就業支援ハンドブック
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 ② 支援のポイント 精神障害者に対する就業支援においては、以下に挙げる支援のポイントにあるような条件を整え、職業的課題を軽減・代償するアプローチを行うこととなる。充分なアセスメントとともに、本人や企業の主体性を尊重したうえで、本人、企業、家庭、関係機関を含めた調整の結果により個別の状況に応じて検討を行うことが求められる。また、本人、企業、家族、支援者は一人で課題を抱え込まないことが大切である。支援者は本人や企業、家庭をサポートし、気軽にコミュニケーションと情報共有が図れる体制を保障しながら、支援を進める必要がある。  イ.段階的・柔軟な受入体制の確保 職場適応のためには、仕事への初期の導入が大切である。疲れやすさや環境変化に対する弱さ、緊張のしやすさ、自信喪失などの状況を踏まえると、導入に当たっては弾力的な勤務時間の設定が望ましい。各種の職場実習制度やトライアル雇用等の活用などにより、負担の少ない勤務日数や勤務時間でスタートし、慣れるに従い、相談・調整を行いながら段階的に増やすような条件整備を検討することが重要である。 また、段階的な勤務時間の設定だけでなく、勤務時間帯、休憩の回数や時間、通院やカウンセリングのための時間の確保、残業の取扱いなどについて、本人と企業があらかじめ取決めをしておくことが重要である。仕事に慣れると当然戦力としての期待が高まる。きまじめさや自分の思いを訴えられないことから、対象者本人が無理を重ねる状況に陥ることも多い。いつ残業が発生するかわからないといった曖昧さそのものが不安感とストレスを生む場合もある。本人や企業とあらかじめこれらの項目について話し合い、可能な限りの調整をしておくことが求められる。 なお、複数の精神障害者が働く企業では職場適応が良好であると言われる。グループでワークシェアリングすることにより、一人ひとりの負担を軽減したり、体調の波による勤務の不安定さを補うこともできる。 さらに、遊びや生活での楽しみがあまりない人が多い。「何をやっても面白くない」「何もしたくない」というのが本人からの話では多い。 第1節 障害特性と職業的課題(精神障害) 221

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