なる診断名とその特徴的な症状を理解するだけでは十分でなく、本人固有の特徴を理解する必要があり、それには本人や主治医からの詳細な聞き取り、診断書等の情報の収集が欠かせない。

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