就業支援ハンドブック
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  (2)気分障害 気分障害の概念とその用語は時代とともに変遷し、また診断基準によって異なっている。その結果、各疾患や病相の名称もさまざまな用語が用いられてきた。以下に従来診断で用いられてきた診断名と現在の診断名との対応を示す。   イ.概念 気分が高まったり、逆にゆううつになったりする気分変動は、それ自体は正常心理であるが、それが病的に出現する場合が「気分障害」である。「病的」の程度や質などにより、気分障害には様々なサブタイプが存在する。①うつ病性障害(大うつ病性障害、気分変調性障害)②双極性障害(双極Ⅰ型障害、双極Ⅱ型障害、気分循環性障害)③その他(一般身体疾患による気分障害、物質誘発性気分障害) 大うつ病性障害を一生のうち一度でも経験するのは7~15人に1人であり、双極性障害の頻度は大うつ病性障害の約1割の確率である。気分障害の頻度は時代とともに増加していると考えられる。 頻度の性差について、大うつ病性障害に関して、女性は男性よりも12か月有病率および生涯有病率が約2倍であることが確認されている。双極性障害は大うつ病性障害と異なり、頻度の性差はほとんどない。 気分障害の経過中には、うつ病相、躁病相、混合病相という3つの病相が生じうる。この3つの病相の組み合わせで気分障害の分類がなされて○うつ病(従来診断、以下同じ)「単極型(単極性)うつ病」と同じ意味である。DSM-Ⅳ-TRの「大うつ病性障害」、ICD-10の「うつ病性障害」にほぼ対応。※ 「大うつ病」の「大」という言葉は「重症」という意味ではなく、「うつ病に該当す○躁うつ病 DSM-Ⅳ-TRの「双極性障害」、ICD-10の「双極性感情障害」にほぼ対応。○抑うつ神経症 「気分変調症」にほぼ対応。DSM-Ⅳ-TRの「気分変調性障害」、ICD-10の「持続性気分障害」に分類。るゆううつ症状がたくさん出そろっている」という意味である。 第1節 障害特性と職業的課題(精神障害) 213

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