就業支援ハンドブック
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   ロ.急性期の症状 初回精神病エピソードや再発時の急性期には、以下の特徴的な症状が出現する。しかし、以下の症状が1人の患者に全て見られるわけではない。 主たる症状の内容を簡単に記述する。詳しい内容は、医学書等を参照のこと。 統合失調症の症状は、陽性症状と陰性症状に二大別される。陽性症状は、各種の幻覚や妄想、緊張病症状等で、陰性症状は感情の鈍麻・平板化、思考や会話の貧困、自発性減退、社会的ひきこもりなどを含む。急性期(初回エピソードや再発時)は陽性症状が顕著に見られ、慢性期(残遺期)には陰性症状が前景となる。経過は、急性期(活動期)を経て寛解または慢性期(残遺期)を辿る。(イ)幻覚■  幻覚の中では、幻聴が多く、急性期に最も高頻度に見られる症状の一つである。 ・複数の人が自分を話題として被害的な内容の対話をする(幻聴) ・考えたことが声になって聞こえる(考想化声)  幻視はまれで、幻嗅や幻味も時に見られる。(ロ)妄想■  関係妄想が特徴的で、周囲の些細な出来事、他人の身振りや言葉などを自己に関係づけるもので、嫌がらせ、当てつけなど被害的にとらえることが多い。(ハ)自我障害■  自分の考えや行動が自分のものであるという意識(能動意識または自己所属性)が障害される。また、自己と外界との境界(自我境界)も障害される。 ・自分の考えたことが筒抜けになっている(考想伝播) ・ 自分の意志ではなく考えさせられる、行動させられる、考えを吹き込まれる(考想吹入) ・考えを抜き取られる(考想奪取)(ニ)思考過程・会話の障害■  会話の文脈がまとまらず、次第に主題からそれて、筋が通らなくなる(連合弛緩)。  ・個々の考えに意味関連がなくなり話が支離滅裂になる(滅裂思考) 第1節 障害特性と職業的課題(精神障害) 211

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